(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
融点が120℃未満のプロピレン系重合体(B)が、プロピレン単独重合体、または、プロピレンと、炭素数が4〜20のα・オレフィンからなるランダム共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<融点が120℃以上のプロピレン系重合体(A)>
本発明のスパンボンド不織布を形成するプロピレン系重合体(A)は、示差走査熱量計で測定される融点が120℃以上、好ましくは120〜170℃を有するものである。本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、結晶性を有し、アイソタクチック・インデックスI.I.(沸騰n−ヘプタン不溶成分)が、好ましくは75重量%以上、より好ましくは75〜99重量%のポリプロピレンを用いることが望ましい。
【0015】
また、プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(ASTM D1238、温度230℃、荷重2160g)は、1〜300g/10分、好ましくは2〜200g/10分である。メルトフローレートがこの範囲にあると溶融紡糸が可能となる。
【0016】
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体、または、プロピレンとα・オレフィンからなるランダム共重合体のいずれであってもよく、また、プロピレン単独重合体と、プロピレンとαオレフィンからなるランダム共重合体とを併用したものであっても良い。得られる不織布における強度の観点から、好ましくはプロピレン単独重合体である。また、プロピレン単独重合体とともに、プロピレンとαオレフィンからなるランダム共重合体とを併用すると触感を向上することが可能であり、この場合、ランダム共重合体はプロピレン単
独重合体との合計100重量%としたとき0.1〜30重量%の範囲含まれていればよい。
【0017】
また、上記重合体(A)としては、ブロックポリプロピレンを用いても良い。このようなプロピレン系重合体(A)としては、従来公知のものを用いることができ、市場から容易に入手できる。例えば、プロピレン単独重合体としては、「プライムポリプロ S119」(商品名;プライムポリマー(株)製)、などが挙げられる。また、プロピレンとエチレンとの共重合体としては、ExxonMobil社製:商品名 Vistamaxx VM2125、などが挙げられる。
【0018】
プロピレン系重合体(A)は、従来公知の固体状チタン触媒(チーグラー触媒)成分またはメタロセン化合物触媒成分を用いて、公知の方法により製造することができる。
【0019】
本発明では、プロピレン系重合体(A)を単独で使用してもよいが、プロピレン系重合体(A)とともに以下に示すプロピレン系重合体(B)を使用した場合には、得られる不織布の柔軟性、剛軟度、触感が特に優れるため、好ましい。
<融点が120℃未満のプロピレン系重合体(B)>
本発明で使用されるプロピレン系重合体(B)は、融点が120℃未満のプロピレン系重合体であり、プロピレン単独重合体であっても、プロピレンと炭素原子数2または4〜20のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。このうち、本発明では、プロピレン単独重合体あるいは、プロピレンと炭素原子数4〜20のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0020】
示差走査熱量計で測定される融点(Tm)は120℃未満であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは55〜85℃、最も好ましくは60〜80℃である。
【0021】
また、プロピレン系重合体(B)のメルトフローレート(ASTM D1238、温度230℃、荷重2160g)は、1〜1000g/10分、好ましくは2〜500g/10分、さらに好ましくは2〜250g/10分、最も好ましくは2〜150g/10分である。メルトフローレートがこの範囲にあるとプロピレン系重合体(A)と組み合わせた時に得られる不織布の柔軟性、剛軟度、触感が優れる。
【0022】
プロピレン系重合体(B)として、プロピレンと炭素原子数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を用いる場合の、α―オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。これらのうち、1−ブテンが好ましい。
【0023】
前記共重合体中のα−オレフィンの含量は、得られるプロピレン系重合体の融点(Tm)が上記範囲にある限り特に限定はされないが、通常、0.1以上90モル%未満、好ましくは1〜80モル%、さらに好ましくは5〜80モル%、最も好ましくは15〜75モル%の範囲にある。このようなプロピレン系重合体として、三井化学株式会社製:商品名 タフマー XM−7070、などが挙げられる。
【0024】
またプロピレン系重合体(B)として、プロピレン単独重合体を用いる場合には、以下の(A)〜(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンであることが好ましい。
【0025】
(A)[mmmm]=20〜60モル%:
低結晶性ポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、べたつきの発生が抑制され、60モル%以下であると、結晶化度が高くなりすぎることがないので、弾性回復性が良好となる。このメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは30〜50モル%、より好ましくは40〜50モル%である。
【0026】
メソペンタッド分率[mmmm]、後述するラセミペンタッド分率[rrrr]及びラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、
13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、後述するトリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出した。
【0027】
なお、
13C−NMRスペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置及び条件にて行うことができる。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置、
方法:プロトン完全デカップリング法、
濃度:220mg/ml、
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒、
温度:130℃、
パルス幅:45°、
パルス繰り返し時間:4秒、
積算:10000回。
<計算式>
M=m/S×100、
R=γ/S×100、
S=Pββ+Pαβ+Pαγ、
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度、
Pββ:19.8〜22.5ppm、
Pαβ:18.0〜17.5ppm、
Pαγ:17.5〜17.1ppm、
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm、
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm。
(B)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1:
[rrrr]/[1−mmmm]の値は、上記のペンタッド単位の分率から求められ、
本発明に係る低結晶性ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。この値が大きくなると、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、べたつきの原因となる。
【0028】
低結晶性ポリプロピレンにおいて、[rrrr]/(1−[mmmm])が0.1以下であると、得られる弾性不織布におけるべたつきが抑制される。このような観点から、[rrrr]/(1−[mmmm])は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下である。
(c)[rmrm]>2.5モル%:
低結晶性ポリプロピレンのラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.5モル%を超える値であると、該低結晶性ポリプロピレンのランダム性が増加し、弾性不織布の弾性回復性がさらに向上する。[rmrm]は、好ましくは2.6モル%以上、より好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常10モル%程度である。
(d)[mm]×[rr]/[mr]
2≦2.0:
[mm]×[rr]/[mr]
2は、低結晶性ポリプロピレンのランダム性の指標を示し、この値が2.0以下であると、弾性不織布は十分な弾性回復性が得られ、かつべたつきも抑制される。[mm]×[rr]/[mr]
2は、0.25に近いほどランダム性が高くなる。上記十分な弾性回復性を得る観点から、[mm]×[rr]/[mr]
2は、好ましくは0.25を超え1.8以下、より好ましくは0.5〜1.5である。
(e)質量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000:
低結晶性ポリプロピレンにおいて質量平均分子量が10,000以上であると、該低結晶性ポリプロピレンの粘度が低すぎず適度のものとなるため、弾性不織布の製造時の糸切れが抑制される。また、質量平均分子量が200,000以下であると、上記低結晶性ポリプロピレンの粘度が高すぎず、紡糸性が向上する。この質量平均分子量は、好ましくは30,000〜150,000であり、より好ましくは50,000〜150,000である。この質量平均分子量の測定法については後述する。
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4:
低結晶性ポリプロピレンにおいて、分子量分布(Mw/Mn)が4未満であると、弾性不織布のべたつきの発生が抑制される。この分子量分布は、好ましくは3以下である。 上記質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の質量平均分子量であり、上記分子量分布(Mw/Mn)は、同様にして測定した数平均分子量(Mn)及び上記質量平均分子量(Mw)より算出した値である。
<GPC測定装置>
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT、
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C、
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン、
測定温度 :145℃、
流速 :1.0ml/分、
試料濃度 :2.2mg/ml、
注入量 :160μl、
検量線 :Universal Calibration、
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)。
【0029】
本発明で使用される低結晶性ポリプロピレンは、さらに以下の(g)を満たすことが好ましい。
(g)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
【0030】
低結晶性ポリプロピレンの融点(Tm−D)が0℃以上であると、弾性不織布のべたつきの発生が抑制され、120℃以下であると、十分な弾性回復性が得られる。このような観点から、融点(Tm−D)は、より好ましくは0〜100℃である。
【0031】
なお、上記融点(Tm−D)は、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
【0032】
このような低結晶性ポリプロピレンは、例えば、WO2003/087172号公報に記載されているような、いわゆるメタロセン触媒と呼ばれる均一系の触媒を用いて合成することができる。
【0033】
前述のような低結晶性ポリプロピレンとしては、例えば、出光興産株式会社製:商品名 L−MODU S901、あるいは、出光興産株式会社製:商品名 L−MODU S600、などが挙げられる。
<炭素数15以上21以下の脂肪酸アミド>
本発明で使用される炭素数15以上21以下の脂肪酸アミドとしては、脂肪酸モノアミド化合物、脂肪酸ジアミド化合物、飽和脂肪酸モノアミド化合物、不飽和脂肪酸ジアミド化合物が挙げられる。なお、本発明における炭素数とは、分子中に含まれる炭素数を意味し、具体的には、パルミチン酸アミド(炭素数16)、ステアリン酸アミド(炭素数18)、オレイン酸アミド(炭素数18)、などが挙げられ、これらは複数組み合わせて用いることもできる。なお、アミドを構成する-CONHも炭素数に含める。脂肪酸アミドの炭素数は、より好ましくは
15以上19以下である。
【0034】
本発明では、これらの脂肪酸アミド化合物の中でも、特にオレイン酸アミドが好ましい。このようなオレイン酸アミドを使用することで、柔軟性、触感、強度に優れた不織布を得ることができる。
【0035】
滑剤としては、上記脂肪酸アミドを含む以外に、公知のものを含んでいても良く、脂肪酸化合物、パラフィンおよび炭化水素樹脂、シリコーン系化合物、シリコーン系重合体、フッ素系化合物、テトラフルオロエチレンとプロピレンの共重合体、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンの共重合体などのフッ素系重合体など、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
<組成物組成>
本発明に係るスパンボンド不織布の原料となるプロピレン系重合体組成物は、融点が120℃以上のプロピレン系重合体(A)と炭素数15以上21以下の脂肪酸アミドとを必須成分として含む。
【0037】
融点が120℃未満のプロピレン系重合体(B)を含む場合、プロピレン系重合体組成物が、融点が120℃以上のプロピレン系重合体(A)と融点が120℃未満のプロピレン系重合体(B)との合計100重量部に対して、
融点が120℃以上のプロピレン系重合体(A):70〜99.9重量部、
融点が120℃未満のプロピレン系重合体(B):30〜0.1重量部であり、さらには
融点が120℃以上のプロピレン系重合体(A):75〜99重量部、
融点が120℃未満のプロピレン系重合体(B):25〜1重量部からなることが好ましく、より好ましくは
融点が120℃以上のプロピレン系重合体(A):80〜97重量部、
融点が120℃未満のプロピレン系重合体(B):20〜3重量部である。
【0038】
このような混合比で、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)とを含むものは、特定の脂肪酸アミドと組み合わせることで、柔軟性、触感、強度に優れた不織布が得られる。
【0039】
また、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)との合計100重量部に対して、炭素数15以上21以下の脂肪酸アミド:0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.60重量部、さらに好ましくは0.10〜0.40重量部の範囲で含むことが望ましい。過剰に脂肪酸アミドを含んでいても、強度低下や、静摩擦係数の過剰な低下などを起こすことがある。また、脂肪酸アミドが少ないと、柔軟性が不足することがある。
【0040】
こうして調製された組成物のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、
230℃、荷重2160g)は、通常1〜150g/10分、より好ましくは10〜100g/10分、さらに好ましくは30〜90g/10分の範囲にある。
プロピレン系重合体組成物の製造
本発明の不織布を製造するに際しては、予めプロピレン系重合体(A)および炭素数15以上21以下の脂肪酸アミド、および、必要に応じて、融点が120℃未満のプロピレン系重合体(B)とを混練してプロピレン系重合体樹脂組成物を製造した後に、このプロピレン系重合体組成物を用いて紡糸して不織布に成形するのが好ましい。ここでプロピレン系重合体組成物は、各成分を上記のような範囲で種々公知の方法、たとえば、多段重合法、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0041】
また不織布製法に応じて成形性を確保する目的で必要に応じて分解促進剤(デグラ剤)として有機過酸化物等を添加してもよい。また混合時に添加した分解促進剤(デグラ剤)が反応して選択される不織布製造法に応じた流動性が得られていても良い。
【0042】
本発明のプロピレン重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、親水化剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、その他の重合体等を、本発明の目的を損わない範囲で配合することもできる。
プロピレン系重合体組成物からなる不織布の製法
上記のようにして調製されたプロピレン系樹脂組成物からスパンボンド法で不織布を製造する。スパンボンド法については、本願出願人による、特開2007-46224号公報、特開2002-317372号公報、特開2003-302862号公報、特開2001-355172号公報に開示されている。
【0043】
不織布を構成する繊維の径を、0.1〜100μm程度にするのが一般的である。本発明の不織布では、比較的細い繊維(例えば10μm以下)と、比較的太い繊維(例えば10μmより太いもの)とを混合してあるいは積重ねて用いても良い。本発明の不織布を形成する繊維の長さに特に制限はなくスパンボンド法では通常連続繊維からなる。
【0044】
上記のようにして形成された繊維に交絡を形成することにより、不織布とすることができる。このような交絡を形成する方法としては、例えば、ニードルパンチ、ウオータージェット、超音波シール等の手段による交絡処理、あるいは熱エンボスロールによる熱融着処理を行うことができる。特に本発明では熱エンボスロールによる熱融着処理により交絡を形成する方法が有利である。熱エンボスロールによる熱融着処理の場合、エンボスロールのエンボス面積率は、適宜決められるが、通常5〜30%である。
不織布
上記のようにして得られる本発明の不織布は、特定の組成物から構成されるので、静摩擦係数が、0.41〜0.8の範囲にある。
【0045】
なお、静摩擦係数が0.41未満であると、滑り性が過度に向上して生産性が劣る。また、静摩擦係数が0.8を超えると、得られる不織布の柔軟性が劣る虞がある。本発明に係る不織布は、すべすべ感とともに、ふわふわ感も高く、毛羽立ちしにくく、非常に柔軟性に優れている。
【0046】
不織布の剛軟度は通常、37以下、好ましくは35以下、さらに好ましくは31以下である。
【0047】
本発明の不織布は、通常、目付(不織布の単位面積あたりの質量)が3〜100g/m
2、好ましくは7〜60g/m
2の範囲にある。
【0048】
本発明の不織布を構成する繊維は、たとえば、モノコンポーネント型や、芯鞘型、分割型、海島型、サイドバイサイド型の複合繊維としてもよく、複合繊維の場合は、繊維の一部を形成する樹脂が本発明の組成物であっても良い。また、繊維の断面形状としては、丸型、角型等の種々公知の断面形状を取り得る。さらに、本発明の不織布は、2種類以上の繊維が混合されたものであっても良く、この場合は、少なくとも1種類の繊維が本発明の組成物であれば良い。
不織布積層体
本発明の不織布(以下、通常の不織布と区別するために、「柔軟不織布」と呼ぶ場合がある。)は、用途により種々の層と積層して得る。
【0049】
具体的には、例えば、編布、織布、不織布、フィルム等を挙げることができる。柔軟不織布と他の層を積層する(貼り合せる)場合は、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤による方法、押出しラミネート等をはじめ、種々公知の方法を採り得る。
【0050】
柔軟不織布と積層される不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等、種々公知の不織布を挙げることができる。
【0051】
かかる不織布を構成する材料としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテン等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体である高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体等のポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタンあるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等が好ましい。
【0052】
本発明の柔軟不織布を用いてなる積層体の好ましい態様としては、スパンボンド不織布及び/又はメルトブローン不織布との積層体が挙げられる。具体的には、スパンボンド不織布/柔軟不織布、メルトブローン不織布/柔軟不織布等の2層、柔軟不織布/スパンボンド不織布/柔軟不織布、柔軟不織布/スパンボンド不織布/メルトブローン不織布、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/柔軟不織布、柔軟不織布/メルトブローン不織布/柔軟不織布等の3層、あるいは柔軟不織布/スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布、柔軟不織布/スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/柔軟不織布等の4層以上の積層体が挙げられる。積層される各層の不織布の目付は、2〜25g/m
2の範囲にあることが好ましい。上記極細繊維からなるスパンボンド不織布は、スパンボンド法の製造条件を制御(選択)することにより得られる。かかる不織布積層体は、本発明の柔軟不織布の柔軟性を生かすとともに、表面の滑らかさに優れ、耐水性や加工性が向上した積層体となる。
【0053】
本発明の柔軟不織布と積層されるフィルムとしては、本発明の柔軟不織布の特徴である通気性を生かす、通気性(透湿性)フィルムが好ましい。かかる通気性フィルムとしては、種々公知の通気性フィルム、例えば、透湿性を有するポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーからなるフィルム、無機あるいは有機微粒子を含む熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸して多孔化してなる多孔フィルム等を挙げることができる。多孔フィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体あるいはそれらの組成物等のポリオレフィンが好ましい。
【0054】
通気性フィルムとの積層体は、本発明の柔軟不織布の嵩高性、柔軟性を生かすとともに、極めて高い耐水性を有する、クロスライクな複合素材となり得る。 本発明の不織布は、柔軟性に富んでおり、各種衛生材料、使い捨てオムツ、生理用品、吸収性物品、使い捨てマスク、バンソウコウ、貼布剤、使い捨て手術着、レスキューガウン等、各医療用フィルムあるいはシート、メディカルガウン、手術用キャップ、使い捨てキャップなどとして使用することができる。
【0055】
以下、本発明の不織布の具体的な用途につい例を挙げて詳細に記述する。
吸収性物品
使い捨ておむつあるいは生理用品等の吸収性物品は、風合いや良好な触感が求められる。本発明の不織布は優れた柔軟性を有しているので、この柔軟性を利用して、具体的には、展開型使い捨ておむつあるいはパンツ型使い捨ておむつには、トップシート、バックシート、ウェストバンド(延長テープ、サイドフラップ)、ファスニングテープ、立体ギャザー、レッグカフ、またパンツ型使い捨ておむつのサイドパネル等の部位に好適に用いることができる。これら部位に本発明品を使用することで、良好な触感を得ることが可能となる。
使い捨てマスク
使い捨てマスクは一般に、口許周辺被覆部と、前記被覆部の両側から延びる耳掛け部から構成されている。マスク着用中には、特に耳掛け部が着用者の顔面に接触するため、良好な肌触りが求められる。本発明の不織布は良好な触感を有しているので、使い捨てマスクの耳掛け部に使用することでこれら要求を満足することが可能となる。
バンソウコウ、貼布剤
絆創膏等に用いられる基材には、肌にかぶれを起こさないための充分な通気性、ごわごわ感を感じさせない柔軟性が要求されてきた。本発明の不織布は、柔軟性を有するとともに、通気性を有するため、これら絆創膏等に用いられる基材として好適に使用される。
使い捨て手術着、レスキューガウン
使い捨て手術着、レスキューガウンなどの腕、肘、肩、袖など可動間接部には通気性、柔軟性が求められる。本発明の不織布は、通常の不織布と同様に不織布であるため通気性を有し、更に優れた柔軟性を有するためこれら使い捨て手術着、レスキューガウンなどに用いられる素材として好適に使用される。
【0056】
このように本発明の不織布は、柔軟性に優れたポリプロピレン系の不織布であり、衛生材料をはじめとして不織布として種々の用途に利用することができる。
【0057】
特に触感も良く、さらさら感、ふわふわ感も高く、柔軟性などバランスよく優れているので、オムツや生理用ナプキンにおいては身体の動きに追随した保持性が得られ、またさらに不織布で有るため通気性が良いことから特に優れた性能を付与できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0060】
(1)目付〔g/m
2〕
不織布から100mm(MD)×100mm(CD)の試験片を5点採取した。なお、採取場所は任意の5箇所とした。次いで、採取した各試験片に対して上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量(g)を測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた平均値から1m
2当たりの質量(g)に換算し、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの目付〔g/m
2〕とした。
【0061】
(2)厚み〔μm〕
不織布から100mm(MD)×100mm(CD)の試験片を5点採取した。なお、採取場所は任意の3箇所とした。次いで、採取した各試験片に対して荷重型厚み計(尾崎製作所社製)を用いて、JIS L 1096に記載の方法で厚み〔μm〕を測定した。各試験片の厚みの平均値を求め、小数点第1位を四捨五入して各不織布サンプルの厚み〔μm〕とした。
【0062】
(3)繊維径〔μm〕
不織布から10mm(MD)×10mm(CD)の試験片を5点採取した。なお、採取場所は任意の1箇所とした。次いで、試験片を光学顕微鏡を用いて倍率200倍で撮影し、その画像を画像寸法計測ソフトウェア(イノテック社製:Pixs2000 Version2.0)により解析した。各試験片について10本の繊維径を測定し、各試験片の繊維径の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの繊維径〔μm〕とした。
【0063】
(4)LC値〔―〕<柔軟性の評価>
不織布から150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を2点採取した。なお、採取場所は任意の2箇所とした。次いで、試験片をカトーテック(株)製のKES−FBシステムにより、測定条件としてニット高感度条件にて圧縮試験を行い、LC値〔−〕を測定した。各試験片のLC値の平均値を求め、小数点第3位を四捨五入して各不織布サンプルのLC値〔−〕とした。LC値はその数値が小さいほど、厚み辺りの初期圧縮仕事が小さく、柔軟性に優れることを示す。
【0064】
(5)静摩擦係数〔―〕<表面特性の評価>
不織布から300mm(MD)×100mm(CD)の試験片と100mm(MD)×100mm(CD)の試験片を各3点採取した。なお、採取場所は任意の各3箇所(計6箇所)とした。次いで、JIS K 7125に準拠し100mm(MD)×100mm(CD)の試験片を、エンボス面を外側になるように滑り片へ貼付し、300mm(MD)×100mm(CD)の試験片をエンボス面が摩擦されるように試験テーブルに貼付し、両試験片のエンボス面同士の静摩擦係数〔−〕を測定した。各試験片の静摩擦係数の平均値を求め、小数点第3位を四捨五入して各不織布サンプルの静摩擦係数〔−〕とした。
【0065】
(6)CD強度〔N/25mm〕
不織布から25mm(MD)×200mm(CD)のCD試験片を各5点採取した。なお、採取場所は任意の5箇所とした。次いで、採取した各試験片を万能引張試験機(インテスコ社製、IM−201型)を用いて、チャック間100mm、引張速度100mm/minの条件にて引っ張り、最大荷重〔N〕を測定した。各試験片のCD強度の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルのCD強度〔N/25mm〕とした。
【0066】
(7)毛羽立ち〔点〕
不織布から150mm(MD)×150mm(CD)のCD試験片を各2点採取した。なお、採取場所は任意の2箇所とした。次いで、採取した各試験片を学振型摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所社製、新型NR−100)を用い、JIS L 0849の摩擦堅牢度試験法に準拠して摩擦試験を行った。なお、摩擦子側には布テープ(寺岡製作所社製、No.1532)を貼付し、荷重300gをかけた状態で、非エンボス面をMD方向に50回往復させて擦り、各試験片における被摩擦面の毛羽立ち状態を以下の基準で等級づけ、等級の悪い方を各不織布サンプルの毛羽立ち〔点〕とした。
1級:試験片が破損するほど繊維が剥ぎ取られる。
2級:試験片が薄くなるほど甚だしく繊維が剥ぎ取られている。
2.5級:毛玉が大きくはっきり見られ、複数箇所で繊維が浮き上がりはじめる。
3級:はっきりとした毛玉ができはじめ、または小さな毛玉が複数見られる。
3.5級:一カ所に小さな毛玉ができはじめる程度に毛羽立っている。
4級:毛羽立ちがない。
【0067】
(8)触感
パネラー20人が不織布の手触りを確認し、下記基準で評価した。
A:20人のうち20人が柔らかいと感じた場合。
B:20人のうち19〜15人が柔らかいと感じた場合。
C:20人のうち14〜10人が柔らかいと感じた場合。
D:20人のうち9〜5人が柔らかいと感じた場合。
E:20人のうち4〜0人が柔らかいと感じた場合。
(9)剛軟度(カンチレバー法)
JIS1096の8.19.1[A法(45°カンチレバー法)]に準拠した。
【0068】
試料から、2cm×15cmの試験片をたて方向及びよこ方向にそれぞれ5枚採取した。一端が45度の斜面をもつ表面の滑らかな水平台の上に試験片の短辺をスケール基線に合わせて置いた。次に、適当な方法によって試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端の中央点が斜面と接したとき他端の位置をスケールによって読んだ。剛軟度は、試験片が移動した長さ(mm)で示され、それぞれ5枚を測り、たて方向(MD)及びよこ方向(CD)それぞれの平均値を求め、以下の式を用いて得られる数値を、小数点第二位を四捨五入して算出した。
剛軟度 = {(MDの平均値^2+CDの平均値^2)/2}^(1/2)
[
参考例1]
結晶性PP(株式会社プライムポリマー社製:商品名 プライムポリプロ S119;融点:156℃、MFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定):62g/10分。以下、「A1」と略す。):100重量部に対してオレイン酸アミド(以下、「C1」と略す。)を0.15重量部添加してなる組成物を用い、スパンボンド法により溶融紡糸を行った。
【0069】
押出機には単軸スクリュー押出機を用い、樹脂温度とダイ温度がともに220℃、冷風温度を20℃とした。その際、紡糸速度は2750m/分であった。
【0070】
溶融紡糸により得られた長繊維を捕集面上に堆積して不織布とした後、捕集面から剥離させ、エンボスパターンは面積率6.7%、エンボス面積0.19mm
2であり、加熱温度130℃、線圧60kg/cm条件の加熱エンボスにて熱接着し、スパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の目付は13.8g/m
2であった。得られたスパンボンド不織布を上記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0071】
[
参考例2]
C1を0.30重量部とした以外は、
参考例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0072】
[実施例3]
A1:90重量部と、プロピレン重合体(出光興産株式会社製:商品名 L−MODU S901;融点:75℃、MFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定):80g/10分。以下、「B1」と略す。):10重量部とを、混合した後、A1/B1混合物100重量部に対してC1を0.30重量部添加してなる組成物を用い、
参考例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0073】
[実施例4]
A1とB1との混合比を80重量部:20重量部とした以外は、実施例3と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0074】
[実施例5]
A1:90重量部と、プロピレン重合体(出光興産株式会社製:商品名 L−MODU S600;融点:70℃、MFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定):300g/10分。以下、「B2」と略す。):10重量部とを、混合した後、A1/B2混合物100重量部に対してC1を0.30重量部添加してなる組成物を用い、
参考例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例6]
A1:90重量部と、プロピレン系重合体(三井化学株式会社製:商品名 タフマー XM−7070;融点:75℃、MFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定):7g/10分。以下、「B3」と略す。):10重量部とを、混合した後、A1/B3混合物100重量部に対してC1を0.30重量部添加してなる組成物を用い、
参考例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0076】
[実施例7]
A1とB3との混合比を80重量部:20重量部とした以外は、実施例6と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0077】
[
参考例8]
A1:80重量部と、プロピレン重合体(ExxonMobil社製:商品名 Vistamaxx VM2125;融点:160℃、MFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定):60g/10分。以下、「A2」と略す。):20重量部とを、混合した後、A1/A2混合物100重量部に対してC1を0.30重量部添加してなる組成物を用い、
参考例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0078】
[比較例1]
A1を100重量部に対してエルカ酸アミド(以下、「C2」と略す。)を0.15重量部添加してなる組成物を用い、
参考例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0079】
[比較例2]
C2を0.30重量部とした以外は、比較例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0080】
[比較例3]
C2を0.45重量部とした以外は、比較例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0081】
[比較例4]
A1:90重量部と、B1:10重量部とを混合した後、A1/B1混合物100重量部に対してC2を0.30重量部添加してなる組成物を用い、
参考例1と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0082】
[比較例5]
比較例4で用いたB1をB2に替えた以外は、比較例4と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0083】
[比較例6]
比較例4で用いたB1をB3に替えた以外は、比較例4と同様の方法でスパンボンド不織布を採取し、上記記載の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
以上の実施例によれば、本発明にかかる不織布は、触感に優れ、毛羽立ちしにくく、静摩擦係数と強度がバランスよく優れ、柔軟性、剛軟度にも優れる、という結果が得られた。