(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機多孔質粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア及びジルコニアからなる群から選択される一種又は二種以上の化合物を含む多孔質粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【背景技術】
【0002】
ガソリンを燃料とする自動車等の内燃機関の排気ガス中には、炭化水素(THC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれているため、それぞれの有害成分を、酸化還元反応を用いて同時に浄化して排気する必要がある。例えば炭化水素(THC)は酸化して水と二酸化炭素に転化させ、一酸化炭素(CO)は酸化して二酸化炭素に転化させ、窒素酸化物(NOx)は還元して窒素に転化させて浄化する必要がある。
【0003】
このような内燃機関からの排気ガスを処理するための触媒(以下「排気ガス浄化触媒」と称する)として、CO、THC及びNOxを酸化還元することができる3元触媒(Three Way Catalysts:TWC)が用いられている。
【0004】
この種の3元触媒としては、例えば高い表面積を有するアルミナ多孔質粒子などの耐火性酸化物多孔質粒子に貴金属を担持し、これを基材、例えば耐火性セラミック又は金属製ハニカム構造で出来ているモノリス型基材にコートして触媒層を形成してなる構成のものが知られている。
【0005】
ただし、触媒活性成分としての貴金属と基材との結合力はそれ程強くなく、また基材自体の比表面積もそれ程大きくないため、基材に貴金属を直接担持させようとしても十分な担持量を高分散に担持することは難しい。そこで、十分な量の触媒活性成分を基材の表面に高分散に担持させるために、高い比表面積を有する粒子状の触媒担体に貴金属を担持させることが行われている。
この種の触媒担体として、例えばシリカ、アルミナ、チタニア化合物などの耐火性無機酸化物からなる多孔質粒子が知られている。中でも、ガンマ相アルミナとデルタ相アルミナの混合物からなる活性化アルミナは、特に高い表面積を有しており、触媒担体として優れた材料である。
【0006】
ところで、自動車の排気ガスなどは、ガス流速が速いため、触媒層の深層部にまで排気ガスが拡散し難く、十分な触媒性能を発揮させることができないという課題を抱えていた。そこで、ガス拡散性を高めて浄化性能を向上させるために、触媒層に空隙を形成する次のような提案がなされている。
【0007】
例えば特許文献1(特開2002−191988号公報)および特許文献2(特開2002−253968号公報)には、特定の孔径を有する細孔を設けた多孔質構造体からなるコート層に貴金属とNOx吸蔵剤とを担持させることにより、排気ガスのガス拡散性を高めて、NOxの浄化効率を向上させたNOx吸蔵還元型触媒が提案されている。
【0008】
特許文献3(特開2004−025013号公報)には、ハニカム形状の基材と該基材の表面に形成された触媒コート層とよりなる排気ガス浄化用触媒において、該触媒コート層は、少なくとも酸素吸蔵放出材の粉末を含み、中心細孔径が0.1μm以上の細孔をもち、かつ中心細孔径の±50%の範囲の細孔の細孔容積が0.05cc/g以上であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒が開示されている。
【0009】
特許文献4(特開2006−110485号公報)には、触媒層における排気ガスのガス拡散性を高めて、触媒効率を向上させる排気ガス触媒として、担体と、該担体上に形成された複数層とを少なくとも備えてなる排気ガス触媒であって、前記複数層の少なくとも一つの層が触媒成分を含んでなり、かつ、該層中に空隙を有してなり、前記空隙の平均径が0.2〜500μmである、排気ガス浄化触媒が開示されている。
【0010】
また、触媒層内に大きな空隙を形成する方法として、カーボン粒子や樹脂粒子などを添加しておき、焼成して当該カーボン粒子や樹脂粒子を焼失させることで、大きな空隙を形成する方法が開示されている。例えば特許文献5(特開2012−240027号公報)には、触媒粒子と炭素化合物材を溶媒と共に混合して触媒スラリーを調製し、その後の工程においてこれを焼失させることで、炭素化合物材の形状と同じ形状の空隙を触媒層内に造る方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<本触媒>
本発明の実施形態の一例としての排ガス浄化触媒(以下「本触媒」と称する)は、粒度の異なる2種類以上の無機多孔質粒子、触媒活性成分、及び空隙を有する触媒層(「本触媒層」と称する)と、基材と、を備えた排ガス浄化触媒である。
【0019】
本触媒は本触媒層を備えていればよいから、例えば基材の表面に本触媒層が形成されてなる構成を備えたものであってもよいし、基材の表面に他の層を介して本触媒層が形成されてなる構成を備えたものであってもよいし、また、基材の表面側ではない箇所に本触媒層が形成されてなる構成を備えたものであってもよい。
【0020】
<触媒層>
本触媒は、一層からなる触媒層を備えていてもよいし、二層以上の触媒層を備えていてもよい。
なお、本発明において「触媒層」とは、ガス吸着作用乃至ガス浄化触媒作用を有する層を意味し、触媒活性成分を含有していればガス浄化触媒作用を有するから該当するが、必ずしも触媒活性成分を含有していなくてもよい。
【0021】
本触媒が二層以上の触媒層を備えている場合、そのうちの少なくとも一層が本触媒層であればよい。この際、本触媒層は一層或いは二層以上でもよく、本触媒層の上下方向に一層或いは二層以上の他の層を積層してもよい。その際、触媒層と触媒層の間に、触媒層ではない層、例えば多孔質耐火性無機酸化物粉体からなる層や、多孔質耐火性無機酸化物粉体及び助触媒成分からなる層などの層が存在していてもよい。
また、排気ガスの流通方向に本触媒層とは異なる他の触媒層を備えていてもよい。
【0022】
<本触媒層>
本触媒層は、粒度の異なる2種類以上の無機多孔質粒子と、触媒活性成分と、必要に応じてその他の成分とからなり、連通した多数の空隙を有する多孔質な層である。
【0023】
(空隙形状と大きさ)
本触媒層は、下記(式1)の条件を満たす空隙が、当該触媒層における全空隙のうちの50個数%以上を占め、且つ、当該触媒層の空隙断面積において、真円と仮定して求めた平均空隙半径が10μm〜20μmであることを特徴とする。
L/2/(πS)
1/2 ≧2・・・(式1)
【0024】
上記関係式(1)において、「S」は空隙断面積を示し、「L」は空隙断面外周長を示しており、いずれも、触媒層の断面を電子顕微鏡で観察し、画像解析ソフトを用いてこの電子顕微鏡画像を、解析することにより計測することができる。
図1は、本発明の排ガス浄化触媒の触媒層(断面)における空隙の形の一例を模式的に示した図である。この
図1において、黒線で囲まれた灰色部分が空隙を示し、その周りの白色部分は触媒層を構成する成分、すなわち無機多孔質粒子、触媒活性成分及びバインダー成分からなる部分を示している。
また、測定の際、触媒層の断面積を100%とした時に、空隙断面積が0.05%未満の小さな空隙は、効果にほとんど影響しないため、無視することとする。よって、上記の「全空隙」とは、画像解析において触媒層断面積に対する空隙断面積が0.05%以上の空隙を対象としている。
さらにまた、触媒層の断面を電子顕微鏡で観察した際、触媒層の端縁部に、一部が欠けた空隙が存在する場合がある。このような一部が欠けた空隙も、本発明が規定する空隙に含まれるものとする。よって、例えば上記の「全空隙」にも含まれる。
【0025】
上記関係式(1)の「L/2/(πS)
1/2」は、その値が1に近い程、円形又は球形度に近いことを示しており、その値が2以上であるということは、非円形度が高い、言い換えれば、空隙の周囲に凹凸があることを意味している。このように空隙の周囲に凹凸があると、空隙の内周面に当たったガスが拡散及び混合するため、触媒層におけるガスの拡散性及び混合性を高めることができる。
かかる観点から、本触媒層は、上記関係式(1)において、「L/2/(πS)
1/2」の値が2以上である空隙が、全空隙のうちの50個数%以上を占めることが好ましく、中でも50個数%以上或いは70個数%以下、その中で特に50個数%以上或いは60個数%以下を占めるのがさらに好ましい。
【0026】
他方、空隙の大きさに関しては、その空隙断面積において、真円と仮定して求めた平均空隙半径が10μm〜20μmであるのが好ましい。
この際、本触媒層の空隙断面積は形状が不定形であるため、空隙を真円と仮定して平均空隙半径を算出するものである。
【0027】
本触媒層の空隙断面積における平均空隙半径が10μm〜20μmであるということは、平均空隙径が大きいことを意味している。当該平均空隙半径が10μm以上であれば、ガスの主要な流通路が確保されるばかりか、ガス拡散の支流となる空隙も確保することができるため、触媒層深層部へのガスの拡散性を高めることができる。また、当該平均空隙半径が20μm以下であれば、触媒反応場を稼ぐ小さな空隙を確保することができるため浄化性能を高めることができる。
よって、このような観点から、真円と仮定して求めた平均空隙半径は12μm〜16μmであることが好ましく、中でも14μm以上或いは16μm以下であるのが特に好ましい。
【0028】
本触媒層内の空隙の形状と大きさを上記のように調製するためには、例えば、平均粒径の比率が2.0以上である2種類の無機多孔質粒子粉末を使用してスラリーを調製すると共に、このスラリーの粘度を極めて高くしてコートし、速乾する方法を挙げることができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0029】
(大きな空隙の存在割合)
本触媒層においては、1.0×10
4μm
2の触媒層断面積当たり、1.96×10
3μm
2以上の断面積を有する空隙が2.0個以上存在することが好ましい。
【0030】
断面積が1.96×10
3μm
2以上の空隙とは、真円形状の空隙に換算すると、半径25μm以上の断面積の空隙に相当する大きな空隙である。そのような大きな空隙が、1.0×10
4μm
2の触媒層断面積当たり2.0個以上存在すると、大きな空隙が連通してガスの主要な流通路がさらに拡大することになり、ガスの拡散性をさらに高めることができ、これにより、排ガス成分と触媒成分の接触性が向上し、貴金属が有効に利用されるため浄化能をより一層向上させることができる。
かかる観点から、1.0×10
4μm
2の触媒層断面積当たり、1.96×10
3μm
2以上の断面積を有する空隙が2.0個以上、中でも2.3個以上、その中でも2.5個以上存在することが特に好ましい。
【0031】
このように、1.0×10
4μm
2の触媒層断面積当たり、1.96×10
3μm
2以上の断面積を有する空隙を2.0個以上存在させるようにするには、例えば、平均粒径の比率が2.0以上、特に好ましくは3.5以上である2種類の無機多孔質粒子粉末を使用してスラリーを調製すると共に、このスラリーの粘度を極めて高くしてコートし、速乾する方法を挙げることができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0032】
(本触媒層の厚さ)
本触媒層は、層形成および剥離耐性の観点から、その平均厚さが10μm〜500μmであるのが好ましく、中でも50μm以上或いは300μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
(無機多孔質粒子)
本触媒層は、粒度の異なる2種類以上の無機多孔質粒子を含んでいる。
この際、本触媒層内に上記のような空隙を形成するためには、一方の無機多孔質粒子の平均粒径に対し、他方の無機多孔質粒子の平均粒径が2倍以上であるのが好ましく、中でも3倍以上或いは6倍以下、その中でも4倍以上或いは5倍以下であるのがさらに好ましい。
【0034】
本触媒層を構成する無機多孔質粒子としては、例えばシリカ、アルミナおよびチタニア化合物から成る群から選択される化合物の多孔質粒子、より具体的には、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミノ−シリケート類、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミアおよびアルミナ−セリアから選択される化合物からなる多孔質粒子を挙げることができる。
【0035】
このうちアルミナとしては、比表面積が50m
2/gより大きなアルミナ、例えばγ,δ,θ,αアルミナを好適に使用することができる。中でも、γ、δもしくはθアルミナを用いるのが好ましい。なお、アルミナについては、耐熱性を上げるため、微量のLaを含むこともできる。
上記アルミナの格子をアルカリ土類金属酸化物、二酸化珪素、二酸化ジルコニウム又は希土類の酸化物によって予め安定化させたものも好ましい。
【0036】
また、無機多孔質粒子として、OSC材、すなわち、酸素ストレージ能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する助触媒(OSC材)を含んでいてもよい。
かかるOSC材としては、例えばセリウム化合物、ジルコニウム化合物、セリア・ジルコニア複合酸化物などを挙げることができる。
【0037】
なお、粒度の異なる2種類以上の無機多孔質粒子は、同じ材質からなる2種類以上の無機多孔質粒子であってもよいし、異なる材質からなる2種類以上の無機多孔質粒子であってもよい。
中でも、大きな粒径の無機多孔質粒子として好ましいのは、シリカ、アルミナを含む粒子などであり、特にシリカ、アルミナ粒子が好ましい。小さな粒径の無機多孔質粒子として好ましいのは、セリア、ジルコニアを含むOSC材粒子であり、特にセリア、ジルコニア粒子が好ましい。
好ましい一例としては、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により求められるD50が15μm〜40μmである粒子粉末と、該D50が1μm〜10μmである複合酸化物粒子粉末とからなり、アルミナ粒子粉末のD50がセリア・ジルコニア複合酸化物粒子粉末のD50よりも2倍以上大きい、中でも3倍以上大きい2種類の無機多孔質粒子の組み合わせを挙げることができる。
【0038】
(触媒活性成分)
本触媒層が含有する触媒活性成分、すなわち触媒活性を示す金属としては、例えばパラジウム、白金、ロジウム、金、銀、ルテニウム、イリジウム、ニッケル、セリウム、コバルト、銅、鉄、マンガン、オスミウム、ストロンチウム等の金属を挙げることができる。
中でも、プラチナ、ロジウム、パラジウムを含むのが好ましい。
【0039】
本触媒層における触媒活性成分の含有量は、本触媒層の0.1〜10質量%であるのが好ましく、中でも0.1質量%以上或いは7質量%以下であるのがより一層好ましく、その中でも0.1質量%以上或いは5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0040】
(安定剤及びその他の成分)
本触媒層は、安定剤、バインダ−及びその他の成分を含むことができる。
【0041】
安定剤としては、例えばアルカリ土類金属やアルカリ金属を挙げることができる。中でも、マグネシウム、バリウム、ホウ素、トリウム、ハフニウム、ケイ素、カルシウムおよびストロンチウムから成る群から選択される金属のうちの一種又は二種以上を選択可能である。その中でも、PdOxが還元される温度が一番高い、つまり還元されにくいという観点から、バリウムが好ましい。
また、バインダ−成分など、公知の添加成分を含んでいてもよい。
バインダ−成分としては、無機系バインダ−、例えばアルミナゾル等の水溶性溶液を使用することができる。
【0042】
<基材>
本触媒に用いる基材の材質としては、セラミックス等の耐火性材料や金属材料を挙げることができる。
セラミック製基材の材質としては、耐火性セラミック材料、例えばコージライト、コージライト−アルファアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルファアルミナおよびアルミノシリケート類などを挙げることができる。
金属製基材の材質としては、耐火性金属、例えばステンレス鋼または鉄を基とする他の適切な耐食性合金などを挙げることができる。
【0043】
基材の形状は、ハニカム状、ペレット状、球状を挙げることができる。
【0044】
ハニカム材料としては、例えばセラミックス等のコージェライト質のものを用いることができる。また、フェライト系ステンレス等の金属材料からなるハニカムを用いることもできる。
ハニカム形状の基材を用いる場合、例えば基材内部を流体が流通するように、基材内部に平行で微細な気体流通路、すなわちチャンネルを多数有するモノリス型基材を使用することができる。この際、モノリス型基材の各チャンネル内壁表面に、触媒組成物をウォッシュコートなどによってコートして触媒層を形成することができる。
【0045】
<製法>
本触媒を製造する方法の一例として、粒径が異なる2種類の無機多孔質粒子粉末を使用してスラリーを調製すると共に、このスラリーの粘度を極めて高くしてコートし、速乾する方法を挙げることができる。
この際、粒径が異なる2種類の無機多孔質粒子粉末としては、平均粒径の比率が2.0以上であるのが好ましく、中でも3.5以上、その中でも4.0以上であるのがさらに好ましい。例えば、セリア−ジルコニア粒子粉末と、セリア−ジルコニア粒子粉末に対して平均粒径が2倍以上のアルミナ粒子粉末とを用いることができる。
【0046】
具体的には、平均粒径が異なる2種類の無機多孔質粒子粉末と、触媒活性成分と、必要に応じてOSC材、安定化材、バインダ−及び水などとを混合及び撹拌してスラリーを調製し、得られたスラリーを、例えばセラミックハニカム体などの基材にウオッシュコートし、これを焼成して、基材表面に本触媒層を形成する方法などを挙げることができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0047】
この際、空隙を非円形かつ大きくする観点から、スラリー粘度は5,000〜40,000cp、中でも5,000cp以上或いは35,000cp以下、その中でも5,000cp以上或いは30,000cp以下に調整するのが好ましい。
【0048】
また、スラリーをコートした後に速乾する方法としては、空隙内に熱風が通風するように、100〜200℃程度の熱風をコート面に直接当てて、水分を除去しながら速く乾かすようにするのが好ましい。
【0049】
ただし、本触媒を製造するための方法は公知のあらゆる方法を採用することが可能であり、上記例に限定するものではない。
【0050】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0052】
<実施例1>
セリア−ジルコニア粉末(D50:7.9μm、表には「OSC」と示す)およびLa添加アルミナ粉末(D50:18.1μm、表には「Al
2O
3」と示す)を、順次硝酸Pd水溶液に添加して所定時間撹拌した後、バインダ−成分を添加し、さらに撹拌することで粘度2.2×10
4cpのスラリーを得た。
φ25mm×L30mm(600セル)、担体容積0.015Lのセラミックハニカム基材に、上記で得たスラリーを300g/L塗布し、過剰なスラリーを吹き払った後、150℃の熱風がスラリー塗付面に直接当たるようにして5分間乾燥させ、次に600℃で3時間焼成して活性評価用の排ガス浄化触媒(サンプル)を得た。
なお、スラリー中の各種成分は、セリア−ジルコニア粉末60.0質量部、La添加アルミナ29.5質量部、バインダ−10.0質量部とし、Pd0.5質量部であった。
この際、触媒層の平均厚さは112μmであった。
【0053】
<実施例2、3>
表1に示すように、La添加アルミナ粉末のD50と、スラリー粘度とを変更した以外は、実施例1と同様に活性評価用の排ガス浄化触媒(サンプル)を得た。
この際、各触媒層の平均厚さは、実施例2が126μm、実施例3が129μmであった。
【0054】
<比較例1>
表1のセリア−ジルコニア粉末、上記La添加アルミナ粉末および焼失材料としての市販の樹脂粒子(平均粒径:20μm)を、順次硝酸Pd水溶液に添加した以外、実施例1と同様に活性評価用の排ガス浄化触媒(サンプル)を得た。
この際、触媒層の平均厚さは130μmであった。
【0055】
<比較例2>
上記セリア−ジルコニア粉末、上記La添加アルミナ粉末および焼失材料としての市販の樹脂粒子(平均粒径:50μm)を、順次硝酸Pd水溶液に添加した以外、実施例1と同様に活性評価用の排ガス浄化触媒(サンプル)を得た。
この際、触媒層の平均厚さは150μmであった。
【0056】
<比較例3>
セリア−ジルコニア粉末(D50:7.9μm、表には「OSC」と示す)およびLa添加アルミナ粉末(D50:8.1μm、表には「Al
2O
3」と示す)を、順次硝酸Pd水溶液に添加して所定時間撹拌した後、バインダ−成分を添加し、さらに撹拌することで粘度1.7×10
4cpのスラリーを得た。
φ25mm×L30mm(600セル)、担体容積0.015Lのセラミックハニカム基材に、上記で得たスラリーを300g/L塗布し、過剰なスラリーを吹き払った後、熱風乾燥を用いて150℃で5分間乾燥させ、次に600℃で3時間焼成して活性評価用の排ガス浄化触媒(サンプル)を得た。
なお、スラリー中の各種成分は、セリア−ジルコニア粉末60.0質量部、La添加アルミナ29.5質量部、バインダ−10.0質量部とし、Pd0.5質量部であった。
また、触媒層の平均厚さは101μmであった。
【0057】
<比較例4>
スラリー粘度を4.5×10
3cpに調整した以外、実施例1と同様に活性評価用の排ガス浄化触媒(サンプル)を得た。
【0058】
<比較例5>
基材にスラリーを塗布して過剰なスラリーを吹き払った後に、熱風乾燥(速乾)させなかった以外は、実施例1と同様に行った。
【0059】
<浄化能評価法>
ハニカム触媒のL/O評価は、CO、CO
2、C
3H
6、O
2、NO、H
2OおよびN
2バランスから成る完全燃焼を想定した模擬排ガスを、SV=200,000h
‐1となるように、上記セラミックハニカム触媒に流通させて、100−500℃における出口ガス成分をCO/HC/NO分析計(堀場製作所製MOTOR EXHAUST GAS ANALYZER MEXA9100)を用いて測定した。
【0060】
また、ハニカム触媒のL/O評価は、模擬排ガス耐久後の触媒について性能比較を行った。
模擬排ガス耐久処理は、1,000℃に保持した電気炉に触媒をセットし、C
3H
6若しくはCOとO
2(完全燃焼比)の混合ガス(50s)及びAir(50s)を周期させながら模擬排ガスを流通させて50時間処理した。
【0061】
<画像解析方法>
ハニカム触媒担体から試験片を切り出し、試験片を硬化性樹脂に埋没させた。樹脂が硬化した後、触媒層と基材断面をSEM観察できるように、断面研磨して平滑化し、SEM(日立ハイテクノロジーズ、TM3000形Miniscope)を用いて500倍の倍率で触媒層断面を観察した。
【0062】
上記方法にて収集したSEM像を、IMAGE−PRO(登録商標)PLUS(Media Cybernetics,Inc.)に取り込み、下記手順に従い画像解析を実施した。
1)自由曲線AOI(Area of Interest:対象領域)にて解析対象の触媒層部を選択した。
2)カウント/サイズ(自動測定)にて測定項目として周囲長、面積、面積比を選択した。
3)セル開口部の色を選択し、同様の色味を示す触媒層内の空隙部を抽出した。
4)面積比のうち、0.05%以上の空隙を解析対象として、上記(式1):L/2/(πS)
1/2を適用した。このとき、空隙断面積(S)と空隙断面外周長(L)はそれぞれ解析時の空隙面積、空隙周囲長とした。
【0063】
なお、表1において、「式1≧2を満たす空隙の割合[%]」は、触媒層における上記面積比0.05%以上の全空隙のうち、式1:L/2/(πS)
1/2 ≧2の条件を満たす空隙の個数%を示している。
また、「平均空隙半径[μm]」は、触媒層の空隙断面積において、空隙を真円と仮定して求めた平均空隙半径の値(μm)を示している。
また、「半径25μm以上の空隙数」は、1.0×10
4μm
2の触媒層断面積当たりの、1.96×10
3μm
2以上の断面積を有する空隙の個数を示している。
【0064】
【表1】
【0065】
(考察)
「L/2/(πS)
1/2」≧2を満たす空隙の割合を50個数%以上とすることにより、空隙の内周面の凹凸に当たったガスがより拡散及び混合するため、触媒層におけるガスの拡散性及び混合性を高めることができた結果、CO、HC、NOxのη400、NOxのMax Conv.を向上させることができた(比較例2と実施例1-3)。
【0066】
さらに、真円と仮定して求めた平均空隙径を10μm以上とすることにより、特にNOxのη400の浄化性能が著しく向上させることができた(比較例3と実施例1)。
また、半径25μm以上の空隙の数を2個以上とすることにより、COのη―400を76.0%以上に、NOx MAX Conv.を88%以上に改善できた(実施例1と実施例2,3)。
またさらに、真円と仮定して求めた平均空隙径を14μm以上とすることにより、COのη―400を77.0%以上に、HCのη―400を90.0%以上に、NOx MAX Conv.を89.0%以上に改善できた(実施例2と実施例3)。
【0067】
なお、本実施例は、触媒活性成分としてPdのみを含んだものであるが、ガス拡散性向上による性能向上は、どのような活性種を含んでいても同様の効果を期待することができる。