(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サイズ融通性のあるカップ部を有する衣類が、ブラジャー、ロングブラ、スリーインワン、ビスチェ、ボディスーツ、ブラスリップ、ブラキャミソール、カップ付インナー又はボディーシェイパーであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類。
左右のカップ部間に胸当て布を有し、前記胸当て布の下縁部は土台部分の上縁部に縫着され、前記胸当て布の左上端部と右上端部が取り外し可能に前記カップ部の上端部に取り付けられていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類。
【背景技術】
【0002】
従来、胸に相当する部位にカップ部を有する衣類は、女性にとって女性の美しさを表すため、また乳房の下垂を防止するために不可欠である。市場の既成の下着製品においては、通常、アンダーバストとトップとの差であるカップサイズ(AA、A、B、C、D、E、F、G)とアンダーバストサイズ(65cmから5cm刻み)とを組み合わせたサイズ規格の、様々なサイズのカップを有する衣類(例えば、ブラジャー)が提供されている。
【0003】
上記のように細かくサイズ分けがされていても、個々人の乳房に完全にフィットした、いわゆる、「ジャストサイズ」の衣類を着用者が選ぶことは至難の業である。また、上記のように細かくサイズ分けがされていると、着用者は、月経によるバストサイズの変化や、妊娠時の体形の変化や体重の増減に伴うバストの増減に、それまでのカップサイズでは対応できなくなって違和感を生じることがあり、その結果、新たな衣類を購入することが必要となる。加えて、製造者や販売者は、多数のサイズの必要性に対応して、サイズ、色、柄等多品種の在庫を保有しておくことが必要となる弊害があった。
【0004】
充分ではないものの、幾つかのカップサイズをカバーするカップ部を有する衣類は提案されており、例えば、特許文献1記載の発明は、カップ体を伸縮自在とし、多数の品揃えを必要としないで着用者の個人差にもとづく着用心地を快適にしたブラジャーを提供することを目的としている。
特許文献1記載の発明は、帯体の周縁部とカップ体の周縁部との間に胸の中心部方向の一端を幅狭に形成するとともに脇腹方向に至る他端を幅広になるように形成した伸縮自在調節部材を介装させている。
さらに、該伸縮自在調節部材を被覆するように形成された装飾押圧部材の下端縁を帯体の上側端縁に連設し、更に該装飾押圧部材の上端部に肩紐を連接したことを特徴としている。
【0005】
特許文献2記載の発明は、バストの補整効果を有しながら、幅広いカップサイズのバストに対応可能で、バストの動きにも追随するとともに、部材の種類や加工工程を多く必要とせず、かつ外観性にも優れたカップ部を有する衣類を提供することを目的としている。 具体的には特許文献2記載の発明は、左右のカップ部と該カップ部を保持する土台部を有し、カップ部は伸縮性素材からなる表カップ部と、伸縮性の少ない素材からなるカップ裏打部から構成されている。
表カップ部及びカップ裏打部は、それぞれの前側上端縁部から脇側上端縁部に亘る上側周縁部で互いに接合されるとともに、表カップ部はその下側周縁部全てがカップ部下側周縁部に接合され、カップ裏打部の下側周縁部の内、上カップ相当部の前側端縁部と脇側端縁部のみがカップ部下側周縁部に接合されている。
【0006】
特許文献3記載の発明は、ワイヤーの入っているカップ部を有する衣類において、1つのカップのサイズでより多種のブラジャーサイズの体型の着用者に対応することが可能なサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類を提供することを目的としている。
特許文献3記載の発明は、カップ体とワイヤー部の間に伸縮性部材を配することでカップ体の高さの調節を可能にし、伸縮性カップ表面部材でカップ体及び伸縮性部材を外面から覆うことでワイヤー部から乳房を持ち上げ、カップ部及び伸縮性部材を乳房にフィットさせることができ、伸縮した部分や伸縮性部材とカップ体の連結部を隠すので外観が優れている。伸縮性カップ表面部材として薄手の布地を使用しているため通気性も良い。
さらに、特許文献3記載の発明は、ワイヤー部下縁に沿い胸中央部に向かって先端が延出する左右の土台部分を備え、右土台部分先端は左ワイヤー部に縫着され、左土台部分先端は左ワイヤー部に縫着され、且つ左右土台部分の上端は胸中央部の上辺で互いに縫着されており、左右土台部分の下端は互いに遊離して左右のカップ部間にあることで、着用者の体型に合わせて土台部分が調整される。
【0007】
しかし、特許文献1のブラジャーは、伸縮自在調節部材の伸縮に際して乳房を目隠し的に装飾的に被覆し、かつ寄せて上げることを目的とする装飾押圧部材を有しており、その部分が厚くなり通気性に欠け、また、上着(以下、「アウター」ともいう)に響くという問題がある。
特許文献2に記載のカップ部を有する衣類は、カップ裏打部は、その下側周縁部の内、上カップ相当部の脇側端縁部と前側端縁部のみがカップ部下側周縁部に接合されており、下カップ相当部の下側周縁部はカップ部下側周縁部に接合されず、遊離した状態となっているため、カップを乳房に上から被せるような構造となっており、その下側周縁部全てがカップ部下側周縁部に接合されている表カップ部による乳房の引き上げ効果を低減したり、カップ裏打部の遊離している部分が表カップ部の引き揚げる力によって肌に密着した時違和感を感じ得るという問題がある。
特許文献3記載のカップ部を有する衣類は、ワイヤー部を有するためアンダーバストが締め付けられ、着用者の体型によっては長時間着用することが困難であるという問題点を有する。また、伸縮性素材がカップ部とワイヤー部の間にのみ配され、カップ部の脇側や胸中央側や上端部には配されていないため、対応できる着用者の体型に限界がありフィット感に欠けるという問題点を有する。さらに、ワイヤー部を有することでバストを収めるカップ部の横幅が狭く固定されてしまい、バストの横幅の変化が大きいバストに対応できないという問題点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の問題を解決すべく、カップ部を有する衣類において、締め付け感が少なく長時間快適に着用することが可能であり、ワイヤー部を備えていなくてもバストを持ち上げる効果が高く、ワイヤー部がないことでバストを収めるカップ部の横幅をフレキシブルに広くとることができるため、バストの横幅の変化が大きくても対応でき、1つのカップのサイズでより多様な体型(肩幅、胸幅、胸の厚み)や多種のブラジャーサイズを有する着用者に対応することが可能で、その結果、製造者や販売者の在庫を少なくすることが可能な、サイズ融通性のあるカップ部を有する衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、左右のカップ部と土台部分と左右の肩紐部分からなるサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類であって、前記左右のカップ部は、非伸縮性のカップ体と、前記カップ
部の下縁部
と胸中央側周縁部及び/又は脇側周縁部に縫着されている伸縮性部材と、前記カップ体全体及び前記伸縮性部材全体を外面から覆うことで前記左右のカップ部を二重構造と
しその上端部が肩紐部分に縫着され非伸縮性のカップ体の上縁部には縫着されず遊離している伸縮性カップ体表面部材からなり、前記土台部分は、前記左右のカップ部のアンダーバスト方向で配置され伸縮性素材からなり、前記伸縮性カップ体表面部材の下縁部全体及び前記伸縮性部材の下縁部全体が前記土台部分の上縁部に縫着され、前記左右の肩紐部分は、前記伸縮性カップ体表面部材の肩
側で連結され、ワイヤー部を有さないことを特徴とする、サイズ融通性のあるカップ部を有する衣類に関する。
【0012】
本発明の請求項
2に係る発明は、前記土台部分が左土台部分及び右土台部分からなり、
前記右土台部分の胸中央側部分の上端は前記左土台部分の胸中央側部分の上縁部で、前記左土台部分の胸中央側部分の上端は前記右土台部分の胸中央側部分の上縁部で互いに縫着されており、前記右土台部分と前記左土台部分の下端は互いに遊離し
ていることを特徴とする、請求項
1に記載のサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類に関する。
【0013】
本発明の請求項
3に係る発明は、前記左右のカップ部の脇側周縁部が、前記伸縮性カップ体表面部材と縫着されていることを特徴とする、請求項1
又は2記載のサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類に関する。
【0014】
本発明の請求項
4に係る発明は、前記サイズ融通性のあるカップ部を有する衣類が、ブラジャー、ロングブラ、スリーインワン、ビスチェ、ボディスーツ、ブラスリップ、ブラキャミソール、カップ付インナー又はボディーシェイパーであることを特徴とする、請求項1乃至
3のいずれかに記載のサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類に関する。
【0015】
本発明の請求項
5に係る発明は、左右のカップ部間に胸当て布を有し、前記胸当て布の下縁部は土台部分の上縁部に縫着され、前記胸当て布の左上端部と右上端部が取り外し可能に前記カップ部の上端部に取り付けられていることを特徴とする、請求項1乃至
4のいずれかに記載のサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類に関する。
【0016】
なお、本請求項1−
5において、衣類やカップ部に関して使用される「内面」は、カップ部の肌に触れる側の面を意味し、「外面」は、カップ部の肌に触れない側を意味する。
カップ部や当て布等に関して使用される「右」または「左」は、本発明のカップ部を有する衣類を内面側から見て、向かって右を「右」、または向かって左を「左」とする。
本請求項1−
5において、「バスト」と「乳房」は互換的に使用され得る。
本明細書において、「胸中央」又は「胸中央部」とは着用者の左右の乳房の間の領域、すなわち谷間を意味する。
本請求項1−
5において、「脇側」とは着用者の脇方向の領域を意味する。
本請求項1−
5において、「下縁部」とは腹側の外周に沿って、ある特定の幅を持った帯状の領域を意味する。
本請求項1−
5において、「上縁部」とは
肩側の外周に沿って、ある特定の幅を持った帯状の領域を意味する。
本請求項1−
5において、「周縁部」とは外周に沿って、ある特定の幅を持った帯状の領域を意味する。
本請求項1−
5において、「上端部」とは
肩側の端部を含む、ある特定の領域を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係る衣類によれば、カップ
部の下縁
部だけではなく
胸中央側周縁部及び/又は脇側周縁部にも伸縮性部材を設けたことにより、乳房の下部(トップバストからアンダーバストまでの領域)だけでなく、乳房の脇側や胸中央側等乳房全体のボリュームに合わせて伸縮性部材が伸縮し、カップの高さの調節が可能となる。
また、上端部が肩紐部分に縫合され、下縁部全体が土台部分の上縁部に縫着され、伸縮性素材からなる伸縮性カップ表面部材が、土台部分から乳房を伸縮しながら持ち上げ、カップ体と伸縮性部材をより乳房にフィットするように調整することが可能となる。これらの調整によって、1つのカップサイズで、より幅広いサイズの乳房に対応することが可能となる。
伸縮性カップ表面部材は、伸縮性部材およびカップ体を外面から覆い、上へ持ち上げるため、伸縮性部材が必要以上に伸びることを防止することが可能となる。また、伸縮性カップ表面部材は、伸縮性部材およびカップ体を外面から覆うことで左右のカップ部は2枚の布からなる二重構造となり、伸縮性部材の伸縮した部分や伸縮性部材とカップ体の連接部を隠すので、本発明に係る衣類の外観は通常のブラジャーとほとんど変わらず、通気性も良い。さらに、伸縮性カップ表面部材は、カップ体の上縁部と縫着されず遊離しており、かつカップ体を全体的に上に持ち上げる構成となっているので、カップ体によって上に持ち上げた乳房がカップ体の上縁部から溢れてできることがある胸の段差をなだらかにして無くすことが可能となる。
土台部分は伸縮性素材からなるので、カップ部が調整される際に、カップ部を土台部分から乳房に合わせて調節することが容易となり、さらなる融通性を与えることが可能となる。
以上のような調節が可能となる結果、1つのカップサイズで、より幅広いサイズの乳房に対応することが可能となるので、製造者や販売者の在庫を減らすことが可能となる。
ワイヤーを有さないことで、着用者のアンダーバストが締め付けられないため着心地がよい。妊婦のように腹部の大きさが急激に変化する着用者であっても着用することができる。ワイヤー部を有さないため、バストを収めるカップ部の横幅を、脇布の縫着位置近傍にまでフレキシブルに広げることができるため、妊婦のようにバストが脇側から大きくなる等横幅が広くなったものでも狭くなったものでも対応できる。
【0019】
本発明の請求項
2に係る衣類によれば、左右の土台部分は、胸中央部でクロスしており、
前記右土台部分の胸中央側部分の上端は前記左土台部分の胸中央側部分の上縁部で、前記左土台部分の胸中央側部分の上端は前記右土台部分の胸中央側部分の上縁部で互いに縫着されており、右土台部分と左土台部分の下端は互いに遊離しているので、上記のようにカップ部が調節される際に、土台部分から乳房に合わせて調節することが可能となり、より融通性を与えることが可能となる。
【0020】
本発明の請求項
3に係る衣類によれば、左右のカップ部の脇側周縁部が縫着されているので、カップ体をより安定させることが可能となる。
【0021】
本発明の請求項
4に係る衣類によれば、着用者のニーズに応じた、様々なサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類を提供することが可能となる。
【0022】
本発明の請求項
5に係る衣類によれば、左右のカップ部間に胸当て布を有し、胸当て布の左上角部と右上角部が取り外し可能にカップの上端部に取り付けられていることによって、本発明のカップ部を有する衣類を着用したまま授乳を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類の好適な実施形態について、ブラジャー及びブラキャミソールを例に、具体的な実施の形態に基づいて図面を参照しながら説明するが、本発明のサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類は、カップ部を有する衣類であれば特に限定されず、ブラジャーの他、ロングブラ、スリーインワン、ビスチェ、ボディスーツ、ブラスリップ、カップ付インナー、またはボディシェイパーであってもよい。
【0025】
本明細書において、衣類やカップ部に関して使用される「内面」とは、肌に触れる側の面を言い、「外面」とはカップ部の肌に触れない側を言う。
本明細書において、「右」または「左」は、本発明のカップ部を有する衣類を内面側から見て、向かって右を「右」、または向かって左を「左」とする。
本明細書において、「バスト」と「乳房」は互換的に使用され得る。
本明細書において、「胸中央」又は「胸中央部」とは着用者の左右の乳房の間の領域、すなわち谷間を意味する。
本明細書において、「脇側」とは着用者の脇方向の領域を意味する。
本明細書において、「下縁部」とは腹側の外周に沿って、ある特定の幅を持った帯状の領域を意味する。
本明細書において、「上縁部」とは肩側の外周に沿って、ある特定の幅を持った帯状の領域を意味する。
本明細書において、「周縁部」とは外周に沿って、ある特定の幅を持った帯状の領域を意味する。
本明細書において、「上端部」とは肩
側の端部を含む、ある特定の領域を意味する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るサイズ融通性のあるカップ部を有するブラジャーの(A)斜視図、(B)正面図及び(C)裏面図であり、
図2は、
図1のサイズ融通性のあるカップ部を有する円型ブラジャーのA−A線断面図であり、
図3は、
図1のサイズ融通性のあるカップ部を有する円型ブラジャーを着用した際のA−A線断面図であり、着用者のサイズの変化に伴うブラジャーの変化を示す図である。
なお、図面において左右同一の部材は符号を一部割愛している。
図1に示す実施形態においては、連結部(6)や調節部(9)が備えられているが、これらは好適な実施の形態に過ぎず、本発明のサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類は、連結部(6)や調節部(9)のいずれか又は両方が備えられていない形態であってもよい。
連結部(6)としては、例えばホック、ピン、スナップ、面ファスナー、紐、ボタンとボタン穴等が挙げられるが、当業者に自明のものが当然採用される。
調節部(9)としては、例えば紐、エイト環、丸環、ゼット環等が挙げられるが、特に限定されない。
【0027】
本発明の1つの実施形態に係るサイズ融通性のある、その下縁部が略U字状のカップ部を有する円型ブラジャー(1)は、左右の伸縮性カップ表面部材(2)、左右の肩紐部分(3)、左右の脇布(4)、左右の土台部分(5)、左右の連結部(6)、複数の伸縮性部材(7)、左右のカップ体(8)および左右の調節部(9)からなる。
【0028】
肩紐部分(3)、脇布(4)、土台部分(5)及び連結部(6)の形状および素材は、特に限定されず、一般的なブラジャーの一般的な形状および素材、例えばストラップ、紐、バンド、布地(例えばストレッチ素材の布地)が好適に用いられる。
【0029】
伸縮性カップ表面部材(2)は、伸縮性素材からなり、伸縮性素材としては、限定されないが、例えば、ストレッチレースやストレッチチュール、ベア天竺、ツーウェイトリコット、パワーネットが挙げられる。伸縮性カップ表面部材(2)は、その下縁部(2b)の全体が土台部分の上縁部(5a)と縫合されており、その上端部(2a)は、肩紐部分(3)と縫合され連接されている。
【0030】
カップ体(8)は、通常のカップ部に用いられる素材からなり、限定されないが、例えば、不織布、Wラッセル、ウレタンなど非伸縮性の素材からなる。カップ体(8)は、伸縮性カップ表面部材(2)の内面にあって、その下縁部(8b)及び周縁部(8c,d)のいずれか又はその両方の外側に伸縮性部材(7)が縫合されており、その上端部(8a)は、伸縮性カップ表面部材(2)と縫合されず遊離している。
カップ部(10)はカップ体(8)、伸縮性部材(7)及び伸縮性カップ表面部材(2)から構成される。好ましくは、カップ部(10)は、その脇側周縁部(10c)が伸縮性カップ表面部材(2)と縫合される。伸縮性部材(7)及び伸縮性カップ表面部材(2)の伸縮度は同じであっても、異なるものであっても良い。
カップ部の横幅は、脇布の縫着位置近傍にまで伸びていることが好ましい。これにより、ワイヤー部を備えたカップ部を有する衣類と比較して、横幅の変化が大きいバストにも対応できる。
図1に示す実施形態において、カップ体は、3分の2カップであるが、少なくとも乳房の下方から半分以上を覆うサイズのカップであればよく、フルカップであってもよい。
【0031】
伸縮性部材(7)は、タテヨコに伸びる素材からなり、その素材としては、限定されないが、ストレッチチュール、ベア天竺、ツーウェイトリコット、パワーネットなどが挙げられる。
図1に示すように、カップ体の下縁部(8b)と連結している伸縮性部材(7)は、カップ体(8)の形状に合致した略U字の形状で、その下縁部(7b)は、土台部分(5)と縫合され連接されており、その上縁部(7a)は、カップ体の下縁部(8b)と縫合され連接されている。
図1に示すようにカップ体の胸中央側周縁部(8d)と連結している伸縮性部材(7)の形状は、カップ体(8)の形状に合致した緩やかな曲線状を呈し、その下縁部(7b)はカップ体の胸中央側の周縁部(8d)と縫合されている。
伸縮性部材(7)の幅は、好ましくは、0.4〜1.0cmであり、より好ましくは、0.5cm〜0.8cmである。伸縮性部材(7)の幅は、図示されているように不均一なものであっても良いが、均一であってもよい。
【0032】
図2に示すように、本発明に係るサイズ融通性のあるカップ部を有する円型ブラジャー(1)は、肌側から順に伸縮性部材(7)、カップ体(8)、伸縮性カップ表面部材(2)、土台部分(5)が配され、そのカップ体(8)と伸縮性部材(7)の外側を伸縮性カップ表面部材(2)が覆う構造となっている。伸縮性カップ表面部材(2)の上端部は肩紐部分(3)の一端に、例えばマタニティーフックによって連接されているものであっても、直接縫着されているものであっても良い。
カップ体の上端部(8a)は伸縮性部材(7)を介して肩紐部分(3)の一端に連接されている。
図2ではカップ体(8)は上下2つの伸縮性部材(7)の周縁部の上に重なり合うように縫着されている。これにより、大きなバストサイズを有する着用者であれば、着用者の乳房に合わせて伸縮性部材(7)が伸びてカップ体(8)の高さが高くなる。反対に小さなバストサイズを有する着用者であれば伸縮性部材(7)が伸びないためカップ体(8)の高さは低いままとなる。
また、
図1に示すように伸縮性カップ表面部材(2)及び伸縮性部材(7)の下縁部にバイアステープ(11)が縫着されていても良い。バイアステープ(11)がカップ体の下縁部(8b)に縫着されている伸縮性部材(7)と土台部(5)の間に縫着されていることにより、この伸縮性部材(7)と土台部(5)との縫製(例えばダーツ縫い)を隠すことができるため外観に優れたものとなり、伸縮性部材(7)と土台部(5)との連結を補強することができる。
【0033】
肩紐部分(3)には、好ましくは、肩紐の長さとカップ部の高さを調節するための調節部(9)が備えられている。この調節部(9)は、例えば紐やエイト環等通常のブラジャーの肩紐の長さを調節することのできる調節部材であれば、特に限定されない。
【0034】
図3に示すように、カップ体(8)と土台部分(5)の間に、伸縮性部材(7)を設けたことにより、乳房のボリュームに合わせて伸縮性部材(7)が伸縮することが可能となる。
さらに、カップ体の胸中央側周縁部(8d)の外側に伸縮性部材(7)を設けたことにより、乳房の下部だけでなく、胸中央部のボリュームに合わせて伸縮性部材が伸縮し、カップの高さの調節が可能となる。また、胸中央側に伸縮性部材(7)を設けたことにより、バストがアンダーバスト側からだけではなく胸中央側からも支えられるため、バストがより安定する。
【0035】
また、上端部(2a)が肩紐部分(3)又は調節部(9)に縫合され連接された、伸縮性素材からなる伸縮性カップ表面部材(2)が、土台部分の上縁部(5a)から乳房を伸縮しながら持ち上げ、カップ体(8)と伸縮性部材(7)をより乳房にフィットするように調整することが可能となる。さらに、肩紐部分(3)に調節部(9)が備えられている場合、調節部(9)を調節することによって、伸縮性カップ表面部材(2)と、その内面にあるカップ体(8)および伸縮性部材(7)をより乳房にフィットするように調整することが可能となる。これらの調整は、左右の乳房各々において行うことができる。
伸縮性カップ表面部材の下縁部(2b)全体が土台部分の上縁部(5a)に縫着されていることで、ワイヤー部を有さずとも乳房を下からしっかり持ち上げる効果を奏する。
好ましくは、カップ部(10)は、その脇側周縁部(10c)が伸縮性カップ表面部材(2)と縫合されていることにより、カップ部(10)に含まれる伸縮性部材(7)をより確実に隠すことができるため、外観に優れたものとなる。また、カップ部(10)をアンダーバストからだけではなく脇側周縁部(10c)からも持ち上げることができるため、カップ部(10)を安定させることができ、美しいバストラインを造形することができる。
好ましくは、カップ部の横幅は脇布の縫着位置近くにまで達する。これによりワイヤーを備えたカップ部を有する衣類と比較して横幅の変化が大きいバストにフレキシブルに対応しやすくなる。
以上のような調整によって、1つのカップサイズで、より幅広いサイズの乳房に対応して、乳房を安定して保持することが可能となる。
【0036】
伸縮性カップ表面部材(2)は、伸縮性部材(7)とカップ体(8)を外面から覆い肩方向へ持ち上げるため、伸縮性部材(7)が必要以上に伸びることを防止することが可能となる。伸縮性カップ表面部材(2)は、伸縮性部材(7)の伸縮した部分や伸縮性部材(7)とカップ体(8)の連接された部分を外面から覆うので、着用時の外観は、通常のブラジャーとほとんど変わらないものとなる。その結果、薄手のアウターを着用する場合においても、通常のブラジャーと同じく、ブラジャーの連接された部分などがアウター越しに分かることなく、アウターに響き難いブラジャーを提供することが可能となる。また、伸縮性部材(7)および伸縮性カップ表面部材(2)は、伸縮性素材からなるので、通気性が良い。さらに、伸縮性カップ表面部材(2)は、カップ体の上端部(8a)と縫着されず遊離しており、かつカップ体(8)を全体的に肩方向に持ち上げる構成となっているので、カップ体(8)によって上に持ち上げた乳房がカップ体の上端部(8a)から溢れてできることがある胸の段差をなだらかにして無くすことが可能となる。
【0037】
上記の調節の結果、1つのカップサイズで、より幅広いサイズの乳房に対応することが可能となるので、製造者や販売者の在庫を減らすことが可能となり、製造者や販売者は、経費削減を実現することが可能となる。
【0038】
図3に示すように、大きめのバストサイズの人が本発明に係るカップ部を有する衣類を着用すると、伸縮性部材(7)が伸張し、着用者のバストの大きさに合わせてカップ体(8)も上方に上がり、カップの高さ(ボリューム)が変化する。
本願発明に係る円型ブラジャー(1)は、
図2に示すようにカップ体の下縁部(8b)に伸縮性部材(7)をつけ、それらの表面を伸縮性カップ表面部材(2)が覆う構造となっているので、伸縮性部材(7)の伸びに合わせて伸縮性カップ表面部材(2)も追従してスムーズに伸張することが可能となる。伸縮性部材(7)及び伸縮性カップ表面部材(2)の伸縮度は同じであっても、異なるものであっても良い。
【0039】
この具体的な実施形態は、不織布やWラッセル、ウレタンを裏打ちしているブラジャーであるが、不織布やWラッセル、ウレタンを裏打ちしていないタイプのブラジャー、いわゆる1枚もののタイプのブラジャーの場合は、裏打ちに綿天竺や綿トリコットなどを付け、その裏打ちに、本発明に係る伸縮性部材(7)を追加することによって、上述の効果を得ることが可能となる。
【0040】
土台部分(5)は、通常のブラジャーのように1枚の伸縮しない素材又は伸縮性素材から形成されていてもよいが、好ましくはストレッチ素材からなる。
図1に示すように、土台部分(5)は、その先端が右のカップ部から左のカップ部の胸中央側の下縁部に延出する右土台部分(5c)と、その先端が左のカップ部から右のカップ部(10)の胸中央側の下縁部に延出する左土台部分(5d)からなり、右土台部分(5c)と左土台部分(5d)は、胸中央部でクロス(交差)している(
図1参照)。右土台部分(5c)と左土台部分(5d)の上端(5c1、5d1)は、胸中央部の上辺で互いに縫合されており、右土台部分(5c)と左土台部分(5d)の下端(5c2、5d2)は互いに遊離している。
図1においては、右土台部分(5c)が左土台部分(5d)より外面に配置されているが、左土台部分(5d)が右土台部分(5c)より外面に配置されてもよい。
【0041】
左右の土台部分(5c、5d)は、胸中央部でクロスして、その下端(5c2、5d2)が互いに遊離しているので、調節部(9)によってカップ部を調節する際に、身幅(L)を左右の土台部分(5c、5d)から乳房に合わせて調節することが可能となり(
図1参照)、土台部分(5)が1枚の素材、または伸縮しない素材からなる場合より融通性を与えることが可能となる。
【0042】
土台部分(5)がストレッチ素材からなる場合、カップ部が調節される際に、カップ部を土台部分(5)から乳房に合わせて調節することがより容易となり、更なる融通性を与えることが可能となる。
【0043】
連結部(6)を備えている場合は、連結部(6)での連結する位置を調節することによって、胸中央部のストレッチ素材の土台部分(5)の幅をより胸幅に合わせて変化させることが可能となり、これによって、カップの身幅(L)の調節をより細かくすることが可能となり、更に融通性を与えることが可能となる。
図1(B)に示すように、連結部(6)は従来のカップ部を有する衣類では2−3つであるホックを4つ以上とすることが好ましい。これにより、アンダーバストや腹部のサイズの変化によりフレキシブルに対応できる。
【0044】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係るサイズ融通性のあるカップ部を有する円型ブラジャーの(A)斜視図、(B)正面図及び(C)裏面図である。破線部分は、外面から見た時は見えない又は見るのが困難な、内側にある部分を表わしている。
この実施形態においては、伸縮性部材(7)はカップ体の下縁部(8b)及び胸中央側周縁部(8d)だけでなく、カップ体の脇側の周縁部(8c)の外側にも縫着されている。すなわち、カップ体(8)はその全周の外側に伸縮性部材(7)が縫着されている。以下に特記しない部分は、実施の形態1と同様である。
【0045】
カップ体(8)は、伸縮性部材(7)をカップ体の脇側周縁部(8c)や上端部(8a)全体を含むカップ体(8)の全周の外側に有することで、着用者の乳房全体の形状に合わせて左右のカップ部を調節することができるため、さらなるサイズ融通性を与えることが可能となる。
【0046】
この実施形態において、土台部分(5)は、実施の形態1と同様に、通常のブラジャーのように1枚の伸縮しない素材又は伸縮性素材から形成されていてもよいが、好ましくはストレッチ素材からなる。土台部分(5)は、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)からなり、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)の上端(5c1、5d1)は、胸中央部の上辺で互いに縫合されており、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)の下端(5c2、5d2)は互いに遊離している。
【0047】
左右の土台部分(5c、5d)は、胸中央部でクロスして、その下端(5c2、5d2)が互いに遊離しているので、調節部(9)によってカップ部を調節する際に、身幅(L)を左右の土台部分(5c、5d)から乳房に合わせて調節することが可能となり(
図5参照)、土台部分(5)が1枚の素材、または伸縮しない素材からなる場合より融通性を与えることが可能となる。
【0048】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係るサイズ融通性のあるカップ部を有する角型ブラジャーの(A)斜視図、(B)正面図及び(C)裏面図である。破線部分は、外面から見た時は見えない又は見るのが困難な、内側にある部分を表わしている。
この実施形態においては、実施形態1とは異なり、角型ブラジャー(12)のカップ体(13)の下縁部(13b)は略U字形ではなく、略直線状であり、カップ部は略四辺形である。これに伴い、カップ体の下縁部(13b)に縫着される伸縮性部材(7)も、カップ体の下縁部(13b)に沿った略直線状のものを使用する。
この実施形態においては、カップ体の下縁部(13b)及び胸中央側周縁部(13d)の外側だけではなく、カップ体の脇側下周縁部(13c2)の外側にも伸縮性部材(7)が縫着されているが、カップ体の下縁部(13b)及び胸中央側の周縁部(13d)の外側だけであっても良い。
カップ体の脇側下周縁部(13c2)の外側に縫着されている伸縮性部材(7)は脇布(4)に直接縫着されている。これにより、ワイヤーを備えたカップ部を有する衣類と比較してカップ部の横幅が脇側に向かって広くなるため、横幅の広いバストにもフレキシブルに対応できる。以下に特記しない部分は、実施の形態1と同様である。
【0049】
カップ体(13)は、伸縮性部材(7)をカップ体の下縁部(13b)及び胸中央側の周縁部(13d)の外側に有することで、着用者の乳房の下部及び胸中央側の形状に合わせて左右のカップ部を調節することができるため、さらなるサイズ融通性を与えることが可能となる。
加えて、伸縮性部材(7)をカップ体の脇側の下周縁部(13c2)の外側に縫着することで、脇側のバストサイズの変化にも対応できるため、さらなるサイズ融通性を与えることが可能となる。
【0050】
この実施形態において、土台部分(5)は、実施の形態1と同様に、通常のブラジャーのように1枚の伸縮しない素材又は伸縮性素材から形成されていてもよいが、好ましくはストレッチ素材からなる。土台部分(5)は、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)からなり、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)の上端(5c1、5d1)は、胸中央部の上辺で互いに縫合されており、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)の下端(5c2、5d2)は互いに遊離している。
【0051】
左右の土台部分(5c、5d)は、胸中央部でクロスして、その下端(5c2、5d2)が互いに遊離しているので、調節部(9)によってカップ部を調節する際に、身幅(L)を左右の土台部分(5c、5d)から乳房に合わせて調節することが可能となり(
図5参照)、土台部分(5)が1枚の素材、または伸縮しない素材からなる場合より融通性を与えることが可能となる。
【0052】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係るサイズ融通性のあるカップ部を有する角型ブラジャーの(A)斜視図、(B)表面図及び(C)裏面図である。破線部分は、外面から見た時は見えない又は見るのが困難な、内側にある部分を表わしている。
この実施形態においては、伸縮性部材(7)はカップ体の下縁部(13b)、胸中央側の周縁部(13d)、脇側の下周縁部(13c2)だけでなく、脇側の上周縁部(13c1)の外側にも縫着されている。すなわち、カップ体(13)はその全周の外側に伸縮性部材(7)が縫着されている。以下に特記しない部分は、実施の形態3と同様である。
【0053】
カップ体(13)は、伸縮性部材(7)をカップ体(13)の脇側の上周縁部(13c1)を含むカップ体(12)の全周の外側に有することで、着用者の乳房全体の形状に合わせて左右のカップ部を調節することができるため、さらなるサイズ融通性を与えることが可能となる。
カップ体の脇側下周縁部(13c2)の外側に縫着されている伸縮性部材(7)と、カップ体の脇側上周縁部(13c1)の外側に縫着されている伸縮性部材(7)とは、
図6に示すように一体であっても良く、別体であっても良い。
【0054】
この実施形態において、土台部分(5)は、実施の形態1と同様に、通常のブラジャーのように1枚の伸縮しない素材又は伸縮性素材から形成されていてもよいが、好ましくはストレッチ素材からなる。土台部分(5)は、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)からなり、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)の上端(5c1、5d1)は、胸中央部の上辺で互いに縫合されており、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)の下端(5c2、5d2)は互いに遊離している。
【0055】
左右の土台部分(5c、5d)は、胸中央部でクロスして、その下端(5c2、5d2)が互いに遊離しているので、調節部(9)によってカップ部を調節する際に、身幅(L)を左右の土台部分(5c、5d)から乳房に合わせて調節することが可能となり(
図5参照)、土台部分(5)が1枚の素材、または伸縮しない素材からなる場合より融通性を与えることが可能となる。
【0056】
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5に係るサイズ融通性のあるカップ部を有するブラキャミソールの(A)展開図、(B)正面図及び(C)裏正面図である。破線部分は、外面から見た時は見えない又は見るのが困難な、内側にある部分を表わしている。
この実施形態においては、カップ部を有するブラキャミソール(15)は、左右の伸縮性カップ表面部材(17)、前身頃(18)、左右の肩紐部分(19)、左右の脇布(20)、土台部分(5)、複数の伸縮性部材(7)、左右のカップ体(16)および後身頃(21)からなる。
【0057】
伸縮性部材(7)は、左右のカップ体の下縁部(16b)及び脇側周縁部(16c)の外側に縫着されている。伸縮性部材(7)はこの他にもカップ体の上端部(16a)や胸中央側の周縁部(16d)に縫着されていても良い。カップ体の下縁部(16b)の外側に縫着されている伸縮性部材(7)は、
図7が示すように左右一体であっても、別体であっても良い。
図7に示すように、カップ体の上端部(16a)に肩紐部分の一端(19a)を縫着し、その肩紐部分(19)が伸縮性素材からなることで、伸縮性部材(7)をカップ体の上端部(16a)の外側に縫着するのと同様の効果が得られる。
【0058】
伸縮性カップ表面部材(17)は、その下縁部(17b)全体が前身頃の上縁部(18a)に縫着されており、
図8に示すように複数の布からなるものであっても1枚の布からなるものであっても良い。伸縮性カップ表面部材の上端部(17a)は、肩紐部分(19)へ延出し肩紐部分(19)を外面から覆って二重構造となるように縫着されていても良く、実施の形態1−4と同様に肩紐部分(19)と縫合され連接されていても良い。
【0059】
図7に示すように、土台部分(5)は、通常のブラジャーやブラキャミソールのように1枚の伸縮しない素材又は伸縮性素材から形成されていてもよいが、好ましくはストレッチ素材からなる。
ワイヤー部を有さず、土台部分(5)がストレッチ素材からなることにより、腹部周囲長の長い着用者でも締め付けられず、着心地が良いブラキャミソールとすることができる。加えて、妊婦のように短期間で腹部や乳房が変化しても、ワイヤー部を有さないため腹部を圧迫されることなく、且つ変化する乳房の大きさに合わせて土台部分から調節することが可能となる。
土台部分(5)は、実施の形態1−4のように、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)からなり、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)の上端(5c1、5d1)は、胸中央部の上辺で互いに縫合されており、右の土台部分(5c)と左の土台部分(5d)の下端(5c2、5d2)は互いに遊離しているものであっても良い。
【0060】
土台部分の下縁部(5b)は前身頃の上縁部(18a)に縫着されている。脇布の下縁部(20b)は後身頃の上縁部(21a)に縫着されている。前身頃と後身頃の側部(18b、21b)が互いに縫着されていることによって筒状に構成されている。
【0061】
ブラキャミソールの脇布(20)、前身頃(18)及び後身頃(21)は、様々な体型に対応できるよう、伸縮性のある素材からなることが好ましい。伸縮性のある素材としては、例えばパワーネット、サテンネット、ベア天竺、ツーウェイトリコット等が挙げられる。
【0062】
ブラキャミソールの肩紐部分(19)は、
図7で示すようにストレッチ性のある布地を使用しても良く、上記ブラジャーの肩紐部分(3)と同様にストラップを用いても良い。
【0063】
図7A及び
図7Bに示すように、左右のカップ部(22)間に胸当て布(23)を有してもよい。胸当て布の下縁部(23c)は土台部分の上縁部(5a)に縫着される。胸当て布(23)の左上角部(23a)と右上角部(23b)が取り外し可能にカップ体の上端部(16a)の外面に係止されているものであっても良く、カップ体の上端部(16a)の外面に縫着されても良い。
取り外し可能な係止手段(24)の例として、クリップ、スナップ、ホック、ボタン及びボタン穴、面ファスナー、紐等を使用することが挙げられる。
【0064】
上記のような胸当て布を有することで、本発明のカップ部を有する衣類を着用したまま授乳を容易に行うことができる。
【0065】
以下に、本発明に係るサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類について、具体的な実施例を用いて説明するが、本発明はこの具体的な実施例に限定されるものではないことが当業者に理解される。
【実施例】
【0066】
<実施例1>
以下の表1に示すようなサイズ許容範囲を有するブラジャーを作製した。
【0067】
【表1】
【0068】
例えば、本発明に係るMサイズのサイズ融通性を有するブラジャーにおいては、B75サイズのカップを使用して、カップを低くし、カップ部のグレーディング幅を考慮した形状で、タテヨコに伸びる素材を上下カップ周りに用いてカップの高さの変化に対応できるようにした。
また、ワイヤー部を有するブラジャーの場合にはバストを収めるカップ部の横幅が狭く固定されていたが、ワイヤー部を有さない本発明においてはバストを収めるカップ部の横幅を、脇布とカップ部の縫着位置近傍にまで広くとることができる。つまり、妊婦のように産前に脇側からバストが大きくなり、産後にバストが小さくなる等バストの横幅の変化が大きい場合でも1つのサイズで対応しやすくなる。
【0069】
その結果、従来のカップサイズがB70、B75、C70、C75、D70およびD75であった女性が、Mサイズの本発明に係るブラジャーを使用することが可能であった。逆に言うと、着用者は、月経によるバストサイズの変化や、妊娠時の体形の変化や体重の増減に伴うバストの増減があっても、これまでのサイズの本発明に係るブラジャーで快適なフィット感を得ることが可能となる。
これは先行技術、とりわけ特許文献3に比してサイズ融通性の高いカップ部を有する衣類を提供できることを意味する。
【0070】
従来のカップサイズB70、B75、C70、C75、D70およびD75を、本発明に係るブラジャーMサイズ1つで対応できるので、例えば、従来は、B70、B75、C70、C75、D70およびD75を、それぞれ、1000個、合計6000個の在庫が必要であった場合でも、本発明に係るサイズ融通性のあるカップ部を有するブラジャーのMサイズを1000個在庫しておけばよいこととなり、製造者や販売者は、在庫を減らし、コストの削減を図ることが可能となる。
【課題】ワイヤー部を有さずに1つのカップのサイズでより多種のブラジャーサイズの体型の着用者に対応することが可能なサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類を提供すること。
【解決手段】左右のカップ部と土台部分と左右の肩紐部分からなるサイズ融通性のあるカップ部を有する衣類であって、前記左右のカップ部は、非伸縮性のカップ体と、前記カップ体の下縁部及び周縁部の外側に縫着されている伸縮性部材と、前記カップ体全体及び前記伸縮性部材全体を外面から覆うことで前記左右のカップ部を二重構造とする伸縮性カップ体表面部材からなり、前記土台部分は、前記左右のカップ部のアンダーバスト方向で配置され伸縮性素材からなり、前記伸縮性カップ体表面部材の下縁部全体及び前記伸縮性部材の下縁部全体が前記土台部分の上縁部に縫着され、前記左右の肩紐部分は、前記伸縮性カップ体表面部材の肩方向で連結され、ワイヤー部を有さないことを特徴とする、サイズ融通性のあるカップ部を有する衣類とする。