(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931294
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】計時器のねじ込み式要素の向き調整用デバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 37/10 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
G04B37/10 B
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-531612(P2015-531612)
(86)(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公表番号】特表2015-531875(P2015-531875A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】EP2013070650
(87)【国際公開番号】WO2014067743
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】12191108.5
(32)【優先日】2012年11月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ブリスワルテ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クヌッヒェル,ダニエル
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第01701225(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向のスカート(111)と一体的なカバー(112)で形成されたキャップ(11)と、
腕時計の中央部分に対する前記キャップ(11)の角度的な向きを調整するデバイスと
を有する向き調整可能なねじ込み式要素であって、
前記キャップ(11)の角度的な向きを調整する前記デバイスは、第1の平坦な摩擦面(231)を備える第1の部品と、
第2の平坦な摩擦面(31)及び戻し手段を備える前記キャップ(11)と一体的にされており、前記キャップ(11)を前記第1の部品と一体的に回転させる第2の部品とを有し、
前記キャップ(11)及び前記第1の部品は、第1の位置(P1)と第2の位置(P2)の間で互いに対して軸方向に動くことができ、
前記第1の位置(P1)においては、前記第1の平坦な摩擦面(231)及び前記第2の平坦な摩擦面(31)がそれぞれ前記戻し手段によって互いに対して押し、
前記第2の位置(P2)においては、前記第1の平坦な摩擦面(231)及び前記第2の平坦な摩擦面(31)どうしは接しておらず、
前記戻し手段、前記第1及び第2の摩擦面(231、31)は、前記キャップ(11)が前記第1の位置(P1)にある前記第1の部品と一体的に回転し、前記第2の位置(P2)にある前記向き調整可能なねじ込み式要素(1)の回転軸(A−A)を中心に自由に回転することができ、
前記第1及び第2の摩擦面(231、31)は、水平面において配置されている
ことを特徴とする向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項2】
前記カバー(112)及び前記横方向のスカート(111)は、前記第1の部品に接続される中央パイプ(2)を収容するように構成する中央開口部(115)を定める
ことを特徴とする請求項1に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項3】
第1の平坦な摩擦面(231)を備えた前記第1の部品は、中央パイプ(2)のまわりに交換可能な摩耗カラー(23)を形成する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項4】
第2の平坦な摩擦面(31)を備えた前記キャップ(11)と一体的な前記第2の部品は、交換可能な環状の向き調整摩耗部品(3)である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項5】
前記戻し手段は、前記ねじ込み式要素の回転軸(A−A)に沿った内側に向いている軸方向の力(F1)を与える
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項6】
前記戻し手段は、弾性板ばね(4)又は形状記憶ばねからなる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項7】
前記板ばね(4)は、最大厚(E1)が0.1mmであり、前記キャップ(11)のカバー(111)の内表面(114)の第1の肩部(1141)と、前記第1の部品の第2の肩部(232)との間に構成し、
前記第1の肩部(1141)は、最大の深さ(E2)が0.2mmである
ことを特徴とする請求項6に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項8】
前記第1及び第2の摩擦面(231、31)は、磁化されている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項9】
当該要素は、腕時計用ムーブメントに接続されたステムに接続されたピストン(9)を有し、
前記ピストン(9)は、中央パイプ(2)に収容されており、前記中央パイプ(2)の内部で動くことができるように構成し、
前記ピストン(9)の移動距離は、前記中央パイプ(2)の止めメンバー(22)によって制限される
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項10】
前記ピストン(9)は、六角形の下部端(93)を有し、前記中央パイプ(2)は、対応する形の開口部を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項11】
前記中央パイプ(2)は、向き調整用の周部のギアリングノッチ(24)を有する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【請求項12】
位置(P1)から位置(P2)への変更には、23〜28Nの強さの戻し手段に対抗する力(F2)を与えることを必要とする
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の向き調整可能なねじ込み式要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用のねじ込み式要素の向きを調整するデバイスに関し、特に、外表面上のモチーフ又はロゴを有し、モチーフの向きを意図的に調整することがあり得るようなつまみの向きを調整するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ込み式つまみが、腕時計の巻き又は制御ステムの密封性を改善するように、腕時計において一般的に装備されている。この種のつまみには、時計を巻いたり設定することができる非ねじ込み位置と、腕時計用ケースの中央へと駆動又はねじ込まれる管につまみがねじ込まれロックされるようなねじ込み位置とを有するという特徴がある。このねじ込み位置において、密封用ガスケットが押されて腕時計の密封性が向上する。したがって、ねじ込み位置は、腕時計が着用されたときの通常の位置に相当し、密封用ガスケットの摩耗以外は変わらないものである。
【0003】
腕時計用ケースに対するこれらのねじ込み式つまみの製造及び実装は広く知られている。しかし、これらのつまみをマウントする方法は、外表面に銘刻ないしモチーフ、例えば、ロゴ、製造者ブランド、又は同様な紋章があるような、ねじ込み式つまみには適していないものである。実際に、既知のマウント方法は、つまみがねじ込まれるとつまみをケースに対して所定の向きにすることが一般にはできない。このことは、銘刻がつまみの外表面に付される場合に、ケースの美観を害してしまう。つまみを豪華な高品質な製品に嵌める場合には、これはもちろん課題となる。
【0004】
ロゴの向き調整の信頼性の点からこれらの課題を克服するために、欧州特許EP1411401は、特定のつまみを開示しており、これは、その外側上面上に、中心体及び横方向のスカートで形成されるヘッドに対して向き調整が可能な基板を有しており、この基板には、銘刻が設けられており、圧力がブレーキ手段に対してかけられた場合に、つまみのヘッドとの回転係合を解除することができる。この手法の課題は、一方では、伝統的ではないつまみ構造が必要となって、向き調整可能なロゴが、つまみのヘッドとの単一部品として作られず、他方では、この手法は、基板に圧力を与える衝撃に対して堅牢ではなく、これによって、つまみの本体に関して所望しない手法でつまみの向きが変わることになる。また、つまみを操作する場合にいくつもの使用上の注意をしなければならない。これによって、ケースの中央部分へのいずれの圧力も加えることを避けて、基板の不注意な回転を防ぐことになる。これによって、つまみの使用が不便になってしまう。
【0005】
従来のつまみにおいて、他のいくつかの手法が提案されている。このつまみは、向き調整されるロゴが機械加工される外表面上にくぼんだキャップを有し、その内部に向き調整デバイスが設けられている。例えば、欧州特許出願EP1124167A1においては、中央部分と管の間又はつまみと管の間で形状記憶合金のリングが配置され、つまみが管にねじ込まれるとつまみが所定の向き又は位置に調整される。リングの変形を調整することによって、具体的には、腕時計の周囲を所定の温度にすることによって直径を縮小することによって、中央部分と管の間、つまみと管の間において一時的な遊びを形成することができる。これによって、つまみをそのねじ込み位置に角度調整することが可能になる。この手法の課題は、標準つまみと比較して必然的に大きな体積のつまみを必要とするので、リングに付加的なスペースが必要になることである。このことは、向き調整デバイスの大きさを決める際に考慮に入れられなければならない。また、形状記憶合金は、小さな大きさのバーでは、現状では利用可能ではない。したがって、当該アプリケーションに必要な小さな寸法構成の関心事のリングを機械加工することは難しく高コストである。最後に、このプロセスは、腕時計の製造業者による初期のつまみのマウントのみを想定しており、温度変化に敏感な腕時計の他の部品を破損することがあるその後のつまみの向き調整操作を想定してはいない。
【0006】
欧州特許EP2182417は、ロゴ付きキャップを備えたねじ込み式つまみの向き調整の代替デバイスを提示している。これは、3つの管を有し、そのうちの2つはそれぞれ、ナットによって接触状態を保持することができるトゥーシングによって他の管に対して向きの調整ができる。この手法は、ナットを緩めることによって、初期マウントの後につまみの向きの設定を訂正することを確かに可能にする。しかし、ナットの収容のためにつまみの内部においてより深い開口部を必要とするので、特にかさばることが明らかである。また、つまみをケースと離して行うようなモジュール的な手法で向きの調整を行うことができない。なぜなら、特定のインデックス化要素は、中央部分にねじ込まれた管と一体的にされているからである。
【0007】
欧州特許EP1701225は、銘刻と、巻きステムと一体的なヘッドとが特徴的な従来のキャップを備えた向き調整可能なねじ込み式つまみを記載している。そのヘッドとキャップは、弾性要素によって互いに接触するように保持される円錐台面によって一体的に回転するように形成され、キャップの角度位置は、つまみの長手方向の軸に従う中央部分に対してキャップを軸方向に引き出すことによって調整される。キャップとヘッドとの一体的な回転が、円錐台面間の摩擦力のみによって達成されるとすれば、これらの面は、キャップが保持されることを確実にするために非常に広い面積を占めなければならない。これは、弾性要素によって次第にはたらかせられる圧縮力が、つまみがマウントされる腕時計の寿命の期間にわたって小さくなる場合において特にである。したがって、この手法は大きさが小さいつまみや高さが低いつまみには適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、単純で経済的な構造の伝統的なつまみのような、ねじ込み式要素の向き調整用のデバイスを提供することによって、従来技術の課題を克服することを目的とし、このデバイスは、ロゴ又は商標のようなモチーフを有し、前記要素の外表面に付されるロゴ又は商標の位置を所定の位置又は向きに容易に調整することができ、前記要素の大きさを小さくすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、横方向のスカートと一体的なカバーで形成されたキャップと、腕時計の中央部分に対するキャップの角度的な向きを調整するデバイスとを有する向き調整可能なねじ込み式要素であって、キャップの角度的な向きを調整するデバイスは、第1の平坦な摩擦面を備える第1の部品と、第2の平坦な摩擦面及び戻し手段を備えたキャップと一体的にされており、キャップを第1の部品と一体的に回転させる第2の部品とを有する。キャップ及び第1の部品は、第1の位置と第2の位置の間で互いに対して軸方向に動くことができ、第1の位置においては、第1の平坦な摩擦面及び第2の平坦な摩擦面がそれぞれ戻し手段によって互いに対して押し、第2の位置においては、第1の平坦な摩擦面及び第2の平坦な摩擦面どうしは接していない。戻し手段、第1及び第2の摩擦面は、キャップが第1の位置にある第1の部品と一体的に回転し、第2の位置にある向き調整可能なねじ込み式要素の回転軸を中心に自由に回転することができる。
【0010】
平坦な摩擦面どうしの連係の利点は、関連する接触面の減少のために当業者にとっては自然でないが、ねじ込み式要素に小型の利点を与えるということである。したがって、この手法は、特に、非常に小さな大きさの部品に適している。
【0011】
好ましい実施形態によると、戻し手段が与える力の方向及び強さは、工具の援助を得られない腕時計の実際のユーザーによってではなく、アセンブリ時、又は例えばサービス時に製造業者によってのみ調整を行うことができるように決められる。したがって、例えば、衝撃に続く、操作におけるいずれのエラー及び/又は向きのいずれの望まない変化をも、回避することができる。
【0012】
添付図面を参照して例(これに限定されない)として与えられる好ましい実施形態についての下記の詳細な説明によって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】キャップカバーの外表面上のロゴを備えた向き調整可能なつまみの形態のねじ込み式要素の上面図を示す。
【
図2】安静状態にある、本発明の好ましい実施形態による向き調整デバイスが嵌められた
図1の向き調整可能なつまみの部分断面図を示す。
【
図3】
図1の向き調整可能なつまみの下面図を示しており、ピストンとパイプの外部断面をより詳細に示している。
【
図4】
図2と同様の断面図であり、キャップがヘッドから分離されて、中央部分から離れた位置において、キャップ上のモチーフを所定の位置に角度的な向きを調整することが可能になるような位置につまみがある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明するすべての図に示した好ましい実施形態において、向き調整可能なねじ込み式要素は、つまみ1からなる。
図1は、つまみ1の上面図であり、出願人のロゴL「Ω」がキャップ11のカバー112の外表面113にあり、その中には、
図2〜4を参照して以下で説明する向き調整デバイスが収容されている。美観的な理由で、このロゴLは、完全に水平な位置に調整されており、これは、好ましくは、つまみがマウントされる腕時計の中央部分の平面に対応している。この図は、さらに、キャップの外周にトゥーシングDを示しており、これは、つまみ1に対するユーザーのつかみを向上させることが意図されている。
【0015】
図2は、つまみの回転軸A−Aに沿った右半部を断面して示す断面図であり、これは、本発明の好ましい実施形態に係る向き調整機構を示している。つまみ1は、ねじ付き管10に接したねじ込み位置にあるように示しており、これは、雌ねじ102が管状の形の中央パイプ2の雄ねじ21と連係しつつ、第1の雄ねじ101によって腕時計用ケース(図示せず)の中央部分にねじ込まれるように意図されている。代替実施形態によると、管に直接ねじ込まれる従来のつまみに対して、管10の雌ねじ102は、さらに、第2の雄ねじからなるであることができ、中央パイプ2の雄ねじ21は同様に雌ねじからなるであることができる。第1のガスケット103は、密封のために管10と中央部分の間で配置されるように意図されている。
【0016】
キャップ11は、表面のカバー112及び軸方向に延びるスカート111で形成され、これらはともに、ねじ込み式要素1を形成するつまみの内部に中央開口部115(判読性向上のために
図3にのみ符号を記した)を定める。その中には、中央部分と一体的なねじ付き管10の端だけではなく中央パイプ2が配置されている。図示した好ましい実施形態によると、中央のねじ管2は、つまみ1のキャップ11と、腕時計の中央部分の間の中間要素と(図示していないが、止まり穴内の雌ねじ91を介してピストン9の下部端93上に従来の手法でマウントされている)、及びムーブメントと相互作用するステムとからなる。管10にねじ込まれた位置においては、中央パイプ2の向きは、ねじ付き管10に対して常に同一であり、結果的に、中央部分への移行性によって、後者は第1の雄ねじ101を介してもねじ回しをされる。したがって、カバー112の上面113に記されたモチーフ又はロゴLの向きを決めるのは、つまみ1のキャップ11に対する中央パイプ2の相対的な向きである。中央パイプ2のこの向きは、ギアリングノッチ24の調整により決定することができる、これは、この目的のために設けられたものであり、中央パイプ2の下部に配設されており、その好ましい形態を下で説明する
図3に示した。
【0017】
中央パイプ2の相対的な軸方向の位置は、キャップ11に対して可変であり、つまみ1の向きの調整モード及びロックモードをそれぞれ決定する。
図2には、キャップ11の角度的な向きのロックモードP1を示した。一方、以下に説明する
図4には、キャップ11用の角度的な向きの調整モードP2を示した。
【0018】
中央パイプ2内に収容されるピストン9は、キャップ11のカバー112の内表面114で止められたばね5に対抗するように滑ることができ、そして、具体的には、つまみ1が機能をセットするために使用される場合に、つまみ1が中央パイプ2から緩められるときに、キャップ11が中央部分から出現することが可能になる(例、時間をセットする、日付を調整する、又は手動でムーブメントを巻くこと)。つまみ1のA−Aが制限される回転軸に沿ったピストン9の軸方向の移動は、ピストン9の第1の肩部92が位置する中央パイプ2の底に位置する止めメンバー22によって制限される。つまみ1がねじ付き管10から緩められる場合、以下に説明する
図4に示すように、ピストン9はその移動距離の端に達する。第2の密封用ガスケット7は、典型的にはOリングジョイントであり、ねじ付き管10とキャップ11の軸方向のスカート111との間に挿入される。これによって、つまみの内部要素の密封が確実になる。つまみのねじ込み位置において、この第2の密封用ガスケット7は、スペーサーとも呼ばれる第1のリング6と、一般にデッキリングとも呼ばれる第2のリング8との間で軸方向において保持され、この第2のリング8は、つまみ1の下部表面上のガスケットをカバーする。
図1に示すように、この第2のガスケット7は、管10の一部上で押される。代わりに、キャップ11の軸方向に延びるスカート111に設けられ、ねじ付き管10の方を向いている環状溝によって、第2のガスケット7用の2つの環状保持リング6及び8を置き換えることができる。
【0019】
本発明によれば、キャップ11が中央パイプ2に組み立てられる。これによって、これらは通常一体的に回転する。
図2に示したロック又は静止位置P1におけるようにである。このアセンブリは取り除くことが可能ないし可逆的な手法で達成される。この一体的な回転は、つまみの中央パイプ2及びキャップ11にそれぞれマウントされる環状の摩耗性部品に好ましくは位置する第1及び第2の平坦な摩擦面231、31によって得られ、これは、例えば、溶接、クリンピング(圧接)、又は他の適切な手段によって、中央パイプ2の上部端に固定されたカラー23、及びキャップ11の内部で固定された環状の向き調整部品3である。このようにして、中央パイプ2のカラー23及び環状の向き調整部品3は、摩擦面どうしが接触するように配置されたつまみ1のキャップ11と一体的な第1の部品及び第2の部品のための好ましい実施形態を形成する。第1及び第2の平坦な摩擦面231、31を構成するために摩耗部品を選ぶことによって2つの利点がある。一方では、カラー23及び向き調整部品3のためにキャップ11及び中央パイプ2の材料からより良い摩擦特性の異なる材料を選ぶことを可能にすることである(例、特に摩擦係数が大きい、複合材料、金属合金とセラミックスの混合物、「デュアルマトリックスコンポジット(DMC)」)。他方では、このモジュール構造によって、サービス又は修理時に、摩擦によって摩耗する部品の必要な部分のみを交換することができる。
【0020】
ピストンの伸びに関わる戻し手段は、キャップ11及び中央パイプ2を、カラー23と向き調整リング3の間で圧縮力F1をはたらかせることによって一体的に回転させ、これによって、第1及び第2の摩擦面231をそれらがお互いにロック位置P1で接触するように保持する。図示した好ましい実施形態によると、戻し手段は、カラー上に位置する第2の肩部232とカバー112の実質的に平坦な内表面114の第3の肩部1141との間で配置された高々0.2mmの厚みE1の板ばね4からなる。第3の肩部1141の深さe2によって、カラー23が固定される中央パイプ2の最大の軸方向の移動距離を定めることが可能になり、一方、カラー23に位置する第2の肩部232は、板ばねに対してより大きなてこの腕を与え、これによって、より容易に変形することになる。肩部の幅によって、このてこの腕を調整することが可能になり、それによって、与える力を調整して、第1及び第2の摩擦面31、231を互いから解放させることが可能になる。したがって、このような戻し手段のためのつまみの内部で要求されるスペースの高さは、最大0.4mmである。これは、曲がったばねのような通常の弾性ばねよりもはるかに小さい。高さをさらに小さくするために、また、第2の平坦な摩擦面31を、環状の向き調整部品3のような特定の部品上ではなく、スペーサー、すなわち、第1のリング6の上部表面上に直接配置することもできる。
【0021】
図示した実施形態によると、戻し手段が与える力F1は、回転軸A−Aの方向の下方に作用する。これは、マウントされた位置のつまみの中央の内側に対応する。この力F1の向きによって、ユーザーがつまみ1の向きを変えることを不可能にする。なぜなら、ユーザーはキャップ11にのみ作用することができ、したがって、ねじ付き管10から中央パイプ2を取り除かせるように意図された力を発生させることができないからである。このことは、
図4を考慮に入れて以下に説明する。
【0022】
図2に示す好ましい実施形態によると、戻し手段が与える力F1は、垂直方向の回転軸A−Aの方向に沿ってはたらき、一方、第1及び第2の摩擦面231、31が水平面上で構成する。このような構成によって、表面どうしで押す力を最大限にすることを可能にし、結果的に、キャップ11の回転を中央パイプ2の回転と一体的な状態を維持する傾向がある。これは、摩擦面間の摩擦力のみに依存するものである。その摩擦力の強さは、戻し手段F1が与える力への反作用の大きさに直接依存する。したがって、前記力が摩擦面に垂直な方向に与えられる場合に、この強さはなお一層大きくなる。結果的に、本発明の範囲内において、より一般的には、戻し要素は、好ましくは、それらが、第1及び第2の摩擦面231、31の間の接触平面と垂直な方向に摩擦力をはたらかせるように構成する。
【0023】
図3は、
図2に示す横断軸B−Bに沿ったつまみの下面図を示す。この図の周辺部分は、中でねじ付き管10が係合しているつまみ1の中央開口部115を示す。一方、中央パイプ2の下部端は、六角形の断面の開口部を有しており、識別することができる。この開口部は、ピストン93の下部端と連係するように意図されており、その内部では、ステム(図示せず)との接続用の雌ねじ91がムーブメントと相互作用するのを見ることができる。この場合、ピストン9の下部端93も、対応する大きさの六角形であり、これによって、中央パイプ2及びピストン9が、通常少なくともつまみ向き調整位置P2において一体的に回転する。この特定の六角形の断面の構成によって、従来の六角キーのような工具でつまみが管10から緩められる場合に、次の段落で説明する
図4に示すように、中央パイプ2の角度的な向きを操作することを簡単にする。例えば、正方形又は三角形である中央パイプの基礎において設けられる開口部には、好まれる工具に応じてこの操作を行うために、他の断面を設けることも想起することができる。つまみ1の角度的な向きを調整するためのピストン9に対する直接的な作用の際のピストン9と中央パイプ2の間のねじれ制約によって、好ましい実施形態は、連動する配置が中央パイプ2の下部周囲上のギアリングノッチ24の構成に関し、これによって、ノッチにおいて係合する対応する形状を有する歯を備えるキーによって回転駆動する。ノッチの数及びそれらの深さは、パイプに与える必要があるねじれのモーメントに依存し、
図3においては8つが示されている。
【0024】
図4は、調整位置P2における
図2のつまみ1を示す。これにおいて、第1及び第2の平坦な摩擦面231、31どうしが接触しないように、中央パイプ2のギアリングノッチ24と係合するキー20を使用して、使用される戻し手段(ここでは板ばね4)が力F1とは反対方向の力F2の付与によって押されており、中央パイプ2の軸方向の移動距離は、カバー114の内表面上の第3の肩部1141の深さE2によって決められ、十分の数ミリメートルである。
図4に示す部品はすべて、
図2のものと同一である。しかし、
図2とは異なり、ピストン9のばね5は伸びることができる。これは、キャップ11の位置のための雄ねじから又はピストン9がマウントされるように意図されている巻きステムのインデックスを付けられた位置からの軸方向の応力がもはやないからである。つまみがロック位置P1又は向き調整位置P2のどちらにあるかを判断するのは、ピストン9のばね5の縮み位置又は伸び位置ではないことがわかる。この位置は、戻し手段4の位置のみによって定められる。
【0025】
好ましい実施形態によると、板ばね4は、位置P1から位置P2への変更には、戻し手段4に対抗するように与えられる力F2をはたらかせられることが必要となるように決められる。この力F2は、静止状態(すなわち、ロック位置P1にある状態)の戻し手段によって与えられる力F1よりも2倍大きい強さを有する。これによって、つまみ1の向き調整用操作におけるいずれの誤りをもなくす。板ばね4が与える力F1が14N(ニュートン)である場合、これは、標準的な設定レバーの軸方向の位置を変えるのに必要な力(一般的には10N未満)より相当に大きく、28Nの力がつまみ1の向きを調整するために必要であるように、板ばね4の可塑性が構成される。要求される力F2(23〜28Nの強さ)の値をわずかに減らすために、調整動作時のつまみの操作を促進するために、板ばね4に穴を開けることもできる。変種の1つにおいて、戻し要素は、弾性材料で作られずに形状記憶合金(SMA)で作られるように板ばねからなることもでき、その結果、戻し力F2を温度勾配と交換して、回転ロック接続を解放する。この場合、遷移温度は通常の動作温度よりもかなり下(好ましくは、30度低下)にあるべきである。
【0026】
なお、
図2及び4に示した好ましい実施形態によると、一旦つまみ1が中央パイプ2に組み立てられれば、ユーザーは調整を行うことができない。実際に、カラー23の内側面上に第1の摩擦面231を設け、力F1を内側に与えることによって、一方では、ユーザーがキャップ11を引いてつまみ1を中央部分の軸方向外側に動かす場合、中央パイプ2からのキャップ11のいかなる分離をも防ぐ。なぜなら、この方向のキャップの動きによって、摩擦面どうしが押し合うことになるからである。また、他方では、中央部分にキャップ11を押しても、摩擦面どうしを分離することにはならない。つまみ1が中央部分の近傍の位置にない場合、すなわち、可能な限り中央部分に近い軸方向の位置にない場合、戻し手段を、この場合、押すことができる。しかし、トゥーシングを分離するために与えられる力は、巻きステムの駆動によって中央部分の近傍位置にキャップ11を戻すような力よりもはるかに大きくなければならない。したがって、摩擦面を分離することができる前に、まず、キャップがその近傍位置に戻される。この位置において、管10をねじ回しすること以外では、中央部分の内部への更なる軸方向の運動をすることはできず、摩擦面どうしが離れることが可能にしようと戻し手段をもはや押すことができない。このようにして、操作におけるいずれのエラーをも防ぐことができ、つまみが中央パイプ2から緩められる工具が使用された場合にのみ、つまみの向きを変えることができる。工具としては、例えば、ギアリングノッチ24に作用するキー20を使用することができ、これは、キャップ11を外すのに必要な力F2、そしてねじりモーメントを与えて、キャップ11に対して中央パイプ2の角度位置を調整する。
【0027】
戻し手段については、図を参照して説明し、弾性板ばね4又は形状記憶ばねを有する実施形態は、中央パイプ2の上部表面と、中央開口部115におけるカバー112の内表面の間の制限されたスペースしか必要としないという利点を有し、このスペースは、板ばね4の厚みE1及びカバー1141の内表面の肩部E2の深さとの和と等しい。キャップ11に対する中央パイプ2の軸方向の変位の可能性を確実にするように最小のクリアランスがなければならないが、摩擦面の近傍の磁化された表面のような他の種類の戻し手段も可能である。この表面は、例えば、カラー23の一部、環状の向き調整部品3の一部、又は強磁性体で機械加工された第1及び第2の摩擦面231、31と一体となったものであることができる。磁気戻し手段の使用は、付加的な専用部分の使用をなくすことが可能になるという利点を有し、これによって、つまみ1の体積の追加的な減少が可能になり、具体的には、板ばね4の厚みE1と等しい高さの減少が可能になる。したがって、システム全体の小型化をさらに促進することができる。しかし、磁気フリクション表面の使用は、板ばねの代わりとして用いるだけではなく、つまみ1のキャップ11が中央パイプ2と一体的な静止位置まで戻し力F1を増やすための相補的な手段として用いることができ、これによって、接触面を増やす必要なしに摩擦力を改善することができる。
【0028】
なお、中央パイプ2に配置されたキャップ11を使用することによって、つまみの製造業者がこのようなパイプの在庫を持ち、異なるモチーフ又は宝石などの他の要素が付されていたり正方形、楕円形又は他の特定の幾何学的形状の非円筒状の外形を有するような異なるキャップ11とともにそのようなパイプを使用することが可能になる。
【0029】
請求の範囲に係る発明は、つまみ1の例(これに制限されない)に関連して主として説明したが、クレームされたねじ込み式要素は、手動又は自動の弁、押しボタン、修正器又は向き調整可能な裏蓋などからなることができる。