(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対のビードコアでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されたカーカス層と、少なくとも2層のベルトを積層した多層構造をなし、トレッド部において前記カーカス層の外周であるタイヤ径方向外側に配置され前記カーカス層をタイヤ周方向に覆うベルト層と、前記ベルト層の外周であるタイヤ径方向外側に配置されて前記ベルト層の少なくとも一部をタイヤ周方向に覆う補強層と、を備える共に、前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ幅方向の中央に位置する中央部円弧と、前記中央部円弧のタイヤ幅方向外側に連続するショルダー側円弧と、前記ショルダー部円弧のタイヤ幅方向外側に連続して前記トレッド部のタイヤ幅方向最外側に位置するサイド部円弧と、の3つの異なる曲率半径の円弧で形成された空気入りタイヤにおいて、
正規リムに組込んで正規内圧の5[%]を内圧充填した状態で、タイヤ子午線方向の断面視にて、前記ショルダー側円弧の仮想の延長線と前記トレッド部におけるタイヤ幅方向最外側のサイド部円弧の仮想の延長線との交点を基準点とし、タイヤ赤道面と前記トレッド面のプロファイルとの交点をセンタークラウンとし、前記基準点と前記センタークラウンとを結んだ直線と、前記センタークラウンを通過してタイヤ幅方向に平行な直線とがなす角度をθとし、前記中央部円弧の曲率半径をRcとし、前記ショルダー側円弧の曲率半径をRsとし、前記タイヤ赤道面から前記ショルダー側円弧のタイヤ幅方向内側端部位置までの円弧長である基準展開幅をLとし、前記基準点を通過すると共に前記タイヤ赤道面と平行な基準線が前記トレッド面に交差した点間でのタイヤ幅方向の円弧長であるトレッド展開幅をTDWとし、扁平率をβとした場合に、
前記トレッド面は、
0.025×β+1.0≦θ≦0.045×β+2.5
10≦Rc/Rs≦50
0.2≦L/(TDW/2)≦0.7
を満たして形成され、
さらに、前記トレッド面における接地領域での溝面積比率をGRとし、前記接地領域におけるタイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側にTDW/2の45[%]の位置までの範囲をセンター領域として当該センター領域での溝面積比率をGCRとし、前記接地領域におけるタイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側にTDW/2の90[%]の位置までの範囲内であって前記センター領域のタイヤ幅方向外側端からタイヤ幅方向外側への範囲をショルダー領域として当該ショルダー領域での溝面積比率をGSRとした場合に、
前記接地領域は、
12[%]≦GR≦25[%]
GCR>GSR
を満たして形成され、
前記トレッド面の前記ショルダー領域に、タイヤ周方向に延在する周方向主溝が設けられ、当該周方向主溝の前記ショルダー領域における溝面積比率GSAとした場合に、当該溝面積比率GSAと、前記ショルダー領域での溝面積比率GSRとの関係が、1.6≦GSR/GSA≦5.0を満たしていることを特徴とする空気入りタイヤ。
一対のビードコアでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されたカーカス層と、少なくとも2層のベルトを積層した多層構造をなし、トレッド部において前記カーカス層の外周であるタイヤ径方向外側に配置され前記カーカス層をタイヤ周方向に覆うベルト層と、前記ベルト層の外周であるタイヤ径方向外側に配置されて前記ベルト層の少なくとも一部をタイヤ周方向に覆う補強層と、を備える共に、前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ幅方向の中央に位置する中央部円弧と、前記中央部円弧のタイヤ幅方向外側に連続するショルダー側円弧と、前記ショルダー部円弧のタイヤ幅方向外側に連続して前記トレッド部のタイヤ幅方向最外側に位置するサイド部円弧と、の3つの異なる曲率半径の円弧で形成された空気入りタイヤにおいて、
正規リムに組込んで正規内圧の5[%]を内圧充填した状態で、タイヤ子午線方向の断面視にて、前記ショルダー側円弧の仮想の延長線と前記トレッド部におけるタイヤ幅方向最外側のサイド部円弧の仮想の延長線との交点を基準点とし、タイヤ赤道面と前記トレッド面のプロファイルとの交点をセンタークラウンとし、前記基準点と前記センタークラウンとを結んだ直線と、前記センタークラウンを通過してタイヤ幅方向に平行な直線とがなす角度をθとし、前記中央部円弧の曲率半径をRcとし、前記ショルダー側円弧の曲率半径をRsとし、前記タイヤ赤道面から前記ショルダー側円弧のタイヤ幅方向内側端部位置までの円弧長である基準展開幅をLとし、前記基準点を通過すると共に前記タイヤ赤道面と平行な基準線が前記トレッド面に交差した点間でのタイヤ幅方向の円弧長であるトレッド展開幅をTDWとし、扁平率をβとした場合に、
前記トレッド面は、
0.025×β+1.0≦θ≦0.045×β+2.5
10≦Rc/Rs≦50
0.2≦L/(TDW/2)≦0.7
を満たして形成され、
さらに、前記トレッド面における接地領域での溝面積比率をGRとし、前記接地領域におけるタイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側にTDW/2の45[%]の位置までの範囲をセンター領域として当該センター領域での溝面積比率をGCRとし、前記接地領域におけるタイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側にTDW/2の90[%]の位置までの範囲内であって前記センター領域のタイヤ幅方向外側端からタイヤ幅方向外側への範囲をショルダー領域として当該ショルダー領域での溝面積比率をGSRとした場合に、
前記接地領域は、
12[%]≦GR≦25[%]
GCR>GSR
を満たして形成され、
前記トレッド面に、タイヤ周方向に対して横切るラグ溝が設けられ、前記センター領域における前記ラグ溝の平均溝深さCGDと、前記ショルダー領域における前記ラグ溝の平均溝深さSGDとの関係が、1[mm]≦CGD−SGD≦3[mm]を満たし、かつ前記センター領域における前記トレッド部のタイヤ径方向平均寸法Cと、前記ショルダー領域における前記トレッド部のタイヤ径方向平均寸法Sとの関係が、0.90≦C/S≦1.10を満たしていることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記センター領域での溝面積比率GCRと、前記ショルダー領域での溝面積比率GSRとの関係が、0.5≦GSR/GCR≦0.8を満たして形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空気入りタイヤが装着された車両の低燃費化を目的とし、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減するため、使用空気圧を高圧化することが検討されている。ところが、使用空気圧の高圧化によりタイヤ幅方向中央であるセンター領域の径成長が増加し、これに伴いセンター領域の接地圧が増加すると、トレッド面のセンター領域が摩耗し易くなる。
【0005】
上述した特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、トレッド面のタイヤ幅方向に沿ったプロファイルの曲率を直線に近づけることで、トレッド面のセンター領域の摩耗が改善される傾向となる。しかしながら、トレッド面のタイヤ幅方向に沿ったプロファイルの曲率を直線に近づけると、トレッド面のショルダー部と路面との接地圧が増加するため、空気入りタイヤが装着された車両が通過する際の車外騒音(通過騒音)が悪化する傾向となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面のセンター領域の耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部のトレッド面が、タイヤ幅方向の中央に位置する中央部円弧と、前記中央部円弧のタイヤ幅方向外側に連続するショルダー側円弧とを少なくとも含む複数の異なる曲率半径の円弧で形成された空気入りタイヤにおいて、正規リムに組込んで正規内圧の5[%]を内圧充填した状態で、タイヤ子午線方向の断面視にて、前記ショルダー側円弧の仮想の延長線と前記トレッド部におけるタイヤ幅方向最外側のサイド部円弧の仮想の延長線との交点を基準点とし、タイヤ赤道面と前記トレッド面のプロファイルとの交点をセンタークラウンとし、前記基準点と前記センタークラウンとを結んだ直線と、前記センタークラウンを通過してタイヤ幅方向に平行な直線とがなす角度をθとし、前記中央部円弧の曲率半径をRcとし、前記ショルダー側円弧の曲率半径をRsとし、前記タイヤ赤道面から前記ショルダー側円弧のタイヤ幅方向内側端部位置までの円弧長である基準展開幅をLとし、前記基準点を通過すると共に前記タイヤ赤道面と平行な基準線が前記トレッド面に交差した点間でのタイヤ幅方向の円弧長であるトレッド展開幅をTDWとし、扁平率をβとした場合に、前記トレッド面は、0.025×β+1.0≦θ≦0.045×β+2.5、10≦Rc/Rs≦50、および0.2≦L/(TDW/2)≦0.7を満たして形成され、さらに、前記トレッド面における接地領域での溝面積比率をGRとし、前記接地領域におけるタイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側にTDW/2の45[%]の位置までの範囲をセンター領域として当該センター領域での溝面積比率をGCRとし、前記接地領域におけるタイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側にTDW/2の90[%]の位置までの範囲内であって前記センター領域のタイヤ幅方向外側端からタイヤ幅方向外側への範囲をショルダー領域として当該ショルダー領域での溝面積比率をGSRとした場合に、前記接地領域は、12[%]≦GR≦25[%]、およびGCR>GSRを満たして形成されていることを特徴とする。
【0008】
この空気入りタイヤによれば、基準点とセンタークラウンとを結んだ直線と、センタークラウンを通過してタイヤ幅方向に平行な直線とがなす角度θを0.025×β+1.0≦θ≦0.045×β+2.5の範囲としたことにより、中央部円弧からショルダー側円弧に至りタイヤ径方向内側への落ち込み量がより小さくなる。さらに、中央部円弧の曲率半径Rcと、ショルダー側円弧の曲率半径Rsとの関係を10≦Rc/Rs≦50とし、タイヤ赤道面からショルダー側円弧のタイヤ幅方向内側端部位置までの中央部円弧の円弧長である基準展開幅Lと、トレッド展開幅TDWとの関係を0.2≦L/(TDW/2)≦0.7としたことにより、中央部円弧からショルダー側円弧に至りトレッド面の円弧が直線により近くなる。このため、中央部円弧の径成長が抑制されるので、トレッド面のセンター領域の摩耗を改善することができる。しかも、この空気入りタイヤによれば、トレッド面の接地領域での溝面積比率GRを、12[%]以上25[%]以下として一般の空気入りタイヤに対して比較的低く設定すると共に、センター領域の溝面積比率GCRをショルダー領域の溝面積比率GSRよりも大きく設定したことにより、ショルダー領域の接地圧の増加が抑制されるので、溝により発生する気柱共鳴音のタイヤ幅方向外側に放出される事態が抑えられ、車外騒音を低減することができる。
【0009】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記センター領域での溝面積比率GCRと、前記ショルダー領域での溝面積比率GSRとの関係が、0.5≦GSR/GCR≦0.8を満たして形成されていることを特徴とする。
【0010】
GSR/GCRが0.5以上であれば、溝幅を確保できるので、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面のセンター領域の耐摩耗性を向上する効果を顕著に得ることができ、GSR/GCRが0.8以下であれば、ショルダー領域の接地圧の増加を抑制し、車外騒音を低減する効果を顕著に得ることができる。
【0011】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記トレッド面の前記ショルダー領域に、タイヤ周方向に延在する周方向主溝が設けられ、当該周方向主溝の前記ショルダー領域における溝面積比率をGSAとした場合に、当該溝面積比率GSAと、前記ショルダー領域での溝面積比率GSRとの関係が、1.6≦GSR/GSA≦5.0を満たして形成されていることを特徴とする。
【0012】
GSR/GSAが1.6以上であれば、排水性を確保してウエット制動性の低下を防ぐことができ、GSR/GSAが5.0以下であれば、ショルダー領域GSにおいて、気柱共鳴音の発生に関係のある周方向主溝の割合を小さくして車外騒音を低減できる。したがって、この空気入りタイヤによれば、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面のセンター領域の耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減する効果を顕著に得ることができる。
【0013】
また、本発明の空気入りタイヤは、前記トレッド面に、タイヤ周方向に横切るラグ溝が設けられ、前記センター領域における前記ラグ溝の平均溝深さCGDと、前記ショルダー領域における前記ラグ溝の平均溝深さSGDとの関係が、1[mm]≦CGD−SGD≦3[mm]を満たし、かつ前記センター領域における前記トレッド部のタイヤ径方向平均寸法Cと、前記ショルダー領域における前記トレッド部のタイヤ径方向平均寸法Sとの関係が、1.10≦C/S≦0.90を満たして形成されていることを特徴とする。
【0014】
この空気入りタイヤによれば、CGD−SGDが1[mm]以上であれば、ショルダー領域のラグ溝の溝深さが確保できるので、ウエット制動性を維持でき、CGD−SGDが3[mm]以下であれば、ラグ溝の溝深さを抑えることで、気柱共鳴音がタイヤ幅方向外側に放出される事態を抑え、車外騒音を低減できる。したがって、この空気入りタイヤによれば、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面のセンター領域の耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減する効果を顕著に得ることができる。
【0015】
また、本発明の空気入りタイヤは、高内圧の乗用車用空気入りタイヤに適用されることを特徴とする。
【0016】
低燃費化のため、転がり抵抗を低減するには、使用空気圧を高圧化することが好ましい。このように、この空気入りタイヤによれば、高内圧の乗用車用空気入りタイヤに適用することで、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面のセンター領域の耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減する効果を顕著に得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤは、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面のセンター領域の耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減することのできる空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤの一部裁断子午断面図であり、
図2は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤにおけるトレッド面の一部の平面図である。
【0021】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。なお、以下に説明する空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面CLを中心としてほぼ対称になるように構成されていることから、空気入りタイヤ1の回転軸を通る平面で該空気入りタイヤ1を切った場合の子午断面図(
図1)においては、タイヤ赤道面CLを中心とした一側(
図1において右側)のみを図示して当該一側のみを説明し、他側(
図1において左側)の説明は省略する。
【0022】
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、
図1に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部2の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド面21として形成されている。
【0023】
トレッド面21は、複数の溝により陸部が形成されている。その一例として、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、トレッド面21は、
図1および
図2に示すように、タイヤ周方向に沿って延在する複数の縦溝22が設けられている。本実施の形態における縦溝22は、トレッド面21に4本設けられた周方向主溝22aと、2本設けられた周方向細溝22bとを含んでいる。そして、トレッド面21は、複数の周方向主溝22aにより、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。本実施の形態における陸部23は、周方向主溝22aを境にしてトレッド面21に5本設けられ、タイヤ赤道線CL上に配置された第一陸部23aと、第一陸部23aのタイヤ幅方向外側に配置された第二陸部23bと、第二陸部23bのタイヤ幅方向外側であってトレッド面21のタイヤ幅方向最外側に配置された第三陸部23cとを有している。第二陸部23bは、周方向細溝22bが設けられている。
【0024】
また、トレッド面21は、各陸部23(23a,23b,23c)について、縦溝22に交差する横溝24が設けられている。第一陸部23aに設けられた横溝24は、周方向主溝22aに一端が開口すると共に他端が閉塞し、かつタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜した突起溝24aとして形成されている。この突起溝24aは、タイヤ赤道線CLを境にして周方向主溝22aからの傾斜方向が逆向きに形成されている。
【0025】
また、第二陸部23bに設けられた横溝24は、タイヤ幅方向外側の周方向主溝22aに一端が開口すると共に周方向細溝22bに他端が開口し、かつタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜しつつ湾曲した傾斜溝24bとして形成されている。この傾斜溝24bは、タイヤ赤道線CLを境にして周方向主溝22aからの傾斜方向が逆向きに形成されている。
【0026】
また、第三陸部23cに設けられた横溝24は、トレッド面21のタイヤ幅方向最外端からタイヤ幅方向内側に湾曲して延在しつつ延在端が周方向主溝22aに開口する円弧溝24cとして形成されている。この円弧溝24cは、タイヤ赤道線CLを境にして湾曲方向が逆向きに形成されている。
【0027】
また、トレッド面21は、横溝24として、第二陸部23bおよび第三陸部23cについて、タイヤ周方向に交差するサイプ24d,24eが設けられている。第二陸部23bに設けられたサイプ24dは、タイヤ幅方向外側の周方向主溝22aに一端が開口すると共に他端が閉塞し、かつタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜しつつ湾曲して形成されている。このサイプ24dは、タイヤ赤道線CLを境にして周方向主溝22aからの傾斜方向が逆向きに形成されている。また、第三陸部23cに設けられたサイプ24eは、タイヤ幅方向外側の周方向主溝22aに一端が開口すると共に他端が閉塞し、かつタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜しつつ湾曲して形成されている。このサイプ24eは、タイヤ赤道線CLを境にして周方向主溝22aからの傾斜方向が逆向きに形成されている。
【0028】
ここで、周方向主溝22aは、溝幅が4[mm]以上のタイヤ周方向に延在する溝を示す。また、周方向細溝22bは、溝幅が4[mm]未満のタイヤ周方向に延在する溝を示す。また、サイプ24d,24eは、溝幅が1[mm]以下のタイヤ周方向に対して横切る溝を示す。突起溝24a、傾斜溝24bおよび円弧溝24cは、ラグ溝と総称され、サイプ24d,24e以外で、溝幅が1[mm]を超えてタイヤ周方向に対して横切る溝を示す。なお、溝や陸部の構成は、上述した例に限定されるものではなく、縦溝22や横溝24の配置により様々な構成がある。また、図には明示しないが、トレッド面21は、縦溝22を有さず、タイヤ幅方向で屈曲または湾曲した横溝24のみ設けられた構成であってもよい。
【0029】
また、本実施の形態に係る空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
【0030】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア(図示せず)でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度が90度(±5度)でタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向に複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、
図1に示すように、本実施の形態では2層で設けられているが、少なくとも1層で設けられていてもよい。
【0031】
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
【0032】
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、ベルト層7の外周を覆う態様で少なくとも2層配置された補強層81,82を有する。補強層81,82は、タイヤ周方向に並行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7側の補強層81がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、補強層81のタイヤ径方向外側の補強層82がベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように補強層81のタイヤ幅方向端部にのみ配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、各補強層81,82が共にベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置された構成、または各補強層81,82が共にベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置された構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものであればよい。また、ベルト補強層8(補強層81,82)は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
【0033】
このように構成された空気入りタイヤ1において、トレッド部2の表面であるトレッド面21のプロファイルは、タイヤ径方向外側に凸形状の複数の異なる曲率半径の円弧により形成されている。具体的に、トレッド面21は、
図1に示すように、中央部円弧21aと、ショルダー側円弧21bと、ショルダー部円弧21cと、サイド部円弧21dとで構成されている。
【0034】
中央部円弧21aは、トレッド面21におけるタイヤ幅方向の中央に位置しており、タイヤ赤道面CLを含み、タイヤ赤道面CLを中心としてタイヤ幅方向の両側に形成されている。この中央部円弧21aは、タイヤ赤道面CLを含む部分のタイヤ径方向における径が最も大きく形成されている。ショルダー側円弧21bは、中央部円弧21aのタイヤ幅方向外側に連続して形成されている。ショルダー部円弧21cは、ショルダー側円弧21bのタイヤ幅方向外側に連続して形成されている。サイド部円弧21dは、ショルダー部円弧21cのタイヤ幅方向外側に連続して形成され、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側に位置している。
【0035】
そして、空気入りタイヤ1を正規リムに組込んで正規内圧の5[%]を内圧充填した無負荷状態で、
図1に示すタイヤ子午線方向の断面視にて、ショルダー側円弧21bの仮想の延長線とサイド部円弧21dの仮想の延長線との交点を基準点Pとする。また、タイヤ赤道面CLとトレッド面21のプロファイルとの交点をセンタークラウンCCとし、基準点PとセンタークラウンCCとを結んだ直線Aと、センタークラウンCCを通過してタイヤ幅方向に平行な直線Bとがなす角度をθとする。また、中央部円弧21aの曲率半径をRcとする。また、ショルダー側円弧21bの曲率半径をRsとする。また、タイヤ赤道面CLからショルダー側円弧21bのタイヤ幅方向内側端部位置までの円弧長である基準展開幅をLとする。また、また、上記基準点Pを通過すると共に、タイヤ赤道面CLと平行な基準線が、トレッド面21に交差した点間でのタイヤ幅方向の円弧長であるトレッド展開幅をTDWとする。また、扁平率をβとする。
【0036】
この場合、本実施の形態の空気入りタイヤ1のトレッド面21は、下記式(1)〜式(3)を満たして形成される。
0.025×β+1.0≦θ≦0.045×β+2.5…(1)
10≦Rc/Rs≦50…(2)
0.2≦L/(TDW/2)≦0.7…(3)
【0037】
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、扁平率とは、タイヤの断面幅に対する断面高さの比である。断面幅は、タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した無負荷状態でタイヤの側面の模様や文字などを除いた幅である。断面高さは、タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した無負荷状態のタイヤの外径とリム径との差の1/2である。
【0038】
さらに、
図2に示すように、トレッド面21における接地領域Gでの溝面積比率をGRとする。また、接地領域Gにおけるタイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側にTDW/2の45[%]の位置までの範囲をセンター領域GCとして当該センター領域GCでの溝面積比率をGCRとする。また、接地領域Gにおけるタイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側にTDW/2の90[%]の位置までの範囲内であってセンター領域GCのタイヤ幅方向外側端からタイヤ幅方向外側への範囲をショルダー領域GSとして当該ショルダー領域GSでの溝面積比率をGSRとする。
【0039】
この場合、本実施の形態の空気入りタイヤ1の接地領域Gは、下記式(4)および式(5)を満たして形成されている。
12[%]≦GR≦25[%]…(4)
GCR>GSR…(5)
【0040】
ここで、接地領域Gとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧(230kPa)を充填するとともに正規荷重の70[%]をかけたとき、トレッド面21が路面と接地するタイヤ周方向の領域である。そして、
図2では、接地領域Gのタイヤ幅方向の最大幅を接地幅TWと示し、接地領域Gのタイヤ幅方向の両最外端を接地端Tと示している。また、
図2では、センター領域GCのタイヤ幅方向の最大幅を接地幅CWと示し、ショルダー領域GSのタイヤ幅方向の最大幅を接地幅SWと示している。なお、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。また、溝面積比率GRとは、接地領域Gで開口する各溝22,24の総溝面積Y1と、接地領域Gの面積(接地面積)X1との比率(Y1/X1×100)である。また、溝面積比率GCRとは、センター領域GCにおいて開口する各溝22,24の総溝面積Y2と、センター領域GCの面積(接地面積)X2との比率(Y2/X2×100)である。また、溝面積比率GSRとは、ショルダー領域GSにおいて開口する各溝22,24の総溝面積Y3と、ショルダー領域GSの面積(接地面積)X3との比率(Y3/X3×100)である。
【0041】
このように構成された本実施の形態の空気入りタイヤ1によれば、基準点PとセンタークラウンCCとを結んだ直線Aと、センタークラウンCCを通過してタイヤ幅方向に平行な直線Bとがなす角度θを0.025×β+1.0≦θ≦0.045×β+2.5の範囲としたことにより中央部円弧21aからショルダー側円弧21bに至りタイヤ径方向内側への落ち込み量が一般的な空気入りタイヤと比較して小さくなる。さらに、中央部円弧21aの曲率半径Rcと、ショルダー側円弧21bの曲率半径Rsとの関係を10≦Rc/Rs≦50とし、タイヤ赤道面CLからショルダー側円弧21bのタイヤ幅方向内側端部位置までの中央部円弧21aの円弧長である基準展開幅Lと、トレッド展開幅TDWとの関係を0.2≦L/(TDW/2)≦0.7としたことにより、中央部円弧21aからショルダー側円弧21bに至りトレッド面21の円弧が一般的な空気入りタイヤと比較して直線に近くなる。このため、中央部円弧21aの径成長が抑制されるので、トレッド面21のセンター領域GCの摩耗(センター摩耗)を改善することが可能である。
【0042】
角度θが「0.025×β+1.0」未満の場合、中央部円弧21aからショルダー側円弧21bに至る落ち込み量が小さすぎてショルダー領域GSの摩耗(ショルダー摩耗)が生じ易くなる。一方、角度θが「0.045×β+2.5」を超える場合、中央部円弧21aからショルダー側円弧21bに至る落ち込み量が大きく、トレッド面21のセンター領域GCの摩耗(センター摩耗)を改善することが困難となる。なお、角度θを0.03×β+1.2≦θ≦0.04×β+2.3の範囲とすることで、中央部円弧21aからショルダー側円弧21bに至る落ち込み量が適正化されるので、ショルダー摩耗を生じさせず、センター摩耗を改善する効果を顕著に得ることが可能である。
【0043】
また、Rc/Rsが10未満の場合、中央部円弧21aの径成長を十分に抑制できず、センター領域の接地圧が増加してトレッド面21のセンター領域GCの摩耗(センター摩耗)を改善することが困難となる。一方、Rc/Rsが50を超える場合、中央部円弧21aの径成長を抑制する効果を十分に得られず、トレッド面21のセンター領域GCの摩耗(センター摩耗)を改善する効果が望めなくなる。なお、12≦Rc/Rs≦30の範囲とすることで、中央部円弧21aの径成長を十分に抑制し、トレッド面21のセンター領域GCの摩耗(センター摩耗)を改善する効果を顕著に得ることが可能である。
【0044】
また、L/(TDW/2)が0.2未満の場合も、中央部円弧21aの径成長を十分に抑制できず、センター領域の接地圧が増加してトレッド面21のセンター領域GCの摩耗(センター摩耗)を改善することが困難となる。一方、L/(TDW/2)が0.7を超える場合も中央部円弧21aの径成長を抑制する効果を十分に得られず、トレッド面21のセンター領域GCの摩耗(センター摩耗)を改善する効果が望めなくなる。なお、0.4≦L/(TDW/2)≦0.5の範囲とすることで、中央部円弧21aの径成長を十分に抑制し、トレッド面21のセンター領域GCの摩耗(センター摩耗)を改善する効果を顕著に得ることが可能である。
【0045】
しかも、本実施の形態の空気入りタイヤ1によれば、トレッド面21の接地領域Gでの溝面積比率GRを、12[%]以上25[%]以下として一般の空気入りタイヤに対して比較的低く設定すると共に、センター領域GCの溝面積比率GCRをショルダー領域GSの溝面積比率GSRよりも大きく設定したことにより、ショルダー領域GSの接地圧の増加が抑制されるので、溝により発生する気柱共鳴音のタイヤ幅方向外側に放出される事態が抑えられ、車外騒音を低減することが可能になる。なお、16[%]≦GR≦20[%]の範囲とすることで、車外騒音を低減すると共に、排水性を確保して濡れた路面での制動性であるウエット制動性を維持することができるのでより好ましい。
【0046】
この結果、本実施の形態の空気入りタイヤ1によれば、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面21のセンター領域GCの耐摩耗性(耐センター摩耗性)を向上し、かつ車外騒音を低減することが可能である。
【0047】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、センター領域GCでの溝面積比率GCRとショルダー領域GSでの溝面積比率GSRとの関係が、0.5≦GSR/GCR≦0.8を満たして形成されていることが好ましい。
【0048】
GSR/GCRが0.5以上であれば、溝幅、特に周方向主溝22aの溝幅を確保できるので、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面21のセンター領域GCの耐摩耗性を向上する効果を顕著に得ることができ、GSR/GCRが0.8以下であれば、ショルダー領域GSの接地圧の増加を抑制し、車外騒音を低減する効果を顕著に得ることができる。なお、0.6≦GSR/GCR≦0.7の範囲とすることで、周方向主溝22aの溝幅をより確保すると共に、ショルダー領域GSの接地圧の増加をより抑制できるので、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面21のセンター領域GCの耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減する効果をより顕著に得ることが可能である。
【0049】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、トレッド面21のショルダー領域GSに、タイヤ周方向に延在する周方向主溝22aが設けられ、当該周方向主溝22aのショルダー領域GSにおける溝面積比率をGSAとした場合に、当該溝面積比率GSAと、ショルダー領域GSでの溝面積比率GSRとの関係が、1.6≦GSR/GSA≦5.0を満たして形成されていることが好ましい。
【0050】
GSR/GSAが1.6以上であれば、排水性を確保してウエット制動性の低下を防ぐことができ、GSR/GSAが5.0以下であれば、ショルダー領域GSにおいて、気柱共鳴音の発生に関係のある周方向主溝22aの割合を小さくして車外騒音を低減できるので、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面21のセンター領域GCの耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減する効果を顕著に得ることが可能である。なお、2.0≦GSR/GSA≦3.0の範囲として、ショルダー領域GSでの周方向主溝22aの割合をより規定することで、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面21のセンター領域GCの耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減する効果をより顕著に得ることが可能である。
【0051】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、トレッド面21に、タイヤ周方向に横切るラグ溝24a,24b,24cが設けられ、センター領域GCにおけるラグ溝24a,24bの平均溝深さCGDと、ショルダー領域GSにおけるラグ溝24b,24cの平均溝深さSGDとの関係が、1[mm]≦CGD−SGD≦3[mm]を満たして形成され、かつセンター領域GCにおけるトレッド部2のタイヤ径方向平均寸法Cと、ショルダー領域GSにおけるトレッド部2のタイヤ径方向平均寸法Sとの関係が、
0.90≦C/S≦
1.10を満たして形成されていることが好ましい。
【0052】
ここで、ラグ溝24a,24b,24cの平均溝深さCGD,SGDは、各ラグ溝24a,24b,24cにおける最大溝深さ位置を計測して平均したものである。また、トレッド部2のタイヤ径方向平均寸法C,Sは、センター領域GCやショルダー領域GSのトレッドプロファイルをタイヤ幅方向に4等分した3点(縦溝22および横溝24を有さないとする)でのタイヤ径方向の直下のコードまでの寸法を計測して平均したものである。
【0053】
CGD−SGDが1[mm]以上であれば、ショルダー領域GSのラグ溝24b,24cの溝深さが確保でき、ウエット制動性を維持でき、CGD−SGDが3[mm]以下であれば、ラグ溝24b,24cの溝深さを抑えることで、気柱共鳴音がタイヤ幅方向外側に放出される事態を抑え、車外騒音を低減できるので、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面21のセンター領域GCの耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減する効果を顕著に得ることが可能である。なお、1.5[mm]≦CGD−SGD≦2.5[mm]の範囲として、ショルダー領域GSのラグ溝24b,24cの溝深さをより確保しつつ、ラグ溝24b,24cの溝深さをより抑えることで、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面21のセンター領域GCの耐摩耗性を向上し、かつ車外騒音を低減する効果をより顕著に得ることが可能である。
【0054】
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、高内圧の乗用車用空気入りタイヤに適用されることが好ましい。
【0055】
低燃費化のため、転がり抵抗を低減するには、使用空気圧を高圧化することが好ましい。高内圧とは、本実施の形態では、乗用車用空気入りタイヤにおいて280[kPa]以上350[kPa]以下とする。このように、高内圧の乗用車用空気入りタイヤに適用することで、転がり抵抗を低減すると共に、トレッド面21のセンター領域GCの耐摩耗性を向上し、かつドライ制動性を向上する効果を顕著に得ることが可能である。
【実施例】
【0056】
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、タイヤ性能(センター摩耗、通過音、ウエット制動性、転がり抵抗)に関する性能試験が行われた(
図3−1〜
図3−9参照)。
【0057】
この性能試験では、タイヤサイズ215/55R17の空気入りタイヤを、17×7Jのアルミホイールのリムに組み付け、各例に適用した空気圧を充填し、試験車両(3リットルFRセダン)に装着した。なお、
図3−4に示す従来例3,4、実施例13〜実施例16、および比較例7,8においては、タイヤサイズ245/35ZR19の空気入りタイヤを、19×81/2Jのアルミホイールのリムに組み付け、各例に適用した空気圧を充填し、試験車両(3リットルFRセダン)に装着した。
【0058】
センター摩耗の評価方法では、乾燥路面を1万[km]走行したときのセンター領域GCの最大溝深さ位置の残溝量(溝深さ)が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例2を基準(100)とした指数評価が行われる。この指数評価は、数値が大きいほど耐センター摩耗性能が優れている。
【0059】
通過音の評価方法では、上記試験車両にて、通過騒音性能ISO 13325に定めるところに従い、80[km/h]の速度で惰行走行中の通過音の測定を実施した。評価結果は、従来例2での測定値(通過音[dB])を基準値(0[dB])とし、この基準値にして小さいほど車外騒音の低減効果があり好ましい。
【0060】
ウエット制動性の評価方法では、水深3[mm]の路面で100[km/h]から制動したときに停止するまでの距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例2を基準(100)とした指数評価が行われる。この指数評価は、数値が大きいほどウエット制動性能が優れている。
【0061】
転がり抵抗の評価方法では、荷重(4.2[kN])を加えた上記試験タイヤを、ドラム径1707[mm]のドラム式転がり抵抗試験機にて、速度80[km/h]での転がり抵抗が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例2を基準(100)とした指数評価が行われる。この指数評価は、数値が大きいほど転がり抵抗が低く優れている。
【0062】
図3−1〜
図3−9において、従来例1〜従来例4の空気入りタイヤは、上記特許文献1(特願2008−307948号公報)の空気入りタイヤであり、従来例1および従来例3の空気入りタイヤは内圧を230[kPa]とし、従来例2および従来例4の空気入りタイヤは内圧を300[kPa]とした。
【0063】
図3−1において、実施例1〜実施例4は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とした。一方、比較例1および比較例2は、実施例1〜実施例4に対し、トレッド面のプロファイルのうちのL/(TDW/2)を規定の範囲から外した。
【0064】
図3−2において、実施例5〜実施例8は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とした。一方、比較例3および比較例4は、実施例5〜実施例8に対し、トレッド面のプロファイルのうちのRc/Rsを規定の範囲から外した。
【0065】
図3−3において、実施例9〜実施例12は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とした。一方、比較例5および比較例6は、実施例9〜実施例12に対し、トレッド面のプロファイルのうちのθを規定の範囲から外した。
【0066】
図3−4において、実施例13〜実施例16は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とした。一方、比較例7および比較例8は、実施例13〜実施例16に対し、トレッド面のプロファイルのうちのθを規定の範囲から外した。
【0067】
図3−5において、実施例17〜実施例20は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とした。一方、比較例9および比較例10は、実施例17〜実施例20に対し、トレッドパターンの溝面積比率GRを規定の範囲から外した。
【0068】
図3−6において、実施例21〜実施例24は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とした。一方、比較例11は、実施例21〜実施例24に対し、トレッドパターンの溝面積比率GRを規定の範囲から外し、かつGCR>GSRとして規定の範囲から外した。
【0069】
図3−7において、実施例25〜実施例28は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とした。一方、比較例12および比較例13は、実施例25〜実施例28に対し、トレッドパターンの溝面積比率GRおよびGSR/GSRを規定の範囲から外した。また、実施例29は、実施例25〜実施例28に対し、トレッドパターンの溝面積比率GRを規定の範囲としているが、GSR/GSRを規定の範囲から外した。例えば、従来例1および従来例2の空気入りタイヤは、
図2において周方向主溝22aおよびラグ溝24a,24b,24cの溝幅を比較的大きくすると共に、第三陸部23cの円弧溝(ラグ溝)24c間を連通する溝、および円弧溝(ラグ溝)24c間のタイヤ幅方向外側にさらにサイプを設ける。これに対し、実施例26の空気入りタイヤは、従来例1および従来例2の空気入りタイヤのトレッドパターンにおいて周方向主溝22aおよびラグ溝24a,24b,24cの溝幅を小さくする。また、実施例28の空気入りタイヤは、従来例1および従来例2の空気入りタイヤのトレッドパターンにおいてショルダー領域の周方向主溝22aの溝幅を小さく(実施例26よりは大きい)形成する。
【0070】
図3−8において、実施例30〜実施例33は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とした。一方、比較例14および比較例15は、実施例30〜実施例33に対し、トレッドパターンのGSR/GSAを規定の範囲から外した。例えば、実施例30の空気入りタイヤは、上述した従来例1および従来例2の空気入りタイヤのトレッドパターンにおいて周方向主溝22aおよびラグ溝24a,24b,24cの溝幅を小さくする。また、実施例31の空気入りタイヤは、実施例30よりもセンター領域の周方向主溝22aの溝幅を若干大きく形成する。
【0071】
図3−9において、実施例34〜実施例37は、内圧を300[kPa]とし、トレッド面のプロファイルおよびトレッドパターンを規定の範囲とし、かつラグ溝の溝深さの差CGD−SGD、およびトレッドゲージの比C/Sを規定の範囲とした。一方、実施例38および実施例39は、実施例34〜実施例37に対し、ラグ溝の溝深さの差CGD−SGD、およびトレッドゲージの比C/Sを規定の範囲から外した。
【0072】
図3−1〜
図3−9の試験結果に示すように、実施例1〜実施例39の空気入りタイヤは、それぞれ転がり抵抗が低減されると共に、トレッド面のセンター領域の耐摩耗性が改善され、かつ通過音(車外騒音)が低減されていることが分かる。しかも、実施例1〜実施例39の空気入りタイヤは、通過音のみならずウエット制動性が改善されていることが分かる。