特許第5931347号(P5931347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931347
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20160526BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20160526BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   G01N1/28 J
   C12M1/42
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-88411(P2011-88411)
(22)【出願日】2011年4月12日
(65)【公開番号】特開2012-217416(P2012-217416A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】金山 省一
【審査官】 田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−527220(JP,A)
【文献】 特表2010−501176(JP,A)
【文献】 特開2008−061649(JP,A)
【文献】 特開2009−186461(JP,A)
【文献】 特開2004−138583(JP,A)
【文献】 特開2006−115841(JP,A)
【文献】 特開2007−275057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−C12M 3/00
C12Q 1/00−C12Q 3/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応管と、
前記複数の反応管を所定の時間間隔毎に回動する反応ディスクと、
前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより試料吐出位置に配置された反応管に、試料を吐出するサンプルプローブと、
前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより破砕位置に配置され前記試料と被測定物質を含む細胞又はウイルスの破砕を促進するための金属微粒子又はバブルとを含む溶液が収容された反応管に、被測定物質を含む細胞又はウイルスを破砕するためのエネルギーを印加し、前記被測定物質を前記溶液に遊離させる破砕部と、
前記複数の反応管のうちの前記被測定物質が遊離している溶液が収容され前記反応ディスクにより測光位置に配置された反応管に光を照射し、前記被測定物質が遊離している溶液を透過した光の光量を測定する測光部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記サンプルプローブは、前記被測定物質が遊離された溶液から前記測光部による光量測定を阻害する阻害物を取り除くために、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより上澄み吸入位置に配置され前記被測定物質が遊離された溶液が収容された反応管から、前記被測定物質が遊離された溶液の上澄みを吸入し、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより上澄み吐出位置に配置された他の反応管に、前記上澄みを吐出し
前記測光部は、前記複数の反応管のうちの前記上澄みが収容され前記反応ディスクにより前記測光位置に配置された前記他の反応管に光を照射し、前記上澄みを透過した光の光量を測定する、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記被測定物質が遊離された溶液から前記測光部による光量測定を阻害する阻害物を取り除くために、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより濾過位置に配置された反応管を上下動するフィルターをさらに備え、
前記測光部は、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより測光位置に配置され前記阻害物が除去された溶液が収容された反応管に光を照射し、前記阻害物が除去された溶液を透過した光の光量を測定する、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項4】
被測定物質を含む細胞又はウイルスの破砕を促進するための金属微粒子又はバブルを収容可能な第1試薬庫と、
前記金属微粒子又はバブルを前記第1試薬庫内の吸入位置に配置された容器から吸入し、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより第1試薬吐出位置に配置され前記試料を収容する反応管に、前記吸入された金属微粒子又はバブルを吐出する第1試薬プローブと、
をさらに備える請求項1記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記被測定物質の測定項目に対応する試薬を収容可能な第2試薬庫と、
前記試薬を前記第2試薬庫内の吸入位置に配置された容器から吸入し、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより第2試薬吐出位置に配置され前記被測定物質が遊離された溶液が収容された反応管に、前記吸入された試薬を吐出する第2試薬プローブと、
をさらに備える請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記破砕部は、前記エネルギーとして電磁波又は音波を発生する放射源を有し、
前記反応ディスクは、恒温水で満たされ、前記複数の反応管を保持する反応槽と、前記反応槽の前記放射源側の壁面に設けられ前記放射源からのエネルギーを伝播する透過窓とを有する、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記反応ディスクは、前記透過窓に対向する反応槽の壁面に設けられ前記放射源からのエネルギーの伝播を阻止する吸収材をさらに備える、請求項6記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記反応ディスクは、前記複数の反応管のうちの隣り合う2つの反応管の間に、前記破砕部からのエネルギーの印加を防止する吸収材をさらに備える、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項9】
複数の反応管と、
前記複数の反応管を保持する反応ディスクと、
被測定物質を含む細胞又はウイルスの破砕を促進するための金属微粒子又はバブルを収容可能な第1試薬庫と、
前記被測定物質の測定項目に対応する試薬を収容可能な第2試薬庫と、
前記金属微粒子又はバブルのための第1試薬プローブと、
前記第1試薬プローブを回動可能に支持する第1アームと、
前記試薬のための第2試薬プローブと、
前記第2試薬プローブを回動可能に支持する第2アームと、
エネルギーを放射する破砕機構と、
透過光量を測定する測光機構と、
前記反応ディスク、前記第1試薬庫、前記第2試薬庫、前記第1試薬プローブ、前記第1アーム、前記第2試薬プローブ、前記第2アーム、前記破砕機構、及び前記測光機構を制御する制御部と、
を具備する自動分析装置であって、
前記制御部は、
前記第1試薬プローブの吸入及び吐出と前記第1アームの回動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記第1試薬プローブに前記第1試薬庫から前記金属微粒子又はバブルを吸入させ、前記吸入された金属微粒子又はバブルを前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより第1吐出位置に配置された第1反応管に吐出させ、
前記破砕機構の作動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記細胞又はウイルスを破砕するためのエネルギーを前記反応ディスクにより破砕位置に配置された前記第1反応管内の前記細胞又はウイルスと前記金属微粒子又はバブルとの第1混合液に印加し、前記被測定物質を前記第1混合液に遊離させ、
前記第1試薬プローブの吸入及び吐出と前記第1アームの回動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記第1試薬プローブに前記被測定物質が遊離された第1混合液の上澄みを前記反応ディスクにより吸入位置に配置された前記第1反応管から吸入させ、前記吸入された上澄みを前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより第2吐出位置に配置された第2反応管に吐出させ、
前記第2試薬プローブの吸入及び吐出と前記第2アームの回動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記第2試薬プローブに前記第2試薬庫から前記試薬を吸入させ、前記吸入された試薬を前記反応ディスクにより第3吐出位置に配置された前記第2反応管に吐出させ、
前記測光機構の作動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記反応ディスクにより測光位置に配置された前記第2反応管内の前記試薬と前記上澄みとの第2混合液に光を照射し、前記第2混合液を透過した光の光量を測定させる、
自動分析装置。
【請求項10】
複数の反応管と、
前記複数の反応管を保持する反応ディスクと、
被測定物質を含む細胞又はウイルスの破砕を促進するための金属微粒子又はバブルを収容可能な第1試薬庫と、
前記被測定物質の測定項目に対応する試薬を収容可能な第2試薬庫と、
前記金属微粒子又はバブルのための第1試薬プローブと、
前記第1試薬プローブを回動可能に支持する第1アームと、
前記試薬のための第2試薬プローブと、
前記第2試薬プローブを回動可能に支持する第2アームと、
エネルギーを放射する破砕機構と、
透過光量を測定する測光機構と、
前記透過光量の測定の阻害物を除去するためのフィルターを上下動可能に支持する濾過機構と、
前記反応ディスク、前記第1試薬庫、前記第2試薬庫、前記第1試薬プローブ、前記第1アーム、前記第2試薬プローブ、前記第2アーム、前記破砕機構、前記測光機構、及び濾過機構を制御する制御部と、
を具備する自動分析装置であって、
前記制御部は、
前記第1試薬プローブの吸入及び吐出と前記第1アームの回動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記第1試薬プローブに前記第1試薬庫から前記金属微粒子又はバブルを吸入させ、前記吸入された金属微粒子又はバブルを前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより第1吐出位置に配置された反応管に吐出させ、
前記破砕機構の作動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記細胞又はウイルスを破砕するためのエネルギーを前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより破砕位置に配置された前記反応管内の前記細胞又はウイルスと前記金属微粒子又はバブルとの第1混合液に印加し、前記被測定物質を前記第1混合液に遊離させ、
前記濾過機構の作動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより濾過位置に配置され前記反応管内に収容された前記第1混合液を前記フィルターで濾して前記第1混合液から前記阻害物を除去し、
前記第2試薬プローブの吸入及び吐出と前記第2アームの回動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記第2試薬プローブに前記第2試薬庫から前記試薬を吸入させ、前記吸入された試薬を前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより第2吐出位置に配置された前記反応管に吐出させ、
前記測光機構の作動と前記反応ディスクの回動とを制御して、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより測光位置に配置された前記反応管内の前記試薬と前記阻害物が除去された第1混合液との第2混合液に光を照射し、前記第2混合液を透過した光の光量を測定させる、
自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿等の試料に試薬を添加し試料に含まれる被測定物質の濃度を光学的に測定する。より詳細には、試料中を遊離する生体分子と試薬とを反応させ、その時の吸光度変化や濁度変化から被測定物質の濃度が測定される。試料中の血球に含まれるHbやHbA1c等の物質を測定する場合、試料に溶出剤を加え、被測定物質を溶液中に遊離させている。
【0003】
血液等の体液中には癌細胞など疾病指標となる細胞が含まれている場合がある。疾病指標となる細胞に含まれる特定の物質の濃度を測定することで、疾病の早期診断能や確定診断能の向上が期待できる。これらの物質は、疾病に関係する特定の細胞内にのみ存在し、体液中に遊離していない。自動分析装置でこれら物質を測定する場合、予め前処理を施した試料を準備しなければならない。試料に溶出剤を加え細胞から被測定物質を溶出させる方法は、処理に多大な時間を要する。また、添加した溶出剤により被測定物質が変性してしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4354447号公報
【特許文献2】特開2007―275057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたもので、細胞又はウイルス内に存在する被測定物質を迅速且つ正確に測定可能な自動分析装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る自動分析装置は、複数の反応管と、前記複数の反応管を所定の時間間隔毎に回動する反応ディスクと、被測定物質を含む細胞又はウイルスの破砕を促進するための金属微粒子又はバブルを収容可能な第1試薬庫と、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより試料吐出位置に配置された反応管に、試料を吐出するサンプルプローブと、前記複数の反応管のうちの前記反応ディスクにより破砕位置に配置され前記試料が収容された反応管に、被測定物質を含む細胞又はウイルスを破砕するためのエネルギーを印加し、前記被測定物質を前記溶液に遊離させる破砕部と、前記複数の反応管のうちの前記被測定物質が遊離している溶液が収容され前記反応ディスクにより測光位置に配置された反応管に光を照射し、前記溶液を透過した光の光量を測定する測光部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図。
図2図1の反応ディスクの外周近傍への破砕機構の設置例を示す図。
図3】本実施形態の実施例1に係る分析機構制御部の制御のもとに行われる分析機構の典型的な動作例を示す図。
図4】本実施形態の実施例2に係る分析機構制御部の制御のもとに行われる分析機構の典型的な動作例を示す図。
図5図4のステップSB2における分析機構の動作を説明するための図。
図6図4のステップSB4における分析機構の動作を説明するための図。
図7図4のステップSB5における分析機構の動作を説明するための図。
図8図4のステップSB5における分析機構の動作を説明するための他の図。
図9図4のステップSB5における第1試薬プローブによる混合液の吸入の様子を示す図。
図10】本実施形態の実施例3に係る分析機構制御部の制御のもとに行われる分析機構の典型的な動作例を示す図。
図11図10のステップSC5における分析機構の動作を説明するための図。
図12図11の濾過機構の構造及び動作の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置1の構成を示す図である。図1に示すように、自動分析装置1は、分析機構2、分析機構制御部3、解析部4、操作部5、表示部6、記憶部7、及びシステム制御部8を備える。
【0010】
分析機構2は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。分析機構2は、例えば、図1に示すように、反応ディスク11、ディスクサンプラ13、第1試薬庫15、第2試薬庫17、サンプルアーム19―1、サンプルプローブ21―1、第1試薬アーム19―2、第1試薬プローブ21―2、第2試薬アーム19―3、第2試薬プローブ21―3、撹拌アーム23、撹拌子25、破砕機構27、測光機構29、及び反応管洗浄機構31を搭載している。
【0011】
反応ディスク11は、自動分析装置の筐体のステージの所定位置に配置されている。反応ディスク11は、円周上に配列された複数の反応管33を保持する。反応ディスク11は、分析機構制御部3の制御により作動する。具体的には、反応ディスク11は、ある一定の時間間隔で回動と停止とを交互に繰り返す。具体的には、反応ディスク11は、一回の回動で所定角度だけ回転する。所定角度は、例えば、略1/4周に設定される。この場合、4回の回動の前と後とで、各反応管33は1セル分移動していることとなる。このように反応ディスク11は、回動と停止とを交互に繰り返し、各反応管33を反応ディスク内11の全てのセル位置に配置させる。
【0012】
ディスクサンプラ13は、反応ディスク11の近傍に配置されている。ディスクサンプラ13は、試料が収容されたサンプル容器35を保持する。本実施形態に係る試料は、被測定物質を含む細胞又はウイルスを含む体液又は細胞培養液が対象である。体液としては、例えば、血液や血清、唾液、尿等が適用可能である。被測定物質は、細胞又はウイルスに含まれる生体成分である。例えば、被測定物質は、細胞が赤血球の場合、HbやHbA1c等の成分である。また、被測定物質は、細胞又はウイルスに含まれるDNA(deoxyribonucleic acid)やRNA(ribonucleic acid)であってもよい。なおこれら具体的に挙げた被測定物質は、一例であって、本実施形態に係る被測定物質としては、あらゆる細胞又はウイルスに含まれるあらゆる生体成分が適用可能である。ディスクサンプラ13は、分析機構制御部3の制御により作動する。ディスクサンプラ13は、分注対象の試料が収容されたサンプル容器35が試料吸入位置に配置されるように回動する。
【0013】
第1試薬庫15は、反応ディスク11の内側に配置される。第1試薬庫15は、第1試薬が収容される複数の第1試薬容器37を保持する。本実施形態に係る第1試薬は、被測定物質の透過光量の測定を容易にするための前処理に利用される試薬溶液である。この試薬溶液は、例えば、細胞又はウイルスの破砕を誘発する金属微粒子又はバブルを含む。第1試薬庫15は、分析機構制御部3の制御により作動する。第1試薬庫15は、分注対象の第1試薬が収容された第1試薬容器37が第1試薬吸入位置に配置されるように回動する。
【0014】
第2試薬庫17は、反応ディスク11の近傍に配置される。第2試薬庫17は、第2試薬が収容される複数の第2試薬容器を保持する。第2試薬は、被測定物質の測定項目に選択的に反応する試薬溶液である。第2試薬庫17は、分析機構制御部3の制御により作動する。第2試薬庫17は、分注対象の第2試薬が収容された第2試薬容器39が第2試薬吸入位置に配置されるように回動する。
【0015】
反応ディスク11とディスクサンプラ13との間にはサンプルアーム19―1が配置される。サンプルアーム19―1の先端には、サンプルプローブ21―1が取り付けられている。サンプルアーム19―1は、サンプルプローブ21―1を上下動可能に支持している。また、サンプルアーム19―1は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能にサンプルプローブを支持している。サンプルプローブの回動軌跡は、ディスクサンプラ13内のサンプル吸入位置や反応ディスク11内のサンプル吐出位置を通過する。サンプルプローブ21―1は、ディスクサンプラ19―1内のサンプル吸入位置に配置されているサンプル容器37から試料を吸入し、反応ディスク11内のサンプル吐出位置に配置されている反応管35に試料を吐出する。
【0016】
反応ディスク11の外周近傍には第1試薬アーム19―2が配置される。第1試薬アーム19―2の先端には第1試薬プローブ21―2が取り付けられている。第1試薬アーム19―2は、第1試薬プローブ21―2を上下動可能に支持する。また、第1試薬アーム19―2は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に第1試薬プローブ21―2を支持している。第1試薬プローブ21―2の回動軌跡は、第1試薬庫15内の第1試薬吸入位置や反応ディスク11内の第1試薬吐出位置を通過する。第1試薬プローブ21―2は、第1試薬庫15内の第1試薬吸入位置に配置されている第1試薬容器37から第1試薬を吸入し、反応ディスク11内の第1試薬吐出位置に配置されている反応管33に第1試薬を吐出する。
【0017】
反応ディスク11と第2試薬庫17との間には第2試薬アーム19―3が配置される。第2試薬アーム19―3の先端には第2試薬プローブ21―3が取り付けられている。第2試薬アーム19―3は、第2試薬プローブ21―3を上下動可能に支持する。また、第2試薬アーム19―3は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に第2試薬プローブ21―3を支持している。第2試薬プローブ21―3の回動軌跡は、第2試薬庫17内の第2試薬吸入位置や反応ディスク11内の第2試薬吐出位置を通過する。第2試薬プローブ21―3は、第2試薬庫17内の第2試薬吸入位置に配置されている第2試薬容器41から第2試薬を吸入し、反応ディスク11内の第2試薬吐出位置に配置されている反応管33に第2試薬を吐出する。
【0018】
反応ディスク11の外周近傍には撹拌アーム23が配置される。撹拌アーム23の先端には撹拌子25が取り付けられている。撹拌アーム23は、撹拌子25を上下動可能に支持する。撹拌子25は、反応ディスク11上の撹拌位置に配置された反応管33内の溶液を撹拌する。
【0019】
反応ディスク11の外周近傍には、破砕機構27が設けられている。破砕機構27は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。具体的には、破砕機構27は、被測定物質を含む細胞又はウイルスを破砕するためのエネルギーを、反応ディスク11内の破砕位置にある反応管33内の溶液に印加し、細胞又はウイルス内の被測定物質を溶液に遊離させる。
【0020】
反応ディスク11には、測光機構29が設けられている。測光機構29は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。具体的には、測光機構29は、反応ディスク11内の測光位置にある反応管33に光を照射する。反応管33は、測光位置に照射されている光を横切るように反応ディスク11により回動される。測光機構29は、反応管33内の被測定物質が遊離している溶液の透過光の光量を測定し、測定された光量に応じた測定値を有するデータ(以下、測光データと呼ぶことにする。)を生成する。測光データは、解析部4に供給される。
【0021】
反応ディスク11の外周には、反応管洗浄機構31が設けられている。反応管洗浄機構31は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。具体的には、反応管洗浄機構31は、洗浄ノズルと乾燥ノズルとが取り付けられている。反応管洗浄機構31は、反応ディスク11の洗浄位置にある反応管33を洗浄ノズルで洗浄し、乾燥ノズルで乾燥する。
【0022】
分析機構制御部3は、システム制御部8による制御に従って分析機構2の各装置や機構を作動する。解析部4は、測光データの測定値に基づいて試料の成分分析を行う。表示部5は、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスを有する。表示部5は、自動分析のための設定画面や成分分析結果を表示する。操作部6は、オペレータからの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部6としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。記憶部7は、細胞又はウイルスを自動的に破砕し、被測定物質の透過光量を自動的に測定するための自動破砕/測定処理のための動作プログラム等を記憶している。システム制御部8は、自動分析装置1の中枢として機能する。システム制御部8は、記憶部7から動作プログラムを読み出し、動作プログラムに従って各部3,4,5,6,7を制御する。
【0023】
次に本実施形態に係る自動分析装置1の詳細な構造及び動作について説明する。なお、説明の簡単のため試料は、被測定物質を含む細胞を含む溶液であるとする。
【0024】
まずは、図2を参照しながら破砕機構27について説明する。図2は、反応ディスク11の外周近傍への破砕機構27の設置例を示す図である。図2に示すように、反応ディスク11は、恒温水で満たされた反応槽41を装備している。反応槽41は、円周形状を有している。反応槽41は、複数の反応管33を保持している。
【0025】
破砕機構27は、エネルギー放射源43を有している。エネルギー放射源43は、電磁波や音波等のエネルギーを発生する。電磁波としては、レーザーやマイクロ波が適用される。エネルギー放射源43は、エネルギーの放射口45が反応ディスク11内に設定された破砕位置を向くように設置される。破砕位置は、反応槽41における、エネルギー放射源43からのエネルギーの伝播領域に設定される。エネルギーの伝播領域内におけるエネルギー放射源43側の反応槽41の壁面には、反応槽41の外側から内側へのエネルギーの伝播を良好にするためのエネルギー透過窓47が設けられる。また、反応管33を挟んでエネルギー透過窓47に対向する反応槽41の壁面には、反応槽41の外側へのエネルギーの伝播を阻止あるいは抑制するためのエネルギー吸収材49が設けられる。
【0026】
例えば、レーザー光を放射するエネルギー放射源43を利用する場合、エネルギー透過窓47としては、レーザーの発振波長を含む所望波長の光を透過するガラス材や樹脂材が用いられる。この場合、エネルギー吸収材49としては、例えば、レーザーの発振波長を含む所望波長の光を吸収する樹脂材や金属が用いられるとよい。マイクロ波を放射するエネルギー放射源43を利用する場合、エネルギー透過窓47としては、テフロン(登録商標)のような損失係数が小さい誘電体が用いられる。この場合、エネルギー吸収材49としては、例えば、カーボンのような損失係数が大きい誘電体が用いられるとよい。
【0027】
エネルギー放射源43から放射されたエネルギーは、エネルギー透過窓47を介して反応槽41内へ伝播する。反応槽41内へ伝播されたエネルギーは、破砕位置にある反応管33及び反応管33内の混合液を透過し、エネルギー吸収材49により吸収される。
【0028】
例えば、分析機構制御部3は、反応ディスク11の回動中、破砕対象の細胞が収容された反応管33が所定の破砕指示位置を横切る毎にエネルギー放射源43に発生指示を供給する。発生指示を受けたエネルギー放射源43は、パルス状のエネルギーを破砕位置に向けて放射する。破砕指示位置は、例えば、前述の破砕位置に設定されてもよい。また、発生指示からエネルギー発生までの遅延時間を考慮し、破砕指示位置は、破砕位置の手前側、すなわち、破砕位置から遅延時間に対応する距離だけ回動方向に沿って遡った位置に設定されてもよい。放射されるエネルギーは、破砕対象の反応管33にのみ印加されるような指向性を有する。なお本実施形態においてエネルギーは、パルス波に限定されず、連続波であっても良い。
【0029】
なお、破砕対象の反応管33以外の反応管33へのエネルギーの印加を防止するため、隣り合う2つの反応管33の間にエネルギー吸収材49が設けられても良い。
【0030】
細胞破砕のため、細胞を含む試料に金属微粒子又はバブルが混合される。エネルギーが電磁波の場合、細胞を含む試料に金属微粒子が混合される。金属微粒子としては、被測定物質を含む細胞に特異的に結合する性質を有する物質が適用される。また、金属微粒子は、エネルギー放射源43から放射される電磁波の吸収又は散乱が顕著な物質が良い。金属微粒子は、電磁波の吸収により加熱しアブレーション現象を引き起こす。このアブレーション現象に伴う物理的衝撃により、金属微粒子が結合された細胞が破砕される。逆に言えば、エネルギー放射源43から発生される電磁波は、金属微粒子にアブレーション現象を引き起こすことが可能なエネルギーを有し、金属微粒子が吸収可能な波長帯域に属すると良い。
【0031】
エネルギーが超音波の場合、細胞を含む試料にバブルが混合される。バブルは、所定溶液のキャビテーション現象により発生された小気泡である。所定溶液は、測定物質の測定項目のための試薬溶液であっても良いし、純水等の他の溶液であってもよい。バブルは、超音波による物理的衝撃を受けて壊滅する。バブルの壊滅時において大きな衝撃的圧力が発生する。この衝撃的圧力によりバブル近傍の細胞が破砕される。
【0032】
なお前述のように、金属微粒子又はバブルは細胞破砕を誘発するために利用される。従って、金属微粒子又はバブルを利用すること無しに細胞を破砕することが可能であれば、金属微粒子又はバブルを利用しなくともよい。エネルギー放出源43からのエネルギーのエネルギー値は、任意に設定可能である。例えば、エネルギー放出源43からのエネルギーが細胞を直接的には破砕可能なエネルギー値を有する場合、金属微粒子又はバブルは不要である。より具体的には、反応管33が破砕位置を横切る毎にエネルギーが1回だけ印加される場合、1回で細胞を破砕可能なエネルギー値に設定されるとよい。反応管33が破砕位置を横切る毎にエネルギーが複数回印加される場合、複数回のエネルギー印加で細胞を破砕可能なエネルギー値に設定されるとよい。
【0033】
次に分析機構制御部3の制御により行われる分析機構2の動作例について説明する。本実施形態に係る動作例としては、複数の実施例が用意されている。以下、各実施例について説明する。なお、以下の説明において破砕機構27により発生されるエネルギーは、レーザーパルスであるとする。また、第1試薬には金属微粒子が含まれているとする。
【0034】
[実施例1]
図3は、実施例1に係る分析機構制御部3の制御のもとに行われる分析機構2の典型的な動作例を示す図である。
【0035】
オペレータから操作部6を介して開始指示が入力されるとシステム制御部8は、記憶部7から動作プログラムを読み出して自動破砕/測定処理を開始する。自動破砕/測定処理においてシステム制御部8は、分析機構制御部3を制御してステップSA1からSA7までの処理を行わせる。
【0036】
ステップSA1において分析機構制御部3は、サンプルプローブ21―1でディスクサンプラ13から分注対象の試料を吸入し、反応ディスク11の反応管35に吐出させる。具体的には、分析機構制御部3は、ディスクサンプラ13を回動し、被測定物質を含む細胞を含む試料が収容されたサンプル容器35をディスクサンプラ内の試料吸入位置に配置させる。また、分析機構制御部3は、サンプルプローブ21―1がディスクサンプラ13内の試料吸入位置上に配置されるようにサンプルアーム19―1を回動させる。サンプルプローブ21―1が試料吸入位置上に配置されると分析機構制御部3は、サンプルアーム19―1を駆動してサンプルプローブ21―1の先端がサンプル容器35内の試料に浸るまでサンプルプローブ21―1を下降させる。そして分析機構制御部3は、サンプルプローブ21―1のポンプを駆動し、サンプルプローブ21―1に細胞を含む試料を吸入させる。試料が吸入されると分析機構制御部3は、サンプルアーム19―1を駆動してサンプルプローブ21―1を上昇させる。サンプルプローブ21―1の上昇後、分析機構制御部3は、サンプルプローブ21―1が反応ディスク11の試料吐出位置上に配置されるようにサンプルアーム19―1を回動する。また、分析機構制御部3は、自動破砕/測定処理が開始されると、所定の時間間隔で反応ディスク11の回動と停止とを交互に繰り返し、吐出対象の反応管33を反応ディスク11内の試料吐出位置に配置させる。サンプルプローブ21―1が試料吐出位置上に配置されると分析機構制御部3は、サンプルアーム19―1を駆動してサンプルプローブ21―1の先端が反応管33内の底面近傍に配置されるまでサンプルプローブ21―1を下降させる。そして分析機構制御部3は、サンプルプローブ21―1のポンプを駆動し、吸入された試料を試料吐出位置に配置された反応管33に吐出させる。以下、試料が吐出された反応管33を反応管Aと呼ぶことにする。試料が吐出されると分析機構制御部3は、サンプルアーム19―1を駆動してサンプルプローブ21―1を上昇させる。
【0037】
ステップSA2において分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2で第1試薬庫15から分注対象の第1試薬(金属微粒子)を吸入し、反応管Aに吐出させる。具体的には、分析機構制御部3は、第1試薬庫15を回動し、被測定物質を含む細胞の破砕を促進する金属微粒子を含む第1試薬が収容された第1試薬容器37を第1試薬庫15内の第1試薬吸入位置に配置させる。また、分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2が第1試薬庫15内の第1試薬吸入位置上に配置されるように第1試薬アーム19―2を回動させる。第1試薬プローブ21―2が第1試薬吸入位置上に配置されると分析機構制御部3は、第1試薬アーム19―2を駆動して第1試薬プローブ21―2の先端が第1試薬容器37内の第1試薬に浸るまで第1試薬プローブ21―2を下降させる。そして分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2のポンプを駆動し、第1試薬プローブ21―2に金属微粒子を含む第1試薬を吸入させる。第1試薬が吸入されると分析機構制御部3は、第1試薬アーム19―2を駆動して第1試薬プローブ21―2を上昇させる。第1試薬プローブ21―2の上昇後、分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2が反応ディスク11の第1試薬吐出位置上に配置されるように第1試薬アーム19―2を回動する。また、分析機構制御部3は、所定の時間間隔で反応ディスクの回動と停止とを交互に繰り返し、反応管Aを反応ディスク11内の第1試薬吐出位置に配置させる。第1試薬プローブ21―2が第1試薬吐出位置上に配置されると分析機構制御部3は、第1試薬アーム19―2を駆動して第1試薬プローブ21―2の先端が反応管33内の底面近傍に配置されるまで第1試薬プローブ21―2を下降させる。そして分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2のポンプを駆動し、吸入された第1試薬を反応管Aに吐出させる。これにより反応管A内の細胞と金属微粒子とが結合される。第1試薬が吐出されると分析機構制御部3は、第1試薬アーム19―2を駆動して第1試薬プローブ21―2を上昇させる。
【0038】
ステップSA3において分析機構制御部3は、反応管A内の混合液を撹拌子25で撹拌させる。具体的には、分析機構制御部3は、所定の時間間隔で反応ディスク11の回動と停止とを交互に繰り返し、ステップSA2において第1試薬が吐出された反応管Aを反応ディスク11の撹拌位置に配置させる。反応管Aが撹拌位置に配置されると分析機構制御部3は、撹拌アーム23を駆動して撹拌子25が反応管A内の試料と第1試薬との混合液に浸るまで下降させる。そして分析機構制御部3は、撹拌子25を振動し、反応管A内の試料と第1試薬との混合液を撹拌する。撹拌により細胞と金属微粒子との結合が促進される。
【0039】
ステップSA4において分析機構制御部3は、破砕機構27を作動して反応管A内の混合液中の細胞をレーザーパルスで破砕する。具体的には、分析機構制御部3は、所定の時間間隔で反応ディスク11の回動と停止とを交互に繰り返している。反応ディスク11の回動中、反応管Aが前述の破砕指示位置を横切る毎に、分析機構制御部3は、破砕機構27のエネルギー放射源43に発生指示を供給する。発生指示を受けたエネルギー放射源43は、レーザーパルスを破砕位置に向けて放射する。反応管A内の細胞は、レーザーパルスを受けて、又はレーザーパルスによる金属微粒子のアブレーション現象に伴う衝撃を受けて反応管A内で破砕される。細胞が破砕されることにより、細胞の被測定物質が混合液中に遊離される。
【0040】
ステップSA5において分析機構制御部3は、第2試薬プローブ21―3で第2試薬庫17から分注対象の第2試薬を吸入し、反応管Aに吐出させる。具体的には、分析機構制御部3は、第2試薬庫17を回動し、被測定物質の測定項目に特異的に反応する第2試薬が収容された第2試薬容器を第2試薬庫17内の第2試薬吸入位置に配置させる。また、分析機構制御部3は、第2試薬プローブ21―3が第2試薬庫17内の第2試薬吸入位置上に配置されるように第2試薬アーム19―3を回動させる。第2試薬プローブ21―1が第2試薬吸入位置上に配置されると分析機構制御部3は、第2試薬アーム19―3を駆動して第2試薬プローブ21―3の先端が第2試薬容器39内の第2試薬に浸るまで第2試薬プローブ21―3を下降させる。そして分析機構制御部3は、第2試薬プローブ21―3のポンプを駆動し、第2試薬プローブ21―3に第2試薬を吸入させる。第2試薬が吸入されると分析機構制御部3は、第2試薬アーム19―3を駆動して第2試薬プローブ21―3を上昇させる。第2試薬プローブ21―3の上昇後、分析機構制御部3は、第2試薬プローブ21―3が反応ディスク11の第2試薬吐出位置上に配置されるように第2試薬アーム19―3を回動する。また、分析機構制御部3は、所定の時間間隔で反応ディスク11の回動と停止とを交互に繰り返し、反応管Aを反応ディスク11内の第2試薬吐出位置に配置させる。第2試薬プローブ21―3が第2試薬吐出位置上に配置されると分析機構制御部3は、第2試薬アーム19―3を駆動して第2試薬プローブ21―3の先端が反応管A内の底面近傍に配置されるまで第2試薬プローブ21―3を下降させる。そして分析機構制御部3は、第2試薬プローブ21―3のポンプを駆動し、吸入された第2試薬を反応管Aに吐出させる。これにより反応管A内の被測定物質と第2試薬とが化学反応を開始する。第2試薬が吐出されると分析機構制御部3は、第2試薬アーム19―3を駆動して第2試薬プローブ21―3を上昇させる。
【0041】
ステップSA6において分析機構制御部3は、反応管A内の混合液を撹拌子25で撹拌させる。具体的には、分析機構制御部3は、所定の時間間隔で反応ディスク11の回動と停止とを交互に繰り返し、反応管Aを反応ディスク11の撹拌位置に配置させる。反応管Aが撹拌位置に配置されると分析機構制御部3は、ステップSA3と同様にして反応管A内の混合液を撹拌する。撹拌により被測定物質と第2試薬との化学反応が促進される。
【0042】
ステップSA7において分析機構制御部3は、測光機構29を作動して反応管A内の混合液の透過光量を測定する。具体的には、分析機構制御部3は、所定の時間間隔で反応ディスク11の回動と停止とを交互に繰り返している。反応ディスク11の回動中、分析機構制御部3は、反応管Aが測光位置を横切る毎に測光機構29に透過光量の測定を行わせる。測定において測光機構29は、測光位置に向けて光を放射する。放射された光は、測光位置を横切る反応管A内の、非測定物質が遊離されている混合液を透過する。測光機構29は、混合液を透過した光の光量を測定し、測定された光量に応じた測定値を有する測光データを生成する。ステップSA7において生成された測光データは、被測定物質の濃度等の計算等のために、解析部4により解析される。
【0043】
ステップSA7が終了するとシステム制御部8は、自動破砕/測定処理を終了する。
【0044】
前述のように、実施例1に係る自動分析装置1は、破砕機構27を搭載している。破砕機構27は、分析機構制御部3による制御のもと、反応管33内の溶液に含まれる細胞又はウイルスをエネルギーで破砕し、細胞又はウイルス内の被測定物質を溶液内に遊離させる。測光機構29は、分析機構制御部3による制御のもと、被測定物質が遊離している溶液の透過光量を測定する。このように自動分析装置1は、破砕工程と測定工程とを自動化している。つまり、自動分析装置1は、細胞又はウイルスから被測定物質を自動的に取り出し、この細胞又はウイルス中にのみ存在する被測定物質の透過光量を自動的に測定することができる。また、自動分析装置1は、被測定物質を溶出させるための溶出剤を利用せず、エネルギーの印加により被測定物質を取り出すので、被測定物質が変性しない。従って自動分析装置1は、疾病の早期診断能や確定診断能を向上させることができる。
【0045】
[実施例2]
細胞が破砕されることにより、細胞の欠片が反応管33内の溶液中に散らばる。溶液中に散らばっている細胞片や金属微粒子は、測光機構29からの光を散乱したり吸収したりするので光量測定の阻害要因であり、測定値の信頼性を低下させる。実施例2に係る自動分析装置は、新たな機構を設けることなく、阻害物を除去する仕組みを有している。以下、実施例2に係る自動分析装置1について説明する。なお以下の説明において、実施例1と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0046】
図4は、実施例2に係る分析機構制御部3の制御のもとに行われる分析機構2の典型的な動作例を示す図である。
【0047】
オペレータから操作部6を介して開始指示が入力されるとシステム制御部8は、記憶部7から動作プログラムを読み出して自動破砕/測定処理を開始する。まず、システム制御部8は、分析機構制御部3を制御してステップSB1からSB8までの処理を行わせる。
【0048】
ステップSB1において分析機構制御部3は、サンプルプローブ21―1でディスクサンプラ13から分注対象の試料を吸入し、反応ディスク11上の反応管Aに吐出させる。ステップSB1の動作は、ステップSA1の動作と同一なので詳細は省略する。
【0049】
ステップSB2において分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2で第1試薬庫15から分注対象の第1試薬(金属微粒子を含む)を吸入し、反応ディスク11の反応管Aに吐出させる。ステップSB2の動作は、ステップSA2の動作と同様である。しかし、実施例2に係る動作説明を明瞭に行うため、図5を参照しながらステップSB2の動作を簡便に説明する。
【0050】
図5は、ステップSB2の動作を説明するための図である。図に示すように、反応管Aは、反応ディスクのある停止期間(サイクルA)において第1試薬吐出位置に配置されているとする。第1試薬プローブ21―2は、第1試薬アーム19―2による回動軌跡LOに沿う回動により、第1試薬吐出位置上に配置され、反応管AにステップSB1において吸入した金属微粒子を吐出する。なお第1試薬プローブ21―2の回動軌跡LOは、反応ディスク11の反応管33の回動軌跡と2箇所で交わる。第1試薬吐出位置は、この2箇所のうちの1箇所に設定されている。他の箇所は、ステップSB5における混合液吸入位置に設定されている。
【0051】
ステップSB3において分析機構制御部3は、反応管A内の混合液を撹拌子25で撹拌させる。ステップSB3の動作は、ステップSA3の動作と同一なので詳細は省略する。
【0052】
ステップSB4において分析機構制御部3は、破砕機構27を作動して反応管A内の混合液中の細胞をレーザーパルスで破砕する。ステップSB4の動作は、ステップSA4の動作と同様である。しかし、実施例2に係る動作説明を明瞭に行うため、図6を参照しながらステップSB4の動作を簡便に説明する。
【0053】
図6は、ステップSB4の動作を説明するための図である。図6に示すように、反応ディスク11の回動中、破砕機構27のエネルギー放射源43は、破砕位置を横切る反応管Aにレーザーパルスを印加するために、破砕位置に向けてレーザーパルスを放射する。レーザーパルスの印加により細胞が破砕され、反応管A内の被測定物質が混合液中に遊離される。また、細胞破砕により混合液中に細胞片や金属微粒子が散らばる。
【0054】
ステップSB5において分析機構制御部3は、被測定物質が遊離された反応管A内の混合液を第1試薬プローブ21―2で他の反応管Bに吐出させる。このステップSB5は、細胞片や金属微粒子等の阻害物の除去のために行われる。
【0055】
図7は、ステップSB5の動作を説明するための図である。図7に示すように、分析機構制御部3は、所定の時間間隔で反応ディスクの回動と停止とを交互に繰り返し、他の停止期間(サイクルB)において反応管Aを反応ディスク11内の混合液吸入位置に配置させる。サイクルBにおいて、反応管Bが反応ディスク11内の第1試薬吸入位置に配置されている。反応管Bは、空でもよいし、測定対象の試料の変性や劣化を防止するための溶液が収容されていてもよい。また、分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2が反応ディスク11内の混合液吸入位置上に配置されるように第1試薬アーム19―2を回動させる。第1試薬プローブ21―2が混合液吸入位置上に配置されると分析機構制御部3は、第1試薬アーム19―2を駆動して第1試薬プローブ21―2の先端が反応管A内の混合液に浸るまで第1試薬プローブ21―2を下降させる。そして分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2のポンプを駆動し、第1試薬プローブ21―2に混合液の一部分だけを吸入させる。この一部分は、混合液中の阻害物があまり浮遊していない部分である。混合液が吸入されると分析機構制御部3は、第1試薬アーム19―2を駆動して第1試薬プローブ21―2を上昇させる。
【0056】
図8は、ステップSB5の動作を説明するための他の図である。図8に示すように、第1試薬プローブ21―2の上昇後、分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2が反応ディスク11内の第1試薬吐出位置上に配置されるように第1試薬アーム19―2を回動する。なお混合液の吸入と第1試薬プローブの第1試薬吐出位置への回動とは、同一の停止期間(サイクルB)において行われる。第1試薬プローブ21―2が第1試薬吐出位置上に配置されると分析機構制御部3は、第1試薬アーム19―2を駆動して第1試薬プローブ21―2の先端が反応管B内の底面近傍に配置されるまで第1試薬プローブ21―2を下降させる。そして分析機構制御部3は、第1試薬プローブ21―2のポンプを駆動し、吸入された混合液を反応管Bに吐出させる。混合液が吐出されると分析機構制御部3は、第1試薬アーム19―2を駆動して第1試薬プローブ21―2を上昇させる。
【0057】
なお、反応管Aからの混合液を吸入する際、阻害物も一緒に吸入しないようにする必要がある。図9は、ステップSB5における混合液の吸入の様子を示す図である。図9に示すように、細胞片等の阻害物は、反応管A内の底付近に分布していると考えられる。一方、被測定物質は、阻害物よりも軽く、混合液中に散在していると考えられる。従って、第1試薬プローブ21―2により混合液の上澄みが吸入されるとよい。これにより、阻害物の吸入をできるだけ少なくした上で、被測定物質を吸入することができる。混合液の吸入量は、光量測定に十分な量に設定される。第1試薬プローブ21―2に吸入された混合液は、前述のように反応管Bに吐出される。
【0058】
このようにステップSB5においては、第1試薬プローブ21―2により被測定物質が遊離された溶液が再分取される。再分取後の混合液(すなわち、反応管Bに吐出された混合液)における阻害物の濃度は、再分取前の混合液(すなわち、反応管Aに含まれていた混合液)における阻害物の濃度よりも低下している。なお、ステップSB5の被測定物質が遊離された溶液の再分取にはサンプルプローブ21−1を用いても良い。
【0059】
ステップSB6において分析機構制御部3は、第2試薬プローブ21―3で第2試薬庫17から分注対象の第2試薬を吸入し、反応管Bに吐出させる。ステップSB6の動作は、ステップSA5の動作と同一なので詳細は省略する。
【0060】
ステップSB7において分析機構制御部3は、反応管B内の混合液と第2試薬とを撹拌子25で撹拌させる。ステップSB7の動作は、ステップSA6の動作と同一なので詳細は省略する。
【0061】
ステップSB8において分析機構制御部3は、測光機構29を作動して反応管B内の混合液の透過光量を測定する。ステップSB8の動作は、ステップSA7の動作と同一なので詳細は省略する。
【0062】
ステップSB8が終了するとシステム制御部8は、実施例2に係る自動破砕/測定処理を終了する。
【0063】
実施例2によれば分析機構制御部3は、細胞破砕が行われた混合液中の阻害物以外の一部分をプローブ21を利用して他の反応管33に移し変えることができる。そのため、実施例2に係る測光対象の混合液は、実施例1に係る測光対象の混合液よりも阻害物が少ない。従って実施例2に係る測定値は、実施例1に係る測定値の信頼性よりも高い。また、後述の実施例3のように阻害物の除去のための新たな機構を必要としない。そのため、実施例2に係る自動分析装置1は、実施例3に比して、分析機構2の制御が簡便であり、また、製造コストが低い。
【0064】
[実施例3]
実施例2に係る分析機構制御部3は、細胞破砕が行われた混合液中の阻害物以外の一部分をプローブ21を利用して他の反応管33に移し変えていた。実施例3に係る分析機構制御部3は、細胞破砕が行われた混合液から阻害物を除去するための濾過機構を搭載している。以下、実施例3に係る自動分析装置1について説明する。なお以下の説明において、実施例1及び2と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0065】
図10は、実施例3に係る分析機構制御部3の制御のもとに行われる分析機構2の典型的な動作例を示す図である。なお、実施例3に係る動作と実施例2に係る動作との同一部分は、同一のステップ番号を付し説明を省略する。
【0066】
ステップSB4において細胞破砕が行われると分析機構制御部3の制御のもとにステップSC5が行われる。ステップSC5において分析機構制御部3は、濾過機構を作動して被測定物質が遊離された混合液を濾過する。このステップSC5は、細胞片や金属微粒子等の阻害物の除去のために行われる。
【0067】
図11は、ステップSC5の動作を説明するための図である。図11に示すように、実施例3に係る分析機構3は、反応ディスク11の濾過位置に配置された反応管33を濾過するための濾過機構51を搭載している。分析機構制御部3は、所定の時間間隔で反応ディスクの回動と停止とを交互に繰り返し、サイクルBにおいて反応管Aを濾過位置に配置させる。反応管Aが濾過位置に配置されると分析機構制御部3は、濾過機構51を作動する。
【0068】
図12は、濾過機構51の簡略的な構造及び動作の一例を示す図である。図12に示すように、濾過機構51は、細胞破砕後の混合液を濾すためのフィルター53を上下動可能に支持している。フィルター53は、混合液から細胞片や金属微粒子等の阻害物を取り除き、被測定物質を取り除かないことが可能な大きさの複数の孔を有している。濾過機構51は、フィルター53を上昇又は下降するための電磁モータ等の駆動装置(図示せず)を搭載している。駆動装置は、分析機構制御部3による制御に従ってフィルター53を上昇又は下降する。なお反応ディスク11内の濾過位置は、フィルター53を反応管33内に下降可能な位置に設定される。
【0069】
具体的には、駆動装置は、フィルター53が反応管Aの底面又は底面近傍に到達するようにフィルター53を下降させ、到達後、フィルター53を上昇させる。これにより濾過機構51は、混合液から阻害物を除去する。なお、フィルター53を介した混合液の汚染を防止するため、純水等の洗浄水にフィルター53を浸すことによりフィルター53を洗浄すると良い。
【0070】
このようにステップSC5においては、フィルター53により被測定物質や阻害物を含む溶液が濾過される。濾過後の混合液に占める阻害物の量は、濾過前の混合液に占める阻害物の量よりも低下している。
【0071】
ステップSC5が行われると分析機構制御部3は、ステップSB7、ステップSB8を順番に行う。
【0072】
ステップSB8が終了するとシステム制御部8は、実施例3に係る自動破砕/測定処理を終了する。
【0073】
実施例3によれば分析機構制御部3は、細胞破砕が行われた混合液をフィルター53で濾すことにより混合液から阻害物を取り除くことができる。そのため、実施例3に係る測光対象の混合液は、実施例1に係る測光対象の混合液よりも阻害物が少ない。従って実施例3に係る測定値は、実施例1に係る測定値の信頼性よりも高い。また、実施例3においては、阻害物の除去等のために混合液を空等の他の反応管33に移し変える必要がない。すなわち、空等の他の反応管35を反応ディスク11に用意する必要が無い。そのため実施例3に係る自動分析装置1は、実施例2に比して、動作中において、試料が収容された反応管35をより多く反応ディスク11に配置することができ、自動分析のスループットが向上する。
【0074】
なお、濾過の方法は、前述の方法のみに限定されない。例えば、反応ディスク11の外周に、濾過膜を有する濾過機構を設けると良い。この場合、分析機構制御部3は、阻害物を含む混合液を反応管Aから専用のノズルで吸入し、濾過機構に吐出させる。濾過機構に吐出された混合液は濾過膜により濾される。これにより、阻害物が混合液から取り除かれる。分析機構制御部3は、濾過膜を通過した混合液を専用のノズルで吸入し、反応ディスク11の他の反応管Bに吐出させる。これにより、阻害物が取り除かされた混合物の光量測定を行うことができる。
【0075】
(変形例1)
細胞片や金属微粒子等の阻害物による測光の阻害を阻止するための方策は前述のみに限定されない。例えば、細胞破砕のために金属微粒子を利用する場合、反応槽の反応管33底面側に磁石を設けると良い。金属微粒子は、磁石に由来する磁力により引き寄せられる。従って、反応ディスク11の回動中、磁石に由来する磁力が作用する領域に反応管33が入り込むと、反応管33内の金属微粒子に結合されている細胞片や金属微粒子そのものは、反応管33の底面に引き寄せられる。一度底面に引き寄せられた金属微粒子や細胞片は、撹拌が行われない限り、磁力の作用する領域から抜け出してもおおよそ底面近傍に分布し続ける。この状態で測光機構29により透過光量の測定が行われる。この場合、細胞片や金属微粒子が分布しているので、測光の妨害は行われない。従って測定値の信頼性が向上する。
【0076】
かくして本実施形態によれば、細胞又はウイルス内に存在する被測定物質を迅速且つ正確に測定可能な自動分析装置1を提供することが可能となる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1…自動分析装置、2…分析機構、3…分析機構制御部、4…解析部、5…表示部、6…操作部、7…記憶部、8…システム制御部、11…反応ディスク、13…サンプルディスク、15…第1試薬庫、17…第2試薬庫、19―1…サンプルアーム、19―2…第1試薬アーム、19―3…第2試薬アーム、21―1…サンプルプローブ、21―2…第1試薬プローブ、21―3…第2試薬プローブ、23…撹拌アーム、25…撹拌子、27…破砕機構、29…測光機構、31…反応管洗浄機構
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