(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面状の包装袋用フィルム(10)を巻き取り方向(MD)となる長手方向に沿って貼り合わせて円筒体(13)を形成し、前記円筒体の所定長さの長手方向の両端となる封止予定部(12)の一部をガゼット折りにより縦断面視W字状に折り込むことによって前記封止予定部に4段折り重ね部(14)を形成し、前記封止予定部とともに前記4段折り重ね部をヒートシールして前記封止予定部の前記包装袋用フィルム同士のヒートシールにより生じる二重シール部(23)と、前記包装袋用フィルムの前記4段折り重ね部のヒートシールにより生じる四重シール部(24)を備える袋状物(20)を形成し、前記袋状物の長手方向に被包装物(W)を2以上直列して収容するための包装袋用フィルムであって、
前記包装袋用フィルムは、前記被包装物と接する側となる内側樹脂層(31)に第1αオレフィン共重合体組成物(R1)と、コロナ処理が施され包装外面側となる外側樹脂層(32)に第2αオレフィン共重合体組成物(R2)と、前記内側樹脂層と前記外側樹脂層の間に配される基材樹脂層(33)にポリプロピレン系樹脂組成物(R3)を有し少なくとも3層の樹脂層を備えて二軸延伸により製膜され、
前記外側樹脂層のヒートシール温度が120℃〜160℃であり、
前記第2αオレフィン共重合体がメタロセン触媒により重合したエチレン−プロピレン共重合体であり、
前記包装袋用フィルムの巻き取り方向(MD)を5%伸長したときの強度であるF5値が、下記(I)のF5値測定法において前記包装袋用フィルムの巻き取り方向において16N〜28Nを満たし、
前記包装袋用フィルムの前記内側樹脂層の静摩擦係数が、下記(II)の傾斜法による静摩擦係数測定法において0.1〜0.8であり、
前記袋状物において巻き取り方向となる長手方向に沿った貼り合わせにより形成されたセンターシール部のループスティフネス値が、下記(III)のループスティフネス値の測定において50mN〜150mNである
ことを特徴とするガゼット折り包装袋用フィルム。
(I)F5値測定法:試料となる包装袋用フィルムをフィルムの巻き取り方向に150mm、幅方向に15mm切り出し、引張試験機のチャック間距離を100mmに設定後、引張速度200mm/minにより引張し、引張前の前記フィルムの巻き取り方向の長さから5%引張したときの応力値を読みとる。
(II)傾斜法による静摩擦係数測定法:幅63mm、長さ100mm、質量1000gの移動ブロックに前記包装袋用フィルムを貼り、ファインパフ仕上げのSUS304板上に載置し、傾斜速さ2.7o/秒で滑走斜度を変化させて前記移動ブロックが滑り出したときの角度θからtanθの値を求める。
(III)ループスティフネス値の測定:前記包装袋用フィルムを長手方向に沿ってヒートシールにより前記内側樹脂層同士を貼り合わせてセンターシール部を備える円筒体を形成した後、前記センターシール部から幅15mmの帯状片を切り取り、前記帯状片を周長95mmとするべく前記帯状片の両末端をループスティフネステスタに固定し、環状に曲げて環状物にするとともに前記環状物を前記ループスティフネステスタの押圧部により押圧して前記押圧部間の距離が20mmになった時点の応力(mN)を読みとる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のガゼット折り包装袋用フィルムは、長手方向の両端が封止されて袋形状(ピロー状)に加工される用途に用いられるフィルムである。特に、袋形状に封止される両端に「襠(まち)」となるガゼット折り部分を備えた袋形状に形成されるためのフィルムである
。
【0026】
はじめに、ガゼット折り包装袋用フィルムの使用目的である袋状物へ加工する工程を
図1及び
図2の概略工程図により説明する。なお、袋形状への加工前であるため、混同を避けるべく包装袋用フィルム10として以降説明する。
図1(a)より、包装袋用フィルム10はフィルム原反1から所定長さ(使用量)引き出される。包装袋用フィルム10において、フィルムの巻き取りの向きを巻き取り方向MD(機械方向、流れ方向)とし、当該巻き取り方向MDと直交する向きは幅方向TD(垂直方向)である。
図1(b)より平面状の包装袋用フィルム10を巻き取り方向MDとなる長手方向に沿って曲げられる。そして、
図1(c)より幅方向TD側の両端がヒートシールにより貼り合わされてセンターシール部11が生じる。こうして円筒体13が形成される。図示では説明のため円筒体13を取り出している。
【0027】
図2(a)より、前記の円筒体13における所定長さの長手方向の両端となる封止予定部12の一部に対し、折り込み治具15,15からの圧迫を受けてガゼット折りにより縦断面視W字状に折り込まれる。この縦断面視W字状に折り込まれる部位は4段折り重ね部14となる。この図からわかるように、円筒体13の開口部分(封止予定部12)を円としたとき、4段折り重ね部14,14同士は、開口部分の円の直径方向に対向して形成される。図示の便宜上、円筒体13の一方のみを開口して示す。そのため、円筒体の反対側にも同様の縦断面視W字状に折り込まれる部位は4段折り重ね部が形成される。
【0028】
図2(b)より、その後、円筒体13の長手方向両端の封止予定部12とともに、同封止予定部12に形成された4段折り重ね部14,14は、いずれもヒートシール装置の熱盤部16,16により押圧される。最終的に、
図2(c)より、包装袋用フィルム10を構成する樹脂の融着によりヒートシール封止は完了し、封止部21となる。円筒体13内への被包装物の充填とともに、円筒体13の両端のヒートシールにより袋状物20が形成される。このヒートシールに伴い、4段折り重ね部14,14側に袋内側に折り込まれた入り込み部22,22が形成される。むろん、円筒体の図示していない側も同様に封止部、入り込み部は形成される。
【0029】
円筒体13の封止予定部12がヒートシールされ袋状物20に形成される封止部21には、積層数の異なる部位が存在する。具体的には、
図2(c)より、封止部21の中央部分であり、封止予定部12の包装袋用フィルム10同士のヒートシールにより生じた二重シール部23と、包装袋用フィルム10の4段折り重ね部14,14のヒートシールにより生じた四重シール部24である。
【0030】
実際の製袋においては、包装袋用フィルム10から円筒体13、その後のヒートシールまで切れ目なく連続して行われる。被包装物の円筒体13内への充填(挿入)と封止予定部12へのヒートシール、さらには封止部21の切断による個々の袋状物への小分けも常時連続して行われる。
【0031】
包装袋用フィルム10からなる袋状物20に充填される被包装物は、食品、雑貨、機械製品等の適宜ではあるものの、専ら食品である。包装袋用フィルム10は、背景技術にて詳述したとおり主に食品類の包装に用いられ、特に、菓子パン、和菓子類等の包装に用いられる。量産規模による包装袋用フィルムからの製袋とこれに続く菓子パン、和菓子類の袋詰め(袋状物の形成)を勘案する場合、良好なヒートシール性能に伴う製袋に加え、表面の摩擦制御による被包装物の充填(袋詰め)しやすさが重要である。単位時間当たりの生産効率に大きく影響するためである。
【0032】
図3は袋状物20(ガゼット折り袋状物)の外観の一例を示す全体斜視図である。被包装物Wは大きさ(直径あるいは一辺の長さ)5cmないし10cmの適宜形状のパン類を想定する。図では、被包装物Wをヒートシールにより形成された袋状物20の長手方向に2以上直列して、トレーを省略して収容した状態(中身入り)を示す。図示の被包装物Wは2個(W1,W2)であり、トレーを介してではなく直に包装袋用フィルム10と接する。図中の符号25は印刷面、40は印刷部であり、公知の専用印刷インクによる印刷である。
【0033】
図示のとおり被包装物Wを直列に収容する形態の場合、パン類であっても、被包装物W自体の自重により袋状物20は長手方向の途中で折れたり撓んだりしやすくなる。そのため、被包装物Wが圧迫され見た目が悪くなる。流通、陳列の都合から被包装物収容後の袋状物自体の見栄えも重要である。図示のようにトレーを使用しない包装形態である以上、包装袋用フィルム自体さらには袋状物に備わる強度により適度な剛性を生じさせる必要がある。
【0034】
包装袋用フィルムとして必要な性質に鑑み、ガゼット折りによりまちを備えた袋状物20に使用されるための包装袋用フィルム10について、フィルムにおける樹脂の組成並びに構造を説明する。
図4は包装袋用フィルム10の断面模式図である。被包装物と接する側は内側樹脂層31であり、第1αオレフィン共重合体組成物(R1)を主成分に形成される。コロナ処理が施され包装外面となる側は外側樹脂層32であり、第2αオレフィン共重合体組成物(R2)を主成分に形成される。外側樹脂層32に施されるコロナ処理は、印刷部40等を形成するに際し、印刷インクの付き具合を良くするための処理である。そして、内側樹脂層31と外側樹脂層32の間に、当該包装袋用フィルム10自体の基材となり「こし(剛性)」を発揮する基材樹脂層33が配される。基材樹脂層33はポリプロピレン系樹脂組成物(R3)を主成分に形成される。包装袋用フィルム10の製膜は、{内側樹脂層31(R1)}/{基材樹脂層33(R3)}/{外側樹脂層32(R2)}として表現できる。
【0035】
包装袋用フィルム10の製膜は、主にテンター二軸延伸法により行われ、具体的には、逐次二軸延伸や同時二軸延伸である。各樹脂層31,33,32の組成樹脂はTダイから同時に吐出され(共押し出しされ)、各種ローラーやテンター内における延伸、熱固定、徐冷等を経て製造される。二軸延伸による製膜とすることにより、フィルムのいずれの方向(機械方向MD,幅方向TD)の配向性、熱収縮性が安定する。結果、包装用途のフィルム資材としての強度維持(こしの強さ)に効果的となるためである。包装袋用フィルムは図示のとおり3層の樹脂層形成とすることに加え、基材樹脂層を増やして2層とした4樹脂層形成(図示せず)、さらにはそれ以上の多層形成とすることも可能である。図示の各樹脂層31,33,32よりなる包装袋用フィルム10の膜厚は35ないし50μmが好ましい。
【0036】
内側樹脂層31に用いられる第1αオレフィン共重合体組成物(R1)は、前述のとおり、ヒートシールによりセンターシール部11や封止部21を形成する必要があるため、良好なヒートシール性能が求められる。そのための低温溶融を考慮して第1αオレフィン共重合体組成物(R1)には、プロピレン−エチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−1ブテン重合体等のオレフィン系樹脂が用いられる。
【0037】
外側樹脂層32に用いられる第2αオレフィン共重合体組成物(R2)は、コロナ処理後の良好な印刷が可能となる樹脂組成が望ましい。例えば、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチルとの1種または2種以上のランダムまたはブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらに前記したこれら重合体の混合物等のポリオレフィン系樹脂である。
【0038】
図2(c)及び
図3から理解されるように、包装袋用フィルム10の封止予定部12には4段折り重ね部14,14が形成される。さらに詳しくは、
図5及び
図6の断面模式図のとおり概略視できる。
図5は包装袋用フィルム10の封止予定部12に形成された4段折り重ね部14部分である。縦断面視W字状であることから、折り曲げ状態において、内側樹脂層31同士が対向し、また、外側樹脂層32同士も対向する(図示中央)。
図6は封止予定部12をヒートシール後の封止部21の四重シール部24部分である。包装袋用フィルム10の4枚重ねであり、合計12層の積層となる。
【0039】
通常、包装袋用フィルムから袋状物を形成する場合、内側樹脂層はヒートシール性能、外側樹脂層は印刷性能に対応するべく組成樹脂が選択される。また、外側樹脂層表面への印刷に伴い印刷性を上げるためにコロナ処理が行われる。そのため、一般的にフィルム表面にコロナ処理を行う場合、ヒートシール性能は低下する傾向にある。
【0040】
しかし、これらの図示から明らかなように、包装袋用フィルム10においては、内側樹脂層31同士のヒートシール形成(二重シール部23参照)のみならず、外側樹脂層32同士の良好なヒートシール形成(四重シール部24参照)も求められる。そうすると、外側樹脂層32においてコロナ処理を伴う印刷適性の保持と良好なヒートシール適性を両立が重要である。
【0041】
封止予定部12のヒートシールに際し、ヒートシール装置の熱盤部16,16(
図2参照)が同封止予定部に圧着し加熱により上下の樹脂が溶融する。つまり、良好なヒートシールを実現するためには、熱盤部の加熱温度を高温度側で適切に制御すること(140℃ないし160℃が一般的である。)、あるいは熱盤部の圧着時間を長くすることであり、これらの組み合わせとなる。この場合、フィルムの樹脂の比熱、溶融温度を勘案すると、強固なヒートシールのためには1箇所の封止予定部のヒートシールに要する時間は長くなりやすい。しかし、単位時間当たりのヒートシールによる製袋、製品化の効率性の観点から、封止予定部へのヒートシールに要する時間の短縮要請がある。
【0042】
そこで、外側樹脂層32の樹脂には低融点の樹脂が使用され、外側樹脂層32をヒートシールする際のヒートシール温度が120℃ないし160℃に収斂するべく構成樹脂は選択される。前述のとおり、ヒートシールの生産効率上望ましいためである。そのため、第2αオレフィン共重合体組成物(R2)として、コロナ処理を施しても温度変化の少ないことで知られるエチレン−プロピレン共重合体の使用が望ましい。中でも、優れた低温ヒートシール性からメタロセン触媒により重合したエチレン−プロピレン共重合体が選択される。なお、外側表面層に関し、用途、目的に応じ、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を含有してもよい。
【0043】
基材樹脂層33に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物(R3)は、当該包装袋用フィルム10における基層となる部位であるため、ポリプロピレン系樹脂組成物が用いられる。例えば、ホモポリプロピレン、1−ブテンホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等である。さらに、前記のポリプロピレン系樹脂組成物(R3)には、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン等の脂肪族アミン化合物、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド等の脂肪族アミド化合物、多価アルコール等をはじめ各種の帯電防止剤が適度に添加される。
【0044】
前述のとおり、包装袋用フィルム10の内側樹脂層31に第1αオレフィン共重合体組成物(R1)、外側樹脂層32に第2αオレフィン共重合体組成物(R2)、及び基材樹脂層33にポリプロピレン系樹脂組成物(R3)が用いられる。この包装袋用フィルム10から形成される袋状物20は
図2、
図3等の製袋の向きから把握されるように、被包装物を収容した後の袋状物が長手方向へ撓みにくくする必要がある。つまり、被包装物を載せるトレーを省略しても、被包装物を収容した後の袋状物の形状を極力維持する必要があるためである。
【0045】
包装袋用フィルム10の巻き取り方向MDが袋状物20の長手方向となることから、同方向MDにおける適度な強度が要求される。併せて、被包装物を充填し包装する装置に当該包装袋用フィルムを装填して作業する場合、常時包装袋用フィルムの巻き取り方向に引張力が生じる。適度な引張強度がなければフィルムは途中で断裂してしまう。そのため、包装袋用フィルム10をその巻き取り方向MDへ5%伸長したときの当該フィルムの強度であるF5値を評価の指標とすることができる。
【0046】
F5値測定法(I)は、試料となる包装袋用フィルム10はその巻き取り方向MDに150mm、幅方向TDに15mm切り出され、引張試験機のチャック間距離を100mmとする設定で固定される。このとき、試料の中央部分に50mm間隔の2本の標線が幅方向TDに引かれる。試料の固定後、引張速度200mm/minにより引張される。そして、前記の2本の標線間の距離が引張前から5%伸長した時点(1.05倍)の応力値が読みとられる。
【0047】
後出の実施例からも明らかなように、本発明の包装袋用フィルムのF5値は16Nないし28Nを満たす範囲内である。F5値が16Nを下回る場合、フィルムの軟らかさにより袋状物の撓みや型くずれが大きくなる。F5値が28Nを上回る場合、フィルムが硬くなるため封止予定部への4段折り重ね部の形成が悪くなる。結果、ガゼット折りの生産性が低下する。自明ながらF5値は包装袋用フィルム自体の膜厚により大きく変動する。また、フィルムの膜厚は包装対象、用途等により大きく変動する。しかし、量産規模による袋状物の生産を勘案するとフィルムの硬さと折り曲げやすさの両立が重要である。そのため、前記のF5値が適切な範囲と勘案される。
【0048】
また、包装袋用フィルム10にとって、被包装物を円筒体13内に充填する際、被包装物が内側樹脂層31の表面を適度に滑ることによって被包装物の充填(袋詰め)の効率は増す。同時に、被包装物は内側樹脂層31との間において適度な摩擦抵抗を受けることにより、被包装物は充填やヒートシールの工程で位置ずれを起こすことなく、円筒体13内の規定された位置に静止できる。被包装物が過度に滑りやすい場合や滑らない場合は位置ずれが起こりやすく、被包装体が封止予定部12に到達し、被包装物は包装袋用フィルム10に噛み込まれたままヒートシール装置の熱盤部16,16により押圧されてしまう。その結果、製袋、袋詰めの装置の損傷や汚染の原因となり、装置の運転を止めて洗浄することになり、生産効率を押し下げる要因となる。
【0049】
このため、包装袋用フィルム10の内側樹脂層31(その表面)においては被包装物との滑りやすさの制御が欠くことのできない要素となる。そこで、内側樹脂層31側表面の滑りやすさを傾斜法による静摩擦係数測定法(II)として評価することができる。すなわち、包装袋用フィルム10が、幅63mm、長さ100mm、質量1000gのおもりとなる移動ブロックに貼り合わされる。そして、移動ブロックはファインパフ仕上げのSUS304板上に載置される。傾斜速さ2.7
o/秒で滑走斜度を変化させ、移動ブロックが滑り出したときの角度θが読みとられる。この角度θからtanθの値が求められ、同値が静摩擦係数となる。傾斜法による静摩擦係数測定法(II)は、JIS P 8147(2010)の傾斜法の測定を参考に一部項目に変更を加えた。
【0050】
傾斜法による静摩擦係数測定法(II)において、静摩擦係数は0.1ないし0.8、好ましくは0.15ないし0.35を満たすことである。静摩擦係数が0.1を下回る場合、前述のとおり滑りすぎとなる。静摩擦係数が0.8を上回る場合、逆に摩擦抵抗が大きすぎ、包装設備に対して滑りにくく、またフィルム面上の被包装物の流れも悪くなりやすい。
【0051】
次に、袋状物20において巻き取り方向MDとなる長手方向に沿った貼り合わせにより形成されたセンターシール部11の一部が切り取られ、ループスティフネス値が求められる。この値は、ループスティフネス値の測定(III)において50mN〜150mNである。ループスティフネス値は、被包装物を収容した後の袋状物の撓みにくさの客観的な評価に便利である。そして、後記実施例のとおり、前記の範囲値に含まれることにより袋状物の形状維持に高評価となる。
【0052】
ループスティフネス値の測定(III)について、
図7の概要図とともに説明する。
図1ないし
図3にて詳述のとおり、まず、包装袋用フィルム10は長手方向に沿ってヒートシールにより内側樹脂層31同士の貼り合わせによりセンターシール部11を備える円筒体13に形成され、袋状物20ができあがる。
【0053】
図7(a)及び(b)のとおり、袋状物20のセンターシール部11から幅15mmの帯状片26が切り取られる。
図7(c)より、帯状片26は周長95mmの環状物27として当該帯状片の両末端はループスティフネステスタに固定される。そして、
図7(d)より、環状物27はループスティフネステスタの押圧部28,28により押圧され、押圧部28,28間の距離が20mmになった時点でループスティフネステスタの応力値(mN)が読み取られる。この応力値がループスティフネス値である。
【0054】
次に、ヒートシール時の加熱によりフィルムに熱変形が生じることは不可避である。しかし、封止後のフィルム自体の熱変形量が多ければ製袋後の見栄えも悪くなる。また、封止の精度も悪くなりやすい。そこで、フィルム自体の熱変形量も制御する必要がある。このことから、JIS Z 1712(2009)に準拠した熱収縮試験が包装袋用フィルム10に対して行われる。この結果は次の熱収縮面積率の計測(IV)により熱収縮面積率HS(単位%)として表される。
【0055】
熱収縮面積率の計測(IV)では、
図8参照のとおり、包装袋用フィルム10の巻き取り方向MDの加熱前の標線間距離M
1(原点Oと加熱前の標線Lmとの距離)及び加熱後の標線間距離M
2(原点Oと加熱後の標線Lmとの距離)が求められる。同時に、包装袋用フィルム10の幅方向TDの加熱前の標線間距離T
1(原点Oと加熱前の標線Ltとの距離)及び加熱後の標線間距離T
2(原点Oと加熱後の標線Ltとの距離)が求められる。式(i)のとおり、加熱の前後による標線間距離の積から加熱の前後の面積が求められる。つまり、加熱前の面積(M
1・T
1)及び加熱後の面積(M
2・T
2)である。加熱前からの面積比により熱収縮面積率HS(%)が算出される。
【0057】
式(i)から算出される包装袋用フィルム10の熱収縮面積率HSは、5%以下、さらに好ましくは4.5%以下に抑制される。特に、熱収縮面積率であるため、巻き取り方向MDと幅方向TDの両方を把握でき、フィルムの熱収縮の把握に便利である。この値を超える場合、ヒートシールによる封止部分の収縮が多く見られがちであり、見栄えが悪くなりやすいためである。
【0058】
前述の樹脂の材質、物性を備えた包装袋用フィルム10は、前述の
図1及び
図2の加工工程から理解されるように、袋状物20に形成される。すなわち、ガゼット折り包装袋用フィルム(包装袋用フィルム10)は巻き取り方向となる長手方向に沿って貼り合わされ円筒体に形成される。円筒体の所定長さの長手方向の両端となる封止予定部の一部はガゼット折りにより縦断面視W字状に折り込まれる。封止予定部に4段折り重ね部が形成され、封止予定部とともに4段折り重ね部はヒートシールにより封止される。こうして、前掲の
図3に示す袋状物20、つまりガゼット折り袋状物はできあがる。
【0059】
あらためて
図3を用い袋状物20について述べると、最表面となる印刷面25は外側樹脂層32である。包装袋用フィルム10の時点で外側樹脂層32の表面にコロナ処理が行われる。同時に、外側樹脂層32の表面に商品名、各種の模様、製造者名、原材料名をはじめとする各種内容を表示した印刷部40が印刷される。
図3では例示としての2個の被包装物W(W1,W2)であり、トレーを介してではなく直に包装袋用フィルム10と接している。むろん、被包装物は2個に限られず3個、あるいはそれ以上とすることもできる。後記実施例ではパンを5個直列とした。
【0060】
一連の説明のとおり、ガゼット折り包装袋用フィルム(包装袋用フィルム10)から形成したガゼット折り袋状物(
図3の袋状物20)では、袋状物の長手方向の両端部に、部分的にフィルムを重ねるガゼット折りによる襠(まち)ができる。つまり、縦断面視W字状となるフィルムの4段折り重ね部では袋内側に折り込まれた入り込み部が生じる。このようなフィルムの重なりにより、袋状物の側面の一部はコルゲート状(波形状)に変化する。この場合、袋状物が単純な円筒体状である場合よりも、コルゲート状構造を備えることにより袋状物の長手方向側の構造強度が増し、袋状物の折れ曲がりにくさがいくらか高められる。従って、トレーを使用しなくても袋の形状保持が可能な、ガゼット折り包装袋用フィルムから形成したガゼット折り袋状物を得ることができる。
【実施例】
【0061】
[ガゼット折り包装袋用フィルムの作成]
実施例1ないし8及び比較例1ないし6のガゼット折り包装袋用フィルムについて、後出の表1ないし3に示した配合割合(重量部)に基づき、原料となる樹脂を溶融し、各種添加剤とともに混練して三層共押出Tダイフィルム成形機、テンター二軸延伸機により製膜した。各実施例並びに比較例のフィルムを製膜するに際し、後出の表中の巻き取り方向の延伸倍率(MD延伸倍率)(倍)、幅方向の延伸倍率(TD延伸倍率)(倍)、延伸時温度(熱セット温度)(℃)、フィルムの外側樹脂層をヒートシールする際の温度(℃)の条件とした。また、フィルムの膜厚は、実施例、比較例毎に作り分けた。
【0062】
[使用原料(原料樹脂)]
原料樹脂として、次の原料1ないし6を使用した。
原料1:エチレン−プロピレン−1ブテン共重合体(日本ポリプロ株式会社製:商品名「FX4G」,融点129℃)
原料2:エチレン−プロピレン−1ブテン共重合体(日本ポリプロ株式会社製:商品名「FX8877」,融点131℃)
原料3:メタロセン系触媒により重合されたエチレン−プロピレン共重合体(日本ポリプロ株式会社製:商品名「ウィンテックWFX4」,融点125℃)
原料4:メタロセン系触媒により重合されたエチレン−プロピレン共重合体(融点115℃、MFR=7)
原料5:エチレン−プロピレン共重合体(日本ポリプロ株式会社製:商品名「EG7F」,融点142℃)
原料6:ポリプロピレン重合体(日本ポリプロ株式会社製:商品名「FL100A」,融点160℃)
【0063】
[使用原料(添加剤)]
添加剤として、次の原料7ないし9を使用した。
原料7:粉末合成シリカ(富士シリシア化学株式会社製:商品名「サイリシア430」,平均粒径2.5μm)
原料8:シリコーンレジンパウダー(信越化学工業株式会社:商品名「KMP−701」)
原料9:帯電防止剤(東邦化学工業株式会社製:商品名「アンステックスSA−300F」)
原料10:水添スチレンブタジエンラバー(JSR株式会社:商品名「DYNARON1320P」)
【0064】
[F5値の測定]
F5値測定法(I)として、試料となる実施例及び比較例のガゼット折り包装袋用フィルムをその巻き取り方向MDに150mm、幅方向TDに15mm切り出した。試料のフィルムをストログラフ(株式会社東洋精機製作所製,V1−B)のチャック部にチャック間距離を100mmとする設定で固定した。このとき、予め各試料の中央部分に50mm間隔の2本の標線を幅方向TDに引いた。試料の固定後、引張速度200mm/minによりチャック部を引張し、2本の標線間の距離が引張前から5%伸長した時点(1.05倍長時点)の応力値(単位N)を読みとった。これを各試料に実施した。
【0065】
[静摩擦係数の測定]
静摩擦係数測定法(II)として、幅63mm、長さ100mm、質量1000gのおもりとなる移動ブロックに試料となる実施例及び比較例のガゼット折り包装袋用フィルムを貼り合わせた。そして、静摩擦係数測定機(有限会社佐川製作所製,DFA−02)にファインパフ仕上げのステンレス鋼板(SUS304板)を装着し、同鋼板上に試料のフィルム付き移動ブロックを載置した。
【0066】
静摩擦係数測定機において、鋼板の傾斜速さを2.7
o/秒としながら滑走斜度を変化させ、移動ブロックが滑り出したときの角度θを読み取った。この角度θよりtanθの値(すなわち静摩擦係数)を求めた。なお、当該傾斜法による静摩擦係数測定法(II)は、JIS P 8147(2010)の傾斜法の測定を参考に移動ブロック等の一部項目を変更した。
【0067】
[ループスティフネス値の測定]
ループスティフネス値の測定(III)に際し、はじめに、試料となる実施例及び比較例のガゼット折り包装袋用フィルムのそれぞれを株式会社フジキカイ製横形ピロー包装機(FW3410)に装填し、ヒートシール形成のセンターシール部を備えた全長約25cm、横幅約10cmの包装袋(
図3等の形状参照)を作成した。ヒートシールにより生じたセンターシール部は、包装袋の長手方向であり、フィルムの巻き取り方向MDと一致する。
【0068】
各試料のフィルムを前記の包装機により加工して袋状物とした後、当該袋状物のセンターシール部より幅を15mmとする所定長さの帯状片を切り取った。各試料の帯状片をひとつずつ、ループスティフネステスタ(東洋精機製作所製)の固定部位に両端を固定することにより環状物とした。いずれの環状物も周長95mm(直径約30mm)とした。この環状物を測定端子(ダイアルゲージ)により押圧して、固定部位と測定端子との距離が20mmとなる位置まで押圧し10秒間を維持した。このときのループスティフネステスタの応力値(mN)を読みとり、当該試料フィルムのループスティフネス値とした。
【0069】
[熱収縮面積率の計測]
熱収縮面積率の計測(IV)では、JIS Z 1712(2009)に準拠した熱収縮試験に基づいて試料となる実施例及び比較例のガゼット折り包装袋用フィルムのそれぞれを加熱するとともに養生し、加熱の前後における標線間距離を計測した。はじめに試料のフィルムそれぞれに対し、巻き取り方向MDの加熱前において原点と加熱前の標線との距離となる標線間距離M
1と、幅方向TDの加熱前において原点と加熱前の標線との距離となる標線間距離T
1を求めた。続いて同じ試料のフィルムそれぞれに対し、巻き取り方向MDの加熱後において原点と加熱後の標線との距離となる標線間距離M
2と、幅方向TDの加熱後において原点と加熱後の標線との距離となる標線間距離T
2を求めた。加熱の前後の標線間距離を前出の式(i)に代入することにより、各試料の熱収縮面積率熱収縮面積率(単位%)を計測した。
【0070】
[袋状物の作成及び被包装物の充填包装]
袋状物の作成及び被包装物の充填包装に際し、試料となる実施例及び比較例のガゼット折り包装袋用フィルムのそれぞれについて、被包装物として1個当たり約45gのパンを用い、当該パンを5個直列にして各試料のフィルムを用いて包装することにより、各試料フィルムに応じた被包装物(パン)入りのガゼット折り袋状物を作成した。袋状物はヒートシール形成のセンターシール部を備え全長約25cm、横幅約10cmであった。
【0071】
[ガゼット折り包装袋用フィルムの総合評価]
前述の被包装物の充填包装に伴う袋状物の作成結果を踏まえ、試料となる実施例及び比較例のガゼット折り包装袋用フィルムそれぞれの良否を総合評価として大きく4段階に分けて判定した。
被包装物の包装に支障はなく、包装後の包装袋の外観も非常に良好(折れ曲がりが見られず、ヒートシール部分の見栄えも良好)な試料のフィルムを“A”とした。
被包装物の包装に支障はなく、包装後の包装袋の外観も良好(折れ曲がりはない)な試料のフィルムを“B”とした。
被包装物の包装に支障はないものの、包装後の包装袋の外観が悪い(折れ曲がりが生じた)試料のフィルムを“C”とした。
被包装物の包装自体に支障を来した試料のフィルムを“D”とした。
【0072】
[結果]
実施例及び比較例のガゼット折り包装袋用フィルムのそれぞれについて、使用原料、各種測定の結果、及び総合評価等を表1ないし表3として記す。各表とも、内側樹脂層、基材樹脂層、外側樹脂層、MD延伸倍率(倍)、TD延伸倍率(倍)、延伸時温度(℃)、厚さ(μm)、F5値(N)、静摩擦係数、外側樹脂層のヒートシール温度(℃)、ループスティフネス値(mN)、熱収縮面積率(%)、及び総合評価の順である。比較例1は無延伸であるため延伸時温度はない。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
[考察]
実施例及び比較例のガゼット折り包装袋用フィルムの評価結果について考察する。製品として適する評価は、“A”,“B”であり、他“C”,“D”は不十分もしくは不適格である。実施例1ないし7は良好であり、特に、実施例1ないし5は安定して優れている。以下、フィルムにおける樹脂層の詳細、物性値の詳細を検討する。
【0077】
〈樹脂層構成原料の選択〉
内側樹脂層の組成を勘案すると、第1αオレフィン共重合体組成物として原料1や原料2のエチレン−プロピレン−1ブテン共重合体を使用した上で原料7の粉末合成シリカを使用した例は適切な静摩擦係数に収まる。
【0078】
基材樹脂層の組成を勘案すると、ポリプロピレン系樹脂組成物として原料6のポリプロピレン重合体を使用した例は適切なF5値を示した。比較例1より、原料2のエチレン−プロピレン−1ブテン共重合体使用ではF5値が低下することから明らかである。
【0079】
外側樹脂層の組成を勘案すると、第2αオレフィン共重合体組成物として、原料1や原料2のエチレン−プロピレン−1ブテン共重合体、原料3や原料4のメタロセン系触媒により重合されたエチレン−プロピレン共重合体、原料5のエチレン−プロピレン共重合体を使用した例は、外側樹脂層のヒートシールが可能であった。これに対し、原料6のポリプロピレン重合体を使用した比較例4はヒートシール不能であった。この点から、外側樹脂層の組成にはポリプロピレン重合体のみでは不十分であるといえる。
【0080】
次に、原料3や原料4のメタロセン系触媒により重合されたエチレン−プロピレン共重合体を使用した例の場合、135℃付近のヒートシール温度を満たしながら、各種物性も良好に満たすことができる。従って、第2αオレフィン共重合体組成物としてのメタロセン系触媒により重合されたエチレン−プロピレン共重合体の使用は優位である。
【0081】
〈厚みの選択〉
一般に厚みが増すほどフィルム自体のこし(剛性)が増す。F5値やループスティフネス値の上昇から明らかである。このため、本発明が所望する趣旨に合致するようにも思われる。しかし、フィルムのこしの強さと相反して折り曲げやすさ、特には4段折り重ね部の形成に手間取ることとなりうる。また、使用樹脂の量も増す。従って、実施例にて実験するとともに今後予想される被包装物(パン)の包装を想定した場合、ある程度フィルム自体の厚み増加を抑えながら
、所望のガゼット折り袋状物へ加工する便宜から35μmないし50μmのフィルム膜厚が妥当である。
【0082】
〈F5値〉
充填包装機械による運転も考慮した上でフィルムの巻き取り方向MDの引っ張り強さを規定する必要がある。この結果、比較例2の15.0Nを上回るF5値が望ましい。比較例3のように極端にF5値が高くなると、4段折り重ね部の形成に手間取ることとなり得る。そこで、16Nないし28NのF5値の範囲が適切である。
【0083】
〈静摩擦係数〉
本発明はトレーを使用しない包装形態であることから、ガゼット折り包装袋用フィルムの内側表面層は被包装物と直に接触する。このため、被包装物がフィルム表面を滑りながら移動する必要上、適度な摩擦力が必要であり、妥当な静摩擦係数は概ね0.1ないし0.8となる。より望ましくは、0.15ないし0.35である。比較例5のとおり、原料8のシリコーンレジンパウダーを添加した場合、極端に静摩擦係数が低下するため、好ましくない。
【0084】
原料10は摩擦力をより高めるために選択した原料である。原料10を用いた比較例6によると静摩擦係数が極端に上昇した。つまり、内側樹脂層の滑り性が悪化しているため、本発明の包装、充填目的のフィルムの用途として不適格である。
【0085】
〈外側樹脂層のヒートシール温度〉
ヒートシールできなかった比較例4を除くと、ヒートシール温度は120℃ないし160℃に収斂する。特に、包装、製袋の連続生産効率の面から、できるだけ低温域でヒートシール性能を発揮することが望ましい。そのため、120℃ないし140℃(実施例7が138℃のため)のヒートシール温度が望まれる。
【0086】
〈ループスティフネス値〉
フィルム自体のこし(剛性)を把握するループスティフネス値については、比較例1,2の数値から少なくとも50mNは必要である。ただし、同値が高くなり極端にフィルムが硬くなる場合、フィルム自体の腰が強くなりF5値の数値が高くなることにより、装置による包装、製袋の効率も悪化しやすい。そのため、実施例3の148.2mNを根拠に150mNを上限とした。むろん、前述のとおり、ループスティフネス値は膜厚に依存するため、35μmないし40μmの膜厚のフィルムでは各実施例の数値を勘案して75mNないし95mNとすることができる。
【0087】
〈熱収縮面積率〉
熱収縮面積率を把握することにより、ヒートシールに伴うフィルムの熱収縮をある程度予測することができる。熱収縮面積率が大きければ収縮の程度が大きくできあがる袋状物としての見栄え等が悪くなりやすい。5ないし6%であれば許容できる範囲内であるため実施例1ないし8を妥当とした。さらにフィルム自体の熱収縮量を抑えるため、実施例1ないし7の選択のとおり5.0%以下と規定した。より好ましくは、各実施例の数値より4.0%以下である。
【0088】
〈総合評価〉
袋状物の作成結果とともに、これまでに言及した組成原料並びに測定した物性値に基づく結果、いずれの指標も妥当な水準に収斂したガゼット折り包装袋用フィルムは、総合評価において“B”以上の実施例1ないし8である。好ましくは実施例1ないし7である。さらには総合評価“A”の実施例1ないし5が安定して優れている。
【0089】
また、発明者らは、ガゼット折りの有無による包装後の包装袋の外観の良否も確認した。具体的に、前出の実施例1にて作成のガゼット折り包装袋用フィルムを用い、本来のガゼット折りの工程を省略して(ガゼット折り無し)、実施例と同様に被包装物(パン)入りの袋状物を作成した。袋状物の大きさも同様である。ガゼット折り無しの袋状物は、外観に折れ曲がりが生じたことから評価「C」と判断した。従って、トレーを使用せずに形状保持性能を発揮させるためには、フィルム自体の改良に加えて袋状物にガゼット折りを形成することが不可欠である。