特許第5931359号(P5931359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931359
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】車両用内装パネル
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20160526BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20160526BHJP
【FI】
   B60R21/215
   B60R21/205
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-144989(P2011-144989)
(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公開番号】特開2013-10455(P2013-10455A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2014年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】又吉 正幸
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−067858(JP,A)
【文献】 特開2003−011765(JP,A)
【文献】 特開2003−011763(JP,A)
【文献】 特開2001−071854(JP,A)
【文献】 特開2002−012121(JP,A)
【文献】 特開2002−127160(JP,A)
【文献】 実開平06−025059(JP,U)
【文献】 特開平07−309188(JP,A)
【文献】 特開平11−043003(JP,A)
【文献】 特開2003−182497(JP,A)
【文献】 特開2009−262879(JP,A)
【文献】 米国特許第06113131(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/215
B60R 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグの展開方向を覆うように配置され、前記エアバッグの展開時の開裂する車両用内装パネルであって、
表皮層と、基層と、これら表皮層及び基層の間の空間に樹脂を注入してなる樹脂層と、を含んで構成され、
記エアバッグの展開時に開裂予定部として機能する貫通孔と、前記樹脂層側で前記貫通孔に蓋をする蓋部一体に形成された前記基層を構成する基材における前記蓋部は、樹脂を注入する注入方向に延設され、樹脂を注入する際の流圧によって押さえられること、
を特徴とする車両用内装パネル。
【請求項2】
前記基材は、前記蓋部を収納する収納部を備えること、
を特徴とする請求項1記載の車両用内装パネル。
【請求項3】
前記基材及び前記蓋部の夫々には、前記蓋部により前記貫通孔に蓋をする際、互いに係合する係合手段を備えたこと、
を特徴とする請求項1又は2記載の車両用内装パネル。
【請求項4】
前記係合手段は、前記蓋部に設けられた係合片と、前記基材に設けられ、前記係合片に係合する係合溝と、を備えたこと、
を特徴とする請求項3記載の車両用内装パネル。
【請求項5】
前記係合手段は、前記基材及び蓋部の当接面の摩擦力を利用してなること、
を特徴とする請求項3記載の車両用内装パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装パネル及びその製造方法に関し、特に、エアバッグの展開方向に位置し、エアバッグの展開時に開裂する車両用内装パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用内装パネルは、エアバッグを覆って配設されている。この車両用内装パネルは、表皮層と、基層と、これら表皮層及び基層の間の空間に樹脂を注入してなる樹脂層と、を含んで構成されている。
【0003】
そして、車両用内装パネルは、エアバッグの展開を妨げないように、すなわち、エアバッグを確実に展開させるために、ティアラインと呼ばれる開裂予定部を備えて構成されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、表皮(表皮層)に破断部(開裂予定部)を設け、この破断部を金型成形時に成形することで、コストの低減を図ることが可能なエアバッグドアを有する部材の製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、パネル基材(基材)に凹状の開裂予定部を設け、エアバッグの展開を妨げないようにすることが可能なエアバッグドアが開示されている。また、特許文献3には、上記特許文献2と同様に、ドアパネル(基材)に溝状の開裂予定ライン(開裂予定部)を設け、エアバッグの展開を妨げないようにすることが可能なエアバッグドアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−309188号公報
【特許文献2】特開2003−011763号公報
【特許文献3】特開2003−182497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1では、表皮層に凹状の開裂予定部を設け、エアバッグの展開を妨げないようにしているが、開列予定部を貫通させて形成していない。このため、エアバッグの展開性能の安定化及び向上させる点については改善の余地がある。また、上記特許文献1では、表皮層に開裂予定部を貫通させて設ける場合、表皮層の外観性を低減させてしまう点についても改善の余地がある。
【0008】
また、上記特許文献2及び3では、基材に凹状の開裂予定部を設けることで、エアバッグの展開を妨げないようにしているが、上記特許文献1と同様に、開列予定部を貫通させて形成していないので、エアバッグの展開性能の安定化及び向上させる点については改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、上記従来の実状に鑑みて、エアバッグの展開性能の安定化及び向上を図ることが可能な車両用内装パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明に係る車両用内装パネルは、エアバッグの展開方向を覆うように配置され、上記エアバッグの展開時に開裂するものであって、表皮層と、基層と、これら表皮層及び基層の間の空間に樹脂を注入してなる樹脂層と、を含んで構成され、上記エアバッグの展開時に開裂予定部として機能する貫通孔と、上記樹脂層側で上記貫通孔に蓋をする蓋部一体に形成された上記基層を構成する基材における上記蓋部は、樹脂を注入する注入方向に延設され、樹脂を注入する際の流圧によって押さえられる
【0011】
また、本発明に係る車両用内装パネルは、上記基材に上記蓋部を収納する収納部を備えて構成されている。
【0012】
また、本発明に係る車両用内装パネルは、上記基材及び上記蓋部の夫々に、上記蓋部により上記貫通孔に蓋をする際、互いに係合する係合手段を備えて構成されている。
【0013】
また、本発明に係る車両用内装パネルの上記係合手段は、上記蓋部に設けられた係合片と、上記基材に設けられ、上記係合片に係合する係合溝と、を備えて構成されている。
【0014】
また、本発明に係る車両用内装パネルの上記係合手段は、上記基材及び蓋部の当接面の摩擦力を利用して構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エアバッグの展開性能の安定化及び向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態である車両用内装パネルの構成を模式的に示し、この車両用内装パネルの外観を示した外観斜視図である。
図2図1における線I−I´を示した断面図である。
図3図2におけるA部を拡大して示した拡大断面図である。
図4】本発明の一実施の形態である車両用内装パネルの構成を模式的に示し、この車両用内装パネルを分解して示した分解斜視図である。
図5A】本発明の一実施の形態である車両用内装パネルの製造方法の第一工程を模式的に示し、この第一工程の断面を示した断面図である。
図5B】本発明の一実施の形態である車両用内装パネルの製造方法の第二工程を模式的に示し、この第二工程の断面を示した断面図である。
図5C】本発明の一実施の形態である車両用内装パネルの製造方法の第三工程を模式的に示し、この第三工程の断面を示した断面図である。
図6】本発明の一実施の形態である車両用内装パネルの構成を模式的に示し、エアバッグの展開時における車両用内装パネルの状態を模式的に示した断面図である。
図7】本発明の他の実施の形態である車両用内装パネルの構成を模式的に示し、この車両用内装パネルの断面を示した断面図である。
図8A】本発明の他の実施の形態である車両用内装パネルの製造方法の第一工程を模式的に示し、この第一工程の断面を示した断面図である。
図8B】本発明の他の実施の形態である車両用内装パネルの製造方法の第二工程を模式的に示し、この第二工程の断面を示した断面図である。
図8C】本発明の他の実施の形態である車両用内装パネルの製造方法の第三工程を模式的に示し、この第三工程の断面を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、本発明の一実施の形態である車両用内装パネル10の構成について、図1乃至図4を用いて説明する。図1は、本発明の一実施の形態である車両用内装パネル10の構成を模式的に示し、この車両用内装パネル10の外観を示した外観斜視図である。
【0018】
また、図2は、図1における線I−I´を示した断面図であり、図3は、図2におけるA部を拡大して示した拡大断面図であり、図4は、本発明の一実施の形態である車両用内装パネル10の構成を模式的に示し、この車両用内装パネル10を分解して示した分解斜視図である。
【0019】
なお、図1に例示されるように、本実施の形態の車両用内装パネル10は、車両のインストメントパネル、特に、助手席側のエアバッグ装置110を被覆する部位のインストメントパネルとして例示しているが、これに限定されず、例えば、カーテンエアバッグ装置を被覆するルーフサイドパネルに適用しても良い。
【0020】
図1乃至図4に例示されるように、本実施の形態の車両用内装パネル10は、エアバッグ111の展開方向を覆うように配置されている。そして、車両用内装パネル10は、エアバッグ111の展開時に開裂可能となるよう構成されている。
【0021】
この車両用内装パネル10は、例えば、PU(ポリウレタン)等の比較的軟質な材料からなる表皮層11と、PP(ポリプロピレン)、ASG等の比較的硬質の合成樹脂材料からなる基層12と、これら表皮層11及び基層12の間の空間に樹脂を注入してなる樹脂層13と、から構成されている。
【0022】
すなわち、車両用内装パネル10は、これら表皮層11と基層12との間の空間に、樹脂を注入することで、表皮層11、樹脂層13、基層12からなる三層構造となるように構成されている。
【0023】
表皮層11は、車両用内装パネル10の外表面の意匠面となる。そして、表皮層11は、上述したように、PU等の比較的軟質な材料を用いて構成されている。これにより、表皮層11は、この表皮層11の裏面側に配設された樹脂層13の弾力性を阻害しないようになっている。
【0024】
基層12は、車両用内装パネル10の強度剛性を司る。そして、基層12は、上述したように、PP等の比較的硬質の合成樹脂材料を用いて構成されている。これにより、基層12は、表皮層11及び樹脂層13を保持する役目を果たしている。
【0025】
樹脂層13は、表皮層11と基層12との間に設けられる中間層であり、ウレタン等の熱可塑性樹脂を用いて構成されている。そして、樹脂層13は、この熱可塑性樹脂に発泡材を混入させ、熱可塑性樹脂の密度を低密度にすることで、熱可塑性樹脂の特性及び低密度となることに起因して弾力性をなして構成されている。
【0026】
なお、本実施の形態において、表皮層11は、上述したように、PU等の比較的軟質な材料を用いて構成されているが、PUの他に、樹脂層13の弾力性を阻害しないものであれば、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、熱硬化性ウレタン(PU)等を用いて構成しても良い。
【0027】
また、本実施の形態において、基層12は、上述したように、PP、ASG等の比較的硬質合成樹脂材料により構成されているが、PP、ASGの他に、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリカーボネイト、ポリカABS等を用いて構成しても良い。
【0028】
また、本実施の形態において、樹脂層13は、上述したように、ウレタン等の熱可塑性樹脂により構成されているが、ウレタンの他に、弾力性を有するものあれば、特に限定されず、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリスチレン等を用いて構成しても良い。
【0029】
このように、本実施の形態の車両用内装パネル10は、表皮層11、基層12及び樹脂層13からなる三層構造により構成することで、表皮層11の特性である柔らかい手触りと、樹脂層13の特性である弾性力によって高い品質感を得ることが可能になる。
【0030】
そして、基層12の裏面側には、エアバッグ装置110が配設されている。ここで、基層12には、この基層12に向かってエアバッグ111が展開する際、基層12を開裂させるための契機となる溝14が形成されている。
【0031】
この溝14は、車両の幅方向に沿って形成される水平辺14aと、この水平辺14aの両端に連続するように形成される垂直辺14b,垂直辺14cと、から構成されている。このため、車両用内装パネル10は、エアバッグ111が展開する際、溝14を契機として開裂させているため、エアバッグ111の展開時の展開性能の安定化及び向上を図ることが可能になる。
【0032】
本実施の形態において、この溝14のうち、水平辺14aには、貫通孔15が形成されている。このため、車両用内装パネル10は、貫通孔15を起点として開裂させているため、エアバッグ111の展開時の展開性能の安定化及び向上をより確実に図ることが可能になる。
【0033】
なお、本実施の形態の貫通孔15は、上述したように、溝14のうち、水平辺14aに形成されているが、エアバッグ装置110の配設位置に応じて、エアバッグ111の展開時における起点部となることが可能な位置であれば、特に限定されず、例えば、垂直辺14b,垂直辺14cに形成しても良い。
【0034】
ここで、表皮層11と基層12との間の空間には、上述したように、樹脂を注入してなる樹脂層13が形成されている。このため、この基層12に貫通孔15を形成することで、樹脂の注入時に貫通孔15から樹脂が流れてしまう可能性がある。
【0035】
これに対し、本実施の形態の基層12を構成する基材は、貫通孔15とともに、この貫通孔15に蓋をする蓋部20を備えて構成されている。そして、基材は、これら貫通孔15及び蓋部20を一体に成形して構成されている。
【0036】
これにより、基材は、シール材を用いることなく貫通孔15に蓋をすることが可能になる。すなわち、基材は、シール材を張り合わせる等の工程を行わずに、貫通孔15を塞止することが可能になる。
【0037】
これにより、本実施の形態の車両用内装パネル10は、使用材料を削減することが可能になるとともに、シール材を張り合わせる等の工程を省略することで、生産性を向上させることが可能になり、生産コストを低減することができる。
【0038】
また、基材は、上述したように、シール材等を用いることなく貫通孔15に蓋部20により蓋をすることが可能になるため、エアバッグ111の展開時にシール材の樹脂層13内への混入を抑制することが可能になる。
【0039】
このため、樹脂層13を再利用する際、シール材を取り除くための取り除き作業の作業負担を軽減することが可能になり、樹脂層13を再利用し易くなるため、生産コストを低減することができる。
【0040】
また、本実施の形態の基層12の構成する基材には、蓋部20を収容する収容部16が形成されている。この収容部16は、基層12の樹脂層13側の面に凹みを形成してなる。本実施の形態の収容部16は、蓋部20を完全に収容する大きさにより形成されている。
【0041】
すなわち、収容部16に蓋部20を収容した際、基材の樹脂層13側の面から蓋部20が突出しないように収容されている。このように、基材に蓋部20を収容する収容部16が形成されることで、基材は、蓋部20を基材の樹脂層13側面よりも突出させずに配設することが可能になる。これにより、基材は、表皮層11と基層12との間の空間に樹脂を注入する際、樹脂の流動性を低減させずに注入させることが可能になる。
【0042】
また、収容部16及び蓋部20の夫々には、蓋部20により貫通孔15に蓋をする際、互いに係合する係合手段が設けられている。この係合手段は、蓋部20に設けられた係合片23と、収容部16に設けられ、係合片23に係合する係合溝17と、を備えて構成されている。
【0043】
本実施の形態において、係合片23及び係合溝17は、互いに対応するように、テーパー状をなして形成されている。ここで、係合片23は、係合溝17に係合させた状態で断面視すると、上方から下方に向けて先端側に傾斜して形成されている。
【0044】
一方、係合溝17は、上述したように、係合片23に対応した形状をなして形成されており、上方から下方に向けて内側に傾斜して形成されている。このように、係合溝17が上方から下方に向けて内側に傾斜して形成されることで、収容部16に蓋部20を収容し易く、かつ、エアバッグ111の展開時に易いように設定している。
【0045】
以上のように、本実施の形態の車両用内装パネル10によれば、エアバッグ111の展開性能の安定化及び向上を図ることに関し、生産コストを低減させることができる。
【0046】
次に、本実施の形態の車両用内装パネル10の製造方法について、図5A図5B及び図5Cを用いて説明する。図5Aは、本発明の一実施の形態である車両用内装パネル10の製造方法の第一工程を模式的に示し、この第一工程の断面を示した断面図であり、図5Bは、本発明の一実施の形態である車両用内装パネル10の製造方法の第二工程を模式的に示し、この第二工程の断面を示した断面図であり、図5Cは、本発明の一実施の形態である車両用内装パネル10の製造方法の第三工程を模式的に示し、この第三工程の断面を示した断面図である
【0047】
図5Aに例示されるように、表皮層11と基層12とを接着する。このとき、表皮層11と基層12との間には、樹脂を注入することで樹脂層13を形成可能な空間を構成している。また、基層12を構成する基材には、溝14が形成されている。すなわち、この溝14がエアバッグ111の展開時における開裂予定部となる。
【0048】
本実施の形態において、溝14は、車両の幅方向に沿って形成される水平辺14aと、この水平辺14aの両端に連続するように形成される垂直辺14b,垂直辺14cと、を含んで構成されている。
【0049】
このとき、溝14を構成する水平辺14aには、貫通孔15が形成されている。このように、本実施の形態の基層12を構成する基材には、開裂予定部として溝14が形成され、さらに、貫通孔15が形成されているため、エアバッグ111の展開性能を安定化及び向上を図ることが可能になる。
【0050】
図5Bに例示されるように、貫通孔15に蓋部20により蓋をする。このとき、基層12を構成する基材には、蓋部20を収容するための収容部16が形成されている。そして、収容部16は、蓋部20よりも大となるように形成されている。
【0051】
このため、蓋部20を樹脂層13側の面から突出させずに収容することが可能になる。これにより、本実施の形態の車両用内装パネル10は、表皮層11と基層12との間の空間に樹脂を注入する際における流動性を低減させずに注入することが可能になる。よって、本実施の形態の車両用内装パネル10によれば、樹脂の流動性を低減させずに注入することが可能になるため、生産性を低減させない。
【0052】
図5Cに例示されるように、表皮層11と基層12との間の空間に樹脂を注入する。このとき、貫通孔15には、上述したように、蓋部20により蓋をしているため、貫通孔15からの樹脂の漏れを防ぐことが可能になる。
【0053】
本実施の形態において、蓋部20は、樹脂を注入する注入方向に対し、同方向に向かって延設されている。これにより、樹脂を注入する際の流圧により蓋部20を押さえることが可能になり、より確実に貫通孔15を封止することができる。
【0054】
次に、エアバッグ111の展開時における車両用内装パネル10の状態について図6を用いて説明する。図6は、本発明の一実施の形態である車両用内装パネル10の構成を模式的に示し、エアバッグ111の展開時における車両用内装パネル10の状態を模式的に示した断面図である。
【0055】
図6に例示されるように、本実施の形態の車両用内装パネル10は、エアバッグ装置110を覆って配設することで、このエアバッグ装置110を乗員から見えないようにしている。そして、車両用内装パネル10は、エアバッグ111の展開時に開裂する。
【0056】
このとき、本実施の形態の車両用内装パネル10は、貫通孔15を起点にするとともに、溝14を開裂予定部として機能させて開裂させている。このように、本実施の形態の車両用内装パネル10は、貫通孔15を起点にしているため、エアバッグ111の展開性能を安定化及び向上させることが可能になる。
【0057】
また、本実施の形態の車両用内装パネル10は、エアバッグ111の展開性能を安定化及び向上させるための貫通孔15を設けており、この貫通孔15からの樹脂の漏えいを抑制するために、蓋部20を設けている。
【0058】
そして、車両用内装パネル10は、蓋部20を基材とともに一体に成形しているため、貫通孔15にシール材を設けるよりも安価で製造することが可能になる。また、車両用内装パネル10は、上述したように、蓋部20を基材とともに一体に成形しているため、エアバッグ111の展開時に樹脂層13とともに飛散することを抑制することが可能になる。
【0059】
これにより、本実施の形態の車両用内装パネル10は、エアバッグ111の展開時に樹脂層13への混入を抑制することが可能になる。よって、車両用内装パネル10は、樹脂層13を再利用することが可能になり、コストを削減することができる。
【0060】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態について、図7を用いて説明する。図7は、本発明の他の実施の形態である車両用内装パネル70の構成を模式的に示し、この車両用内装パネル70の断面を示した断面図である。
【0061】
なお、本実施の形態2は、上述の実施の形態1に対し、蓋部80を基材の収容部76に係合させる際、蓋部80に爪部を設けずに、収容部76と蓋部80との摩擦により係合させる点が異なり、他の点は同様である。したがって、上述の実施の形態1と同一又は相当する部位には、同様の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図7に例示されるように、本実施の形態の車両用内装パネル70は、収容部76に蓋部80を収容する際、収容部76と蓋部80とが当接するように構成されている。このため、車両用内装パネル70は、収容部76に蓋部80を収容する際、収容部76と蓋部80との当接面には、摩擦力が生じるように構成されている。
【0063】
このように、本実施の形態の車両用内装パネル70は、収容部76と蓋部80との当接面に生じる摩擦力により収容部76に蓋部80を収容しているため、上述の実施の形態1のような係合片23及び係合溝17を設ける必要がなく収容することが可能になる。
【0064】
これにより、車両用内装パネル70は、収容部76に蓋部80を嵌め込み易くしているため、生産性を向上させることが可能になる。よって、本実施の形態の車両用内装パネル70は、生産性を向上させることで、より安価で生産することが可能になり、生産コストを低減させることができる。
【0065】
次に、本実施の形態の車両用内装パネルの製造方法について、図8A図8B及び図8Cを用いて説明する。図8Aは、本発明の他の実施の形態である車両用内装パネル70の製造方法の第一工程を模式的に示し、この第一工程の断面を示した断面図である。
【0066】
また、図8Bは、本発明の他の実施の形態である車両用内装パネル70の製造方法の第二工程を模式的に示し、この第二工程の断面を示した断面図であり、図8Cは、本発明の他の実施の形態である車両用内装パネル70の製造方法の第三工程を模式的に示し、この第三工程の断面を示した断面図である。
【0067】
図8Aに例示されるように、表皮層71と基層72とを接着する。このとき、表皮層71と基層72との間には、樹脂を注入することで樹脂層73を形成可能な空間を構成している。
【0068】
また、基層72を構成する基材には、溝74が形成されている。すなわち、この溝74がエアバッグ111の展開時における開裂予定部となる。本実施の形態において、溝74は、車両の幅方向に沿って形成される水平辺74aと、この水平辺74aの両端に連続するように形成される垂直辺74b,垂直辺74cと、を含んで構成されている。
【0069】
このとき、溝74を構成する水平辺74aには、貫通孔75が形成されている。このように、本実施の形態の基層72を構成する基材には、開裂予定部として溝74が形成され、さらに、貫通孔75が形成されているため、エアバッグ111の展開性能を安定化及び向上を図ることが可能になる。
【0070】
図8Bに例示されるように、貫通孔75に蓋部80により蓋をする。このとき、基層72を構成する基材には、蓋部80を収容するための収容部76が形成されている。このため、蓋部80を樹脂層73側の面から突出させずに収容することが可能になる。
【0071】
これにより、本実施の形態の車両用内装パネル70は、表皮層71と基層72との間の空間に樹脂を注入する際における流動性を低減させずに注入することが可能になる。よって、本実施の形態の車両用内装パネル70によれば、樹脂の流動性を低減させずに注入することが可能になるため、生産性を低減させない。
【0072】
本実施の形態において、蓋部80は、収容部76に蓋部80を収容する際、収容部76と蓋部80との夫々には、互いに当接する当接面を有するように形成されている。このため、収容部76と蓋部80との間には、摩擦力が生じる。すなわち、本実施の形態の車両用内装パネル70は、収容部76と蓋部80との間に生じる摩擦力を利用して収容部76に蓋部80を収容している。
【0073】
これにより、本実施の形態の車両用内装パネル70は、上述の実施の形態1のように係合片23及び係合溝17を設ける必要がなく、収容部76に蓋部80を収容することが可能になる。このように、車両用内装パネル70は、係合片23及び係合溝17を設ける必要がないため、収容部76に蓋部80を嵌め込み易くしているため、生産性を向上させることが可能になる。
【0074】
図8Cに例示されるように、表皮層71と基層72との間の空間に樹脂を注入する。このとき、貫通孔75には、上述したように、蓋部80により蓋をしているため、貫通孔75からの樹脂の漏れを防ぐことが可能になる。
【0075】
本実施の形態において、蓋部80は、樹脂を注入する注入方向に対し、同方向に向かって延設されている。これにより、樹脂を注入する際の流圧により蓋部80を押さえることが可能になり、より確実に貫通孔75を封止することができる。
【0076】
よって、本実施の形態の車両用内装パネル70によれば、蓋部80により貫通孔75を封止するために、収容部76に蓋部80を嵌め込む際、より簡易的に嵌め込むことが可能になるため、生産性を向上させることが可能になり、生産コストを低減させることができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態の車両用内装パネル70によれば、エアバッグ111の展開性能の安定化及び向上を図ることに関し、生産コストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 車両用内装パネル
11 表皮層
12 基層
13 樹脂層
14 溝
15 貫通孔
16 収容部
17 係合溝
20 蓋部
23 係合片
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図8C