(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931371
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-172040(P2011-172040)
(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公開番号】特開2012-61305(P2012-61305A)
(43)【公開日】2012年3月29日
【審査請求日】2014年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2010-183216(P2010-183216)
(32)【優先日】2010年8月18日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100176843
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 美生子
(74)【代理人】
【識別番号】100156579
【弁理士】
【氏名又は名称】寺西 功一
(72)【発明者】
【氏名】野田 浩二
【審査官】
亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−091609(JP,U)
【文献】
特開2006−167300(JP,A)
【文献】
特開2005−270400(JP,A)
【文献】
特開平09−056708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生部と、
X線検出部と、
前記X線発生部と前記X線検出部とを支持し、ホルダによりスライド可能に支持されるレールを有し、アーチ形状を有するアームと、
前記アームよりも高い弾性係数を有し、シート形状を有し、前記アームの表面のうち、前記レールが設けられる表面を除く少なくとも2以上の表面に、表面毎に独立して固定される補強部材とを備え、
前記アームは、内側面、凹レールを有する外側面及び前記レールを有する側面を有し、
前記補強部材は、前記内側面及び前記外側面にそれぞれ固定され、前記外側面に固定される補強部材は、前記凹レールの左側及び右側に固定されることを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記補強部材は、前記X線検出部と前記アームの中心との間の位置から前記X線発生部の直下の位置までわたって設けられる請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記補強部材は前記アームの有する凹部に嵌め込まれる請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記補強部材は前記アームに埋め込まれる請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記補強部材は前記アームに接着剤により固定される請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記補強部材は前記アームにネジにより固定される請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記補強部材は炭素繊維強化樹脂又はガラス繊維強化樹脂からなり、前記アームはアルミ合金又はマグネシウム合金からなる請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記補強部材は前記アームよりも高い縦弾性係数を有する請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記アームはC形状を有する請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記アームを回転自在に支持する第1支持部と、
前記第1支持部を回転自在に支持する第2支持部と、
前記第2支持部を旋回自在に支持する床支持部と
をさらに備える請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記アームを回転自在に支持する第1支持部と、
前記第1支持部を回転自在に支持する第2支持部と、
前記第2支持部を旋回自在に支持する天井支持部と
をさらに備える請求項1に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置やMRI装置、あるいはX線CT装置などを用いた医用画像診断技術は、コンピュータ技術の発展に伴って急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。
【0003】
X線診断は、近年ではカテーテル手技の発展に伴い循環器分野を中心に進歩を遂げている。循環器診断用のX線診断装置は、通常、X線発生部、X線検出部、X線発生部及びX線検出部を保持する保持装置、寝台(天板)、信号処理部、表示部等から構成される。そして、保持装置はC形アームあるいはΩ形アームを患者(以下では、被検体と呼ぶ)の周囲で回動、回転あるいは移動することによって最適な位置や方向におけるX線撮影を可能にしている。
【0004】
ところで、X線発生部およびX線検出部は円弧状のC形アームの両端に対向して搭載されており、X線中心と検出器中心とは、不要な被曝を防止し、正確な画像を得るためにも一致させておく必要がある。そのためにはC形アームの剛性を高め、強度を確保してたわみによる位置ずれを防止する必要があるが、近年の装置に対する小形化、軽量化のニーズから必要な剛性を保つことが難しくなってきている。
【0005】
近年ではX線診断装置に対しても小形化、軽量化のニーズが大きくなってきている。また、C形アームを垂直に立てた状態で上下方向への高さを低くするためにC形アームの厚さを薄くしたいという要求もある。ここでいう厚さとは、C形アームの前面(アイソセンタに向かう面)と背面(前面の逆側の面)との間の長さであり、これを薄くすればするほどC形アームを含む装置全体での省サイズ化を促すことができる。
【0006】
このようなニーズを満たすためにC形アームの材質や寸法が種々に検討されてきているが、既存のC形アームはアルミの押し出し成型品、あるいは鋼材を曲げて溶接加工した単一材料による一体品で製作されており、これらの部材の物性値から、必要な剛性や強度を確保することが難しくなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−86836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、アームの強度確保を小型軽量化とともに実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係るX線診断装置は、X線発生部と、X線検出部と、前記X線発生部と前記X線検出部とを支持し、ホルダによりスライド可能に支持されるレールを有し、アーチ形状を有するアームと、前記アームよりも高い弾性係数を有し、シート形状を有し、前記アームの表面のうち、前記レールが設けられる表面を除く少なくとも2以上の表面に、表面毎に独立して固定される補強部材
とを備え、
前記アームは、内側面、凹レールを有する外側面及び前記レールを有する側面を有し、前記補強部材は、前記内側面及び前記外側面にそれぞれ固定され、前記外側面に固定される補強部材は、前記凹レールの左側及び右側に固定されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】
図1のC形アームに対する補強部材の固定方法の一例を示す図。
【
図7】
図1のC形アームに対する補強部材の固定方法の他の例を示す図。
【
図8】
図1のC形アームに対する補強部材の固定方法の他の例を示す図。
【
図9】
図1のC形アームに対する補強部材の固定方法の他の例を示す図。
【
図10】
図1のC形アームに対して取り付ける補強部材の範囲の一例を示す図。
【
図11】
図1のC形アームに対して取り付ける補強部材の範囲の他の例を示す図。
【
図12】
図1のC形アームに対して取り付ける補強部材の範囲の他の例を示す図。
【
図13】
図1のC形アームに対して取り付ける補強部材の範囲の他の例を示す図。
【
図14】
図1のスタンドによりC形アームをその背面側で支持する方式の構造を示す断面図。
【
図15】
図14の構造に対応するC形アームをその内側面と側面から補強する補強部材を示すC形アームの横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1、
図2に示すように、床旋回アーム54は、その一端において略鉛直な第1回転軸Z1まわりに旋回自在(d)に床面59上に設けられる。第1回転軸Z1は、鉛直軸であり、水平な基準線BLと直交する。なお、撮影時には、被検体150の体軸が基準線BLに略一致するように、被検体150は天板17上に設置される。また、基準線BLは、天板17の中心線に略一致する。天板17は基準線BLと平行な長手方向に沿って移動可能に寝台18に設けられる。第1回転軸Z1は、天板17の長手方向の可動範囲MR内において基準線BLと交差する。つまり、床旋回アーム54は、天板17の長手方向の可動範囲MR内に設けられる。
【0013】
床旋回アーム54の他端においては略鉛直な第2回転軸Z2まわりに回転自在(c)にスタンド53が支持される。スタンド53には略水平な第3回転軸(C形アーム水平回転軸)Z3まわりに回転自在(b)にアームホルダ52が支持される。アームホルダ52には、C形アーム水平回転軸Z3と直交する略水平な第4回転軸(スライド回転軸)Z4まわりにスライド回転自在(a)にC形アーム51が支持される。C形アーム51は、アーチ形状を有する。典型的には、C形アーム51は、C字形状を有する。C形アーム51の中心側の面を内側面又は前面という。
【0014】
C形アーム51の一端には、X線管を有するX線発生部1が搭載され、C形アーム51の他端には、典型的には、2次元状に配列された複数のX線検出半導体素子を有するX線検出部(フラットパネルデテクタ(FPD)と通称される)2が搭載される。
【0015】
X線発生部1のX線焦点と、X線検出部2の検出面中心とを通る撮影軸SA(Z5)は、C形アーム水平回転軸Z3と、スライド回転軸Z4とに一点で交差するように、設計されている。周知の通り、当該交点の絶対座標(撮影室座標系上の位置)は、C形アーム51がC形アーム水平回転軸Z3まわりに回転しようと、C形アーム51がスライド回転軸Z4まわりに回転しようと、床旋回アーム54が第1回転軸Z1まわりに旋回しようと、スタンド53が第2回転軸Z2まわりに回転しない限りにおいては変位しないもので、一般的には、アイソセンタISと呼ばれている。
【0016】
図1に示したように、第2回転軸Z2まわりのスタンド53の回転角が基準角度(ゼロ°)にあって、C形アーム51が床旋回アーム54の上に重なって最も小さく折り畳まれた姿勢にあるとき、当該アイソセンタが、床旋回アーム54の第1回転軸Z1上に位置するように、換言すると、撮影軸SA(Z5)と、C形アーム水平回転軸Z3と、スライド回転軸Z4とが、当該アイソセンタにおいて床旋回アーム54の第1回転軸Z1と交差するように、設計されている。つまり、床旋回アーム54の第1回転軸Z1とスタンド53の第2回転軸Z2との距離と、スタンド53の第2回転軸Z2とアイソセンタISとの距離とが同一になるように、床旋回アーム54の長さ、スタンド53の大きさ、アームホルダ52の大きさ、C系C形アーム51の半径が総合的に決定されている。
【0017】
C形アーム51は円弧方向のスライド動作を実現するための支持ガイド機構を備える。C形アーム51は、鋼材よりも軽量で、しかも弾性係数の比較的高いアルミ合金又はマグネシウム合金を素材として製造される。
【0018】
C形アーム水平回転軸Z3まわりのC系C形アーム51の回転角が基準角度(ゼロ°)にあり、しかもスライド回転軸Z4まわりのC系C形アーム51の回転角が基準角度(ゼロ°)にあって、それにより当該撮影軸SA(Z5)が鉛直方向にあるとき、上記の第2回転軸Z2まわりのスタンド53の回転角が基準角度(ゼロ°)にある状況のもとでは、撮影軸SA(Z5)は床旋回アーム54の第1回転軸Z1に略一致する。
【0019】
図3は、実施形態に係わるC形アーム51の断面図である。C形アーム51は例えばアルミ合金の押し出し材により円弧状に形成されており、スライド回転軸Z4まわりのスライド回転(a)を支えるために支持レール20が形成される。この支持レール20がアームホルダ52により両側から挟まれる格好となる。
【0020】
C形アーム51に、シート形状に形成された補強部材301,302,303が、接着剤、ネジ留め、又はその両方により固定される。補強部材301,302,303により補強されたC形アーム51は、当該補強されないアルミ合金だけから構成されたC形アームと同等の弾性係数を確保しながら、当該補強されないアルミ合金だけから構成されたC形アームよりも軽量且つ小型を達成することができる。
【0021】
補強部材301,302,303はC形アーム51よりも高い縦弾性係数を有する。補強部材301,302,303はC形アーム51よりも単位体積あたり質量が低い。補強部材301,302,303は炭素繊維強化樹脂(CFRP)又はガラス繊維強化樹脂(GFRP)で製造される。
【0022】
図3,
図5に示すように、補強部材301はC形アーム51の内側面(前面)に固定される。C形アーム51の内側面とは、C形アーム51の円弧中心側の面をいう。補強部材302,303は、C形アーム51の外側面(背面)に固定される。
【0023】
図7に示すように、補強部材301,302,303は、C形アーム51の表面に貼り付けられる。
図6に示すように、補強部材301,302,303はC形アーム51の凹部に嵌め込まれてもよい。補強部材301,302,303はC形アーム51の内部に埋め込まれてもよい。補強部材301,302,303は、多層化されたC形アーム51の層間に挟み込まれてもよい。
図8,
図9に示すように、補強部材301はC形アーム51を内側面から側面の一部にわたって覆うように設けられていても良い。
【0024】
図10、
図11に示すように、補強部材301は、典型的には、X線検出部2とC形アーム51の中心との間の位置から、重量物であるX線発生部1の直下の位置までわたって設けられる。なお、
図12に示すように、補強部材301は、最も応力のかかるC形アーム51の中心を含むC形アーム51の一部分には少なくとも設けられる。また
図13に示すように、補強部材301は、縦列に連結される複数の補強片301−1,301−2,・・・301−nからなるものであってもよい。
【0025】
なお、
図14に示すように、C形アーム51がその背面においてアームホルダ52によりローラ521−524により支持される構造511を備えることがある。その場合、補強部材は、C形アーム51の背面に設けることができない。
図15に示すように、補強部材304,305は、C形アーム51の側面に設けられる。
【0026】
C形アーム51の前面はアイソセンタに向かう面であり、背面はその反対側の面である。背面にはC形アーム51をスライド回転軸Z4まわりに回転させるための駆動ベルト(図示せず)を収納するための凹レールが形成されているので、炭素繊維強化材料301、302,303は凹レールおよび駆動ベルトに干渉しないように取り付けられる。
【0027】
例えば、CFRPの剛性、強度に関わる物性値は、縦弾性係数でアルミの約5倍以上、引張強度で10倍以上を見込める。よって炭素繊維強化材料30を部分的に使用したとしても、接着や圧入、ネジ締結等により密着させて一体化させることで、C形アーム51の全体的な剛性、強度アップを実現することができる。
【0028】
これによって、単一のアルミ合成基材だけを用いる場合に比べてC形アーム51の強度を高められ、前面と背面との間の長さである厚さを薄くすることが可能になるので、従来よりも小形、軽量化を図ったC形アーム形保持装置を実現することができる。
図4に示す既存のC形アームはその厚さを薄くするほど剛性が失われ、たわみ、ゆがみを生じやすくなる。
【0029】
C形アームは円弧方向のスライド動作を実現するための支持ガイド機構を有する。CFRPに代表される繊維強化形複合樹脂材料の一般的な物性は、C形アーム支持ガイド部分に作用する接触面圧に対しては、基材よりも弱くなるので、接触面は金属やエンジニアリングプラスチックといった許容面圧の高い材料とする必要があり、炭素繊維強化材料を使用できない制約がある。そこでこの実施形態では、アルミや、鋼材を基材として形成されるC形アームに、支持ガイド部分の形成面以外の面に対して炭素繊維強化材料を貼付けるようにした。これによりC形アームを省サイズ化しつつも剛性を高めることが可能になり、従来よりも小型、軽量化を図ったX線診断装置を実現することができる
以上説明したようにこの実施形態では、C形アーム51のたわみを少なくする(剛性向上)と同時に強度アップを図るために、C形アーム51の基材であるアルミや鋼材に対して、より縦弾性係数(ヤング率)の高い材料を組合せて、貼付けや、ネジ締結などにより構造体として一体化させるようにした。縦弾性係数(ヤング率)の高い材料、例えば炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の材料を用いることで、基材よりも高い強度、剛性を実現することができ、C形アーム全体の構造体としての剛性・強度の向上を図ることができる。従って、強度を確保しつつC形アームの断面積を縮小することが可能になり、C形アームの小型、軽量化を図ることが可能になる。
【0030】
本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1…X線発生部、2…X線検出部、17…天板、18…寝台、51…C形アーム、52…アームホルダ、53…スタンド、54…床旋回アーム、59…床面、150…被検体、301,302,303…補強部材。