特許第5931387号(P5931387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931387
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】色覚検査装置及び色覚測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/06 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   A61B3/06 BZDM
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-211011(P2011-211011)
(22)【出願日】2011年9月27日
(65)【公開番号】特開2013-70774(P2013-70774A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】511233773
【氏名又は名称】小林 英之
(73)【特許権者】
【識別番号】508044313
【氏名又は名称】白井 利明
(73)【特許権者】
【識別番号】513008683
【氏名又は名称】足立 公
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】有馬 二朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 英之
(72)【発明者】
【氏名】白井 利明
(72)【発明者】
【氏名】多田 喜計
(72)【発明者】
【氏名】陳 暁光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇仁
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0061835(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/053521(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準色と、この標準色と比較する比較色とを表示して、比較色を変化させながら被検者が標準色と等しいと感じる比較色である等色を特定し、この等色から被検者に適合した色覚補正レンズを特定するために用いる色覚検査装置であって、
標準色として白色を形成可能な標準色形成用光源と、
前記標準色を表示する標準色表示部と、
赤色光源、緑色光源、及び青色光源の3種の光源を有し、前記各光源が発する色光のうち一又は複数の色光を混合して比較色を形成する比較色形成ユニットと、
前記標準色表示部に隣接し、前記比較色を表示する比較色表示部と、
前記3種の光源の光束の比を変化させることにより、比較色を変化させる光束比可変手段と、
前記3種の光源の光束の比、又は前記比較色表示部における前記3種の光源による照度の比を表示する表示手段と
を備え、
前記標準色形成用光源は、青色LEDと黄色の蛍光体を組み合わせて白色を形成するよう構成され、
前記光束比可変手段は、前記比較色形成ユニットの3種の光源のうち赤色光源と青色光源の2種の光源の光束の比を一定にした状態で又は自動的に変化させながら、赤色光源と青色光源の光束の合計を増減可能であり、赤色光源と青色光源の光束の合計を増加させると緑色光源の光束が減少し、赤色光源と青色光源の光束の合計を減少させると緑色光源の光束が増加して、
比較色がマゼンタから白色を通って緑色の間で又は緑色から白色を通ってマゼンタの間で変化するよう構成されていることを特徴とする色覚検査装置。
【請求項2】
被検者に適合した色覚補正レンズを特定するために用いる色覚測定方法であって、
白色を標準色とするとともに赤色光源、緑色光源及び青色光源からなる3種の光源が発する色光のうち一又は複数の色光を混合して形成した色を比較色とし、標準色と比較色とを隣接させて表示する検査色表示ステップと、
前記3種の光源のうち赤色光源と青色光源の2種の光源の光束の比を一定にしながら又は自動的に変化させながら、赤色光源と青色光源の光束の合計を増加させるとともに緑色光源の光束を減少させるか、又は赤色光源と青色光源の光束の合計を減少させるとともに緑色光源の光束を増加させることで、前記比較色をマゼンタから白色を通って緑色の間で又は緑色から白色を通ってマゼンタの間で変化するよう変色させながら、被検者が標準色と等しいと感じる比較色である等色を被検者に特定させる等色特定ステップと、
前記等色を形成した3種の光源の光束の比、又は前記等色を表示した際の比較色表示部における前記3種の光源の照度の比を表示手段に表示して読み取る等色データ採取ステップとを有し、
前記標準色とする白色を、青色LEDと黄色の蛍光体を組み合わせて形成することを特徴とする色覚測定方法。
【請求項3】
前記3種の光源のうち、赤色光源と緑色光源の色光を混合することにより形成した二色混合比較色と、黄色標準色とを隣接させて表示する黄色標準色表示ステップと、
赤色光源と緑色光源の光束の比を変化させることにより前記二色混合比較色を変化させながら、被検者が前記黄色標準色に等しいと感じる二色混合比較色である黄等色を被検者に特定させる黄等色特定ステップと、
前記黄等色を形成した赤色光源と緑色光源の光束の比を、又は前記黄等色を表示した際の赤色光源と緑色光源の比較色表示部における照度の比を前記表示手段により読み取る黄等色データ採取ステップと、をさらに有し、
前記黄色標準色を、単色光の黄色LEDにより形成する請求項2に記載の色覚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、色盲患者の色覚特性に適合した色覚補正レンズを特定するための色覚検査
装置及び色覚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、色覚異常者の色覚を色覚正常者(以下単に「正常者」ともいう。)の色覚に近づけるべく補正する色覚補正レンズが製造販売され、多数の色覚異常者が利用するに至っている。従来、色覚異常者は、赤、緑又は青を感じる網膜の3種の錘状体視細胞のうち、いずれかが欠損しているか又は他の錘状体視細胞に比べて相対的に感度が弱いために色覚異常を引き起こすとされてきたが、この色覚補正レンズは、色覚異常者の3種の錘状体視細胞のいずれかが、他の錘状体視細胞より感度が相対的に強いことが色覚異常の原因であるとする理論に基づいている。即ち、当該色覚補正レンズは、色覚異常者が相対的に強く感じる光を抑えることで、色覚異常者の色覚を正常者の色覚に近づけるものである。
【0003】
具体的には、この色覚補正レンズは、色覚異常者が、赤、緑及び青のうちどの色に対する感度が他の色に対する感度に比べてどの程度相対的に強いかという色覚特性(以下「色覚特性」という)に合わせて、色覚異常者が強く感じる光の透過率をそうでない光の透過率より小さくして、この3色に対する感度のバランスを正常人に近づけるよう設計されたスペクトル特性を有している(例えば、特許文献1参照)。
色覚異常者の色覚特性は多様であるため、各種のスペクトクル特性を備えたレンズが用意されおり、色覚異常者に当該レンズを提供する際には、色覚異常者の色覚特性に適合した特性曲線を備えるレンズを特定する必要がある。
【0004】
現在、このレンズの特定はコンピューターによるシミュレーション画像を用いた検査により行われている。このシミュレーション画像は、いわゆる仮性同色表であり、特性曲線を有するレンズを装着して当該仮性同色表を正常者が見た場合に見えるであろう画像を、コンピューターにより作成したものである。このシミュレーション画像を色覚異常者である被検者に見せ、当該画像中の数字や文字を当該被検者が最もよく識別できる場合、その画像に対応するスペクトル特性を有するレンズがその被検者に適合するものとして特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−18819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記のシミュレーション画像は、特許文献1に示されるように、色覚補正レンズのスペクトル特性により分類される4タイプ(表1から表4参照)ごとに各8種、合計32種が用意されており、前記各種についてさらに確認用にデザインの異なる画像が複数用意されている。被検者は、これらを1つずつ丹念に見る必要が有るため、色覚検査に大きな労力と時間を要する場合が有る。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被検者の色覚特性が属するタイプのシミュレーション画像のみを検査すれば済む程度に、被検者の色覚特性を予め把握することを可能にする色覚検査装置及び色覚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、標準色と、この標準色と比較する比較色とを表示して、比較色を変化させながら被検者が標準色と等しいと感じる比較色である等色を特定し、この等色から被検者に適合した色覚補正レンズを特定するために用いる色覚検査装置であって、標準色として白色を形成可能な標準色形成用光源と、前記標準色を表示する標準色表示部と、赤色光源、緑色光源、及び青色光源の3種の光源を有し、前記各光源が発する色光のうち一又は複数の色光を混合して比較色を形成する比較色形成ユニットと、前記標準色表示部に隣接し、前記比較色を表示する比較色表示部と、前記3種の光源の光束の比を変化させることにより、比較色を変化させる光束比可変手段と、前記3種の光源の光束の比、又は前記比較色表示部における前記3種の光源による照度の比を表示する表示手段とを備える。
【0009】
本発明の色覚検査装置によれば、近似する色との違いが分かりやすい白色を標準色として表示して検査を行えるため、近似する色との違いが分かりにくい色を標準色とする場合に比べて正確な検査結果を得ることができる。
また、本発明の色覚検査装置は、赤、緑及び青の3種の光源が発する光を混合して比較色を形成し、表示手段が、この3種の光源の光束の比又は比較色表示部における各光源による照度の比を表示するよう構成されているため、被検者が特定した等色を形成した各光源の光束の比、又は比較色表示部に等色が表示された際の比較色表示部における各光源による照度の比を把握でき、被検者の赤、緑及び青の3色に対する感度の強弱を把握することができる。
【0010】
そして、前記光束比可変手段は、前記比較色形成ユニットの3種の光源のうち赤色光源と青色光源の2種の光源の光束の比を一定にした状態で又は自動的に変化させながら、赤色光源と青色光源の光束の合計を増減可能であり、赤色光源と青色光源の光束の合計を増加させると緑色光源の光束が減少し、赤色光源と青色光源の光束の合計を減少させると緑色光源の光束が増加して、比較色がマゼンタから白色を通って緑色の間で又は緑色から白色を通ってマゼンタの間で変化するよう構成されていることを特徴とする。こうすることで、比較色を変色させる操作を容易に行うことができる。
【0011】
また、前記標準色表示部及び前記比較色表示部の一方は、直線及び/又は曲線で囲まれた図形で形成され、前記標準色表示部及び前記比較色表示部の他方に囲まれるように配設されることが好ましい。これにより、この図形の形状が見えなくなるように光束比可変手段を操作することで、容易に等色を特定することができる。
【0012】
本発明の色覚測定方法は、被検者に適合した色覚補正レンズを特定するために用いる色覚測定方法であって、白色を標準色とするとともに赤色光源、緑色光源及び青色光源からなる3種の光源が発する色光のうち一又は複数の色光を混合して形成した色を比較色とし、標準色と比較色とを隣接させて表示する検査色表示ステップと、前記3種の光源のうち赤色光源と青色光源の2種の光源の光束の比を一定にしながら又は自動的に変化させながら、赤色光源と青色光源の光束の合計を増加させるとともに緑色光源の光束を減少させるか、又は赤色光源と青色光源の光束の合計を減少させるとともに緑色光源の光束を増加させることで、前記比較色をマゼンタから白色を通って緑色の間で又は緑色から白色を通ってマゼンタの間で変化するよう変色させながら、被検者が標準色と等しいと感じる比較色である等色を被検者に特定させる等色特定ステップと、 前記等色を形成した3種の光源の光束の比、又は前記等色を表示した際の前記比較色表示部における前記3種の光源の照度の比を表示手段に表示して読み取る等色データ採取ステップとを有し、前記標準色とする白色を、青色LEDと黄色の蛍光体を組み合わせて形成することを特徴とする。
【0013】
本発明の色覚測定方法は、前記3種の光源のうち、赤色光源と緑色光源の色光を混合することにより形成した二色混合比較色と、黄色標準色とを隣接させて表示する黄色標準色表示ステップと、 赤色光源と緑色光源の光束の比を変化させることにより前記二色混合比較色を変化させながら、被検者が前記黄色標準色に等しいと感じる二色混合比較色である黄等色を被検者に特定させる黄等色特定ステップと、前記黄等色を形成した赤色光源と緑色光源の光束の比を、又は前記黄等色を表示した際の赤色光源と緑色光源の比較色表示部における照度の比を前記表示手段により読み取る黄等色データ採取ステップと、をさらに有し、前記黄色標準色を、単色光の黄色LEDにより形成することが好ましい。
本発明に係る色覚測定方法では、等色を形成した3色の光源の光束の三連比、又は比較色表示部における3色の光源による照度の三連比のうち、赤色光源と青色光源に係る比は、あらかじめ一定に固定された比、又は予め定められた通りに自動的に変化した比となっており、被検者の色覚特性を反映したものではない。
黄色標準色表示ステップと、黄等色特定ステップと、黄等色データ採取ステップとをさらに有することにより、等色データ採取ステップで得られた比のデータに、黄色等色データ採取ステップで得られた比のデータを合わせて、この一定に固定された又は予め定められた通りに自動的に変化した赤色光源と青色光源に係る比についても被検者の色覚特性を反映した三連比を得ることができる。
【0014】
尚、ここで「光束の比」又は「照度の比」とは、各光源の光束又は比較色表示部から反射する光束を○:○若しくは○:○:○のように並べて表記したもの又はこれを整理して簡単にしたものをいい、瞬間的に発光又は反射される光束の比に限らず、単位時間内に発光又は反射される光束の合計の比を含むものとする。また、「二色混合比較色に対応する有色標準色」とは、二色混合比較色が赤と緑の色光を混合して形成される場合には黄を、二色混合比較色が緑と青の色光を混合して形成される場合にはシアンを、二色混合比較色が青と赤の色光を混合して形成される場合にはマゼンタをいうものとする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の色覚検査装置及び色覚測定方法によれば、被検者の色覚特性を予め把握することが可能となるため、被検者の色覚特性が属するタイプのシミュレーション画像のみを検査すれば済み、容易に被検者に適合した色覚補正レンズを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る色覚検査装置の(a)平面図、(b)側面図、 (c)上部ケーシングを外した状態の本体ケーシングの平面図である。
図2図1の色覚検査装置のブロック図である。
図3図1の色覚検査装置の一の検査色表示手段の構成を示した概念図であり(a)は、平面図、(b)は(a)におけるA−A視断面図である。
図4図1の色覚検査装置において図3とは別の検査色表示手段の構成を示した概念図であり(a)は、平面図、(b)は(a)におけるB−B視断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る色覚検査装置の平面図である。
図6】赤、緑及び青の色光を混合した場合に形成される色の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を用いながら、本発明の実施形態について詳述する。尚、本発明の色覚検査装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る色覚検査装置1である。色覚検査装置1は、標準色表示部61,62,63,64、比較色形成ユニット7,…及び比較色表示部81,82,83,84を有する4つの検査色表示手段21,22,23,24と、光束比可変スイッチ(光束比可変手段)3と、液晶表示器(表示手段)4とを主に備える他、前後(図1各図の左右)に傾斜面30a,30bを備えた扁平の箱型をなす本体ケーシング30と、本体ケーシング30の上に載置される上部ケーシング31と、本体ケーシング30内に配設される制御ユニット40とを備えている。
【0019】
4つの検査色表示手段21,22,23,24は、図1(c)に示すように、本体ケーシング30の内部に設けられるターンテーブル15の上面に等角度間隔で載置されている。ターンテーブル15の中心部下側には、ステッピングモータ16が配設されている。 本体ケーシング30の略中央には、上部の板を貫通する矩形の表示窓18が設けられており、ステッピングモータ16により、ターンテーブル15を回転軸17回りに90度ずつ回転させて、各検査表示手段21,22,…を表示窓18の位置に移動することができる。
【0020】
検査色表示手段21は、標準色表示部61に白を表示し、検査色表示手段22は標準色表示部62に黄を表示し、検査色表示手段23は、標準色表示部63に、シアンを表示する。検査色表示手段24は、赤、緑、青を混合して形成される多様な色を標準色表示部64に表示する。
【0021】
検査色表示手段21,22…について、検査色表示手段21を例に挙げて説明すると、図3に示すように、検査色表示手段21は、標準色形成用光源51、標準色表示部61、比較色形成ユニット7及び比較色表示部81を有している。標準色形成用光源51及び比較色形成ユニット7は、矩形のアルミニウム製基板9上に配設される。アルミニウム製基板9上には、標準色形成用光源51が中央に配設され、これを挟むように左右に一対の比較色形成ユニット7,7が配設されている。ただし、比較色形成ユニット7は、一対に限らず、比較色表示部81に表示する比較色に明暗ができないように、かつ標準色表示部61と比較色表示部81との境界に影ができないように適宜複数が配設される。
標準色形成用光源51及び比較色形成ユニット7は、図3(b)に示すように全体としてアルミニウム製の側板10により囲まれており、標準色形成用光源51と比較色形成ユニット7とは、乳白色のアクリル板からなる仕切り板11により仕切られている。仕切り板11及び側板10で囲まれた部屋は、乳白色のアクリル板からなる検査色表示板12により上部開口が閉じられている。この検査色表示板12のうち、標準色形成用光源51が発する光が投影される部分が標準色表示部61を、比較色形成ユニット7が発する光が投影される部分が比較色表示部81となる。
【0022】
標準色形成用光源51は、白色光源であり、青色LEDに黄色の蛍光体を組み合わせて白色光を発するタイプのLED51を用い、検査色表示手段24の標準色表示手段54には、赤色、緑色、青色の光を混合して白色を形成可能なRGBLED54を用いている。
【0023】
また、ここでいう白色としては、正常者が白色と感じることができる色であれば特に限定されず、JISZ8110の色度区分に属する白色を用いてもよいし、CIE(国際照明委員会)が規定するA光源、C光源、D65光源等の白色やこれらを近似する白色を用いてもよい。
【0024】
比較色形成ユニット7は、赤色光源7a、緑色光源7b、及び青色光源7cの3種の光源を有し、これらの光源が発する色光を混合して比較色Yを形成する。赤色光源7a、緑色光源7b、及び青色光源7cとして用いる光源としては、ハロゲンランプやレーザ光等の公知の単色光源を適宜用いることができる他、プリズムにより混合光を分光した光を光源として用いることもできる。本実施形態では、比較色形成ユニット7として赤色LED7a緑色LED7b及び青色LED7cを備えるRGBLED7を用いており、各LEDが発する光束を増減することにより、比較色Yを変化させている。
本実施形態においては、各LED7a,7b,7cの点灯時間と消灯時間の比率を変化させるPWM方式によって、各LEDの単位時間当たりの光束を増減させているが、各LEDの電流を増減させる電流制限方式やその他の公知の方法により各LEDの光束を変化させてもよい。
また、本実施形態においては、赤色LED7a、緑色LED7b、及び青色LED7cを連続して点灯した状態において、比較色表示部81における各光源7a,7b,7cによる照度を予め略3:7:1となるように調整しており、例えば赤色LED7aのみ点灯時間を連続点灯の場合の3分の1にすると、各LEDによる照度の比は、1:7:1となる。
尚、各LED7a,7b,7cによる比較色表示部81,…における照度を直接測定する構成としてもよい。
【0025】
赤色光源の発する光は、特に限定されないが、ピーク波長が610nm以上750nm以下の赤色光が好ましい。本実施形態では、ピーク波長が620nm以上630nm以下の赤色光を発する赤色LED7aを赤色光源として用いている。
【0026】
緑色光源の発する光は、特に限定されないが、ピーク波長が495nm以上573nm以下の緑色光が好ましく、本実施形態では、ピーク波長が520nm以上535nm以下の緑色光を発する緑色LED7bを緑色光源として用いている。
【0027】
青色光源の発する光は、特に限定されないが、ピーク波長が435nm以上485nm以下の青色光が好ましい。本実施形態では、ピーク波長が465nm以上475nm以下の青色光を発する青色LED7cを青色光源として用いている。
【0028】
仕切り板11は、平面視で、直線及び/又は曲線で囲まれた図形(本実施形態では、図1(c)に示すようにハート型、四角形、五角形又は六角形)を形成するように設けられている。また、仕切り板11は、図3(b)に示した通り、検査色表示板12の標準色表示部61と比較色表示部81との境界に仕切り板11の影が映らないように、検査色表示板12と当接する側の先端が刃状に尖るように形成されている。
【0029】
検査色表示板12は、ターンテーブル15を回動させて、本体ケーシング30の表示窓18と外周を一致させるように配置し、上部から検査色表示板12全面が視認できるように構成されている。
【0030】
検査色表示手段22の標準色表示用光源52(図示せず)は、黄色光源52であり、この黄色光源52により、標準色表示部62に単色光の黄色が表示される。本実施形態では、黄色光源52として波長ピークが585nm以上595nm以下の黄色光を発する黄色LED52が用いられる。ただし、黄色光源52としては、黄色LEDに限定されず、赤色LEDと緑色LEDを組わせたものを光源としてもよいし、LED以外の光源を用いてもよく、黄色光を発するものであれば、公知のものを適宜用いることができる。
また、ここでいう黄色は、正常人が黄色と感ずることができる色であれば特に限定されず、例えば、JISZ8110の色度区分に属する黄色を用いることができる。
【0031】
検査色表示手段23の標準色表示用光源53(図示せず)は、シアン光源53であり、このシアン光源53により、標準色表示部63に単色光のシアンが表示される。本実施形態では、シアン光源53として波長ピークが500nm以上510nm以下のシアン色光を発するシアンLED53が用いられる。ただし、シアン光源53としては、シアンLEDに限定されず、緑色LEDと青色LEDを組わせたものを光源としてもよいし、LED以外の光源を用いてもよく、シアン色光を発するものであれば、公知のものを適宜用いることができる。
また、ここでいうシアンは、正常人がシアンと感ずることができる色であれば特に限定
されず、例えば、JISZ8110の色度区分に属する青緑色を用いることができる。
【0032】
検査色表示手段24の標準色表示用光源54は、図4に示すように、赤色光源54a、緑色光源54b及び青色光源54cの3種の光源を有し、これらの光源が発する色光を混合して各種の色を形成することができ、例えば、有色標準色としてのマゼンタは、赤色光源54aと青色光源54cが発する色光を混合して形成できる。標準色示用手段54としては、比較色形成ユニット7で用いる光源を好適に用いることができ、本実施例では、RGBLED7と同じRGDLED54を用いている。
検査色表示手段22、23、24と検査色表示手段21とで共通する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
図1に示すように、光束比可変スイッチ3は、裁頭円錐状の回転つまみで操作するロータリースイッチであり、本体ケーシング30の前側傾斜面30aに配設されている。
【0034】
液晶表示器4は、本体ケーシング30の後側の傾斜面30bに配設され、RGBLED(比較色形成ユニット)7の3色のLED7a,7b,7cの光束の比、又は比較色表示部81,…における各LED7a,7b,7cによる照度の比をデジタル表示する。本実施形態においては、各LED7a,7b,7cの点灯時間と消灯時間の比と、予め設定した比較色表示部における各LED7a,7b,7cによる照度の比とを用いて、比較色表示部における各LED7a,7b,7cによる照度の比(以下単に「照度の比」ともいう。)を算出して表示している。詳細には、3つのLED7a,7b,7cの照度の合計に対する各LEDの照度の比率を百分率で表示している。
また、後側の傾斜面30bに、4つの検査色表示手段21,22,…から検査に用いる1つを選択するためのスイッチ19a及び後述する比較色の開始色を選択するスイッチ19bが設けられている。
【0035】
制御ユニット40は、本体ケーシング30内に配設され、内部に制御コントローラ41、LEDドライバー42,モータドライバー43及び液晶表示ドライバー44を備えており、スイッチ19a,19bや光束比可変スイッチ3からの入力信号を、制御コントローラ41及び各ドライバー42、43、44を介してステッピングモータ16、白色LED51,黄色LED52,シアンLED53,RGBLED54、比較色形成ユニット7、液晶表示器4に伝達し、これらを操作するよう構成されている。本体ケーシング30内には、各部に電源を供給する電源ユニット45が配設されている。
【0036】
上部ケーシング31は、図1(b)に示すように、側面視五角形をなす底部が開口した箱体で、手前上側(図1(b)では左上側)に傾斜面31aが設けられている。上部ケーシング31は、本体ケーシング30の表示窓18を覆うように本体ケーシング30に載置され、内部に暗室32を形成する。上部ケーシング31の傾斜面31aには、暗室32の底部の検査色表示板12を被検者が覗くための一対の接眼部28,28が設けられている。各接眼部28は、軸芯が検査色表示板12の略中央を通るように傾斜面31aに垂設される円筒部28aと、円筒部28aの上端部に設けられる接眼レンズ28bと、接眼レンズ28bの位置を上下させて被検者が検査色表示板のピントを調節する調節ねじ28cとからなる。接眼部28は、被検者が接眼レンズ28bを覗くと、検査色表示板12が見えるように構成されている。
【0037】
次に、第1実施形態に係る色覚検査装置1を用いて行う本発明の色覚測定方法について説明する。尚、本発明の色覚測定方法は、下記の方法に限られるものではない。
【0038】
本実施形態の色覚測定方法は、主に検査色表示ステップS1、等色特定ステップS2、等色データ採取ステップS3を備える他、黄色標準色表示ステップ(有色標準色表示ステップ)P4、黄等色特定ステップ(有色等色特定ステップ)P5、黄等色データ採取ステップ(有色等色データ採取ステップ)P6、三色光比算出ステップS7、レンズタイプ判定ステップS8及び画像検査ステップS9を備えている。
【0039】
概略的には、本実施形態の色覚測定方法では、まず、検査色表示ステップS1〜等色データ採取ステップS3において、白を標準色とし、比較色をマゼンタから緑へと変化させて標準色に対する被検者の等色E1を特定し、等色E1における緑色光源7bと青色光源7cの照度の比h1を求める。
ここで、シアンを標準色とし、比較色Yを青から緑に変化させるようにして特定した等色Eをもとに、緑色光源7bと青色光源7cの光束の比を測定することもできる(図6中符号102の矢印参照)が、この方法では、緑、シアン及び青が互いに判別しにくい近似色となるため、等色を特定しにくいという問題が有る。そこで、本実施形態の色覚測定方法では、白色を標準色とし、比較色を青に赤を混合したマゼンタと緑との間で変化させることで比較色が白色に変色可能となるようにし(図6中符号101の矢印参照)、白色の近辺で等色E1を特定するようにしたものである。
【0040】
次に、有色標準色表示ステップS4〜黄等色データ採取ステップS6において、黄色を有色標準色とし、二色混合比較色を赤と緑の間で変色させながら(図6中符号103の矢印参照)有色標準色に対する被検者の黄等色(有色等色)E2を特定し、黄等色E2における赤色光源7aと緑色光源7bとの照度の比h2を読み取る。そして、三色光比算出ステップS7において、h1及びh2から、h1に係る標準色とh2に係る有色標準色の組み合わせに対する赤色光源7a、緑色光源7b及び青色光源7cの三色の光源の照度の比である三色光比Hを算出し、レンズタイプ判定ステップS8において、この三色光比Hにより色覚補正レンズのタイプを判定し、このレンズタイプに限定して画像検査ステップS9を行う。
【0041】
次に、本実施形態の色覚測定方法の各ステップについて詳述する。
(検査色表示ステップS1)
検査色表示ステップS1は、白色を標準色とするとともに赤色LED7a、緑色LED7b及び青色LED7cからなる3種の光源が発する色光のうち一又は複数の光を混合して形成した色を比較色とし、標準色と比較色とを隣接させて表示するステップである。検査色表示ステップS1では、検査を行う者が色覚検査装置1を操作する。
【0042】
検査色表示ステップS1では、まず、色覚検査装置1の電源(図示せず)をONにする。次に、図1に示したスイッチ19aを操作することにより4つの検査色表示手段21,22,…から標準色表示用光源51が白色LED51である検査色表示手段21を選択する。すると、ターンテーブル15が回転して、検査色表示手段21が表示窓18の直下に移動し、検査色表示手段21の白色LED51及び比較色形成ユニット7の赤色LED7a、緑色LED7b、及び青色LED7cが点灯する。白色LED51が点灯すると、検査色表示板21の標準色表示部61に標準色として白が表示され、比較色形成ユニット7が点灯すると、比較色表示部81に比較色が表示される。
尚、白色LED51は、青色LEDと黄色の蛍光体を組み合わせて白色光を発光するものである。
【0043】
次に図1に示したスイッチ19bを操作し、比較色を開始色に設定する。開始色としては、図5に示すように、マゼンタ、シアン及び黄色の中から1色を選択することができる。開始色は、比較色表示用光源7の赤色LED7a、緑色LED7b、青色LED7cが発光する光のうち2つの光を混合して形成される。
本実施形態の色覚測定方法では、開始色としてマゼンタを選択する。
【0044】
開始色としてマゼンタを選択すると、制御コントローラ41及びLEDコントローラ42により青色LED7c及び赤色LED7aの点灯時間が制御され比較色表示部81における青色LED7cが発する色光と赤色LED7aが発する色光による照度の比が、略1:3に固定される。そして、光束比可変スイッチ3を操作して緑色LED7bの発する光束を0にする。すると、青色LED7cが発する色光と赤色LED7aが発する色光による照度の比を略1:3としたマゼンタが開始色として表示される。ただし、青色LED7cが発する光束と赤色LED7aが発する光束の比は1:3に限られるものではなく、他の比に設定してもよい。また、開始色を形成する色光に、緑色LEDの7bの発する色光を少し混合してもよい。
開始色が表示されると、検査色表示ステップS1が終了する。
【0045】
ここで、比較色表示部81において、青色LED7cと赤色LED7aによる照度が両LED7a,7bを連続して点灯した状態で略1:3に予め設定されているため、両光源7c,7aの点灯時間と消灯時間の比率を同じにすれば、青色LED7cと赤色LED7aの光束の比が略1:3に固定される。また、両光源7c,7aの点灯時間と消灯時間の比を異なる比に固定することにより、青色LED7cと赤色LED7aの光束の比を1:3以外の比に固定することができる。
【0046】
尚、本実施形態の色覚検査装置1では、開始色として、黄色を選択することもできる。開始色として黄色を選択すると、比較色表示部81における赤色LED7aが発する色光と緑色LED7bが発する色光による照度の比が、略3:7に固定される。そして、光束比可変スイッチ3を操作して青色LED7cの発する光束を0にする。すると、赤色LED7aが発する色光と緑色LED7bが発する色光による照度の比を略3:7とした黄色が開始色として表示される。ただし、赤色LED7aが発する光束と緑色LED7bが発する光束の比は3:7に限られるものではなく、他の比に設定してもよい。
【0047】
また、本実施形態の色覚検査装置1では、開始色としてシアンを選択することもできる。開始色としてシアンを選択すると、比較色表示部81における緑色LED7bが発する色光と青色LED7cが発する色光による照度の比が、略7:1に固定される。そして、光束比可変スイッチ3を操作して赤色LED7aの発する光束を0にする。すると、緑色LED7bが発する色光と青色LED7cが発する色光による照度の比を略7:1としたシアンが開始色として表示される。ただし、緑色LED7bが発する光束と青色LED7cが発する光束の比は7:1に限られるものではなく、他の比に設定してもよい。
【0048】
(等色特定ステップS2)
等色特定ステップS2は、比較色表示手段81における比較色形成ユニット7の赤色LED7a、緑色LED7b、青色LED7cの3種の光源による照度の比を液晶表示器4により表示しつつ、前記3種のLED7a,7b,7cのうち2種のLEDの光束の比を一定にしながら、前記2種のLEDの光束の合計を減少させるとともに前記3種の光源7a,7b,7cのうち前記2種の光源以外の1種のLEDの光束を増加させることで、比較色を標準色に近づけるよう変色させながら、被検者が標準色と等しいと感じる比較色である等色E1を被検者に特定させるステップである。
【0049】
等色特定ステップS2は、被検者が色覚検査装置1の手前側に着席して、両目で接眼部28,28を覗くことにより開始される。被検者は、検査色表示板12がくっきりと見えるように調節ねじ28cを操作する。被検者は、色覚検査装置1の前側の傾斜面30aに設けられた光束比可変スイッチ3を操作することにより、比較色を開始色から標準色の方向へと変化させる。光束比可変スイッチ3を回転させると、開始色を形成する2種の単色光源の光束の比が固定された状態で、この2種の単色光源の光束の合計を減少するとともに他の1種の単色光源の光束を増加する。
【0050】
本実施形態では、開始色としてマゼンタが表示された状態から、光束比可変スイッチ3を回転させると、比較色において青色LED7cと赤色LED7aの光束の比が固定されたまま、青色LED7cと赤色LED7aの光束の合計が減少し、緑色LED7bの光束が増加される。すると、図6の矢印101に沿って、比較色はマゼンタから徐々に白に近い色に変色する。比較色が白となった後も、光束比可変スイッチ3を同方向に回転させ続けると、比較色は白から緑へと徐々に変色する。
光束比可変スイッチ3は、比較色がマゼンタから緑まで変色する間に、比較色表示部81における赤色LED7a、緑色LED7b及び青色LED7cによる照度の比を略3:7:1とする白を経るように構成されている。ただし、白を形成する赤色LED7a、緑色LED7b及び青色LED7cの照度の比は3:7:1に限られるものではなく、他の比に設定してもよい。
尚、青色LED7cと赤色LED7aの光束の比は一定の比に固定させず、光束比可変スイッチ3を回転させるにつれ、例えば1:2から2:1まで直線的に自動で変化するようにしてもよい。
【0051】
被検者は、標準色表示部61を囲む図形が見えなくなり比較色と標準色が等しくなったと感じるところで光束比可変スイッチ3の操作を止める。これにより、等色E1が特定され等色特定ステップS2が終了する。
【0052】
(等色データ採取ステップS3)
等色データ採取ステップS3は、被検者が標準色と等しいと感じた比較色である等色E1を形成した各光源7a,7b,7cの照度の比を液晶表示器4により読み取るステップである。通常、等色データ採取ステップS3は、検査者が行う。
【0053】
(黄色標準色表示ステップS4)
黄色標準色表示ステップS4は、赤色LED7a及び緑色LED7bの色光を混合することにより形成した二色混合比較色と、黄色標準色(有色標準色)X2とを隣接させて表示するステップである。検査色表示手段22は、標準色形成用光源52(図示せず)として黄色LED52を備えており、これにより標準色表示手段62に黄色標準色として単色光の黄を表示する。また、検査色表示手段22は、検査色表示手段21と同様に比較色形成ユニット7を備えており、赤色LED7aにより、比較色表示部82に二色混合比較色の開始色S2として赤を表示する。
【0054】
(黄等色特定ステップS5)
黄等色特定ステップS5は、二色混合比較色を、図6の矢印103に示すように、開始色S2の赤から黄に近づくように(緑に近付くように)変化させながら、標準色(単色光の黄)と被検者が等しいと感じる二色混合比較色を黄等色E2として特定するステップである。黄等色特定ステップS5においても、被検者自身が光束比可変スイッチ3を操作して比較色を変化させる。被検者が、光束比可変スイッチ3を操作すると、検査色表示手段22において、赤色LED7aの光束を減少するとともに緑色LED7bの光束が増加し、図6の矢印103に沿って、二色混合比較色が赤から黄の方へ(緑の方へ)と変化する。被検者は、二色混合比較色が黄色標準色(単色光の黄)と等しくなったと感じたところで、光束比可変スイッチ3の操作を止める。そのときに表示されている二色混合比較色が黄等色E2として特定される。
尚、本ステップS5において、開始色S2を緑にして二色混合比較色を緑から黄へ(赤へ)と変化させるようにしてもよい。
【0055】
(黄等色データ採取ステップS6)
黄等色データ採取ステップS6は、被検者が特定した黄等色E2を形成した際の、比較色表示部82における赤色光源7a及び緑色光源7bによる照度の比を液晶表示器4により読み取るステップである。通常、黄等色データ採取ステップS6は、検査者が行う。
【0056】
(三色光比算出ステップS7)
三色光比算出ステップS7は、ステップS3で得られた等色E1を形成した緑色光源7bと青色光源7cによる照度の比h1、及びステップS6で得られた黄等色E2を形成した赤色光源7aと緑色光源7bのよる照度の比h2をまとめて、赤色光源7a、緑色光源7b、青色光源7cの照度の比の三連比である三色光比Hに換算する工程である。
【0057】
例えば、等色E1を形成した緑色光源7bと青色光源7cとの照度の比h1がq:rであり、等色E2を形成した赤色光源7aと緑色光源7bとの照度の比h2がkp:kqである場合、これらをまとめて、赤、緑、青の三色光比Hをkp:kq:krと算出する。
【0058】
(レンズタイプ判定ステップS8)
レンズタイプ判定ステップS8は、三色光比算出ステップS7で算出された三色光比Hにより被検者に適合するレンズタイプを判定するステップである。
【0059】
色覚補正レンズのレンズタイプは、次の表1〜表4に示すように、4つに分類される。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
表1の「Aタイプ」は、緑色光に対する感度の強い色覚異常者に適合するように、緑色光の透過率を抑えたレンズである。表2に示した「Bタイプ」は、緑色光及び青色光に対する感度が強い色覚異常者に適合するように、緑色光及び青色光の透過率を抑えたレンズである。表3に示した「Cタイプ」は、やや緑色光に対する感度が強い色覚異常者に適合するように、緑色光の透過率を少し抑えたレンズである。表4に示した「Dタイプ」は、緑色光に対する感度がやや強く、青色光に対する感度が強い色覚異常者に適合するよう、緑色光の透過率を少し抑え、青色光の透過率を大きく抑えたレンズである。
【0060】
被検者に、どのタイプの色覚補正レンズが適合するかは、被検者の三色光比Hと予め得られた正常者の三色光比H0とを比較することにより行われる。色覚異常者が正常者に比べて感度の強い色については、色覚異常者は正常者に比べて少ない光でその色を認識できるため、色覚異常者の三色光比Hにおいては、当該色覚異常者が感度の強い色光の値が正常者に比べて小さくなる。従って、三色光比Hにおいて被検者が正常者に比べて値の小さい色光の色が、被検者が強く感じる色である。
【0061】
例えば、被検者の三色光比Hにおいて緑色光の値が正常者の三色光比H0の緑色光の値に比べて小さい場合、当該被検者は緑色の色光の透過率が小さいタイプAの色覚補正レンズに適合することとなる。
【0062】
ここで、「正常者」は、例えば石原式色覚検査表を用いて色覚を検査してすべての表中の数字又は曲線を全て正確に読み取れた者とすることができ、三色光比H0は、「正常者」について上記のステップS1〜P8により得られた三色光比Hをいう。三色光比H0は、複数の「正常者」の三色光比Hを平均して求めたものが好ましい。
【0063】
(画像検査ステップS9)
画像検査ステップS9は、上述したシミュレーション画像により被検者に適合した色覚補正レンズの種類を特定するステップである。表1から表4に示すように、色覚補正レンズは、タイプごとに8種に分類されており、種別にシミュレーション画像が用意されている。被検者は、この8種の画像中に描かれた文字や数字が最もよく読み取れる画像を特定する。この画像に対応する色覚補正レンズが被検者に適合する色覚補正レンズである。
【0064】
ここで、例えばレンズタイプ判定ステップS8で被検者のレンズタイプがAタイプであると判定された場合、当該被検者はタイプAのシミュレーション画像のみを検査すればよい。このように、本発明の色覚測定方法によれば、容易に被検者に適合した色覚補正レンズを特定することができる。
【0065】
尚、実施形態1に係る色覚検査装置1を用いた色覚測定方法において用いる標準色及び比較色は本発明の測定方法の趣旨を逸脱しない範囲であれば変更が可能であり、例えば、上記の測定方法と同様に、標準色を白色とし、二色混合比較色を赤と青の光束の比を固定して形成したマゼンタと緑の間で変化させてステップS1からステップS3を行って等色E1を特定した後、有色標準色をマゼンタとし、二色混合比較色を赤と青の間で変化させてステップS4からステップS6を行って有色等色E2を特定することもできる。
また、標準色を白色とし、比較色X2を赤と緑の光束の比を固定して形成した黄と青の間で変化させてステップS1からステップS3を行って等色E1を特定した後、標準色をマゼンタとし二色混合比較色を赤と青の間で変化させてステップS4からステップS6を行って有色等色E2を特定するか、又は有色標準色を黄とし二色混合比較色を赤と緑の間で変化させてステップS4からステップS6を行って有色等色E2を特定することもできる。
【0066】
<第2実施形態>
次に、図5を用いて本発明に係る第2実施形態について詳述する。第2実施形態において第1実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
第2実施形態に係る色覚検査装置201は、本体ケーシング225と、白色を表示する標準色表示部213と、比較色表示部214と、黄色を表示する標準色表示部215と、液晶表示器(表示手段)204と、光束比可変スイッチ(光束比可変手段)203と、標準色としての白又は有色標準色としての黄色を選択するスイッチ219とを備えている。
【0067】
本体ケーシング225は、前後方向を長手とする扁平の直方体からなる箱体である。
標準色表示部215、比較色表示部214及び標準色表示部213は、互いに合同な矩
形をなし、本体ケーシング225の後側(図5の上側)からこの順に列設されている。
【0068】
標準色表示部213は、磁器製の白板からなる。標準色表示部213としては、白色を表示できるものであれば、特に限定されず、磁器の代わりに紙、木、樹脂、金属、ガラス等、公知の素材を用いた白板を適宜用いることができる。
【0069】
比較色表示部214は、乳白アクリル板からなる。比較色表示部214の下部には、上記した第1実施形態同様、赤色LED207a、緑色LED207b及び青色LED207cを備えるRGBLED(比較色形成ユニット)207(図示せず)が設けられており、RGBLED207で形成された比較色が、比較色表示部214に表示される。
尚、赤色LED207a、緑色LED207b、青色LED207cには、色覚検査装置1の赤色LED7a、緑色LED7b及び青色LED7cと同じLEDを好適に用いることができる。
【0070】
標準色表示部215も、乳白アクリル板からなる。標準色表示部215の下部には、黄色光を発する黄色光源215aが設けられおり、この黄色光源215a(図示せず)により、標準色表示部215に黄が表示される。本実施形態では、黄色光源215aとして波長ピークが585nm以上595nm以下の黄色光を発する黄色LED215aが用いられる。
【0071】
スイッチ219により標準色として白を選択した場合、比較色表示部214下部の比較色形成ユニット207の3色のLED207a,207b,207cが点灯され、比較色表示部214に比較色が表示される。この際、赤色LED207aと青色LED207cの光束の比が3:1に固定され、光束比可変スイッチ203を回動させると、比較色は、マゼンタと緑の間を変化する。
液晶表示器204には、LED207a,207b,207cが単位時間に発する光束の比が表示される。
【0072】
標準色として黄色を選択した場合、比較色表示部214下部の比較色形成ユニット207の3色のLED207a,207b,207cに加え、標準色表示部215の下部の黄色LED215aが点灯し、比較色表示部204に比較色が、標準色表示部215に黄色の標準色が表示される。
【0073】
実施形態2に係る色覚検査装置201を用いて、本発明に係る色覚測定方法を実施する場合、検査色表示ステップS1〜等色データ採取ステップS3においては、標準色表示部213及び比較色表示部214を用いて等色E1を特定し、等色E1を形成した光源の光束の比を読み取る。有色標準色表示ステップS4〜黄等色データ採取ステップS6においては、比較色表示部214及び標準色表示部215を用いて黄等色E2を特定し、黄等色E2を形成した光源の光束の比を読み取る。
実施形態2に係る検査装置を用いて行う測定方法も、その他の手順は、上記の第1実施形態の色覚検査装置を用いて行う色覚測定方法と共通するため、説明を省略する。
【0074】
実施形態2にかかる色覚検査装置201によれば、標準色表示部213、比較色表示部214及び標準色表示部215が暗室内に配設されるのではないため、被検者だけでなく検査者もこれらの表示部を見ることができる。
【0075】
本発明の色覚検査装置及び色覚測定方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば、色覚検査装置を赤、緑、青の3色の光源の光束の比を互いに独立させた状態で変更できるように構成してもよい。色覚検査装置に、検査者が検査中に検査色表示部を視認するためのモニターや接眼部等の構成を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の色覚検査装置及び色覚測定方法によれば、色覚異常者に適合した色覚補正メガ
ネを容易に特定することができるため、本発明の色覚検査装置及び色覚測定方法は、色覚
補正メガネを販売する際に行う色覚補正レンズの特定に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
1,201 色覚検査装置
3,203 光束比可変スイッチ(光束比可変手段)
4,204 液晶表示器(表示手段)
61,62,63,64,213,215 標準色表示部
7 比較色形成ユニット
7a 赤色光源
7b 緑色光源
7c 青色光源
81,82,83,84,214 比較色表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6