(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る医用画像処理システムについて
図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るX線診断装置は、撮影部20と、システム制御部10と、X線制御部11と、高電圧発生部12と、機構制御部13と、撮像系移動機構14と、天板移動機構15と、画像データ生成部31と、表示制御部32と、線量情報表示部331と、画像表示部332と、分布データ生成部41と、分布データ記憶部42と、線量データ生成部43と、線量データ記憶部44とを含んで構成される。
【0010】
また、撮影部20は、Cアーム21と、X線発生部22と、X線検出器23と、天板24とを含んで構成される。
【0011】
Cアーム21は、X線発生部22及びX線検出器23を保持する保持部である。Cアーム21の一端にはX線発生部22が保持され、他端にはX線発生部22と対向するようにX線検出器23が保持されている。Cアーム21は、例えば天井から吊り下げられる円弧状の支柱に回転自在に支持される。X線発生部22と、X線検出器23との間には、被検体Pを載置する寝台の天板24が配置される。X線発生部22は、X線検出器23との間に介在する天板24に載置された被検体Pに向けてX線を照射するための構成である。X線検出器23は、X線発生部22から照射されたX線を検出する。
【0012】
撮像系移動機構14は、Cアーム21を移動及び回動させるための駆動部である。また、天板移動機構15は、天板24を移動させるための駆動部である。撮像系移動機構14及び天板移動機構15は、機構制御部13からの制御に基づき動作する。具体的には、機構制御部13は、システム制御部10から供給される制御信号に従って、Cアーム21やX線検出器23の回動及び移動における方向、移動量、及び速度を示す情報を生成する。システム制御部10については後述する。機構制御部13は、生成された情報を撮像系移動機構14に出力する。撮像系移動機構14は、この情報に基づき、Cアーム21を移動及び回動させることで、Cアーム21の位置や向きを制御する。
【0013】
また、機構制御部13は、システム制御部10からの制御信号に従って、天板24の移動における方向、移動量、及び速度を示す情報を生成する。機構制御部13は、生成された情報を天板移動機構15に出力する。天板移動機構15は、この情報に基づき、天板24を被検体Pの体軸方向に沿って移動させることで、天板24の位置を制御する。
【0014】
X線発生部22は、X線管221と、X線絞り222と、面積線量計223とを含んで構成されている。X線管221は、フィラメントより放出された電子を高電圧によって加速させ、陽極となるターゲットに衝突させることでX線を発生させ、照射窓から外部に照射する。ターゲットの材料としては、例えば、タングステンが用いられる。X線絞り222は、X線管221の照射窓に設けられており、複数枚の鉛羽で構成されている。X線絞り222は、X線管221から照射されたX線により、観察部位以外の不要な部分を被曝させないために、所定の照射野のサイズに絞り込む。また、X線絞り222の出射側には、アクリル等で形成されハレーションを防止するために、照射野内の所定の領域のX線を所定量だけ減衰させる補償フィルタM1を設けてもよい。
【0015】
面積線量計223は、X線絞り222を通過したX線の線量を検出する。面積線量計223は、検出されたX線の線量を電荷に変換し、X線の照射強度、照射面積及び照射時間に略比例した面積線量の出力信号として分布データ生成部41または線量データ生成部43に出力する。分布データ生成部41及び線量データ生成部43については後述する。具体的な一例として、面積線量計223の出力信号を、Cアーム21の回転中心(即ち、アイソセンタ)からX線管球側に所定距離だけ離れた基準位置(以降では、「線量計算基準位置」と呼ぶ場合がある)の面積で除算することで、基準位置における線量(以降では、「空気カーマ」と呼ぶ場合がある)が算出される。換言すると、面積線量計223の出力信号を利用して、線量計算基準位置における単位面積あたりのX線の照射強度を示す信号を空気カーマとして出力する。
【0016】
高電圧発生部12は、X線管221の陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生させる。高電圧発生部12の動作は、X線制御部11により制御される。具体的には、X線制御部11は、システム制御部10からX線の照射条件を示す制御情報を受ける。X線制御部11は、この制御情報に基づき、高電圧発生部12を動作させるための管電流、管電圧、X線パルス幅、照射周期(レート間隔)、透視区間等からなるX線照射条件を示す情報を生成する。X線制御部11は、この情報に基づき高電圧発生部12の動作を制御する。
【0017】
X線検出器23は、例えば、マトリクス状に配置された複数の検出素子を有するフラットパネルディテクタ(FPD:平面型X線検出器)で構成される。X線検出器23は、所定の照射野でX線発生部22から照射されたX線の強度を検出素子ごとに検出する。なお、FPDの天板24側の面上に、被検体Pの所定部位を透過したX線の散乱光をカットするX線グリッドを設けてもよい。X線検出器23は、検出素子ごとに検出されたX線の強度を電気信号に変換し画像データとして、分布データ生成部41または画像データ生成部31に出力する。分布データ生成部41及び画像データ生成部31については後述する。なお、X線検出器23は、FPDに代えてX線I.I.(イメージ・インテンシファイア)とX線TVカメラとの組み合わせにより構成してもよい。
【0018】
画像データ生成部31は、X線検出器23から画像データを受けて、この画像データに画像演算や画像処理を施す。具体的な一例として、画像データ生成部31は、造影剤注入前後の画像データ間サブトラクションによるDSA(Digital Subtraction Angiography)画像データやロードマップ画像データ、長尺画像データなどを生成するための画像演算を行う。また、画像データ生成部31は、画像演算により得られた画像データに対して輪郭抽出や平滑化、諧調変更などの画像処理を行う。また、画像データ生成部31は、この画像データに関するX線検査の条件を示す情報をシステム制御部10から受ける。画像データ生成部31は、画像演算及び画像処理により得られた画像データに、X線検査の条件を示す情報を付帯させて、表示制御部32に出力する。これを受けて、表示制御部32は、この画像データに基づきX線画像を画像表示部332に表示させる。
【0019】
システム制御部10は全システムの制御中心を構成し、操作者により入力されたX線の照射条件や撮影位置の条件をX線検査の条件として受けて、X線制御部11及び機構制御部13の動作を制御する。具体的には、システム制御部10は、操作者により入力されたX線の照射条件を基に制御信号を生成し、この制御信号によりX線制御部11の動作を制御する。この制御信号により、X線制御部11は、高電圧発生部12を動作させてX線発生部22からX線を照射させる。また、システム制御部10は、操作者により入力された撮影位置の条件を基に制御信号を生成し、この制御信号により機構制御部13の動作を制御する。この制御信号により、機構制御部13は、撮像系移動機構14及び天板移動機構15を動作させて、Cアーム21の移動及び回動と天板24の移動とを制御する。
【0020】
また、システム制御部10は、X線検査の条件を示す情報を分布データ生成部41、線量データ生成部43、及び画像データ生成部31に出力する。分布データ生成部41及び線量データ生成部43については後述する。
【0021】
一方で、本実施形態に係るX線検査装置は、面積線量計223からの面積線量の出力信号に基づき、X線照射に伴う被検体Pの被曝線量を管理する機能を有する。ここで、X線発生部22から照射されるX線の、照射野内におけるX線強度の分布について
図2を参照しながら説明する。
図2は、照射野内のX線強度の分布の一例を示している。
図2のD0は、照射野内におけるX線強度の分布が一様な場合を示している。しなしながら、照射野内におけるX線強度の分布は、様々な要因によりばらつきが生じ、D1に示すようにX線強度の分布が一様にならない場合がある。例えば、X線管221内で、フィラメントより放出された電子がターゲットにぶつかる際に、ヒール効果によりアノード面に近い角度方向にX線強度が低下する傾向がある。また、補償フィルタM1を用いた場合、補償フィルタM1が適用された領域はX線強度が低下する。また、被検体PとX線発生部22との間に天板24が介在する場合には、天板24を透過することでX線が減衰する。そこで、本実施形態に係る、X線強度の分布を示す分布データをあらかじめ生成し、X線検査の際に、この分布データを用いて、照射野内における領域ごとにX線強度を算出する。以降では、被曝線量を管理する機能に着目し、分布データを生成する「準備段階」と、X線の入射線量を算出する「検査段階」とに分けて、各工程で動作する構成について説明する。
【0022】
(準備段階)
本実施形態に係るX線検査装置は、X線検査の前の準備段階として、X線強度の分布を示す分布データをX線の照射条件ごとにあらかじめ生成し記憶しておく。この分布データの生成方法と、その内容について、このときに動作する分布データを生成するための構成に着目して以下に説明する。
【0023】
分布データの生成は、X線検出器23のX線グリッドをはずし、X線発生部22とX線検出器23と間に天板24や補償フィルタM1が介在しない状態で行われる。システム制御部10は、操作者により入力されたX線検査の条件を受けて、これを基に制御信号を生成し、生成された制御信号をX線制御部11及び機構制御部13に出力する。この制御信号に基づきX線制御部11及び機構制御部13が動作することで、Cアーム21が所定の撮影位置となるように動作及び回動するとともに、X線の照射条件に基づき決定された所定の照射野に向けてX線発生部22からX線が照射される。また、システム制御部10は、このX線検査の条件を示す情報を分布データ生成部41に出力する。分布データ生成部41の詳細については後述する。
【0024】
面積線量計223は、X線管221から照射されX線絞り222を通過したX線の線量を検出する。準備段階においては、面積線量計223は、検出されたX線の線量を電荷に変換し、面積線量の出力信号として分布データ生成部41に出力する。なお、X線検査装置が「準備段階」として動作しているか、または、「検査段階」として動作しているかは、例えば、システム制御部10が操作者による操作を受けて認識する。
【0025】
また、X線検出器23は、X線発生部22から照射されたX線の強度を検出素子ごとに検出する。X線検出器23は、検出素子ごとに検出されたX線の強度を電気信号に変換し画像データとして、分布データ生成部41に出力する。
【0026】
分布データ生成部41は、X線検出器23から検出素子ごとの画像データを受ける。分布データ生成部41は、画像データとしてX線が検出された領域(即ち、照射野)を複数の領域にあらかじめ分割する。分布データ生成部41は、X線発生部22を基準として、X線検出器23までの距離と、線量計算基準位置までの距離とに基づき、分割後の各領域について、線量計算基準位置における領域に換算する。この、線量計算基準位置における各領域を「管理単位領域」と呼ぶ。分布データ生成部41は、この管理単位領域ごとにX線のSN比を算出する。X線検出器23の出力の分布データを使用する方法が簡単ではあるが、一般的にFPD等のX線検出器の出力は、X線強度分布や検出器自体の感度のばらつきを補正して出力されるため、X線強度分布データへの流用は難しい。この管理単位領域ごとのX線のSN比の算出方法について、以下に具体的に説明する。
【0027】
分布データ生成部41は、管理単位領域ごとに、検出素子ごとのX線強度の平均と、各検出素子におけるX線強度の分散とに基づき、X線強度のSD値(標準偏差)を算出する。分布データ生成部41は、X線強度の平均を算出されたSD値で除算することで、その管理単位領域のX線強度の平均(出力レベル)とSD値の比を、その管理単位領域におけるX線のSN比として算出する。即ち、算出されたX線強度のSD値が、このSN比の算出におけるノイズの部分に相当する。
【0028】
一方で、分布データ生成部41は、X線のSN比と入射線量との関係を、X線検出器23の特性としてあらかじめ測定し、特性データとして記憶している。
図3Aは、X線検出器23の特性として、X線強度のSN比と入射線量の関係を示したグラフであり、この特性は、X線量子ノイズとX線検出器23の固有ノイズに起因する。X線等の放射線の発生吸収は、ランダムな現象であり、その頻度は統計の法則に従うため、ノイズを伴う。このノイズがX線量子ノイズに相当する。また、固有ノイズとは、X線検出器23を構成する回路のノイズのように、X線検出器23に固有のノイズである。
図3Aに示すように、線量の低い領域では線形性が崩れる。これは、X線検出器23の固有ノイズの影響によるものである。一方で、所定の線量以上の場合には、X線のSN比と入射線量とは比例関係にある。これは、X線の強度が増大し所定の線量以上になると、X線量子ノイズに対するX線検出器23の固有ノイズの影響が小さくなり無視できるためである。そのため、この準備段階において、線量が所定値以上となるように、X線発生部22から照射されるX線の強度を設定しておくことで、分布データ生成部41は、X線のSN比を入射線量に換算することが可能となる。このような構成により、分布データ生成部41は、この特性データを基に、
管理単位領域ごとに算出されたSN比を
その領域ごとの入射線量に換算する。また、これらの分布は、X線管電圧、線質フィルタ厚や照射野サイズ等により変化する可能性があるため、各種条件下でデータを収集しておく。
【0029】
また、分布データ生成部41は、各種条件下でのX線強度の分布を示す分布データを線量計算基準位置において、照射野を管理単位領域ごとに分布データを持つ。例えば、
図3Bの例では、全体の面積線量を全体の照射面積で除算した線量(即ち、空気カーマ)を「100」とした場合(この場合の線量を「平均線量」と呼ぶ場合がある)の、各管理単位領域の線量比(%)が示されている。例えば、領域「a3」は「60」を示しており、平均線量の60%の線量となることを示している。また、領域「c2」は「125」を示している。平均線量の125%の線量となることを示している。即ち、
図3Bでは、全体の平均が「100」となるように比率を補正している。
【0030】
分布データ生成部41は、分布データを生成したときのX線検査の条件を示す情報をシステム制御部10から受ける。分布データ生成部41は、生成された分布データを、X線検査の条件を示す情報と関連付けて分布データ記憶部42に記憶させる。分布データ記憶部42は、分布データを記憶するための記憶領域である。分布データ記憶部42は、X線検査の条件を指定することで、その条件に対応する分布データを読み出し可能に構成されている。以上のようにして、分布データ生成部41は、X線検査の条件ごとに分布データを生成し、生成された分布データを分布データ記憶部42に記憶させる。
【0031】
(検査段階)
次に、X線の入射線量を算出する「検査段階」について説明する。本実施形態に係るX線検査装置は、被検体Pに向けてX線を照射し、面積線量計223で検出された面積線量と、そのときのX線検査の条件に対応する分布データとを基に、領域ごとの入射線量を算出する。以降では、このとき動作する構成に着目して説明する。
【0032】
操作者によりX線検査の条件が設定されると、システム制御部10は、この条件に基づき制御信号を生成し、X線制御部11及び機構制御部13に出力する。これにより、所定の撮影位置となるようにCアーム21が動作及び回動し、天板24が移動するとともに、X線の照射条件に基づきX線発生部22からX線が天板24上の被検体Pに向けて照射される。また、システム制御部10は、このX線検査の条件を示す情報を画像データ生成部31及び線量データ生成部43に出力する。線量データ生成部43の詳細については後述する。
【0033】
X線検出器23は、X線発生部22から照射されたX線の強度を検出素子ごとに検出する。X線検出器23は、検出素子ごとに検出されたX線の強度を電気信号に変換し画像データとして、画像データ生成部31に出力する。画像データ生成部31は、画像データに画像演算や画像処理を施し、この画像データにシステム制御部10から受けたX線検査の条件を示す情報を付帯させて、表示制御部32に出力する。
【0034】
面積線量計223は、X線管221から照射されX線絞り222を通過したX線の線量を検出する。面積線量計223は、検出されたX線の線量を電荷に変換し、面積線量の出力信号として線量データ生成部43に出力する。
【0035】
線量データ生成部43は、システム制御部10からX線検査の条件を示す情報を受ける。線量データ生成部43は、この情報に関連付けられた分布データを分布データ記憶部42から抽出する。
【0036】
また、線量データ生成部43は、面積線量計223から面積線量の出力信号を受ける。この出力信号が示す面積線量は、全体の面積線量に相当する。線量データ生成部43は、全体の面積線量と、分布データに含まれている、領域ごとの線量の比率とを基に線量計算基準位置における、領域ごとの入射線量を算出する。例えば、面積線量計223からの出力信号を線量計算基準位置全体の照射面積で除算した線量が100mGyとし、
図3Bに示す分布データが抽出されたものとする。この場合には、例えば、領域「b2」に関連付けられた比率は「100」のため、領域「b2」の入射線量は100mGy×100%=100mGyとなる。また、領域「b4」に関連付けられた比率は「110」のため、領域「b4」の入射線量は100mGy×110%=110mGyとなる。
【0037】
次に、線量データ生成部43は、X線検査の条件を示す情報を基に、補償フィルタM1の使用や天板24の透過に伴い、X線が減衰する領域とその減衰量を計算する。一例として、
図4Aを参照しながら、被検体PとX線発生部22との間に天板24が介在する場合に、天板24を透過することによるX線の減衰量の計算方法について説明する。
図4Aでは、入射線量I
0のX線が、厚さtの天板24に対して入射角θで入射する場合を示している。まず、線量データ生成部43は、X線検査の条件を示す情報から、X線の照射野中において、被検体PとX線発生部22との間に天板24が介在する領域を特定する。次に、線量データ生成部43は、特定された領域におけるX線の減衰量を算出する。X線の減衰量は、X線が天板24中を透過する距離t1と、天板24のX線の吸収係数をuと、入射線量I
0とを基に算出される。具体的には、X線が天板24中を透過する距離t1は、t1=t/cosθにより算出される。また、天板24を透過した後のX線の入射線量Iは、I=I
0exp(−u・t1)により算出される。
【0038】
補償フィルタM1を使用する場合には、天板24が介在する場合とは減衰量の計算方法が異なる。これは、補償フィルタM1を透過した後のX線が面積線量計223により検出されるためである。補償フィルタM1を使用する場合について、
図4B〜
図4Dを参照しながら説明する。
図4B〜
図4Dは、補償フィルタM1と入射線量との関係について説明するための図である。
図4Bのように補償フィルタM1の一部分が入った状態で説明する。補償フィルタM1の影響を補正するためには、X線強度の分布データを補正する方法や、線量算出基準位置での線量算出結果を補正する方法等があるが、ここでは前者について説明する。補償フィルタM1の透過率をA×100%とする。また、面積線量計223全体に対して補償フィルタM1が挿入された部分の割合をB×100%とする。
図3BのようなX線強度の分布データに対して、補償フィルタM1を入れた領域は、X線強度がAの割合に減衰する。例えば、
図4Bは、面積線量計223全体に対して40%が、透過率50%(A=0.5)の補償フィルタM1で覆われている場合の、X線強度の減衰率の分布を示している。
図4Bに示した分布を基に、平均が100(即ち、100%)となるように換算された分布データをあらかじめ作成し記憶させておく。以下に、この分布データの具体的な作成方法について、
図4Bの場合を例に説明する。
【0039】
まず、各領域の値を100とした場合の、各領域に対応する値の和をD1と、補償フィルタM1を適用した場合の、各領域に対応する値の和をD2とを算出する。本実施例では、5×5の領域に分割しているため、D1=5×5×100=2500となる。また、領域d1〜d5及びe1〜e5が、補償フィルタM1により50に減衰するため、D2=100×15+50×10=2000となる。この算出されたD1及びD2を基に係数D1/D2を算出する。
図4Bの例の場合には、D1/D2=2500/2000=1.25となる。算出された係数D1/D2で、
図4Bに示した分布を補正することで、平均が100となるように換算された分布データが作成される。
図4Cは、
図4Bに示した分布が、係数D1/D2により補正されて作成された分布データを指名している。
図4Cに示すように、領域a1〜a5、b1〜b5、及びc1〜c5は125に補正され、領域d1〜d5及びe1〜e5は62.5に補正される。
【0040】
線量データ生成部43は、領域ごとの入射線量を算出する際に、補償フィルタM1が使用されている場合には、X線検査の条件を示す情報に基づき抽出された分布データを、補償フィルタM1の条件に基づき作成された分布データで補正する。具体的には、X線検査の条件を示す情報に基づき抽出された分布データの値と、補償フィルタM1の条件に基づき作成された分布データの値とを、領域ごとに乗算することで補正する。
図4Dに、
図3Bに示した分布データを、
図4Cに示した分布データで補正した結果を示す。
図4Dにおける領域M2が、補償フィルタM1が適用された部分に相当する。例えば、領域a1は、
図3Bでは「90」%を示しており、補償フィルタM1で覆われない。そのため、この値に、
図4Cで示した分布データの領域a1に対応する値「125」%が乗算されることで、「112.5」%に補正される。また、領域d1は、
図3Bでは「100」%を示しており、この領域は、補償フィルタM1で覆われる。そのため、この値に、
図4Cで示した分布データの領域d1に対応する値「62.5」%が乗算されることで、「62.5」%に補正される。分布データの補正後に、線量データ生成部43は、補正後の分布データをX線の減衰量を算出すればよい。
【0041】
線量データ生成部43は、算出された減衰量に基づき、領域ごとに算出された入射線量を補正する。
【0042】
以上のようにして、線量データ生成部43は、領域ごとに入射線量を算出し、その入射線量の算出元である領域と関連付けた線量データを生成する。例えば、
図5Aは、本実施例における線量データの一例を模式的に示した図である。また、
図5Bは、照射野のX線強度分布を考慮しない従来の方法を示している。例えば、
図5Aに示した例では、領域「b1」には、入射線量「100mGy」が関連付けられている。また、領域「c3」には、入射線量「120mGy」が関連付けられている。なお、
図5Bに示した例では、照射野全体に対して平均入射線量「100mGy」が関連付けられている。このように、分布データを用いることで、照射野を複数の領域に分割し、その領域ごとに入射線量を算出することが可能となる。線量データ生成部43は、生成した線量データを表示制御部32に出力する。また、線量データ生成部43は、生成した線量データを、X線検査の条件を示す情報と関連付けて線量データ記憶部44に記憶させてもよい。線量データ記憶部44は、線量データを記憶するための記憶領域である。線量データ記憶部44は、X線検査の条件を指定することで、その条件に対応する線量データを読み出し可能に構成されている。
【0043】
表示制御部32は、システム制御部10から、Cアーム21の位置及び角度、天板24の位置、X線検出器23の位置、照射野のサイズ、及びX線絞り222の状態を示す情報を受ける。表示制御部32は、これらの情報を基にモデル化された患者(以降は、「患者モデル」と呼ぶ)に対するX線の入射位置及び照射野の広さを計算する。また、表示制御部32は、分布データに基づき領域ごとに入射線量が算出された線量データを線量データ生成部43から受ける。表示制御部32は、患者モデル上の照射面における入射線量を、この領域単位で識別可能に(例えば、入射線量に応じて色分けして)線量情報表示部331に表示させる。なお、この線量データは、例えば、検査中にリアルタイムで積算線量として算出し、線量情報表示部331に遂次表示させてもよい。
図6Aは、入射線量を示す情報の表示態様の一例として、患者モデル上に各領域の入射線量を識別可能に表示した場合を示している。なお、表示制御部32は、システム制御部10から受けた情報に対応する線量データを、線量データ記憶部44から抽出し、線量情報表示部331に表示させてもよい。このように動作させることで、あらかじめ線量データを収集し、後日、これを線量情報表示部331に表示させて診断に用いることが可能となる。
【0044】
なお、線量データ生成部43は、画像データ生成部31から画像データを受けて、この画像データと生成された線量データとを関連付けて線量データ記憶部44に記憶させてもよい。この場合には、表示制御部32は、画像データ及び線量データを線量データ記憶部44から読み出し、この画像データ及び線量データに基づきX線画像及び入射線量を線量情報表示部331に表示させる。このような構成とすることで、画像データ及び線量データとが関連付けて記憶されるため、例えば、事前にX線画像の撮影と線量データの生成を行っておき、後日、X線画像及び入射線量を線量情報表示部331に表示させるといった態様で動作させることも可能となる。
【0045】
(処理)
次に、本実施形態に係るX線診断装置の一連の動作について説明する。まず、
図7Aを参照しながら、分布データをX線の照射条件ごとにあらかじめ生成し記憶するための準備段階の動作について説明する。
図7Aは、準備段階の一連の動作を示したフローチャートである。
【0046】
(ステップS11)
分布データの生成は、X線検出器23のX線グリッドをはずし、X線発生部22とX線検出器23と間に天板24や補償フィルタM1が介在しない状態で行われる。また、入射X線とX線検出器23からの出力が比例関係となるように、画像処理などの機能はOFFにする。システム制御部10は、操作者により入力されたX線検査の条件を受けて、これを基に制御信号を生成し、生成された制御信号をX線制御部11及び機構制御部13に出力する。また、システム制御部10は、このX線検査の条件を示す情報を分布データ生成部41に出力する。
【0047】
(ステップS12)
機構制御部13は、システム制御部10からの制御信号に基づき撮像系移動機構14を制御し、X線検査の条件として指示された撮影位置となるようにCアーム21を動作及び回動させる。また、X線制御部11は、システム制御部10からの制御信号に基づき高電圧発生部12を制御し、X線検査の条件として指示されたX線の照射条件に基づきX線発生部22にX線を照射させる。
【0048】
(ステップS13)
また、X線検出器23は、X線発生部22から照射されたX線の強度を検出素子ごとに検出する。X線検出器23は、検出素子ごとに検出されたX線の強度を電気信号に変換し画像データとして、分布データ生成部41に出力する。
【0049】
(ステップS14)
分布データ生成部41は、X線検出器23から検出素子ごとの画像データを受ける。分布データ生成部41は、画像データとしてX線が検出された領域(即ち、照射野)を複数の領域にあらかじめ分割し、
管理単位領域ごとに画像データのSN比を算出する。具体的には、分布データ生成部41は、
管理単位領域ごとに、検出素子ごとのX線強度の平均と、各検出素子におけるX線強度の分散とに基づき、X線強度のSD値(標準偏差)を算出する。分布データ生成部41は、X線強度の平均を算出されたSD値で除算することで、
管理単位領域のX線強度の平均(出力レベル)に対するSD値の割合を、その領域におけるX線のSN比として算出する。
【0050】
一方で、分布データ生成部41は、X線のSN比と入射線量との関係を、X線検出器23の特性としてあらかじめ測定し、特性データとして記憶している。分布データ生成部41は、この特性データを基に、
管理単位領域ごとに算出されたSN比を
その領域ごとの入射線量に換算する。分布データ生成部41は、この
管理単位領域ごとの入射線量を、平均値が一定となるように、その領域ごとの比(
図3B参照)に換算する。
【0051】
分布データ生成部41は、分布データを生成したときのX線検査の条件を示す情報をシステム制御部10から受ける。分布データ生成部41は、生成された分布データを、X線検査の条件を示す情報と関連付けて分布データ記憶部42に記憶させる。以上のようにして、分布データ生成部41は、X線検査の条件ごとに分布データを生成し、生成された分布データを分布データ記憶部42に記憶させる。
【0052】
次に、
図7Bを参照しながら、被検体PにX線を照射してX線画像を生成するとともに、X線の入射線量を算出する検査段階について説明する。
図7Bは、検査段階の一連の動作を示したフローチャートである。
【0053】
(ステップS21)
操作者によりX線検査の条件が設定されると、システム制御部10は、この条件に基づき制御信号を生成し、X線制御部11及び機構制御部13に出力する。また、システム制御部10は、このX線検査の条件を示す情報を画像データ生成部31及び線量データ生成部43に出力する。
【0054】
(ステップS22)
線量データ生成部43は、システム制御部10からX線検査の条件を示す情報を受ける。線量データ生成部43は、この情報に関連付けられた分布データを分布データ記憶部42から抽出する。
【0055】
(ステップS23)
機構制御部13は、システム制御部10からの制御信号に基づき撮像系移動機構14及び天板移動機構15を制御し、X線検査の条件として指示された撮影位置となるようにCアーム21を動作及び回動させるとともに、天板24を移動させる。また、X線制御部11は、システム制御部10からの制御信号に基づき高電圧発生部12を制御し、X線検査の条件として指示されたX線の照射条件に基づきX線発生部22にX線を照射させる。これにより、X線発生部22から天板24上の被検体Pに向けてX線が照射される。
【0056】
(ステップS24)
面積線量計223は、X線管221から照射されX線絞り222を通過したX線の線量を検出する。面積線量計223は、検出されたX線の線量を電荷に変換し、面積線量の出力信号として線量データ生成部43に出力する。
【0057】
(ステップS25)
線量データ生成部43は、面積線量計223から面積線量の出力信号を受ける。この出力信号が示す面積線量は、全体の面積線量に相当する。線量データ生成部43は、全体の面積線量と、分布データに含まれている、領域ごとの線量の比率とを基に、領域ごとの入射線量を算出する。
【0058】
次に、線量データ生成部43は、X線検査の条件を示す情報を基に、補償フィルタM1の使用や天板24の透過に伴い、X線が減衰する領域とその減衰量を計算する。線量データ生成部43は、算出された減衰量に基づき、領域ごとに算出された入射線量を補正する。
【0059】
線量データ生成部43は、領域ごとに入射線量を算出し、その入射線量の算出元である領域と関連付けた線量データを生成する。線量データ生成部43は、生成した線量データを表示制御部32に出力する。
【0060】
表示制御部32は、システム制御部10から、Cアーム21の位置及び角度、天板24の位置、X線検出器23の位置、照射野のサイズ、及びX線絞り222の状態を示す情報を受ける。表示制御部32は、これらの情報を基に患者モデルに対するX線の入射位置及び照射野の広さを計算する。また、表示制御部32は、分布データに基づき領域ごとに入射線量が算出された線量データを線量データ生成部43から受ける。表示制御部32は、患者モデル上の照射面における入射線量を、この領域単位で識別可能に線量情報表示部331に表示させる。このように、本実施形態に係るX線検査装置に依れば、分布データを用いることで、照射野を複数の領域に分割し、その領域ごとに入射線量を算出することが可能となる。
【0061】
ここで、
図5Bを参照する。
図5Bは、分布データを用いずに線量データを生成した場合の例を模式的に示した図である。線量データ生成部43は、分布データを基に、照射野中におけるX線強度の分布を認識している。そのため、例えば従来のように分布データを用いない場合には、
図5Bに示すように、各領域を認識して、領域ごとに入射線量を算出することが困難であった。例えば、
図6Bは、この場合における入射線量を示す情報の表示態様の一例を示している。このように、分布データを用いない場合には、
図5B及び
図6BのV2Bに示すように、照射領域内に一様にX線が照射されているものとして入射線量が管理されていた。
【0062】
これに対し、本実施形態に係るX線検査装置によれば、分布データを用いることで、照射野を複数の領域に分けて、この領域ごとに入射線量を算出することが可能となる。これにより、例えば、
図5A及び
図6Aに示すように、X線強度の分布にばらつきがあり、局所的にX線の入射線量が増大している場合においても、これを検出し管理することが可能となる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載されたその均等の範囲に含まれる。