(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2、3の前記機構では、次のような問題がある。
(1)回転ミシン刃及び回転受刃を有するミシン目加工部が、用紙の搬送方向に対して直交する幅方向に移動する際に、ソレノイドも移動するので、ソレノイドに接続された電気配線が、曲げ伸ばしを繰り返すことによって断線したり、他の構成部材の間に挟み込まれたりする、という不具合がある。
(2)前記(1)の不具合を防止するためには、電気配線の保護手段等を設けることが考えられる。しかし、それは、コスト高や装置の大型化を招いてしまう。
(3)ソレノイドは、オンオフ制御しかできないので、ミシン目の押し込み量を調節するためには、調節手段を別に設ける必要がある。しかし、それは、部品点数の増大、構造の複雑化、コスト高等を招いてしまう。
(4)ミシン目加工部を備えた装置が、用紙加工機に対して着脱可能ではないので、取扱いにくい。
【0005】
一方、特許文献1の装置においては、スペースが限られているので、回転ミシン刃を上下移動させる機構を設けるのが困難である。
【0006】
本発明は、ミシン目を任意の間隔を置きながら任意の長さだけ形成する機構を、簡素な構成で実現できる、ミシン目加工装置を、提供することを、主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明
の第1態様は、用紙を搬送しながら搬送方向に沿って用紙にミシン目を形成するミシン目加工装置において、
ミシン目を形成するための回転ミシン刃及び回転受刃を有するミシン目加工部を、少なくとも2個有しており、
各前記ミシン目加工部を、それぞれ独立して、搬送方向に対して直交する幅方向に移動させるための、幅方向移動機構と、前記幅方向移動機構を駆動する幅移動駆動部と、を有しており、
更に、前記回転ミシン刃を前記回転受刃に対して接離方向に移動させるための、接離方向移動機構と、前記接離方向移動機構を駆動する接離移動駆動部と、を有しており、
前記回転ミシン刃及び前記回転受刃は、両刃の接近位置においてミシン目を形成するように、構成されており、
前記接離移動駆動部は、前記ミシン目加工部の前記幅方向の移動領域の外に設けられており、
更に、前記幅移動駆動部及び前記接離移動駆動部を、制御する制御部を、有して
おり、
前記接離方向移動機構が、前記接離移動駆動部による駆動力を受けて回転するカム部材と、前記カム部材に連動して揺動端部が前記接離方向に揺動する、揺動レバーと、前記揺動レバーの前記揺動端部の前記接近位置及び離間位置を検知する検知部とを、有しており、
少なくとも前記カム部材及び前記揺動レバーは、各前記ミシン目加工部内に設けられており、
前記回転ミシン刃は、前記揺動レバーの前記揺動端部に回転自在に支持されており、
前記制御部は、ミシン目を形成する時には、前記接離移動駆動部を作動させて、前記カム部材を回転させるとともに、前記揺動レバーの前記揺動端部を接近方向へ移動させ、前記揺動レバーの前記揺動端部が前記接近位置に来た時を前記検知部が検知すると、前記接離移動駆動部を停止させるようになっており、ミシン目を形成しない時には、前記接離移動駆動部を作動させて、前記カム部材を回転させるとともに、前記揺動レバーの前記揺動端部を離間方向へ移動させ、前記揺動レバーの前記揺動端部が前記離間位置に来た時を前記検知部が検知すると、前記接離移動駆動部を停止させるようになっている、
ことを特徴としている。
また、本発明の第2態様は、用紙を搬送しながら搬送方向に沿って用紙にミシン目を形成するミシン目加工装置において、
ミシン目を形成するための回転ミシン刃及び回転受刃を有するミシン目加工部を、少なくとも2個有しており、
各前記ミシン目加工部を、それぞれ独立して、搬送方向に対して直交する幅方向に移動させるための、幅方向移動機構と、前記幅方向移動機構を駆動する幅移動駆動部と、を有しており、
更に、前記回転ミシン刃を前記回転受刃に対して接離方向に移動させるための、接離方向移動機構と、前記接離方向移動機構を駆動する接離移動駆動部と、を有しており、
前記回転ミシン刃及び前記回転受刃は、両刃の接近位置においてミシン目を形成するように、構成されており、
前記接離移動駆動部は、前記ミシン目加工部の前記幅方向の移動領域の外に設けられており、
更に、前記幅移動駆動部及び前記接離移動駆動部を、制御する制御部を、有しており、
前記接離方向移動機構が、少なくとも、前記接離移動駆動部による駆動力を受けて回転するカム部材と、前記カム部材に連動して揺動端部が前記接離方向に揺動する、揺動レバーとを、有しており、
前記カム部材及び前記揺動レバーは、各前記ミシン目加工部内に設けられており、
前記回転ミシン刃は、前記揺動レバーの前記揺動端部に回転自在に支持されており、
各前記ミシン目加工部は、前記揺動レバーの前記揺動端部の前記接近位置を調節する調節機構を、有しており、
前記調節機構は、前記揺動レバーの前記揺動端部の前記接近方向への移動を規制するように前記揺動レバーに当接可能な当接部材と、前記当接部材の位置をねじ調節するロッドと、を有している、
ことを特徴としている。
【0010】
本発明は、更に、次のような限定構成(a)〜(d)を適宜選択して有するのが、好ましい。
【0011】
(a)前記揺動レバーは、付勢部材によって、前記カム部材に向けて付勢されている。
【0012】
(b)前記ミシン目加工部を2個有しており、前記接離方向移動機構が、前記接離移動駆動部によって駆動される1本のカム回転軸を有しており、各前記ミシン目加工部の前記カム部材は、1本の前記カム回転軸に、それぞれワンウェイクラッチを介して支持されており、一方の前記ミシン目加工部の前記カム部材のワンウェイクラッチと、他方の前記ミシン目加工部の前記カム部材のワンウェイクラッチとは、互いに逆方向の回転制御を行うように設定されている。
【0013】
(c)前記ミシン目加工部を2個有しており、前記接離方向移動機構が、前記接離移動駆動部によってそれぞれ独立して駆動される2本のカム回転軸を有しており、一方の前記ミシン目加工部の前記カム部材は、一方の前記カム回転軸に固定されており、他方の前記ミシン目加工部の前記カム部材は、他方の前記カム回転軸に固定されている。
【0014】
(d)前記揺動レバーの前記揺動端部の前記接近位置を調節する調節機構を、有しており、前記調節機構は、前記揺動レバーの前記揺動端部の前記接近方向への移動を規制するように前記揺動レバーに当接可能な当接部材と、前記当接部材の位置をねじ調節するロッドと、を有している。
【0015】
本発明は、用紙を搬送しながら用紙に対して所定の加工を行う加工装置を、1種以上備えている、用紙加工機において、
前記加工装置が前記本発明のいずれか1つに記載のミシン目加工装置であり、
前記ミシン目加工装置の、前記幅移動駆動部及び前記接離移動駆動部が、加工機本体に設けられており、
前記ミシン目加工装置の、前記駆動部以外の構成部材が、前記加工機本体に対して一体的に着脱自在なユニットを構成している、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のミシン目加工装置によれば、接離方向移動機構及び接離移動駆動部を有しているので、用紙に対して、ミシン目を常時形成するのではなく、ミシン目を形成したり形成しなかったりすることができる。しかも、接離移動駆動部は、ミシン目加工部の幅方向の移動領域の外に設けられているので、従来のソレノイド機構が有していた不具合、すなわち、コスト高、装置の大型化、及び構造の複雑化等という不具合を、解消できる。
【0017】
更に、本発明によれば、接離方向移動機構を有するミシン目加工装置の構成を、簡素化できる。
【0018】
前記構成(a)によれば、揺動レバーを、確実に、カム部材に、連動させることができる。
【0019】
前記構成(b)によれば、1本のカム回転軸を用いるだけで、2個のミシン目加工部の回転ミシン刃の接離作動を別々に実行できるので、装置の性能を安価に向上できる。したがって、ミシン目を形成したり形成しなかったりすることを、2個のミシン目加工部において自由に行うことができ、ミシン目の形成パターンの自由度を増大できる。
【0020】
前記構成(c)によれば、2個のミシン目加工部の回転ミシン刃の接離作動を、完全に別々に実行でき、例えば、同時に別々に実行できる。したがって、ミシン目を形成したり形成しなかったりすることを、2個のミシン目加工部において自由に行うことができ、ミシン目の形成パターンの自由度をより増大できる。
【0021】
前記構成(d)によれば、調節機構によって当接部材の位置を調節できるので、回転ミシン刃の、最下位置すなわち回転受刃に対する接近位置を、調節でき、したがって、ミシン目の押し込み量を調節できる。
【0022】
本発明の用紙加工機によれば、次のような効果を発揮できる。
(i)駆動部以外の構成部材を、ユニットとして、加工機本体に対して着脱できるので、取扱いが容易である。また、他の加工ユニットと容易に取り替えることができる。
(ii)幅移動駆動部及び上下移動駆動部が、加工機本体に設けられているので、次のような効果を発揮できる。
(ii-1) 前記駆動部による振動が、幅方向移動機構及び上下方向移動機構に伝わるのを、堅固な加工機本体によって低減できる。したがって、各機構の作動を安定して実行でき、正確なミシン目加工を実現できる。
(ii-2) 振動による騒音を低減でき、したがって、良好な作業環境を実現できる。
(ii-3) 前記駆動部を他の加工ユニットと共用でき、したがって、用紙加工機をコンパクトに且つ安価に構成できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態のミシン目加工装置、を備えた用紙加工機の、模式断面図である。用紙加工機1は、加工機本体10の両端に、給紙トレイを有する給紙部11と、排紙トレイを有する排紙部12と、を備えている。給紙部11から排紙部12へは、多数個の対のローラ21からなる搬送部2によって搬送経路20が構成されている。搬送部2は、用紙を、給紙部11から排紙部12へ向けて、矢印S方向に、搬送するようになっている。矢印Sが示す搬送方向において、給紙部11側を「上流側」と称し、排紙部12側を「下流側」と称する。なお、搬送部2には、搬送駆動部(図示せず)が連結している。そして、搬送経路20上には、給紙部11側から、搬送補正部、情報読取部、及びリジェクト部等(図示せず)を、経て、第1加工装置3、第2加工装置4、及び第3加工装置5等が設けられている。これらは全て加工機本体10に支持されている。
【0025】
また、用紙加工機1は、加工機全体の作動を制御する制御部6を加工機本体10内に備えている。制御部6は、操作パネル(図示せず)に接続したCPUを有している。更に、用紙加工機1は、用紙の加工によって発生する切屑を収容するためのゴミ箱101を加工機本体10内の底部に有している。
【0026】
第1〜第3加工装置3、4、5としては、例えば、用紙を搬送方向に沿って裁断する裁断加工装置、用紙に搬送方向に沿って折り型を形成する折り型加工装置、及び用紙に搬送方向に沿ってミシン目を形成するミシン目加工装置等を、採用できる。そして、本発明では、第3加工装置5として、ミシン目加工装置を採用している。
【0027】
[ミシン目加工装置]
本実施形態のミシン目加工装置5は、ミシン目を形成するための回転ミシン刃及び回転受刃を有する、2個のミシン目加工部と、回転受刃を回転させるための回転機構と、回転機構を駆動する回転駆動部と、各ミシン目加工部を、それぞれ独立して、搬送方向に対して直交する幅方向に移動させるための、幅方向移動機構と、幅方向移動機構を駆動する幅移動駆動部と、回転ミシン刃を回転受刃に対して接離方向に移動させるための、接離方向移動機構と、接離方向移動機構を駆動する接離移動駆動部と、幅移動駆動部及び接離移動駆動部を制御する制御部と、を備えている。ミシン目加工装置5においては、接離方向移動機構によって、回転ミシン刃が、回転受刃に対して、接近位置と離間位置とを取り得るようになっている。本実施形態では、接離方向は上下方向である。よって、本実施形態では、接離方向移動機構を上下方向移動機構と称し、接離移動駆動部を上下移動駆動部と称する。
【0028】
図2は、用紙加工機1におけるミシン目加工装置5の部分を示している。本発明のミシン目加工装置5は、ミシン目加工ユニット51と、ミシン目加工ユニット51を駆動する駆動部(図示せず)と、からなっている。ミシン目加工ユニット51は、加工機本体10に構成された受容部52に対して、着脱自在に構成されている。駆動部は、加工機本体10に設けられている。
【0029】
図3は、加工ユニット51を上流側から見た正面図である。
図4は、加工ユニット51を下流側から見た正面図である。
図5は、加工ユニット51の平面図である。
【0030】
加工ユニット51は、天板511と、天板511の両端部から垂下された右側板512及び左側板513と、両側板512、513の下端部を連結した底フレーム514と、によって外枠体50が構成されている。そして、外枠体50の内部スペース500には、2個のミシン目加工部7A、7Bが設けられている。天板511の上面には、加工ユニット51を受容部52に対して着脱する際に把持する取手5111が、2個設けられている。
【0031】
図6は、
図3のVI矢視図であり、右側板512の正面図である。
図7は、
図3のVII矢視図であり、左側板513の正面図である。右側板512と左側板513との間には、ねじ軸61A、61Bと、カム回転軸62と、ガイド軸63と、駆動軸64と、ガイド軸65A、65Bと、ねじ軸66A、66Bとが、平行に、渡設されている。ねじ軸61A、61Bは、内部スペース500の上部の同じ高さ位置に設けられている。ねじ軸66A、66Bは、内部スペース500の下部の同じ高さ位置に設けられている。ガイド軸65A、65Bは、ねじ軸66A、66Bの少し上の同じ高さ位置に設けられている。ミシン目加工部7Aの作動には、ねじ軸61Aと、カム回転軸62と、ガイド軸63と、駆動軸64と、ガイド軸65Aと、ねじ軸66Aとが、使用される。ミシン目加工部7Bの作動には、ねじ軸61Bと、カム回転軸62と、ガイド軸63と、駆動軸64と、ガイド軸65Bと、ねじ軸66Bとが、使用される。
【0032】
右側板512と左側板513との間には、更に、一対の搬送ローラ681、682が渡設されている。搬送ローラ681、682は、内部スペース500の下流側に位置している。
【0033】
図8は、
図3のVIII−VIII断面矢視図である。
図8中には、ミシン目加工部7Aが含まれている。
図9は、
図8中のミシン目加工部7Aのみを示す図である。
図10は、
図9のX矢視図である。なお、ミシン目加工部7Aの構造とミシン目加工部7Bの構造とは、概ね鏡像関係にある。ここでは、ミシン目加工部7Aについて説明する。
【0034】
ミシン目加工部7Aは、回転ミシン刃701を有する上体71と、回転受刃751を有する下体75と、からなっている。
【0035】
(回転機構)
回転受刃751は、駆動軸64と共に回転するように、設けられている。回転ミシン刃701は、回転受刃751に対する接近位置において、搬送される用紙に連れられて、回転受刃751と共に、回転するように、設けられている。
【0036】
(幅方向移動機構)
図11は、上体71を上流側から見た斜視図である。上体71の上部の突部702には、ねじ軸61Aが螺挿しており、上体71は、ねじ軸61Aが回転すると、ガイド軸63に沿って幅方向(矢印W方向)に移動するようになっている。なお、幅方向とは、搬送方向に対して直交する方向である。同様に、下体75の下部の突部752(
図9参照)には、ねじ軸66Aが螺挿しており、下体75は、ねじ軸66Aが回転すると、ガイド軸65Aに沿って幅方向に移動するようになっている。このように、ねじ軸61A、ガイド軸63、ねじ軸66A、及びガイド軸65Aによって、ミシン目加工部7Aの幅方向移動機構が構成されている。同様にして、ねじ軸61B、ガイド軸63、ねじ軸66B、及びガイド軸65Bによって、ミシン目加工部7Bの幅方向移動機構が構成されている。
【0037】
(上下方向移動機構(接離方向移動機構))
図9に示されるように、上体71は、カム部材721及び揺動レバー722を有している。カム部材721は、カム回転軸62と共に回転するように設けられている。揺動レバー722は、一端部7221の近傍に位置するカム部材721に連動して、支点7223回りに、他端部(揺動端部)7222が上下方向(接離方向)に揺動するようになっている。他端部7222には、回転ミシン刃701が回転自在に支持されている。他端部7222は、スプリング7224(付勢部材)によって、受部材(当接部材)7225に向けて下方に付勢されており、これにより、一端部7221はカム部材721に向けて付勢されている。すなわち、カム部材721が回転すると、揺動レバー722の他端部7222が上下方向に揺動し、これにより、回転ミシン刃701が上下方向に移動し、したがって、回転ミシン刃701が回転受刃751に対して接離する。
図9は、回転ミシン刃701が回転受刃751に対する接近位置にある状態を示しており、
図12は、回転ミシン刃701が回転受刃751から離れた離間位置にある状態を示している。
【0038】
一方、左側板513を示す
図7に示されるように、カム回転軸62の一方の端部の近傍には、検知部723が設けられている。検知部723は、カム回転軸62と共に回転する遮光板7231と、遮光板7231による透光と遮光との切り替わりを検知する光センサー7232と、を有している。遮光板7231は、カム部材721の小径部が一端部7221に対向した時に透光から遮光に切り替わり、カム部材721の大径部が一端部7221に当接した時に遮光から透光に切り替わるように、又は、これらの逆に切り替わるように、設定されている。カム部材721の小径部が一端部7221に対向した時、他端部7222すなわち回転ミシン刃701の高さ位置は最下位置すなわち接近位置(
図9参照)となり、カム部材721の大径部が一端部7221に当接した時、他端部7222すなわち回転ミシン刃701の高さ位置は最上位置すなわち離間位置(
図12参照)となる。
【0039】
ミシン目加工部7Aの上下方向移動機構は、以上のように構成されている。ミシン目加工部7Bの上下方向移動機構も、同様に、構成されている。なお、検知部723は、ミシン目加工部7A、7Bにおいて共用されている。
【0040】
(調節機構)
上体71の上部分711には、ロッド725が上下方向に螺挿している。ロッド725の最下端には、受部材7225が固定されている。ロッド725の下露出部には、受部材7225と一定間隔を置いてフランジ7226が固定されており、受部材7225とフランジ7226との間にスプリング7224が配置されている。したがって、他端部7222が受部材7225に当接した場合、すなわち、回転ミシン刃701が接近位置にある場合には、スプリング7224は、常に一定の長さに維持されており、それ故、常に同じ強さで、他端部7222すなわち回転ミシン刃701を付勢している。ロッド725の上端には、摘み7227が設けられている。摘み7227を回すと、ロッド725が上下に移動し、これにより、受部材7225の高さ位置が調節される。
【0041】
(駆動部)
加工機本体10には、搬送駆動部、回転駆動部、幅移動駆動部、及び上下移動駆動部(接離移動駆動部)が、設けられている。なお、何れの駆動部も図示していない。したがって、上下移動駆動部は、ミシン目加工ユニット51の外に、すなわち、ミシン目加工部7A、7Bの幅方向の移動領域の外に、設けられている。これらの駆動部は、いずれもモータを使用している。また、幅移動駆動部は、ミシン目加工部7A用のモータと、ミシン目加工部7B用のモータと、を使用している。これらのモータは、共用可能なものは共用するのが好ましい。
【0042】
ミシン目加工ユニット51を受容部52に取り付けると、回転駆動部と幅移動駆動部と上下移動駆動部とは、それぞれ、回転機構と幅方向移動機構と上下方向移動機構とに、連結されるようになっている。
図6及び
図7を参照しながら説明する。回転駆動部は、ギヤ81に連結されるようになっている。ギヤ81が回転すると、ギヤ81に連結しているギヤ82、83が回転する。ギヤ83が回転すると、搬送ローラ681が回転し、それに従動して搬送ローラ682が回転する。一方、
図7に示されるように、搬送ローラ681の軸端部にはプーリ891が取り付けられており、駆動軸64の端部にはプーリ892が取り付けられており、両プーリ891、892はタイミングベルト893によって連結されている。よって、搬送ローラ681が回転すると、プーリ891、タイミングベルト893、及びプーリ892を経て、駆動軸64が回転し、回転受刃751が回転する。なお、プーリ891とプーリ892とのギヤ比は、搬送ローラ681の周速度と回転受刃751の周速度とが略等しくなるように、設定されている。幅移動駆動部は、ギヤ84A、84Bにそれぞれ連結されるようになっている。ギヤ84Aが回転すると、ねじ軸61Aが回転するとともに、環状ベルト85Aによって連結されたねじ軸66Aも、回転し、これにより、ミシン目加工部7Aが幅方向に移動する。また、ギヤ84Bが回転すると、ねじ軸61Bが回転するとともに、環状ベルト85Bによって連結されたねじ軸66Bも、回転し、これにより、ミシン目加工部7Bが幅方向に移動する。上下移動駆動部は、ギヤ86に連結されるようになっている。ギヤ86が回転すると、環状ベルト87によって連結されたカム回転軸62が回転する。
【0043】
(制御部)
制御部6は、指定された加工内容に従って、幅移動駆動部及び上下移動駆動部を制御するようになっている。なお、回転駆動部は、用紙がミシン目加工ユニット51内を搬送されている間は、一対の搬送ローラ681、682と共に常に作動している。制御部6は、例えば、
図13に示されるような加工内容の場合には、次のような制御を行うようになっている。なお、
図13に示されている加工内容は、用紙の第1幅位置W1及び第2幅位置W2において、それぞれ、長さL1のミシン目部分M1を形成した後、長さL2の非ミシン目部分(ミシン目が形成されない部分)N1を置き、更に、長さL1のミシン目部分M2を形成する、というものである。
【0044】
(a)制御部6は、ミシン目を形成する幅位置が指定されると、幅移動駆動部を制御する。すなわち、制御部6は、ミシン目を形成する第1幅位置W1及び第2幅位置W2が指定されると、ミシン目加工部7A用のモータを第1回転数R1だけ駆動するとともに、ミシン目加工部7B用のモータを第2回転数R2だけ駆動する。第1回転数R1は、ねじ軸61A及びねじ軸66Aを回転させてミシン目加工部7Aを第1幅位置W1へ移動させるのに必要な値に、設定されている。第2回転数R2は、ねじ軸61B及びねじ軸66Bを回転させてミシン目加工部7Bを第2幅位置W2へ移動させるのに必要な値に、設定されている。
【0045】
(b)制御部6は、ミシン目を形成するパターンが指定されると、上下移動駆動部を制御する。すなわち、制御部6は、長さL1のミシン目部分M1を形成した後、長さL2の非ミシン目部分N1を置き、更に、長さL1のミシン目部分M2を形成する旨が、指定されると、上下移動駆動部を次のように制御するようになっている。
【0046】
(b-1) 長さL1のミシン目部分M1を形成する時:
制御部6は、上下移動駆動部のモータを駆動する。これにより、カム回転軸62と共にカム部材721が回転し、揺動レバー722の他端部7222が下方へ移動し、それに伴って、回転ミシン刃701が、下方へ移動して、回転受刃751に近づいていく。検知部723が、カム部材721の小径部が揺動レバー722の一端部7221に対向した時を検知すると、制御部6は、モータの駆動を停止する。この結果、回転ミシン刃701は、最下位置(接近位置)に移動する。これにより、回転ミシン刃701が、搬送される用紙に連れられて、回転受刃751と共に回転し、ミシン目が形成される。制御部6は、この状態を第1時間T1だけ維持する。第1時間T1は、ミシン目が長さL1だけ形成されるのに要する時間である。
【0047】
(b-2) 長さL2の非ミシン目部分N1を置く時:
制御部6は、第1時間T1が経過すると、上下移動駆動部のモータを駆動する。これにより、カム回転軸62と共にカム部材721が回転し、揺動レバー722の他端部7222が上方へ移動し、それに伴って、回転ミシン刃701が、上方へ移動して、回転受刃751から離れていく。検知部723が、カム部材721の大径部が揺動レバー722の一端部7221に当接した時を検知すると、制御部6は、モータの駆動を停止する。この結果、回転ミシン刃701は、最上位置(離間位置)に移動する。これにより、回転ミシン刃701は回転せず、それ故、ミシン目は形成されない。制御部6は、この状態を第2時間T2だけ維持する。第2時間T2は、ミシン目が長さL2だけ形成されないのに要する時間である。
【0048】
(b-3) 長さL1のミシン目部分M2を形成する時:
制御部6は、第2時間T2が経過すると、上下移動駆動部のモータを駆動する。これにより、カム回転軸62と共にカム部材721が回転し、揺動レバー722の他端部7222が下方へ移動し、それに伴って、回転ミシン刃701が、下方へ移動して、回転受刃751に近づいていく。検知部723が、カム部材721の小径部が揺動レバー722の一端部7221に対向した時を検知すると、制御部6は、モータの駆動を停止する。この結果、回転ミシン刃701は、最下位置(接近位置)に移動する。これにより、回転ミシン刃701が、搬送される用紙に連れられて、回転受刃751と共に回転し、ミシン目が形成される。制御部6は、この状態を第1時間T1だけ維持する。
【0049】
[作動]
用紙加工機1において、給紙部11の用紙は、制御部6による制御に従って、搬送経路20上を搬送されながら、第1加工装置3、第2加工装置4、第3加工装置(ミシン目加工装置)5において、順次加工されて、排紙部12へ排出される。
【0050】
その際、ミシン目加工装置5は、次のように作動する。
【0051】
(作動前)
予め、用紙に対するミシン目形成の加工内容が指定される。この指定は、通常は、作業者が操作パネルを介して行う。加工内容は、前述した
図13に示されるとおりとする。また、ミシン目加工部7A、7Bにおける上下方向移動機構の初期状態は、回転ミシン刃701が回転受刃751に対して接近位置にある状態とする。
【0052】
制御部6が、前述したように幅移動駆動部を制御する。これによって、ミシン目加工部7Aが第1幅位置W1に移動し、ミシン目加工部7Bが第2幅位置W2に移動する。
【0053】
(作動中)
(1)用紙が搬送されて来ると、制御部6が、回転駆動部のモータを第1時間T1だけ駆動する。回転駆動部のモータが駆動されると、ミシン目加工部7A、7Bにおいて、駆動軸64が回転し、回転ミシン刃701が、搬送される用紙に連れられて、回転受刃751と共に回転する。これにより、長さL1のミシン目部分M1が形成される。
【0054】
(2)制御部6は、第1時間T1が経過すると、上下移動駆動部のモータを駆動する。上下移動駆動部のモータが駆動されると、ミシン目加工部7A、7Bにおいて、カム回転軸62が回転し、カム部材721が回転し、揺動レバー722の他端部7222が上方(離間方向)へ移動し、回転ミシン刃701が回転受刃751から離れていく。これにより、ミシン目は形成されなくなる。検知部723が、カム部材721の大径部が一端部7221に当接した時を検知すると、制御部6は、モータの駆動を停止する。これにより、回転ミシン刃70は、最上位置となる。制御部6は、この状態を第2時間T2だけ維持する。これにより、長さL2の非ミシン目部分N1ができる。
【0055】
(3)制御部6は、第2時間T2が経過すると、上下移動駆動部のモータを駆動する。上下移動駆動部のモータが駆動されると、ミシン目加工部7A、7Bにおいて、カム回転軸62が回転し、カム部材721が回転し、揺動レバー722の他端部7222が下方(接近方向)へ移動し、回転ミシン刃701が回転受刃751に近づいていく。検知部6が、カム部材721の小径部が一端部7221に対向した時を検知すると、制御部6は、モータの駆動を停止する。これにより、回転ミシン刃701が、最下位置すなわち回転受刃751に対して接近位置となる。制御部6は、この状態を第1時間T1だけ維持する。これにより、長さL1のミシン目部分M2が形成される。
【0056】
[作用効果]
前記構成のミシン目加工装置5は、次のような作用効果を発揮できる。
【0057】
(a)上下方向移動機構及び上下移動駆動部を有しているので、回転駆動される回転受刃751に対して回転ミシン刃701を接離できる。回転ミシン刃701が回転受刃751に対して接近位置にある時には、ミシン目が形成され、回転ミシン刃701が回転受刃751から離れた離間位置にある時には、ミシン目は形成されない。したがって、用紙に対して、ミシン目を常時形成するのではなく、ミシン目を形成したり形成しなかったりすることができる。
【0058】
(b)上下方向移動機構は、カム回転軸62と、上体71に設けられたカム部材721及び揺動レバー722等とで、構成されており、上下移動駆動部は、加工機本体10に、すなわち、ミシン目加工ユニット51の外に、すなわち、ミシン目加工部7A、7Bの幅方向の移動領域の外に、設けられている。したがって、従来のソレノイド機構が有していた不具合を解消できる。すなわち、コスト高、装置の大型化、及び構造の複雑化等という不具合を、解消できる。
【0059】
(c)カム部材721の形状を変更することにより、揺動レバー722の揺動特性を容易に変更できる。
【0060】
(d)調節機構によって受部材7225の高さ位置を調節できるので、回転ミシン刃701の最下位置を調節できる。したがって、ミシン目の押し込み量を調節できる。
【0061】
(e)回転ミシン刃701が最下位置にある時には、スプリング7224は、常に一定の長さを有しているので、常に同じ強さで、揺動レバー722の他端部7222を付勢できる。したがって、最下位置においてミシン目が形成される際には、回転ミシン刃701を用紙に対して常時同じ強さで当接させることができる。よって、ミシン目を正確に形成できる。
【0062】
(f)回転駆動部は、用紙がミシン目加工ユニット51内を搬送されている間は、一対の搬送ローラ681、682と共に常に作動している。すなわち、回転ミシン刃701を接離作動させる際も、用紙は搬送されている。したがって、ミシン目を形成する加工を、短時間で実行できる。
【0063】
前記構成の用紙加工機1は、次のような作用効果を発揮できる。
【0064】
(f)ミシン目加工ユニット51が加工機本体10に対して着脱自在であるので、取扱いが容易である。例えば、ジャムが発生した場合には、容易に処理できる。また、他の加工ユニットに容易に交換できる。
【0065】
(g)駆動部、すなわち、回転駆動部、幅移動駆動部、及び上下移動駆動部等が、加工機本体10に設けられているので、次のような効果を発揮できる。
(g-1) 前記駆動部による振動が、回転機構、幅方向移動機構、及び上下方向移動機構等に伝わるのを、堅固な加工機本体10によって低減できる。したがって、各機構の作動を安定して実行でき、正確なミシン目加工を実現できる。
(g-2) 振動による騒音を低減でき、したがって、良好な作業環境を実現できる。
(g-3) 前記駆動部を他の加工ユニットと共用でき、したがって、用紙加工機1をコンパクトに且つ安価に構成できる。
【0066】
[変形態様]
(第1変形態様)
ミシン目加工部7A、7Bにおいて、カム回転軸62とカム部材721との間に、ワンウェイクラッチ(図示せず)が設けられている。ミシン目加工部7Aのワンウェイクラッチとミシン目加工部7Bのワンウェイクラッチとは、互いに逆方向の回転制御を行うように設定されている。その他は前記実施形態と同じである。
【0067】
前記構成によれば、カム回転軸62を一方向に回転させることにより、ミシン目加工部7Aのカム部材721のみを回転させることができ、また、カム回転軸62を他方向に回転させることにより、ミシン目加工部7Bのカム部材721のみを回転させることができる。したがって、1本のカム回転軸62、すなわち、1つの上下移動駆動部によって、ミシン目加工部7Aの回転ミシン刃701の回転受刃751に対する接離作動と、ミシン目加工部7Bの回転ミシン刃701の回転受刃751に対する接離作動とを、別々に実行できる。したがって、ミシン目を形成したり形成しなかったりすることを、各ミシン目加工部7A、7Bにおいて自由に行うことができ、ミシン目の形成パターンの自由度を増大できる。
【0068】
なお、このようにワンウェイクラッチを用いることができるのは、上下方向移動機構において、カム部材721が、双方向のいずれに回転しても作動するように構成されているからである。
【0069】
しかも、前記構成によれば、前記各接離作動を別々に実行できる上下方向移動機構を、1本のカム回転軸62で実現できるので、装置の性能を安価に向上できる。
【0070】
(第2変形態様)
図14及び
図15は、本変形形態のミシン目加工ユニットを上流側から見た右斜視図及び左斜視図である。この加工ユニット51では、2本のカム回転軸62A、62Bが平行に設けられている。また、ガイド軸63は設けられていない。その他は、前記実施形態と同じである。なお、
図14及び
図15では、天板511及び底フレーム514は図示していない。
【0071】
一方のカム回転軸62Aは、ミシン目加工部7Aのカム部材721と共に回転するように設けられており、他方のカム回転軸62Bは、ミシン目加工部7Bのカム部材721と共に回転するように設けられている。2本のカム回転軸62A、62Bは、それぞれ、独立して、上下移動駆動部によって駆動されるようになっている。上下移動駆動部は、ギヤ88Aに連結して一方のカム回転軸62Aを回転させ、ギヤ88Bに連結して他方のカム回転軸62Bを回転させるようになっている。
【0072】
前記構成によれば、ミシン目加工部7Aの回転ミシン刃701の回転受刃751に対する接離作動と、ミシン目加工部7Bの回転ミシン刃701の回転受刃751に対する接離作動とを、完全に別々に実行でき、例えば、同時に別々に実行できる。したがって、ミシン目を形成したり形成しなかったりすることを、各ミシン目加工部7A、7Bにおいて自由に行うことができ、ミシン目の形成パターンの自由度をより増大できる。
【0073】
(第3変形形態)
図16に示されるように、スポンジローラ91が回転ミシン刃701に並設されている。スポンジローラ91は、回転ミシン刃701と一体に回転するように設けられている。スポンジローラ91は、回転ミシン刃701の外径より少し大きい外径を有している。その他は、前記実施形態と同じである。
【0074】
スポンジローラ91の外径は、回転ミシン刃701の外径より2mm程度大きいのが好ましい。また、スポンジローラ91の材質は、シリコンゴムが好ましく、特に、アスカーCで35程度の硬度を有するものが好ましい。
【0075】
前記構成によれば、回転ミシン刃701が用紙に押し込まれる前に、スポンジローラ91が用紙を押さえるので、用紙が薄い場合でも、ミシン目を綺麗に形成できる。また、回転ミシン刃701が用紙から離れていく際でも、スポンジローラ91が用紙を押さえたままであるので、回転ミシン刃701を、用紙を引き連れることなく、用紙から確実に引き離すことができる。
【0076】
なお、スポンジローラ91は、回転ミシン刃701の両側に設けられるのが、好ましいが、回転ミシン刃701の片側のみに設けられた
図16の場合でも、十分に前述の効果を発揮できる。
【0077】
また、従来では、回転ミシン刃701を用紙から確実に引き離すために、ガイド部材を用いていた。しかしながら、本変形形態によれば、スポンジローラ91を用いているので、ガイド部材は不要であり、装置構成を簡素化できる。しかるに、スポンジローラ91は、ガイド部材と併用してもよい。
【0078】
(その他の変形形態)
(1)ミシン目加工装置は、3個以上のミシン目加工部を有するように構成してもよい。
【0079】
(2)ミシン目加工装置は、回転受刃751と搬送ローラ681とを別々に駆動するように構成してもよい。更に、回転ミシン刃701が接離作動する際に、回転受刃751及び搬送ローラ681の駆動を停止するようにしてもよい。これによれば、回転ミシン刃701が接離作動する際に、用紙が停止しているので、形成されるミシン目の開始位置及び終了位置の精度を向上できる。
【0080】
(3)前記実施形態のミシン目加工装置5は、接離方向が上下方向となるように構成されている。しかるに、ミシン目加工装置は、接離方向が横方向や斜め方向となるように構成してもよい。
【0081】
(4)前記実施形態のミシン目加工装置5は、回転受刃751が回転駆動されるように構成されている。しかるに、ミシン目加工装置は、回転ミシン刃701及び回転受刃751が共に回転駆動されないように構成してもよい。この場合、両刃は、搬送される用紙に連れられて回転する。
【0082】
(5)ミシン目加工装置の検知部は、上下移動駆動部のモータの回転数(回転量)を計測することによって回転ミシン刃701の接近位置及び離間位置を検出するように、構成してもよい。
【0083】
(6)前記実施形態のミシン目加工装置5の受部材(当接部材)7225は、揺動レバー722の他端部7222に下方から当接している。しかるに、このような当接部材は、揺動レバー722の他端部7222の下方への移動を規制できるならば、いかなる方向から当接するように設けてもよい。