特許第5931472号(P5931472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931472
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   H02N2/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-16024(P2012-16024)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-158118(P2013-158118A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】笠井 周
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 俊司
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−066970(JP,A)
【文献】 特開2011−152004(JP,A)
【文献】 特開2011−097661(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0140578(US,A1)
【文献】 特開2006−054956(JP,A)
【文献】 特開2010−259160(JP,A)
【文献】 特表2008−537847(JP,A)
【文献】 特開2007−202293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/00−2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられるケース体と、発電体および質量体が設けられるとともに前記ケース体に取り付けられた起歪体と、を備える発電装置において、
前記起歪体は、前記質量体が連係部材を介して取り付けられる接合部と、前記接合部に一体的に形成されるとともに前記接合部から外側に向けて端部が延出し、前記端部が前記ケース体に片持ち梁状態で取り付けられる複数の起歪部とを有し、前記発電体は複数備えられるともにそれぞれ圧電素子を備え、前記複数の発電体のそれぞれは前記複数の起歪部のそれぞれに取り付けられており、前記質量体は、前記起歪体の前記接合部の一方の側に前記連係部材を介して取り付けられる第1の質量体と、前記起歪体を挟んで前記第1の質量体と反対の他方の側に前記連係部材を介して取り付けられる第2の質量体と、を備え、前記第1の質量体と前記第2の質量体は質量差を有していることを特徴とする発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧電素子を用いた発電装置に関し、特に、自動車等の車両に取り付けられ、車両の振動により発電する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に取り付けられ、車両の振動により発電することができる発電装置として、例えば、特許文献1に示される発電装置が提案されている。この発電装置は、圧電素子が一体的に固着された梁と、重り(質量)とを備え、梁の一端が固定されるとともに他端に重りが取り付けられた構造となっている。そして、この発電装置では、車両の振動により梁が屈曲振動を行い、この屈曲振動により梁に固着された圧電素子が発電する。
【0003】
しかしながら、上記の発電装置において圧電素子が取り付けられた梁は、1次モードの周波数帯においてのみ変位の大きな屈曲振動を行い、その他の周波数帯では変位の大きな屈曲振動を行わない。そのため、この発電装置は、車両においてこの1次モードの周波数帯の振動が形成されたときのみ、効率よく発電することができ、その他の周波数帯においては効率のよい発電を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−57982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、多数の周波数帯において効率よく発電することができる発電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載された発電装置は、車両に取り付けられるケース体と、発電体および質量体が設けられるとともにこのケース体に取り付けられた起歪体と、を備える。そして、この発電装置において、上記の起歪体は、質量体が連係部材を介して取り付けられる接合部と、接合部に一体的に形成されるとともに接合部から外側に向けて端部が延出し、端部が前記ケース体に片持ち梁状態で取り付けられる複数の起歪部とを有し、発電体は複数備えられるともにそれぞれ圧電素子を備え、前記複数の発電体のそれぞれは複数の起歪部のそれぞれに取り付けられており、質量体は、起歪体の接合部の一方の側に連係部材を介して取り付けられる第1の質量体と、起歪体を挟んで第1の質量体と反対の他方の側に連係部材を介して取り付けられる第2の質量体と、を備え、第1の質量体と第2の質量体は質量差を有していることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載された発電装置において、起歪体の接合部に取り付けられた質量体には車両から広範囲の周波数帯における加振力が作用する。そして、質量体が取り付けられた起歪体の接合部には、ケース本体に端部が取り付けられた複数の起歪部が一体的に形成されている。ここで、上記ように起歪部は複数設けられているため、これら複数の起歪部が大きな振幅で振動(変位)する周波数帯は、複数個において設定することが可能である。そのため、質量体に作用する広範囲の周波数帯における加振力により、多数の周波数帯において起歪部が大きな振幅により変位することが可能である。このように、起歪部が多数の周波数帯において大きな振幅により変位することが可能であるため、起歪部に備えられた発電体の圧電素子は、多数の周波数帯において効率よく発電することができる。すなわち、請求項1に記載された発電装置は、多数の周波数帯において効率よく発電することができる。
【0009】
さらに、質量体を第1および第2の質量体へと二つの質量体に分離され、それぞれの質量体は起歪体を挟んで上下に配置される。そのため、質量体は車両からの加振力により、起歪体を中心して容易に回転方向に搖動運動を行うことができる。これにより、起歪体に取り付けられた質量体を回転方向に搖動運動させる周波数帯の加振力が質量体に作用したときに、起歪部がより大きな振幅で変位することが可能できる。そのため、より多数の周波数帯において起歪部を大きな振幅により変位することが可能である。したがって、請求項1に記載された発電装置は、より多数の周波数帯において効率よく発電することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多数の周波数帯において効率よく発電することができる発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の発電装置における外観を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態の発電装置における内部構造を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態の発電装置における振動体の斜視図である。
図4】本発明の実施形態の発電装置における振動体の変位を説明する図である。
図5】本発明の実施形態の発電装置における振動体の変位を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の第1の実施形態の発電装置を図1図2および図3に基づいて説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態の発電装置における外観を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施形態の発電装置における内部構造を示す斜視図である。また、図3は、本発明の実施形態における振動体の斜視図である。なお、図2は、図1にて外観が示された発電装置1において、第1のケース体2を取り除いた状態の発電装置1を示すものである。
【0013】
図1および図2に示すように、発電装置1は、少なくともいずれか一方が自動車等の車両に取り付けらける第1および第2のケース体(2,3)と、ケース体(2,3)に取り付けられた振動体10と、第2のケース体3に取り付けられた制御装置60と、を備える。
【0014】
次に、発電装置1に備えられた振動体10について、図2および図3に基づいて説明すする。なお、ケース体2には上面の中央にカバー体2aが設けられ、このカバー体2aの設置位置により振動体10の上下方向の振動の振幅値が調整される。
【0015】
図2および図3に示すように、振動体10は、弾性を有する板材より形成された起歪体20と、起歪体20に設けられた質量体40と、同じく起歪体20に設けられた第1から第4の発電体(31〜34)と、を備える。
【0016】
起歪体20は、略中央に貫通孔20dが形成された接合部20aと、接合部20aから外側に向けて、四方向に放射状に延出した梁状の第1から第4の起歪部(21〜24)と、を備える。なお、起歪体20は、薄板の板材から形成されており、第1から第4の起歪部(21〜24)と接合部20aは一体的に形成されている。そして、第1から第4の起歪部(21〜24)の端部(21a〜24a)は、ゴム等の弾性部材により形成された第
1から第4の保持部材(51〜54)を介してケース体(2,3)に取り付けられる。このように、起歪体20は、弾性を有する保持部材(51〜54)を介してケース体(2,3)に取り付けられることにより、ケース体(2,3)が強い振動により加振された場合でも、破損することが防止される。
【0017】
第1から第4の発電体(31〜34)のそれぞれは、薄板の梁状の圧電素子(31a〜34a)と、これら圧電素子(31a〜34a)の一方の側面に一体的に固着されている薄板の電極板(31b〜34b)と、を備えている。そして、第1から第4の発電体(31〜34)は、シート状の絶縁体(B1〜B4)を介して、それぞれ起歪体20の第1から第4の起歪部(21〜24)に一体的に固着されている。
【0018】
また、質量体40は、起歪体20の接合部20aの貫通孔20dに挿入固定された連係部材43と、それぞれ連係部材43の両端に取り付けられた第1および第2の質量体(41,42)と、を備える。ここで、第1の質量体41は接合部20aの一方の側20bに配置されるとともに連係部材43を介して取り付けられ、第2の質量体42は起歪体20を挟んで第1の質量体41と反対の他方の側20cに配置されるとともに連係部材43を介して取り付けられる。本実施形態では、質量体40が回転運動を行い易いように、第1および第2の質量体(41,42)の質量差を設定している。なお、第1および第2の質量体(41,42)に質量差を設定しなくてもよい。
【0019】
本実施形態の発電装置1では、ケース体(2,3)からの加振力により質量体40が取り付けられた振動体10は、様々な周波数帯にて振動する。そして、この振動により起歪体20および起歪体20に一体的に取り付けられた各発電体(31〜34)は変位し、この変位により各発電体(31〜34)に備えられた各圧電素子(31a〜34a)は発電を行う。ここで、各発電体(31〜34)の各圧電素子(31a〜34a)および電極板(31b〜34b)は、それぞれ制御装置60に電気的に接続されており、各圧電素子(31a〜34a)により発電された電力は制御装置60により調整され外部へと出力される。
【0020】
次に、発電装置1における振動体10の振動の代表的な形態(振動モード)について、図4および図5に基づいて説明する。
【0021】
図5は、質量体40が上下方向(図5において大きい矢印にて示す。)に変位する周波数帯における振動体10の振動の形態を示すものである。図5に示すように、質量体40が上下方向に振動した場合、起歪体20の各起歪部(21〜24)は、ケース体(2,3)に固定された端部(21a〜24a)を「節」とする片持ち梁の「1次モード」の振動を行う(図5において小さい矢印にて示す。)。そして、この周波数帯において、上記のような振動を各圧電素子(31a〜34a)が行うことにより、各圧電素子(31a〜34a)において所定の発電がなされる。
【0022】
また、図6は、質量体40が回転方向(図6において大きい矢印にて示す。)に変位する周波数帯(図5に示す振動モードとは異なる周波数帯)における振動体10の振動の形態を示すものである。図6に示すように、質量体40が回転方向に振動した場合、起歪体20において、例えば、第2および第4の起歪部(22,24)は、ケース体(2,3)に固定された端部(22a,24a)を「節」とする片持ち梁の「2次モード」の振動を行う(図6において小さい矢印にて示す。)。そして、この周波数帯において、上記のような振動を、例えば、第2および第4の圧電素子(32a,34a)が行うことにより、第2および第4の圧電素子(32a,34a)において所定の発電がなされる。
【0023】
このように、図5および図6に示すように、本実施の形態の発電装置1の振動体10は、
様々な周波数帯において大きな振幅で振動することが可能である。そのため、発電装置1は、多数の周波数帯において効率よく発電することができる。
【0024】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【符号の説明】
【0025】
1,100 発電装置
2,3 第1および第のケース体
10 振動体
20 起歪体
20a 接合部
20b 一方の側
20c 他方の側
20d 貫通孔
21〜24 第1から第4の起歪部
21a〜24a 端部
31〜34 第1から第4の発電体
31a〜34a 圧電素子
31b〜34b 電極板
B1〜B4 絶縁体
40 質量体
41 第1の質量体
42 第2の質量体
43 連係部材
51〜54 第1から第4の保持部材
60 制御装置
B1〜B4 絶縁体
図1
図2
図3
図4
図5