(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1のもののように、均熱板を配置する構造では、潜熱蓄熱材に加え均熱板が別途に必要であり、双方により材料費が増加するとともに、製造工程も増え、コストダウンに限度があるという問題があった。
【0006】
また、潜熱蓄熱体を単に区画中に配しただけでは、その潜熱蓄熱材の蓄熱による液固相変化による体積変動により、蓄熱材と表面材との間に隙間が発生し、有効な蓄熱効果が得られないという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、上記のような基材に一定の間隔をあけて小根太や桟を設けて強度を確保し、それらの間に潜熱蓄熱材を収容配置する蓄熱構造体において、その構造に工夫を加えることにより、均熱板を不要としてコストダウンを図るとともに、効果的な蓄熱効果が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的の達成のため、この発明では、潜熱蓄熱材を封入する袋体自体を均熱機能(伝熱機能)を有するものとするとともに、その周縁部又は対向する縁部に伝熱用の耳部を一体に形成して、この耳部により潜熱蓄熱材のない部分にも伝熱できるようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、表面材と、裏面材と、該表面材及び裏面材の間に位置する枠材とを備え、表面材及び裏面材の間に蓄熱体が組み込まれた蓄熱構造体として、上記蓄熱体は、
伝熱機能を有する袋状の封入部
と、この封入部の周縁部又は互いに対向する縁部から外方向に一体に延びる
伝熱機能を有する耳部と、上記封入部に封入された潜熱蓄熱材とからなる。そして、上記表面材と枠材とが両者間に上記耳部を挟んで一体的に接合され、かつ該耳部により上記封入部が
外方向に引っ張られることで、該封入部が表面材の裏面に伝熱可能に当接又は近接した状態で支持されていることを特徴とする。
【0010】
この請求項1の発明では、蓄熱構造体は、表面材及び裏面材の間に枠材が設けられたものであるので、その枠材により蓄熱構造体の強度を確保することができる。
【0011】
また、上記表面材及び裏面材の間に配置される蓄熱体は、潜熱蓄熱材が封入された袋状の封入部及びそれから外方向に一体に延びる耳部が
伝熱機能を有しているので、その袋状の封入部及び耳部が
伝熱機能により均熱部材として機能する。しかも、その耳部が表面材と枠材との間に挟持され、この耳部により引っ張られ
ることで封入部が表面材の裏面に伝熱可能に当接又は近接した状態で支持されているので、表面材の表側において封入部(潜熱蓄熱材)の位置する部分と、封入部がなくて耳部の位置する部分との間で温度差が生じることはないとともに、封入部を表面材の裏面に伝熱可能に当接又は近接した状態に付勢するための付勢手段が別途に不要となる。
【0012】
そして、このように蓄熱体の封入部及び耳部が均熱部材となるので、均熱板を別途設ける必要がなく、材料費を低減することができる。また、表面材の裏側に蓄熱体の封入部を配置するときに、同時にその耳部を表面材と枠材との間に配置するだけでよく、効率よく製造することができる。これらによりコストダウンを図ることができる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明の蓄熱構造体において、上記耳部は、封入部の表面材側の袋壁部と面一になるように厚さ方向に片寄った位置から外側に延びていることを特徴とする。
【0014】
この請求項2の発明では、耳部は、封入部の厚さ方向の中央部ではなく、封入部の表面材側の袋壁部と面一になるように厚さ方向に片寄った位置から外側に延びているので、蓄熱体を表面側に密着させた状態で保持することができるだけでなく、蓄熱体の液固変化による体積変化の影響を受けることなく、密着状態を保持することができる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明の蓄熱構造体において、上記蓄熱体は、少なくとも2つ(複数)の封入部が該両封入部間に位置する中間耳部を介して一体形成されたものであり、上記表面材と枠材とが両者間に上記中間耳部を挟んで一体的に接合されていることを特徴とする。
【0016】
この請求項3の発明では、複数の封入部が中間耳部を介して一体形成されているので、それら複数の封入部は中間耳部を介して連続していることとなる。そのため、複数の蓄熱体が分離している場合のように、枠材上で蓄熱体の耳部が途切れることはないとともに、均熱性のためにそれら耳部を枠材上で重ね合わせる手間も不要となり、効率よく確実に均熱性を高めることができる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明の蓄熱構造体において、上記表面材の裏側に、蓄熱体の封入部と接触又は近接するように発熱手段又は冷却手段が組み込まれていることを特徴とする。
【0018】
この請求項4の発明では、組み込まれた発熱手段による温熱又は冷却手段による冷熱が蓄熱体の封入部及び耳部を介して表面材に伝わる。このことで、表面材の表面で均一な加温効果又は冷却効果を得ることができる。
【0019】
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明の蓄熱構造体において、上記裏面材と蓄熱体との間に、蓄熱体の封入部と接触又は近接するように断熱手段が組み込まれていることを特徴とする。
【0020】
この請求項5の発明では、組み込まれた断熱材により、表面からの加温又は冷却により蓄熱体に蓄積された温熱又は冷熱が裏面側に逃げにくいため、封入部及び耳部を介して効率的に表面材に伝わる。このことで、表面材の表面で均一な蓄熱効果を得ることができる。
【0021】
請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか1つの発明の蓄熱構造体において、上記表面材の表面に裏面側の枠材の位置がマーキングされていることを特徴とする。
【0022】
この請求項6の発明では、表面材の表面にマーキングが形成されているので、そのマーキングの位置によって表面材の表側から枠材の位置が容易に判るようになり、例えば、そのマーキングの位置に釘等を打ち込んで施工することで、蓄熱体の耳部に釘等を間違いなく打ち込むことが可能であり、蓄熱体の封入部を損傷することなく施工することができ、施工が容易となる。
【0023】
請求項7の発明は、上記請求項1〜6のいずれか1つの発明の蓄熱構造体を製造する方法であり、この方法では、角材からなる枠材又は角材を方形に組んだ枠材の上から蓄熱体を耳部が枠材上に一致するように載置し、この蓄熱体の表面に表面材を載置して、表面材及び枠材を一体的に接合する工程を有することを特徴とする。
【0024】
この請求項7の発明では、枠材の上から蓄熱体が耳部を枠材上に一致するように載置された後、その蓄熱体の封入部及び耳部の表面に表面材が載置され、それら表面材及び枠材が一体的に接合される。このことで、蓄熱構造体を容易に製造することができる。
【0025】
請求項8の発明も、上記請求項1〜6のいずれか1つの発明の蓄熱構造体を製造する方法であって、この方法では、表面材を裏返しにしてその裏面に蓄熱体を載置し、上記蓄熱体の耳部上に角材からなる枠材又は角材を方形に組んだ枠材を載置し、表面材及び枠材を一体的に接合する工程を有することを特徴とする。
【0026】
この請求項8の発明では、裏返しにされた表面材の裏面に蓄熱体が当接状態で載置されるとともに、その蓄熱体の耳部上に枠材が載置され、その後、表面材及び枠材が一体的に接合される。この方法では、表面材と蓄熱体が接触した蓄熱構造体を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した如く、請求項1の発明の蓄熱構造体によると、潜熱蓄熱材が封入された袋状の封入部と、封入部から外方向に一体に延びる耳部とを
伝熱機能を有するものとして蓄熱体を構成し、表面材と枠材とを両者間に耳部を挟んだ状態で一体的に接合し、この耳部の支持により封入部を
外方向に引っ張って表面材の裏面に伝熱可能に当接又は近接させたことにより、蓄熱構造体の強度を確保することができるとともに、袋状の封入部及び耳部が均熱部材となり、封入部の付勢手段を別途に要することなく、表面材の表側での均熱性を高めることができる。しかも、均熱板を不要として材料費を低減できるとともに、均熱板のための別途の工程が不要で効率よく製造でき、コストダウンを図ることができる。
【0028】
請求項2の発明では、耳部は、封入部の厚さ方向の中央部ではなく、封入部の表面材側の袋壁部と略面一になるように厚さ方向に片寄った位置から外側に延びているので、蓄熱体を表面側に密着させた状態で保持することができるだけでなく、蓄熱体の液固変化による体積変化の影響を受けることなく、密着状態を保持することができる。
【0029】
請求項3の発明によると、蓄熱体は、複数の封入部が両封入部間に位置する中間耳部を介して一体形成されたものとし、表面材と枠材とを両者間に中間耳部が挟まれた状態で一体的に接合したことにより、効率よく確実に均熱性を高めることができる。
【0030】
請求項4の発明によると、表面材の裏側に、蓄熱体の封入部と接触又は近接するように発熱手段又は冷却手段を組み込んだことにより、表面材の表面で均一な加温効果又は冷却効果を得ることができる。
【0031】
請求項5の発明によると、表面材の裏側に、蓄熱体の封入部と接触又は近接するように組み込まれた断熱材により、表面からの加温又は冷却により蓄熱体に蓄積された温熱又は冷熱が裏面側に逃げにくいため、封入部及び耳部を介して効率的に表面材に伝わるようになり、表面材の表面で均一な蓄熱効果を得ることができる。
【0032】
請求項6の発明によると、表面材の表面に裏面側の枠材の位置をマーキングしたことにより、そのマーキングの位置によって表面材の表側から枠材の位置が容易に判るようになり、施工の容易化を図ることができる。
【0033】
請求項7の発明の蓄熱構造体の製造方法では、枠材の上に蓄熱体を耳部が枠材上に一致するように載置し、その蓄熱体の表面に表面材を載置して、表面材及び枠材を一体的に接合することとした。また、請求項8の発明の蓄熱構造体の製造方法では、裏返しにした表面材の裏面に蓄熱体を載置し、その耳部上に枠材を載置して、表面材及び枠材を一体的に接合することとした。これらの発明によると、蓄熱構造体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0036】
(実施形態1)
図1〜
図3は本発明の実施形態1に係る蓄熱構造体Aを示し、この蓄熱構造体Aは、例えば床材、壁材、床下地材、壁下地材、天井下地材等の建材、或いはその他の蓄熱用途に使用される。
【0037】
蓄熱構造体Aは、表面材1及び裏面材2と、表面材1及び裏面材2の間に位置する枠材3とを備え、表面材1及び裏面材2の間に蓄熱体8が組み込まれている。上記表面材1は、例えば幅303mm、長さ1818mm、厚さ3mmの矩形板状のもので、合板やMDF等が好適に用いられる。或いはパーティクルボードやハードボード等のその他の木質材料、大建工業(株)製の商品名「ダイライト」等の無機質系板材等、通常に建材として用いられる1〜15mm程度の板状の材料が用いられる。
【0038】
また、枠材3は、複数の同じ幅Wの角材を平行に並べたもの又は角材を方形に組んだもので、例えば木材やプラスチック等の棒状材からなる。
【0039】
さらに、裏面材2は、表面材1と同じ大きさのもので、表面材1と同様に、通常に建材として用いられる材料が用いられる。この場合、表面材1と裏面材2は使用される加熱手段や冷却手段、断熱手段による反り等に鑑み、同じ材料・同じ厚みのものを使用してもよいし、適宜材質や厚みを替えて使用してもよい。
【0040】
上記表面材1と裏面材2との間の空間は上記枠材3によって所定厚さの複数の空間に区画されており、この各空間により蓄熱体収容部5が形成され、該蓄熱体収容部5に上記蓄熱体8が組み込まれている。この蓄熱体8は、例えば
図4に裏側から見た状態で示すように、蓄熱体収容部5よりも少し小さい矩形状の大きさで厚さの薄い(例えば15mm)可撓性のある袋状の容器(パック)からなる封入部9を有し、この封入部9の内部に潜熱蓄熱材13(
図1及び
図2に記載)が気密状に充填されて封入されている。
【0041】
上記潜熱蓄熱材13は、パックに封入されるため、マイクロカプセル化されていない潜熱蓄熱材やゲル化された潜熱蓄熱材等も使用することができる。この潜熱蓄熱材13としては、例えばn−オクタデカン、n−ヘキサデカンが主原料のノルマルパラフィンが用いられる。このノルマルパラフィンは、融点が18〜32℃のもので、基本的に融点よりも低い温度で固体となり、融点よりも高い温度で液体となる。この潜熱蓄熱材13の融点温度は、冬季の暖房負荷削減のためには、暖房設定温度に近い、例えば20℃前後とするのが良く、夏季の冷房負荷削減のためには、冷房設定温度に近い、例えば28℃前後とするのが望ましい。この潜熱蓄熱材13としてのノルマルパラフィンは略そのまま封入部9に詰められて使用され、温度変化に応じて固体・液体と相変化する。ノルマルパラフィンの比重は約0.8である。
【0042】
ノルマルパラフィン以外の潜熱蓄熱材13としては、無機水和塩(塩化カルシウム六水和塩、硫酸ナトリウム十水和塩等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ミリスチン酸等)、芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、p−キシレン等)、エステル化合物(パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等)、アルコール類(ステアリルアルコール等)、ポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0043】
上記封入部9には、その四周全体の周縁部から外方向(表裏方向と垂直な方向)に突出するように延びる耳部10が設けられており、この耳部10の幅L(封入部9からの突出長さ)は、例えば上記枠材3の幅Wの略半分とされている。尚、蓄熱構造体Aの周縁部に位置する蓄熱体8には、その蓄熱構造体A外側に他の蓄熱体8がないので、外側の耳部10の幅Lを、枠材3の幅W
と略同じとするのが好ましい。また、
図4に示すように、上記耳部10は、封入部9の厚さ方向の中央部ではなく、封入部9の表面材1側の袋壁部と略面一になるように厚さ方向に片寄った位置から外側に延びているのが好ましい。
【0044】
尚、耳部10は、上記のように封入部9の四周全体の周縁部から外方向に突出するように延びるものとするのに限定されない。これに代え、耳部10を封入部9の対向する2つの縁部(例えば矩形状の封入部9においてその対向する2つの短辺部又は長辺部)のみから外方向に突出するように延びるものとすることもでき、耳部10により封入部9を引っ張って表面材1の裏面に伝熱可能に当接又は近接させた状態で支持するようにすればよい。
【0045】
上記耳部10は封入部9と一体形成されたもので、いずれも均熱機能(伝熱機能)を有する例えばアルミニウム等、熱伝導性の優れた伝熱材料からなる。その他、この封入部9及び耳部10の伝熱材料としては、アルミニウムの他に例えばポリエチレンやポリオレフィン等の表面にアルミニウム薄膜を積層一体化したものやアルミニウム蒸着したもの等を用いることができるが、充填する潜熱蓄熱材13と反応しないものを用いる必要がある(例えば、潜熱蓄熱材13としてパラフィンを用いる場合はオレフィン等と反応するので、他の樹脂を選択しなければならない)。最も好適には、PET及びポリエチレンの複合体にアルミニウムを蒸着したものを用いることができる(例えば特開平11−227843号公報や特開2008−184664号公報に示されている材料を参照)。
【0046】
そして、
図1に示すように、上記蓄熱体8の封入部9は蓄熱体収容部5内に収容されて表面材1の裏面に伝熱可能に当接又は近接しており、その状態で、上記表面材1と枠材3とが両者間に上記蓄熱体8の耳部10を密着状態で挟んで(挟持して)一体的に接合されている。すなわち、表面材と枠材3とを、蓄熱体8の耳部10を挟んで一体的に接合することで、この耳部10により引っ張られて封入部9が表面材1の裏面に伝熱可能に当接又は近接した状態で支持されている。
【0047】
このとき、隣り合う2つの蓄熱体8,8の耳部10,10は、上記枠材3と表面材1との間の接合部分で各々の端部が突き合わされて配置されている。
【0048】
また、上記表面材
1、裏面材
2及び枠材
3を接合固定するための手段、並びに蓄熱体
8の耳部
10を接合固定するための手段としては、両面テープ、ホットメルト、PURホットメルト、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等の接着剤、ステープル、釘、ビス等を用いたり、或いはそれらを併用したりすればよく、必要とする接合強度に応じて適宜選択する。
【0049】
さらに、
図3に示すように、上記表面材1の表面には、裏面側にある上記枠材3の位置が線や点等の目印Mによってマーキングされている。
【0050】
上記蓄熱構造体Aを製造する場合、2つの製造方法がある。第1の製造方法では、裏面材2の上に、角材からなる枠材3又は角材を方形に組んだ枠材3を固定して蓄熱体収容部5を区画形成する。
【0051】
次いで、その枠材3の上から蓄熱体8を、封入部9が蓄熱体収容部5に入りかつ耳部10が枠材3上に一致するように載置する(
図2参照)。その際、耳部10を枠材3に両面テープやステープル等で仮止めしてもよい。
【0052】
その後、上記枠材3上の蓄熱体8の表面に表面材1を載置して、表面材1と枠材3との間に耳部10を挟持して封入部9を表面材1の裏面に伝熱可能に配置し、その状態で表面材1及び枠材3(裏面材2)を一体的に接合する。
【0053】
第2の製造方法では、表面材1を裏返しにしてその裏面に蓄熱体8を載置する。
【0054】
次いで、その蓄熱体8の耳部10上に角材からなる枠材3又は角材を方形に組んだ枠材3を載置し、表面材1と枠材3との間に耳部10を挟んで封入部9を表面材1の裏面に伝熱可能に配置する。
【0055】
そして、表面材1及び枠材3を一体的に接合した後、上記枠材3上に裏面材2を裏返しにして載置し、両者を一体的に接合する。
【0056】
これらの製造方法により、上記蓄熱構造体Aを容易に製造することができる。
【0057】
したがって、この実施形態においては、蓄熱構造体Aは表面材1及び裏面材2の間に蓄熱体8と共に枠材3が一体的に組み込まれたものであるので、その枠材3により蓄熱構造体Aの強度を確保することができる。
【0058】
また、上記枠材3の間に配置される蓄熱体8は、潜熱蓄熱材13が封入された袋状の封入部9及びそれから周縁に一体に延びる耳部10が均熱機能を有しており、その耳部10が表面材1と枠材3との間に挟まれて支持され、この耳部10の支持により封入部9が表面材1の裏面に伝熱可能に配置されているので、その袋状の封入部9及び耳部10が均熱部材として機能し、この均熱部材により表面材1の裏面側は均等の温度に保持される。そのため、表面材1の表側においても、封入部9(潜熱蓄熱材13)の位置する部分と、封入部9がない部分(枠材3のみが位置する部分)との間で温度差が生じることはなく、均熱性を得ることができる。
【0059】
また、蓄熱体8の封入部9は、表面材1と枠材3との間に挟持された耳部10により引っ張られて表面材1の裏面に伝熱可能に当接又は近接した状態で支持されているので、封入部9を表面材1の裏面に伝熱可能に当接又は近接した状態に付勢するための別途の付勢手段が不要であるだけでなく、蓄熱体の液固変化による体積変化の影響を受けることなく、密着状態を保持することができる。
【0060】
そして、このように蓄熱体8の封入部9及び耳部10が均熱部材となるので、均熱板を別途設ける必要がなく、その分、材料費を低減することができる。また、表面材1の裏側に蓄熱体8の封入部9を配置するときに、同時にその耳部10を表面材1と枠材3との間に配置するだけでよく、別途の工程も不要で効率よく製造することができる。これらにより蓄熱構造体Aのコストダウンを図ることができる。
【0061】
また、蓄熱構造体Aの表面材1表面に裏面側の枠材3の位置が目印Mによりマーキングされているので、その目印Mの位置によって表面材1の表側から枠材3の位置が容易に判るようになる。そのため、例えば、その目印Mの位置に釘等を打ち込んで施工することで、蓄熱体8の封入部9を損傷することなく施工することができ、施工が容易となる。
【0062】
(実施形態2)
図5は実施形態2を示し(尚、以下の各実施形態では、
図1〜
図4と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する)、表面材1と枠材3との間に介在される、蓄熱体8の耳部10の配置構造を変えたものである。
【0063】
すなわち、上記実施形態1では、隣り合う2つの蓄熱体8,8の耳部10,10を、枠材3と表面材1との間の接合部分で各々の端部が突き合わされた状態で配置している。これに対し、この実施形態2においては、隣り合う2つの蓄熱体8,8の耳部10,10同士を、枠材3と表面材1との間の接合部分で重ね合わせた状態で配置している。この場合、耳部10の幅Lは、上記実施形態1のものよりも大きくし、枠材3の幅Wと略同じとするのが好ましい。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0064】
こうすることにより、均熱部材としての2つの蓄熱体8,8の耳部10,10が両蓄熱体8,8間に亘り途切れることなく確実に伝熱可能に連続するので、均熱性をより一層高めることができる利点がある。
【0065】
(実施形態3)
図6は実施形態3を示し、上記実施形態1では、枠材3と裏面材2とを別体に設けて両者を一体に接合するようにしているのに対し、裏面材2と枠材3とを一体に形成したものである。
【0066】
すなわち、この実施形態では、裏面材2及び枠材3を形成するための厚肉の合板やMDF、インシュレーションボードやパーティクルボード等の木質材料からなる基材(裏面材2)の表面を切削して凸部及び凹部を形成し、その凸部が枠材3を構成し、凹部が蓄熱体収容部5となっている。その他の構成は実施形態1と同じである。
【0067】
したがって、この実施形態においても実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
(実施形態4)
図7及び
図8は実施形態4を示し、蓄熱体8の構造を変え、複数の封入部9,9,…を一体化したものである。
【0069】
すなわち、この実施形態では、実施形態1のように、蓄熱体8が1つの封入部9に耳部10を備えたものとは異なり、
図8に示すように、蓄熱体8は、少なくとも2つ(複数)の封入部9,9,…が、隣接する両封入部9,9間に位置する中間耳部10′を介して一体形成されている。この中間耳部10′の幅Lは、枠材3の幅Wよりも少し大きくなるように設定されている。また、蓄熱構造体Aの周辺に位置する封入部9おいては、該封入部9に隣接する封入部9とは反対側に実施形態1と同様の耳部10が形成されている。そして、
図7に示すように、表面材1と枠材3とは両者間に上記中間耳部10′を挟んで一体的に接合されている。その他は実施形態1と同様である。
【0070】
したがって、この実施形態においては、蓄熱体8は複数の封入部9,9,…が中間耳部10′,10′,…を介して一体形成されているものであるので、それら複数の封入部9,9,…は中間耳部10′,10′,…を介して連続していることとなる。そのため、複数の封入部9,9,…が分離している実施形態1や実施形態2のように、枠材3上で耳部10が途切れることはなく(
図2参照)、それら耳部10を枠材3上で重ね合わせる手間も不要となり(
図5参照)、効率よく確実に均熱性を高めることができる利点が得られる。
【0071】
(実施形態5)
図9は実施形態5を示し、上記実施形態1の構造において、蓄熱体収容部5に発熱装置を配置したものである。
【0072】
この実施形態においては、蓄熱体収容部5の底部である裏面材2の表面に断熱材15が収容されている(断熱材15に代えて緩衝材を設けてもよい)。また、この断熱材15と蓄熱体8との間の蓄熱体収容部5には、発熱装置16(発熱手段)が封入部9の裏面側と伝熱可能に接触又は近接するように収容されて組み込まれている。この発熱装置16としては、例えば電気式ヒータパネル、温水パイプ、温冷水パネル、面状発熱体(面状ヒータ)、ペルチェ素子の発熱板等が用いられる。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0073】
この実施形態においては、蓄熱構造体Aに発熱装置16が組み込まれているので、その発熱装置16による温熱が蓄熱体8の封入部9及び耳部10を介して表面材1に伝わり、表面材1の表面で均一な加温効果を得ることができる利点がある。
【0074】
尚、この実施形態5において、発熱装置16に代えて、冷水パネル、温冷水パネル、ペルチェ素子の冷却板等の冷却装置(冷却手段)を配置してもよい。その場合、冷却装置による冷熱が蓄熱体8の封入部9及び耳部10を介して表面材1に伝わり、表面材1の表面で均一な冷却効果を得ることができる。
【0075】
また、裏面材2の位置に発熱装置又は冷却装置を配置して、裏面材2自体を発熱装置又は冷却装置で構成することもできる。
【0076】
(実施形態6)
図10は実施形態6を示し、上記実施形態5では、蓄熱構造体Aに発熱装置16(又は冷却装置)を組み込んでいるのに対し、断熱材のみを組み込んだものである。
【0077】
すなわち、この実施形態では、実施形態5の構成において、発熱装置16や冷却装置がなく、断熱材15のみが収容されている。その他の構成は実施形態5と同じである。
【0078】
したがって、この実施形態においては、蓄熱構造体Aに断熱材15が組み込まれているので、その断熱材15により蓄熱体8の封入部9及び耳部10が蓄熱構造体A裏側から断熱され、表面からの加温又は冷却による蓄熱を効果的に上方に利用することができ、表面材1の表面で均一な蓄熱効果を得ることができる利点がある。
【0079】
(その他の実施形態)
尚、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、それらの実施形態を適宜組み合わせた構成も含まれることは勿論である。