特許第5931508号(P5931508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931508
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】医用画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   A61B6/00 350A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-46397(P2012-46397)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-180088(P2013-180088A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】今川 和夫
(72)【発明者】
【氏名】材木 隆二
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−283373(JP,A)
【文献】 特開2011−045449(JP,A)
【文献】 特開2004−329929(JP,A)
【文献】 特開2005−198708(JP,A)
【文献】 特開2002−233579(JP,A)
【文献】 特開2006−048247(JP,A)
【文献】 特開2001−079097(JP,A)
【文献】 特開2004−201873(JP,A)
【文献】 特開2003−245360(JP,A)
【文献】 楠卓也,頭部MR 血管画像からの脳血管径の計測による動脈瘤検出手法の改良,電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像,電子情報通信学会,2007年,vol. 107, no. 326,pages 49 - 54
【文献】 HIGASHIURA, WATARU,Impact of 3-dimensional-computed tomography workstation for precise planning of endovascular aneurysm repair,CIRCULATION JOURNAL: OFFICIAL JOURNAL OF THE JAPANESE CIRCULATION SOCIETY,JAPANESE CIRCULATION SOCIETY,2008年,vol. 72, no. 12,pages 2028 - 2034
【文献】 WHITTAKER, DAVID R. ET AL.,Prediction of altered endograft path during endovascular abdominal aortic aneurysm repair with the Gore Excluder,JOURNAL OF VASCULAR SURGERY,The Society for Vascular Surgery,2005年,vol. 41, no. 4,pages 575 - 583
【文献】 東浦渉,大動脈疾患に対するステントグラフト治療,試薬と新薬,2009年 7月,第46 巻第7 号,p.678-679
【文献】 HAYASHI Naoto,Feasibility of a curvature-based enhanceddisplay system for detecting cerebral aneurysms in MR angiography,Magnetic Resonance in Medical Sciences,Japanese Society for Magnetic Resonance in Medicine,2003年,Vol.2, No.1,p.29-36
【文献】 Elliot L. Chaikof,,Identifying and grading factors that modifytheoutcome of endovascular aortic aneurysm repair,JOURNAL OF VASCULAR SURGERY,the Society for Vascular Surgery,2002年,Volume 35, Number 5,p.1061-1066
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する動脈瘤を含む画像のデータが記憶される画像記憶部と、
前記画像から血管壁領域を抽出する血管抽出部と、
前記抽出された血管壁領域に基づいて血管径の変化率、血管曲率及び血管扁平率を前記血管壁領域上の複数の離散点について個々に算出する血管径変化率等算出部と、
前記複数の離散点から、前記血管径変化率、前記血管曲率及び前記血管扁平率の少なくとも一つがそれぞれの閾値を超過する非推奨点を抽出する非推奨点抽出部と、
前記抽出された非推奨点の点列範囲に従って、前記動脈瘤に対するステントグラフトの留置に推奨されない非推奨範囲を決定する非推奨範囲決定部と、
前記記憶された画像に前記非推奨範囲を重ねて表示する表示部とを具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記画像内の前記動脈瘤を含む局所範囲を関心領域として操作者指示に従って設定する関心領域設定部をさらに備え、
前記血管抽出部、前記血管径変化率等算出部及び前記非推奨範囲決定部それぞれは処理範囲を前記関心領域に限局することを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記非推奨範囲外であって、前記血管径変化率と前記血管曲率とがともにそれぞれの前記閾値又は前記閾値より低い他の閾値より低い範囲を、前記動脈瘤に対するステントグラフトの留置に推奨される推奨範囲として決定する推奨範囲決定部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記推奨範囲決定部は、前記推奨範囲から前記画像から同定されたプラーク部又は石灰化部を除外することを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記決定された推奨範囲は前記画像に前記非推奨範囲とともに重ねて表示されることを特徴とする請求項3記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記表示部は、外部のアンギオX線診断装置により発生されたライブ画像に前記非推奨範囲と前記推奨範囲との少なくとも一方を重ねて表示することを特徴とする請求項記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記非推奨点抽出部は、前記閾値を操作者指示に従って変更することを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記画像上に操作者指示に従って設定される前記ステントグラフトの留置予定位置の両端部分における血管径と前記両端部分の最大曲率と前記両端部分の間の長さとに従って前記ステントグラフトに必要とされる太さ、曲率、長さに関する仕様を決定するステントグラフト仕様決定部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記ステントグラフト仕様決定部は、前記仕様に適合するステントグラフトの製品又は種別をステントグラフト製品管理情報から特定することを特徴とする請求項8記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記画像上にエンドリーク発生の可能性の高い位置として重ねて表示させるために、前記ステントグラフトの留置予定位置の両端部分における最大の血管扁平率を示す位置を特定するエンドリーク確認支援部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記エンドリーク確認支援部は、前記最大の血管扁平率を示す位置における血管長軸と血管中心線とに直交する撮影角度を決定することを特徴とする請求項10記載の医用画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントグラフト内挿術とは、網状の金属(ステント)を埋め込んだ人工血管(グラフト)を、大動脈瘤の内部に留置し、瘤内への血液の流入を遮断することで、大動脈瘤の破裂を防止する治療法である。通常、治療計画を行うに際してはまずX線コンピュータ断層撮影装置(CT)による画像検査を行い、その画像から血管形状に適合するステントグラフトを選択する。X透視下でステントグラフトを留置する。
【0003】
ステントグラフト内挿術の課題は、ステントグラフト留置後に発生することがあるエンドリークの抑制である。エンドリークとは、ステントグラフトの端部と血管内壁との隙間から血流が漏洩する現象をいう。隙間を解消するには、ステントグラフト留置位置の慎重な決定が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-088795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、ステントグラフトの留置位置の決定を支援する情報を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、被検体に関する動脈瘤を含む画像のデータが記憶される画像記憶部と、前記画像から血管壁領域を抽出する血管抽出部と、前記抽出された血管壁領域に基づいて血管径の変化率、血管曲率及び血管扁平率を前記血管壁領域上の複数の離散点について個々に算出する血管径変化率等算出部と、前記複数の離散点から、前記血管径変化率、前記血管曲率及び前記血管扁平率の少なくとも一つがそれぞれの閾値を超過する非推奨点を抽出する非推奨点抽出部と、前記抽出された非推奨点の点列範囲に従って、前記動脈瘤に対するステントグラフトの留置に推奨されない非推奨範囲を決定する非推奨範囲決定部と、前記記憶された画像に前記非推奨範囲を重ねて表示する表示部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は本実施形態に係るステントグラフト留置支援装置を備えるアンギオX線診断装置の構成を示す図である。
図2図2図1のステントグラフト留置支援装置によるステントグラフト留置予定位置の決定支援処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3図1のステントグラフト留置支援装置によるステントグラフト決定支援処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4図1のステントグラフト留置支援装置によるエンドリーク確認支援手順を示すフローチャートである。
図5図5図2の工程S101に対応する図である。
図6図6図2の工程S102に対応する図である。
図7図7図2の工程S103に対応する図である。
図8図8図2の工程S104に対応する離散点を示す図である。
図9図9図2の工程S104に対応する図である。
図10図10図2の工程S105−S108に対応する図である。
図11図11図2の工程S109に対応する図である。
図12図12図2の工程S109に対応する図である。
図13図13図4の工程S301に対応する図である。
図14図14図4の工程S301により特定された位置を通るCT断面を示す図である。
図15図15図4の工程S302によるエンドリーク視認に最適な撮影角度を示す図である。
図16図16図4の工程S302によるエンドリーク視認に最適な撮影角度の決定方法を示す図である。
図17図17図4の工程S302によるエンドリーク視認に最適な撮影角度の決定方法を示す図である。
図18】動脈瘤のネック部分を示す図である。
図19】動脈瘤のネック部分に留置されるステンドグラフトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像処理装置を説明する。本実施形態に係る医用画像処理装置は、処理対象の画像のデータを記憶する画像記憶部を有する。処理対象の画像には、被検体に関する、動脈瘤と、動脈瘤を起こしている血管部分とが含まれる。画像から血管壁領域が抽出される。抽出された血管壁領域から、血管径の変化率、血管曲率及び血管扁平率が血管壁領域上の複数の離散点について個々に算出される。複数の離散点から、血管径変化率、血管曲率及び血管扁平率の少なくとも一つがそれぞれに設定されている閾値を超過する非推奨点が抽出される。抽出された非推奨点の点列範囲に従って動脈瘤に対するステントグラフトの留置に推奨されない非推奨範囲が決定される。非推奨範囲は画像に重ねて表示される。
【0009】
まず、次の通り用語を定義する。
ネック部分とは、図18に示すように、動脈瘤を起こしている血管であって、動脈瘤の両側からつながる健常な血管部分をいう。実際には後述するROI内の血管部分であって、動脈瘤領域を除く範囲である。図19に示すように、ステントグラフトはその両端の外周縁が当該ネック部分の内壁に密着することでエンドリークを好適に抑制することができる。この抑制により血管の局部的異常拡張、つまり動脈瘤を抑えることができる。
非推奨領域とは、ネック部分において、ステントグラフトを留置するのに適さない血管部分、つまりエンドリークが起きる可能性が高い血管部分をいう。なお、本実施形態は、ステントグラフト留置に適さないとされる血管部分を技術的に定義するとともに当該定義に従って当該非推奨領域を自動的に同定し、当該非推奨領域を術者(医師)に提示して治療計画立案を支援することを特徴の一つとしている。
推奨領域とは、ステントグラフトを留置するのに適している血管部分、つまりエンドリークが起きる可能性が低い血管部分をいう。実際には、ネック部分から非推奨領域を除外した血管部分をいう。
エンドリークとは、ステンドグラフト留置後に、ステントグラフトの両端の外周縁とネック部分の血管内壁との間に隙間ができることにより、当該隙間から血液が漏洩して、抑制血液が動脈瘤内に流れ込む現象をいう。隙間はステントグラフトの両端の外周縁とネック部分の血管内壁との間の密着不足が主な原因となり生じる。
関心領域(ROI:Region Of Interest )とは、本来的にはユーザーが注目する部位のことをいい、ここでは特に非推奨領域/推奨領域の同定のための処理対象範囲としてユーザーにより設定される画像内の一部分を構成する局所範囲をいう。
【0010】
図1は、本実施形態に係るステントグラフト留置支援装置を備えるアンギオX線診断装置の構成を示す図である。X線管3は、高電圧発生器5から高電圧(管電圧)の印加及びフィラメント電流の供給を受けてX線を発生する。X線を任意形状に成形するためにX線絞り部4がX線管3のX線放射窓に取り付けられる。X線管3は、例えばC形状のアーム1の一端に取り付けられる。Cアーム1の他端には、X線管3に対向する向きにX線平面検出器6が取り付けられている。X線平面検出器6はフラット・パネル・ディテクタとの呼ばれるものであり、入射X線を直接的又は間接的に電荷に変換する、2次元状に配列された複数の検出素子を有する。X線平面検出器6の出力は画像メモリ7を介してX線画像データとしてステントグラフト留置支援装置9に供給される。X線管3とX線平面検出器6との間に、図示しない寝台上に載置された状態で被検体Pが配置される。Cアーム1は、直交3軸に関して独立して回転可能に図示しない支持機構に支持される。機構制御部2は、被検体Pに対する撮影角度(ワーキングアングル)を任意に変更するために、Cアーム1の支持機構を制御する。撮影に際しては、システム制御部8は、機構制御部2、高電圧発生器5、X線平面検出器6、画像メモリ7を制御する。
【0011】
ステントグラフト留置支援装置9は、ステントグラフト留置支援制御部10を中心として、画像記憶部11等を備える。画像記憶部11は、当該被検体に関するX線コンピュータ断層撮影装置(CT)等の医用画像発生装置で発生された、当該動脈瘤を含む範囲の画像データが記憶される。画像データとしては典型的には断層画像であり、ここではCT画像として説明する。操作部18を介してCT画像上の動脈瘤を含む局所範囲(ここでは関心領域ROIという)が操作者により処理対象として設定される。
【0012】
血管抽出部12は、断層画像の関心領域ROIに限局して血管壁領域を閾値処理等の任意の処理により抽出するとともに、抽出した血管壁領域から血管中心線を特定する。血管中心線は、断層像上において一方の側の血管壁の典型的には内壁と、相対する他方の側の血管壁の内壁とからの等距離点列として特定される。また血管抽出部12は、断層画像の関心領域ROIに限局してプラーク部と石灰部を、プラーク部と石灰部に特有の閾値を用いた閾値処理により抽出する。
【0013】
血管形態指標計算部13は、抽出された血管壁領域及び血管中心線に基づいて、動脈瘤のネック部分に関する血管の形態を表す指標(血管形態指標)を計算する。血管形態指標には、血管径の変化率、血管曲率、及び血管扁平率を血管中心線上であって一定距離ずつ隔てた複数の離散点について個々に算出する。血管径は、各離散点において血管中心線に直交する線と、両側の血管壁領域の内壁との交点間の距離をいう。血管径の変化率は、血管中心線上の各点を中心とした所定範囲内の最大血管径と最小血管径との差を例えば当該点における血管径で規格した値として計算される。血管曲率は、血管中心線上の複数点各々における血管中心線の曲率をいう。血管扁平率は、血管中心線上の複数点各々において血管中心線に直交する血管横断面上での最大血管径に対する最小血管径の割合をいう。なお、血管横断面の断層像は、図示しないMPR処理部により当該動脈瘤を含む範囲のボリュームデータからMPR(断面変換)により生成しても良いし、血管横断面の断層像データを外部システム20から供給を受けるようにしても良い。
【0014】
推奨/非推奨領域決定部14は、血管中心線上の複数の離散点から、血管径の変化率が第1の閾値を超過した点を抽出する。推奨/非推奨領域決定部14は、血管中心線上の複数の離散点から、血管曲率が第2の閾値を超過した点を抽出する。また推奨/非推奨領域決定部14は、血管中心線上の複数の離散点から、血管扁平率が第3の閾値を超過した点を抽出する。さらに推奨/非推奨領域決定部14は、これら血管径の変化率、血管曲率、血管扁平率の少なくとも一つがそれぞれの閾値を超過した点を非推奨点として抽出する。また抽出されたプラーク部と石灰部それぞれの端部から所定距離を半径とする球内に含まれる点を非推奨点として抽出する。
【0015】
推奨/非推奨領域決定部14は、抽出した複数の非推奨点が列を構成する範囲から非推奨領域を決定する。なお、非推奨領域は単一である場合もあるし、離散的な複数の非推奨点領域が決定される場合もある。推奨/非推奨領域決定部14は、推奨領域を決定する。推奨領域はネック部内の非推奨領域を除いた領域であって、血管径変化率が閾値未満であり、しかもステントグラフト端部の必要長に応じた閾値を超過する長さを有する領域として決定される。
【0016】
ステントグラフト留置支援制御部10の制御のもと、表示部19に、推奨領域と非推奨領域とをそれぞれ表す半透明のエリアマークが血管横断面の断層像に重ねて表示される。非推奨領域を表すエリアマークは、推奨領域を表すエリアマークと異なる表示態様、例えば異なるカラーを有する。操作者は画像上で推奨/非推奨領域を確認しながら、動脈瘤を挟んだ両側のネック部分それぞれの推奨領域内にステントグラフトの留置予定位置を指定する。ここではステントグラフトの留置予定位置とは、ステントグラフトの一方の端部の位置と、他方の端部の位置とをいう。
【0017】
ステントグラフト仕様決定部16は、ステントグラフトの留置予定位置と血管形態指標とに基づいて、当該動脈瘤治療のために要求されるステントグラフトに関する仕様を決定する。一般的にステントグラフトの仕様は、動脈瘤サイズ、ネック直径、最大曲率により与えられることが多い。ステントグラフト仕様決定部16は、両側の留置予定位置間の距離から”動脈瘤サイズ”を決定する。ステントグラフト仕様決定部16は、両側の留置予定位置における血管径から”ネック直径”を決定する。ステントグラフト仕様決定部16は、両側の留置予定位置間における血管曲率の最大値を”最大曲率”として決定する。
【0018】
ステントグラフト仕様決定部16は、デバイス管理情報記憶部15に予め記憶されている多くのステントグラフト製品に関する情報データベースを、決定されたステントグラフト仕様により検索し、当該ステントグラフト仕様に合致する仕様を備えた少なくとも一つのステントグラフト製品を抽出する。
【0019】
エンドリーク撮影アングル決定部17は、ステントグラフトが留置される予定位置において、ステントグラフトの両端における血管壁との接触範囲のなかで最もエンドリークが発生する可能性の高い位置と、その位置でのエンドリークの発生を最も視認容易な撮影アングルを決定する。具体的には、ステントグラフトの両端における血管壁との接触範囲のなかで最も高い血管扁平率を示す点を特定する。当該点を撮影視野の中心として決定する。また、最も高い血管扁平率を示す点を通る最長の直径と、当該点で交差する当該点付近での血管中心線分とにより決まる面に対して直交する方向を、撮影アングルとして決定する。
【0020】
表示部19は、非推奨領域/推奨領域の範囲を表すエリアマークを、画像記憶部11に記憶されたCT画像データ又は、当該ステントグラフト留置支援装置9が組み込まれたアンギオX線診断装置で発生されたライブ画像に重ねて表示する。エリアマークの表示態様の具体例は後述する。医師はステントグラフト留置予定処置の計画段階で、非推奨領域/推奨領域をCT画像上で動脈瘤及びその近傍の血管部分の形態を視認してステントグラフトの留置予定位置を決定することができ、またステントグラフトを留置処置中の施術段階で、ライブ画像上で非推奨領域/推奨領域とともに視認しながらステントグラフトを留置する施術を実行することができる。
【0021】
ステントグラフト留置支援装置9は、当該ステントグラフト留置支援装置9が組み込まれたアンギオX線診断装置以外の医用画像撮影装置で発生され、外部システムに保管されている当該被検体に関する過去の画像データからステントグラフト留置支援情報を発生するものであってもよい。過去の画像データとしては、例えば、外部システム20の病院情報システム22から当該病院内のLANネットワーク21を介して供給され得る画像データ、メモリカード等の記録メディア23から画像データ転送部24を介して供給された画像データから、ステントグラフト留置支援装置9は、ステントグラフト留置支援情報を発生してもよい。画像としても、X線画像、CT画像、MRI画像、その他のモダリティにより発生された画像であってもよい。
【0022】
デバイス管理情報記憶部15は、インターネット又は記録メディア23を介して供給された、多種多様な複数のステントグラフト製品に関するデバイス管理情報を記憶する。デバイス管理情報は、複数のステントグラフト提供業者から提供されている多種多様なステントグラフト製品(デバイスという)の型番、形状、サイズ等の仕様に関する情報を含んでいる。ステントグラフト仕様決定部16は、操作部18を介して入力される操作者指示に従って設定されるステントグラフトの留置予定位置の両端部分における血管径と両端部分の最大曲率と両端部分の間の長さに応じたステントグラフトに必要とされる太さ、曲率、長さに関する仕様を決定するとともに、当該仕様を満たすデバイス(ステントグラフト製品)をデバイス管理情報から抽出する。そのリストは表示部19に表示される。
【0023】
図2には、本実施形態におけるステントグラフト留置予定位置の決定支援処理の手順を示している。当該支援処理の最終的な目的は、ステントグラフト留置位置として推奨される推奨領域を示すエリアマークと、ステントグラフト留置位置として推奨されない非推奨領域を示すエリアマークとを断層像に重ねて表示すること、ステントグラフト留置予定位置に対応するステントグラフト製品のデバイス情報を提供することにある。さらに術後において、エンドリークの発生有無の確認に好適な撮影アングルを提供する。
【0024】
まず図5に示す通り、操作者による操作部18の操作により、表示部19に表示された対象血管の縦断面に関するCT画像の一部に関心領域ROIが設定される(S101)。ステントグラフト留置予定位置の決定支援の処理対象が関心領域ROIに限定される。次の工程S102において、図6に示す通り、血管抽出部12により、断層画像の関心領域ROIに限局して血管壁領域が閾値処理により抽出される。血管抽出部12により、対向する血管壁領域から等距離にある点列として、血管中心線が特定される。血管抽出部12により、断層画像の関心領域ROIに限局してプラーク部と石灰部とが、プラーク部と石灰部に特有の閾値を用いた閾値処理により抽出される。工程S103において、血管抽出部12により、抽出された血管壁領域に対して例えばパターン認識により動脈瘤領域が特定される(図7)。
【0025】
次に、図8に示すように、血管形態指標計算部13により、抽出された血管壁領域及び血管中心線に基づいて、動脈瘤領域以外の血管壁領域又は血管中心線上の離散的な多点各々において、血管径の変化率、血管曲率、及び血管扁平率が計算される(S105)。上述したとおり、血管径は、各離散点において血管中心線に直交する線と、両側の血管壁領域の内壁との交点間の距離として計算される。血管径の変化率は、血管中心線上の各点を中心とした所定範囲内の最大血管径と最小血管径との差を例えば当該点における血管径で規格した値として計算される。血管曲率は、血管中心線上の複数点各々における血管中心線の曲率として計算される。血管扁平率は、血管中心線上の複数点各々において血管中心線に直交する血管横断面上での最大血管径に対する最小血管径の割合として計算される。
【0026】
これら計算された血管形態指標に基づいて、推奨/非推奨領域決定部14によりステントグラフト留置位置として推奨される領域(推奨領域)と推奨されない領域(非推奨領域)とが決定される(S106)。具体的には、図9に示すように、血管中心線上の複数の離散点から、血管径の変化率、血管曲率、血管扁平率の中の少なくとも一つがそれぞれに対して既定されている閾値を超過した点が非推奨点として抽出される。加えて、抽出されたプラーク部と石灰部それぞれの端部から所定距離を半径とする球内に含まれる点が非推奨点として抽出される。なお、血管径の変化率、血管曲率、血管扁平率それぞれに対する閾値は操作者が任意に変更可能である(S107)。
【0027】
抽出された非推奨点の点列範囲に従って、推奨/非推奨領域決定部14により、一つ又は2以上の非推奨領域が決定される(S108)。また推奨/非推奨領域決定部14により、ネック部内の非推奨領域を除いた領域であって、血管径変化率と曲率とがそれぞれの閾値未満であり、しかもステントグラフト端部の必要長に応じた閾値を超過する長さを有する領域が推奨領域として決定される(S109)。
【0028】
図10図11図12に示すように、ステントグラフト留置支援制御部10の制御のもと、表示部19に、非推奨領域を表す半透明のエリアマークが血管横断面の断層像に重ねて表示される(S110)。必要に応じて非推奨領域を表すエリアマークとともに推奨領域を表すエリアマークが表示される。この場合、非推奨領域を表すエリアマークは、推奨領域を表すエリアマークと異なる表示態様、典型的には異なるカラーで表示される。操作者は画像上で推奨/非推奨領域を確認しながら操作部18を操作して、動脈瘤を挟んだ両側のネック部分それぞれの推奨領域内にステントグラフトの留置予定位置を指定する(S111)。実際に医師がステントグラフトの留置処置をX線画像透視下で行っている際、そのリアルタイム透視像には非推奨領域を表すエリアマークが重ねられる。必要に応じて推奨領域を表すエリアマークもリアルタイム透視像に重ねられる(S112)。
【0029】
図3には、ステントグラフト仕様決定部16によるステントグラフト仕様決定処理が示されている。ステントグラフトの留置予定位置と血管形態指標とに基づいて、当該動脈瘤治療のために要求されるステントグラフトに関する仕様が決定される(S201)。決定される仕様には、動脈瘤サイズ、ネック直径、最大曲率が含まれる。ステントグラフト仕様決定部16により、両側の留置予定位置間の距離、又はパターン認識により特定された動脈瘤領域の直径から”動脈瘤サイズ”が決定される。ステントグラフトの両側端の留置予定位置における血管径、平均径又は最大径から”ネック直径”が決定される。ステントグラフトの留置予定位置間における血管曲率の最大値が”最大曲率”として決定される。
【0030】
ステントグラフト仕様決定部16により、決定されたステントグラフトの仕様に基づいて、デバイス管理情報記憶部15に予め記憶されている多くのステントグラフト製品に関する情報データベースが検索される。それにより、決定されたステントグラフトの仕様を満たす少なくとも一つのステントグラフト製品が決定され、決定されたステントグラフト製品情報が一覧で表示部19に表示される(S202)。例えば、ステントグラフト製品情報として、メーカー名、適応の動脈瘤サイズ、ネック直径、最大曲率が表示される。
【0031】
ステントグラフト留置完了後にはその経過観察が必要とされる。その経過観察で最も重要なのがエンドリークの発生の有無を確認することにある。エンドリークの発生の有無を確認するのに最も好適な図15に例示する撮影アングルがエンドリーク撮影アングル決定部17により決定される。この決定は、ステントグラフト留置前における留置支援段階で留置支援とともに実行しても良いし、エンドリークの発生確認直前に実行しても良い。ここでは後者として説明する。
【0032】
図14に示す通りエンドリークの発生可能性はステントグラフトと血管壁との間の隙間(射線)が最も大きい箇所で最も高い。図4に示すように、まず、S301において、ステントグラフトの留置位置において、最新のCT画像から、ステントグラフトの両端が血管壁と接触するネック部内範囲のなかで最も高い血管扁平率を示す位置が特定される(図13)。次にS302において、図16図17に示すように、最も高い血管扁平率を示す点を通る最長の直径と、当該点で交差する当該点付近での血管中心線分とにより決まる面に対して直交する方向を、撮影アングルとして決定する。
【0033】
この決定された撮影アングルに従ってCアームがシステム制御部8の制御のもとで移動される(S303)。この撮影アングルで造影検査が実行される(S304)。
【0034】
以上の通り本実施形態により、留置位置決定の支援を行うことで、エンドリーク発生率の減少、ユーザーの負担減および手術時間の短縮、被曝量の低減および造影剤使用量の減少が期待できる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0036】
1…Cアーム、3…X線管、4…X線絞り部、5…高電圧発生器、6…X線平面検出器、7…画像メモリ、9…ステントグラフト留置支援装置、10…ステントグラフト留置支援制御部、11…画像記憶部、12…血管抽出部、13…血管形態指標計算部、14…推奨/非推奨領域決定部、15…デバイス管理情報記憶部、16…ステントグラフト仕様決定部、17…エンドリーク撮影アングル決定部、18…操作部、19…表示部。
図1
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