(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931610
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】樹脂成形品の成形方法及び成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/12 20060101AFI20160526BHJP
B29C 51/30 20060101ALI20160526BHJP
B29C 51/36 20060101ALI20160526BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20160526BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
B29C51/12
B29C51/30
B29C51/36
B29C51/10
!B60R16/02 623T
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-148349(P2012-148349)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-8732(P2014-8732A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅寛
(72)【発明者】
【氏名】下地 映次
(72)【発明者】
【氏名】中村 悟朗
【審査官】
向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−240056(JP,A)
【文献】
特開2002−018939(JP,A)
【文献】
特開2007−295721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00〜51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートが載置され、所望形状の成形面を有する型部と、前記型部に設けられ、シート固定部を上面としてクランプを位置決め状態で収容するクランプ固定穴と、前記成形面及び前記クランプ固定穴に開口し、空気を吸引する吸引穴とを備えた成形装置を使用し、
前記クランプ固定穴に前記シート固定部を上面として前記クランプを収容すると共に加熱された前記樹脂シートを前記成形面に配置し、前記吸引穴より空気を吸引し、前記樹脂シートを吸引して所望の形態に成形すると共に、前記シート固定部の下面側に前記樹脂シートの回り込みによる樹脂固定部を成形することを特徴する樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記型部は、前記クランプ固定穴の外周に連続して配置され、前記クランプ固定穴に収容された前記クランプの前記シート固定部に覆われない開口を形成する補助穴を備え、
前記補助穴の前記開口より前記クランプ固定穴への吸引を補助することを特徴する樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
請求項2記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記型部は、前記補助穴の外周に配置され、空気を吸引する空気溜り吸引穴を備え、
前記シート固定部の周辺の空気を前記空気溜り吸引穴によって吸引することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記クランプ固定穴は、前記クランプの前記シート固定部の上面が周囲の前記成形面の高さとほぼ面一になる深さに設定され、
前記シート固定部の上面を覆う前記樹脂シートの箇所と前記シート固定部の外周に配置される前記樹脂シートの箇所の高さがほぼ面一に成形することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
樹脂シートが載置され、所望形状の成形面を有する型部と、
前記型部に設けられ、シート固定部を上面としてクランプを位置決め状態で収容するクランプ固定穴と、
前記成形面及び前記クランプ固定穴に開口し、空気を吸引する吸引穴とを備え、
前記吸引穴より空気を吸引し、この吸引力で前記樹脂シートを所望形状に成形すると共に、前記クランプの前記シート固定部の下面側に前記樹脂シートの回り込みによる樹脂固定部を成形することを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス用プロテクタ等の樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両等に配置されるワイヤーハーネス用プロテクタ等が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
かかるワイヤーハーネス用プロテクタの一従来例として、
図23(a)、(b)に示すものがある。ワイヤーハーネス用プロテクタ100は、車両用のワイヤハーネス101の保持及び保護を行う。ワイヤーハーネス用プロテクタ100は、樹脂製のプロテクタ基部110と、プロテクタ基部110の上部に重ね合わされる樹脂製のカバー120とを備えている。これらのプロテクタ基部110とカバー120は、それぞれ真空成形工法等により成形され、組み付け状態で重なり合って配置されるフランジ部111,121をそれぞれ備えている。これらの重なり合ったフランジ部111,121の貫通穴112,122にクリップやボルトなどの締結部品(図示せず)を挿入して固定部材(図示せず)に固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−317529号公報
【特許文献2】特開2008−14643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、プロテクタ基部110及びカバー120の外周に設けた貫通穴112,122にクリップやボルトなどの締結部品を挿入し、この締結部品を介して車体に固定する際、作業者が片手で締結部品を保持する必要があり、プロテクタ基部110及びカバー120の車体組付け作業に面倒な手間を要するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、作業者が面倒な手間を要せずに、固定部材に容易に組み付けることができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂成形品の成形方法は、樹脂シートが載置され、所望形状の成形面を有する型部と、前記型部に設けられ、シート固定部を上面としてクランプを位置決め状態で収容するクランプ固定穴と、前記成形面及び前記クランプ固定穴に開口し、空気を吸引する吸引穴とを備えた成形装置を使用し、前記クランプ固定穴に前記シート固定部を上面として前記クランプを収容すると共に加熱された前記樹脂シートを前記成形面に配置し、前記吸引穴より空気を吸引し、前記樹脂シートを吸引して所望の形態に成形すると共に、前記シート固定部の下面側に前記樹脂シートの回り込みによる樹脂固定部を成形することを特徴する。
【0008】
前記型部は、前記クランプ固定穴の外周に連続して配置され、前記クランプ固定穴に収容された前記クランプの前記シート固定部に覆われない開口を形成する補助穴を備え、前記補助穴の前記開口より前記クランプ固定穴への吸引を補助することが好ましい。前記型部は、前記補助穴の外周に配置され、空気を吸引する空気溜り吸引穴を備え、前記シート固定部の周辺の空気を前記空気溜り吸引穴によって吸引することが好ましい。前記クランプ固定穴は、前記クランプの前記シート固定部の上面が周囲の前記成形面の高さとほぼ面一になる深さに設定され、前記シート固定部の上面を覆う前記樹脂シートの箇所と前記シート固定部の外周に配置される前記樹脂シートの箇所の高さがほぼ面一に成形することが好ましい。
【0009】
他の本発明の樹脂成形品の成形装置は、樹脂シートが載置され、所望形状の成形面を有する型部と、前記型部に設けられ、シート固定部を上面としてクランプを位置決め状態で収容するクランプ固定穴と、前記成形面及び前記クランプ固定穴に開口し、空気を吸引する吸引穴とを備え、前記吸引穴より空気を吸引し、この吸引力で前記樹脂シートを所望形状に成形すると共に、前記クランプの前記シート固定部の下面側に前記樹脂シートの回り込みによる樹脂固定部を成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂成形品にはクランプが一体に設けられるため、クランプを介して樹脂成形品を車両等に固定可能であり、作業者は面倒な手間を要せずに、固定部材に容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態を示し、ワイヤーハーネス用プロテクタの成形装置の断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)〜(e)はそれぞれワイヤーハーネス用プロテクタの成形工程を説明する図である。
【
図3】本発明の第1実施形態を示し、真空成形工法を説明する図で、(a)はシート加熱工程、(b)はシート成形前の状態、(c)はシート成形後の状態、(d)は離型工程、(e)は加工工程、(f)は完成品をそれぞれ示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態を示し、ワイヤーハーネス用プロテクタの成形装置の平面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態を示し、ワイヤーハーネス用プロテクタの成形装置の斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態を示し、型部の平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態を示し、型部の斜視図である。
【
図8】本発明の第2実施形態を示し、(a)〜(d)はそれぞれワイヤーハーネス用プロテクタの成形工程を説明する図である。
【
図9】本発明の第3実施形態を示し、ワイヤーハーネス用プロテクタの成形装置の平面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態を示し、
図9のX−X線に沿う断面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態を示し、ワイヤーハーネス用プロテクタの成形装置の斜視図である。
【
図12】本発明の第3実施形態を示し、型部の平面図である。
【
図13】本発明の第3実施形態を示し、
図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態を示し、型部の斜視図である。
【
図15】本発明の第3実施形態を示し、(a)〜(d)はそれぞれワイヤーハーネス用プロテクタの成形工程を説明する図である。
【
図16】本発明の第4実施形態を示し、ワイヤーハーネス用プロテクタの成形装置の平面図である。
【
図17】本発明の第4実施形態を示し、
図16のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【
図18】本発明の第4実施形態を示し、ワイヤーハーネス用プロテクタの成形装置の斜視図である。
【
図19】本発明の第4実施形態を示し、型部の平面図である。
【
図20】本発明の第4実施形態を示し、
図19のXX−XX線に沿う断面図である。
【
図21】本発明の第4実施形態を示し、型部の斜視図である。
【
図22】本発明の第4実施形態を示し、(a)〜(d)はそれぞれワイヤーハーネス用プロテクタの成形工程を説明する図である。
【
図23】従来例を示し、(a)はワイヤーハーネス用プロテクタの組立斜視図、(b)はワイヤーハーネス用プロテクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1〜
図3は本発明の第1実施形態を示す。
図1に示ように、樹脂成形品であるワイヤーハーネス用プロテクタ1は、樹脂シート11より所望形態に成形されたプロテクタ本体11Aと、プロテクタ本体11Aに一体に固定されたクランプ12とを備えている。このクランプ12は、樹脂シート11が固定されるシート固定部13と、このシート固定部13から下方に突出し、図示しない車体などに係止可能なクリップ部14とを有している。シート固定部13の下面側には、真空成形時に樹脂シート11の回り込みにより樹脂固定部15が成形される。
【0014】
次に、ワイヤーハーネス用プロテクタ1を成形する成形装置2Aを説明する。成形装置2Aは、樹脂シート11が載置され、所望形状の成形面41を有する型部4を有する。この型部4には、シート固定部13を上面としてクランプ12を位置決め状態で収容するクランプ固定穴43と、成形面41及びクランプ固定穴43に開口し、空気を吸引する複数の吸引穴42とを有する。
【0015】
ワイヤーハーネス用プロテクタ1の成形方法(クランプ12箇所の成形については、下記する)を説明する。
図3(a)に示すシート加熱工程で、樹脂シート11の上下に配置される一対のヒータ3により樹脂シート11を加熱した後、
図3(b)に示すように、樹脂シート11を型部4の成形面41上にセットして、型部4で樹脂シート11を押圧し、
図3(c)に示す真空吸引工程で、型部4により押圧した状態で吸引穴42を介して樹脂シート11を吸引することにより所望の形状に成形する。次いで、
図3(d)に示すように、樹脂シート11から型部4を離脱させて、
図3(e)に示す加工工程で、樹脂シート11を破線Lで示す箇所で切断加工して、
図3(f)に示すように、完成品であるワイヤーハーネス用プロテクタ1を得るようになっている。
【0016】
次に、ワイヤーハーネス用プロテクタ1のクランプ12箇所の成形方法を説明する。クランプ12は、加熱した樹脂シート11を型部4の成形面41上にセットする工程から樹脂シート11から型部4を離脱させる工程にあって、プロテクタ本体11Aに一体成形する。
【0017】
すなわち、
図2(a)に示すセット工程では、クランプ12のシート固定部13を型部4のクランプ固定穴43に位置決め固定し、
図2(b)に示すシート移動工程では、加熱した樹脂シート11を移動させて、
図2(c)に示す押圧工程では、型部4の成形面41及びクランプ12のシート固定部13に上方から樹脂シート11を押し当て、
図2(d)に示す真空吸引工程では、吸引穴42を介して樹脂シート11を吸引することにより、成形面41で所望の形状に成形すると共に、クランプ固定穴43への吸引によってクランプ12のシート固定部13の下面側(一体成形工程での向き)に樹脂シート11が回り込む。この回り込んだ樹脂によって樹脂固定部15が成形される。
図2(e)に示す離型工程では、クランプ12と一体化した樹脂シート11から型部4を離脱させて、所定箇所で切断加工して完成品であるワイヤーハーネス用プロテクタ1を得る。
【0018】
以上説明したように、ワイヤーハーネス用プロテクタ1にはクランプ12が一体に設けられるため、クランプ12のクリップ部14を介してワイヤーハーネス用プロテクタ1を車両等に固定可能であり、作業者は面倒な手間を要せずに、図示しない固定部材に容易に組み付けることができる。
【0019】
(第2実施形態)
前述の第1実施形態に対して、第2実施形態の成形装置2Bの大きく異なる点は、
図4〜
図8に示すように、補助穴44が付加された点である。つまり、型部4は、クランプ固定穴43の上部の周辺に配置された補助穴44を有する。補助穴44は、クランプ固定穴43に収容されたクランプ12のシート固定部13に覆われない開口44aを形成する。
【0020】
具体的には、クランプ12のシート固定部13は、上方から見て略小判状に形成され、互いに平行な一対の端部13a,13bを有する。補助穴44は、上方から見て正方形状に形成され、各辺の長さがシート固定部13の短幅寸法より少し大きく設定されている。これにより、補助穴44とシート固定部13の一対の端部13a,13bとの間には上方から見て一対の開口44aが形成される。真空吸引時に補助穴44の開口44aが樹脂シート11を吸引するシート吸引スペースとして機能する。
【0021】
補助穴44の四隅にも、吸引穴42が開口されている。
【0022】
尚、第2実施形態において第1実施形態と同様の構成には同一符号が付されている。
【0023】
上記した構成では、補助穴44の開口44aからもクランプ固定穴43に吸引するため、吸引力がその分強くなる。これにより、シート固定部13の下面と成形面41に挟まれた領域(
図4のA部及びB部)には、強力な吸引力が発生し、シート固定部13の下面には確実に樹脂シート11が回り込む。
【0024】
本実施形態にあっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態では、型部4の補助穴44によりシート固定部13の端部13a,13bの外側に形成される開口(シート吸引スペース)44aを介して樹脂シート11の吸引を補助するので、クランプ12のシート固定部13の下面側に樹脂シート11が確実に回り込み、樹脂シート11をシート固定部13と確実に一体化させることができる。つまり、樹脂シート11がシート固定部13の下面側に回り込まないことに起因する品質低下を防止できる。
【0025】
(第3実施形態)
前述の第1実施形態に対して、第3実施形態の成形装置2Cの大きく異なる点は、
図9〜
図15に示すように、補助穴45と空気溜り吸引穴46が付加された点である。つまり、型部4は、クランプ固定穴43の上部の周辺に配置された補助穴45と、補助穴45の更に外周に配置され、空気を吸引する空気溜り吸引穴46とを有する。補助穴45は、前記第2実施形態と異なり、円形である。補助穴45は、前記第2実施形態と同様に、クランプ固定穴43に収容されたクランプ12のシート固定部13に覆われない開口45aを形成する。真空吸引時に補助穴45の開口45aが樹脂シート11を吸引するシート吸引スペースとして機能する。
【0026】
空気溜り吸引穴46は、補助穴45の外周位置で、円周方向に間隔を置いて複数設けられている。空気溜り吸引穴46は、クランプ12がセットされた状態で、シート固定部13の周囲の空気を吸引する。
【0027】
上記した構成では、補助穴45の開口45aからもクランプ固定穴43に吸引するため、吸引力がその分強くなる。これにより、シート固定部13の下面と成形面41に挟まれた領域(
図9のC部及びD部)には、強力な吸引力が発生し、シート固定部13の下面には確実に樹脂シート11が回り込む。又、シート固定部13の周辺箇所が空気溜り吸引穴46によって吸引されるため、クランプ12のシート固定部13と樹脂シート11間に空気溜りが形成されるのを防止できる。
【0028】
尚、第3実施形態において第1実施形態と同様の構成には同一符号が付されている。
【0029】
本実施形態にあっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態では、型部4の補助穴45によりシート固定部13の端部13a,13bの外側に形成される開口(シート吸引スペース)45aを介して樹脂シート11の吸引を補助するので、クランプ12のシート固定部13の下面側に樹脂シート11が確実に回り込む。又、シート固定部13の周辺箇所が空気溜り吸引穴46によって吸引される。これにより、シート固定部13と樹脂シート11間に空気溜りが形成されることに起因する保持力低下を防止できる。以上より、シート固定部13の下面側に樹脂シート11が確実に回り込み、樹脂シート11をシート固定部13によりより強固な保持力で一体化させることができる。
【0030】
(第4実施形態)
前述の第3実施形態に対して、第4実施形態の成形装置2Dの大きく異なる点は、
図16〜
図22に示すように、クランプ固定穴43の深さ寸法と補助穴45の左右幅寸法と空気溜り吸引穴46の位置である。
【0031】
つまり、クランプ固定穴43は、クランプ12のシート固定部13の上面が周囲の成形面41の高さとほぼ面一になる深さに設定されている。
【0032】
補助穴45は、クランプ12を収容した場合に、そのシート固定部13が入り込む左右幅寸法に設定されている。具体的には、補助穴45は、上方から見て略小判形状のシート固定部13と同形で、且つ、シート固定部13より若干大きく形成されている。これにより、クランプ12のシート固定部13は、補助穴45の内壁面との間に全周に亘って開口(隙間)が形成された状態で完全に収容される。
【0033】
空気溜り吸引穴46は、補助穴45の内壁面及びその近傍外周に開口するように配置されている。これにより、空気溜り吸引穴46は、シート固定部13の周辺箇所の空気を吸引する。
【0034】
尚、第4実施形態において第3実施形態と同様の構成には同一符号が付されている。
【0035】
上記構成では、シート固定部13の上面を覆う樹脂シート11の箇所とシート固定部13の外周に配置される樹脂シート11の箇所の高さがほぼ面一に成形される。これにより、クランプ12のシート固定部13が他の箇所よりも突出せずに面一となるため、例えば当該箇所の上面が電線スペースとして利用される場合に、電線スペースが狭くなるのを防止できる。
【0036】
上記各実施形態では、樹脂成形品は、ワイヤーハーネス用プロテクタ1であるが、本発明は、クランプ12によって固定部材に固定する樹脂成形品であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ワイヤーハーネス用プロテクタ(樹脂成形品)
2A〜2D 成形装置
4 型部
11 樹脂シート
12 クランプ
13 シート固定部
15 樹脂固定部
41 成形面
42 吸引穴
43 クランプ固定穴
44,45 補助穴
46 空気溜り吸引穴