特許第5931636号(P5931636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5931636燃焼器ノズル組体、これを備えている燃焼器及びガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931636
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】燃焼器ノズル組体、これを備えている燃焼器及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20160526BHJP
   F02C 7/232 20060101ALI20160526BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20160526BHJP
   F02C 7/20 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   F23R3/28 B
   F02C7/232 B
   F23R3/28 A
   F23R3/42 D
   F02C7/20 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-168535(P2012-168535)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-25680(P2014-25680A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】寺田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 史
(72)【発明者】
【氏名】高見 英治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健司
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−106528(JP,A)
【文献】 特開平6−34135(JP,A)
【文献】 特開平10−26352(JP,A)
【文献】 特開2008−190402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/28−3/36,
3/42
F02C 7/20,7/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン車室に形成されている燃焼器挿入開口を塞ぐノズル取付基体と、
筒状を成して前記ノズル取付基体を貫通し、前記タービン車室の内側に棒先端部が突出すると共に該タービン車室の外側に棒基端部が突出するノズル棒と、
管状を成して前記ノズル棒内に全体が挿入され、管先端部が前記ノズル棒における前記棒先端部に固定され、管基端部が前記ノズル棒の前記棒基端部内に挿入され、該棒基端部を介して燃料が内部に供給され、該管先端部から前記ノズル棒の前記棒先端部を経て該燃料を噴射する燃料管と、
前記ノズル棒の前記棒基端部内であって、該ノズル棒の内周側と前記燃料管の外周側との間で、前記管先端部側への前記燃料の漏れを抑えるシール部材と、
を備えていることを特徴とするガスタービンの燃焼器ノズル組体。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンの燃焼器ノズル組体において、
前記ノズル棒は、前記ノズル取付基体中に位置する取付部と、該取付部と前記棒基端部との間であって、該ノズル棒が延びている方向に対して垂直な断面における断面積が、該取付部の最大断面積よりも小さい断面積減少部と、を有する、
ことを特徴とするガスタービンの燃焼器ノズル組体。
【請求項3】
請求項2に記載のガスタービンの燃焼器ノズル組体において、
前記ノズル棒の前記断面積減少部は、燃焼器外部に露出している、
ことを特徴とするガスタービンの燃焼器ノズル組体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービンの燃焼器ノズル組体において、
前記ノズル棒の前記棒基端部は、燃焼器外部に露出している、
ことを特徴とするガスタービンの燃焼器ノズル組体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンの燃焼器ノズル組体において、
前記ノズル棒の前記棒基端部に接続され、該棒基端部を介して前記燃料を前記燃料管内に供給する燃料受入管を備えている、
ことを特徴とする燃焼器ノズル組体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービンの燃焼器ノズル組体と、
前記燃焼器ノズル組体の前記ノズルから噴射された燃料が燃焼することで生成された燃焼ガスをタービンに導く尾筒と、
を備えていることを特徴とするガスタービンの燃焼器。
【請求項7】
請求項6に記載の燃焼器と、
前記燃焼器からの前記燃焼ガスで回転するタービンロータと、
前記タービンロータを覆うと共に、前記燃焼器が取り付けられる前記タービン車室と、
を備えていることを特徴とするガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を噴射する燃焼器ノズル組体、これを備えている燃焼器及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの燃焼器は、ガスタービンの圧縮機からの圧縮空気中に燃料を噴射するノズルを有するノズル組体と、ノズルから噴射された燃料がこの圧縮空気に混合されて燃焼することで生成された高温ガスをタービンに導く尾筒と、を備えている。本発明はこれに限定されるものではないが、ノズルには、燃料油と燃料ガスの双方を噴射する、いわゆるデュアルノズルと呼ばれるものがある。
【0003】
デュアルノズルは、例えば、以下の特許文献1の図5に示されているように、二重管構造を成しており、筒状のノズル棒と、このノズル棒内に配置されている管状の油燃料管と、を有している。このノズル棒には、油燃料管が挿入される管挿入空間よりも外周側の部分にガス燃料が通るガス燃料流路が形成されている。また、このノズル棒は、ガスタービン車室に形成されている燃焼器挿入口を塞ぐノズル取付基体に固定されている。油燃料管は、その管先端部がノズル棒の棒先端部に固定されている。この油燃料管の管基端部は、ノズル棒の棒基端部及びノズル取付基体から突出しており、ノズル取付基体に固定されている油マニホールド内に挿入されている。油燃料は、この油マニホールド内に供給され、そこから油燃料管内に流れ込む。
【0004】
このデュアルノズルから油燃料を噴射して、この油燃料を燃焼させている際(油焚き運転)、油燃料管は、この中を流れる油燃料により冷却される。一方で、ノズル棒は、ガスタービンの圧縮機からの圧縮空気の流れに曝されているため、この圧縮空気によって加熱される。このため、油燃料管とノズル棒との温度は、ガスタービンの停止時には均一であるが、ガスタービンを油焚き運転しているときには、ノズル棒の温度が油燃料管の温度に対して相対的に高くなる。この温度差により油燃料管とノズル棒との間での熱伸び差が生じる。
【0005】
また、デュアルノズルからガス燃料を噴射して、このガス燃料を燃焼させている際(ガス焚き運転)、油燃料管は、油燃料により冷却されない。そのため、油燃料管はノズル棒の温度に近い温度になり、油燃料を燃焼させているときよりも高温になる。しかしながら、油燃料管の温度は、直接に圧縮空気の流れに曝されているノズル棒の温度ほどは上昇しない。よって、ガスタービンのガス焚き運転時とでも、油燃料管とノズル棒との間の温度差が生じ、これにより油燃料管とノズル棒との間での熱伸び差が生じる。
【0006】
このように、油燃料管とノズル棒との間での熱伸び差が生じるため、油燃料管の管先端部は、ノズル棒の棒先端部に固定されているものの、油燃料管の管基端部は、油マニホールドに対して相対移動可能にこの油マニホールド内に挿入されている。油燃料管の管基端部の外周と油マニホールドの内面との間には、油燃料配管の伸び差を許容しつつも、この間からの油燃料の漏れを抑えるために、Oリングが配置されている。
【0007】
ところで、以上で説明したデュアルノズルでは、ガスタービン車室内の熱がノズル取付基体及び油マニホールドを介して、Oリングや油燃料棒の棒基端部に伝わり易い。このため、Oリングは、この熱により短期間のうちに損傷してしまうことがある。
【0008】
そこで、特許文献1では、同文献1の図2及び図3に示すように、ノズル取付基体から油マニホールドを離間させると共に、ノズル取付基体からの油燃料管の突出量を大きくして、この油燃料管の管基端部を油マニホールド内に挿入することを提案している。さらに、特許文献1では、Oリングの損傷による油燃料漏れを防ぐために、油マニホールド内であって、Oリングを基準として、油燃料管の管先端部側に漏油回収室を設けることも提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−190402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載の技術では、確かに、Oリングへの伝熱量が少なくなるため、短期間でのOリングの損傷を防ぐことができる上に、仮に、Oリングが損傷しても漏油回収室があるため、外部への油燃料漏れを防ぐことができる。しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、漏油回収室を設けていることにより油マニホールドの構造が複雑になる上に、この油マニホールドを支持する支持具が別途必要になり、製造コストがかさむという問題点がある。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題点に着目し、製造コストを抑えつつも、外部への燃料漏洩を防ぐことができる燃焼器ノズル組体、これを備えている燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するための発明に係る燃焼器ノズル組体の一態様は、
タービン車室に形成されている燃焼器挿入開口を塞ぐノズル取付基体と、筒状を成して前記ノズル取付基体を貫通し、前記タービン車室の内側に棒先端部が突出すると共に該タービン車室の外側に棒基端部が突出するノズル棒と、管状を成して前記ノズル棒内に全体が挿入され、管先端部が前記ノズル棒における前記棒先端部に固定され、管基端部が前記ノズル棒の前記棒基端部内に挿入され、該棒基端部を介して燃料が内部に供給され、該管先端部から前記ノズル棒の前記棒先端部を経て該燃料を噴射する燃料管と、前記ノズル棒の前記棒基端部内であって、該ノズル棒の内周側と前記燃料管の外周側との間で、前記管先端部側への前記燃料の漏れを抑えるシール部材と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
当該燃焼器ノズル組体では、タービン車室の外側に突出しているノズル棒の棒基端部内にシール部材を配置しているので、ノズル取付基体等から熱によるシール部材の加熱を抑えることができる。よって、当該燃焼器ノズル組体では、熱によるシール部材の損傷を抑えることができる。
【0014】
さらに、当該燃焼器ノズル組体では、ノズル棒内に燃料管全体が挿入されているので、ノズル棒の内周側と燃料管の外周側との間で管先端部側への燃料の漏れを抑えるシール部材が損傷しても、この燃料は、ノズル棒の内周面と燃料棒の外周面との間に流れ込むため、燃料の漏洩を防ぐことができる。よって、当該燃焼器ノズル組体では、漏油回収室が形成されている複雑な形状の油マニホールドやその支持具が不要になるので、製造コストを抑えることができる。
【0015】
ここで、前記燃焼器ノズル組体において、前記ノズル棒は、前記ノズル取付基体中に位置する取付部と、該取付部と前記棒基端部との間であって、該ノズル棒が延びている方向に対して垂直な断面における断面積が、該取付部の最大断面積よりも小さい断面積減少部と、を有していてもよい。
【0016】
当該燃焼器ノズル組体におけるノズル棒の棒基端部は、ノズル取付基体中に位置する取付部との間に断面積減少部が介在するため、ノズル取付基体から比較的離れた位置に存在する。このため、ノズル棒の棒基端部は、ノズル取付基体から受ける熱を少なくすることができる。また、ノズル棒の断面積減少部の断面積がノズル棒の取付部の最大断面積よりも小さいため、ノズル取付基体等から棒基端部への伝熱経路における熱抵抗が増大する。このため、当該燃焼器ノズルでは、熱による棒基端部内のシール部材の損傷を抑えることができる。
【0017】
ここで、前記ノズル棒が前記断面積減少部を有する前記燃焼器ノズル組体において、前記ノズル棒の前記断面積減少部は、燃焼器外部に露出していることが好ましい。
【0018】
当該燃焼器ノズル組体では、ノズル棒の取付部と棒基端部との間の断面積減少部が燃焼器外部に露出しているため、取付部からの断面積減少部に伝わった熱を燃焼器外部へ放出することができる。よって、当該燃焼器ノズル組体では、断面積減少部から棒基端部へ伝わる熱を少なくすることができ、シール部材の高温化による損傷を抑えることができる。
【0019】
また、以上のいずれかの前記燃焼器ノズル組体において、前記ノズル棒の前記棒基端部は、燃焼器外部に露出していてもよい。
【0020】
当該燃焼器ノズル組体では、棒基端部に伝わった熱を燃焼器外部へ放出することができる。よって、当該燃焼器ノズル組体では、棒基端部からシール部材へ伝わる熱を少なくすることができ、シール部材の高温化による損傷を抑えることができる。
【0021】
また、以上のいずれかの前記燃焼器ノズル組体において、前記ノズル棒の前記棒基端部に接続され、該棒基端部を介して前記燃料を前記燃料管内に供給する燃料受入管を備えていてもよい。
【0022】
ノズル棒の棒基端部を介して燃料を燃料管内に供給する場合、棒基端部を燃料供給用マニホールドで覆う方法と、当該燃焼器ノズル組体のように燃料受入管を設ける方法とが考えられる。前者方法では、棒基端部が燃料供給用マニホールドで覆われるので、棒基端部から外部への熱放出をあまり期待できない。一方、後者の方法では、棒基端部が燃料供給用マニホールドで覆われることがないので、棒基端部から外部への熱放出を期待できる。よって、当該燃焼器ノズル組体では、棒基端部からシール部材へ伝わる熱を少なくすることができ、シール部材の高温化による損傷を抑えることができる。
【0023】
上記問題点を解決するための発明に係る燃焼器の一態様は、
以上のいずれかの燃焼器ノズル組体と、前記燃焼器ノズル組体の前記ノズルから噴射された燃料が燃焼することで生成された燃焼ガスをタービンに導く尾筒と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
上記問題点を解決するための発明に係るガスタービンの一態様は、
前記燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスで回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うと共に、前記燃焼器が取り付けられる前記タービン車室と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、漏油回収室が形成されている複雑な形状の油マニホールドを設けなくても、燃料の漏えいを防ぐことができ、また支持具も設ける必要がないので、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの要部を切り欠いた全体側面図である。
図2】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの燃焼器周りの断面図である。
図3】本発明に係る一実施形態における燃焼器ノズル組体の要部斜視図である。
図4】本発明に係る一実施形態におけるメインノズルの全体断面図である。
図5】本発明に係る一実施形態におけるメインノズルの基端部の断面図である。
図6】本発明に係る一実施形態の第一変形例におけるノズル棒の要部断面図である。
図7】本発明に係る一実施形態の第二変形例におけるノズル棒の要部断面図である。
図8】本発明に係る一実施形態の第三変形例におけるノズル棒の要部断面図である。
図9】本発明に係る一実施形態の第四変形例におけるノズル棒の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る燃焼器ノズル組体、これを備えている燃焼器及びガスタービンの一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
本実施形態のガスタービンは、図1に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃料供給源からの燃料を圧縮空気に混合して燃焼させ燃焼ガスを生成する複数の燃焼器2と、燃焼ガスにより駆動するタービン3と、を備えている。
【0029】
タービン3は、タービン車室4と、このタービン車室4内で回転するタービンロータ5とを備えている。このタービンロータ5は、例えば、このタービンロータ5の回転で発電する発電機(図示されていない。)と接続されている。複数の燃焼器2は、タービンロータ5の回転軸線Arを中心として、周方向に互いに等間隔でタービン車室4に固定されている。燃焼器2は、高温・高圧の燃焼ガスをタービンロータ5の翼に送る尾筒10と、この尾筒10内に燃料及び圧縮空気を供給する燃焼器ノズル組体20と、を備えている。なお、以下では、燃焼器ノズル組体20を単にノズル組体20という。
【0030】
ノズル組体20は、図2に示すように、パイロットノズル21と、このパイロットノズル21を中心として周方向に等間隔で配置されている複数のメインノズル31と、パイロットノズル21及び複数のメインノズル31が取り付けられているノズル取付基体70と、を有している。
【0031】
タービン車室4には、燃焼器挿入開口4aが形成されている。ノズル取付基体70は、この燃焼器挿入開口4aを塞いでいる。ノズル取付基体70は、パイロットノズル21及び複数のメインノズル31が取り付けられているノズル台71と、このノズル台71が固定されているノズル台枠75と、を有している。ノズル台枠75は、タービン車室4にボルトにより固定されている。
【0032】
パイロットノズル21及びメインノズル31は、いずれも、棒状を成し、同じ方向を向いている。パイロットノズル21及びメインノズル31は、いずれも、ノズル取付基体70を貫通し、これらの先端部21t,31tがタービン車室4内に突出すると共に、これらの基端部21b,31bがタービン車室4の外側に突出している。なお、以下では、パイロットノズル21及びメインノズル31が延びている方向をノズル長手方向Dとし、このノズル長手方向Dでパイロットノズル21及びメインノズル31の先端部21t,31tの側を先端側Dtとし、このノズル長手方向Dでパイロットノズル21及びメインノズル31の基端部21b,31bの側を基端側Dbとする。
【0033】
パイロットノズル21の基端部21bには、油燃料Fpoを受け入れるP油燃料受入管81と、ガス燃料Fpgを受け入れるPガス燃料受入管82とが接続されている。このパイロットノズル21内には、油燃料Fpoが流れる油燃料流路(不図示)と、ガス燃料Fpgが流れるガス燃料流路(不図示)とが形成されている。これらの流路は、いずれも、パイロットノズル21の先端部21tで開口しており、ここから各燃料Fpo,Fpg,が噴射される。
【0034】
メインノズル31は、筒状のノズル棒40と、このノズル棒40内に全体が挿入される管状の油燃料管60と、を有している。ノズル棒40は、ノズル取付基体70のノズル台71を貫通し、その棒先端部41tがタービン車室4内に突出すると共に、その棒基端部41bがタービン車室4の外側に突出している。このノズル棒40でノズル取付基体70中に位置する取付部41aは、ノズル取付基体70のノズル台71に溶接で固定されている。なお、油燃料管60の全体がノズル棒40内に挿入される関係上、ノズル棒40の棒先端部41tはメインノズル31の先端部31tを成し、ノズル棒40の棒基端部41bはメインノズル31の基端部31bを成す。
【0035】
ノズル台71の外周側には、図4に示すように、ガス燃料Fmgを受け入れるMガス燃料受入管89が接続されている。このノズル台71の内部には、複数のメインノズル31よりも外周側の位置に、Mガス燃料受入管89からのガス燃料Fmgが流れる環状燃料流路72が形成されている。さらに、このノズル台71には、環状燃料流路72から各メインノズル31に向かって分岐している分岐流路73と、分岐流路73からのガス燃料Fmgをノズル棒40の取付部41a周りに導く台内燃料空間74とが形成されている。
【0036】
ノズル棒40の棒基端部41bには、その基端側Dbから先端側Dtに向かって凹む円柱状の基端部内空間42が形成されている。この棒基端部41bには、油燃料Fmoを受け入れ、基端部内空間42と連通するM油燃料受入管85が接続されている。また、このノズル棒40には、基端部内空間42から棒先端部41tまで延びて、油燃料管60が挿入される管挿入空間44が形成されている。さらに、このノズル棒40には、管挿入空間44よりも外周側の位置に、このノズル棒40の取付部41aからその棒先端部41tまで延びるガス燃料流路45が形成されている。このガス燃料流路45は、取付部41aで開口しており、台内燃料空間74と連通している。また、このガス燃料流路45は、棒先端部41tで開口しており、この開口が燃料の噴射口46を成している。
【0037】
ノズル棒40の棒基端部41bと取付部41aとの間は、ノズル長手方向Dに対して垂直な断面における断面積が、取付部41aの最大断面積よりも小さい断面積減少部41dを成している。なお、この断面積減少部41dの断面積は、棒基端部41bの最大断面積よりも小さい。
【0038】
油燃料管60の管先端部61tは、ノズル棒40の管挿入空間44内であって、このノズル棒40の棒先端部41tの位置で溶接により固定されている。また、油燃料管60の管基端部61bは、ノズル棒40の棒基端部41b内まで延びている。この油燃料管60には、その基端側Dbから先端側Dtまで貫通している油燃料流路62が形成されている。この油燃料流路62は、管基端部61b及び管先端部61tで開口している。油燃料Fmoは、管基端部61bの開口から油燃料流路62内に流入して、管先端部61tの開口から流出し、ノズル棒40の噴射口46からメインノズル31外に噴出する。
【0039】
メインノズル31は、以上で説明したノズル棒40及び油燃料管60の他、図5に示すように、ノズル棒40の円柱状の基端部内空間42内に収納される円柱状の中子32と、シール部材としての複数のOリング36と、皿バネ等の弾性体37とを有している。メインノズル31は、さらに、基端部内空間42における棒基端側Dbの開口を塞ぎつつ、弾性体37を押さえるボルト38と、このボルト38のボルト頭部とノズル棒40の棒基端部41bとの間をシールするパッキン39と、を有している。
【0040】
中子32は、ノズル棒40の基端部内空間42中の先端側Dtの領域に収納されている。この中子32には、油燃料管60の管基端部61bが挿入される管挿入空間33と、油燃料管60とノズル棒40に接続されているM油燃料受入管85とを連通させる連通路34と、Oリング36が装着されるシール溝35と、が形成されている。連通路34は、M油燃料受入管85からのFmoの流量を制限して、油燃料管60に流入する油燃料Fmoの流量を目的の流量にするオリフィスとしての役目も担っている。
【0041】
シール溝35としては、円柱状の中子32の外周面に形成されている第一シール溝35aと、中子32の先端側Dtの端面に形成されている第二シール溝35bと、管挿入空間33に対向する第三シール溝35cとがある。各シール溝35には、それぞれOリング36が配置されている。第一シール溝35a及び第二シール溝35bに配置されているOリング36a,36bは、中子32の外面と棒基端部41bの内面との間をシールする役目を担っている。また、第三シール溝35cに配置されるOリング36cは、中子32の管挿入空間33内でノズル長手方向Dへの油燃料管60の熱伸縮を許容しつつ、中子32の内面と油燃料管60の外面との間をシールする役目を担っている。
【0042】
また、第一シール溝35aに配置されているOリング36aは、中子32の外面と棒基端部41bの内面との間をシールして、この間から油燃料Fmoが基端側Dbへ漏れるのを抑えている。一方、第二シール溝35bに配置されているOリング36b及び第三シール溝35cに配置されるOリング36cは、中子32の外面と棒基端部41bの内面との間や中子32の内面と油燃料管60の外面との間をシールし、これらの間から油燃料Fmoが先端側Dtへ漏れるのを抑えている。
【0043】
弾性体37は、その弾性方向をノズル長手方向Dに向けて、中子32よりも基端側Dbの基端部内空間42中に配置されている。この弾性体37は、前述したように、基端部内空間42の開口を塞ぐボルト38により、先端側Dtに押し付けられている。このため、中子32は、弾性体37により、基端部内空間42で先端側Dtに付勢されている。
【0044】
ノズル棒40に接続されているM油燃料受入管85は、図3に示すように、複数のメインノズル31のノズル棒40における棒基端部41b相互を連結する複数の連結管86と、一つの連結管86に油燃料Fmoを供給する主受入管87と、を有している。複数のメインノズル31は、前述したように、パイロットノズル21を中心として周方向に等間隔で配置されている。このため、複数のメインノズル31のノズル棒40における棒基端部41b相互を連結する複数の連結管86は、パイロットノズル21を中心として周方向に並んでいる。
【0045】
本実施形態のガスタービンの油焚き運転時、複数のメインノズル31には、外部からM油燃料受入管85を介して油燃料Fmoが供給される。この油燃料Fmoは、メインノズル31のノズル棒40における基端部内空間42に流入する。この油燃料Fmoは、この基端部内空間42中に配置されている中子32の連通路34を経て、中子32の管挿入空間33に挿入されている油燃料管60の油燃料流路62に流れ込み、ノズル棒40の噴射口46からメインノズル31外に噴射される。メインノズル31外に噴射された油燃料Fmoは、圧縮機1からの圧縮空気と混合されて燃焼する。この燃焼で生成された高温・高圧の燃焼ガスは、尾筒10により、タービンロータ5の翼に導かれる。
【0046】
油燃料管60は、この中を流れる油燃料により冷却される。一方で、ノズル棒40は圧縮機1からの高温・高圧の圧縮空気の流れに曝されているため、この圧縮空気によって加熱される。このため、油燃料管60とノズル棒40との温度は、ガスタービンの停止時には均一であるが、油焚き運転時には、ノズル棒40の温度が油燃料管60の温度に対して相対的に高くなる。この温度差により油燃料管60とノズル棒40との間での熱伸び差が生じる。
【0047】
本実施形態のガスタービンのガス焚き運転時、複数のメインノズル31には、Mガス燃料受入管89を介してガス燃料Fmgが供給される。このガス燃料Fmgは、Mガス燃料受入管89からノズル台71中の環状燃料流路72に流入し、そこからノズル台71中の分岐流路73及び台内燃料空間74を経て、ノズル棒40内のガス燃料流路45に流れ込む。このガス燃料Fmgは、ノズル棒40の噴射口46からメインノズル31外に噴射される。メインノズル31外に噴射されたガス燃料Fmgは、油焚き運転時と同様、圧縮機1からの圧縮空気と混合されて燃焼する。この燃焼で生成された高温・高圧の燃焼ガスは、尾筒10により、タービンロータ5の翼に導かれる。
【0048】
このガス焚き運転時、油燃料管60には油燃料Fmoが供給されないため、油燃料Fmoによって冷却されない。そのため、油燃料管60はノズル棒40の温度に近い温度になり、油燃料を燃焼させているときよりも高温になる。しかしながら、油燃料管60の温度は、直接に圧縮空気の流れに曝されているノズル棒40の温度ほどは上昇しない。よって、ガス焚き運転時と油焚き運転時でも、油燃料管60とノズル棒40との間の温度差が生じ、これにより油燃料管60とノズル棒40との間での熱伸び差が生じる。
【0049】
ところで、油燃料管60の管先端部61tは、前述したように、ノズル棒40の棒先端部41tに溶接により固定されている。このため、ノズル棒40の長さに対する油燃料管60の長さが相対変化すると、ノズル棒40の棒基端部41bの位置に対して油燃料管60の管基端部61bの相対位置が変化する。具体的に、例えば、ガスタービン停止時に比べて、油焚き運転時の油燃料管60の温度は、ノズル棒40の温度に対して相対的に低下するため、ノズル棒40の長さに対する油燃料管60の長さは、相対的に短くなる。よって、油焚き運転時では、ガスタービン停止時と比べて、油燃料管60の管基端部61bの位置がノズル棒40の棒基端部41bの位置に対して先端側Dtに移動する。
【0050】
このように、ガスタービンの運転状態に応じて、ノズル長手方向Dにおいて、油燃料管60の管基端部61bの位置がノズル棒40の棒基端部41bの位置に対して相対移動する。このため、ノズル棒40の棒基端部41b内に配置されている中子32の第三シール溝35cに配置されるOリング36cは、中子32の内面と油燃料管60の外面との間をシールしつつも、中子32の管挿入空間33内でノズル長手方向Dへの油燃料管60の熱伸縮を許容している。
【0051】
また、ノズル棒40の棒基端部41b内の中子32は、油燃料管60の管基端部61bの移動により、この移動方向と同じ方向に移動しようとする。さらに、ノズル棒40の棒基端部41bとその中の中子32との間にも熱伸び差が生じ、この熱伸び差により中子32はノズル棒40の棒基端部41b内で移動しようとする。このため、ノズル棒40棒基端部41b内に配置されている中子32の第一及び第二シール溝35a,35bに配置されるOリング36a,36bは、中子32の外面と棒基端部41bの内面との間をシールしつつも、ノズル棒40の棒基端部41b内で中子32のノズル長手方向Dへの移動を許容している。
【0052】
ところで、ノズル棒40の棒基端部41bは、タービン車室4の外側に突出して設けられている。このため、ノズル棒40の棒基端部41bは、ノズル取付基体70からの熱を受け難い。また、ノズル棒40の断面積減少部41dは、前述したように、ノズル長手方向Dに対して垂直な断面における断面積が、ノズル棒40の取付部41aにおける最大断面積よりも小さい。このため、ノズル棒40の断面積減少部41dは、タービン車室4から棒基端部41bへの伝熱経路における熱抵抗を増大させる。さらに、ノズル棒40の棒基端部41bは、燃焼器2外に露出しているため、外部との熱交換による冷却効果も期待できる。よって、本実施形態では、燃料の燃焼に伴うノズル棒40の棒基端部41bの温度上昇、及びこの棒基端部41bの温度上昇に伴うOリング36の温度上昇を抑えることができる。
【0053】
従って、本実施形態によれば、Oリング36の熱による損傷を抑えることができ、Oリング36の寿命を延ばすことができる。
【0054】
また、本実施形態では、仮に、先端側Dtへの油燃料Fmoの漏れを防ぐOリング36b,36cが損傷しても、外部への油燃料Fmoの漏えいを防ぐことができる。これは、ノズル棒40の基端部内空間42に流入した油燃料Fmoが、Oリング36cがシールしていた中子32の内面と油燃料管60の外面との間、又はOリング36bがシールしていた中子32の外面とノズル棒40の棒基端部41bの内面との間を経て、ノズル棒40の内面と油燃料管60の外面との間の断熱空間に流れ込むからである。すなわち、本実施形態では、この断熱空間が、Oリング36b,36cの損傷時、漏油回収空間としての役目を担うことになる。
【0055】
また、本実施形態では、仮に、基端側Dbへの油燃料Fmoの漏れを防ぐOリング36aが損傷しても、このOリング36aよりも基端側Dbにパッキン39が存在するため、外部への油燃料Fmoの漏えいを防ぐことができる。ここで、パッキン39は、温度変化によってほとんど相対移動しないボルト38のボルト頭部とノズル棒40の棒基端部41bとの間をシールするものであるため、Oリング36aよりも寿命が長い。このため、パッキン39の損傷による外部への油燃料Fmoの漏えいについては、Oリング36の損傷ほど考慮する必要はない。
【0056】
したがって、本実施形態では、漏油回収室が形成されている複雑な形状の油マニホールドやその支持具が不要になるので、製造コストを抑えることができる。
【0057】
次に、ノズル棒の各種変形例について、図6図9を用いて説明する。
【0058】
まず、図6を用いて、ノズル棒の第一変形例について説明する。
【0059】
本変形例のノズル棒40sは、その形状が上記実施形態のノズル棒40の形状と若干異なっている。
【0060】
本変形例のノズル棒40sでノズル取付基体70中に位置する取付部41asは、ノズル長手方向Dに対して垂直な断面における断面積が最大の主取付部41axと、この主取付部axの基端側Dbに形成され断面積がノズル棒40sの断面積減少部41dの断面積と同じ縮径部41ayと、を有している。このように、ノズル棒40sの取付部41asが縮径部41ayを有していても、断面積減少部41dのノズル長手方向Dに対して垂直な断面における断面積が取付部41asの最大断面積よりも小さければ、上記実施形態と同様、タービン車室4から棒基端部41bへの伝熱経路における熱抵抗を増大させることができる。
【0061】
次に、図7を用いて、ノズル棒の第二変形例について説明する。
【0062】
本変形例のノズル棒40tも、その形状が上記実施形態のノズル棒40の形状と若干異なっている。
【0063】
本変形例のノズル棒40tにおける断面積減少部41dtは、その外径が取付部41aの外径と同じで、その内径が取付部41aの内径よりも大きい。このため、この断面積減少部41dtは、その外径が上記実施形態の断面積減少部41dの外径よりも大きくなるものの、ノズル長手方向Dに対して垂直な断面における断面積は、上記実施形態と同様、ノズル棒40tの取付部41aの最大断面積より小さくなっている。このため、本変形例でも、上記実施形態と同様、タービン車室4から棒基端部41bへの伝熱経路における熱抵抗を増大させることができる。
【0064】
次に、図8を用いてノズル棒の第三変形例について、図9を用いてノズル棒の第四変形例について説明する。
【0065】
第三変形例のノズル棒40uは、上記実施形態のおけるノズル棒40と同一形状である。但し、本変形例のノズル棒40uは、先端側Dtの部材と基端側Dbの部材とを溶接で接合して形成したものである。また、第四変形例のノズル棒40vは、第二変形例のノズル棒40tと同一形状である。但し、本変形例のノズル棒40vも、第三変形例と同様、先端側Dtの部材と基端側Dbの部材とを溶接で接合して形成したものである。このため、これら変形例のノズル棒40u,40vは、例えば、断面積減少部41d,41dtに溶接部mが存在する。
【0066】
以上、第三及び第四変形例のノズル棒40v,40uのように、先端側Dtの部材と基端側Dbの部材とを溶接で接合して形成しても、上記実施形態のノズル棒40や第二変形例のノズル棒40tと基本的に同様の効果を得ることができる。また、第三及び第四変形例のノズル棒40v,40uでは、断面積減少部41d,41dtに溶接部mを存在させると、タービン車室4から棒基端部41bへの伝熱経路における熱抵抗をより増大させることができる。
【0067】
なお、ここでは、上記実施形態のノズル棒40や第二変形例のノズル棒40tと同一形状のノズル棒40v,40uを二つの部材の溶接による接合で形成しているが、第一変形例のノズル棒40sと同一形状のノズル棒も二つの部材の溶接による接合で形成してもよい。さらに、ここでは、二つの部材を溶接で接合してノズル棒を形成しているが、上記実施形態の油燃料管60と同一形状の油燃料管も、二つの部材を溶接で接合して形成してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、流量を調節する等のために、中子32をノズル棒40の基端部内空間42に配置しているが、この中子32を省略してもよい。この場合、この基端部内空間42中で、M油燃料受入管85から油燃料Fmoを受け入れる部分に、油燃料Fmoの流量を調節する機能を持たせることになる。
【0069】
さらに、上記実施形態のメインノズル31は、燃料油と燃料ガスの双方を噴射する、いわゆるデュアルノズルであるが、本発明はこれに限定されず、ノズル棒と油燃料管とを有していれば、燃料ガスを噴射しないノズルであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1:圧縮機、2:燃焼器、3:タービン、4:タービン車室、4a:燃焼器挿入開口、5:タービンロータ、10:尾筒、20:ノズル組体、21:パイロットノズル、31:メインノズル、32:中子、33:管挿入空間、36:Oリング(シール部材)、37:弾性体、38:ボルト、39:パッキン、40,40s,40t,40u,40v:ノズル棒、41b:棒基端部、41d,41dt:断面積減少部、41a:取付部、41t:棒先端部、42:基端部内空間、44:管挿入空間、45:ガス燃料流路、46:噴射口、60:油燃料管、61b:管基端部、61t:管先端部、62:油燃料流路、70:ノズル取付基体、71:ノズル台、75:ノズル台枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9