特許第5931706号(P5931706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特許5931706-揮散剤容器 図000002
  • 特許5931706-揮散剤容器 図000003
  • 特許5931706-揮散剤容器 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931706
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】揮散剤容器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20160526BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20160526BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   A61L9/12
   B65D83/00 F
   B65D85/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-263449(P2012-263449)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-108200(P2014-108200A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−260587(JP,A)
【文献】 特開2011−062272(JP,A)
【文献】 特開2004−267471(JP,A)
【文献】 特開2011−011746(JP,A)
【文献】 特開平05−285204(JP,A)
【文献】 特開2011−006132(JP,A)
【文献】 実開昭61−200049(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0249593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/12
B65D 83/00
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部を開口させた口部を有し内容物として揮散剤を収容する容器本体と、該容器本体内の内容物を吸い上げる吸い上げ芯を該口部に保持するホルダーと、該吸い上げ芯を覆う天壁を有し該口部にねじ止めされて未開封状態を維持するカバーキャップとを備える揮散剤容器であって、
前記カバーキャップは、前記口部に装着された状態にて前記吸い上げ芯に食い込む刃部と、前記天壁から前記吸い上げ芯の先端に向けて垂下するとともに該吸い上げ芯よりも小径となる筒状体とを有し、該筒状体の先端に前記刃部を設けたことを特徴とする揮散剤容器。
【請求項2】
前記刃部は、前記筒状体の外周面及び内周面の少なくとも一方に、該筒状体の軸線に沿って延びるエッジ部を有する請求項に記載の揮散剤容器。
【請求項3】
前記容器本体に着脱自在に装着される外装壁を有し前記口部に保持される内筒を連結壁を介して該外装壁に一体連結させたカバー本体と、前記吸い上げ芯を覆って該カバー本体に着脱自在に嵌め合わされる蓋体とを備える請求項1又は2に記載の揮散剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容した芳香剤や消臭剤等の内容物を揮散させる揮散剤容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香剤や消臭剤等の内容物を揮散させる容器として、例えば特許文献1には、揮散性薬剤を収容する容器本体1と、揮散性薬剤を揮散させるための揮散部材3と、容器本体1内の揮散性薬剤の吸い上げ部材2とを有し、揮散部材3と吸い上げ部材2とを当接させる押圧部材5を設けた薬剤揮散容器が示されている。揮散部材3は、吸い上げ部材2にて吸い上げられた薬剤をその内側に浸透させて、より広い面積で揮散させるものであり、薬剤の揮散効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−269188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような揮散部材の材料としては濾紙を用いることが一般的であるものの、価格が高く、揮散剤容器の原価削減の妨げになっていた。このため、濾紙を用いる揮散方式に代えてより安価な方法で内容物を揮散させることができる、新たな揮散剤容器が求められていた。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、従来の濾紙を用いる揮散方式に対してより安価となる、新規の揮散剤容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上部を開口させた口部を有し内容物として揮散剤を収容する容器本体と、該容器本体内の内容物を吸い上げる吸い上げ芯を該口部に保持するホルダーと、該吸い上げ芯を覆う天壁を有し該口部にねじ止めされて未開封状態を維持するカバーキャップとを備える揮散剤容器であって、
前記カバーキャップは、前記口部に装着された状態にて前記吸い上げ芯に食い込む刃部と、前記天壁から前記吸い上げ芯の先端に向けて垂下するとともに該吸い上げ芯よりも小径となる筒状体とを有し、該筒状体の先端に前記刃部を設けたことを特徴とする揮散剤容器である。
【0008】
前記刃部は、前記筒状体の外周面及び内周面の少なくとも一方に、該筒状体の軸線に沿って延びるエッジ部を有することが好ましい。
【0009】
前記容器本体に着脱自在に装着される外装壁を有し前記口部に保持される内筒を連結壁を介して該外装壁に一体連結させたカバー本体と、前記吸い上げ芯を覆って該カバー本体に着脱自在に嵌め合わされる蓋体とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
揮散剤を収容する容器本体の口部に、内容物を吸い上げる吸い上げ芯を保持するホルダーを設けるとともに、この口部にねじ止めされて未開封状態を維持するカバーキャップを設け、カバーキャップに、口部に装着された状態で吸い上げ芯に食い込む刃部を設けたので、カバーキャップを口部にねじ込むことで吸い上げ芯は刃部によってほぐされる。これにより吸い上げ芯の表面積が増して内容物を効果的に揮散させることができる。また従来の濾紙が不要となるので安価になる。
【0011】
カバーキャップに、天壁から吸い上げ芯の先端に向けて垂下するとともに吸い上げ芯よりも小径となる筒状体を設け、この先端に刃部を設ける場合は、吸い上げ芯に食い込んだ筒状体の厚み分、吸い上げ芯を外側に押し広げることができるので、吸い上げ芯の表面積をより増やすことができ、揮散効率が更に高まる。
【0012】
筒状体の外周面及び内周面の少なくとも一方に、筒状体の軸線に沿って延びるエッジ部を設ける場合は、刃部として機能する部位を筒状体の先端だけでなく周壁にも及ばせてその長さが増えることによって、より効果的に吸い上げ芯をほぐすことが可能となる。
【0013】
容器本体に着脱自在に装着される外装壁を有し、口部に保持される内筒を連結壁を介して外装壁に一体連結させたカバー本体と、吸い上げ芯を覆ってカバー本体に着脱自在に嵌め合わされる蓋体とを設ける場合は、カバー本体及び蓋体にて吸い上げ芯への不用意な接触を防止することができるので、ほぐされた吸い上げ芯の形状がそのままの状態で維持される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従う揮散剤容器の一実施形態につき、その要部を示す側面図及び断面図である。
図2図1に示す刃部につき、(a)は部分拡大側面図であり、(b)は下面図である。
図3】刃部によりほぐされた吸い上げ芯を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う揮散剤容器の一実施形態につき、その要部を示す側面図及び断面図であって、図2は、図1に示す刃部につき、(a)は部分拡大側面図であり、(b)は下面図であって、図3は、刃部によりほぐされた吸い上げ芯を示す側面図である。
【0016】
図1において、符号10は容器本体である。本実施形態において容器本体10は、有底筒状となる胴部11に肩部12を介して口部13を一体連結していて、その内側に芳香剤や消臭剤等の揮散剤を収容可能としている。また口部13の外周面には、ねじ部14を設けるとともにその下方にリング部15を設けている。
【0017】
符号20は、容器本体10内の内容物を吸い上げる吸い上げ芯である。吸い上げ芯20は、例えばフェルト材やパルプ材、合成樹脂製の多孔質体、繊維束体にて棒状に形成され、図示は省略するが、その下端は容器本体10の底部まで延びている。これにより、容器本体10内の揮散剤は吸い上げ芯20に浸透し、吸い上げ芯20の上端まで吸い上げられる。
【0018】
符号30は、吸い上げ芯20を保持するホルダーである。ホルダー30は、吸い上げ芯20が落下しない程度に係合可能な係合筒31と、係合筒31と連結し、本実施形態では上方に向けて傾斜するとともにその後は垂直に起立する形状となる連結部32と、連結部32につながるとともに口部13の開口を覆う水平壁33とを備えていて、水平壁33の下面には口部13に気密に当接するシール筒34を設けている。これにより吸い上げ芯20は起立状態で保持される。また、連結部32には、容器本体10内の圧力が過度に上昇することを防止する貫通孔32aを設けている。
【0019】
符号40は、容器本体10に取り付けられるカバーキャップである。カバーキャップ40は、口部13を取り囲む周壁41と、周壁41に一体連結するとともに吸い上げ芯20を覆う天壁42とを備えている。周壁41の内周面にはねじ部43を設けていて、カバーキャップ40は口部13にねじ止め保持される。本実施形態では、吸い上げ芯20の先端部を口部13より上方に突出させていて、天壁42は、吸い上げ芯20の先端部を取り囲む有頂筒状の膨出部42aと、膨出部42aの縁部につながるドーナツ板状の水平部42bにて形成されている。また、天壁42の下面には、ねじ止めによって連結部32と気密に当接する環状のシール壁44を設けていて、カバーキャップ40を取り除くまでは容器本体10を未開封状態で維持することができる。更に、天壁42の中央部には、吸い上げ芯20よりも小径となる筒状体45が、吸い上げ芯20の先端に向けて垂下されるように一体連結されている。
【0020】
ここで、筒状体45には、図2(a)、(b)に示すように刃部46を設けている。本実施形態において刃部46は、筒状体45の内周面及び外周面が、筒状体45の先端から根元に向けて先細りとなる三角錐状の複数の溝で切り取られた形状となっている。これにより筒状体45の内周面及び外周面には、筒状体45の軸線Cに沿って延びるエッジ部47が形成される。
【0021】
符号50は、容器本体10上に設けられるカバー本体である。カバー本体50は、容器本体10の肩部12に、例えばアンダーカットの如き係合手段にて着脱自在に装着される環状の外装壁51を備えている。また外装壁51の上縁には、水平方向内側に向けて延びる連結壁52を一体連結していて、更に連結壁52の内縁には、口部13のリング部15に押し当たって保持される内筒53を連結している。本実施形態においては、内筒53を縦方向に切り欠くスリット53aを設けて、内筒53を径方向外側に撓み変形できるようにしている。また、外装壁51には、その内外を連通させる揮散孔54を設けている。
【0022】
符号60は、吸い上げ芯20を覆うとともに、例えばアンダーカットの如き係合手段にてカバー本体50に着脱自在に装着される蓋体である。また蓋体60は、その内外を連通させる揮散孔61を備えている。
【0023】
上記のような構成となる揮散剤容器は、容器本体10内に内容物を充填し、吸い上げ芯20を取り付けたホルダー30を口部13に装着した状態で、カバーキャップ40を容器本体10に装着する。そして、口部13にカバーキャップ40をねじ込んでいくと、筒状体45が吸い上げ芯20の先端に押し当たり、刃部46にて吸い上げ芯20がほぐされる。本実施形態において筒状体45は、吸い上げ芯20よりも小径となっているので、図1に示すように吸い上げ芯20に食い込んだ際、筒状体45の厚み分、吸い上げ芯20を外側に押し広げることができる。そしてエッジ部47は、筒状体45の先端のみならずその内周面及び外周面にも及んでいるので、吸い上げ芯20は、筒状体45の先端のエッジ部47でほぐされつつ、更に、口部13にカバーキャップ40をねじ込む際に筒状体45の内周面及び外周面のエッジ部47がほぐされた部位に押し当たってほぐれが助長されるので、より効果的に吸い上げ芯20の表面積を増すことができる。
【0024】
内容物を揮散させるに当たっては、カバーキャップ40を回転して取り外す。これにより、図3に示すように先端部がほぐされて広がった吸い上げ芯20が露出され、吸い上げた内容物を揮散させることができる。カバー本体50及び蓋体60を取り付けた後は、それぞれの揮散孔54、61を通して揮散した内容物が放出される。
【0025】
なお、本発明に従う刃部46は、本実施形態に限られず、例えば筒状体45の先端に、下方に向けて先細りとなる三角形状のものを周方向に複数個設けることや、吸い上げ芯20の外周面をほぐすことを目的として、吸い上げ芯20の外周面に向かう横向き刃を設けてもよく、またこれらを組み合わせて設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、揮散効果を損なうことなく従来の濾紙を用いる揮散方式よりも安価となる、新たな揮散剤容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 容器本体
13 口部
20 吸い上げ芯
30 ホルダー
40 カバーキャップ
42 天壁
45 筒状体
46 刃部
47 エッジ部
50 カバー本体
51 外装壁
52 連結壁
53 内筒
60 蓋体
図1
図2
図3