特許第5931709号(P5931709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ティー・ティー・エムの特許一覧

<>
  • 特許5931709-体液成分の検査器具 図000002
  • 特許5931709-体液成分の検査器具 図000003
  • 特許5931709-体液成分の検査器具 図000004
  • 特許5931709-体液成分の検査器具 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931709
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】体液成分の検査器具
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20160526BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20160526BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N33/48 E
   G01N37/00 101
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-271434(P2012-271434)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-115246(P2014-115246A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】305053226
【氏名又は名称】株式会社ティー・ティー・エム
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124947
【弁理士】
【氏名又は名称】向江 正幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140969
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100161300
【弁理士】
【氏名又は名称】川角 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】臼井 務
【審査官】 渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/110089(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/037784(WO,A1)
【文献】 特開2007−248101(JP,A)
【文献】 特開2011−103826(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/001530(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/062651(WO,A1)
【文献】 特表2009−520972(JP,A)
【文献】 特開2003−254933(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/093836(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/035830(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/129220(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0178708(US,A1)
【文献】 特開平08−114539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が内部に供給される検体供給口と、
前記検体の測定が行われる測定室と、
前記検体供給口と前記測定室とを連通する流路と、
前記検体供給口に供給された前記検体から血球を取り除いて前記流路に供給する血球分離膜とを備え、
貫通孔および貫通溝が設けられた、不通水性で通気性のある多孔質材からなるプレートを、二枚の不通水性で不通気性のプレートで厚さ方向に挟み込んで構成された積層板に、前記測定室および前記流路が設けられており、
前記測定室は、前記貫通孔と前記二枚の不通水性で不通気性のプレートにより区画され、前記流路は、前記貫通溝と前記二枚の不通水性で不通気性のプレートにより区画されており、
前記積層板に接着された基板に、前記検体供給口および前記血球分離膜が設けられており、
前記検体供給口の回りに前記検体の流出を防ぐ堰が設けられており、
前記堰の内側に、円弧状に突出した突起部が設けられている
ことを特徴とする体液成分の検査器具。
【請求項2】
前記堰の上面に、上面からさらに突出する環状突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の体液成分の検査器具。
【請求項3】
前記多孔質材からなるプレートに、複数の前記貫通孔および複数の前記貫通溝が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の体液成分の検査器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の体液成分例えばグルコース、中性脂肪、尿酸、コレステロールなどを測定する検査器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の検査器具として、特許文献1に記載のものが知られている。その内容は、検体供給口とポンプ接続口を備え、これらの間に検体処理室と測定室を流路を介して連通状に設けている。そして、接続口に接続されたポンプの駆動により検体供給口に供給された検体を検体処理室から測定室に移送し、この測定室で検体の測定を行う。
【0003】
しかし、上記の検査器具は、検体の移送手段としてポンプを用いているので、検体を移送するときの制御が困難となり、また全体構造が複雑となって製品コストが高くなり、しかもランニングコストも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−114539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、検体の移送をポンプなどの機械力を要することなく簡単な押圧操作で確実に行えて、検体の確実な測定を行うことができ、しかもランニングコストも低廉にできる体液成分の検査器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明にかかる体液成分の検査器具は、検体が内部に供給される検体供給口と、前記検体の測定が行われる測定室と、前記検体供給口と前記測定室とを連通する流路と、前記検体供給口に供給された前記検体から血球を取り除いて前記流路に供給する血球分離膜とを備え、貫通孔および貫通溝が設けられた、不通水性で通気性のある多孔質材からなるプレートを、二枚の不通水性で不通気性のプレートで厚さ方向に挟み込んで構成された積層板に、前記測定室および前記流路が設けられており、前記測定室は、前記貫通孔と前記二枚の不通水性で不通気性のプレートにより区画され、前記流路は、前記貫通溝と前記二枚の不通水性で不通気性のプレートにより区画されており、前記積層板に接着された基板に、前記検体供給口および前記血球分離膜が設けられている。
【0007】
この検査器具によれば、検体供給口内に供給された検体を測定室に移送するとき、弾性体からなる栓体で検体供給口を覆い、この栓体を押圧して検体を加圧することにより、ポンプなどの大がかりな機械装置を要することなく簡単な押圧操作で確実に行え、しかもランニングコストも低廉となる。また、検体を測定室に移送するため前記栓体を押圧操作したとき、前記流路や測定室の空間に溜っている空気がプレートを介して外部に逃げるので、検体は空間を満たすように順次移送されて、検体の所定量が測定室に速やかに移送される。また、血球分離膜により、血球を分離させて血漿だけが流路から測定室に移送されて血液検査に供される。
【0008】
そしてこの検査器具は、プレートが積層されてなる積層板と、検体供給口および血球分離膜が設けられた基板とを別々に製作し、これらを接着して構成することができるため、製造が容易であり、製造コストを低廉とすることができる。
【0009】
前記測定室や流路には試薬充填部を設けることが好ましい。この試薬充填部には、測定室で検体を測定するために検体と反応させたり、検体の測定時に目的物質との反応を妨害したり測定誤差の要因となる物質を除去するための試薬を充填させる。例えば生体の体液成分である血中グルコースを測定する場合は、NAD、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4ジニトロフェニル)−5−(2,4ジスルフォフェニル)−2H−テトラゾリウム、ポリビニルピロリドン、リン酸緩衝液、グルコース脱水酵素、ジアホラーゼを含んだ試薬を測定室または流路に滴下して乾燥させておく。一方、尿素窒素やクレアチニンを測定するときには、アスコルビン酸酸化酵素、アルギン酸ナトリウム、オルトフェニレンジアミン、リン酸緩衝液、尿酸酸化酵素、ペルオキシターゼを含んだ試薬を測定室または流路に滴下して乾燥させておく。
【0010】
前記多孔質材からなるプレートには、複数の測定室に至る複数の流路を設けることもできる。この構成によれば、同一検体の複数種類の測定が可能となる。特に、複数の流路と測定室を設ける場合、従来のポンプ駆動による移送手段ではそれぞれの流路を介して複数の測定室に所定量の検体を移送するのが困難であるのに対し、この発明では、前記栓体の押圧操作により前記流路や測定室の空間に溜っている空気がプレートを介して外部に逃げるので、検体は空間を満たすように前記各流路を経て各測定室に所定量が速やかに移送される。また、前記各流路の途中一部を試薬充填部として、これに試薬をそれぞれ各別に充填させるようにすれば、一緒に配置すると安定性に影響があるような試薬を配置するときに好都合となる。
【0011】
前記検体供給口の回りには、検体の流出を防ぐ堰を設けることが好ましい。このようにすれば、前記検体供給口から内部に検体を流出させたりすることなく確実に供給させられる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、検体の移送をポンプなどの大がかりな機械装置を要することなく簡単な押圧操作で確実に行えて、検体の確実な測定を行うことができ、しかもランニングコストも低廉となる。また、積層板と基板とを別々に製作し、これらを接着して構成することができるため、製造が容易であり、製造コストを低廉とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる検査器具の一実施形態を示す縦断面図である。
図2】本発明にかかる検査器具の一実施形態を示す分解斜視図である。
図3】本発明にかかる検査器具を用いて血液検体の測定を行うときの手順を示す縦断面図であり、(a)は、検体供給口に検体を滴下し、栓体で検体供給口を覆った状態を示し、(b)は、栓体を押圧して検体を測定室に移送した状態を示す。
図4】血液検体の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかる検査器具の一実施形態として血液検査器具を図面に基づいて説明する。
図1は血液検査器具の縦断面図を、図2はその分解斜視図を示している。これら各図に示す検査器具100は、基板1と積層板20とが接着されて構成されている。基板1には円形の検体供給口11が形成され、その上部周囲には堰12が設けられている。そして堰12には、上面からさらに突出する環状突起12aが設けられている。また、堰12に内側には、円弧状に突出した突起部13が設けられている。この堰12は、ブチルゴムなどの弾性材料からなる栓体5が密着して、内部空間を密封するよう構成されている。具体的には、この堰12に対して栓体5が当接すると、堰12の環状突起12aが、栓体5の縁部5aに食い込むため、内部空間が確実に密閉される。その状態で栓体5を押圧すると検体供給口11に供給された検体(血液)に加圧力を付与される。栓体5は、図示していない押圧機構により押圧される。
【0015】
また、基板1の下面側には、検体供給口11との対向部位に円形状の凹入部14が設けられており、ここに血球を分離除去する非対称孔径膜からなる血球分離膜6が装入されている。この血球分離膜6は、基板1に接着剤(図示省略)により固定されている。
【0016】
また、基板1の下面側には、二次元バーコード15が設けられている。二次元バーコード15を読み取ることにより、検体を識別することが可能に構成されている。なお、この二次元バーコード15は、検査器具100において、任意の位置に設けることが可能である。なお、基板1の材料は、加工が容易な樹脂材料が使用され、例えばAS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)が好適に用いられる。
【0017】
また、基板1の上面には、突起16,17が設けられている。この突起16,17は、光学測定または電気測定の際に、検査器具100を位置決めするために用いられる。
【0018】
積層板20は、接着剤(図示省略)を介して上下方向に積層一体化された3つの第1プレート2、第2プレート3および第3プレート4を備える。積層板20において検体供給口11の側方内部には、検体Aの成分を測定する測定室7が形成され、この測定室7と検体供給口11の間に検体Aの移送用の流路8が形成されている。
【0019】
図1,2に示すように、流路8は以下のように形成されている。すわなち、第1プレート2における検体供給口11と同心位置に、上下方向に延びる貫通孔81を形成するとともに、第1プレート2の下方に配置される第2プレート3に、貫通孔81と対向状に円形の貫通孔82を設け、これから側方に向かって直線状の貫通溝83をくり抜いて、これら貫通孔81と貫通孔82および貫通溝83により流路8を形成している。また、測定室7は以下のように形成されている。すなわち、第2プレート3に設けた貫通溝83の先端側に、円形の貫通孔71を貫通溝83と連通状に形成し、貫通孔71の内部を検体Aの測定室7としている。
【0020】
なお、図1,2に示す検査器具100は、8つの測定室7を有している。具体的には、この第2プレート3に、測定室7を形成する円形の8つの貫通孔71が形成されている。また、第1プレート2に設けた貫通孔81と対向する貫通孔82が設けられており、この貫通孔82から延びる一本の貫通溝83aが、分岐部83bで8本の貫通溝83cに分岐し、これら貫通溝83cの先端側に貫通孔71が形成されている。8つの測定室7は、貫通孔71と第1プレート2および第3プレート4により区画される。また、流路8は、貫通溝83と第1プレート2および第3プレート4により区画される。なお流路8には貫通孔81も含まれている。
【0021】
第1プレート2および第3プレート4は、不通水性で不通気性のプレートであり、その材料としては、加工が容易な樹脂材料が使用され、例えばAS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)が好適に用いられる。
【0022】
一方、第2プレート3としては、不通水性で通気性のある多孔質材である例えばPTFE(四フッ化エチレン樹脂)フィルムが好適に用いられる。このようにすれば、栓体5を押圧操作して検体Aを流路8から測定室7に移送させるとき、これら流路8や測定室7の空間に溜っている空気が第2プレート3を介して外部に逃げ、検体Aが空間を満たすように順次移送されて、検体Aの所定量が測定室7に速やかに移送される。
【0023】
測定室7には試薬充填部9が設けられている。この試薬充填部9には、測定室7で検体Aを測定するために検体Aと反応させたり、検体Aの測定時に目的物質との反応を妨害したり測定誤差の要因となる物質を除去するための試薬を充填する。この試薬としては、例えば生体の体液成分である血中グルコースを測定する場合は、NAD、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4ジニトロフェニル)−5−(2,4ジスルフォフェニル)−2H−テトラゾリウム、ポリビニルピロリドン、リン酸緩衝液、グルコース脱水酵素、ジアホラーゼを含んだものを用い、この試薬を測定室7に滴下して乾燥させておく。一方、尿素窒素やクレアチニンを測定するときは、アスコルビン酸酸化酵素、アルギン酸ナトリウム、オルトフェニレンジアミン、リン酸緩衝液、尿酸酸化酵素、ペルオキシターゼを含んだものを用い、この試薬を測定室7に滴下して乾燥させておく。なお、試薬充填部9は流路8の途中の一部に設けてもよい。
【0024】
測定室7で検体Aを測定するにあたっては、透過光や反射光を用いた光学測定や電気測定が採用される。透過光を用いる光学測定の場合は、第1プレート2および第3プレート4における、測定室7と隣接する箇所について、透明部Tを設けるとともに、プレート同士を接着する接着剤層(図示省略)が、測定室7に隣接する箇所において、光の透過を妨げないようにして、測定室7で試薬と検体Aにより呈色反応を行わせて、第3プレート4の下方から光を照射し、第1プレート2の上部で透過光を受光することにより、測定室7での吸光度を測定する。なお、第1プレート2および第3プレート4について透明部Tを設ける方法として、第1プレート2および第3プレート4を透明な樹脂で構成し、透明部T以外の箇所を黒色に着色することが好適である。
【0025】
透明部T以外の箇所を黒色に着色するには、第1プレート2および第3プレート4の内側の面(すなわち第2プレート3側の面)に、印刷を施すことにより黒色の部分を形成することが好適である。このようにすると、透明部T以外は印刷層が覆う一方で透明部Tには印刷層が存在しないため、透明部Tに窪みが形成される。この窪みに液体試薬を塗布し、乾燥させれば、容易に試薬を測定室に配置することができる。
【0026】
上記のように、多孔質材からなる第2プレート3に複数の流路8と測定室7を形成すれば、ひとつの検体Aから複数種類の測定が可能となる。特に、複数の測定室7と流路8を設ける場合、従来のポンプ駆動による移送手段では各流路8を介して複数の測定室7に所定量の検体Aを移送するのが困難であるのに対し、栓体5の押圧操作により流路8や測定室7の空間に溜っている空気が第2プレート3を介して外部に逃げるので、検体Aは空間を満たすように各流路8を経て各測定室7に所定量が速やかに移送される。また、各測定室7や流路8の途中の一部を試薬充填部として、これらに試薬をそれぞれ各別に充填させるようにすれば、一緒に配置すると安定性に影響を与えるような試薬を配置するときに好都合となる。
【0027】
なお、測定室7で検体Aを測定するにあたっては、電気測定を行うことも可能である。すなわち、測定室7に一対の電極を配置し、これらに通電することによって検体Aの電導度などを測定する。
【0028】
また、積層板20には、その一辺に二つの切欠21,22が設けられている。この切欠21,22は、各プレートの一辺の同じ位置に設けられた、切欠2a,3a,4aおよび切欠2b,3b,4bが、それぞれ重ね合わされて構成される。この切欠21,22は、光学測定または電気測定の際に、検査器具100を位置決めするために用いられる。
【0029】
次に、上記の検査器具100を用いて血液検査を行うときの手順を図3に基づいて説明する。
先ず、基板1に設けた検体供給口11から血球分離膜6上に検体Aを供給する(図3(a)参照)。このとき、検体供給口11の回りには堰12が設けられているので、検体Aの流出を招くことなく、これを検体供給口11の内部に確実に供給させられる。また、堰12に内側には円弧状に突出した突起部13が設けられているので、指先の皮膚の表面を穿刺し、穿刺部から出る血液を突起部13ですくい取ることにより、検体供給口11に向けて血液を誘導することができる。この後、同図のように検体供給口11に栓体5を被嵌させてから、この栓体5を押圧機構で押圧することにより、血球分離膜6上に供給された検体Aに加圧力が付与されて、検体Aは血球分離膜6を通過し、このとき血球が分離されて血漿だけが流路8を通って測定室7に移送される(図3(b)参照。なお、積層板20の内部に移送された検体Aは図示していない)。以上のように、栓体5を押圧して検体供給口11内に供給された検体Aを流路8から測定室7へと移送することにより、ポンプなどの機械力を要することなく簡単な操作で検体Aの移送が確実に行え、しかもランニングコストも低廉となる。
【0030】
また、図1,2のように、流路8の一部を形成する第2プレート3を不通水性で通気性のある多孔質材(例えばPTFE)で形成することにより、検体Aを測定室7に移送するため栓体5を押圧操作したとき、流路8や測定室7の空間に溜っている空気が第2プレート3を介して外部に逃げるので、検体Aは空間を満たすように順次移送されて、検体Aの所定量が測定室7に速やかに移送される。特に図1,2に示すように、多孔質材からなる第2プレート3に複数の流路8と測定室7の一部を形成する場合、従来のポンプ駆動による移送手段では各流路8を介して複数の測定室7に所定量の検体Aを移送するのは困難であるのに対し、栓体5の押圧操作により流路8や測定室7の空間に溜っている空気が第2プレート3を介して外部に逃げることによって、各流路8から各測定室7への検体Aの速やかに移送が行える。
【0031】
そして、測定室7に送られた検体Aは、測定室7の吸光度を測定することにより、検体Aの測定が行われる。あるいは、測定室7に一対の電極が設けられている場合には、電極により検体Aの電気測定が行われる。
【0032】
次に、具体的な実施例を挙げて説明する。同実施例では、血液中のグルコースを測定する場合を説明する。
基板1、第1プレート2と第3プレート4としてAS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)製のものを用い、第2プレート3としては厚み75μmで孔径1μmのPTFEフィルムを用いた。また、栓体5としてブチルゴム製のものを用い、血球分離膜6としては非対称孔径膜を用いた。
【0033】
また、試薬充填部9とした測定室7に、NAD3.6wt%、WST−3[2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4ジニトロフェニル)−5−(2,4ジスルフォフェニル)−2H−テトラゾリウム;同仁化学社製]の5.2wt%、ポリビニルピロリドン0.1wt%、pH7.5の50mMリン酸緩衝液、グルコース脱水酵素2KU/ml、ジアホラーゼ1KU/mlを含んだ試薬の10μlを滴下して乾燥させた。
【0034】
そして、検体供給口11から内部に、グルコース濃度がそれぞれ70mg/dl、150mg/dl、300mg/dlである血液の検体Aを滴下し、この後検体供給口11に栓体5を被嵌させて、これを押圧操作して検体Aを流路8から測定室7に移送させた。
【0035】
検体Aの測定は、430nmの透過光を用いて、その吸光度を測定した。この結果、図4のグラフに示す通りである。同グラフから明らかなように、いずれの検体Aでも確実な測定を行える。
【符号の説明】
【0036】
100 検査器具
11 検体供給口
12 堰
1 基板
20 積層板
2 第1プレート
3 第2プレート(多孔質材からなるプレート)
4 第3プレート
6 血球分離膜
7 測定室
71 貫通孔
8 流路
82 貫通孔
83 貫通溝
A 検体
図1
図2
図3
図4