特許第5931728号(P5931728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5931728シリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931728
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】シリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/00 20060101AFI20160526BHJP
   F17C 13/08 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   F17C1/00 Z
   F17C13/08 301A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-529410(P2012-529410)
(86)(22)【出願日】2009年9月22日
(65)【公表番号】特表2013-505408(P2013-505408A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】IT2009000430
(87)【国際公開番号】WO2011036681
(87)【国際公開日】20110331
【審査請求日】2012年9月20日
【審判番号】不服2014-16039(P2014-16039/J1)
【審判請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】512071204
【氏名又は名称】ファーベル インダストリエ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100077702
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 和夫
(72)【発明者】
【氏名】コラ ギアン,ルイギ
【合議体】
【審判長】 渡邊 豊英
【審判官】 井上 茂夫
【審判官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−123590(JP,A)
【文献】 米国特許第2066517(US,A)
【文献】 特開2000−81199(JP,A)
【文献】 特開2003−247696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/08
F17C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロージャーバルブによって閉塞可能なガス貯蔵スペース(3)を内部に区画しているシリンダー本体(2)を備えた一つ又はそれ以上の数のガスシリンダー(1)を有するシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)であって、
前記シリンダー本体(2)が、
前記ガス貯蔵スペース(3)を区画している管状壁(5)と、
前記管状壁(5)の下端に接続されて前記ガスシリンダー(1)の下側(7)で前記ガス貯蔵スペース(3)を区画しているボトム壁(6)と、
前記管状壁(5)の上端に接続されて前記下側(7)と反対側の前記ガスシリンダー(1)の上側(9)で前記ガス貯蔵スペース(3)を区画しているアッパー壁(8)を有し、
前記管状壁(5)が、少なくとも一つの第一の管状部(11)と、前記第一の管状部(11)に隣接位置して前記第一の管状部よりも狭窄された少なくとも一つの第二の管状部(12)を有し、
前記シリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)が、
前記ガスシリンダー(1)を少なくとも部分的に受け入れるように構成された支持/保持構造(21)と、
前記支持/保持構造(21)に対して固定され、前記ガスシリンダー(1)を取り囲んで前記ガスシリンダー(1)を前記支持/保持構造(21)に固定するよう適合された一つ又はそれ以上の数のロッキングクランプ又はロッキングブラケット(22)を更に有し、
前記ロッキングクランプ又はロッキングブラケット(22)が、前記第二の管状部(12)によって形成される周回り方向の座部(23)内に少なくとも部分的に嵌め合わされ、
前記第一の管状部(11)が、前記ロッキングクランプ又はロッキングブラケット(22)と前記支持/保持構造(21)との間に区画される中間スペース(24)内で伸びており、
前記第二の管状部(12)が、両側を対応する第一の管状部(11)で区画された環状狭窄部(15)を構成しており、
前記第二の管状部(12)が、前記ガスシリンダーの縦方向軸線(L)に沿って一定の直径を有する略円筒状の中央リング状部(16)を構成し、二つの遷移サイドリング状領域(17)によって、前記中央リング状部(16)と、隣接した前記第一の管状部(11)とが接続されている、ことを特徴とするシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項2】
前記第一の管状部(11)と前記第二の管状部(12)とを含んだ前記管状壁(5)が、シームレス鋼の単一片により形成され、その厚みが任意の塗装層を除いて、単一の層によって占められている、請求項1に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項3】
前記遷移サイドリング状領域(17)が、周回り方向の段部を構成している、請求項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項4】
前記遷移サイドリング状領域(17)が、縦方向軸線(L)を含む縦方向の面において、二重曲率面を呈する形状又は円錐台(25)状の形状を有し、且つ、前記中央リング状部(16)の縦方向の伸長(L2)よりも短い縦方向の伸長(L1)を有している、請求項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項5】
前記第一の管状部(11)が、前記ガスシリンダー(1)の縦方向軸線(L)に沿って一定の直径を有する略円筒状のリング状部を構成している、請求項1〜の何れか一項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項6】
全ての前記第一の管状部(11)の縦方向の全長が、全ての前記第二の管状部(12)の縦方向の全長よりも長くなるように設定されている、請求項1〜の何れか一項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項7】
前記管状壁(5)が、一つの第一の管状部(11)と、該第一の管状部(11)に隣接位置して、周回り方向の段部(18)によって前記第一の管状部(11)から離間された一つの第二の管状部(12)を有している、請求項1〜の何れか一項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項8】
前記ガスシリンダー(1)が、前記ガス貯蔵スペース(3)と連通して前記クロージャーバルブ(4)を受けることができるように前記シリンダー本体(2)に形成されたネジ付き管状ネック(10)を更に有し、該ネック(10)が、前記ガス貯蔵スペース(3)内に突出した雌ねじ付き内側部(19)を有している、請求項1〜の何れか一項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項9】
前記ネック(10)が、前記シリンダー本体(2)の前記アッパー壁(8)に形成されている、請求項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項10】
前記ガス貯蔵スペース(3)が、前記ネック(10)の内側部(19)の回りに環状のスペース部を構成している、請求項又はに記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項11】
前記ネック(10)の内側部(19)が前記シリンダー本体(2)と一体に形成されている、請求項10の何れか一項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【請求項12】
前記ネック(10)の内側部(19)が、前記シリンダー本体(2)と別体に形成されて、前記シリンダー本体(2)に接続されている、請求項11の何れか一項に記載のシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ガスを貯蔵するために用いられる可搬型容器としてのガスシリンダーで且つそれの閉塞を可能にするバルブを備えたガスシリンダーに関するものである。このシリンダーは、全体的に金属から作ることができ、または、繊維強化複合材料の外層によって補強された、例えば鋼製の内側ライナーから構成することができる。
【0002】
シリンダー内に貯蔵されるガスは、水素又は酸素の如き臨界温度が−50℃より低い場合の圧縮ガスと、LPGの如き臨界温度が−50℃より高い場合の液化ガスと、例えば、アセトン中のアセチレンの如き溶解ガスに分類される。
【0003】
シリンダーは多くの用途に用いられ、それの構造及び検査のための基準は、シリンダーが応用される分野に応じて異なる。ガスシリンダーの主な応用分野なかには、自動トラクション(autotraction)用,家庭用又は工業用に液化ガス又は圧縮ガスを貯蔵する場合、圧縮エアー用のエアー保持タンクの場合、吸引具に吸引可能な混合ガスを貯蔵する場合、医療ガスの貯蔵の場合、又は、消火器の場合がある。
【0004】
家庭用液化ガスのためのものとして知られているガスシリンダーは、溶接された鋼シートから作られた円筒状のものであり、その上部にハンドルを有している。このハンドルは、ガスシリンダーを握り易くすると共に、家庭用に最初に使用される前に減圧弁を付加しなければならないクロージャーバルブを保護するものである。液化ガス用のこの公知のガスシリンダーは、10Kg〜25Kgの液化ガスを保持することのできる内部スペースを有し、該液化ガスは、温度が変化するに応じて圧力を補償する残余スペースを残した状態で、内部スペースに部分的に満たされている。
【0005】
LPG車両用の公知のガスシリンダーは、同様に、溶接された鋼シートから作られた円筒状のものであり、通常、車両のトランク内に水平状態で固定される。
【0006】
メタン,水素及び混合気のような圧縮ガスにより駆動する車両用の公知のガスシリンダーは、一般にシームレス鋼から同様に円筒状に形成され、車両に確りと固定される。
【0007】
圧縮ガス貯蔵用の公知のガスシリンダーは、200バール以上の圧力で作動し、従って、該ガスシリンダーは構造的に頑丈でなければならない。そのガスシリンダーは、凸状の又は凹状のベースと半球状又は楕円形のオジーブとを含んだ円筒状本体と、シリンダーの上部に配置されたクロージャーバルブを有し、このクロージャーバルブは、ネジ付きカラーに螺合されたキャップによって保護されている。このタイプのシリンダーは、通常シームレス鋼から作られている。
【0008】
構造的耐性及び耐圧性の必要性から、公知のガスシリンダーは、鋼シートを溶接することにより、鋼シートを冷間深絞りすることにより、鋼製の管状部材から形成することにより、又は、鋼ビレットから形成することにより製造することができる。クロージャーバルブをシリンダー本体に固定するために、(溶接又は熱間加工又は冷間加工によって)シリンダーの上部オジーブから軸線方向で外方に伸びるネジ付き筒状ネックを設け、クロージャーバルブを該ネックに螺合させることができる。
【0009】
ガスシリンダーは、通常、ガスシリンダーを所定の位置に安全に固定するためにシリンダー本体を少なくとも部分的に取り囲む一つ又はそれ以上の数のクランプ又はブラケットを介して、例えば、車両又は別の応用分野において固定される。
【0010】
固定ブラケットは、一般に、車両又はその他の適用分野における特別なシリンダーコンパートメント内に配置され固定されて、ガスシリンダーとそのようなシリンダーコンパートメントとの間に程度の差があるが、大きな使用されない空間を作り出してしまうこととなる。
【0011】
更に、多くの用途においては、ガスシリンダーを収容するのに利用可能なスペースは、不規則な形状、例えば、長方形というよりも略台形の形状を有し、それ自体の使用のための機能的要素、例えば、管又は補強支柱によって、妨害されることがある。そのような状態においてさえ、ガスを貯蔵するために、利用可能であるが使用されないスペースを減少させることが望ましい。
【0012】
本発明の目的は、ガス貯蔵のために、シリンダーコンパートメント内の利用可能なスペースをより有効に活用することのできる、従って、特にガス−トラクション車両に関してガスシリンダーコンパートメント全体の寸法を一定に維持しつつトラクション自律性(traction autonomy)を向上させることのできるような特徴を有する、上述したタイプのガスシリンダーを提供することにある。
【0013】
本発明のこの目的及びその他の目的は、クロージャーバルブによって閉塞可能なガス貯蔵スペースを内部に区画しているシリンダー本体を有するガスシリンダーによって達成され、該シリンダー本体は、縦軸線に沿って伸びた管状壁と、シリンダーの下側でガス貯蔵スペースを区画しているボトム壁と、シリンダーの下側と反対側の上側でガス貯蔵スペースを区画しているアッパー壁と、ガス貯蔵スペースと連通してクロージャーバルブを受け入れることができるようにシリンダー本体に形成されたネジ付き管状ネックを有し、管状壁は、少なくとも一つの第一の拡大管状部と、該第一の拡大管状部に隣接して配置されて拡大管状部よりも狭窄された第二の管状部を有している。
【0014】
狭窄管状部に隣接した拡大管状部が存在するために、ガスシリンダーの全体寸法を不規則な形状のスペースに適合させることができると共に、狭窄管状部によって形成された外側周回り方向の座部内にロッキングクランプ又はブラケットを収容させることを可能にし、且つ、ガス貯蔵のために、ロッキングブラケットに隣接した領域を有効活用することを可能にさせる。
【0015】
本発明の一側面によれば、上述した如き拡大管状部と狭窄管状部とを含んだ管状壁は、シームレス鋼の単一の片で形成され、その厚みは、管状壁の外側面又は内側面に随意に付加される任意の塗装層を除いて、単一の層によって占められている。
【0016】
このことは、シリンダーの適正試験に役立ち、拡大管状部と狭窄管状部との間の変遷領域における管状壁の耐性を向上させ、従って、壁自体の厚みを制限することを可能にさせる。
【0017】
本発明の更に別の側面によれば、狭窄管状部は、複数の、好ましくは二つの環状狭窄部を構成し、これら環状狭窄部の各々は、両側で対応の拡大管状部によって区画されている。
【0018】
シリンダーのこの特定の構成によって、ロッキングクランプの正確な位置決めが可能になり、ガスシリンダーの縦方向でのロッキングクランプの偶発的な移動を防止することができる。
【0019】
本発明の内容及びその利点をより明りょうに理解できるようにするべく、本発明を何ら制限するものではない幾つかの実施形態について添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るガスシリンダーの、縦方向部分が部分的に断面で示された側面図である。
図2図2は、本発明の別の実施形態に係るガスシリンダーの、縦方向部分が部分的に断面で示された側面図である。
図3図3は、図1図2とに示された双方のガスシリンダーに適用可能な、本発明の更に別の実施形態に係るガスシリンダーの縦断面部分図である。
図4A図4Aは、本発明の一実施形態に係るシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体を概略的に示した図である。
図4B図4Bは、本発明の別の実施形態に係るシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体を概略的に示した図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態に係るガスシリンダーの、縦方向部分が部分的に断面で示された側面図である。
図6図6は、本発明の別の実施形態に係るシリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体を概略的に示した図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るガスシリンダーの組立方法を概略的に示した図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係るガスシリンダーの組立方法を概略的に示した図である。
図9図9は、本発明の更に別の実施形態に係るガスシリンダーの、縦方向部分が部分的に断面で示された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照すると、本発明によるガスシリンダー(以下、単に「シリンダー」という。)は参照符号1で示されている。シリンダー1は、内部にガス貯蔵スペース3を区画しているシリンダー本体2を有し、ガス貯蔵スペース3はクロージャーバルブ(図示せず)によって閉塞可能になっている。シリンダー本体2は、シリンダー1の縦軸線Lに沿って伸びた管状の、好ましくは略円筒状の壁5と、例えば、球形の又は楕円形のキャップ形状に形成され、管状壁5の下端に接続されてシリンダー1の下側7でガス貯蔵スペース3を区画しているボトム壁6と、例えば、オジーブ状に形成され、管状壁5の上端に接続されてシリンダー1の下側7と反対側であるシリンダー1の上側9でガス貯蔵スペース3を区画しているアッパー壁8を有している。シリンダー1は、ガス貯蔵スペース3に連通してクロージャーバルブを(ねじ込みによって)受けることができるようにシリンダー本体2に形成されたネジ付き管状ネック10を更に有している。
【0022】
本発明の一側面によれば、管状壁5は、拡大して形成された少なくとも一つの第一の管状部11と、第一の管状部11に隣接位置して、第一の管状部11よりも狭窄して形成された少なくとも一つの第二の管状部12を有している。
【0023】
狭窄管状部12に隣接した拡大管状部11が存在するために、狭窄管状部12内にロッキングクランプ又はブラケットを収容することができ、且つ、ロッキングクランプ又はロッキングブラケットに隣接した領域をガスの収容のために有効活用することができる。
【0024】
本発明の一側面によれば、そのような拡大管状部11と狭窄管状部12とを含んだ管状壁5は、シームレス鋼の単一片から形成され、その厚みは、管状壁5の外側面13又は内側面14に随意に付加される(機械的耐性に関係するものではない)任意の塗装層を除いて、単一の層によって占められている。
【0025】
このことは、シリンダーの適正試験に役立ち、拡大管状部11と狭窄管状部12との間の変遷領域における管状壁の耐性を向上させ、従って、壁自体の厚みを制限することを可能にさせる。
【0026】
本発明の更に別の一側面によれば(図2)、狭窄管状部12は、複数の、好ましくは二つの環状狭窄部15を構成し、これら環状狭窄部の各々は、両側で対応の拡大管状部によって区画されている。
【0027】
シリンダーのこの特定の構成によって、ロッキングクランプの正確な位置決めが可能になり、ガスシリンダー1の縦方向Lでのロッキングクランプの偶発的な移動を防止することができる。
【0028】
ガスを貯蔵するのに利用可能なスペースを最大限に活用するように、伸張膜として管状壁5の応力が限りなく多く必要とされることと、非円筒状の形状が必要とされることとを最善に調整するという目的で、狭窄部12、又は、好ましくは全ての狭窄部12が、縦軸線Lに沿って直径が一定している円筒状の中央リング状部16と、中央リング状部16を隣接した拡大部11に接続させている二つの遷移サイドリング状部17を構成して、周回り方向の段部が形成されている。
【0029】
有益なことに、サイドリング状部17は、縦方向軸線Lを含んだ縦方向面において、二重曲率面を呈する形状図1)又は円錐台25の形状(図5を有し、円筒状中央リング状部16の縦方向の伸長L2よりも短い縦方向の伸長L1を有している。狭窄領域の曲げ応力を低減させる目的で、サイドリング状部の縦方向伸長L1の総和よりも短く中央リング状部の縦方向伸長L2を設定すること、即ち、L2<2L1とすることが有益である。
【0030】
また、拡大管状部11は、好ましくは、シリンダー1の縦方向軸線Lに沿って一定した直径を有する一つ又はそれ以上の円筒状リング部を構成している。
【0031】
ガス貯蔵スペースを最大の寸法にさせるために、全ての拡大管状部11の縦方向の全長が全ての狭窄管状部の縦方向の全長よりも長くなるようにする、即ち、ΣL3>ΣL1+ΣL2とすることができる。
【0032】
本発明の実施形態(図1及び図5)によれば、管状壁5は単一の拡大部11と単一の狭窄部12とを構成している。狭窄部12は、拡大部11に隣接位置し、周回り方向の段部18(図1)によって、又は、図2を参照して上述したように形成することのできる狭窄部12の単一のサイドリング状部17によって形成される円錐台状接続部25(図5)によって、拡大部11から離間されている。
【0033】
こうして、ガスシリンダー1は、例えば、ガス駆動車両のシリンダーコンパートメント内に使用されないスペースを残すことなく、一つ又はそれ以上のロッキングブラケットによってシリンダーの固定を可能にさせるテーパーの付いた段状の形状を有している。
【0034】
本発明の更に別の側面によれば(図9)、二つの狭窄部12が管状壁5の上部伸長部と下部伸長部を構成し、それらの間に拡大管状部11が伸びて、管状壁5の中間伸長部、好ましくは、略中間部を構成している。
【0035】
添付図面から理解できるように、管状壁の厚みは、実質的に変化しておらず、即ち、管状壁5の内側面14は、外側面13の向きに略追従しているので、外部スペース条件に対する管状壁5の形状適応は、シリンダー1内のガス貯蔵スペースを最大限にさせることに繋がる。
【0036】
本明細書中に記載した様々な特徴の一つ又は全てと組み合わせて有効的に実施可能な本発明の更なる一側面によれば(図3)、ガスシリンダー1のネック10は、雌ネジが付形されてシリンダー本体2のガス貯蔵スペース3内へ突出した内側部19を有している。
【0037】
シリンダー本体2の内部に少なくとも部分的に突出した、ネジ付きネック10の上記構成のために、クロージャーバルブを螺合させることが必要とされる場合のシリンダーの高さの少なくとも一部をもガス貯蔵のために活用することができる。
【0038】
本発明の一側面によれば、ネック10はシリンダー本体2の上部壁8に形成されているので、ガス貯蔵スペース3は、ネック10の内側部19の回りに伸びている環状スペース部を構成し、その環状スペースは内側部19自体と上部壁8とによって区画されている。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、ネック10の内側部19は、シリンダー本体2と一体のものとして形成されている。
【0040】
それに代えて、ネック10の内側部19、又はネック10全体を、シリンダー本体2とは別個に製造し、その後に、例えば、ねじ込み又は溶接によってシリンダー本体2に接続することができる。
【0041】
本発明は、全てのタイプのガスシリンダーに有効的に適用することができ、特に、好ましくは鋼で形成された金属製ガスシリンダーに有効的に適用することができ、それらガスシリンダーは、冷間加工(例えば、鋼シートの深絞り)によって、又は、鋼ビレットを熱間加工することにより(例えば、カッピングと熱間穿孔によって)、又は、端部が閉塞された鋼管を熱間加工することによって(例えば、熱間スピニングによって)、又は、一つ又はそれ以上の数の鋼シートを溶接することによって、製造される。
【0042】
管状壁5の狭窄部12は、シリンダーの壁に、又は、ステージの壁(ここで、用語「ステージ」とは、ネックを構成する上部をオジーブ状に形成する前の半仕上げ状態のシリンダー本体を意味する。)に作用される成形工具27による熱間圧延又は冷間圧延によって有効的に得ることができる。この目的のために、シリンダー1を、縦軸線Lを中心として回転させ、工具27を、管状壁5に接触させるように径方向で近づけて、同時に、管状壁5を変形させて狭窄部12に相当する領域における直径を局所的に低減させるように縦方向Lに移動させる(図8)。
【0043】
これに代えて(図7)、狭窄部12に相当する領域における管状壁5の直径を協働して局所的に低減させるようになっているポンチ28と円錐台状のダイ29とによって、オジーブを形成する前に、ステージを引き抜きするのが有益である。
【0044】
ネック10自体を製造し、及び/又は、後続の機械的処理を伴い又は伴わずに、熱間加工、溶接又はねじ込みによってシリンダー本体2に接続させることができる。
【0045】
図4A及び図4Bは、ガス用の、例えば、車両のガス用のシリンダーコンパートメント−シリンダー組立体20の実施形態を示した図である。このシリンダーコンパートメント−シリンダー組立体20は、上述した内容の一つ又はそれ以上のガスシリンダー1と、(例えば、車両の)支え構造に固定可能な又は同支え構造に形成され、ガスシリンダーを少なくとも部分的に受け入れるように構成された支持/保持構造21と、好ましくはロッキングクランプ又はブラケットの如き一つ又はそれ以上の数のロッキング部材22を有している。ロッキング部材22は、支持/保持構造21に対して固定され又は固定可能に構成され、ガスシリンダー1を支持/保持構造21に対して固定するためにガスシリンダー1を少なくとも部分的に取り囲むように構成されている。そのようなロッキング部材22は、狭窄部12によってガスシリンダー1の外側面13に形成された周回り方向の座部23内に少なくとも部分的に収容される。更に、ガスシリンダーの筒状壁5の拡大部11の少なくとも一つは、二つのロッキング部材22の間に、又は、一つのロッキング部材22と支持/保持構造21との間に区画された中間スペース24内で伸びている(さもなければ、中間スペース24は用いられない)。
【0046】
図6は、本発明によるシリンダーコンパートメント−シリンダー組立体20の更に別の実施形態を示した図である。この組立体20においては、支持/保持構造21は、相互に傾斜した側壁及び/又は機能的部材26(例えば、チューブ又は補強支柱)のため遮断された部分を有し、シリンダー1は、拡大部11と狭窄部12とが存在するために支持/保持構造21の形状に適合されている。
【0047】
本発明の上述した記述及び添付図面に基づいて、ガスシリンダー1とシリンダーコンパートメント−シリンダー組立体20が、従来技術に関連して上述した欠点を如何に克服することができるか、例えば、車両の使用におけるような適用分野において、シリンダーコンパートメント−ガスシリンダー組立体の全体寸法を一定に維持しつつガス貯蔵スペース3の体積を如何に増大させることができるかを当業者は理解できるであろう。
【0048】
付随的な又は特別な要請に応える目的で、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、当業者が、上述したガスシリンダーとシリンダーコンパートメント−シリンダー組立体に対して様々な修正及び変更を加えることができることは明らかである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9