【実施例】
【0021】
次に、ビシナルジオールとして2,3−ブタンジオールを用い、触媒として希土類のピロリン酸塩を用いた、本発明の分子内脱水反応を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
原材料と触媒
〔2,3−ブタンジオール〕
2,3−ブタンジオールは東京化成製を用いた。
【0022】
〔ピロリン酸ランタン(La
4(P
2O
7)
3)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水80mlを入れ、塩化ランタン・7水和物(和光純薬製)8.9gを加え溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlのビーカーにイオン交換水16mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物(和光純薬製)8.0gと水酸化ナトリウム(関東化学製、特級)1.06gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸ランタンの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは7.7であった。ろ過後に、沈殿物は80mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0023】
〔ピロリン酸セリウム(Ce
4(P
2O
7)
3)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水60mlを入れ、塩化セリウム・7水和物(和光純薬製)6.7gを加え、溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカ-にイオン交換水12mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物6.0gと水酸化ナトリウム0.8gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸セリウムの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは7.2であった。ろ過後に、沈殿物は60mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0024】
〔ピロリン酸ネオジム(Nd
4(P
2O
7)
3)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水60mlを入れ、塩化ネオジム・6水和物(Aldrich社製)6.5gを投入、溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水12mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物6.0gと水酸化ナトリウム0.8gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸ネオジムの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは7.7であった。ろ過後に、沈殿物は60mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0025】
〔ピロリン酸サマリウム(Sm
4(P
2O
7)
3)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水160mlを入れ、酢酸サマリウム・4水和物(三津和化学薬品製)7.2gを投入、溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水12mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物6.0gと水酸化ナトリウム0.4gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸サマリウムの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは5.8であった。ろ過後に、沈殿物は60mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0026】
〔ピロリン酸イットリウム(Y
4(P
2O
7)
3)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水60mlを入れ、塩化イットリウム・6水和物(和光純薬製)5.5gを投入、溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水12mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物6.0gと水酸化ナトリウム0.7gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸サマリウムの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは7.1であった。ろ過後に、沈殿物は60mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0027】
〔ピロリン酸三リチウムナトリウム(Li
3NaP
2O
7〕
特許文献1(特公昭54-9148号公報)の例1を参考にして調製した。500mlの丸底フラスコに、塩化リチウム(和光純薬製)6.36gとイオン交換水200mlにを入れ、溶解し、95℃に加熱した(A液)。200mlビーカーにイオン交換水50mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物22.3gを加え95℃に加熱溶解した(B液)。A液にB液を滴下し、沈殿させた後、20℃まで冷却した。その後ろ過し、沈殿物をメタノール100mlで洗浄した。110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0028】
〔ピロリン酸カルシウム(Ca
2P
2O
7)〕
特許文献2(特開昭50-115686号公報)の例1を参考にして塩化カルシウムを用いて調製した。300mlの丸底フラスコに、塩化カルシウム(関東化学製、特級)4.0gとイオン交換水80mlを加え溶解し、95℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水16mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物8.0gを加え95℃に加熱溶解する(B液)。A液にB液を滴下し、沈殿させた後、20℃まで冷却した。その後ろ過し、沈殿物を水80mlで洗浄、ろ過した。110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0029】
〔リン酸ランタン(LaPO
4)〕
ピロリン酸ランタンとの比較のため、リン酸ランタンを以下の方法で調製した。300mlの丸底フラスコに、イオン交換水80mlと塩化ランタン・7水和物8.9gを加え溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水16mlとリン酸水素二ナトリウム(関東化学、特級)3.4gと水酸化ナトリウム1.2gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、リン酸ランタンの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは6.9であった。ろ過後に、沈殿物は80mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0030】
〔反応成績の評価方法〕
FIDガスクロマトグラフを用いて生成物を分析し、2,3-ブタンジオール転化率、および生成物の選択率を炭素原子基準で算出した。
【0031】
2,3−ブタンジオール(A)の分子内脱水反応によって目的物であるブタジエン(C)に至る反応は、中間体として3−ブテン−2−オール(B)を経由する反応である。本発明においては、原料転化率Cと反応選択率Sを次の様に定義した。
【0032】
【数1】
【0033】
〔反応方法〕
触媒の触媒活性評価は、特に記述がない限りは、以下の反応方法で行った。
【0034】
上記で得られた触媒2.0gを3/8インチの反応管に充填後、窒素気流中、反応管を管状電気炉で加熱し、触媒層が所定温度に達した後、窒素、および2,3-ブタンジオールの所定量を供給し、常圧、反応温度350℃で反応を行った。結果を表1に示した。なお、本発明におけるWHSV(触媒重量基準の空間速度)とは下式で定義される。
WHSV(hr
−1)=2,3-ブタンジオール流量(g/hr)/触媒(g)
【0035】
〔実施例1〜5、比較例1〜3〕
WHSVが0.5hr
−1、反応温度が350℃、2,3-ブタンジオール:N
2=1:39(モル比)の条件で表1に記載した触媒を用いて活性評価を行った。結果を表1に示した。
【0036】
【表1】
【0037】
上表から分かるように、脱水触媒として希土類元素のピロリン酸塩を用いた実施例1〜5においては高い原料転化率と良好な反応選択性を示す一方で、アルカリ金属やアルカリ土類金属のピロリン酸塩を触媒に用いた系では転化率、選択率ともに低い。また実施例1と比較例3の選択率の対比から、触媒を構成するアニオン部はピロリン酸アニオンがリン酸アニオンに比べてはるかに優秀な反応成績を与えることが明瞭である。