特許第5931781号(P5931781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931781
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】共役ジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20160526BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20160526BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
   C07C1/24
   C07C11/167
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-48314(P2013-48314)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-172883(P2014-172883A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】堀内 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】池永 裕一
(72)【発明者】
【氏名】林 貴臣
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭54−009148(JP,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0107353(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビシナルジオールを分子内脱水して共役ジエンを製造する方法において、希土類元素のピロリン酸塩を触媒に用いる共役ジエンの製造方法。
【請求項2】
希土類元素がランタノイドであることを特徴とする請求項1記載の共役ジエンの製造方法。
【請求項3】
希土類元素が、ランタンおよびセリウムから選ばれることを特徴とする請求項2記載の共役ジエンの製造方法。
【請求項4】
固定床流通反応器を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共役ジエンの製造方法。
【請求項5】
ビシナルジオールが、2,3−ブタンジオールまたは2−メチル−2,3−ブタンジオールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共役ジエンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビシナルジオールの分子内脱水による共役ジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ゴムの原料となる1,3−ブタジエンや、テルペン類又はポリイソプレンゴムの原料であるイソプレンなどの共役ジエンは、一般にナフサ分解を経て製造されている。しかし、近年は、原油に代表される化石資源の枯渇が問題視されている。このような背景下で、非ナフサ原料の代表格であるバイオマスを用いた共役ジエンの製造の試みが活発化している。そのうちの一つが、バイオマスの発酵によって得られる2,3−ブタンジオールまたは2−メチル−2,3−ブタンジオールのようなビシナルジオールを、特定の脱水触媒の存在下で分子内脱水反応を生起させてブタジエンまたはイソプレンを製造する方法である(特許文献1〜5)。しかし、これら先行技術(特許文献1〜2)に開示された脱水触媒を用いる分子内脱水反応効率は工業的生産の視点から未だ十分とは言えず改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭54−9148
【特許文献2】特開昭50−115686
【特許文献3】US2012/0252082A
【特許文献4】CN101580462A
【特許文献5】KR10−2012−0096125
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記のようなビシナルジオールの分子内脱水反応の成績を向上させ、共役ジエンを工業的に有利に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、
ビシナルジオールを分子内脱水して共役ジエンを製造する方法において、希土類元素のピロリン酸塩を触媒に用いる共役ジエンの製造方法に係わる。
本発明の製造方法においては、希土類元素はランタノイドであることが好ましい。
【0006】
さらに本発明の製造方法においては、希土類元素がランタンおよびセリウムから選ばれることが好ましい。
本発明の製造方法は固定床流通反応器を用いて実施されることが好ましい。
【0007】
また本発明においてはビシナルジオールが、2,3−ブタンジオールまたは2−メチル−2,3−ブタンジオールであり、生成する共役ジエンが各々ブタジエンまたはイソプレンであることが好ましい態様である。
【発明の効果】
【0008】
ビシナルジオールの分子内脱水反応によって得られる共役ジエンの得率に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明について詳細に説明する。
本 発明は、ビシナルジオールを分子内脱水して共役ジエンを製造する方法において、希土類元素のピロリン酸塩を脱水触媒に用いる共役ジエンの製造方法である。
【0010】
ビシナルジオールとは、2つの隣接した炭素原子の各々に一つの水酸基が結合したジオールを意味する。ビシナルジオールの総炭素数は、通常4〜20の範囲にある脂肪族ジオールである。好ましい総炭素数は4〜10の範囲であり、特に好ましくは4または5である。本発明の製造方法において好ましいビシナルジオールは、2,3−ブタンジオールまたは2−メチル−2,3−ブタンジオールである。
【0011】
本発明に係わる脱水触媒は、希土類元素のピロリン酸塩である。ここで希土類元素とは、具体的には、スカンジウム、イットリウム、そしてランタノイドに属する金属すなわちランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられる。本発明においては、希土類元素のうち、ランタノイドが好ましく、ランタン(La)またはセリウム(Ce)が反応成績の視点からより好ましい。
【0012】
本発明に係わる脱水触媒は、希土類元素から選ばれる1種以上の元素のピロリン酸塩を含んでいればよく、触媒中の希土類元素とリン元素の当量比は(希土類元素)/(リン元素)として2/6〜6/6の範囲が好ましく、3/6〜5/6の範囲がより好ましい。
【0013】
希土類元素のピロリン酸塩の調製法としては、種々の方法により調製することができる。例えば、ランタンピロリン酸塩は、加温された三塩化ランタン水溶液中に、ピロリン酸源としてのピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸カリウム水溶液を添加する方法によって、ランタンピロリン酸塩の前駆体を沈殿として析出させ、次いで熟成後に、ろ過、水洗、乾燥、焼成によって調製することができる。ピロリン酸源の水溶液の濃度は1〜50wt%が好ましく、5〜40wt%がより好ましい。添加するピロリン酸源の水溶液の温度は、40〜99℃に保持することが好ましい。50〜95℃に保持することがさらに好ましい。熟成後の上澄み液のpH制御のために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等塩基をピロリン酸源の水溶液にあらかじめ添加することができる。本発明者らは、前記の熟成工程後における上澄み液のpHを4〜9、好ましくは5〜8の範囲に制御することが反応成績を向上させる上でキーとなることを見出している。熟成後のpHが低い場合、共役ジエンの選択性が悪くなり、pHが高い場合、活性が低くなる。ろ過段階の前までであればいずれの段階でもpH制御を行ってよい。
【0014】
希土類元素源としては水溶性であればいずれの形態であっても使用できるが、希土類元素の塩化物、硝酸塩、酢酸塩の使用が好ましい。このような希土類元素塩の水溶液の濃度は1〜50wt%が好ましく、2〜40wt%がより好ましい。熟成が終了するまで水溶液の液温を40〜99℃に保持することが好ましい。60〜95℃に保持することがさらに好ましい。
【0015】
熟成は、沈殿時と同じ温度に保持することが好ましい。熟成時間は10分〜24時間が好ましく、30分〜20時間がより好ましい。
【0016】
触媒調製時にpH制御用として用いられる水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等塩基およびピロリン酸源に含まれるナトリウム、カリウム等は、水洗後もある程度残留してもよいが、多く残留していると触媒性能に影響があるので、触媒中のナトリウムあるいはカリウム等のアルカリ元素の濃度は、水洗により0.001〜2wt%の範囲に制御することが好ましい。水洗は沈殿物100重量部あたり、10〜1000重量部、好ましくは30〜300重量部のイオン交換水を用いて行う。洗浄回数は1回以上であればいずれの回数でもよいが、コストの点で工程短縮が望ましく5回以内が好ましい。水洗方法は回分式であっても連続式であってもよい。
【0017】
乾燥は、減圧、常圧いずれであってもよく、20〜200℃の範囲の温度で1〜24時間行うことが好ましい。また焼成は、300〜700℃、好ましくは400〜600℃の範囲で行われる。焼成時間は30分〜24時間の範囲が好ましく、1〜20時間がより好ましい。焼成時の雰囲気は、空気、あるいは窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスを用いられる。
【0018】
触媒の形状は、いずれの形状でも用いることができるが、例えば、粉状、粒状、ペレット状、球状等が挙げられる。サイズについても、反応器に充填可能なサイズであればいずれのものでもよい。
【0019】
本発明の分子内脱水反応の反応形式についても特段の制限はないが、特に気相流通式反応が好ましい。触媒の充填方式としては、固定床、流動床、懸濁床等種々の方式が採用され、いずれの方式で実施してもよいが固定床が好ましく採用される。気相で本発明の分子内脱水反応を行う場合は、原料であるビシナルジオールはそのままの形態で反応器に供給されてもよいし、不活性ガスで希釈された形態で供給されてもよい。希釈ガスとして窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスをあげることができ、希釈ガスの濃度は、1〜99.9モル%の範囲、好ましくは10〜99.5モル%の範囲、より好ましくは20〜99%の範囲である。また、ビシナルジオールの濃度は、0.1〜99モル%の範囲、好ましくは0.5〜90モル%の範囲、より好ましくは1〜80モル%の範囲である。
【0020】
分子内脱水温度は、200〜600℃、好ましくは250〜550℃、より好ましくは300〜500℃である。反応圧力は、常圧〜2MPaの範囲で反応することができる。反応器に充填された触媒に対する原料供給量の重量比を示す重量空間速度(WHSV)は0.1〜5、好ましくは0.2〜3(hr−1)の範囲にある。
【実施例】
【0021】
次に、ビシナルジオールとして2,3−ブタンジオールを用い、触媒として希土類のピロリン酸塩を用いた、本発明の分子内脱水反応を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
原材料と触媒
〔2,3−ブタンジオール〕
2,3−ブタンジオールは東京化成製を用いた。
【0022】
〔ピロリン酸ランタン(La(P)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水80mlを入れ、塩化ランタン・7水和物(和光純薬製)8.9gを加え溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlのビーカーにイオン交換水16mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物(和光純薬製)8.0gと水酸化ナトリウム(関東化学製、特級)1.06gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸ランタンの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは7.7であった。ろ過後に、沈殿物は80mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0023】
〔ピロリン酸セリウム(Ce(P)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水60mlを入れ、塩化セリウム・7水和物(和光純薬製)6.7gを加え、溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカ-にイオン交換水12mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物6.0gと水酸化ナトリウム0.8gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸セリウムの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは7.2であった。ろ過後に、沈殿物は60mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0024】
〔ピロリン酸ネオジム(Nd(P)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水60mlを入れ、塩化ネオジム・6水和物(Aldrich社製)6.5gを投入、溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水12mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物6.0gと水酸化ナトリウム0.8gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸ネオジムの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは7.7であった。ろ過後に、沈殿物は60mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0025】
〔ピロリン酸サマリウム(Sm(P)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水160mlを入れ、酢酸サマリウム・4水和物(三津和化学薬品製)7.2gを投入、溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水12mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物6.0gと水酸化ナトリウム0.4gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸サマリウムの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは5.8であった。ろ過後に、沈殿物は60mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0026】
〔ピロリン酸イットリウム(Y(P)〕
300mlの丸底フラスコに、イオン交換水60mlを入れ、塩化イットリウム・6水和物(和光純薬製)5.5gを投入、溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水12mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物6.0gと水酸化ナトリウム0.7gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、ピロリン酸サマリウムの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは7.1であった。ろ過後に、沈殿物は60mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0027】
〔ピロリン酸三リチウムナトリウム(LiNaP
特許文献1(特公昭54-9148号公報)の例1を参考にして調製した。500mlの丸底フラスコに、塩化リチウム(和光純薬製)6.36gとイオン交換水200mlにを入れ、溶解し、95℃に加熱した(A液)。200mlビーカーにイオン交換水50mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物22.3gを加え95℃に加熱溶解した(B液)。A液にB液を滴下し、沈殿させた後、20℃まで冷却した。その後ろ過し、沈殿物をメタノール100mlで洗浄した。110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0028】
〔ピロリン酸カルシウム(Ca)〕
特許文献2(特開昭50-115686号公報)の例1を参考にして塩化カルシウムを用いて調製した。300mlの丸底フラスコに、塩化カルシウム(関東化学製、特級)4.0gとイオン交換水80mlを加え溶解し、95℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水16mlとピロリン酸ナトリウム・10水和物8.0gを加え95℃に加熱溶解する(B液)。A液にB液を滴下し、沈殿させた後、20℃まで冷却した。その後ろ過し、沈殿物を水80mlで洗浄、ろ過した。110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0029】
〔リン酸ランタン(LaPO)〕
ピロリン酸ランタンとの比較のため、リン酸ランタンを以下の方法で調製した。300mlの丸底フラスコに、イオン交換水80mlと塩化ランタン・7水和物8.9gを加え溶解させて水溶液を調製し、80〜90℃に加熱した(A液)。50mlビーカーにイオン交換水16mlとリン酸水素二ナトリウム(関東化学、特級)3.4gと水酸化ナトリウム1.2gを加え80〜90℃に加熱しながら溶解し水溶液を調製した(B液)。A液にB液を徐々に滴下し、リン酸ランタンの前駆体を沈殿させた。攪拌しながら80〜90℃、2h保持し、その後20℃まで冷却した。この懸濁液のpHは6.9であった。ろ過後に、沈殿物は80mlのイオン交換水で洗浄し、ろ過後に110℃、18h乾燥、500℃、2h焼成を行い、錠剤成形機で成形後、破砕し粒径0.2〜0.8mmに揃えたもの。
【0030】
〔反応成績の評価方法〕
FIDガスクロマトグラフを用いて生成物を分析し、2,3-ブタンジオール転化率、および生成物の選択率を炭素原子基準で算出した。
【0031】
2,3−ブタンジオール(A)の分子内脱水反応によって目的物であるブタジエン(C)に至る反応は、中間体として3−ブテン−2−オール(B)を経由する反応である。本発明においては、原料転化率Cと反応選択率Sを次の様に定義した。
【0032】
【数1】
【0033】
〔反応方法〕
触媒の触媒活性評価は、特に記述がない限りは、以下の反応方法で行った。
【0034】
上記で得られた触媒2.0gを3/8インチの反応管に充填後、窒素気流中、反応管を管状電気炉で加熱し、触媒層が所定温度に達した後、窒素、および2,3-ブタンジオールの所定量を供給し、常圧、反応温度350℃で反応を行った。結果を表1に示した。なお、本発明におけるWHSV(触媒重量基準の空間速度)とは下式で定義される。
WHSV(hr−1)=2,3-ブタンジオール流量(g/hr)/触媒(g)
【0035】
〔実施例1〜5、比較例1〜3〕
WHSVが0.5hr−1、反応温度が350℃、2,3-ブタンジオール:N=1:39(モル比)の条件で表1に記載した触媒を用いて活性評価を行った。結果を表1に示した。
【0036】
【表1】
【0037】
上表から分かるように、脱水触媒として希土類元素のピロリン酸塩を用いた実施例1〜5においては高い原料転化率と良好な反応選択性を示す一方で、アルカリ金属やアルカリ土類金属のピロリン酸塩を触媒に用いた系では転化率、選択率ともに低い。また実施例1と比較例3の選択率の対比から、触媒を構成するアニオン部はピロリン酸アニオンがリン酸アニオンに比べてはるかに優秀な反応成績を与えることが明瞭である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のビシナルジオールの分子内脱水反応によって、共役ジエンを効率よく得ることが可能となった。