特許第5931789号(P5931789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931789
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/16 20060101AFI20160526BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160526BHJP
   B27D 5/00 20060101ALI20160526BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B32B5/16
   B32B27/00 E
   B27D5/00
   B27M3/00 M
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-71508(P2013-71508)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-195874(P2014-195874A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 明功
(72)【発明者】
【氏名】江原 健一
(72)【発明者】
【氏名】水島 邦具
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−119228(JP,A)
【文献】 特開2000−093888(JP,A)
【文献】 特開2001−096674(JP,A)
【文献】 国際公開第95/011804(WO,A1)
【文献】 特開昭56−005165(JP,A)
【文献】 特開2008−265236(JP,A)
【文献】 特開平11−300921(JP,A)
【文献】 特開2001−322222(JP,A)
【文献】 特開平08−244193(JP,A)
【文献】 特開平10−086313(JP,A)
【文献】 特開2003−094592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B27D 5/00
B27M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑な表面を有する基材の表面に、インクジェット印刷機により模様を印刷して模様層を形成し
前記模様層の上に未硬化の状態の樹脂材をインクジェット印刷機により前記模様層の模様の一部と同調するように印刷して硬化させるとともに、その印刷された樹脂材が未硬化のときに該樹脂材及び模様層の上に粉体を撒布て該樹脂材のみに付着させ、余剰粉体は除去することで、樹脂材と該樹脂材に付着した粉体とからなる盛り上げ部を模様層の上に積層し
少なくとも前記盛り上げ部を覆うように透明塗膜層を積層して該透明塗膜層により、前記盛り上げ部の上に位置する凸部と、前記盛り上げ部が形成されていない領域上に位置する凹部とを形成することを特徴とする化粧板の製造方法
【請求項2】
前記粉体は、減摩材を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧板の製造方法
【請求項3】
前記模様層の上に透明なクリア層を積層
前記クリア層の上に前記盛り上げ部、前記模様層の模様と同調するように形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧板の製造方法
【請求項4】
前記凸部の表面の艶を、前記盛り上げ部が形成されていない領域である凹部の表面と異ならせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化粧板の製造方法
【請求項5】
前記透明塗膜層の凸部の表面、前記透明塗膜層が除去されない程度にサンディング処理を施して該凸部の表面の艶を前記凹部表面よりも低くすることを特徴とする請求項4に記載の化粧板の製造方法
【請求項6】
前記透明塗膜層の凸部の表面、前記透明塗膜層が除去されない程度に研磨処理を施して該凸部の表面の艶を前記凹部の表面よりも高くすることを特徴とする請求項4に記載の化粧板の製造方法
【請求項7】
前記凸部の上に減摩材層を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化粧板の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材等の内装材に用いられる化粧板の製造方法に関し、特にインクジェット印刷機により基材上に模様が印刷された化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の床材等に用いられる化粧板として、基材表面に印刷層が設けられた化粧板が知られている。このような化粧板として、木目模様に同調した凹凸模様が印刷形成された化粧板が特許文献1に開示されている。この特許文献1の化粧板では、インクジェット印刷機により基材上に絵柄層が染料系インクで印刷されており、この絵柄層上に絵柄と同調した盛り上げ部(凸部模様)が顔料系インクで印刷形成されている。このように、凸部を印刷形成することで木目模様に同調した凹凸模様が形成されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の化粧板を床材として用いる場合、人又は物との接触により化粧板の表面の凸部に傷や欠損が生じたり、絵柄層が剥離したりするおそれがあり、耐摩耗性に欠けるため、実際に床材に適用することは困難である。
【0004】
この床材用途の問題を解決する化粧板として、特許文献2には、化粧板の表面に印刷されるインクジェット印刷機のインク自体にシリカ又はアルミナ等のいわゆる減摩材を混合することで、耐摩耗性が向上した化粧板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−179073号公報
【特許文献2】特開2008−265229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のようにインクジェット印刷機のインク自体に減摩材を混合すると、インクの安定性を損なうだけでなく、高価なインク吐出設備の不具合を招いたり、又はその寿命を短くしたりするおそれがある。また、特許文献2では、特許文献1の意匠性の問題を解決するような構成の開示は見られない。
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクジェット印刷機の不具合を招くことなく、該印刷機により印刷された模様に同調した凹凸形状を有している耐摩耗性が高い化粧板の製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の問題を達成するために、本発明では、化粧板の基材表面に、インクジェット印刷機により印刷された模様と同調する凸部をインクジェット印刷機により印刷された樹脂材及びそれに含まれる粉体によって形成した。
【0009】
具体的に、本発明に係る化粧板は、平滑な表面を有する基材の表面に、インクジェット印刷機により模様を印刷して模様層を形成し、前記模様層の上に未硬化の状態の樹脂材をインクジェット印刷機により前記模様層の模様の一部と同調するように印刷して硬化させるとともに、その印刷された樹脂材が未硬化のときに該樹脂材及び模様層の上に粉体を撒布て該樹脂材のみに付着させ、余剰粉体は除去することで、樹脂材と該粉体に付着した粉体とからなる盛り上げ部を模様層の上に積層し、少なくとも前記盛り上げ部を覆うように透明塗膜層を積層して該透明塗膜層により、前記盛り上げ部の上に位置する凸部と、前記盛り上げ部が形成されていない領域上に位置する凹部とを形成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る化粧板によると、インクジェット印刷機により印刷形成された模様層における模様と同調するように、インクジェット印刷機により積層された樹脂材を含む盛り上げ部と、その上に積層された透明塗膜層とによって凹凸部が形成されるので、化粧板に凹凸感が生じる。
【0011】
また、この化粧板において、粉体が未硬化の樹脂材及び模様層の上に撒布されて樹脂材のみに付着し、余剰粉体が除去されて、該樹脂材が硬化することで形成されている盛り上げ部の粉体が減摩材として機能し、盛り上げ部に耐摩耗性が付与される。したがって、耐摩耗性が高い化粧板を得ることができる。
【0012】
さらに、この化粧板において、インクジェット印刷機により印刷形成される模様層及び盛り上げ部の樹脂材には、粉体が含まれていないため、インクジェット印刷機の不具合を招くことはない。
【0013】
本発明に係る化粧板の製造方法は、粉体が減摩材を含んでもよい。
【0014】
このようにすると、凸部の耐摩耗性がさらに向上し、耐摩耗性がより高い化粧板を得ることができる。
【0015】
本発明に係る化粧板の製造方法は、前記模様層の上に透明なクリア層を積層し、そのクリア層の上に前記盛り上げ部、前記模様層の模様と同調するように形てもよい。
【0016】
このようにすると、凸部のみならず、凹部上にも一定厚みを有するクリア層を設けることにより、見る角度により意匠性の異なる、より立体的な意匠外観を有する化粧板を提供できる。
【0017】
本発明に係る化粧板の製造方法は、凸部の表面の艶を、盛り上げ部が形成されていない領域である凹部の表面と異らせてもよい。
【0018】
このようにすると、インクジェット印刷機により印刷形成された模様層における模様と同調するように形成された凸部の艶が、凹部の艶と異なるように加工されているため、絵柄層に同調した凸部と凹部で光の反射率が異なり、より自然な風合いを表現でき、意匠性が高い化粧板を得ることができる。
【0019】
本発明に係る化粧板の製造方法において、透明塗膜層の凸部表面、透明塗膜層が除去されない程度にサンディング処理して、その凸部の表面の艶を凹部表面よりも低くすることが好ましい
このようにすると、化粧板における絵柄層に同調した凸部と凹部との間に凸部の方が低い艶の差を付けることができるため、上記の通り、より自然な風合いを表現でき、高い意匠性を得ることができる。
【0020】
本発明に係る化粧板の製造方法において、透明塗膜層の凸部表面、透明塗膜層が除去されない程度に研磨処理して、その凸部の表面の艶を凹部表面よりも高くしてもよい。
【0021】
このようにしても、化粧板における絵柄層に同調した凸部と凹部との間に凸部の方が高い艶の差を付けることができるため、上記の通り、より自然な風合いを表現でき、高い意匠性を得ることができる。
【0022】
また、本発明に係る化粧板の製造方法において、前記凸部の上に減摩材層を形成してもよい。
【0023】
これにより、凸部を構成し、模様と同調した盛り上げ部を保護でき、化粧板の耐摩耗性を向上できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る化粧板の製造方法によると、インクジェット印刷機により印刷された模様に同調する凹凸感に富む形状を有する意匠性の高い化粧板を簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る化粧板の製造方法により製造された化粧板を模式的に示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る化粧板の製造方法により製造された化粧板を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る化粧板の製造方法により製造された化粧板を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係る化粧板の製造方法により製造された化粧板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでない。
【0027】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る化粧板の製造方法により製造された化粧板について図1(a)及び(b)を参照しながら説明する。図1(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る化粧板の製造方法により製造された化粧板を模式的に示し、(a)はその平面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【0028】
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る製造方法により製造された化粧板10では、例えば平滑な表面を有する板状の基材1の該表面上に、インクジェット印刷機により印刷された模様層2が形成されている。基材1には、例えば集成材、合板、パーティクルボード及び木質繊維板等の木質板や、火山性ガラス質繊維板、ケイカル板、石膏ボード等の無機質板、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS等の樹脂を板状に成形した樹脂板等を用いることができる。また、基材1の表面には、インクジェット印刷機からドット噴射されたインクを速やかにその表面に定着するために、例えば白地のインク受理層(図示せず)が予め設けられていてもよい。模様層2は、例えば木目模様3が印刷形成された層であり、この木目模様3は、密度が高く且つ色が濃い秋目が表現された秋目柄部3aと、密度が低く且つ色が淡い春目が表現された春目柄部3bとを含む。なお、本実施形態では模様層2における模様を木目模様3としているが、これに限らず、石目、布目又は抽象柄等の種々の模様を適用することができる。
【0029】
模様層2における木目模様3の一部と同調して、その秋目柄部3aの上には、インクジェット印刷機により未硬化の樹脂材4aが印刷形成され、さらに、この樹脂材4a上に粉体4bが撒布されてから該樹脂材4aが硬化してなる盛り上げ部4が形成されている。
【0030】
盛り上げ部4の一部を構成する樹脂材4aは、インクジェット印刷機を用いて塗布できる樹脂であれば、どのような樹脂を用いても構わない。但し、模様層2との密着性、及び後に説明する盛り上げ部4の上に形成される透明塗膜層5との密着性を考慮して適宜選択する必要はある。盛り上げ部4の材料となる樹脂は、紫外線硬化型、電子線硬化型や湿気硬化型等の合成樹脂塗料を好適に用いることができ、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系又はポリエステル系の樹脂を用いることができる。また、樹脂材4aは、秋目柄部3aの印刷柄を透過できる程度の透明性を有していてもよいし、着色されていてもよく、いわゆるカラークリアであってもよい。
【0031】
未硬化の樹脂材4a上に撒布される粉体4bは、例えば、減摩材、高輝性粉末、アレルゲン物質低減機能粉末、抗菌機能粉末等を用いることができる。減摩材としては、例えばホワイトアルミナ、グリーンカーボン、セラミック粉等を用いることができ、300番手〜1500番手程度のものを用いることが好ましい。なお、減摩材は、その番手が小さくなるに従って化粧板10の耐摩耗性をより高くできるが表面性が粗くなり、一方、番手が大きくなるに従って化粧板10の耐摩耗性の向上の程度は小さくなるが表面を滑らかにできるため、化粧板10の所望する仕上がり程度及び使用用途等によって、用いる減摩材を適宜選択すればよい。また、高輝性塗料としては、燐片状金属薄箔、マイカや金属蒸着マイカ等を単体又は組み合わせて用いることができる。
【0032】
模様層2及び樹脂材4aを印刷するために用いられるインクジェット印刷機は、一般的なインクジェット印刷機であれば特に限定されず、ヘッド固定式の印刷機(ライン方式又はシングルパス方式)及びヘッド移動式の印刷機(シリアルヘッド方式)等の種々の印刷機を用いることが可能である。但し、模様層2の印刷を行うヘッドと、盛り上げ部4の印刷形成が可能なヘッドとの2種類を用いる必要がある。ヘッド固定式のインクジェット印刷機を用いる場合、例えば矩形の化粧板を印刷する際に、定規測定点を決め、測定点からのセンシングにより柄印刷ヘッドにより得られる絵柄(秋目柄部3a)と、盛り上げ部印刷ヘッドにより得られる盛り上げ部4(樹脂材4a)との同調を図る。これに対して、ヘッド移動式のインクジェット印刷機を用いる場合、印刷対象物が固定されているため、柄印刷ヘッドにより得られる絵柄(秋目柄部3a)と、盛り上げ部印刷ヘッドにより得られる盛り上げ部4(樹脂材4a)との同調を図りやすい。
【0033】
盛り上げ部4の一部を構成する樹脂材4aの印刷は、例えば塗布される樹脂の量を増やしたり、その粘度を高く設定したりして盛り上げ塗装することで可能となる。また、粘度を低く設定して、複数回の重ね塗りを行うことにより盛り上げ部4を形成しても構わない。
【0034】
未硬化の樹脂材4a上に粉体4bを撒布する方法は、まず、模様層2における木目模様3と同調して、その秋目柄部3aの上にインクジェット印刷機により樹脂材4aを印刷し、その樹脂材4aが未硬化の状態で、例えば、粉体4bをホッパーから搬送装置により搬送される模様層2の表面に停止又は前後に振動している篩を通して散布する方法でもよく、さらに粉体塗料の塗布方法と同様にして粉体4bを吹きつける方法、その他に粉体を供給できるあらゆる方法が適用できる。このように、インクジェット印刷機により、粉体4bを含まない樹脂材4aを模様層2の模様と同調するように印刷形成するので、インクジェット印刷機の不具合を招くことがない。
【0035】
盛り上げ部4を形成するために、樹脂材4aに撒布した粉体4bは、余剰粉体として該樹脂材4aに付着したものを除いて除去されるが、その除去方法としては、負圧を利用して吸引除去する方法、空気等の加圧気体を吹きつけて吹き飛ばす方法、粉体4bが付着した基材1を傾けたり、裏返すことにより自然落下させる方法、さらには振動を加えてこの自然落下に加えて強制落下させる方法等、未硬化の樹脂材4aに付着した粉体4bと、その他の表面に単に載置された粉体4bとの下地に対する付着力の差を利用したあらゆる方法を用いることができる。また、下向け又は上向けの状態の未硬化の樹脂材4aにこれらを吹き付けるようにしてもよい。この場合、自然落下により余剰粉体が除去される。
【0036】
このように、盛り上げ部4が粉体4bを含み、該粉体4bが減摩材として機能するので、盛り上げ部4に耐摩耗性が付与され、模様層2の模様に同調した凹凸形状を有する耐摩耗性が高い化粧板10を得ることができる。特に、粉体4bが減摩材の場合、盛り上げ部4に一層高い耐摩耗性が付与され、盛り上げ部4の耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【0037】
そして、盛り上げ部4は、未硬化の樹脂材4aに粉体4bが撒布されてから硬化することにより形成される。
【0038】
この場合、余剰粉体は、未硬化の樹脂材4aを硬化させてから除去すればよい。また、未硬化の樹脂材4aに付着した以外の粉末を除去してから未硬化の樹脂材4aを硬化させてもよい。
【0039】
盛り上げ部4の上には、透明塗膜層5が塗布形成されている。ここで、透明塗膜層5は、その表面が盛り上げ部4に起因して凸形状となるように形成されている。すなわち、盛り上げ部4とその上に位置する透明塗膜層5とにより、他の部分よりも上方に膨出した凸部6aが構成され、一方、盛り上げ部4が形成されていない領域に位置する部分で凹部6bが構成されている。
【0040】
透明塗膜層5は、模様層2の秋目柄部3aを透過できる程度の透明性がある樹脂であれば、どのような樹脂でも用いることができる。紫外線硬化型、電子線硬化型、熱硬化型や湿気硬化型等の合成樹脂塗料を好適に用いることができ、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系又はポリエステル系の樹脂を用いることができる。また、盛り上げ部4上への透明塗膜層5の塗布は、透明塗膜層6の塗布には、例えばロールコーター、スポンジコーター、スプレーや刷毛等を用いることができる。盛り上げ部4上のみに選択的に透明塗膜層6を設ける場合は、インクジェット印刷機を用いて盛り上げ部4の樹脂材4aの印刷形成と同様に行ってもよいし、別の方法として、金属又は硬質ゴムからなるフラットなロールコーターを使用し、盛り上げ部4の凸部のみに透明塗膜層6を形成してもよい。透明塗膜層5は、模様層2及び盛り上げ部4の上に塗布された後、凹部6bに流れ込んだり、溜まらない程度の粘度や塗布量の調整が必要であるが、粘度が過剰に高いと、塗布による筋状の凹凸が生じるため、適宜モノマーを用いて粘度の調整を行うことが好ましい。
【0041】
本実施形態では、秋目柄部3aに同調する部分を凸部6aとし、春目柄部3bに同調する部分を凹部6bとしたが、これに限られず、逆であってもよいし、模様層2の模様の少なくとも一部に同調するように凸部6aが凹部と凸部の艶が異なる様に形成されていればよい。また、木目模様3に限らず、模様層2における模様として、例えば石目模様を用いた場合、その石目に同調するように凸部を設けることにより、化粧板の意匠性を向上することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る化粧板について図2を参照しながら説明する。図2は本発明の第2の実施形態に係る化粧板を模式的に示す断面図である。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
図2に示すように、本実施形態に係る化粧板20は、第1の実施形態と比較して、模様層2及び盛り上げ部4の双方の上に、透明塗膜層5が形成され、さらに、透明塗膜層5における凸部6aの表面には、その艶を調整するための加工が施されることにより艶調整部7が形成されている。
【0044】
透明塗膜層5の塗布には、例えばロールコーター、スポンジコーター、スプレーや刷毛等を用いることができる。この透明塗膜層5により、模様層2の表面の盛り上げ部4以外の領域も保護される。
【0045】
また、艶調整部7の加工として、例えばサンディングを用いることができる。サンディングを用いることで、凸部6aの表面(艶調整部7)を粗くでき、その部分の艶を凹部6bよりも下げることができる。その結果、凸部6aの艶と凹部6bの艶とに差を付けることができる。
【0046】
また、これとは逆に、透明塗膜層5における凸部6aの表面(艶調整部7)の平滑性を上げて、その部分の艶を凹部6bよりも上げることにより、凸部6aの艶と凹部6bの艶とに差を付けてもよい。この場合、艶を調整するための加工として、番手が大きい研磨ペーパーを用いたサンディングやバフ研磨等を用いることができる。また、バフ研磨とは、ポリッシャーともいわれ、微粒子の磨き粉(コンパウンド)の存在下で、フェルト又は不織布等により化粧板10の表面を磨く方法である。これらにより、透明塗膜層5における凸部6aの表面(艶調整部7)が滑らかになり、その部分の艶を上げることができる。その結果、模様層2の秋目柄部3aに同調する凸部6aの艶と春目柄部3bに同調する凹部6bの艶とに差を付けることができるため、それぞれの光の反射率が異なり、自然の風合いを表現でき、化粧板10の意匠性を向上できる。
【0047】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る化粧板について図3を参照しながら説明する。図3は本発明の第3の実施形態に係る化粧板を模式的に示す断面図である。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0048】
図3に示すように、本実施形態に係る化粧板30は、第1の実施形態と比較して、模様層2の上に、該模様層2の秋目柄部3aを透過できる程度の透明性を有するクリア層8が形成されていることが異なる。
【0049】
具体的に、本実施形態に係る化粧板30では、模様層2の上にクリア層8が形成され、そのクリア層8の上における秋目柄部3aに対応する位置に盛り上げ部4が形成されている。クリア層8は、模様層2の秋目柄部3aを透過できる程度の透明性がある樹脂であれば、どのような樹脂でも用いることができる。紫外線硬化型、電子線硬化型、熱硬化型や湿気硬化型等の合成樹脂塗料を好適に用いることができ、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系又はポリエステル系の樹脂を用いることができる。
【0050】
本実施形態の化粧板30のように、模様層2の上にクリア層8を形成することにより、凸部6aのみならず、凹部6b上にも一定厚みを有するクリア層8を設けることにより、見る角度により意匠性の異なる、より立体的な意匠外観を有する化粧板を提供できる。なお、クリア層8の上にさらに模様層を設けることもできる。
【0051】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る化粧板について図4を参照しながら説明する。図4は本発明の第4の実施形態に係る化粧板を模式的に示す断面図である。なお、本実施形態において、第2の実施形態と同一の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図4に示すように、本実施形態に係る化粧板40は、第2の実施形態と比較して、透明塗膜層5における凸部6aの表面には、その艶を調整するための加工が施されることで形成された艶調整部7でなく、その凸部6aの表面にのみに減摩材層9が形成されていることが異なる。
【0053】
減摩材層9は、模様層2の秋目柄部3aを透過できる程度の透明性がある樹脂に減摩材が混合されてなる。そのような樹脂としては、紫外線硬化型の合成樹脂塗料を好適に用いることができ、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系又はポリエステル系の樹脂を用いることができる。減摩材層9の塗布には、例えばスプレーや刷毛等を用いることができる。また、減摩材には、例えばホワイトアルミナ、グリーンカーボン、セラミック粉等を用いることができ、300番手〜1500番手程度のものを用いることが好ましい。なお、減摩材は、その番手が小さくなるに従って化粧板40の耐摩耗性をより高くできるが減摩材層9の表面性が粗くなり、一方、番手が大きくなるに従って化粧板40の耐摩耗性の向上の程度は小さくなるが減摩材層9の表面を滑らかにできるため、化粧板40の所望する仕上がり程度及び使用用途等によって、用いる減摩材を適宜選択すればよい。減摩材層9は、化粧板40の表面に設けられているので、その平滑性を考慮すると減摩材の番手は大きい方が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、インクジェット印刷機の不具合を招くことなく、該印刷機により印刷された模様に同調した凹凸形状を有している耐摩耗性が高い化粧板を得ることができ、特にインクジェット印刷機により基材の表面に模様が印刷された化粧板等に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 基材
2 模様層
3 木目模様
3a 秋目柄部
3b 春目柄部
4 盛り上げ部
4a 樹脂材
4b 粉体
5 透明塗膜層
6a 凸部
6b 凹部
7 艶調整部
8 クリア層
9 減摩材層
10,20,30,40 化粧板
図1
図2
図3
図4