特許第5931809号(P5931809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5931809-回転電気機械 図000002
  • 特許5931809-回転電気機械 図000003
  • 特許5931809-回転電気機械 図000004
  • 特許5931809-回転電気機械 図000005
  • 特許5931809-回転電気機械 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931809
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】回転電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   H02K9/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-147660(P2013-147660)
(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公開番号】特開2015-23600(P2015-23600A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 琢真
(72)【発明者】
【氏名】楳田 段
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−135306(JP,A)
【文献】 特開平3−143247(JP,A)
【文献】 実開昭60−2370(JP,U)
【文献】 特開2006−230155(JP,A)
【文献】 特開2011−78234(JP,A)
【文献】 特開平9−168246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00−9/28
H02K 3/00−3/28
H02K 5/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉構造のケーシングと、
このケーシングに軸受を介して回転可能に支持された回転軸と、
この回転軸に対して同心的に配置され、その外周面側が前記ケーシングの内壁面に固定されたリング状の中子リングと、
この中子リングの肉厚部内において前記回転軸の軸方向に冷却水が流れるように設けられた第1の冷却水路と、
この第1の冷却水路の端部に設けられ、前記冷却水を貯留する水室と、
この水室の外側に一体形成された端部冷却フィンと、
前記回転軸と同心的に設けられたリング状の固定子鉄心及びこれに巻き掛けられた固定子巻線を有し、前記中子リングの内周面に固定されたリング状の固定子と、
この固定子の内側において前記回転軸に固定され、前記回転軸と共に回転可能な回転子と、
前記回転子の前記軸方向端部に固定され、前記回転子の回転に伴って前記ケーシング内の空気を撹拌する撹拌ファンと、
配水管を介して前記水室と連結され、前記水室から供給される前記冷却水が内部を流れる第2の冷却水路を有し、前記固定子及び前記中子リングの前記軸方向端面に対向して設けられた第1の仕切り板と、
この第1の仕切り板の前記ケーシングの内壁面に対向する面上に前記回転軸に対して放射状に配列された複数の仕切り板冷却フィンと、
を備えることを特徴とする回転電気機械。
【請求項2】
前記第1の仕切り板は、前記回転子の回転半径方向の外側の端部の位置が前記水室の位置よりも前記回転軸から遠く、かつ、内側の端部の位置が前記コイルエンドの端部の位置よりも前記回転軸から近い長さに形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電気機械。
【請求項3】
前記第1の仕切り板と板面が連続し、前記ケーシングの内壁面と対向して前記第1の仕切り板側の端部から前記回転子の回転半径方向に延長形成された第1の板面と、この第1の板面の端部から前記撹拌ファンの近傍まで前記回転軸の軸方向に延長形成された第2の板面とからなる第2の仕切り板を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の回転電気機械。
【請求項4】
前記回転子は、前記軸方向に貫通する通気部を有し、前記水室は、前記中子リングの両端部に設けられ、前記第1の仕切り板、前記仕切り板冷却フィン及び前記第2の仕切り板は、前記固定子及び前記回転子の両側にそれぞれ設けられており、
前記中子リングの外周面上に前記軸方向で固定された外周側冷却フィンと、
一方の前記第1の仕切り板の前記回転半径方向の外側の端部から前記ケーシングの内壁面まで延長形成された第3の仕切り板と、
を更に備えることを特徴とする請求項3記載の回転電気機械。
【請求項5】
一端面が前記回転子の外周面上に固定され、反対側の面が記固定子の内周面と所定の距離離間して対向配置された永久磁石を更に備え、
前記回転子及び前記永久磁石は、前記回転軸側から前記固定子鉄心の内周面との前記間隙へ通じる空気孔をそれぞれ有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の回転電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機や発電機等の回転電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機等の回転電気機械は、固定子と、この固定子の開口部分に回転可能に設けられる回転子とをケーシング内に収納した構造を有している。このような回転電気機械では、ケーシング内部の各構成部品を冷却するため、回転子に撹拌ファンを設け、これを回転子と共に回転させてケーシング内の空気を攪拌する。また、固定子のコイルエンドと、このコイルエンドと対向するケーシング内面との間に仕切り板を設けた回転電気機械も知られている。撹拌ファンにより攪拌され、固定子巻線のコイルエンドを経たケーシング内の空気は、この仕切り板とケーシングの内壁面との間に案内される。
【0003】
更に、上述した固定側の仕切り板に加えて、回転子の軸方向端部にも仕切り板が設けられた回転電気機械も知られている。コイルエンド側だけでなく、回転子側にも仕切り板を設けることで、冷却空気が撹拌ファンの周囲のみで短絡的に循環することを防ぐことができるため、コイルエンド側を通過する冷却空気量が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭42−18964号公報
【特許文献2】特開2007−135306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の回転電気機械の構造は、コイルエンドや回転子に対向して仕切り板を設けることで冷却空気の循環経路を確保したに過ぎなかった。このため、特にケーシングが密閉構造の場合には、撹拌ファンによりケーシング内部の空気を撹拌し、撹拌された空気を中子リングの端部に一体形成された小さな冷却フィンによって冷却するだけでは冷却効果が低く、高温状態となる固定子鉄心及び固定子巻線を十分に冷却することはできなかった。また、ケーシング内に冷却装置を別途設けることもできるが、装置サイズや製造コストの増大などの問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、装置サイズを増大させることなく、ケーシング内の空気を効率的に冷却できる回転電気機械を提供することを解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る回転電気機械は、密閉構造のケーシングと、このケーシングに軸受を介して回転可能に支持された回転軸と、この回転軸に対して同心的に配置され、その外周面側が前記ケーシングの内壁面に固定されたリング状の中子リングと、この中子リングの肉厚部内において前記回転軸の軸方向に冷却水が流れるように設けられた第1の冷却水路と、この第1の冷却水路の端部に設けられ、前記冷却水を貯留する水室と、この水室の外側に一体形成された端部冷却フィンと、前記回転軸と同心的に設けられたリング状の固定子鉄心及びこれに巻き掛けられた固定子巻線を有し、前記中子リングの内周面に固定されたリング状の固定子と、この固定子の内側において前記回転軸に固定され、前記回転軸と共に回転可能な回転子と、前記回転子の前記軸方向端部に固定され、前記回転子の回転に伴って前記ケーシング内の空気を撹拌する撹拌ファンと、配水管を介して前記水室と連結され、前記水室から供給される前記冷却水が内部を流れる第2の冷却水路を有し、前記固定子及び前記中子リングの前記軸方向端面に対向して設けられた第1の仕切り板と、この第1の仕切り板の前記ケーシングの内壁面に対向する面上に前記回転軸に対して放射状に配列された複数の仕切り板冷却フィンと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置サイズを増大させることなく、空気の循環経路上に延長形成された冷却フィンによってケーシング内の空気を効率的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る回転電気機械の内部構造を示す断面図。
図2図1に示す回転電気機械を回転軸の中心側から見た正面図。
図3】本発明の第2の実施形態に係る回転電気機械の内部構造を示す断面図。
図4】本発明の第3の実施形態に係る回転電気機械の内部構造を示す断面図。
図5】本発明の第4の実施形態に係る回転電気機械の内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転電気機械10の内部構造を示す断面図である。ここでは、回転電気機械10の上下の構造が共通しているため、上半部のみを図示している。また、図2は、図1に示す回転電気機械10を回転軸12の中心側から見た正面図である。これらの図に示されるように、回転電気機械10は、密閉構造のケーシング11内に回転軸12が軸受13を介して回転可能に支持されている。
【0012】
中子リング14は、リング状に形成されており、回転軸12に対して同心的に配置され、その外周面側がケーシング11の内壁面に固定されている。この中子リング14の肉厚部分には、冷却水が回転軸12の軸方向(図1の左右方向)に流れる第1の冷却水路141が設けられている。また、第1の冷却水路141の端部には、冷却水を貯留する水室142が設けられている。更に、水室142の外側には、端部冷却フィン143が一体形成されている。
【0013】
固定子15は、回転軸12と同心的に形成されたリング状の固定子鉄心151及びこのリング状の鉄心の周囲に巻き掛けられた固定子巻線152を有しており、中子リング14の内周面に固定されている。固定子巻線152の端部であるコイルエンド153は、固定子鉄心151の両端部から突出している。
【0014】
回転子16は、円板形状のリブ161を有し、リング状の固定子15の内側で回転軸12の外周部にリブ161を介して固定され、回転軸12と共に回転可能である。
【0015】
永久磁石17は、一方の面で回転子16に固定され、反対側の面がリング状の固定子15の内周面と所定の距離離間して対向している。
【0016】
撹拌ファン18は、図1に示されるように回転子16の左右端部に固定されており、回転子16の回転に伴ってケーシング11内の空気を撹拌する。
【0017】
第1の仕切り板19は、配水管191を介して水室142と連結され、水室142から供給される冷却水が内部を流れる第2の冷却水路192を有している。第1の仕切り板19は、固定子15及び中子リング14の左右の端面にそれぞれ対向して、回転子16の回転半径方向(図1の上下方向)に延長形成されている。なお、内部を循環する空気の冷却効率を高めるために、第1の仕切り板19は、図1に示すように、上端部の位置が水室142の位置よりも上方(回転軸12から遠く)にあり、かつ、下端部の位置がコイルエンド153の端部の位置よりも下方(回転軸12から近い)となるような長さに形成されることが好ましい。そして、第1の仕切り板19は、撹拌ファン18により撹拌されてコイルエンド153及び端部冷却フィン143を通過することで冷却された空気をケーシング11の内壁面との間の空間に案内する。第2の冷却水路192内を循環した冷却水は、配水管191を介して水室142に再度戻される。
【0018】
仕切り板冷却フィン20は、図1に示すように、ケーシング11の内壁面に対向して第1の仕切り板19の面上に上下方向で延長形成されている。また、図2に示すように、複数の仕切り板冷却フィン20は、リング状の第1の仕切り板19の面上に回転軸12に対して放射状に配列されている。本実施形態では仕切り板冷却フィン20として金属製の薄板を複数枚、放射状に並べて配置したことにより、ケーシング11内で循環する空気の流れを妨げず、かつ、空気との熱交換が十分行われる。そして、この仕切り板冷却フィン20によって、第1の仕切り板19によりケーシング11の内壁面との間の空間に案内された空気を更に冷却することができる。また、本実施形態の回転電気機械10は、永久磁石式電動機であるが、回転電気機械の一例として示したものであり、永久磁石17を持たない他の方式の回転電気機械であってもよい。
【0019】
以下、上記のように構成された回転電気機械10の動作について説明する。回転電気機械10が運転され、回転子16が回転軸12を中心に回転すると、この回転子16の端部に設けられた撹拌ファン18も共に回転し、ケーシング11内の空気を攪拌する。この撹拌ファン18により攪拌された空気は、図1に示すように上下方向に延びる第1の仕切り板19により上方向に案内される。次に、固定子巻線152のコイルエンド153及び端部冷却フィン143の周囲を経由することで、冷却されながら上昇する。この後、冷却された破線矢印Aで示すように、ケーシング11内の上面部分にてUターンし、ケーシング11の内壁面との間に流れ、下降する。そして、第1の仕切り板19及びケーシング11の内壁面に沿って下降する空気は、第1の仕切り板19とその面上に形成されている仕切り板冷却フィン20によって更に冷却されながら回転軸12及び撹拌ファン18方向に移動し、循環流を形成する。
【0020】
このように、本実施形態に係る回転電気機械10によれば、第1の仕切り板19及び仕切り板冷却フィン20がケーシング11内の空気の循環経路上に配置されているため、循環する空気を従来よりも広い表面積で効率的に冷却することが可能である。また、第1の仕切り板19は、配水管191を介して既設の中子リング14の水室142と接続される構成のため、回転電気機械10の内部に追加の冷却設備を設置する必要がない。すなわち、回転電気機械10のサイズを大きくすることなく冷却効果を高めることができる。また、固定子15や回転子16などの主要部品の周囲に十分なスペースに確保できるため、設計の自由度も高い。更に、第1の仕切り板19は、主要部品と一体ではない別部品のため、交換が容易であり、メンテナンスを行い易い利点もある。
【0021】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態に係る回転電気機械10の内部構造を示す断面図である。同図に示されるように、本実施形態に係る回転電気機械10は、第1の仕切り板19の回転軸12側の端部(図3の下端)と板面が連続する第2の仕切り板21が更に設けられている点が第1の実施形態と異なっている。この第2の仕切り板21は、第1の仕切り板19と板面が連続し、ケーシング11の内壁面と対向して第1の仕切り板19側の端部から回転子16の回転半径方向(図3の上下方向)に延長形成された第1の板面と、この第1の板面の端部から撹拌ファン18の近傍まで第1の板面に対してほぼ直角方向(図3の左右方向)に延長形成された第2の板面とからなる。
【0022】
上記構成において、回転電気機械10が運転され、回転子16が回転軸12を中心に回転すると、この回転子16の端部に設けられた撹拌ファン18も回転し、ケーシング11内の空気を攪拌する。この撹拌ファン18により攪拌されたケーシング11内の空気は、破線矢印Aで示すように、第1の仕切り板19により案内されて、固定子巻線152のコイルエンド153を冷却しながら上昇する。コイルエンド153を冷却することで、空気の温度は上昇するが、その後、水室142の端部に一体形成された端部冷却フィン143と熱交換することで冷却される。
【0023】
次に、端部冷却フィン143を経た空気は、ケーシング11内の上面部分にてUターンし、第1の仕切り板19とケーシング11の内壁面との間に流れ、下降する。そして、下降した空気は、第2の仕切り板21により垂直方向および水平方向に案内されて回転軸12の外周と撹拌ファン18との間の空間に流れ、撹拌ファン18により再びコイルエンド153及び端部冷却フィン143に向って上昇し、ケーシング11内における循環流を形成する。
【0024】
すなわち、固定子15のコイルエンド153の近傍に設けた第1の仕切り板19に加えて、回転子16の左右両端に設けられた撹拌ファン18に対向して第2の仕切り板21を設けたことにより、攪拌撹拌ファン18の周囲のみで冷却空気が短絡的に循環することを防げる。したがって、コイルエンド153部分を通過する冷却空気量が充分に確保されるため、冷却効率が更に向上する。
【0025】
また、第2の仕切り板21は、第1の仕切り板19と離間し、回転子16の端部に対向させて取り付けるのではなく、第1の仕切り板19に端部に固定することにより、従来の構造よりも、組立性が良く、微調整が容易である。
【0026】
<第3の実施形態>
図4は、本発明の第3の実施形態に係る回転電気機械10の内部構造を示す断面図である。本実施形態による回転電気機械10は、上述した第2の実施形態と基本的に同じ構造の固定子15、回転子16、第1の仕切り板19及び第2の仕切り板21を備えている。第2の実施形態と異なり、中子リング14の外周面上に回転軸12の軸方向で外周側冷却フィン144が設けられている。この外周側冷却フィン144とこれに対向するケーシング11の内壁面との間には、ケーシング11内の一端側(図4の右側)と他端側(図4の左側)とを連通する冷却通路が形成されている。
【0027】
また、第2の実施形態と異なり、回転軸12の外周に回転子16を取り付ける円板状のリブ161には、回転軸12の軸方向に貫通する通気部162が設けられている。
【0028】
これら固定子15及び回転子16の一端側に配置された第1の仕切り板19及び第2の仕切り板21の機能は、第2の実施形態で説明した機能と同じである。すなわち、一端側において、第1の仕切り板19は、回転子16の回転に伴い、撹拌ファン18により攪拌されたケーシング11内の空気を、固定子巻線152のコイルエンド153及び水室142と一体の端部冷却フィン143を経由して、破線矢印Aで示すように、ケーシング11の内壁面との間に案内する。また、一端側において、第2の仕切り板21は、第1の仕切り板19によりケーシング11の内面との間に案内された空気を、回転軸12の外周と撹拌ファン18との間の空間に案内し、ケーシング11内における循環流を形成する。
【0029】
さらに、一端側において、第2の仕切り板21は、第1の仕切り板19とケーシング11の内面との間に下向きに案内された空気を、通気部221の一端開口部(図4の中央右側開口部)へも案内する。
【0030】
これに対し、固定子15及び回転子16の他端側に配置された第2の仕切り板21は、通気部162を通って右端側から流れてきた空気、すなわち、通気部162の他端開口部(図4の中央左側開口部)の空気を、回転子16の他端側に設けられた撹拌ファン18に案内する。また、他端側に配置された第1の仕切り板19は、撹拌ファン18により攪拌されたケーシング11内の空気を、固定子巻線152のコイルエンド153及び端部冷却フィン143に案内する。
【0031】
また、第2の実施形態とは異なり、他端側には、第1の仕切り板19とケーシング11の内壁面との間に第3の仕切り板22が更に設けられている。この第3の仕切り板22は、第1の仕切り板19により、他端側のコイルエンド153及び端部冷却フィン143に流れた空気を、破線矢印Bで示すように、中子リング14の外周面に設けられた外周側冷却フィン144とケーシング11の内壁面との間、すなわち、ケーシング11内の一端側と他端側とを連通する冷却通路に向わせる。
【0032】
上記構成において、回転電気機械10の運転に伴い、回転子16が回転軸12を中心に回転し、これと一体の撹拌ファン18も回転する。撹拌ファン18により攪拌されたケーシング11内の空気は、固定子15及び回転子16の両側に設けられている第1の仕切り板19及び第2の仕切り板21により案内されて上昇し、固定子鉄心151の両端部からそれぞれ突出するコイルエンド153を冷却する。コイルエンド153を冷却することで、空気の温度は上昇するが、空気循環経路の下流側に配置された端部冷却フィン143と熱交換することで冷却される。
【0033】
次に、ケーシング11内の右端側では、端部冷却フィン143を経た空気は、破線矢印Aで示すように、ケーシング11内の上面部分にてUターンし、ケーシング11の内壁面との間に案内され、下降する。これに対し、ケーシング11内の左端側では、端部冷却フィン143を経た空気は、第3の仕切り板22により、左下方への流れが阻止されているため、破線矢印Bで示すように、中子リング14の外周面に設けられた外周側冷却フィン144とケーシング11の内壁面との間に流れる。すなわち、ケーシング11内の一端側と他端側とを連通する冷却通路を流れた空気は、外周側冷却フィン144との熱交換により冷却される。なお、この冷却通路内には、通常、固定子巻線152に接続されるケーブル23が設置されているので、このケーブル23も冷却される。
【0034】
冷却通路を通ってケーシング11内の右側に達した空気は、破線矢印Aで示す空気の流れとともに、第1の仕切り板19とケーシング11の内壁面との間に案内され、下降する。下降した空気は、第2の仕切り板21に案内されて回転軸12の外周と、回転子16の鉄心内周との間の空間に流れる。そして、空気の一部は、右側の撹拌ファン18により再びコイルエンド153及び端部冷却フィン143に向って上昇する。また、残りの空気は、円板状のリブ161を軸方向に貫通する通気部162を通って、回転子16の左側に流れる。
【0035】
回転子16の左端側に流れた空気は、第2の仕切り板21により、回転子16の左端側に設けられた撹拌ファン18に案内される。そして、この撹拌ファン18により攪拌されて、再びコイルエンド153及び端部冷却フィン143に向って上昇する。コイルエンド153を冷却することで、空気の温度は上昇するが、端部冷却フィン143と熱交換することで冷却される。
【0036】
このように、本実施形態に係る回転電気機械10によれば、両端部のコイルエンド153を冷却する2つの流路のうち、片側(図示左側)を仕切ることで、水室142を内蔵する中子リング14の背面に設けられた外周側冷却フィン144にも空気を流すことができるため、両端に設けられたコイルエンド153だけでなく固定子15全体を効率よく冷却できる。
【0037】
<第4の実施形態>
図5は、本発明の第4の実施形態に係る回転電気機械10の内部構造を示す断面図である。本実施形態に係る回転電気機械10は、上述した第2の実施形態と基本的に同じ構造の固定子15、回転子16、第1の仕切り板19及び第2の仕切り板21を備えている。第2の実施形態と異なる点は、回転子16及び永久磁石17に跨って、固定子15の内周面との間隙に通じる空気孔24を設けられていることである。この空気孔24は、回転子16の内周面と回転軸12の外周との間の空気を捉えて、永久磁石17と固定子15の内周面との間隙に導くものである。また、空気孔24の入口部分にはガイド羽根25設けられており、効率的に空気を捉えることができる。
【0038】
上記構成において、回転電気機械10の運転に伴い、回転子16が回転軸12を中心に回転し、これと一体の撹拌ファン18も回転する。撹拌ファン18により攪拌されたケーシング11内の空気は、破線矢印Aで示すように、第1の仕切り板19に案内されて上昇し、固定子鉄心151の両端部に露出するコイルエンド153を冷却する。
【0039】
次に、コイルエンド153を通過した空気は、ケーシング11内の上面部分にてUターンし、ケーシング11の内壁面との間に案内され、下降する。ここで、第2の仕切り板21は、第2の実施形態と同様に、第1の仕切り板19の外面とケーシング11の内壁面との間を下降する空気を、撹拌ファン18の近くに案内すると共に、回転軸12の外周と回転子16の鉄心内周との間にも案内する。
【0040】
そして、回転軸12の外周と回転子16の鉄心内周との間に案内された空気は、回転子16の回転により、ガイド羽根25から回転子16に設けられた空気孔24に捉えられ、破線矢印Cで示すように、固定子15の内周との隙間を経てコイルエンド153に流れ、冷却する。コイルエンド153を冷却することで、空気の温度は上昇するが、空気循環経路の下流側に配置された端部冷却フィン143と熱交換することで冷却される。
【0041】
したがって、本実施形態に係る回転電気機械10によれば、コイルエンド153及び端部冷却フィン143に流れる空気量は、破線矢印Aの流れに加えて、破線矢印Cの空気の流れが加わることになる。このため、攪拌しづらい固定子15周辺の空気を攪拌でき、固定子15をより効率的に冷却することができる。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10…回転電気機械、
11…ケーシング、
12…回転軸、
13…軸受、
14…中子リング、
141…第1の冷却水路、
142…水室、
143…端部冷却フィン、
144…外周側冷却フィン、
15…固定子、
151…固定子鉄心、
152…固定子巻線、
153…コイルエンド、
16…回転子、
161…リブ、
162…通気部、
17…永久磁石、
18…撹拌ファン、
19…第1の仕切り板、
191…配水管、
192…第2の冷却水路、
20…仕切り板冷却フィン、
21…第2の仕切り板、
22…第3の仕切り板、
221…通気部、
23…ケーブル、
24…空気孔、
25…ガイド羽根。
図1
図2
図3
図4
図5