特許第5931813号(P5931813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5931813-車両用のケーブルユニット 図000002
  • 特許5931813-車両用のケーブルユニット 図000003
  • 特許5931813-車両用のケーブルユニット 図000004
  • 特許5931813-車両用のケーブルユニット 図000005
  • 特許5931813-車両用のケーブルユニット 図000006
  • 特許5931813-車両用のケーブルユニット 図000007
  • 特許5931813-車両用のケーブルユニット 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931813
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】車両用のケーブルユニット
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20160526BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20160526BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H02G11/00
   B60L3/00 J
   H01B7/00 306
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-169618(P2013-169618)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-39266(P2015-39266A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2014年10月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】草牧 治樹
(72)【発明者】
【氏名】楯 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】飯田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中本 純平
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−239678(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/060195(WO,A1)
【文献】 特開2012−152047(JP,A)
【文献】 特開2012−048823(JP,A)
【文献】 特開2011−062053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00−11/02
B60L 3/00
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機を収容するトランスアクスルケースの端子台に接続されるT/A側コネクタと、
インバータを収容するパワーコントロールユニットケースの端子台に接続されるPCU側コネクタと、
前記T/A側コネクタとPCU側コネクタを接続する、互いに離間した複数のケーブルと、
を備え、
前記複数のケーブルは、全長に亘って三次元的に湾曲する曲線状にそれぞれ配索され、車両駆動に伴う前記トランスアクスルケースとパワーコントロールユニットケースの相対移動時に、前記複数のケーブルがそれぞれ独立して変形可能であることを特徴とする、車両用のケーブルユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の、車両用のケーブルユニットであって、
前記T/A側コネクタとPCU側コネクタには、前記ケーブルが差し込まれるソケットが形成され、
前記T/A側コネクタのソケットと前記PCU側コネクタのソケットの差込方向軸が、ねじれの位置関係にあることを特徴とする、車両用のケーブルユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の、車両用のケーブルユニットであって、
前記T/A側コネクタ及びPCU側コネクタには、それぞれ、前記ケーブルが挿入されるソケットが複数形成され、
前記T/A側コネクタのソケットの配置間隔と、前記PCU側コネクタのソケットの配置間隔とが異なることを特徴とする、車両用のケーブルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電気機器間に接続される、ケーブルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両や電気自動車など、駆動源として回転電機を用いる車両には、バッテリー等の直流電源と、直流電力を交流電力に変換するインバータが設けられている。
【0003】
回転電機とインバータは、ケーブルユニットによって電気的に接続される。具体的には図6に示すように、回転電機MG1,MG2を収容するトランスアクスルケース100(以下T/Aケースと呼ぶ)の端子台112と、インバータINVを収容するパワーコントロールユニットケース102(以下PCUケースと呼ぶ)の端子台114にケーブルユニット104が接続される。ケーブルユニット104は、T/Aケース100の端子台112に接続されるT/A側コネクタ106、PCUケース102の端子台114に接続されるPCU側コネクタ108、及び両コネクタを接続するケーブル110を備える。
【0004】
車両の振動等により、T/Aケース100とPCUケース102が相対移動する場合がある。例えば、ゴムブッシュ等の弾性部材111を介してPCUケース102をT/Aケース100に支持させた場合、車両の振動に応じて両者は相対移動する。この相対移動にケーブル110が追従できるように、両端子台112,114の最短距離をケーブル110で結ぶのではなく、若干の遊びを持たせてケーブル110を配索(配置)する場合がある。例えば図6では、ケーブル110をL字状に、つまり、鉛直方向と水平方向とに延設させている。また、特許文献1では、ワイヤハーネスに、位置ずれを吸収する吸収部を設けている。特許文献2では、複数のケーブル同士の間隔を空けるためにクランプを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−48823号公報
【特許文献2】特開2011−62053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケーブルの配索状態によっては、T/AケースとPCUケースの相対移動の際に、ケーブルが損傷するおそれがある。回転電機に大電流を供給する都合上、ケーブルは電線素線が複数本束ねられて太径となっており、軸方向荷重に対して撓み難くなっている。このような場合に、例えばPCUケースとT/Aケースとが鉛直方向に相対移動すると、図7に示すように、ケーブル110の鉛直部分110Aは軸方向に荷重が掛かり、殆ど変形しない一方で、ケーブル110の水平部分110Bは荷重を受けて変形する。つまり、変形箇所が一箇所に集中する。このとき、ケーブル110の全体に変形箇所が分散する場合と比較して、水平部分110Bの変形量が多くなり、その結果、水平部分110Bの端部110Cが過大に屈曲するなど、断線等の損傷に繋がるおそれがある。そこで、本発明は、従来よりもケーブルの損傷を抑制することの可能な、ケーブルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両用のケーブルユニットに関するものである。当該ケーブルユニットは、 回転電機を収容するトランスアクスルケースの端子台に接続されるT/A側コネクタと、インバータを収容するパワーコントロールユニットケースの端子台に接続されるPCU側コネクタと、前記T/A側コネクタとPCU側コネクタを接続する、互いに離間した複数のケーブルと、を備える。前記複数のケーブルは、全長に亘って三次元的に湾曲する曲線状にそれぞれ配索され、車両駆動に伴う前記トランスアクスルケースとパワーコントロールユニットケースの相対移動時に、前記複数のケーブルがそれぞれ独立して変形可能となっている。

【0008】
また、上記発明において、前記T/A側コネクタとPCU側コネクタには、前記ケーブルが差し込まれるソケットが形成され、前記T/A側コネクタのソケットと前記PCU側コネクタのソケットの差込方向軸が、ねじれの位置関係にあることが好適である。
【0009】
また、上記発明において、前記T/A側コネクタ及びPCU側コネクタには、それぞれ、前記ケーブルが挿入されるソケットが複数形成され、前記T/A側コネクタのソケットの配置間隔と、前記PCU側コネクタのソケットの配置間隔とが異なることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも、ケーブルの損傷を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るケーブルユニットを例示する斜視図である。
図2】ケーブルの変形について説明する模式図である。
図3】本実施形態に係るケーブルユニット一部を例示する図である。
図4】本実施形態に係るケーブルユニットの別例を示す図である。
図5】本実施形態に係るケーブルユニットの別例を示す図である。
図6】従来技術に係るケーブルユニットを例示する図である。
図7】ケーブルの損傷について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本実施の形態に係るケーブルユニット10を例示する。ケーブルユニット10は、インバータと回転電機とを電気的に接続する。具体的には、回転電機を収容するトランスアクスルケース(以下、T/Aケースと呼ぶ)の端子台と、インバータが収容されたパワーコントロールユニットケース(以下、PCUケースと呼ぶ)の端子台に、ケーブルユニット10が接続される。
【0013】
なお、ケーブルユニット10を、T/Aケース及びPCUケースの端子台に接続させると、ケーブルユニット10の一部が、T/Aケース及びPCUケースに隠れるような位置関係となる。図1から図5では、ケーブルユニット10が、T/Aケース及びPCUケースの端子台に接続された状態を例示しているが、ケーブルユニット10の全体像を明示するため、T/Aケース、PCUケース、及びこれらの端子台の図示を省略している。
【0014】
図1に示されているように、ケーブルユニット10は、T/A側コネクタ12、PCU側コネクタ14、及びケーブル16を備える。ケーブルユニット10に大電流が流れたときに磁界が発生することを考慮して、ケーブルユニット10全体を、金属材料からなるシールドで覆うようにしてもよい。
【0015】
T/A側コネクタ12は、T/Aケースの端子台に接続される。例えば図6に示したように、T/Aケースの端子台は、T/Aケースの天井面に設けられており、当該天井面上にT/A側コネクタが取り付けられる。T/A側コネクタ12は、ソケット18、圧着端子20、及びカバー22を備える。
【0016】
ソケット18は、ケーブル16のプラグ23が差し込まれる雌型電子部品である。ソケット18は、圧着端子20と同数となるように、複数設けられる。また、後述するように、ケーブルユニット10をT/Aケース及びPCUケースに固定させたときに、ソケット18の差込方向軸L1は、PCU側コネクタ14のソケット24の差込方向軸L2とは、ねじれの位置関係となるように形成されている。
【0017】
圧着端子20は、端子台の端子に接続され、例えば丸型端子から構成される。圧着端子20は、端子台の端子数に応じて複数設けられる。カバー22は、T/Aケースの端子台にT/A側コネクタ12を固定させる固定部材であり、ねじ穴等の固定手段が設けられている。
【0018】
PCU側コネクタ14は、PCUケースの端子台に接続される。例えば図6に示したように、PCUケースの側面に端子台が設けられており、この側面にPCU側コネクタが取り付けられる。T/A側コネクタ12がPCUケースの天井面に取り付けられることから、PCU側コネクタ14は、T/A側コネクタ12に対して略直角となるような位置関係となる。PCU側コネクタ14は、T/A側コネクタ12と同様に、ソケット24、圧着端子26、及びカバー28を備える。ソケット24は、圧着端子26と同数となるように、複数設けられる。カバー28は、PCUケースの端子台にPCU側コネクタ14を固定させる固定部材であり、ねじ穴等の固定手段が設けられている。
【0019】
ケーブル16は、T/A側コネクタ12とPCU側コネクタ14を電気的に接続する。ケーブル16は、T/A側コネクタ12の圧着端子20の個数と同一本数となるように、複数本設けられる。また、回転電機の高出力を得るために、ケーブル16には大電流が流れる。このため、ケーブル16は電線素線が複数本束ねられて形成されており、太径となっている。その結果、ケーブル16は軸方向荷重に対する剛性を備えている。つまり軸方向荷重に対して撓み難くなっている。また、軸方向以外の応力に関しても、ケーブル16は弾性を備え、一端側に掛かる応力が他端まで及んで全体的に撓むような剛性を備えている。
【0020】
ケーブル16は、三次元的に湾曲する曲線状に配索される。すなわち、ケーブル16は、T/Aケースの天井面(XY平面)から見てもこれに直交するPCUケースの側面(XZ平面)から見ても、曲線状となるように配索される。つまり、ケーブル16は、T/Aケースの天井面に平行な方向から、PCUケースの側面に平行な方向まで、徐々に変位しながら湾曲するように配索される。さらに言い換えると、T/A側コネクタ12から水平方向(X軸方向)及び鉛直方向(Z軸方向)に延伸させてPCU側コネクタ14まで結んだL字状の直線経路に対して、湾曲した冗長部分を持たせるような配索となっている。ここで、曲線状とは、直線状でないこと、つまり、曲率1/r≠0(曲率半径r≠∞)であることを指す。
【0021】
ケーブル16を三次元的に湾曲させることで、いずれの方向からの荷重に対しても、ケーブル16の変形が可能となる。図2には、T/AケースとPCUケースが相対移動したときのケーブル16の変形状態の模式図が示されている。X軸方向(T/A側短手方向)に沿って、T/AケースとPCUケースが相対移動したとき、図の右上に示すように、ケーブル16は、X軸方向に長軸を持つ楕円螺旋形状となるように変形する。また、相対移動がY軸方向(長手方向)に沿って生じたときには、図の右下に示すように、螺旋の輪が縮むようにしてケーブル16が変形する。相対移動がZ軸方向(鉛直方向、PCU側短手方向)に沿って生じたときには、図の左下に示すように、螺旋の輪が拡がるようにしてケーブル16が変形する。
【0022】
ケーブル16は、全長に亘って曲線状となるように配索されてよい。また、変形の偏りが無視できる程度であれば(例えば全長の10%など)直線部分を含んでもよい。従来技術である図7のように、ケーブル16の殆どが直線部分からなるように配索される場合、当該直線部分に平行な軸方向荷重が掛かるとその部分は撓まずに、変形箇所がその他の部分に集中する。これに対して、略全長に亘って曲線状に配索することで、荷重方向に平行に延伸する部分、つまり直線部分は無くなるか無視できるほど短くなるので、ケーブル16は全長に亘って変形可能となる。この結果、車両駆動時の振動等によってT/AケースとPCUケースが相対移動するなど、ケーブル16に荷重が掛かったときに、一部のみが変形する場合と比較して、変形量が分散され、過大な変形によるケーブル16の断線や破断等が避けられる。
【0023】
図1に戻り、ケーブル16を三次元的な曲線状に配索するために、T/A側コネクタ12のソケット18の差込方向軸L1と、PCU側コネクタ14のソケット24の差込方向軸L2とが、ねじれの位置関係、つまり、差込方向軸L1とL2とが同一平面上に並ばず、かつ非平行な位置関係となるように、それぞれのソケット18、24を形成してもよい。
【0024】
例えば、図3に示すように、T/A側コネクタ12の短手方向軸(X軸)L3に対してソケット18の差込方向軸L1を傾斜させる。同様にして、PCU側コネクタ14の短手方向軸(Z軸)L4に対してソケット24の差込方向軸L2を傾斜させる。短手方向軸L3に対する差込方向軸L1の角度θ1と、短手方向軸L4に対する差込方向軸L2の角度θ2は異なっていることが好適である。このようにすることで、従来技術のようにT/A側コネクタ12からPCU側コネクタ14までL字状に配索した経路に対して、それぞれのコネクタのケーブル16の取り出し向きが傾斜するように配索される。その結果、各ソケット18、24にケーブル16を差し込むと、ケーブル16はZ軸を中心軸とした螺旋状に配索され、三次元的に湾曲するようになる。
【0025】
また、T/A側コネクタ12とPCU側コネクタ14のどちらか一方のソケットを、短手方向軸に対して傾斜させるようにして、他方は短手方向軸に対して平行となるようにしてもよい。このようにしても、差込方向軸L1とL2とがねじれの位置関係になるので、ケーブル16を螺旋状に配索することが可能となる。
【0026】
図4、5には、本実施形態に係るケーブルユニット10の別例が示されている。図4は、ケーブルユニット10の斜視図が示され、図5にはケーブルユニット10の側面図及び平面図が示されている。この例では、T/A側コネクタ12のソケット18の配置間隔d1と、PCU側コネクタ14のソケット24の配置間隔d2を異ならせている。このようにすることで、ケーブル16は、PCU側コネクタ14から、徐々に内側に向かうようにして曲げられてT/A側コネクタ12に接続される。このようにすることで、ケーブル16が三次元的に湾曲するように曲線状に配索される。
【0027】
また、図4、5に示す例では、図1に示した螺旋状の配索と比較して、ケーブル16の曲げ変形量が少なく(屈曲が浅く)なっている。一般的に、太径のケーブル16を用いる場合、ケーブル16には、曲げ変形に対して復元力が生じるようになる。復元力は曲げ変形量に比例して増加する。さらにこの復元力は、ケーブル16の根元部分、つまり、ソケット18、24とプラグ23に作用して、当該箇所にストレスを掛ける。ケーブル16の曲げ変形量を少なくすることで、復元力を低減させ、ソケット18、24とプラグ23に掛かるストレスを緩和させることができる。
【0028】
曲げ変形に対する復元力を更に低減させるために、ケーブル16に柔軟性を持たせてもよい。例えば、ケーブル10として束ねられる電線素線を従来よりも小径とし、束ねる本数を従来よりも増加させる。このようにすることで、電線束の断面積を変えることなく、ケーブル16に柔軟性を持たせることが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
10 ケーブルユニット、12 T/A側コネクタ、14 PCU側コネクタ、16 ケーブル、18 T/A側ソケット、24 PCU側ソケット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7