(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接眼面は、ナイロン繊維、綿繊維、ヒドロゲル、海綿状材料、発泡スチレン、他の発泡体、シリコーン、プラスチック、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される材料を含む、請求項1に記載の統合デバイス。
前記第1のバネは、第1の非配備状態から第2の配備状態まで前記導管を移動させるように、および該導管の配備の速度および力を制御するように構成される、請求項27に記載の統合デバイス。
前記第1のバネは、前記導管を第1の非配備状態から第2の配備状態まで移動させるように、および該導管の配備の速度および力を制御するように構成される、請求項36に記載の統合デバイス。
前記活性薬剤は、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗感染薬、抗アレルゲン剤、コリン拮抗薬および作動薬、アドレナリン拮抗薬および作動薬、抗緑内障薬、神経保護薬、白内障予防または治療用の薬剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、補体阻害剤、ビタミン、成長因子、成長因子を阻害する薬剤、遺伝子治療ベクトル、化学療法剤、タンパク質キナーゼ阻害剤、低分子干渉RNA、それらの類似体、誘導体、および修飾物、ならびにそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1に記載の統合デバイス。
前記活性薬剤は、ラニビズマブ、ベバシズマブ、ペガプタニブ、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、タキソール様薬剤、アフリバーセプト、酢酸アネコルタブ、およびリムス族化合物から成る群より選択される、請求項1に記載の統合デバイス。
前記リムス族化合物は、シロリムス、SDZ−RAD、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、ゾタロリムス、CCI−779、AP23841、およびABT−578、それらの類似体、誘導体、複合体、塩、および修飾物、ならびにそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項41に記載の統合デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、例えば、注入によって医薬製剤を眼の中に送達するための手持ち式デバイス、方法、およびシステムが説明される。デバイスは、例えば、安全、無菌、かつ正確な方式で医薬製剤を眼の中に送達することに有益であり得る、種々の特徴を単一のデバイスに組み込み(組み入れ)得る。例えば、眼の上への適切な配置を補助し、眼内空間が適正な角度でアクセスされるように設置することに役立ち、眼圧を調整または制御し、および/または、例えば、注入あるいは強膜自体の貫通の力による、強膜および眼内構造への外傷を最小化することに役立ってもよい、特徴が、単一のデバイスに組み込まれてもよい。デバイスは、全体または部分的に、使い捨てであるように構成されてもよい。
【0017】
(I.デバイス)
一般に、本明細書において説明される統合デバイスは、片手で操作するためにサイズ決定および成形される筐体を含む。筐体は、典型的には、近位端および遠位端と、筐体の遠位端にある接眼面と有する。その配備前状態である導管は、筐体内に存在してもよい。導管は、その配備状態において、少なくとも部分的に筐体内にある。いくつかの変化例において、導管は、筐体に摺動可能に取り付けられる。加えて、導管は、概して、近位端、遠位端、およびそれを通る管腔を有する。作動機構は、導管および活性薬剤を保持するための貯留部に動作可能に接続される筐体内に含有されてもよい。
【0018】
デバイスまたはその複数部分は、任意の好適な生体適合性材料、または生体適合性材料の組み合わせから形成されてもよい。例えば、1つ以上の生体適合性ポリマーが、例えば、デバイス筐体、接眼面、測定構成要素等を作製するために使用されてもよい。例示的な生体適合性および非生体適合性材料は、限定するものではなく、メタクリル酸メチル(MMA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEM)、および他のアクリルベースのポリマー、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィン類、酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、2−ピロリドン、ポリアクリロニトリルブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、TEFLON(登録商標)ポリマー)等のフッ素重合体、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、酢酸セルロース、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリメチルスチレン、シリコーン、ならびにその共重合体および混合物を含む。
【0019】
いくつかの変化例において、デバイス、あるいは薬剤貯留部、プランジャ、筐体、接眼面、または測定構成要素等のデバイスの一部は、環状オレフィン系樹脂を含む材料でできている。例示的な環状オレフィン樹脂は、限定するものではなく、Zeonex(登録商標)シクロオレフィンポリマー(ZEON Corporation,Tokyo,Japan)またはCrystal Zenith(登録商標)オレフィンポリマー(Daikyo Seiko,Ltd.,Tokyo,Japan)、およびAPEL
TMシクロオレフィン共重合体(COC)(Mitsui Chemicals,Inc.,Tokyo,Japan)等の市販の製品、環状オレフィンエチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、およびそれらの組み合わせを含む。1つの変化例において、高透明度、高耐熱性を有し、タンパク質、タンパク質断片、ポリペプチド、あるいは抗体、受容体、または結合タンパク質を含むキメラ分子等の医薬品との化学的相互作用が最小であるか、または全くない環状オレフィン系樹脂および環状オレフィンエチレン共重合体を使用することが有益であってもよい。
【0020】
環状オレフィンポリマーまたはその水素化生成物は、環状オレフィンモノマーの開環ホモポリマー、環状オレフィンモノマーおよび他のモノマーの開環共重合体、環状オレフィンモノマーの付加ホモポリマー、環状オレフィンモノマーおよび他のモノマーの付加共重合体、ならびにそのようなホモポリマーまたは共重合体の水素化生成物となり得る。上記の環状オレフィンモノマーは、単環式オレフィンモノマー、ならびに二環式化合物および高次の環状化合物を含む、多環式オレフィンモノマーを含んでもよい。環状オレフィンモノマーのホモポリマーまたは共重合体の産生に好適である単環式オレフィンモノマーの実施例は、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、およびシクロオクテン等の単環式オレフィンモノマー、メチルおよび/またはエチル基等の1〜3低級アルキル基を置換基として含有する、その低級アルキル誘導体、およびそのアクリレート誘導体である。
【0021】
多環式オレフィンモノマーの実施例は、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロシクロペンタジエン、ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、およびその誘導体、トリシクロ[4,3,0,1
2,5]−3−デセンおよびその誘導体、トリシクロ[4,4,0,1
2,5]−3−ウンデセンおよびその誘導体、テトラシクロ[4,4,0,1
2,5,0
7,10]−3−ドデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6,5,1,1
3,6,0
2,7,0
9,134−ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7,4,0,1
2,5,0,0
8,13,1
9,12]−3−ペンタデセンおよびその誘導体、ならびにヘキサシクロ[6,6,1,1
3,6,1
10,13,0
2,7,0
9,14]−4−ヘプタデセンおよびその誘導体である。ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン誘導体の実施例は、5−メチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−メトキシ−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、および6−メトキシカルボニル−ビシクロ[2,2,1−]−ヘプト−2−エンを含む。トリシクロ[4,3,0,1
2,5]−3−デセン誘導体の実施例は、2−メチル−トリシクロ[4,3,0,1
2,5]−3−デセン、および5−メチル−トリシクロ[4,3,0,1
2,5]−3−デセンを含む。テトラシクロ[4,4,0,1
2,5]−3−ウンデセン誘導体の実施例は、10−メチル−テトラシクロ[4,4,0,1
2,5]−3−ウンデセンを含み、トリシクロ[4,3,0,1
2,5]−3−デセン誘導体の実施例は、5−メチル−トリシクロ[4,3,0,1
2,5]−3−デセンを含む。
【0022】
テトラシクロ[4,4,0,1
2,5,0
7,10]−3−ドデセン誘導体の実施例は、8−エチリデン−テトラシクロ−[4,4,0,1
2,5,0
7,10]−3−ドデセン、8−メチル−テトラシクロ−[4,4,0,1
2,5,0
7,10]−3−ドデセン、9−メチル−8−メトキシ−カルボニル−テトラシクロ[4,4,0,1
2,5,0
7,10]−3−ドデセン、5,10−ジメチル−テトラシクロ[4,4,0,1
2,5,0
7,10]−3−ドデセンを含む。ヘキサシクロ[6,6,1,1
3,6,1
10,13,0
2,7,0
9,14]−4−ヘプタデセン誘導体の実施例は、12−メチル−ヘキサシクロ[6,6,1,1
3,6,1
10,13,0
2,7,0
9,14]−4−ヘプタデセン、および1,6−ジメチル−ヘキサシクロ[6,6,1,1
3,6,1
10,13,0
2,7,0
9,14]−4−ヘプタデセンを含む。環状オレフィンポリマーの一実施例は、少なくとも1つの環状オレフィンモノマーの付加ホモポリマー、または少なくとも1つの環状オレフィンモノマーおよび少なくとも1つの他のオレフィンモノマーの付加共重合体(例えば、エチレン、プロピレン、4−メチルペンテン−1、シクロペンテン、シクロオクテン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、または同等物)である。このホモポリマーまたは共重合体は、例えば、炭化水素溶剤中で溶解性であり、バナジウム化合物または同等物、および有機アルミニウムまたは同等物から成る、既知の触媒として使用しながら、上記の1つまたは複数のモノマーを重合させることによって得ることができる(公開特許公報特開平6−157672号、公開特許公報特開平5−43663号)。
【0023】
環状オレフィンポリマーの別の実施例は、上記のモノマーの開環ホモポリマー、または上記のモノマーの開環共重合体である。それは、(1)ハロゲン化物、あるいはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、または白金等の白金族金属の硝酸塩、および還元剤から成る触媒、または(2)チタン、モリブデン、またはタングステン等の遷移金属の化合物、および有機アルミニウムまたは有機スズ化合物等の周期表のI〜IV族のうちの1つの中の金属の有機金属化合物から成る触媒等の既知の触媒を、触媒として使用しながら、上記のモノマーを単重合させること、または上記のモノマーを共重合させることによって得ることができる(公開特許公報特開平6−157672号、公開特許公報特開平5−43663号)。
【0024】
ホモポリマーまたは共重合体は、不飽和結合を含有してもよい。ホモポリマーまたは共重合体は、既知の水素化触媒を使用して水素化されてもよい。水素化触媒の実施例は、(1)それぞれ、チタン、コバルト、ニッケル、または同等物の有機酸塩、およびリチウム、アルミニウム、または同等物から成る有機金属化合物から成る、Ziegler型均一触媒、(2)それぞれ、炭素またはアルミナ等の担体、および担体上で保持されたパラジウムまたはルテニウム等の白金族から成る、保持触媒、ならびに(3)それぞれ、上記の白金族金属のうちの1つの錯体から成る触媒を含む(公開特許公報特開平6−157672号)。
【0025】
いくつかの変化例において、デバイス、または薬剤貯留部等のデバイスの一部分は、ゴムを含む材料でできている。好適なゴム材料の実施例は、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、およびジビニルベンゼン共重合ブチルゴム等のブチルゴム、ポリイソプレンゴム(高−低シス−1,4結合)、ポリブタジエンゴム(高−低シス−1,4結合)、およびスチレンブタジエン共重合体ゴム等の共役ジエンゴム、ならびにエチレンプロピレンジエンターポリマーゴム(EPDM)を含む。架橋性ゴム材料もまた、使用されてもよく、架橋剤、充填剤および/または強化剤、着色剤、または老化防止剤等の添加剤とともに、上記のゴム材料を練り合わせることによって作製されてもよい。
【0026】
いくつかの変化例において、生体適合性材料は、生分解性ポリマーである。好適な生分解性ポリマーの非限定的実施例は、セルロースおよびエステル、ポリアクリル酸塩(L−チロシン由来または遊離酸)、ポリ(β−ヒドロキシエステル)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリアルカノエート、ポリアルキレンアルキレート、ポリアルキレンオキシレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ無水物、ポリ無水物エステル、ポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリブチレンジグロクレート、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)/ポリ(エチレングリコール)共重合体、ポリカーボネート、L−チロシン由来ポリカーボネート、ポリシアノアクリレート、ポリジヒドロピラン、ポリ(ジオキサノン)、ポリ−p−ジオキサノン、ポリ(ε−カプロラクトン−ジメトルトリメチレンカーボネート)、ポリ(エステルアミド)、ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリ(エーテルエステル)、ポリエチレングリコール/ポリ(オルトエステル)共重合体、ポリ(グルタル酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(グリコリド)/ポリ(エチレングリコール)共重合体、ポリ(ラクチド)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)/ポリ(エチレングリコール)共重合体、ポリ(ラクチド)ポリ(エチレングリコール)共重合体、ポリホスファゼン、ポリホスフォエステル、ポリホスフォエステルウレタン、ポリ(フマル酸プロピレン−コ−エチレングリコール)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリチロシンカーボネート、ポリウレタン、ターポリマー(グリコリドラクチドまたはジメチルトリメチレンカーボネートの共重合体)、およびそれらの組み合わせ、混合物、または共重合体を含む。
【0027】
添加剤が、所望に応じてそれらの特性を調整するように、ポリマーおよびポリマー混合物に添加されてもよい。例えば、生体適合性可塑剤が、その可撓性および/または機械的強度を増加させるように、または眼の表面に対して色の対比を提供するように、デバイスの少なくとも一部分で使用されるポリマー製剤に添加されてもよい。他の場合において、微粒子充填剤、繊維、および/またはメッシュ等の生体適合性充填剤が、機械的強度および/または剛性をデバイスの一部分に付与するように添加されてもよい。
【0028】
本明細書において説明されるデバイスは、少なくとも部分的に、上記の材料を射出または圧縮成形することによって製造することができる。
【0029】
場合によっては、デバイス上に取外し可能に取り付けられた、または統合された視認および/または拡大要素を含むことが有益であってもよい。例えば、拡大鏡および/またはLEDライト等の照明源が、デバイスの先端および注入部位の可視化を促進するように、デバイスに取外し可能に取り付けられてもよい。網膜剥離、毛様体出血、または眼内レンズへの外傷等の眼内注入の合併症を潜在的に回避することができるように、向上した可視化は、例えば、角膜強膜縁の約3.5mmから4mm後方にある標的場所にデバイスをより正確かつ安全に設置することに役立ってもよい。拡大鏡は、任意の好適な材料でできていてもよく、例えば、以前に説明された任意の好適な非再吸収性(生分解性)材料でできていてもよいが、典型的には、注入デバイスのバランスに影響を及ぼさないように軽量である。拡大鏡および/または照明源、例えば、LEDは、使い捨てであってもよい。
【0030】
(筐体)
デバイスの筐体は、概して、薬剤貯留部および作動機構を含有する。その第1の非配備状態(配備前状態)において、導管は、筐体内に存在してもよい。筐体は、片手による筐体の把持および操作を可能にする限り、任意の好適な形状であってもよい。例えば、筐体は、形状が管状または円筒形、長方形、正方形、円形、または卵形であってもよい。いくつかの変化例において、筐体は、注射筒と同様に、管状または円筒形である。この場合において、筐体は、約1cmと約15cmとの間、約2.5cmと約10cmとの間、または約4cmと約7.5cmとの間の長さを有する。例えば、筐体は、約1cm、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約6cm、約7cm、約8cm、約9cm、約10cm、約11cm、約12cm、約13cm、約14cm、または約15cmの長さを有してもよい。筐体の表面はまた、ユーザによる筐体の握持および/または操作を補助するように、例えば、突起、隆起等によって、ある領域において、テクスチャ加工、粗面化、または別様に修正されてもよい。
【0031】
筐体は、任意の好適な材料でできていてもよい。例えば、前述のように、デバイスの構成要素は、任意の好適な生体適合性材料または生体適合性材料の組み合わせでできていてもよい。筐体を作製することに有益であってもよい材料は、限定するものではなく、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィンエチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン樹脂、およびポリエチレンテレフタレート樹脂を含む。1つの変化例において、高透明度、高耐熱性を有し、タンパク質、タンパク質断片、ポリペプチド、あるいは抗体、受容体、または結合タンパク質を含むキメラ分子等の医薬品との化学的相互作用が最小であるか、または全くない環状オレフィン系樹脂および環状オレフィンエチレン共重合体を使用することが有益であってもよい。筐体を作製することに有益であってもよい付加的な材料は、限定するものではなく、フッ素重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ナイロン、および同等物等の熱可塑性物質、ならびにシリコーンを含む。いくつかの変化例において、筐体は、導管の配備および/または薬剤送達の確認を補助するように、透明材料でできていてもよい。好適な透明度を伴う材料は、典型的には、アクリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、およびスチレンアクリロニトリル(SAN)等のポリマーである。有用であってもよいアクリル共重合体は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)共重合体およびスチレンメタクリル酸メチル(SMMA)共重合体(例えば、Zylar631(登録商標)アクリル共重合体)を含むが、それらに限定されない。
【0032】
(接眼面)
本明細書において説明されるデバイスは、概して、筐体の遠位端に非外傷性接眼面を含む。いくつかの変化例において、接眼面は、筐体の近位端に固定して取り付けられる。他の変化例において、接眼面は、筐体の近位端に取外し可能に取り付けられる。接眼面は、典型的には、無菌となる。場合によっては、接眼面は、使い捨てである。使用中、デバイスの接眼面は、眼の表面上に配置される。
【0033】
接眼面は、眼の表面上でデバイスの非外傷性配置を可能にする限り、任意の好適な構成、例えば、サイズ、形状、幾何学形状等であってもよい。いくつかの変化例において、接眼面は、輪状であってもよい(例えば、
図1A−1B)。接眼面が輪の形状を成すときに、それは、約0.3mmから約8mmまで、約1mmから約6mmまで、または約2mmから約4mmまでの直径を有してもよい。他の変化例において、接眼面は、形状が長円形または円形である。
【0034】
より具体的には、
図1A−1Bの正面図に示されるように、デバイス先端は、輪の内径と外形との間の距離が周縁を形成する輪状接眼面を備える。この場合において、輪状接眼面は、より広い接眼面(10)(周縁)およびより小さい内部開口部(12)(
図1A)、またはより大きい内部開口部(16)(
図1B)とともにより狭い接眼面(14)(周縁)を有するものとして構成されてもよい。分注部材(導管)は、内側に隠され、デバイス先端によって保護される注入針であってもよい。内部開口部を横断して延在し、接眼面と同一平面であってもよく、または注入針が存在するデバイス先端の管腔内に後退していてもよい膜も提供されてもよい。
【0035】
図39A−39Bに示されるように、デバイス先端が皮膚または眼壁等の任意の表面と接触して配置されたときに、分注部材の先端が
図39Bの矢印によって印付けられた距離だけ表面から分離しているように、分注部材の先端は、静置状態で接眼面を備えるデバイス筐体先端の端部に対して後退させられ得る。この距離は、分注部材の先端が注入手技の前にいずれの表面とも直接接触しないことを確実にし得、それは、皮膚分泌物、眼の分泌物、または涙等の供給源による分注部材の偶発的な細菌汚染を防止し、眼内炎を引き起こす場合がある眼内注入手技中の眼内感染物質の導入の危険性を最小化する。
【0036】
いくつかの変化例において、分注部材の先端は、約0.01mmから約10mmまで、約0.1mmから約5mmまで、または約0.5mmから約2mmまでの範囲の距離だけ、デバイスの最も近い端部に対して後退させらており、かつそこから分離されている。
【0037】
別の変化例において、眼の表面と直接接触するデバイス先端の接眼面は、輪状であり、
図39Cの矢印によって印付けられる、デバイス筐体の内壁と分注部材との間に約360度の空隙がある。ここで、輪状の眼の界面が感染物質によって汚染され、そして、眼の表面上に配置される場合、分注部材は、空隙の領域によって汚染されたデバイス先端から分離している眼の表面に接触し、それを貫通し、それは、分注部材の偶発的な細菌汚染を防止し、眼内炎を引き起こす場合がある眼内感染の導入の危険性を最小化する。対称的に、
図39Dに示されるように、分注部材の周囲にそのような空隙がないと、注入部位におけるデバイス先端の偶発的な感染性汚染を可能にする場合がある。
【0038】
いくつかの変化例において、約0.1mmから約5mmまで、約0.3mmから3mmまで、または約0.5mmから約2mmまでの範囲にあるデバイス筐体の内壁と分注部材との間の空隙がある。
【0039】
他の変化例において、
図39Eに示されるように、外部環境から分注部材(107)の先端を分離する固体膜または仕切り(105)があり、膜または仕切りは、不透水性および/または非空気透過性であってもよい。膜または仕切りは、デバイスの中または外への空気の移動がなく、空気密閉を作成し、ある一定の空気圧をデバイスの内側で維持することを確実にしてもよい。
【0040】
さらに、膜または仕切りは、分注部材の先端が注入手技の前に涙および眼の分泌物等のいずれの偶発的な細菌汚染原とも直接接触しないことを確実にしてもよく、それは、分注部材の偶発的な細菌汚染を防止し、眼内炎を引き起こす場合がある眼内注入手技中の眼内感染の導入の危険性を最小化する。
【0041】
デバイス筐体の端部から分注部材の先端を分離する膜または仕切りは、メタクリル酸メチル(MMA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEM)、および他のアクリルベースのポリマー、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィン類、酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、2−ピロリドン、ポリアクリロニトリルブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、TEFLON(登録商標)ポリマー)等のフッ素重合体、またはフッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、酢酸セルロース、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリメチルスチレン、シリコーン、ならびにその誘導体および共重合体および混合物を、限定するものではなく、含む、生体適合性および非生分解性材料から成る群から選択される、材料を含んでもよい。
【0042】
いくつかの変化例において、膜または仕切り(30)は、デバイス先端が皮膚または眼の表面等の任意の表面と接触して配置されたときに、膜または仕切りが、
図39Eに示されるように、矢印で印付けられた距離だけ該表面から分離しているように、デバイス先端の内側において後退していてもよい。距離は、分注部材の先端(31)が注入手技の前にいずれの表面とも直接接触しないことを確実にしてもよく、それは、皮膚分泌物、眼の分泌物、または涙等の供給源による分注部材の偶発的な細菌汚染を防止し、眼内炎を引き起こす場合がある眼内注入手技中の眼内感染の導入の危険性を最小化する。
【0043】
膜または仕切りは、約0.01mmから約10mmまで、約0.1mmから約5mmまで、または約0.5mmから約2mmまでの範囲の距離だけ、眼の界面におけるデバイス筐体の端部に対して後退させられ、かつそこから分離され得る。
【0044】
さらなる変化例において、測定構成要素(32)(以下でさらに説明される)は、デバイス先端(34)が眼の表面(35)(
図39I)と接触するときに、測定構成要素(32)が眼の表面(35)と接触しないように、接眼面(
図39F−39H)におけるデバイス筐体(33)の端部に対して後退していてもよい。この構成は、角膜および結膜の非角化上皮等の眼の表面を覆う繊細な組織への外傷の危険性を最小化し得る。測定部材と眼の表面との間の直接接触を回避することは、角膜または結膜剥離等の眼の表面の外傷の危険性を最小化することに有益であってもよく、それは、角膜潰瘍を含む細菌注入等のさらなる重篤な合併症を防止する。代替的な変化例において、測定部材(32)の先端は、眼から離れる方向に、または眼に向かって角度を成してもよい(それぞれ、
図39Gおよび39H)。測定構成要素は、約0.01mmから約5mmまで、約0.1mmから約3mmまで、または約0.5mmから約2mmまでの範囲の距離だけ、デバイス筐体の端部に対して後退していてもよい。
【0045】
いくつかの変化例において、
図2A−2Cに示されるように、デバイス先端はまた、輪状接眼面と、角膜強膜縁に対してある距離がおかれおよびそれに垂直な注入部位の適正な場所を決定することに役立つ測定部材とを備えてもよい。1つの変化例において、測定構成要素(20)は、デバイス先端(22)の一側面上に位置する。別の変化例において、1つよりも多くの測定構成要素が、デバイス先端の1つよりも多くの側面上に位置する。ここにおいて、測定構成要素の先端は、平坦であり(
図2C)、実質的に接眼面より上側に突出しない。他の変化例において、測定構成要素の先端は、接眼面より上側に隆起しており(
図2A−2B)、それは、眼瞼が測定構成要素を覆って、およびその上で摺動することを防止することを可能にし、したがって、眼瞼が、デバイス先端または分注部材の滅菌接眼面と接触することを防止する。これは次に、注入手技中の偶発的汚染および眼内感染の危険性を低減してもよい。
【0046】
他の変化例において、接眼面は、フランジ(例えば、
図3A1−3A3、
図3B1−3B3、
図4A、および
図4B1−4B2)を備える。フランジは、デバイス先端と眼の表面との間に拡張した接触面を提供し、したがって、眼の表面上に設置されたときにデバイスの安定性を増加させ、デバイスと眼の界面の単位面積あたりの圧力を減少させ得る。次に、デバイスと眼の界面の単位面積あたりの圧力を低減することは、眼壁に押し付けられたときに、デバイス先端による結膜損傷の可能性を低減し得る。結膜は、複数の感覚神経終末および疼痛受容体を含有する繊細な非角化上皮によって覆われているので、そのような結膜損傷を回避することが望ましい。
【0047】
いくつかの変化例において、フランジは、眼の表面と接触し、眼瞼がフランジを覆って、およびその上で摺動することを可能にするが、眼瞼がデバイス先端の滅菌接眼面と接触することを防止する薄い縁を有してもよい。接眼面はまた、輪状フランジ(例えば、
図4Aおよび4B1−4B2)であってもよい。そのような輪状フランジもまた、眼瞼がデバイス先端の滅菌接眼面と接触することを防止し得る。
【0048】
より具体的には、
図3に示されるように、フランジは、眼瞼が該フランジ上で摺動し、デバイス先端のシャフトと接触することを可能にする薄い縁(
図3A1)を有してもよい。代替的な変化例として、該フランジは、眼瞼がその上で摺動することを防止し、デバイスシャフトと接触することを防ぎ、したがって、注入部位の不慮の汚染を防止するために厚くてもよい(
図3B1)。デバイス先端の接眼面におけるフランジが厚いときに、その眼の表面にあるもの等のその縁は、神経終末および疼痛受容体が豊富である繊細な非角化上皮で覆われている結膜等の眼の表面組織への偶発的な損傷を防止するために、丸みを帯びていてもよい。デバイス先端の代替的な変化例において、眼接触界面は、眼壁を通した針の貫通を容易にするため、ならびに接眼面の牽引摩擦界面を提供することによって注入手技中に眼を部分的に固定化するために、眼壁上に力を印加し、眼圧を増加させる手段を提供しながら、結膜等の眼の表面組織への偶発的な損傷の可能性を低減するように、平坦(
図3A1および3B1)、凸状(
図3A2および3B2)、または凹状(
図3A3および3B3)であってもよい。
図4Aおよび4B1−4B2は、フランジ付き接眼面の斜視図および正面図を図示する。
【0049】
さらなる変化例において、接眼面は、平坦であるか、凸状であるか、凹状であるか、または傾斜している(例えば、
図5および7)ように構成されてもよい。
図5A1−5A2において、デバイス先端は、平坦な接眼面を有する。代替的な変化例において、デバイス先端は、デバイス先端が眼壁に押し付けられ、眼壁のくぼみをもたらすときに、デバイス先端の内部開口部と眼の表面との間の接触を向上させ得る突出または凸状接眼面(
図5B1−5B2)を有する。さらに別の変化例において、デバイス先端の接眼面は、へこんでいるか、または凹状であり、結膜等の眼の表面組織への偶発的な損傷の危険性を低減する。デバイス先端の接眼面のそのような構成は、眼壁を通した針の貫通を容易にするため、ならびにデバイス・眼の表面の牽引摩擦界面を提供することによって注入手技中に眼を部分的に固定化するために、眼壁上に力を印加し、眼圧を増加させる手段を提供しながら、結膜等の眼の表面組織への偶発的な損傷の可能性を低減してもよい。
【0050】
より具体的には、
図7に示されるように、接眼面は、平坦かつ該デバイスの長軸に垂直であってもよく(
図7A1−7A2)、または平坦かつ該デバイスの長軸に対して傾斜しており(7B1−7B2)(例えば、デバイスの長軸に対して約45度から約89度等の90度以外の角度で配向される)、または凸状かつデバイスの長軸に垂直であり(
図7C1)、または凸状かつデバイスの長軸に対して傾斜しており(
図7C2)、または丸みを帯びており(
図7D)、または卵形である(
図7E)。1つの変化例において、眼の界面は、丸みを帯びているか、または卵形である(例えば、Q−tipの先端と同様である)。接眼面の厚さは、約0.01mmから約10mmまで、約0.05mmから約5mmまで、または約0.1mmから約2mmまでであってもよい。
【0051】
接眼面は、それが眼の表面上で安定させることに役立つ1つ以上の特徴を含んでもよい。例えば、1つの変化例において、接眼面は、研磨することなく眼の表面上の接眼面の表面牽引摩擦を増加させる、複数の牽引摩擦要素、例えば、段差、隆起等を備える。そのような接眼面は、眼の表面上でデバイスを安定させ、眼内薬剤送達中にそれが移動することを防止するように、中または高牽引摩擦(high−traction)界面を提供してもよい。別の変化例において、接眼面は、吸引機構等の接着界面を含む。接眼面を作製するために使用される材料の種類を変化させることも、眼の表面上でその滑動を防止することに役立ってもよい。
【0052】
接眼面を作製するために使用される材料はまた、眼の表面の摩耗、擦過、または刺激を防止することに役立ってもよい。採用されてもよい例示的な非研磨材料は、限定するものではなく、ナイロン繊維、綿繊維、ヒドロゲル、海綿状材料、発泡スチレン材料、他の発泡体状材料、シリコーン、プラスチック、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。これらの材料は、平滑硬質、半硬質、または軟質であってもよく、経強膜針配備中の結膜下出血等の結膜摩耗、または眼の表面組織への他の偶発的な外傷を防止することに有益であってもよい(
図6)。典型的にはコンタクトレンズ製造で使用される材料も採用されてもよい。
【0053】
いくつかの変化例において、接眼面の縁もまた、神経終末および疼痛受容体が豊富である繊細な非角化上皮で覆われている結膜等の眼の表面組織への偶発的な損傷を防止するために、丸みを帯びている。この場合、
図6に示されるように、接眼面は、デバイス先端の円周に対応する円周を有してもよい(
図6A1−6A2)。他の変化例において、接眼面の円周は、デバイス先端のシャフトの円周を越えて突出し、フランジを形成してもよい(
図6B1−6B2)。フランジは、先端のシャフトの細い外形を維持し、眼の眼瞼間裂溝の中へのその容易な挿入を可能にしながら、デバイス先端の接眼面を増加させてもよい。
【0054】
接眼面はまた、柔軟であるか、または変形可能であり、眼内薬剤送達手技中に眼の表面に対して配置されたときに、眼の表面に一致する内面を提供してもよい。開示されたデバイスの内面と直接接触する眼の表面は、縁の約2mmから7mm後方にあり、および縁を包囲する円周領域、または縁の約2mm前方から約2mm後方の間にあり、および縁の円周にある角膜強膜縁領域として定義される扁平部領域を覆う眼の表面を含むが、それに限定されない。眼の表面の曲率に一致する界面は、デバイスと眼との間の最適な接触界面の形成を可能にし得、および眼内薬剤送達過程の無菌性および眼の固定化を確保し得、これは次に、注入手技の安全性を増進し得る。デバイスの眼表面材料の実施例は、概して、(変形可能または柔軟である)眼の表面に、特に、硝子体内薬剤塗布のためには角膜強膜縁の約2〜5mm後方の扁平部領域中の眼の外面の曲率に、ならびに前房薬剤塗布のためには角膜強膜縁の領域に一致することができるものである。前述のように、眼の表面の非角化結膜および角膜上皮を研磨しない材料が使用されてもよい。具体的には、材料およびそれらの構成(例えば、発泡体、ブレイズ、編物、織物、繊維束等)は、注入手技中に眼球の固定化を可能にする、中または高牽引摩擦表面を形成することが可能なもの(例えば、ヒドロゲルまたは綿)を含んでもよい。
【0055】
いくつかの変化例において、接眼面の材料は、例えば、眼の表面との接眼面の接触時に結膜摩耗の危険性を低減し得る綿繊維等において、その牽引摩擦係数を低減することによって、流体との接触時にその性質を変化させる。他の変化例において、接眼面を備える材料は、涙等の眼の表面を覆う流体に暴露されたときに、その物理的および化学的性質を変化させない。
【0056】
本明細書において説明される接眼面は、眼内針注入中に結膜および/または上強膜出血を防止することに有益であってもよい。例えば、輪状眼界面を備えるデバイスが、眼壁に押し付けられてもよく、それは次に、結膜および上強膜血管に圧力を印加し、それにより、それを通る血流を低減する。これらの血管を通る低減した血流を考慮すると、眼内注入手技中の結膜下出血の危険性が低減され得る。眼内薬剤塗布の完了後に、針が引き抜かれるが、輪状先端は眼壁に押し付けられた状態のままであってもよく、したがって、結膜および上強膜血管上に連続的圧力を印加し、さらに、出血の危険性を低減するか、および/または出血の程度を最小化する。
【0057】
いくつかの変化例において、デバイスは、薬剤貯留部として機能する接眼面を備える。ここで、薬剤は、接眼面の材料に組み込まれ、またはその上に被覆されてもよい。次いで、薬剤は、接眼面から眼の表面上へ拡散し、吸い付く等してもよい。薬剤を含むための例示的な材料は、ヒドロゲルおよびそれらの誘導体である。
【0058】
接眼面はまた、先端(例えば、キャップの遠位端)を眼壁に押し付けることによって、注入者が眼の上に圧力を印加することを可能にしてもよい、注入針等の分注部材(導管)を覆ってもよい(例えば、針を完全に覆うキャップであってもよい)。これは次に、針が眼壁と接触する前に眼圧を増加させてもよく、したがって、従来のシリンジ上の針によって貫通されている眼壁と比較して、眼壁がより緊張しているので、針の貫通を容易にし得る。生成されるより低い眼圧が、眼壁をより変形可能および可動性にするので、針貫通は、典型的には、従来のシリンジではより困難である。加えて、注入針等の分注部材(導管)を覆うデバイス先端はまた、眼瞼とのその偶発的な接触によって汚染されることから該分注部材を保護してもよい。
【0059】
(眼圧制御機構(眼壁張力制御機構))
薬剤送達手技、例えば、眼内注入または硝子体内注入中の眼圧(IOP)の制御が有益であり得る。分注部材(導管)の配備前の制限された眼圧の印加は、強膜の柔軟性を低減し得、それは次に、注入手技中の眼の表面上の不快感を減少させ、および/またはデバイスの反発を防止し得る。「反発」という用語は、典型的には、強膜をある点までへこませ、導管が強膜を貫通する前に導管およびデバイスを後方へ押す強膜の柔軟性および弾力性によって、導管が眼壁を円滑に貫通できないことを指す。したがって、本明細書において説明されるデバイスは、本明細書において眼壁張力制御機構とも呼ばれる1つ以上のIOP制御機構を含んでもよい。これは、眼壁張力が眼圧に比例的に関係し、および部分的に眼圧によって決定されるためである。壁張力に影響を及ぼし得る他の要因は、患者の年齢、性別、および個人差により可変となり得る強膜の厚さおよび剛性である。
【0060】
IOP機構は、眼の表面上の標的位置におけるデバイス先端の配置および設置中のIOP、および/または薬剤の眼内または硝子体内注入中の分注部材(導管)の眼内または硝子体内設置を制御し得る。例えば、IOP機構は、経強膜または経角膜貫通に使用されている分注部材の眼内または硝子体内設置の前または間に、IOPを制御してもよい。いったん分注部材による眼の表面の貫通が起こると、IOPは、典型的には減少する。このIOPの減少は、分注部材による眼の表面の貫通の直後に生じてもよい。
【0061】
いくつかの変化例において、IOP制御機構は、眼の表面上の標的位置におけるデバイス先端の配置および設置、および/または分注部材の眼内設置中に、デバイスが15〜120mmHgのIOPを生成することを許容する(可能にする)。他の変化例において、IOP制御機構は、眼の表面上の標的位置におけるデバイス先端の配置および設置、および/または分注部材の眼内設置中に、デバイスが20〜90mmHgのIOPを生成することを許容する(可能にする)。さらなる変化例において、IOP制御機構は、眼の表面上の標的位置におけるデバイス先端の配置および設置、および/または分注部材の眼内設置中に、デバイスが25〜60mmHgのIOPを生成することを許容する(可能にする)。
【0062】
IOP制御機構はまた、眼内注入手技の任意の持続時間中に、デバイスが10〜120mmHg、または15〜90mmHg、または20〜60mmHgのIOPを維持することを許容する(可能にする)。いくつかの変化例において、眼圧が、ある所定の値、例えば、120mmHg、または60mmHg、または40mmHgを超える場合に、薬剤注入速度がデバイスによって減速されるか、または完全に中止される。ここで、IOP制御機構は、例えば、90mmHg、または60mmHg、または40mmHgの眼内薬剤注入中にIOPレベルを検出するように構成されてもよい。
【0063】
IOP制御機構は、バネを含んでもよく、または機械あるいは電気制御機構を備えてもよい。一般に、IOP制御機構は、注入プランジャの摩擦力および流体注入抵抗圧力(針を通して加圧された眼の流体に流体を押し込むために必要とされる力)の平衡を保つように構成される。IOP制御機構は、分注部材配備およびプランジャ前進の力の自動調整を可能にする方式で、デバイス筐体および作動機構に連結されてもよい。つまり、IOP制御機構は、分注部材の所定のレベルの力および所定の眼圧レベルを達成するように構成されてもよい。再度、IOP制御機構の使用は、強膜の弾性およびデバイス反発の可能性が減少させられるように、および分注部材による強膜の貫通を容易にするように、分注部材配備前の静止よりも高いIOPを生成してもよい。
【0064】
1つの変化例において、IOP制御機構は、いったん最大圧力に達すると注入の流れを迂回する、圧力逃し弁である。別の変化例において、IOP機構は、特定範囲内においてIOPを減衰させる蓄圧器である。IOP制御機構のいくつかの変化例は、圧力センサを含んでもよい。さらに別の変化例において、IOP制御機構は、その配備前に分注部材を覆うが、例えば、所定のIOPレベルの到達時に、分注部材を露出させるか、配備するか、または前進させるように、デバイス筐体の表面に沿って摺動または後退し得る摺動可能キャップを含む。キャップの摺動は、例えば、ダイヤルを使用して、手動で調節可能であってもよく、または自動的に調節可能、段階的、または本質的に増分的であってもよい。例えば、
図40に示されるように、統合注入デバイス(500)は、いくつかある要素の中で特に、キャップ(502)、停止部(504)、トリガ(506)、バネ(508)、プランジャ(510)、シール(512)、薬剤貯留部(514)、針(516)、およびシリンジ(518)を含む。使用中、キャップ(502)が眼の表面に対して配置され、圧力が眼の表面に対して印加されたときに、シリンジ(518)および針(516)が前進させられるにつれて、キャップ(502)は、停止部(504)まで近位に(矢印の方向に)摺動可能に後退する。次いで、トリガ(506)、例えば、レバーが、バネ(508)を解放するように押下されてもよく、それは、針(516)を通して薬剤貯留部(514)から薬剤を注入するように、プランジャ(510)およびシール(512)を前進させる。いったん薬剤が注入されると、キャップ(502)は、針(516)上を後退するように摺動する。
【0065】
係止機構はまた、キャップ、カバー、または接眼面の摺動を防止するか、または所定のIOPに達するまで分注部材の配備を防止するために使用されてもよい。係止機構はまた、所定のIOPに達していない場合に、キャップ、カバー、または接眼面の摺動を防止するために使用されてもよい。例えば、摺動可能カバー、キャップ等を含む、本明細書において説明されるデバイス上に含まれる係止機構は、IOPが20mmHgと80mmHgとの間等の所定のレベルに到達すると、手動で、または自動的に解放されてもよい。そのような係止機構は、限定するものではなく、高牽引摩擦表面、係止ピン、相互係止する高くなった隆起、または、デバイスの先端、例えば、デバイスのキャップあるいはカバーが摺動し、したがって、針を露出することを防止する任意の他の種類の係止機構を含んでもよい。
【0066】
さらなる変化例において、IOP制御機構は、分注部材を覆って位置するキャップ、カバー、または接眼面上に高牽引摩擦表面または高くなった隆起を含む。そのような特徴は、キャップ、カバー、または接眼面の内面上に配置されてもよく、近位方向に摺動すると、高牽引摩擦表面または高くなった隆起が、デバイス筐体または他の適切なデバイス構成要素の表面上の対応する構造(例えば、しわ、くぼみ、突出部、他の高くなった隆起)と噛合して、眼壁に体するキャップ、カバー、または接眼面の抵抗を提供する(したがって、眼壁張力およびIOPを増加させる)ように構成されてもよい。この場合において、IOP制御機構は、以下でさらに説明されるように、動的抵抗構成要素を備える。上述のように、キャップ、カバー、または接眼面は、摺動が、手動で、または自動的に調節可能、段階的、または本質的に増分的であるように構成されてもよい。高くなった隆起が利用される場合、任意の好適な数が使用されてもよく、それらは、任意の好適なサイズ、形状、および幾何学形状であってもよい。例えば、高くなった隆起は、キャップ、カバー、または接眼面内において円周方向に配置されてもよい。場合によっては、高くなった隆起は、異なる傾斜の表面を伴って構成される。例えば、遠位表面は、近位表面よりも急勾配であるように構成されてもよい。この設計において、増分的な摺動およびIOPの増分的な増加は、キャップ、カバー、または接眼面が近位に摺動されるときに生成され得るが、分注部材上のキャップ、カバー、または接眼面の後方への摺動はまた、近位隆起表面の減少した傾斜によって達成されてもよい。
【0067】
(動的抵抗構成要素)
眼の表面への圧力の印加は、動的抵抗構成要素を注入デバイスに含むことによって達成され、さらに精緻化されてもよい。動的抵抗構成要素は、筐体に連結される摺動可能要素を含んでもよい。いくつかの変化例において、摺動可能要素は、以下でさらに説明されるように、眼の表面に印加される圧力の量を調整するように構成される動的スリーブを備える。前述のように、眼壁張力制御機構のある変化例は、動的抵抗構成要素として機能する。
【0068】
動的抵抗構成要素はまた、動的スリーブとして構成されてもよい。以前に説明された摺動可能キャップと同様に、動的スリーブは、針注入前の眼圧および眼壁の張力を増加させるように構成されてもよい。しかしながら、動的スリーブは、手動で操作されることが可能であり、それにより、眼の表面上に印加される圧力の量(したがって、眼壁張力の量)を調整する。印加された圧力を手動で調整する能力を有することは、注入者(ユーザ)が注入部位配置および注入角度の向上した制御を有することを可能にし得、また、針配備前に眼の表面上にデバイスを安定して設置するユーザの能力を増進する。一般に、動的スリーブは、ユーザがデバイス先端を眼の表面上の標的部位に正確に設置すること、および眼壁にデバイス先端をしっかりと押し付けて壁張力および眼圧を増加させることを可能にするように設計されている。動的スリーブは、スリーブ移動および針配備の開始前に、上記で説明されるように、所定のレベルまで眼圧を上昇させるために使用されてもよい。「動的スリーブ」、「スリーブ」、「動的スリーブ抵抗制御機構」、および「スリーブ抵抗機構」という用語は、全体を通して交換可能に使用されることを理解されたい。動的スリーブは、概して、ユーザがスリーブに引く力(例えば、後退)を及ぼすときに、この移動が、針の露出を促進し、スリーブを後方に摺動して針を露出するために眼壁に印加される必要がある圧力の量を(0ニュートンまで)(「N」は力の単位「ニュートン」を指す)低減し得るように構成される。動的スリーブはまた、ユーザがスリーブに押す力(例えば、前進)を及ぼすときに、この移動が針の露出に対抗して妨げてもよく、スリーブ移動および針露出の開始前に、デバイス先端が眼壁に増加した圧力を印加することを可能にし得るように構成されてもよい。
【0069】
動的スリーブのいくつかの変化例は、実施例1および
図46でさらに説明されるように、U字形曲線を辿る可変力を提供する。ここで、動的スリーブ移動の始点と終点との間に減少した抵抗を伴って、筐体に沿った動的スリーブ移動の開始および終了時に、最高抵抗に遭遇する。使用中、これは、(眼壁上の初期配置時に)初期高抵抗相を有することに変換し、その後に、眼の空洞の中への針の前進中のスリーブ移動に対する抵抗の減少が続く。針が完全に配備されたときに、動的スリーブは、典型的には、その移動経路の終端にあり、再度、増加した抵抗に遭遇する。この抵抗力の増加は、スリーブが(終点における突然の急停止の代わりに)円滑に段階的に停止し、損傷する量の力を不活性眼壁に伝達する危険性を最小化する(次に、眼への不快感または損傷を引き起こす危険性を最小化する)ことを可能にする。ここで、例示的な動的スリーブは、近位端および遠位端において先細であるように構成されてもよい。
図42の断面図を参照すると、統合注入デバイス(42)は、筐体(44)と、筐体を全体的または部分的に包囲する抵抗バンド(46)、および筐体(44)上で摺動可能に前進および後退させることができる動的スリーブ(48)とを含む。動的スリーブ(48)は、先細である近位端(50)および遠位端(図示せず)を有する。先細端は、(針配備の開始または終了時である)デバイス筐体(44)に沿った動的スリーブ移動経路の開始および終了時に、より高い牽引摩擦を提供してもよい。近位端(50)における先細は、抵抗バンド(46)に接触すると、動的スリーブ移動の開始時に、より高い牽引摩擦および抵抗を提供する。抵抗バンド(46)の厚さは、所望される抵抗の量を調整するように変化させられてもよい。より幅の広い中間セグメント(52)に到達すると、より低い牽引摩擦およびより低い抵抗の移動に遭遇し、その後に、動的スリーブの遠位端における先細に到達するにつれて、針配備の終了時に、より高い牽引摩擦およびより高い抵抗が続く。動的スリーブが遠位端において次第により先細になるにつれて、徐々に完全に停止するまで、さらなる牽引摩擦がデバイス筐体に対して生成される。両端が先細である代わりに、いくつかの変化例において、動的スリーブの近位端および遠位端のうちの1つが先細であってもよい。
【0070】
可変牽引摩擦がまた、デバイス先端の外面上の円形の高くなったバンドまたは隆起等の構成要素によって提供されてもよい。これらの構成要素は、可動の動的スリーブの内面上の別の円形の高くなったバンドまたは隆起(内側バンドまたは隆起)に対して近接させられたときに、反対の牽引摩擦を提供してもよい。動的スリーブが移動し始める前に、外側と内側バンドまたは隆起とが相互と接触しているときに、それらは、動的スリーブ移動に対する高い牽引摩擦および高い抵抗を生成する。いったん動的スリーブが移動し始めると、デバイス筐体の外側の高くなったバンドが、動的スリーブの内側の高くなったバンドを越えて移動し、それは、動的スリーブ移動に対する抵抗の急速な減少、したがって、デバイス先端による眼壁への減少した圧力をもたらし得る。高くなった相互係止バンドまたは隆起の形状は、概して、抵抗減少の形状を決定する。例えば、抵抗減少は、正弦形状の外形を辿ってもよい。
【0071】
別の変化例において、動的スリーブが針先端を露出させるように移動し始めるときに、動的スリーブは、針配備前(動的スリーブが針を完全に覆っているとき)のその最高点から、その最低点まで連続的に減少する力を生成してもよい。ここで、力は、動的スリーブの端が移動および針配備を完了するまで低い状態のままである。この抵抗減少のパターンは、正弦形状曲線を辿ってもよい。
【0072】
動的スリーブの摺動可能な移動は、0Nから約2Nまでの範囲の力を、それ自身と筐体との間に生成してもよい。場合によっては、動的スリーブの摺動可能な移動は、約0.1Nから約1Nまでの範囲の力を、それ自身と筐体との間に生成する。
【0073】
(測定構成要素)
本明細書において説明されるデバイスは、眼の表面上の眼内注入部位の場所を決定することに有用であり得る測定構成要素を含んでもよい。統合デバイスは、概して、測定構成要素を含む。測定構成要素は、接眼面に固定して取り付けられるか、または取外し可能に取り付けられてもよい。前述のように、測定構成要素は、眼瞼がデバイス先端の滅菌接眼面と接触することを防止するように、眼の表面より上側に高くされてもよい(
図2A−2Bおよび8)。測定構成要素の特定の構成はまた、注入針等の滅菌薬剤分注部材(導管)の不慮の汚染の危険性を最小化することに役立ってもよい。そのような汚染は、眼瞼または他の非無菌表面と不慮の接触をする無菌針等の種々の原因に起因する場合がある。測定構成要素はまた、結膜、強膜、および虹彩を含む眼の表面に対して、色の対比を提供する方式で着色されてもよい。
【0074】
一般に、測定構成要素は、眼内注入部位が、「縁」と呼ばれる角膜・強膜接合部から特定の距離を置いて、かつその後方または前方に、より正確に配置されることを可能にする。いくつかの変化例において、測定構成要素は、縁から、かつ縁の約1mmから約5mm、約2mmから約4.5mm、または約3mmから約4mm後方で眼内注入部位の配置を提供してもよい。別の変化例において、測定構成要素は、縁の約2mmから約5mm後方で、または縁の約3.5mm後方で眼内注入部位の配置を提供してもよい。他の変化例において、測定構成要素は、縁から、かつ縁の約3mmまたは約2mm以内で、または縁から、かつ縁の約0.1mmから約2mm前方で眼内注入部位の配置を提供してもよい。1つの変化例において、測定構成要素は、縁の約1mm前方から縁の約6mm後方の間で眼内注入部位の配置を提供する。別の変化例において、測定構成要素は、縁の約3mmから4mm後方で内注入部位の配置を提供する。
【0075】
測定構成要素は、任意の好適な構成を有してもよい。例えば、測定構成要素は、接眼面の一側面上、または接眼面の1つよりも多くの側面上に位置してもよい(例えば、
図9、10、および11)。ここでは、測定構成要素の先端が角膜強膜縁のすぐ隣に配置されるときに、眼内針注入の部位は、縁から特定の距離を置いて、例えば、縁の約3mmから約4mm後方に配置される。
【0076】
代替的な変化例において、測定構成要素は、1つ以上の部材を備える(例えば、
図9、10、および11)。これらの部材は、接眼面から半径方向に延在してもよい。1つよりも多くの部材に測定構成要素を備えさせることは、測定手段が単一の部材を備えるときの場合のように、縁と注入部位との間の距離が、縁と垂直に、かつ非接線方向に測定されることを確実にすることに有益であってもよい。測定構成要素を備える全ての部材の先端が、角膜強膜縁に沿って整合させられるときに、眼内針注入の部位は、縁の約3mmから約4mm後方等の縁から特定の距離を置いて配置される。
【0077】
より具体的には、
図8に示されるように、接眼面を有するデバイス先端は、角膜強膜縁に対してある距離を置いた注入部位の決定を可能にする、測定構成要素(80)を備える。前述のように、1つの変化例において、測定構成要素は、デバイス先端の一側面上に位置する。別の変化例において、1つよりも多くの測定構成要素が、デバイス先端の1つよりも多くの側面上に位置する。さらなる変化例において、測定構成要素の先端は、隆起、屈曲等していてもよく、それは、眼瞼が測定構成要素上で摺動し、デバイスの分注部材(導管)と偶発的に接触することを防止する。また、
図8において、分注部材(導管)は、デバイス先端の内側で完全に遮蔽されているものとして示されている。
【0078】
図9は、測定構成要素の別の変化例に関するさらなる詳細を提供する。ここで、デバイス先端は、輪状接眼面(90)と、角膜強膜縁に対してある距離を置いた注入部位の決定を可能にする、測定構成要素(91)とを備える。眼の表面と接触するデバイス先端の外側円周は、例えば、輪状眼界面を有し、注入針等の分注部材は、デバイス先端の内側で隠され、それによって保護されてもよい。
図9において、測定構成要素(91)は、デバイス先端の一側面上(
図9A−9B)、またはデバイス先端の1つより多くの側面上(
図9C)に位置する。したがって、測定構成要素の先端が角膜強膜縁の隣に配置されるときに、眼内針注入の部位は、縁の約3mmから約4mm後方等の縁から特定の距離を置いて配置される。測定構成要素の任意の好適な部材が、デバイス先端上に提供され、例えば、接眼面に取り付けられてもよい。複数の測定構成要素が使用されるときに、それらは、任意の好適な様式で接眼面の周囲に配設されてもよい。例えば、それらは、接眼面の周囲で、または接眼面の一側面上で、円周方向に配置されてもよい。それらは、眼の表面の円周の周囲で平等または不平等に離間されてもよい。他の変化例において、測定構成要素は、接眼面の円周の周囲で対象に離間され、または非対称に離間されてもよい。これらの構成は、注入者がデバイスをその長軸に沿って回転させることを可能にすることに有益であってもよい。
【0079】
図10A−10Cは、
図9A−9Cに示されるものと同様である、測定構成要素の付加的な図を提供する。
図10において、輪状接眼面(93)は、角膜強膜縁(94)に対して、かつそれと垂直なある距離を置いて注入部位の決定を可能にする、測定構成要素(93)を有して示されている。測定構成要素は、デバイス先端の一側面上で、または別の変化例において、デバイス先端の1つよりも多くの側面上で表示されている。再度、測定構成要素は、1つ以上の部材を備えてもよい。1つよりも多くの部材に測定構成要素を備えさせることは、測定構成要素が単一の部材を備えるときの場合のように、縁と注入部位との間の距離が、縁と垂直に、かつ非接線方向に測定されることを確実にすることに有益であってもよい。測定構成要素を備える全ての部材の先端が、角膜強膜縁に沿って整合させられるときに、眼内針注入の部位は、縁の約3mmから約4mm後方等の縁から特定の距離を置いて配置される。
【0080】
1つよりも多くの測定構成要素はまた、
図11A−11Dにも示されている。ここでは、測定構成要素(95)は、接眼面上で共通取付点(96)から延在するものとして表示されている。該測定構成要素を備える全ての部材の先端が、角膜強膜縁に沿って整合させられるときに、眼内針注入の部位は、縁の約3mmから約4mm後方等の縁から特定の距離を置いて配置される。
【0081】
代替として、測定構成要素は、1つ以上の可撓性測定ストリップとして構成されてもよい。測定ストリップを作製するために使用されてもよい可撓性材料は、シリコーン等の可撓性ポリマーを含む。
図44Aに示されるように、測定ストリップ(800)は、縁と注入部位との間の距離を縁と垂直に測定することができるように、デバイス先端(802)から、通常は接眼面(804)の側面から延在してもよい。測定ストリップ(800)が適正に使用されていることを確実にするために、位置指示器構成要素(806)が採用されてもよい。例えば、
図44Bに示されるように、位置指示器構成要素が実質的に緊張しているときに、(90度の角度が測定ストリップとデバイス筐体(808)との間で形成されるような)測定ストリップ(800)の正しい設置が決定されてもよい。対称的に、(
図44Cに示されるような)緩んだ位置指示器構成要素は、正しくない設置を示す。位置指示器構成要素は、コードであってもよい。1つの変化例において、統合デバイスは、少なくとも3つの測定ストリップを備える。別の変化例において、統合デバイスは、少なくとも4つの測定ストリップを含む。複数の測定ストリップが使用されるときに、それらは、統合デバイスの先端の周囲に任意の好適な方式で構成されてもよい(接眼面の円周の周囲で平等に離間される、接眼面の円周の周囲で対称または非対称的に配置される等)。例えば、
図44Dに示されるように、測定ストリップは、所望の90度角度(最も遠いストリップの間の45度を加えた45度)に及んで、ユーザの手を再配置する必要なく制御レバーの90度回転を可能にするように構成されてもよい。
【0082】
いくつかの変化例において、測定構成要素は、マーキング先端部材(97)として構成されてもよい。
図12に示されるように、その遠位端にある(眼により近い)マーキング先端部材(97)は、眼の表面と界面接触し、結膜表面に押し付けられたときに、その上に可視的なマーク(98)を残す(例えば、
図13)。マーカー遠端は、眼内注入が、眼の毛様体の扁平部領域を覆って、縁の約3mmから約4mm後方等の角膜強膜縁(99)に対する眼の安全領域を通して実行されることを可能にする。マーキング先端の直径は、約1mmから約8mm、または約2mmから約5mm、または約2.3mmから約2.4mmに及んでもよい(例えば、
図12)。
【0083】
(導管)
本明細書において説明される眼内薬剤送達デバイスは、眼内空間にアクセスし、その中で活性薬剤を送達するための任意の好適な導管(または分注部材)を含んでもよい。導管は、任意の好適な構成を有してもよいが、概して、近位端、遠位端、およびそれを通って延在する管腔を有する。それらの第1の非配備(配備前)状態では、導管は、概して、筐体内に存在する。それらの第2の配備状態では、すなわち、作動機構の起動後に、導管またはその一部は、典型的には、筐体から延在する。「近位端」によって、デバイスが眼の表面に対して設置されたときに、ユーザの手に最も近く、眼の付近の端とは反対側にある端が意味される。
【0084】
導管の遠位端は、概して、眼の表面、例えば、鋭くてもよく、勾配付きであってもよく、または別様に強膜を貫通することが可能であってもよい。採用される導管は、任意の好適なゲージ、例えば、約25ゲージ、約26ゲージ、約27ゲージ、約28ゲージ、約29ゲージ、約30ゲージ、約31ゲージ、約32ゲージ、約33ゲージ、約34ゲージ、約35ゲージ、約36ゲージ、約37ゲージ、約38ゲージ、または約39ゲージであってもよい。導管の厚さもまた、任意の好適な壁厚さを有してもよい。例えば、通常壁(RW)厚さに加えて、導管の壁厚さは、薄壁(TW)、極/超薄壁(XTW/UTW)、または極極薄壁(XXTW)と指定されてもよい。これらの指定は、当業者に周知である。例えば、導管は、微細ゲージカニューレまたは針であってもよい。いくつかの変化例において、導管は、約25と約39との間のゲージを有してもよい。他の変化例において、導管は、約27と約35との間のゲージを有してもよい。さらなる変化例において、導管は、約30と約33との間のゲージを有してもよい。
【0085】
導管は、従来の針のように丸みを帯びた先端(
図14A)よりもむしろ、鋭い尖った先端(
図14B−14Cおよび
図15A1−15A2)を有してもよい。尖った針先端は、先端へのそれらの集束点において、約5度から約45度まで(
図14B)、約5度から約30度まで、約13度から約20度まで、または約10度から約23度まで(
図14C)に及んでもよいベベル角度を形成するそれらの集束点において、真っ直ぐである外側面によって形成されてもよい。
【0086】
鋭い尖った針先端は、眼の主要な構造的な覆いであり、強力なコラーゲン繊維網から成る線維状、線維性強膜組織を通した針の向上した貫通を提供してもよい。したがって、そのような針先端は、眼壁を通したその貫通中に、より少ない抵抗を生じ、したがって、網膜および水晶体等の眼内構造に伝達される衝撃力を減少させてもよく、次に、(従来の針と比較して)眼内注入過程中に眼内構造へのより少ない損傷を引き起こす。
【0087】
加えて、そのような狭いベベル角度は、眼壁を貫通するときに針がより少ない感覚を引き起こすことを可能にしてもよく(該眼壁の外被は、結膜および角膜の中で特に密に位置する感覚神経繊維終末で豊富に神経支配されている)、それは、他のあまり敏感ではない部位と比較して、眼内注入が関与するときの問題となる場合がある。
【0088】
狭いベベル角度はまた、より長いベベル長さ、およびより大きいベベル開口部、したがって、注入針の遠位端におけるより大きい開口部を可能にしてもよい。そのような構成では、眼の空洞の中への薬剤注入の力が低減されてもよく、したがって、従来の短い勾配付き針で起こる場合がある、注入された物質の強制的な流れによる眼内組織損傷の可能性を低減する。
【0089】
いくつかの変化例において、導管は、
図16および17に図示されるように、1つ以上の平面、ならびに1つ以上の側面切断面を有する注入針である。実施例は、鋭い隆起によって分離した複数の表面を備える針シャフト(
図16A−16C)、ならびに勾配付き表面から約90度で針の勾配付き表面の両側に位置する鋭い側面切断面を備える針先端を含む。導管はまた、両側勾配付きであってもよく、すなわち、導管の反対側に位置する相互から約180度で対面する2つの斜面を有する。導管はまた、眼壁を通したその貫通を促進するように(例えば、シリコーン、PTFE等で)被覆されてもよい(
図17)。
【0090】
他の変化例において、導管は、
図18Aの線A−Aに沿って得られた
図18Cの断面図に示されるように、少なくとも1つの次元で全体的または部分的に扁平であるように構成されてもよい。例えば、導管は、(針の勾配付き側面からその反対側に向かっている)前後方向の次元で扁平であってもよい。1つの変化例において、針の外面および内面の両方は、扁平であり、断面で卵形を表す。別の変化例において、針の内面が、丸く、断面で円を表す一方で、針の外面は、眼壁の線維性強膜または角膜組織を通したそのより容易な貫通を可能にするように扁平である。別の変化例において、針の1つよりも多くの外面が、線維性眼壁を通したそのより容易な貫通を可能にするように扁平である一方で、該針の内部開口部は、円形または卵形を含む、任意の形状であってもよい。
【0091】
前述のように、その第2の配備状態で、導管または針は、筐体から延在する。筐体から延在する針の部分は、露出した針の長さと呼ぶことができる。作動機構の起動時に、針は、第1の非配備状態(配備前状態)(針が完全にデバイスの筐体内にある)から、それのある長さが露出されている、筐体の外側のその第2の配備構成になる。この露出した長さは、約1mmから約25mmまで、約2mmから約15mmまで、または約3.5mmから約10mmまでに及んでもよい。これらの露出した針の長さは、眼内損傷の危険性を最小化しながら、強膜、脈略膜、および毛様体を通した硝子体腔の中への完全な眼内貫通を可能にしてもよい。いくつかの変化例において、露出した針の長さは、約1mmから約5mmまで、または約1mmから約4mmまで、または約1mmから約3mmまでに及ぶ。ここで、露出した針の長さは、眼内損傷の危険性を最小化しながら、角膜を通した前房の中への完全な眼内貫通を可能にしてもよい。
【0092】
いくつかの変化例において、デバイスは、分注部材(11)(導管)用の露出制御機構(9)を含んでもよい(
図19および20)。露出制御機構(9)は、概して、分注部材配備中に分注部材の最大長さを設定することを可能にする。1つの変化例において、露出制御機構は、針保護部材(13)用の逆転防止装置を提供することによって稼働する。別の変化例において、露出制御機構(9)は、ダイヤル可能なゲージを伴う回転リング部材であってもよい。針の露出は、ミリメートルまたはミリメートルの分数、例えば、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm等で、調整することができる。ここで、デバイスは、針保護部材の中への針後退を制御する、後退機構を装備していてもよい。そのような針後退機構は、バネ作動型(
図20)であってもよい。
【0093】
デバイスはまた、導管を覆って保護する可撤性遠位(眼に向かった)部材(例えば、
図21の前面カバー(15))を含んでもよい。1つの変化例において、デバイスはまた、例えば、装填ドック機構(17)(例えば、
図21の裏面カバー(19))を備える、デバイスの近位部分を覆って保護する、可撤性近位(眼から離れた)部材を含んでもよい。
【0094】
(貯留部)
貯留部は、概して、筐体内に含有され、本明細書において説明される作動機構を使用して、活性薬剤を眼内空間に送達することが可能である限り、任意の好適な方式で構成されてもよい。貯留部は、任意の好適な薬剤または製剤、あるいは薬剤または製剤の組み合わせを、眼内空間、例えば、硝子体内空間に保持してもよい。「薬剤」および「剤」という用語は、全体を通して本明細書で交換可能に使用されることを理解されたい。1つの変化例において、薬剤貯留部は、シリコーン油を含まず(シリコーン油またはその誘導体のうちの1つが欠けている)、シリコーン油、またはその誘導体あるいは修飾物で内部が覆われ、または潤滑され、シリコーン油が眼の内側に入り、浮遊物または眼圧上昇を引き起こさないことを確実にする。別の変化例において、薬剤貯留部は、いずれの潤滑剤または封止剤も含まず、いずれの潤滑または密封物質でも内部が覆われず、または潤滑されず、該潤滑または密封物質が眼の内側に入り、飛蚊症または眼圧上昇を引き起こさないことを確実にする。
【0095】
いくつかの変化例において、貯留部は、環状オレフィン系樹脂、Zeonex(登録商標)シクロオレフィンポリマー(ZEON Corporation,Tokyo, Japan)またはCrystal Zenith(登録商標)オレフィンポリマー(Daikyo Seiko,Ltd.,Tokyo,Japan)、およびAPEL
TMシクロオレフィン共重合体(COC)(Mitsui Chemicals,Inc.,Tokyo,Japan)等の市販の製品を含む環状オレフィンエチレン共重合体、環状オレフィンエチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、およびそれらの組み合わせを含有する、材料でできている。1つの変化例において、高透明度、高耐熱性を有し、タンパク質、タンパク質断片、ポリペプチド、あるいは抗体、受容体、または結合タンパク質を含むキメラ分子等の医薬品との化学的相互作用が最小であるか、または全くない、環状オレフィン系樹脂および環状オレフィンエチレン共重合体を使用することが有益であってもよい。
【0096】
例示的な薬剤は、抗炎症薬(例えば、ステロイド性および非ステロイド)、抗感染薬(例えば、抗生物質、高真菌剤、駆虫剤、抗ウイルス剤、および消毒剤)、コリン拮抗薬および作動薬、アドレナリン拮抗薬および作動薬、抗緑内障薬、神経保護薬、白内障予防または治療用の薬剤、酸化防止剤、抗ヒスタミン剤、抗血小板薬、抗凝固剤、抗血栓剤、抗瘢痕化剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、補体阻害剤(例えば、抗C5aおよび抗C5b剤を含む抗C5剤)、ビタミン(例えば、ビタミンBおよびその誘導体、ビタミンA、デクスパンテノール、レチノイン酸)、成長因子、成長因子を阻害する薬剤、遺伝子治療ベクトル、化学療法剤、タンパク質キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、PEGF(色素上皮成長因子)、低分子干渉RNA、それらの類似体、誘導体、複合体、および修飾物、ならびにそれらの組み合わせ等の部類から選択されてもよい。
【0097】
単独で、または併用薬物療法の一部として使用されてもよい、薬剤の非限定的な具体的実施例は、Lucentis
TM(ラニビズマブ)、Avastin
TM(ベバシズマブ)、Macugen
TM(ペガプタニブ)、ステロイド、例えば、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、およびフルオシノロン、タキソール様薬剤、インテングリンまたは抗インテグリン剤、血管内皮成長因子(VEGF)トラップ(アフリバーセプト)、酢酸アネコルタブ(Retaane)、およびリムス族化合物を含む。リムス族化合物の構成要素の非限定的実施例は、シロリムス(ラパマイシン)およびその水溶性類似体SDZ−RAD、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、およびゾタロリムス、ならびにそれらの類似体、誘導体、複合体、塩、および修飾物、およびそれらの組み合わせを含む。
【0098】
局所麻酔薬も、貯留部に含まれてもよい。例えば、リドカイン、プロパラカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベタカイン、ベンゾカイン、ELA−Max(登録商標)、EMLA(登録商標)(局所麻酔薬の共融混合物)、およびそれらの組み合わせが使用されてもよい。
【0099】
本明細書において説明される貯留部およびデバイスは、非常に少容量の溶液、懸濁液、ゲル、または半固体物質の眼内投与に好適であってもよい。例えば、約1μlから約200μlの間、または約10μlから約150μlの間、または約20μlから約100μlの間の容量が送達されてもよい。そのためには、デバイスは、概して、非常に小さい「デッドスペース」を有し、それは、非常に少容量の眼内投与を可能にする。
【0100】
デバイス貯留部は、以下でさらに説明されるように、製造過程中に事前装填されてもよく、または眼内注入前に手動で装填されてもよい。
【0101】
(薬剤装填器)
薬剤または製剤が眼内注入前にデバイスの貯留部に装填されるときに、装填部材が採用されてもよい。装填部材は、筐体の遠位端に取外し可能に取り付けられてもよい。例えば、装填部材は、デバイスの中へ装填される液体、半液体、ゼラチン状、または懸濁薬剤の容量を定量的に制御する、装填ドックとして機能してもよい。例えば、装填部材は、操作者が、デバイスの中へ装填される特定の容量の薬剤を事前設定することを可能にする、ダイヤル機構(21)を備えてもよい(
図21および22)。装填は、約0.01μlから約100μl、または約0.1μlから10μlの範囲の精度で起こってもよい。そのような装填部材は、デバイスの中への薬剤の空気のない装填を可能にする、薬剤貯蔵コンテナの容量以下の特定の容量で、液体、半液体、ゼラチン状、または懸濁薬剤をデバイス貯留部に装填することを可能にしてもよい。これは、眼に注入された空気が、特に運転または他の同様の活動中に患者にとって不快かつ邪魔となる場合がある、患者による「浮遊物」が見えるという感覚をもたらすため、有益であってもよい。
【0102】
図22に示されるように、薬剤装填機構(23)は、その近位(眼からさらに遠い)端(29)を通した貯留部(27)の直立装填のための幅広基礎部材(25)を含む。また、例示的な前面(31)および裏面(33)カバー、ならびに装填および/または注入容量を設定するためのダイヤル可能制御機構(21)も示されている。他の変化例において、デバイスは、装填ドック(35A)等の装填機構を備え、ドック(35A)は、当業者に公知であるバイアル等の薬剤貯蔵コンテナ(
図25A−25B)と界面接触し、薬剤をデバイス貯留部の中へ装填することができるように、バイアルストッパを貫通して、バイアルの内側に含有された薬剤へのアクセスを獲得する。
図25A−25Bにおいて、薬剤が重力の方向へバイアルから下向きに移動するように、ドック機構は、薬剤バイアル(37)がドックの真上に設置されるように従属位置に位置する。
【0103】
1つの変化例において、ドック機構は、その基部に開口部または開窓(39)を有する、針または鋭いカニューレを備える。該開口部または開窓は、所望の装填位置にある間に装填ドックが薬剤バイアルの中へ貫通するときに、バイアルストッパの内面に直接隣接して設置され、それは次に、デバイスの中への空気のない装填、ならびに貯蔵コンテナからの完全薬剤除去を可能にする。空気のない薬剤装填は、患者が小さな眼内気泡または「浮遊物」を見ることを防止してもよいため、有益であってもよい。完全薬剤除去はまた、少ない薬剤の容量および高価な薬剤が典型的に使用されることを考慮すると、有益であってもよい。
【0104】
他の変化例において、例えば、デバイスが平坦な側面(
図24A−24D)を有する、あるいは平坦な前面または裏面(
図22)を有するときに、装填機構は、平面から180度に位置する装填ドックを含む。これは、装填ドックを真っ直ぐ上向きにさせ、それは、従属位置での薬剤コンテナの中へのその貫通を可能にし、それは次に、デバイスの中への空気のない薬剤送達、ならびに貯蔵コンテナの中の薬剤留置または損失を伴わずに貯蔵コンテナからの完全薬剤除去および該デバイスの中へのその装填を可能にする。
【0105】
図33A−33Bに示されるような、さらなる変化例において、貯蔵コンテナ(146)からの薬剤が貯留部(122)の中へ装填されることを可能にする、アクセスポート(144)が、針アセンブリ(125)の遠位端で提供されてもよい。アクセスポート(144)は、針アセンブリ(125)または筐体(102)上の任意の好適な場所に配置されてもよい。例えば、所望であれば、アクセスポートは、薬剤装填がデバイスの前面から起こるように、筐体の前壁または接眼面(図示せず)にさえ配置されてもよい。アクセスポート(144)は、鋭い導管による密閉可能な貫通を可能にする、材料、例えば、シリコーンでできていてもよい。1つまたは複数の膜(148)も、空気漏出および/または外部最近汚染に対して筐体の内部区画を密閉するように、例えば、接眼面(108)の中に提供されてもよい。1つまたは複数の小開口(150)も、筐体(102)からの空気の流出を制御することに役立つように、筐体(102)の壁の中に提供されてもよい。開口(150)の数および直径は、(針アセンブリおよび)針の配備の速度を制御するように変化させられてもよい。
【0106】
いくつかの変化例において、例えば、空気圧式作動機構が使用されるときに、薬剤装填は薬剤装填位置によって制御されてもよい。例えば、
図38に示されるように、デバイス(400)は、近位端(404)および遠位端(406)を有する、薬剤装填位置(402)を含んでもよい。遠位端(406)は、ネジ山付き部分(408)を含むように適合される。したがって、コンテナ(410)からアダプタ(412)およびアクセスポート(414)を通した薬剤の装填中に、薬剤装填位置(402)は、貯留部(416)内で陰圧を生成するように、回転させ、引き抜くことができる。この陰圧は次に、針(418)を通して貯留部(416)の中へ薬剤を引き込む。容器(420)もまた、貯留部(416)の中への移送前に、最初に装填された薬剤を保持するために、デバイスの遠位端で提供されてもよい。
【0107】
(作動機構)
本明細書において説明されるデバイスは、概して、筐体から導管を配備し、デバイスから眼内空間の中への薬剤の送達を可能にする作動機構を筐体内に含む。他の変化例において、導管は、例えば、スナップ嵌合または他の相互係止要素を使用して、デバイス筐体に取外し可能に取り付けることができる、別個のカートリッジ内に含有された作動機構によって配備される。作動機構は、眼内空間の中への薬剤の正確で非外傷性の制御された送達を提供する限り、任意の好適な構成を有してもよい。例えば、作動機構は、約1μl/秒から約1ml/秒、約5μl/秒から約200μl/秒、または約10μl/秒から約100μl/秒の範囲の速度で、眼内注入を介して眼の中へ薬剤または製剤を送達してもよい。作動機構は、概して、結膜、強膜、および毛様体の扁平部領域を備える、眼壁を貫通するほど十分に強いが、高速衝突により眼内構造への損傷を引き起こす力よりも小さい針配備の力を提供してもよい。この力は、利用される針のゲージ、衝突力を決定する、針先端と眼壁との間の接触点における針配備の速度/割合を含むがそれらに限定されない、いくつかの物理的要因に依存する。作動機構によって生成されてもよい力の例示的な範囲は、約0.1N(ニュートン)から約1.0N(ニュートン)までである。針配備の速度はまた、約0.05秒と約5秒との間に及んでもよい。
【0108】
いくつかの変化例において、作動機構は、単一バネ機構である。他の変化例において、作動機構は、2バネ機構である。さらなる変化例において、作動機構は、例えば、真空等の陰圧、または陽圧駆動型機構を採用する、空気圧式である。さらなる変化例において、作動機構は、例えば、圧電または磁気レール機構によって、磁気的または電気的に駆動される。これらの種類の作動機構は、薬剤注入の速度および力(例えば、2バネ変化例において第1のバネ部材によって制御される)ならびに分注部材の配備の速度および力(例えば、例えば、2バネ変化例において第2のバネ部材によって制御される)の独立した制御を可能にするように構成されてもよい。例示的な2バネ機構が、
図26および27に示されている。
【0109】
図28はまた、2バネ作動機構を伴う例示的な統合眼内薬剤送達デバイスも表示する。
図28において、デバイス(100)は、近位端(104)および遠位端(106)を有する、筐体(102)を含む。接眼面(108)は、遠位端(106)に取り付けられる。測定構成要素(110)は、接眼面(108)の一側面に取り付けられる。以下でさらに説明されるように、筐体(102)に動作可能に連結されるトリガ(112)は、筐体(102)の開口部(120)を通してピン(118)を配備し、それにより、貯留部(122)から薬剤を送達するように、作動機構の第1のバネ(114)および第2のバネ(116)と連動する。第1のバネ(114)、第2のバネ(116)、ピン(118)、開口部(120)、および貯留部(122)は、
図29でより良好に示されている。また、
図29において、導管、例えば、針(124)が、その第1の非配備状態で、筐体内に表示されている。針(124)は、アセンブリの移動が針(124)の対応する移動をもたらすように、アセンブリ(125)の一部であるものとして構成される。第1のバネ(114)の遠位端および第2のバネ(116)の近位端に接続される、停止部(115)が、アセンブリ(125)の近位端(127)で提供される。バネ、ならびにデバイスの構成要素は、医療グレード接着剤、摩擦またはスナップ嵌合等を介して接続されてもよい。
【0110】
図30において、第2のバネ(116)は、プランジャ(132)の区画(134)内の摩擦嵌合によってプランジャ(132)に動作可能に接続される。
図29に示されるような、起動前状態において、プランジャ(132)および第2のバネ(116)は、ピン(118)によって適所で保持される。ピン(118)は、プランジャ溝(138)においてプランジャ(132)に取外し可能に係合され、プランジャ溝(138)および筐体(102)に対する摩擦嵌合を介して、適所でプランジャ(132)を係止する。
【0111】
トリガを起動することによる、作動機構の第1のバネ(114)の起動は、眼内空間の中へ針(124)を配備し、すなわち、針(124)をその第1の非配備状態(
図29)からその第2の配備状態(
図30)へ動かす。
図30および31A−31Cを参照すると、第1のバネ(114)の起動は、トリガ(112)の押下によって、例えば、ボタン(126)も押下する、1本または2本の指によって起こる。
図31Aおよび31Bに示されるように、ボタン(126)は、ボタン(126)が筐体(102)の中のチャネル(130)と整合することを可能にする、ボタン溝(128)を伴って構成される。いったんチャネル(130)と整合させられると、ボタン(126)は、チャネル(130)に沿って摺動可能に前進させられてもよい。チャネル(130)に沿った移動の速度は、ユーザによって手動で制御され、バネ拡張の力によって自動的に制御され、または両方の組み合わせであってもよい。このボタン(126)の移動は、針アセンブリ(125)および針(124)を配備することができるように、停止部(115)に対する第1のバネ(114)の拡張を可能にする。筐体の中のチャネルは、任意の好適な構成を有してもよい。例えば、
図31Cに示されるように、チャネル(130)は、眼壁を通した針の貫通を促進してもよい、前進時の針の回転またはらせん型移動を可能にするように、筐体内でらせん状に切断されてもよい。
【0112】
第1のバネ(114)の起動は、典型的には、デバイスから出て眼内空間の中へ薬剤を送達するように、第2のバネ(116)の起動をもたらす。例えば、
図30に示されるように、第2のバネ(116)の近位端にも接続される停止部(115)に対する第1のバネ(114)の拡張は、アセンブリ(125)が筐体(102)内で前進させられるように、第2のバネ(116)を拡張するよう稼働する。
図32A−32Cに図示されるように、プランジャ(132)に取外し可能に係合されるピン(118)が開口部(120)に到達するときに、それらは、開口部(120)を通して外に配備される。次いで、デバイスからのピン(118)の放出は、プランジャ(132)に対する第2のバネ(116)の自由な拡張を可能にし、それにより、デバイスから貯留部(122)と存在する薬剤を押し出す。開口部(120)は、薬剤が送達されたという視覚的指示を与えるように、ピン(118)によって貫通することができる膜またはシール(140)によって覆われてもよい。
【0113】
図41A−41Bに示されるような2バネ作動機構も使用されてもよい。
図41Aを参照すると、統合デバイス(600)は、第1のバネ(602)と、第2のバネ(604)とを備える、作動機構を含む。使用中、トリガ(606)、例えば、レバーが押下されたときに、第1のバネ(602)は、矢印の方向にシャフト(608)を前進させるように解放され、それは次に、デバイス(600)の先端から外へ針(610)を前進させる。シャフト(608)の継続した前進は、貯留部(616)内の薬剤が針(610)を通して送達されてもよいように、注入スリーブ(612)および最上部シール(614)を前進させる。
図41Bを参照すると、いったん薬剤が注入されると、タブ(618)が筐体開口部(620)に取外し可能に係合し、それにより、第2のバネ(604)を解放し、それは次いで、シャフト(608)を後方に移動させて針(610)を後退させる(図示せず)。
【0114】
いくつかの変化例において、
図36および37に示されるように、単一バネ作動機構が採用される。単一のバネが使用されるときに、作動機構は、第2のバネが除去されることを除いて、上記で説明される2バネ機構に酷似して構成される。したがって、
図36に示されるように、その起動前状態において、単一のバネ(302)を有するデバイス(300)は、トリガ(304)の押下によって、例えば、ボタン(306)も押下する1本または2本の指によって起動し得る。ボタン(306)は、ボタン(306)が筐体(310)の中のチャネル(図示せず)と整合することを可能にするボタン溝(308)を伴って構成される。いったんチャネルと整合させられると、ボタン(306)は、チャネルに沿って摺動可能に前進させられ得る。このボタン(306)の移動は、針アセンブリ(314)および針(316)を配備することができるように、プランジャ(312)に対するバネ(302)の拡張を可能にする。プランジャ(312)に取外し可能に係合されるピン(318)が筐体(310)内の開口部(320)に到達すると、それらは、開口部(320)を通して外に配備される。次いで、デバイスからのピン(318)の放出は、プランジャ(312)に対するバネ(302)の自由な拡張を可能にし、それにより、デバイスから貯留部(322)と存在する薬剤を押し出す。ここでは示されていないが、開口部(320)は、薬剤が送達されたという視覚的指示を与えるように、ピン(318)によって貫通することができる膜またはシールによって覆われてもよい。
【0115】
空気圧式作動機構が、また、採用されてもよい。1つの変化例において、
図34ならびに35Aおよび35Bに表示されるように、空気圧式作動機構は、単一および2バネ機構について説明されるものと同様に、プランジャと、ピンと、筐体開口部とを含む。しかしながら、針アセンブリおよびプランジャを配備するためにバネを使用する代わりに、筐体内において針アセンブリを摺動可能に前進させるためにピストンが使用される。例えば、
図34において、空気圧式作動機構(200)を有するデバイスは、ピストン(202)と、トリガ(204)とを含む。ピストン(202)は、デバイス(202)の筐体(206)の中に空気を圧縮するために使用される。所望であれば、ピストンがデバイスの中に含む圧縮空気の量は、ダイヤルまたは他の機構(図示せず)によって制御されてもよい。筐体の近位端はまた、筐体から外ではないが、筐体の中へのピストン(202)の平行移動を可能にする、例えば、フランジ、しわ、または他の格納構造を伴って構成されてもよい。トリガ(208)の押下時に、1対の係止ピン(210)も押下され、それによりピストン(202)によって生成された圧縮空気が針アセンブリ(212)を前方に押すことを可能にする。この針アセンブリ(212)の移動は、デバイスから外に針(214)を配備する(
図35B)。前述のように、適所でプランジャ(218)を係止する、上記のものと同様のピン(216)も提供される。針アセンブリ(212)の前方移動による、デバイスから筐体(206)の開口部(220)の外への放出時に、圧縮空気は、プランジャ(218)をさらに前方に移動させ、それにより、デバイスから外に貯留部(222)とともに存在する薬剤を押し出す。針アセンブリ(212)を摺動することによる解放時に、筐体(206)に対する針アセンブリ(212)の回転を可能にする、回転ピン(224)も含まれてもよい。
【0116】
前述のように、トリガが筐体に連結され、作動機構を起動するように構成されてもよい。1つの変化例において、同じ手の指によってデバイスが所望の眼の表面部位を覆って設置される一方で、指先によってトリガを起動することができるように、トリガは、眼の界面においてデバイス先端に近接するデバイス筐体の側面上に位置する(例えば、トリガとデバイス先端との間の距離は、5mmから50mmまでの間、10mmから25mmまでの間、または15mmから20mmまでの間に及んでもよい)。別の変化例において、接眼面が縁と垂直に眼の表面上に配置されたときに、眼の表面上にデバイスを設置する同じ手の第2または第3指の先でトリガを起動することができるように、トリガは、測定構成要素に対して90度でデバイス筐体の側面上に位置する。
【0117】
デバイスのいくつかの変化例は、プランジャ移動を開始するための制御レバーを含んでもよい。これらの場合において、制御レバーは、例えば、上記で説明されるものと同様であるバネ作動によって、機械的にプランジャを作動させてもよい。他の変化例において、プランジャの作動は、機械的および手動の特徴の組み合わせを介して生じてもよい。例えば、プランジャ移動の開始が、制御レバー上に印加される手動力によって補助されてもよい一方で、機械力を生成するためのバネ作動型機構も、デバイスの内側でプランジャを前方に移動させて薬剤を注入するために採用される。制御レバーがプランジャに接続される場合において、プランジャ移動および薬剤注入の開始は、手動構成要素によって制御される一方で、流体注入の速度は、機械力によって制御される。ここで、低減した手動力が、同一方向機械力とのその組み合わせにより、プランジャに印加されてもよく、したがって、正確な注入部位における眼の表面上のデバイスの安定性を向上させる。
【0118】
制御レバーは、眼の表面と界面接触するデバイスの先端から10mmと50mmとの間に、またはデバイスの先端から20mmと40mmとの間に配置されてもよい。このような制御レバーの設置は、片手によるデバイスの非外傷性で正確な操作を可能にし得る。
【0119】
図43A−43Dに図示されるように、例示的な統合デバイス(700)は、筐体(702)と、その上で摺動可能な動的スリーブ(704)と、接眼面(706)と、プランジャ(708)と、針(712)を通して薬剤を注入するようにプランジャ(708)を手動で作動させるための制御レバー(710)とを含む。
図43Aに示される接眼面(706)、動的スリーブ(704)、プランジャ(708)、および針(712)の拡大断面図が、
図43Bに示されている。使用中、眼の上に接眼面(706)を配置した後に、印加された圧力は、後方に(矢印の方向に)動的スリーブ(704)を自動的に摺動して針を露出させ、眼壁を通した針の貫通を可能にし得る。次いで、制御レバー(710)は、プランジャ(708)を前進させるために、(
図43Cの矢印の方向に)手動で摺動可能に前進させられてもよい。針(712)を通した薬剤の注入が完了したときに、動的スリーブ(704)は、
図43Dに示されるように、針を覆うように手動で摺動可能に前進させられてもよい。
【0120】
動的スリーブは、移動度制御機構とも呼ばれる微細移動度制御機構によって手動で、摺動可能に前進または後退させられ得る。これらの場合において、動的スリーブは、指先によるスリーブの移動を補助し得るスリーブの外面上に位置する高牽引摩擦表面を備えてもよい。1つの変化例において、高牽引摩擦表面は、鋸歯状パターンに刻まれ、またはマーキングを含有してもよい。他の変化例において、
図45Aに示されるように、プラットフォームまたはパッド(例えば、指先パッド)(900)が、スリーブを手動で前進または後退させることに役立つようにスリーブ(902)の外面に取り付けられてもよい。プラットフォームまたはパッドはまた、高牽引摩擦表面(904)を含んでもよく、その斜視図、側面図、および上面図は、それぞれ、
図45B、45C、および45Dに図示される。プラットフォームまたはパッド(900)は、典型的には、スリーブ(902)に取り付けるための基部(912)を含む。基部(912)は、任意の好適な構成であってもよい。例えば、プラットフォームまたはパッドの基部は、円筒(
図45H)として、あるいはダンベルまたはリンゴの芯形状(
図45I)等の狭くなった部分(より小さい直径の部分)を伴って構成されてもよい。
【0121】
本明細書において説明されるデバイスのいくつかの変化例は、薬剤を眼に注入するために動的抵抗構成要素と組み合わせて稼働する後退スロットまたはチャネルを有するグリップを含む。
図45Aを参照すると、グリップ(906)は、スリーブ(902)の近位端(912)においてデバイス筐体(908)に連結される(通常は固定して取り付けられる)構成要素であってもよい。グリップ(906)は、その壁に後退スロット(910)を含むように構成されてもよい。使用中、
図45Jの矢印の方向によって示されるように、スリーブ(902)が後退させられたときに、パッドまたはプラットフォームの基部(912)は、スロット(910)の中に移動させられる。後退スロット(910)は、均一な幅を伴うチャネル(
図45F)として、あるいは、スロット近位または遠位端において狭くなった部分(
図45G)または拡大した部分(
図45E)を有する、鍵穴型構成を伴うチャネルとして構成されてもよい。後退スロットは、例えば、後退の終点に到達したときに、感覚フィードバックを提供してもよい。プラットフォームまたはパッドの基部の構成は、スロットとの摩擦嵌合を提供するように選択されてもよい。例えば、スロットが狭くなった部分を有するときに、基部も狭くなった部分を有してもよい。
【0122】
グリップが採用されるときに、デバイスはまた、係止機構を含んでもよい。1つの変化例において、スリーブ後退および針露出/配備の終点に到達したときに、スリーブスロットの幅が広い部分は、グリップスロットの幅が広い部分、ならびに筐体の開口部およびプランジャシャフトの開口部と整合させられ、手動薬剤注入のための作動レバーになるプラットフォームに対して係止するように、プラットフォーム基部がプランジャシャフトに挿入されることを可能にする。基部の狭い部分は、スリーブスロットの狭い部分に進入し、それは、スリーブに対してプラットフォームを解除し、デバイス先端に向かったその移動を可能にする。別の変化例において、プラットフォーム基部が後退スロットの終点に到達するときに、それは、プランジャシャフトの開口部の中へ押下され、プラットフォームおよびプランジャを接続する係止ピンになってもよい。それが押下されたときに、その狭い部分は、スリーブの鍵穴状スロットに進入し、スロット内で移動可能となり、スリーブの先端に向かって移動する(プラットフォーム基部およびスリーブを解除する)。
【0123】
移動度制御機構は、その眼内貫通中に針を配備するために、ユーザが眼の表面上のデバイス先端によって及ぼされる圧力の量を制御することを所望するときに、有益であり得る。移動度制御機構を用いて、ユーザは、スリーブの移動および針の露出を調節する対抗力を低減または増加させるために指先を使用してもよい。
【0124】
例えば、ユーザが高牽引摩擦表面上に引く力を及ぼす(つまり、デバイス先端からスリーブの高牽引摩擦表面を引き離す)場合、この移動は、針の露出を促進し、スリーブを後方に摺動して針を露出させるために眼壁に印加される必要がある圧力の量を(0ニュートンまで)低減してもよい。別の変化例において、ユーザが押す力を及ぼす(つまり、デバイス先端に向かってスリーブの高牽引摩擦表面を押す)場合、この移動は、針の露出に対抗して妨げてもよく、それは、スリーブ移動および針露出の開始前に、デバイス先端が眼壁に増加した圧力を印加することを可能にし得る。
【0125】
使用中、プラットフォームまたはパッドは、第2または第3指によって摺動されてもよい。再度、これは、注入者が、デバイス先端に沿ったスリーブ抵抗および移動を手動で変調することを可能にする。例えば、パッド、したがってスリーブを指先で前方に押すことによって、デバイス先端が眼の表面上に設置されている(かつ針が完全に覆われた状態のままとなる必要がある)ときに、注入者は、手技の開始時にいくらかの抵抗を提供する。次いで、注入者は、スリーブパッドから指先を解放して、針配備およびその経強膜貫通を可能にする。デバイスのいくつかの変化例はまた、スリーブがこの段を越えて引き戻された後に、バネ作動型プランジャ移動を自動的に誘起するように、スリーブ経路の終端に、段または輪状隆起を含んでもよい。指先パッドは、プランジャ移動および薬剤注入を作動させるために、針配備の終了時に段を越えてスリーブを引き戻すように使用することができる。
【0126】
プラットフォームまたはパッドが利用されるときに、それは、スリーブが針を露出させるように移動し始める前に、デバイスが眼球に及ぼす圧力の量を低減し、したがって、患者ごとに印加された圧力の量のカスタマイズを可能にしてもよい。
【0127】
別の側面では、動的スリーブは、眼の表面において最大抵抗に遭うと、針が1mm以下露出されるように、眼壁を貫通するにつれて、段階的な針の露出を提供してもよい。ここで、針の残りの部分は、少なくともその遠位の露出されていない点またはより長いセグメントが、狭い出口または管の内側に保護された状態で、スリーブの内側に位置する。そのようなスリーブ設計は、長い露出した針を有する従来のシリンジと比較して、針が屈曲する危険性を最小化し得る。この設計は、眼壁を貫通するにつれて屈曲される増加した危険性を伴わずに、より小さいケージの針の利用を可能にしてもよい。より小さい針ゲージによって、その眼内貫通中、より快適で低い外傷性であり得る。
【0128】
(II.方法)
統合眼内薬剤送達デバイスを使用するための方法も、本明細書において説明される。一般に、方法は、眼の表面上にデバイスの接眼面を設置するステップと、接眼面を使用して、標的注入部位における眼の表面に対して圧力を印加するステップと、作動機構を起動することによって、デバイスの貯留部から眼の中に活性薬剤を送達するステップとを含む。設置するステップ、印加するステップ、および送達するステップは、典型的には片手で完了する。
【0129】
接眼面を使用した眼の表面に対する圧力の印加はまた、15mmHgと120mmHgとの間、20mmHgと90mmHgとの間、または25mmHgと60mmHgとの間に及ぶ眼圧を生成するために使用されてもよい。前述のように、分注部材(導管)の配備前の眼圧の生成は、強膜の柔軟性を低減し得、それは次に、強膜を通した導管の貫通を容易にし、注入手技中の眼壁を通した眼の表面上の不快感を減少させ、および/またはデバイスの反発を防止し得る。眼圧制御は、圧力逃し弁、圧力センサ、蓄圧器、圧力センサ、または以前に説明されたような係止機構および/または隆起を有する摺動可能キャップ等の構成要素を使用して、手動で、または自動的に、生成または維持されてもよい。
【0130】
説明された方法によるデバイスの使用は、疼痛神経終末において多く神経支配されている結膜等の眼壁の種々の覆いを通した針の貫通と関連付けられる疼痛を低減し得る。眼内注入手技中の注入部位における麻酔効果は、針注入前および/または中に、注入部位を覆って結膜および眼壁に機械的圧力を印加することによって提供されてもよい。眼壁への機械的圧力の印加はまた、過渡的に眼圧を増加させて眼壁の硬度を増加させ(かつその弾力性を減少させ)、それにより、強膜を通した針の貫通を促進し得る。さらに、眼壁への機械的圧力の印加は、デバイスによって注入される薬剤のための潜在的な空間を作成するために、眼内において眼内流体を変位させてもよい。
【0131】
デバイスは、任意の好適な眼症状を治療するために使用されてもよい。例示的な眼症状は、限定するものではなく、任意の種類の網膜または黄斑浮腫、ならびに網膜または黄斑浮腫と関連付けられる疾患、例えば、加齢黄斑変性症、糖尿病性黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫、および術後黄斑浮腫、CRVO(網膜中心静脈閉塞)、BRVO(網膜静脈分枝閉塞)、CRAO(網膜中心動脈閉塞)、BRAO(網膜動脈分枝閉塞)、およびROP(未熟児網膜症)等の網膜血管閉塞性疾患、血管新生緑内障、ブドウ膜炎、中心性漿液性網脈絡膜症、および糖尿病性網膜症を含む。
【0132】
デキサメタゾンリン酸ナトリウム溶液が眼症状を治療するために使用されるときに、各個別注入デバイスによって眼に投与されてもよいデキサメタゾンリン酸ナトリウムの用量は、約0.05mgと約5.0mgとの間、約0.1mgと約2.0mgとの間、または約0.4mgと約1.2mgとの間に及んでもよい。
【0133】
いくつかの変化例において、眼の上にデバイスを配置する前に、局所麻酔薬が眼の表面上に塗布される。任意の好適な局所麻酔薬が使用されてもよい。例示的な局所麻酔薬は、限定するものではなく、リドカイン、プロパラカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベタカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、ELA−Max(登録商標)、EMLA(登録商標)(局所麻酔薬の共融混合物)、およびそれらの組み合わせを含む。1つの変化例において、局所麻酔薬は、リドカインを含む。リドカインが使用されるときに、それは、約1%から約10%まで、約1.5%から約7%まで、または約2%から約5%までの範囲の濃度で提供されてもよい。別の変化例において、局所麻酔薬は、医薬製剤の麻酔効果を増強または/および延長するフェニレフリンまたは別の薬剤と混合される。局所麻酔薬は、任意の好適な形態で提供されてもよい。例えば、それは、溶液、ゲル、軟膏等として提供されてもよい。
【0134】
消毒剤も、眼の上にデバイスを配置する前に、眼の表面上に塗布されてもよい。好適な消毒剤の実施例は、ヨード、ポビドンヨード(betadine(登録商標))、クロルヘキシジン、石鹸、抗生物質、それらの塩および誘導体、ならびにそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。消毒剤は、局所麻酔薬と組み合わせて塗布されてもされなくてもよい。消毒剤がポビドンヨード(Betadine(登録商標))を含むときに、ポビドンヨードの濃度は、約1%から約10%まで、約2.5%から約7.5%まで、または約4%から約6%までに及んでもよい。
【0135】
薬剤送達過程中に、本明細書において説明されるデバイスは、注入針が眼壁(強膜)と垂直である直角で眼に進入するように、構成されてもよい。他の場合において、デバイスは、注入針が虹彩面と平行な前眼房の中へ角膜を通って進入するように、構成されてもよい。
【0136】
(III.システムおよびキット)
眼内薬剤送達デバイスを含むシステムおよびキットも、本明細書において説明される。キットは、1つ以上の統合薬剤送達デバイスを含んでもよい。そのようなデバイスは、活性薬剤を事前装填していてもよい。複数の事前装填されたデバイスが含まれるときに、それらは、別々に包装されて、同じ活性薬剤または異なる活性薬剤を含有し、同じ用量または異なる用量の活性薬剤を含有してもよい。
【0137】
システムおよびキットはまた、手動で装填される1つ以上の別々に包装されたデバイスを含んでもよい。デバイスが使用前に手動で装填される場合、1つ以上の別々に包装された活性薬剤がキットに組み込まれてもよい。事前装填されたデバイスシステムまたはキットと同様に、本明細書のシステムおよびキットの中の1つ以上の別々に包装された活性薬剤は、同じであっても、または異なってもよく、それぞれの別々に包装された活性薬剤によって提供される用量は、同じであっても、または異なってもよい。
【0138】
当然ながら、システムおよびキットは、事前装填されたデバイス、手動装填用のデバイス、および活性薬剤の任意の組み合わせを含んでもよい。また、デバイスの使用説明書も含まれることも理解されたい。いくつかの変化例において、1つ以上の別々に包装された測定構成要素が、デバイスに取外し可能に取り付けるために、システムおよびキットの中で提供されてもよい。局所麻酔薬および/または消毒剤も含まれてもよい。
【0139】
(IV.実施例)
以下の実施例は、上記の眼内注入デバイスを使用する方式をより完全に説明する働きをする。この実施例は、決して本発明の範囲を限定する働きをしないが、むしろ例示目的で提示されていることが理解される。
【0140】
(実施例1:動的スリーブによって生成される抵抗力)
動的スリーブ(スリーブの各端が先細である双先細設計)によって覆われた30ゲージ針を備える眼内注入デバイスを、Imada引張試験台上に固定し、10mm/分の速度でImada 10N力計測器に対して移動させた。実践におけるスリーブの移動をシミュレートしながら、針を露出させるようにスリーブが押し返されている間、抵抗力を測定した。これは、
図46に示されるように、スリーブ変位曲線に対して描画された「U」字形の力を生成した。スリーブ移動経路の始めおよび終わりの抵抗力は、経路の中間における抵抗力よりも大きかった。
図46において、生成される抵抗力の図示された範囲は、0ニュートンと約2ニュートンとの間、約0.1ニュートンと約1.0ニュートンとの間であってもよい。
【0141】
1つの場合において、スリーブ経路の始めの抵抗力は、30または31ゲージ針が人間の強膜を貫通するために必要とされる力に等しかった(例えば、0.2ニュートンと0.5ニュートンとの間)。より高い抵抗のスリーブを使用することが採用されたときに、スリーブ経路の始めの抵抗力は、30または31ゲージ針が人間の強膜を貫通するために必要とされる力よりも大きかった(例えば、1ニュートン以上)。しかしながら、力は、患者にとって快適であり、眼への潜在的な損傷を回避する(例えば、60mmHg以上の眼圧の増加を回避する)ほど十分に低かった。スリーブ移動経路の中間部分において、力は0ニュートンに近づいた。