(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931859
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】固形コアコアセルベート化したカプセル
(51)【国際特許分類】
A61K 8/11 20060101AFI20160526BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20160526BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20160526BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20160526BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20160526BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20160526BHJP
A61K 8/66 20060101ALI20160526BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20160526BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20160526BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20160526BHJP
B01J 13/06 20060101ALI20160526BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20160526BHJP
A23G 4/00 20060101ALI20160526BHJP
A61K 47/42 20060101ALN20160526BHJP
A61K 47/36 20060101ALN20160526BHJP
A61K 9/50 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
A61K8/11
A61K8/92
A61K8/65
A61K8/73
A61K8/35
A61K8/19
A61K8/66
A61Q11/00
A61Q19/00
A61Q13/00 100
B01J13/06
A23L1/00 C
A23G3/30
!A61K47/42
!A61K47/36
!A61K9/50
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-517621(P2013-517621)
(86)(22)【出願日】2011年6月27日
(65)【公表番号】特表2013-533251(P2013-533251A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】IB2011052807
(87)【国際公開番号】WO2012001604
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月5日
(31)【優先権主張番号】10167816.7
(32)【優先日】2010年6月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ダーデル
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−326030(JP,A)
【文献】
特開2003−047432(JP,A)
【文献】
特表2007−525994(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/007234(WO,A1)
【文献】
特開平01−125313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A23G 1/00− 9/30
A23L 1/00− 1/035
B01J 13/02−13/22
A61K 47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアセルベート化したカプセルであって、次の(a)及び(b):
(a)
(I)(i)水素化油又は(ii)水素化脂肪又は(iii)ココアバター又は(iv)その混合物を含む、脂肪成分、及び
(II)フレーバー及び/又はフレグランス材料を含む、カプセル化される材料、
の混合物を含むコア、前記カプセルの質量に対して10〜99%、
その際、前記混合物は30℃〜40℃のTmを有するため、20℃で固形であり、脂肪成分とカプセル化される材料との質量比は30:70〜50:50である、
(b)
タンパク質からなるか、又はタンパク質と非タンパク質ポリマーとからなり、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、クロムミョウバン及びトランスグルタミナーゼから選択される架橋剤で架橋されたコーティング層、前記カプセルの質量に対して90〜1%
を含むコアセルベート化したカプセル。
【請求項2】
フレーバー又はフレグランスが疎水性液体である請求項1記載のカプセル。
【請求項3】
タンパク質がゼラチンである請求項1又は2記載のカプセル。
【請求項4】
非タンパク質ポリマーがアラビアガムである請求項1から3のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項5】
次の工程:
(a)
(I)(i)水素化油又は(ii)水素化脂肪又は(iii)ココアバター又は(iv)その混合物を含む、脂肪成分、及び
(II)フレーバー及び/又はフレグランス材料を含む、カプセル化される材料、
を含むコア混合物を調製する工程、その際、脂肪成分とカプセル化される材料との質量比は30:70〜50:50であり、
前記コアは30℃〜40℃のTmを有するため、室温で固形である、
(b)タンパク質の水溶液、又はタンパク質と非タンパク質ポリマーとの水溶液を提供する工程、
(c)前記コア混合物及び前記水溶液を混合して、エマルション又は懸濁液を形成する工程、
(d)相分離を誘発させ、前記タンパク質に、又は前記タンパク質及び非タンパク質ポリマーに、前記コア混合物の周囲に壁を形成させる工程、及び
(e)前記壁を架橋させる工程、
を含む、安定なコアセルベート化したカプセルの製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項記載のコアセルベート化したカプセルを含む食品組成物。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項記載のコアセルベート化したカプセルを含むオーラルケア組成物。
【請求項8】
食品、オーラルケア、ボディケア、スキンケア又はホームケア製品における、請求項1から4のいずれか1項記載のコアセルベート化したカプセルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、デリバリーシステムとしての使用のためのコアセルベート化したカプセルに、特に、フレーバー及びフレグランス産業における使用のための固形コアを含むコアセルベート化したカプセルに関する。
【0002】
背景技術
コアセルベーション(水性相分離とも呼ばれる)は、疎水性液体のカプセル化のために極めて良く知られている技術である。このプロセスは、油を含むマイクロカプセルを提供し、このカプセル化する材料は、前記油に対して不浸透性であり、かつ、前記油の周囲に均一かつ密に堆積する、ゲル化した疎水性コロイドである。このカプセル化する材料は、反対の電荷を有する他のコロイドと複合化されてよいタンパク質である。
【0003】
コアセルベーションプロセスは、「単純」又は「複雑」であってよい。前者の名称は、相分離が発生する際に単一タンパク質がカプセル壁を形成するために使用される場合に、採用される。後者の用語は、相分離をもたらすため、第2の反対に荷電した非タンパク質ポリマーの使用を指す。複雑なコアセルベーション法は、商業プロセスにおいて広範囲に実施され、かつ、文献において十分に説明されている。特に、US2,800,457及びUS2,800,458は、複雑なコアセルベーションを極めて詳細に開示する。
【0004】
一般に、コアセルベーションプロセスは、それぞれ、乳化、相分離、壁形成及び壁固化からなる4つの基本的な工程を含む。複雑なコアセルベーションプロセスにおいては、コア材料を取り巻く壁は、上述の通り、2つの反対に荷電した高分子量コロイドから構成される。大抵の場合に、使用される正に荷電したコロイドはゼラチンであり、加水分解及び後続の抽出によりコラーゲンから得られる機能性タンパク質である。
【0005】
コアセルベーションの場合には、コア−シェルのコアは、典型的には室温で液体であり、というのも、プロセス工程が、液体活性成分、例えば液体パフューム及び液体フレーバーを用いてより容易に達成されるからである。それにもかかわらず、かかるカプセル化システムを貯蔵すると、しばしば、このシェルからのコアの漏出の欠点を被る。この問題に対処することが有利だろう。
【0006】
WO−A1−2008/134908(Givaudan)は、シェル及びコアを有し、コアがワックス性固形物を含むマイクロカプセルを開示する。この好ましいワックス性固形物、蜜ろうは、活性材料を含むか又はそれ自体が活性材料である水不溶性液体において粒子の分散物を形成する。このシステムは、結晶構造及び半固形状であるコンシステンシーを有するものとして説明されている。かかるシステムがその高粘性(半固形状コンシステンシー)を介して液体の移動を遅くする一方で、これは液体の低漏性又は不漏性を保証しない。この問題に対処することが望ましいだろう。
【0007】
したがって、コアから小分子の拡散を制限することによって、例えば、より良好な安定性を界面活性剤溶液において提供するために、安定性を改善することが有利だろう。例えば、典型的なコアセルベート化したカプセルよりも、複雑なコアセルベーションにより作成される標準的なコア−シェルカプセルの室温でのハンドリング及び輸送に対してより抵抗性であるカプセルを提供するために、この機械的特性を改善することも望ましいだろう。
【0008】
WO−A−2009/046930(Cognis)は、活性成分が溶融したワックスへと混合され、これによって、この冷却したワックスがこの活性成分を閉じ込めるワックスマイクロカプセルの形成を説明する。複雑なコアセルベーションシステムの言及も示唆もなく、そのため、この文献は、かかるワックスカプセル化したシステムを、コアセルベートシステムが安定なままであるがワックスシステムは安定でない環境において、例えば比較的高温で又は過酷な環境(例えば多量の界面活性剤を含有する)において、使用することを考慮しない。
【0009】
EP−A1−0316054(Shiseido Co Ltd)は、水で膨張したゼラチンフィルムを含むマイクロカプセルを開示する。多価アルコールは、カプセル膜の強度を改変するために、化粧品基剤において使用される。この実施例においては、初期破断強度は、このカプセルが多価アルコール混合物中に分散される場合に、規則正しく減少する。対照的に、高い破断強度を維持するカプセルを提供することが望ましいだろう。
【0010】
Shinzo Omi et al, による論文"Microencapsulation of Pheromone-Analogue and Measurement of the Sustained Release", Journal of Microencapsulation, Taylor and Francis, vol 8, no. 4, 1991, 465 〜476頁においては、90%のワックス及び10%の活性成分のコアを含むコアセルベートシステムが説明されている。これは、65℃以上の程度で高融点を有する生成物を提供する。極めて高い負荷の活性成分を有することが望ましいだろう。
【0011】
WO−A2−2008/007234 (Firmenich)においては、脂肪がコアセルベートシステム中にカプセル化されている。食品中では、このカプセル化した脂肪は、消費されると口当たりを改善する。フレーバー化合物の添加は極めて低レベルに限定されており、というのも、この文献は、口当たり向上に関するからである。例示されている脂肪、すなわち、獣脂は、約15℃の融点を有し、これは室温で固形物コアを維持する融点を遙かに下回り、かつ、約37℃(口腔内の典型的な温度)で液化する。
【0012】
したがって、本発明は、上述の問題の1又は複数に対処することに努める。
【0013】
発明の要約
したがって、本発明はコアセルベート化したカプセルであって次の(a)及び(b):
(a)
(I)(i)水素化油又は(ii)水素化脂肪又は(iii)ココアバター又は(iv)その混合物を含む、脂肪成分、及び
(II)フレーバー及び/又はフレグランス材料を含む、カプセル化される材料
の混合物を含むコア、前記カプセルの質量に対して10〜99%、
その際、前記混合物は約30℃〜約40℃のTmを有するため、20℃で固形であり、脂肪成分とカプセル化される材料との質量比は30:70〜50:50である、及び
(b)
実質的にタンパク質、及び任意に非タンパク質ポリマーを含むコーティング層、前記カプセルの質量に対して90〜1%
を含むコアセルベート化したカプセルを提供する。
【0014】
本発明は、さらに、次の工程を含む、安定なコアセルベート化したカプセルの製造方法を提供する:
(a)
(I)(i)水素化油又は(ii)水素化脂肪又は(iii)ココアバター又は(iv)その混合物を含む、脂肪成分、及び
(II)フレーバー及び/又はフレグランス材料を含む、カプセル化される材料、を含むコア混合物を調製する工程、その際、前記コアは約30℃〜約40℃のTmを有するため、室温で固形である、
(b)タンパク質、及び任意に非タンパク質を含む水溶液を提供する工程、
(c)前記コア混合物及び前記水溶液を混合して、エマルション又は懸濁液を形成する工程、
(d)相分離を誘発させ、前記タンパク質、及び任意に非タンパク質ポリマーに、前記コア混合物の周囲に壁を形成させる工程、及び
(e)任意に、前記壁を架橋させる工程。
【0015】
図面の簡単な説明
図1a及び1bは、ドデシル硫酸ナトリウムの水溶液中の、それぞれt=0の時、t=2時間の時の、本発明に応じたコアセルベート化したカプセルを示す、
図2a及び2bは、それぞれt=0の時、t=2時間の時の、コア成分が室温未満の融点を有する比較コアセルベート化したカプセルを示す、
図3a及び3bは、SDSの水溶液中の、それぞれt=0の時、t=2時間の時の、比較コアセルベート化したカプセルを示す。
【0016】
詳細な説明
コア混合物
コアセルベート化したカプセルのコアは、活性成分を含む。活性成分は、フレーバー及び/又はフレグランスである。
【0017】
20℃では、活性成分は、液体又は固体の状態にあってよく、但し、通常は液体である。好ましくは、活性成分は、疎水性材料であり、疎水性材料とは、活性成分が脱塩水中で25℃で混合可能でなく、そして、そこに添加すると、別個の疎水性相を形成することを意味する。
【0018】
「フレーバー」及び「フレグランス」との用語は、本願で使用する場合には、天然及び合成の両方の起源の、種々のフレーバー及びフレグランス材料を定義すると考えられる。これらは、単一化合物又は混合物を含む。かかる成分の特異的な例は、文献、例えば、Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients, 1975, CRC Press; synthetic Food Adjuncts, 1947 , M.B. Jacobs, van Nostrand編又はPerfume and Flavor Chemicals , S. Arctander 1969, Montclair, N.J. (USA)に見出されてよい。これら物質は、パフューミング、フレーバリング及び/又はアロマタイジング消費者製品の分野、すなわち、匂い及び/又はフレーバーを、典型的にパフューム付けされるか又はフレーバー付けされる消費者製品に付与する分野、又は消費者製品の匂いを改変する分野の当業者に十分に知られている。
【0019】
フレーバーは、風味改変剤であってよい。「風味改変剤」は、消費者の味受容器に作用するか、又は口当たり、例えばボディ又はまろやかさを消費される製品に提供する活性成分を指す。風味改変剤の限定しない例は、甘味、酸度(acidity)、ヒリヒリ感(tingling)、苦味、酸味(sourness)、鹹味、油っこさ、うまみ、こくみ、熱感又は冷感を、促進、改変又は付与する活性成分を含む。
【0020】
フレグランス及び/又はフレーバーは、好ましくは、少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%、より一層好ましくは少なくとも20質量%、最も好ましくは30質量%、例えば少なくとも40質量%の、蒸気圧≧0.007Pa(25℃で)を有する化学化合物を含む。好ましくは、少なくとも10質量%が、≧0.1の蒸気圧、より好ましくは少なくとも10質量%が、25℃で≧1Paの蒸気圧、最も好ましくは少なくとも10質量%が、25℃で≧10Paの蒸気圧を有する。25℃で0.007Paの値が選択されるのは、この規準に該当する化合物が好ましい特性を有すると一般に考えられるためである。したがって、本発明は、活性成分の全量に相対的に多量に存在する、より揮発性の成分の効率的なカプセル化を可能にする。
【0021】
本発明の目的のために、蒸気圧が、"EPI suite"; 2000 U.S. Environmental Protection Agencyに開示される方法を用いる計算により決定される。
【0022】
フレグランス化合物、リモネンが、計算による蒸気圧の決定を説明するために提示される。"EPI suite"の方法を適用すると、リモネンは、25℃で約193Paの蒸気圧を有すると計算される。
【0023】
脂肪成分がコアの一部として存在する。
【0024】
脂肪成分は、(i)水素化油又は(ii)水素化脂肪又は(iii)ココアバター又は(iv)その混合物を含む。好適な水素化油は、水素化パーム油、水素化大豆油及び水素化綿実油を含む。好適な水素化脂肪は、例えば、ココアバターである。
【0025】
脂肪成分の存在は、所望の温度で、すなわち約30℃〜約40℃で固形物を形成すべくコアセルベーションを経る混合物の内相を提供し、かつ、室温で固形物コアを提供する。室温とは、本願では25℃の温度を意味する。
【0026】
好ましくは、脂肪成分対活性成分の質量比は10:90〜70:30である。より好ましくは、質量比は30:70〜50:50の範囲にある。
【0027】
理論に捕らわれることを望ますに、内相(コアセルベートコア−シェルのコアを形成する)は、その液体の形態においてカプセル化されるべきである。コアセルベーションプロセスの間、膜形成は典型的に、37℃未満の温度で開始する。こうして、水素化脂肪成分及び活性成分の混合物のTmは、膜堆積が開始すると疎水性相が液体のままであることを保証すべく、40℃未満であるべきである。
【0028】
内相のTmが40℃より高い場合には、膜堆積が固形相上に発生する。対照的に、貯蔵の間に、温度が内相のTmを越えると、この体積増加は固形と液体の状態の間でカプセル壁の破壊と活性成分の放出を引き起こす。
【0029】
活性成分が固形である場合には、水素化脂肪成分と一緒になって、脂肪成分中で固形粒子の懸濁物が形成される。かかる場合には、脂肪成分自体は、必要な物理学的特性をコアに提供すべく、約30℃〜約40℃のTmを有しなくてはならない。かかる場合には、雰囲気温度で測定した、コア滴を含む懸濁物の粘度が、約10mPa.s〜1000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは、粘度は100mPa・s〜800mPa・s、より一層好ましくは200mPa・s〜750mPa・sである。1000mPa・s超では、典型的なコアセルベーションプロセスの要求のためには、この混合物は粘性過ぎることが見出される。
【0030】
他方では、活性材料、特にフレーバー及び/又はパフュームが液体である場合には、フレーバー及び/又はフレグランスの存在が、水素化脂肪成分を含む混合物のTmを減少させるのに役立つことが見出される。脂肪又は脂肪混合物は、こうして、脂肪成分及びフレーバー及び/又はフレグランスの最終混合物が、約30℃〜約40℃のTmを有するように、当業者により簡易に選択される。
【0031】
好ましい脂肪成分は、脂肪と水素化油の混合物である。特に好ましくは、水素化油とヤシ脂及び/又はココアバターとの混合物である。
【0032】
例えば、特に1:3〜1:1の質量比にある、水素化したヤシ脂と水素化したパーム油の組み合わせが、揮発性フレーバー又はパフューム組成物と約1:1の質量比で混合した場合に、約30℃〜約40℃のTmを典型的に提供することが見出される。
【0033】
活性成分が液体である場合には、内相の滴は、コアセルベーションプロセスの間にエマルションを形成する。エマルションを形成するために、乳化を実施するために当業者に知られている任意の好適なプロセスが、使用できる。例えば、300s
-1で作動する、容器直径と羽根直径の比が約2:1である、4つの羽根付きインペラー剪断デバイスを使用する調製が、本発明の目的のために好適だろう。
【0034】
コーティング層
コーティング層(コア−シェルコアセルベートのシェルとしても知られている)は、タンパク質、及び任意に非タンパク質ポリマーを含み、かつ、疎水性滴の周囲にコアセルベートを形成する。好ましくは、非タンパク質ポリマーは、タンパク質とは反対に荷電している。
【0035】
これら材料は、一般にヒドロコロイドとも称され、すなわち、任意に高められた温度、例えば90℃までで水中に溶解されることができるポリマー状物質である。これらは、ポリマー、例えばタンパク質、多糖及びポリ酸であって、例えば一般にコアセルベーション法において有用であることが知られているもの、を含む。
【0036】
本発明は、「単純」及び「複雑」コアセルベーションを包含する。単純コアセルベーションにおいては、タンパク質単独が、相分離が生じるにつれ、カプセル壁を形成するために使用される。複雑コアセルベーションは、一般に逆に荷電した非タンパク質ポリマー及びタンパク質ポリマーが一緒になってカプセル壁を形成する方法を指す。複雑コアセルベーションの原理によれば、本発明の方法は、ヒドロコロイド溶液への、逆に荷電した非タンパク質ポリマー、好ましくは多糖の任意の添加を提供する。
【0037】
コアセルベーションプロセスにおいて有用なタンパク質は、アルブミン、野菜グロブリン及びゼラチンを含む。タンパク質の分子量は、典型的には、40000〜500000、好ましくは20000〜250000の規模にある。いくつかのタンパク質は、アグレゲートするが、これよりもいっそう高い分子量を有してよい。
【0038】
好ましくは、タンパク質はゼラチンである。良好なフィルム形性能、両性特性、pHによる電荷量の制御能、及び、好ましくは、臨界温度での溶液からゲルへの変化の発生により象徴される、良好な物理化学的及び化学的特性を有するゼラチンを使用することが好ましい。具体的に言及すると、マイクロカプセルの生産における使用のための規定を満たす全てのゼラチンが使用されてよい。
【0039】
ゼラチンは、例えば、魚、豚、牛及び/又は家禽のゼラチンであってよい。好ましい一実施態様によれば、タンパク質は、魚、牛又は家禽のゼラチンである。より好ましい一実施態様によれば、タンパク質は、温水魚ゼラチン(warm water fish gelatine)である。
【0040】
好ましくは、温水魚ゼラチンは、約150〜約300ブルーム、より好ましくは約200〜約300ブルームのブルームを有する。好ましくは、温水魚ゼラチンは、≧250ブルームを有する。一般的な知識によれば、温水魚は、延長された期間にわたり27℃超の水に耐えることができる魚である。
【0041】
複雑コアセルベーション法において有用な典型的な非タンパク質ポリマーは、特に、負に荷電したポリマーを含む。例えば、これらポリマーは、アラビアガム、キサンタン、寒天、アルギナート塩、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ペクチナート塩、カラギーナン、ポリアクリル酸及びメタクリル酸、及び/又はその混合物、から選択されてよい。さらに適した非タンパク質は、文献、例えばWO 2004/022221、4頁、27−29行から導かれることができる。
【0042】
タンパク質、及び任意に非タンパク質ポリマーは、通常は、水中に溶解され、ヒドロコロイド溶液を形成する。好ましくは、ヒドロコロイド水溶液中で、タンパク質が、0.5〜3.5質量%、より好ましくは1〜2質量%の量で存在する。
【0043】
存在する場合には、水溶液中の多糖の量は、好ましくは0.5〜3.5質量%、より好ましくは1〜2質量%である。
【0044】
特定の一実施態様において、タンパク質と非タンパク質ポリマーの質量比は、約3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:1、最も好ましくは約3:2である。
【0045】
架橋剤
架橋剤は、典型的には、コーティング層を硬化させるために使用される。好ましい架橋剤は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、クロムミョウバン、又はトランスグルタミナーゼを含む。好ましくは、トランスグルタミナーゼは、ゼラチン1gにつき10〜100、好ましくは30〜60活性ユニットで使用される。この酵素は、十分に説明され、かつ、市販されている。
【0046】
調製
好ましい一実施態様によれば、コアセルベート化したカプセルは、タンパク質材料の第1溶液及び非タンパク質ポリマーの第2の水溶液をそのゲル化温度超で形成させることにより調製される。この2つの溶液を、第3の溶液を形成すべく混合する。
【0047】
次いで、活性成分を脂肪成分(この混合物は、最後に内相を形成するものである)と混合し、剪断下で第3の溶液中に導入し、エマルション又は懸濁液を形成させる。エマルション及び/又は懸濁液は、慣用の様式で調製されてよい。好ましくは、内相混合物が、300〜400rpmに調節した撹拌機を用いて、約3〜10分、好ましくは4〜6分の期間にわたり、ゆっくりと第3の溶液に添加される。この撹拌機速度は、所望のように調節できる。
【0048】
代替的な一実施態様において、エマルションは、膜乳化により調製できる。典型的には、これは、活性成分及び脂肪成分の混合物を、所望の孔径を有する膜を介して、タンパク質材料及び任意に非タンパク質ポリマーを含む溶液中へと導通させ、次いで、この生じる混合物をエマルションが形成されるまで振動させることを伴う。このプロセスの利点は、標準的な乳化技術を使用する場合に比較して、より狭い範囲の粒径が達成可能であるということである。
【0049】
「相分離」として知られている次工程において、2つの別個の相、即ち連続相及びコアセルベート相が作出される。コアセルベート相は、一般に、タンパク質及び任意に非ポリマー化合物を基礎とする。この工程は、典型的に、この混合物の物理学的環境を改変することにより実施される。好ましくは、タンパク質の等電点未満へのpHの改変、好ましくは低下により、相分離が達成される。非タンパク質ポリマーが存在する場合には、pHは好ましくは、非タンパク質ポリマー上の負の電荷によりタンパク質上の正の電荷が中和されるように調節される。
【0050】
相分離は、種々の他のやり方で、一般には、溶液の物理学的−化学的環境の変更により、誘発されてよい。コアセルベーションプロセスの種類(単純:複雑)に応じて、相分離を誘発させる種々のやり方、例えば、塩析又は第2の高分子量成分の添加(エントロピー相分離を誘発させるため)が適用できる。
【0051】
次いで、この混合物の温度を、タンパク質のゲル化温度未満に低下させる。ゲル化可能なタンパク質、好ましくはゼラチンのゲル化温度の決定は、一部は実験により確立され、この技術は当分野において十分に知られている。
【0052】
最後の、任意工程において、内相の周囲にタンパク質を含むコロイド壁を固化させるために、架橋が実施される。この工程は、コアセルベート相の形成工程が誘発されると、自然に行われる。
【0053】
架橋は、典型的には、5〜40℃の範囲内の温度で実施される。同様に、架橋工程の間のpHは、好ましくは、架橋が効率的に実施できるレベルに調節される。例えば、架橋がトランスグルタミナーゼの作用により触媒作用される場合には、pHは好ましくは3〜7、より好ましくは3.5〜5.5に調節されてよい。
【0054】
本発明に応じたカプセルの破断強さは、好ましくは、貯蔵の際の不所望な破損に対してより抵抗性である生成物を提供するのに十分に高い。例えば、カプセルの破断強さ値が、300g・cm
-2より大きいことが好ましい。
【0055】
最終生成物
本発明に応じたマイクロカプセルは、多くの種類の適用又は消費者最終製品において使用できる。特に興味がもたれる分野は、フレーバー及びフレグランスである。したがって、任意に、他の賦香成分又はフレーバー付け共成分と一緒になった、本発明に応じたマイクロカプセルを含む賦香組成物又はフレーバー付け組成物も、本発明の観点である。
【0056】
本発明は、オーラルケア製品、例えば練り歯磨き及びチューイングガムに特に有用である。
【0057】
他の好適な最終製品は、家庭用ケア製品、例えば洗剤も含む。本発明を適用できる製品の更なる群は、パーソナルケア製品、例えば化粧品及びシャンプーである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1a及び1bは、ドデシル硫酸ナトリウムの水溶液中の、それぞれt=0の時、t=2時間の時の、本発明に応じたコアセルベート化したカプセルを示す図である。
【
図2】
図2a及び2bは、それぞれt=0の時、t=2時間の時の、コア成分が室温未満の融点を有する比較コアセルベート化したカプセルを示す図である。
【
図3】
図3a及び3bは、SDSの水溶液中の、それぞれt=0の時、t=2時間の時の、比較コアセルベート化したカプセルを示す図である。
【0059】
実施例
本発明は、以下実施例を参照して説明されるものであり、その際、他のことが記載されていない限り、温度はセルシウス度において示され、表中の値は質量%を指し、そして、略称は当分野において通常の意味合いを有する。
【0060】
実施例1
本発明に応じたカプセルの調製
ゼラチンのストック溶液(溶液A)を、温かい脱イオン水180gとゼラチン(温水魚ゼラチン、200ブルーム、Weishardtにより提供)20gを容器中で、完全に溶解するまで混合することにより調製した。次いで、この溶液を、40℃に維持した。アラビアゴムのストック溶液(溶液B)を、冷たい脱イオン水180gとアラビアゴム(Efficacia
(R)、CNIから)20gを容器中で、完全に溶解するまで混合することにより調製した。次いで、この溶液を加熱し、40℃に維持した。
【0061】
ヤシ脂中のWS23結晶の懸濁物(溶液C)を、最初に40℃で、85gの水素化脂肪(ヤシ脂、Margo Cocos)を容器中で完全に溶解するまで加熱し、冷却性化合物WS23(Millennium Specialty Chemicals, USA)15gを添加し、均質な懸濁物が得られるまで高剪断混合機で混合することにより調製した。この溶液を、強力なかきまぜ下で40℃に維持した。
【0062】
溶液A 105.4gを、溶液B 70.3gと容器中でおだやかなかきまぜ下で混合した(ゼラチン/アラビアゴム質量比は1.5:1)。pHを、50%w/Wの乳酸水溶液で4.6に調節した。
【0063】
溶液C 70.3gをゼラチン/アラビアゴム混合物にゆっくりと添加し、撹拌機で150rpmで5分間均質化し、500〜1000μmの平均液滴サイズに達した。
【0064】
次いで、この系を温かい脱イオン水354.1gの添加により希釈させ、この全ヒドロコロイド濃度を3.4%w/wにした。この混合物を最終的に、0.5℃.分
-1の速度で20℃に冷却させる。この撹拌速度をわずかに低下させ、pHを4.5に調節する。最後に、トランスグルタミナーゼ(ACTIVA
(R) WM、Ajinomoto、Japanにより提供)4.22gを、この混合物に添加し、一晩20℃で架橋を進行させた。この結果物は、硬いマイクロカプセルの水性懸濁物であった。
【0065】
実施例2
本発明に応じた更なるカプセルの調製
ゼラチンのストック溶液(溶液A)を、温かい脱イオン水180gとゼラチン(温水魚ゼラチン、200ブルーム、Weishardtにより提供)20gを容器中で、完全に溶解するまで混合することにより調製した。次いで、この溶液を、40℃に維持した。アラビアゴムのストック溶液(溶液B)を、冷たい脱イオン水180gとアラビアゴム(Efficacia
(R)、CNIから)20gを容器中で、完全に溶解するまで混合することにより調製した。次いで、この溶液を加熱し、40℃に維持した。
【0066】
内相(溶液C)を、容器において60℃でヤシ脂(Margo Cocos)13.95g及び水素化パーム油(Stable flake P.Cargill)20.92gの混合物を、この脂肪混合物が完全に溶融するまで加熱することにより調製した。次いで、ミント油(mint piperita、Firmenich)34.87gを添加し、混合して、均質な溶液を獲得した。この溶液を、穏やかなかきまぜ下で45℃に維持した。
【0067】
溶液A 104.6gを、溶液B 69.7gと容器中でおだやかなかきまぜ下で混合した(ゼラチン/アラビアゴム質量比は1.5:1)。pHを、50%w/Wの乳酸水溶液で4.6に調節した。
【0068】
溶液C 69.7gをゼラチン及びアラビアゴム混合物にゆっくりと添加し、撹拌機で150rpmで5分間均質化し、500〜1000μmの平均液滴サイズに達した。
【0069】
次いで、この系を温かい脱イオン水355.9gの添加により希釈し、全ヒドロコロイド濃度を3.4%w/wにした。この混合物を最終的に、0.5℃.分
-1の速度で20℃に冷却させた。この撹拌速度をわずかに低下させ、pHを4.5に調節し、トランスグルタミナーゼ(ACTIVA
(R) WM、Ajinomotoにより提供)4.22gを、この混合物に添加した。20℃で一晩架橋を進行させた。この結果物は、硬いマイクロカプセルの水性懸濁物であった。
【0070】
実施例3a
比較カプセルの調製
コアセルベート化したカプセルを、上述の実施例1に応じて調製したが、但し、コア材料は、Neobee
(R)(中鎖トリグリセリド、Stepan)及びミント油(Firmenich)の50:50w/w混合物であった。このコア混合物は、20℃未満の溶融温度を有する。これらカプセルは、比較試料1と称される。
【0071】
実施例3b
比較カプセルの調製
刊行物WO−A1−2008/134908に記載のコアセルベート化したカプセルを、その中の実施例1と同じやり方で調製し、但し、Neobee
(R)を、リモネンに置き換えて、蜜ろう20%及びリモネン80%からなるコア成分を提供する。これは、疎水性液体活性成分を有するカプセルの安定性を評価するためである。これらカプセルは、比較試料2と称される。
【0072】
実施例4
SDS溶液中のカプセル比較
次いで、実施例2及び3からのコアセルベート化したカプセルを、ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)1.5質量%を含む、別個の水溶液中に導入し、時間0及び2時間で写真撮影した。
【0073】
結果は、
図1〜3に示される。
図1は、本発明に応じたコアセルベート化したカプセル(実施例2)に関するが、2時間後の活性成分の損失が実質的にないこと、そして、コアが顕著に完全なままであること、を実証する。対照的に、
図2は、比較試料1に関するが、コア材料の極めて顕著な損失を示し、そして、
図3は、比較試料2に関するが、コア構造がしばしば2時間の間に破裂することを示す。