【文献】
Cyriacus Bleijs,Low-cost charging systems with full communicationcapability.,EVS24 International Battery, Hybrid and Fuel Cell Electric Vehicle Symposium,ノルウェー,EVS-24 - Stavanger, Norway,2009年 5月13日,pages.1-9,[検索日2012.07.13],URL,http://www.ecs-five.ch/parkcharge/documents/low_cost.pdf
【文献】
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【文献】
M.A.Mannah, et al.,Power Line communication over feeder cables in an Industrial environment,IEEE International Symposium on Power Line Communications and Its Applications, 2009, ISPLC 2009.,米国,IEEE,2009年 3月29日,pages.255-260
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に給電する給電装置に設けられ、所定の周波数の矩形波信号を出力する出力回路と、前記車両に設けられ、前記出力回路と複数の信号線で接続され、該出力回路が出力する矩形波信号が入力される入力回路とを備え、前記信号線に通信信号を重畳させて前記車両と給電装置との間で通信を行う通信システムにおいて、
前記給電装置に設けられ、前記矩形波信号が伝送される複数の信号線間に接続された第1変圧器と、
該第1変圧器を介して前記複数の信号線上で通信信号の送受信を行う第1通信部と、
前記車両に設けられ、前記矩形波信号が伝送される複数の信号線間に接続された第2変圧器と、
該第2変圧器を介して前記複数の信号線上で通信信号の送受信を行う第2通信部と、
前記出力回路と前記第1変圧器との間に介装された第1低域通過フィルタと、
前記入力回路と前記第2変圧器との間に介装された第2低域通過フィルタと
を備え、
前記第1及び第2通信部は、
1MHz以上の通信帯域を用いて通信信号を送受信することを特徴とする通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、コントロールパイロット信号を送受信する出力回路及び入力回路の出力端及び入力端には、ノイズなどを除去するためのキャパシタを接続している。このため、コントロールパイロット線に通信信号を重畳させても、出力回路及び入力回路に設けられたキャパシタで通信信号が減衰してしまい、通信速度の低下又はノイズ耐性の低下が懸念される。また、通信信号を重畳させるための通信回路をコントロールパイロット線に接続した場合、当該通信回路の影響によりコントロールパイロット信号の送受信を確実に行うことができないという懸念も生ずる。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、コントロールパイロット線に重畳させた通信信号が減衰することを抑制することができる通信システム及び該通信システムを構成する通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る通信システムは、車両に給電する給電装置に設けられ、所定の周波数の矩形波信号を出力する出力回路と、前記車両に設けられ、前記出力回路と複数の信号線で接続され、該出力回路が出力する矩形波信号が入力される入力回路とを備え、前記信号線に通信信号を重畳させて前記車両と給電装置との間で通信を行う通信システムにおいて、前記給電装置に設けられ、前記
矩形波信号が伝送される複数の信号線間に接続された第1変圧器
と、該第1変圧器を介して
前記複数の信号線上で通信信号の送受信を行う第1通信部と、前記車両に設けられ、前記
矩形波信号が伝送される複数の信号線間に接続された第2変圧器
と、該第2変圧器を介して
前記複数の信号線上で通信信号の送受信を行う第2通信部と、前記出力回路と前記第1変圧器との間に介装された第1低域通過フィルタと、前記入力回路と前記第2変圧器との間に介装された第2低域通過フィルタとを備え、前記第1及び第2通信部は、1MHz以上の通信帯域を用いて通信信号を送受信することを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る通信システムは、第1発明において、前記第1及び第2低域通過フィルタは、前記信号線に対して直列に接続されるインダクタを備えることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る通信システムは、第2発明において、前記第1及び第2低域通過フィルタは、前記インダクタに並列接続した抵抗を備えることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る通信システムは、第2発明において、前記第1及び第2低域通過フィルタは、前記インダクタに直列接続した抵抗を備えることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る通信システムは、第2発明において、前記第1及び第2低域通過フィルタは、前記インダクタの出力側の信号線間にキャパシタ及び抵抗の直列回路を備えることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る通信システムは、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記出力回路は、1kHzの矩形波信号を出力するようにしてあり、前記入力回路の入力側での前記矩形波信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が10μs以下であることを特徴とする。
【0015】
第7発明に係る通信装置は、所定の周波数の矩形波信号を複数の信号線を介して出力する出力回路を備える通信装置において、前記
矩形波信号が伝送される複数の信号線間に接続された変圧器
と、該変圧器を介して
前記複数の信号線に通信信号を重畳させて通信信号の送受信を行う通信部と、前記出力回路と前記変圧器との間に介装された低域通過フィルタとを備えることを特徴とする。
【0016】
第8発明に係る通信装置は、第7発明において、前記矩形波信号を生成する生成部と、前記出力回路の出力電圧を検出する電圧検出部と、該電圧検出部で検出した電圧に応じて、前記生成部で生成する矩形波信号を調整する調整部とを備えることを特徴とする。
【0017】
第9発明に係る通信装置は、複数の信号線を介して所定の周波数の矩形波信号が入力される入力回路を備える通信装置において、前記
矩形波信号が伝送される複数の信号線間に接続された変圧器
と、該変圧器を介して
前記複数の信号線に通信信号を重畳させて通信信号の送受信を行う通信部と、前記入力回路と前記変圧器との間に介装された低域通過フィルタとを備えることを特徴とする。
【0018】
第10発明に係る通信装置は、第9発明において、複数の抵抗を有し、抵抗値を調整可能な抵抗部と、該抵抗部の電圧を変化させるため、該抵抗部の抵抗値を調整する調整部とを備えることを特徴とする。
【0019】
第1発明、第7発明及び第9発明にあっては、第1通信部は、給電装置に設けられ、出力回路と入力回路との間の複数の信号線(例えば、コントロールパイロット線と接地線)間に接続された第1変圧器を介して通信信号を信号線に重畳させて通信信号の送受信を行う。また、第2通信部は、車両に設けられ、出力回路と入力回路との間の複数の信号線間に接続された第2変圧器を介して通信信号を信号線に重畳させて通信信号の送受信を行う。すなわち、第1及び第2通信部は、信号線間に変圧器を接続して信号線に電圧を重畳させることにより通信を行う。第1及び第2通信部が用いる通信帯域は、例えば、2〜30MHzであるが、これに限定されるものではなく、1.0MHz以上の周波数の信号帯域を用いてもよい。
【0020】
出力回路と第1変圧器との間の信号線には第1低域通過フィルタを介装し、入力回路と第2変圧器との間の信号線には第2低域通過フィルタを介装してある。第1及び第2低域通過フィルタは、出力回路が出力する所定の周波数(例えば、1kHz)の矩形波信号を通過させるとともに、第1及び第2通信部が送受信する通信信号(例えば、2〜30MHz)を通過させないフィルタである。第1通信部と出力回路との間に第1低域通過フィルタを設けることにより、第1通信部が送信した通信信号は入力回路及び出力回路のキャパシタにより減衰されることなく第2通信部へ伝搬される。また、第2通信部と入力回路との間に第2低域通過フィルタを設けることにより、第2通信部が送信した通信信号は入力回路及び出力回路のキャパシタにより減衰されることなく第1通信部へ伝搬されるので、コントロールパイロット線に重畳させた通信信号が減衰することを抑制することができる。
【0021】
第2発明にあっては、第1及び第2低域通過フィルタは、信号線に対して直列に接続されるインダクタを備える。出力回路が出力する所定の周波数(例えば、1kHz)に対しては、インダクタは低インピーダンスとなり、第1及び第2通信部が送受信する通信信号(例えば、2〜30MHz)に対しては高インピーダンスとなる。これにより、簡単な構成で第1及び第2通信部が送受信する通信信号が遮断されるとともに、コントロールパイロット信号を通過させることができる。
【0022】
第3発明にあっては、第1及び第2低域通過フィルタは、インダクタに並列接続した抵抗を備える。抵抗を備えることにより、例えば、インダクタと出力回路又は入力回路に存在するキャパシタとの間で構成される共振回路の共振のピークの鋭さを表すQ値(Quality factor)を小さくすることができ、不要な共振を抑制することができる。
【0023】
第4発明にあっては、第1及び第2低域通過フィルタは、インダクタに直列接続した抵抗を備える。抵抗を備えることにより、例えば、インダクタと出力回路又は入力回路に存在するキャパシタとの間で構成される共振回路の共振のピークの鋭さを表すQ値(Quality factor)を小さくすることができ、不要な共振を抑制することができる。
【0024】
第5発明にあっては、第1及び第2低域通過フィルタは、インダクタの出力側の信号線間にキャパシタ及び抵抗の直列回路を備える。これにより、インダクタと出力回路又は入力回路に存在するキャパシタとの間で構成される共振回路の共振のピークの鋭さを表すQ値(Quality factor)を小さくすることができ、不要な共振を抑制することができる。
【0025】
第6発明にあっては、出力回路は、1kHzの矩形波信号を出力する。入力回路の入力側での矩形波信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が10μs以下である。立ち上がり時間は、矩形波信号が10%から90%に到達するまでの時間である。また、立ち下がり時間は、矩形波信号が90%から10%に到達するまでの時間である。立ち上がり時間及び立ち下がり時間を10μs以下にするためには、第1及び第2低域通過フィルタの値(例えば、インダクタ又は抵抗の値)を設定すればよい。立ち上がり時間及び立ち下がり時間が、10μsを超えた場合、入力回路で受信する矩形波信号が歪むためコントロールパイロット信号を正しく受信することができなくなる。立ち上がり時間及び立ち下がり時間を10μs以下にすることにより、矩形波信号の歪みを低減しコントロールパイロット信号を正しく受信することができる。
【0026】
第8発明にあっては、矩形波信号(コントロールパイロット信号)を生成する生成部と、出力回路の出力電圧を検出する電圧検出部と、電圧検出部で検出した電圧に応じて、生成部で生成する矩形波信号を調整する調整部とを備える。矩形波信号は、デューティ比が0から100%まで変更可能な信号であり、例えば、±12Vの一定電圧も含む。これにより、出力回路は、所望のコントロールパイロット信号を出力することができる。
【0027】
第10発明にあっては、複数の抵抗を有し、抵抗値を調整可能な抵抗部と、抵抗部の電圧を変化させるため、抵抗部の抵抗値を調整する調整部とを備える。これにより、例えば、車両の状態に応じて、抵抗部の抵抗値を調整して、抵抗部の電圧を所望の値に変化させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、コントロールパイロット線に通信信号を重畳させて確実に通信を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る通信システムの実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は実施の形態1の通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、電気自動車又はハイブリッド自動車などの車両と給電装置とは、インレット5(「給電口」、「コネクタ」とも称する)を介して電気的に接続される。給電装置はAC電源6を備える。AC電源6は、電源線1(ACL)、電源線2(ACN)を通じて車両の充電器7に電気的に接続される。充電器7には、バッテリ(二次電池)8を接続してある。
【0031】
これにより、給電装置からの充電ケーブルに接続されたプラグ(不図示)をインレット5に接続することにより、AC電力を車両へ供給することができ、車両に搭載されたバッテリ8を充電することができる。
【0032】
本実施の形態の通信システムは、給電装置に設けられた通信装置10、車両に設けられた通信装置50などを備える。
【0033】
通信装置10は、所定の周波数の矩形波信号(「コントロールパイロット信号」とも称する)を出力する出力回路20、第1通信部としての通信部30、変圧器31、カップリングキャパシタ32、第1の低域通過フィルタ33などを備える。
【0034】
通信装置50は、コントロールパイロット信号が入力される入力回路60、第2通信部としての通信部70、変圧器71、カップリングキャパシタ72、第2の低域通過フィルタ73などを備える。
【0035】
出力回路20は、矩形波信号(コントロールパイロット信号)を生成する生成部としての電圧発生源21、抵抗22、キャパシタ23、マイコン24、バッファ25などを備える。電圧発生源21は、例えば、周波数が1kHzであって、ピーク値が±12Vの矩形波信号(コントロールパイロット信号)を生成する。コントロールパイロット信号のデューティ比は、例えば、20%であるが、これに限定されるものではない。矩形波信号は、デューティ比が0から100%まで変更可能な信号であり、例えば、±12Vの一定電圧も含む。
【0036】
出力回路20は、抵抗22を介して車両に設けられた入力回路60へコントロールパイロット信号を送出する。
【0037】
キャパシタ23は、例えば、出力回路20で発生するノイズを低減するために設けられている。抵抗22の値は、例えば、1.0kΩ、キャパシタ23のキャパシタンスは、例えば、2.2nFであるが、数値はこれらに限定されるものではない。
【0038】
バッファ25は、出力回路20の出力電圧を検出する電圧検出部としての機能を有し、キャパシタ23の両端電圧を検出し、検出結果をマイコン24へ出力する。
【0039】
マイコン24は、電圧発生源21で生成する矩形波信号を調整する調整部としての機能を有する。これにより、出力回路20は、±12Vの一定電圧、及び任意のデューティ比(0より大きく、100より小さい)であって波高値が±12Vの矩形波信号(コントロールパイロット信号)を出力することができる。
【0040】
入力回路60は、キャパシタ61、ダイオード62、バッファ63、マイコン64、抵抗部65などを備える。バッファ63は、抵抗部65の両端電圧Voutを検出してマイコン64へ出力する。なお、抵抗部65の両端電圧に代えて、キャパシタ61の両端の電圧を検出してもよい。
【0041】
抵抗部65は、複数の抵抗及び開閉スイッチなどを備え、マイコン64からの信号により開閉スイッチを開閉することにより、抵抗値を変化させる(調整する)ことができる。
【0042】
マイコン64は、抵抗部65の電圧Voutを変化させるため、抵抗部65の抵抗値を調整する調整部としての機能を有する。すなわち、マイコン64は、車両の状態(例えば、充電に関連する状態)に応じて電圧Voutを変化させるため、抵抗部65の抵抗値を変化させる。電圧Voutの値に応じて、給電装置と車両とは、充電に関連する状態を検出することができる。
【0043】
例えば、電圧Voutが12Vである場合は、車両の充電プラグが未接続である状態を示す。また、電圧Voutが9Vである場合は、抵抗部65の抵抗値は2.74kΩに設定され、車両の充電プラグが接続され、充電待ちの状態を示す。また、電圧Voutが6Vである場合は、抵抗部65の抵抗値は882Ωに設定され、充電中の状態を示す。また、電圧Voutが3Vである場合は、抵抗部65の抵抗値は246Ωに設定され、充電中であって充電場所を換気する必要がある状態であることを示す。
【0044】
キャパシタ61は、例えば、入力回路60に侵入するノイズを低減するために設けられている。抵抗部65の抵抗値は、例えば、2.74kΩ、882Ω、246Ω程度であり、キャパシタ61のキャパシタンスは、例えば、1.8nFであるが、数値はこれらに限定されるものではない。
【0045】
出力回路20と入力回路60とは、複数の信号線(コントロールパイロット線4、接地線3)を介して電気的に接続されている。なお、接地線3もコントロールパイロット線であるとみなすことができる。
【0046】
通信部30及び通信部70は、出力回路20と入力回路60との間に設けられた複数の信号線(コントロールパイロット線4、接地線3)に所定の通信信号を重畳させることにより通信を行う。通信部30及び通信部70の間で送受信される情報は、例えば、車両IDに関するもの、充電制御(充電の開始または終了など)に関するもの、充電量の管理(急速充電、充電量の通知など)に関するもの、課金の管理などに関するもの、ナビゲーションの更新に関するもの等、コントロールパイロット信号による情報より多様性に富んでいる。
【0047】
通信部30及び通信部70は、例えば、直交化周波数多重(OFDM:Orthogonal Frequency Domain Multiplex)、周波数拡散(SS:Spread Spectrum)などの変調方式を利用した変調回路、復調回路などを備える。
【0048】
通信部30及び通信部70が行う通信の通信帯域は、例えば、2〜30MHz(例えば、Home Plug Green PHY)であるが、これに限定されるものではなく、1.0MHzより高周波の通信帯域を用いてもよい。
【0049】
出力回路20の出力側のコントロールパイロット線4と接地線3との間に、カップリングキャパシタ32、32及び変圧器31の直列回路を接続してあり、通信部30は、変圧器31を介して通信信号をコントロールパイロット線4に重畳させるとともに、コントロールパイロット線4上の通信信号を受信する。
【0050】
入力回路60の入力側のコントロールパイロット線4と接地線3との間に、カップリングキャパシタ72、72及び変圧器71の直列回路を接続してあり、通信部70は、変圧器71を介して通信信号をコントロールパイロット線4に重畳させるとともに、コントロールパイロット線4上の通信信号を受信する。
【0051】
すなわち、通信部30及び通信部70は、信号線間に変圧器31、71を接続して信号線に電圧を重畳させることにより通信を行う。このような方式を線間通信方式と称することができる。
【0052】
出力回路20と変圧器31がカップリングキャパシタ32を介して接続される接続点との間のコントロールパイロット線4には、低域通過フィルタ33を介装してある。
【0053】
また、入力回路60と変圧器71がカップリングキャパシタ72を介して接続される接続点との間のコントロールパイロット線4には、低域通過フィルタ73を介装してある。カップリングキャパシタ32、72のキャパシタンスは、例えば、500pFであるが、これに限定されるものではない。
【0054】
低域通過フィルタ33、73は、それぞれ出力回路20が出力する所定の周波数(例えば、1kHz)の矩形波信号(コントロールパイロット信号)を通過させるとともに、通信部30、70が送受信する通信信号(例えば、2〜30MHz)を通過させないフィルタである。
【0055】
通信部30と出力回路20との間に低域通過フィルタ33を設けることにより、通信部30が送信した通信信号は出力回路20のキャパシタ23により減衰されることなく通信部70へ伝搬される。また、通信部70が送信した通信信号は出力回路20のキャパシタ23により減衰されることなく通信部30へ伝搬される。
【0056】
また、通信部70と入力回路60との間に低域通過フィルタ73を設けることにより、通信部70が送信した通信信号は入力回路60のキャパシタ61により減衰されることなく通信部30へ伝搬され、また、通信部30が送信した通信信号は入力回路60のキャパシタ61により減衰されることなく通信部70へ伝搬されるので、コントロールパイロット線4に通信信号を重畳させて確実に通信を行うことができる。また、コントロールパイロット信号の歪を大きくすることなく、通信信号によるコントロールパイロット信号の読み取り誤差を防止することができる。
【0057】
低域通過フィルタ33は、コントロールパイロット線4に対して直列に接続されるインダクタ331を備える。インダクタ331のインダクタンスは、例えば、1.5mHであるが、インダクタンスはこれに限定されるものではない。
【0058】
出力回路20が出力する所定の周波数(例えば、1kHz)に対しては、インダクタ331は低インピーダンスとなる。また、インダクタ331は、通信部30、70が送受信する通信信号(例えば、2〜30MHz)に対しては高インピーダンスとなる。これにより、簡単な構成で通信部30、70が送受信する通信信号が遮断されるとともに、コントロールパイロット信号を通過させることができる。
【0059】
低域通過フィルタ73は、コントロールパイロット線4に対して直列に接続されるインダクタ731を備える。インダクタ731のインダクタンスは、例えば、1.5mHであるが、インダクタンスはこれに限定されるものではない。
【0060】
出力回路20が出力する所定の周波数(例えば、1kHz)に対しては、インダクタ731は低インピーダンスとなる。また、インダクタ731は、通信部30、70が送受信する通信信号(例えば、2〜30MHz)に対しては高インピーダンスとなる。これにより、簡単な構成で通信部30、70が送受信する通信信号が遮断されるとともに、コントロールパイロット信号を通過させることができる。
【0061】
また、低域通過フィルタ33は、インダクタ331に並列接続した抵抗332を備える。抵抗332の抵抗値は、例えば、1kΩであるが、これに限定されるものではない。抵抗332を備えることにより、例えば、インダクタ331と出力回路20に存在するキャパシタ23等との間で構成される共振回路の共振のピークの鋭さを表すQ値(Quality factor)を小さくすることができ、不要な共振を抑制することができる。
【0062】
同様に、低域通過フィルタ73は、インダクタ731に並列接続した抵抗732を備える。抵抗732の抵抗値は、例えば、1kΩであるが、これに限定されるものではない。抵抗732を備えることにより、例えば、インダクタ731と入力回路60に存在するキャパシタ61等との間で構成される共振回路の共振のピークの鋭さを表すQ値(Quality factor)を小さくすることができ、不要な共振を抑制することができる。
【0063】
図2は通信部30、70による通信の伝送路減衰特性の一例を示す説明図である。
図2において、横軸は周波数を示し、縦軸は通信部30、70の間のコントロールパイロット線4における伝送路減衰量(電圧低下)を示す。また、
図2中、符号Aで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備する場合を示し、符号Bで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備しない場合を示す。
【0064】
図2から分かるように、低域通過フィルタ33、73を具備することにより、通信部30、70による通信信号の減衰量が、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合に比べて、150kHz〜50MHzの範囲で改善している。具体的には、2MHzで20dB程度、30MHzで25dB程度改善しており、通信部30、70の通信帯域である2〜30MHzで20dB〜25dB程度改善している。
【0065】
図3は出力回路20が出力するコントロールパイロット信号の減衰特性の一例を示す説明図である。
図3において、横軸は周波数を示し、縦軸は電圧Voutの周波数成分(スペクトラム)を示す。また、
図3中、符号Aで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備する場合を示し、符号Bで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備しない場合を示す。
【0066】
図3から分かるように、周波数が10kHz以下では、低域通過フィルタ33、73を具備するか否かに関わらず、両者の減衰特性は同一である。すなわち、低域通過フィルタ33、73を設けた場合でも、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合と同様に、周波数が1kHzの第10高調波までは全く減衰させることなく通過させることができる。また、低域通過フィルタ33、73を具備した場合には、周波数が略100kHz以下であれば、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合に比べて、コントロールパイロット信号の減衰量が少ない。
【0067】
別言すれば、コントロールパイロット信号の周波数を基本波として、低域通過フィルタ33、73の遮断周波数を、例えば、第9高調波(9kHz)以上、第11高調波(11kHz)以上、あるいは第15高調波(15kHz)以上のようにすることにより、コントロールパイロット信号の波形の歪あるいは電圧変動を抑制することができる。遮断周波数は大きくするほど、コントロールパイロット信号の波形の歪あるいは電圧変動の抑制に一層効果がある。
【0068】
図4は入力回路60でのコントロールパイロット信号の立ち上がり特性の一例を示す説明図である。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧Voutを示す。なお、
図4では、電圧Voutは、キャパシタ61の両端電圧である。
図4中、符号Aで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備する場合を示し、符号Bで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備しない場合を示す。出力回路20と入力回路60との抵抗分圧により、入力回路60でのコントロールパイロット信号は、1kHzの矩形波形であって+9V、−12Vとなる。また、立ち上がり時間は、電圧が10%から90%に到達するまでの時間である。
【0069】
図4から分かるように、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合には、立ち上がり時間が約7.7μsであるのに対し、低域通過フィルタ33、73を具備する場合には、立ち上がり時間は約5.6μsである。すなわち、入力回路60の入力側でのコントロールパイロット信号の立ち上がり時間が10μs以下である。
【0070】
立ち上がり時間を10μs以下にするためには、低域通過フィルタ33、73の値(例えば、インダクタ331、731又は抵抗332、732の値)を設定すればよい。立ち上がり時間が、10μsを超えた場合、入力回路60で受信する電圧波形の歪が大きくなりすぎるためコントロールパイロット信号を正しく受信することができなくなる。立ち上がり時間を10μs以下にすることにより、電圧波形の歪みを低減しコントロールパイロット信号を正しく受信することができる。すなわち、出力回路20が出力する矩形波形のコントロールパイロット信号が歪むことなく入力回路60へ伝送される。なお、
図4の例では立ち上がり時間について説明したが、立ち下がり時間についても同様である。
【0071】
図5は入力回路側での伝送特性の一例を示す説明図である。
図5において、横軸は周波数を示す。縦軸は、入力回路60側の電圧Voutで観測される出力回路20からのコントロールパイロット信号及び通信部30、70からの通信信号の周波数成分を示す。
図5中、符号Aで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備する場合を示し、符号Bで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備しない場合を示す。
【0072】
図5からわかるように、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合には、通信部30、70からの通信信号が減衰されることなくそのまま入力回路60側へ侵入するため、バッファ63、マイコン64で電圧検知(例えば、12V、9V、6V、3Vなど)を行うときに通信信号が外乱のノイズとして作用し、電圧判定を間違える可能性が出てくる。これに対し、低域通過フィルタ33、73を具備する場合には、例えば2〜30MHzの通信信号は数十〜数百分の一に減衰するが、コントロールパイロット信号はほとんど減衰や歪むことなく入力回路60で受け取ることができるため、コントロールパイロット信号の電圧判定又はデューティ比判定に影響を与えることがなくなる。
【0073】
上述の
図2〜
図5の例では、カップリングキャパシタ32、72側と、通信部30、70側の変圧器の自己インダクタンスが共に9.9μHであり、低域通過フィルタ33、73のインダクタ331、731のインダクタンスが1.5mHであり、抵抗332、732の抵抗値が1kΩであり、カップリングキャパシタ32、72のキャパシタンスが500pFであったが、数値はこれらに限定されない。以下では、カップリングキャパシタ32、72側の変圧器の自己インダクタンスが130μHであり、通信部30、70側の変圧器の自己インダクタンスが6μHであり、低域通過フィルタ33、73のインダクタ331、731のインダクタンスが470μH、抵抗332、732の抵抗値が470Ω、カップリングキャパシタ32、72のキャパシタンスが100pFである場合について説明する。
【0074】
図6は通信部30、70による通信の伝送路減衰特性の他の例を示す説明図である。
図2において、横軸は周波数を示し、縦軸は通信部30、70の間のコントロールパイロット線4における伝送路減衰量(電圧低下)を示す。また、
図2中、符号Aで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備する場合を示し、符号Bで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備しない場合を示す。
【0075】
図6から分かるように、低域通過フィルタ33、73を具備することにより、通信部30、70による通信信号の減衰量が、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合に比べて、250kHz〜50MHzの範囲で改善している。具体的には、2MHzで20dB程度、30MHzで40dB程度改善しており、通信部30、70の通信帯域である2〜30MHzで20dB〜40dB程度改善している。
【0076】
図7は出力回路20が出力するコントロールパイロット信号の減衰特性の他の例を示す説明図である。
図7において、横軸は周波数を示し、縦軸は電圧Voutの周波数成分(スペクトラム)を示す。また、
図7中、符号Aで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備する場合を示し、符号Bで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備しない場合を示す。
【0077】
図7から分かるように、周波数が20kHz以下では、低域通過フィルタ33、73を具備するか否かに関わらず、両者の減衰特性は同一である。すなわち、低域通過フィルタ33、73を設けた場合でも、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合と同様に、周波数が1kHzの第20高調波までは全く減衰させることなく通過させることができる。
【0078】
別言すれば、コントロールパイロット信号の周波数を基本波として、低域通過フィルタ33、73の遮断周波数を、例えば、第9高調波(9kHz)以上、第11高調波(11kHz)以上、あるいは第15高調波(15kHz)以上のようにすることにより、コントロールパイロット信号の波形の歪あるいは電圧変動を抑制することができる。遮断周波数は大きくするほど、コントロールパイロット信号の波形の歪あるいは電圧変動の抑制に一層効果がある。
【0079】
図8は入力回路60でのコントロールパイロット信号の立ち上がり特性の他の例を示す説明図である。
図8において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧Voutを示す。なお、
図8では、電圧Voutは、キャパシタ61の両端電圧である。
図8中、符号Aで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備する場合を示し、符号Bで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備しない場合を示す。出力回路20と入力回路60との抵抗分圧により、入力回路60でのコントロールパイロット信号は、1kHzの矩形波形であって+9V、−12Vとなる。また、立ち上がり時間は、電圧が10%から90%に到達するまでの時間である。
【0080】
図8から分かるように、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合には、立ち上がり時間が約7.7μsであるのに対し、低域通過フィルタ33、73を具備する場合には、立ち上がり時間は約7.2μsである。すなわち、入力回路60の入力側でのコントロールパイロット信号の立ち上がり時間が10μs以下である。
【0081】
立ち上がり時間を10μs以下にするためには、低域通過フィルタ33、73の値(例えば、インダクタ331、731又は抵抗332、732の値)を設定すればよい。立ち上がり時間が、10μsを超えた場合、入力回路60で受信する電圧波形の歪が大きくなりすぎるためコントロールパイロット信号を正しく受信することができなくなる。立ち上がり時間を10μs以下にすることにより、電圧波形の歪みを低減しコントロールパイロット信号を正しく受信することができる。すなわち、出力回路20が出力する矩形波形のコントロールパイロット信号が歪むことなく入力回路60へ伝送される。なお、
図8の例では立ち上がり時間について説明したが、立ち下がり時間についても同様である。
【0082】
図9は入力回路側での伝送特性の他の例を示す説明図である。
図9において、横軸は周波数を示す。縦軸は、入力回路60側の電圧Voutで観測される出力回路20からのコントロールパイロット信号及び通信部30、70からの通信信号の周波数成分を示す。
図9中、符号Aで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備する場合を示し、符号Bで示す曲線は低域通過フィルタ33、73を具備しない場合を示す。
【0083】
図9からわかるように、低域通過フィルタ33、73を具備しない場合には、通信部30、70からの通信信号が減衰されることなくそのまま入力回路60側へ侵入するため、バッファ63、マイコン64で電圧検知(例えば、12V、9V、6V、3Vなど)を行うときに通信信号が外乱のノイズとして作用し、電圧判定を間違える可能性が出てくる。これに対し、低域通過フィルタ33、73を具備する場合には、例えば2〜30MHzの通信信号は数十〜数百分の一に減衰するが、コントロールパイロット信号はほとんど減衰や歪むことなく入力回路60で受け取ることができるため、コントロールパイロット信号の電圧判定又はデューティ比判定に影響を与えることがなくなる。
【0084】
本実施の形態によれば、低域通過フィルタ33、73を備えることにより、通信部30、70で送受信する通信信号が出力回路20又は入力回路60で減衰されないので、コントロールパイロット線に重畳させた通信信号が減衰することを抑制することができる。また、通信部30、70による通信の通信速度の低下、あるいはノイズ耐性の低下を防止することができる。
【0085】
また、カップリングキャパシタ32、72のキャパシタンスを変更する必要がないので、出力回路20から見た通信部30、70のインピーダンスは変化しない。すなわち、カップリングキャパシタ32、72のキャパシタンスを増加させた場合、通信帯域(高速PLCの場合2〜30MHz)でのカップリングキャパシタ32、72の電圧降下が減少するので、減衰特性を向上させることができるものの、コントロールパイロット信号に大きな歪が生ずる。カップリングキャパシタ32、72のキャパシタンスを変更しないので、出力回路20が出力するコントロールパイロット信号が歪むことを防止することができる。
【0086】
上述の実施の形態では、低域通過フィルタは、インダクタと抵抗の並列回路で構成されていたが、回路構成はこれに限定されるものではなく、インダクタのみでもよく、あるいはインダクタと抵抗の直列回路でもよい。また、コントロールパイロット線と接地線の信号線を矩形波信号又は通信信号の通信経路に用いたが、一方もしくは双方を車体又は給電装置の筐体などの導体を用いてもよい。また、低域通過フィルタは、以下の構成でもよい。
【0087】
(実施の形態2)
図10は実施の形態2の通信システムの構成の一例を示すブロック図である。実施の形態1との違いは、低域通過フィルタ33が、インダクタ331、及びコントロールパイロット線4と接地線3との間に接続されたキャパシタ333及び抵抗334の直列回路を備える点である。低域通過フィルタ73も同様に、インダクタ731、及びコントロールパイロット線4と接地線3との間に接続されたキャパシタ733及び抵抗734の直列回路を備える。なお、実施の形態1と同様の箇所は同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
これにより、インダクタと出力回路又は入力回路に存在するキャパシタとの間で構成される共振回路の共振のピークの鋭さを表すQ値(Quality factor)を小さくすることができ、不要な共振を抑制することができる。
【0089】
本実施の形態は、通信帯域が2〜30MHzの通信に適用することができるが、これに限定されるものではなく、1.0MHzより高周波の通信帯域にも適用することができる。また、コントロールパイロット線と接地線の信号線を矩形波信号又は通信信号の通信経路に用いたが、一方もしくは双方を車体又は給電装置の筐体などの導体を用いてもよい。
【0090】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。