特許第5931871号(P5931871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931871
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】タバコ材料用熱処理プロセス
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/32 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   A24B15/32
【請求項の数】18
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-524224(P2013-524224)
(86)(22)【出願日】2011年8月11日
(65)【公表番号】特表2013-532994(P2013-532994A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】US2011047385
(87)【国際公開番号】WO2012021683
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年8月7日
(31)【優先権主張番号】12/855,343
(32)【優先日】2010年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594112886
【氏名又は名称】アール・ジエイ・レイノルズ・タバコ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チエン,ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ジエラルデイ,アンソニー・リチヤード
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ジヨン−ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホルトン,ジユニア,ダーレル・ユージン
(72)【発明者】
【氏名】カントレル,ダニエル・バーデイン
(72)【発明者】
【氏名】セント・チヤールズ,フランク・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】モルドベアヌ,セルバン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ブリンクリー,ポール・アンドリユー
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06499489(US,B1)
【文献】 国際公開第2009/015142(WO,A2)
【文献】 特表2010−525790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品中で使用するためのタバコ材料の調製方法であって;
(i)タバコ材料、水、6〜10のpH範囲を緩衝する緩衝材、及び、タバコ材料の加熱又は燃焼の際にアクリルアミドを形成するアスパラギン反応を阻害することが可能である添加剤を混合し、それにより湿潤なタバコ混合物を形成すること、ここで、前記添加剤がリシン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、フェニルアラニン、バリン、アルギニン、システイン、アスパラギナーゼ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される;
(ii)熱処理したタバコ混合物を形成するために前記湿潤なタバコ混合物を10.0未満のpHで加熱すること;および
(iii)前記熱処理したタバコ混合物を、喫煙可能な材料として喫煙物品中へ組み込むこと
を含み、
前記喫煙物品が、喫煙の際に、処理していない対照の喫煙物品と比較して低減された主流煙のアクリルアミド含有量により特徴付けられる、タバコ材料の調製方法。
【請求項2】
前記タバコ材料が、カットフィラー形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タバコ材料が、タバコブレンド形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記添加剤が、アスパラギナーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記添加剤が、前記タバコ混合物の乾燥重量に基づいて、100ppm〜10重量%の間の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記喫煙物品が、シガレットである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
主流煙中の重量での前記アクリルアミドの低減量が、処理していない対照の喫煙物品と比較して、少なくとも10%である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
主流煙中の前記アクリルアミドの低減量が、処理していない対照の喫煙物品と比較して、少なくとも30%である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
主流煙中の前記アクリルアミドの低減量が、処理していない対照の喫煙物品と比較して、少なくとも50%である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
主流煙中の前記アクリルアミドの低減量が、処理していない対照の喫煙物品と比較して、少なくとも60%である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理したタバコ混合物が、2000ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理したタバコ混合物が、1500ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱処理したタバコ混合物が、1000ppb未満のアクリルアミドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱ステップが、前記湿潤なタバコ混合物を9.0未満のpHで加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱ステップが、前記湿潤なタバコ混合物を8.0未満のpHで加熱することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱ステップが、前記湿潤なタバコ混合物を7.0未満のpHで加熱することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱ステップが、前記湿潤なタバコ混合物を6.5未満のpHで加熱することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法により調製された、シガレット形態の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコの処理のためのプロセス、特に、タバコ材料のための熱処理に有用なプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
シガレットなどの人気のある喫煙物品は、実質的に円筒形のロッド状の構造を有し、包装紙に包まれた、刻みタバコ(例えば、カットフィラー形状で)などの喫煙可能な材料の、チャージ、ロール又はカラムを含み、それによりいわゆる「タバコロッド」を形成する。通常、シガレットは、タバコロッドと、エンドツーエンドの関係で配置された円筒形のフィルター要素を有する。典型的に、フィルター要素は、「プラグ包装紙」として知られている紙素材により囲まれた可塑化セルロースアセテートトウ(cellulose acetate tow)を含む。特定のシガレットは、複数のセグメントを有するフィルター要素を組み込み、それらのセグメントの内の一つは、活性炭粒子を含むことができる。典型的に、フィルター要素は、「ティッピング紙」として知られている、取り囲んでいる包装材を使用して、タバコロッドの一端に取り付けられる。また、周囲の空気を用いて、主流煙の希釈を提供するために、ティッピング材料及びプラグ包装紙に穴を開けることが望ましくなっている。シガレットは、喫煙者によりその一端に点火し、タバコロッドを燃焼させることにより用いられている。喫煙者は、次に、シガレットの反対側の端部(例えば、フィルター端部)を吸引することにより、彼/彼女の口中へ主流煙を受け取る。
【0003】
シガレット製造に使用されるタバコは、典型的にブレンドされた形態で使用される。例えば、一般的に「アメリカンブレンド」と呼ばれる、特定の人気のあるタバコブレンドは、機械乾燥タバコ(flue−cured tobacco)、バーレー種タバコ及びオリエンタルタバコを含み、多くの場合、再構成タバコ及び加工タバコ茎などのような特定の処理したタバコを含む。特定のシガレットブランドの製造のために使用されるタバコブレンド内のそれぞれのタイプのタバコの正確な量は、ブランドにより異なる。しかしながら、多くのタバコブレンドについて、機械乾燥タバコは、ブレンドの比較的大きな割合を占めており、一方、オリエンタルタバコは、ブレンドの比較的小さな割合を占める。例えば、Tobacco Encyclopedia, Voges (Ed.) p. 44−45 (1984)、Browne, The Design of Cigarettes, 3rd Ed., p. 43 (1990) and Tobacco Production, Chemistry and Technology, Davis et al. (Eds.) p. 346 (1999)を参照されたい。
【0004】
タバコはまた、いわゆる「無煙」の形態で楽しむことができる。特に人気のある無煙タバコ製品は、ユーザーの口の中に、加工されたタバコ又はタバコ含有製剤を任意の形態で挿入することによって使用される。様々なタイプの無煙タバコ製品がSchwartzらによる米国特許番号第1,376,586号明細書、Leviによる米国特許番号第3,696,917号明細書、Pittmanらによる米国特許番号第4,513,756号明細書、Sensabaugh,Jr.らによる米国特許番号4,528,993号明細書、Storyらによる米国特許番号4,624,269号明細書、Townsendによる米国特許番号第4,987,907号明細書、Sprinkle,IIIらによる米国特許番号5,092,352号明細書及びWhiteらによる米国特許番号5,387,416号明細書;Stricklandらによる米国特許出願番号第2005/0244521号明細書及びEngstromらによる米国特許出願第2008/0196730号明細書;Arnarpらによる国際公開第WO04/095959号明細書、Atchleyらによる国際公開第WO05/063060号明細書、Bjorkholmによる国際公開第WO05/016036号明細書及びQuinterらによる国際公開第WO05/041699号明細書に記載されており、それぞれは参照により本明細書中に組み込まれる。例えば、Atchleyらによる米国特許第6953040号明細書及びAtchleyらによる米国特許第7,032,601号明細書に記載の無煙タバコ製剤、成分及び処理方法を参照されたく、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
無煙タバコの一つのタイプは、「スナッフ」と呼ばれる。一般的に「スヌース」と称されるモイストスナッフ製品の代表的な種類は、ヨーロッパ特にスウェーデンで、Swedish Match AB、Fiedler & Lundgren AB、Gustavus AB、Skandinavisk Tobakskompagni A/S、及び Rocker Production ABなどの企業により製造される。アメリカで利用可能なスヌース製品は、R.J.Reynolds Tabacco CompanyによるCamel Snus Frost、Camel Snus Original及びCamel Snus Spiceの商号の下で販売されている。代表的な無煙タバコ製品はまた、House of Oliver Twist A/SによるOliver Twist;U.S. Smokeless Tobacco Co.によるCopenhagen、 Skoal、SkoalDry、Rooster、Red Seal、Husky及びRevel;Philip Morris USAによる「taboka」;並びに、Conwood Sales Co., L.PによるLevi Garrett、Peachy、Taylor’s Pride、Kodiak、 Hawken Wintergreen、Grizzly、Dental、Kentucky Kin及びMammoth Caveの商号の下でも販売されている。また例えば、Bryzgalovらによる1N1800 Life Cycle Assessment, Comparative Life Cycle Assessment of General Loose and Portion Snus (2005)も参照されたい。更に、スヌースの製造に伴う一定の品質基準は、いわゆるGothia Tek基準として組み立てられてきた。
【0006】
何年にも渡って、様々な処理方法及び添加剤が、タバコ組成物に利用されるタバコ材料の全体の特性又は性質を変えるために提案されている。例えば、添加剤又は処理プロセスは時々、タバコ材料の化学的特性又は官能的特性を変えるために利用され、又は、喫煙可能なタバコ材料の場合、タバコ材料を含む喫煙物品により生成される主流煙の化学的特性又は官能的特性を変えるために利用される。いくつかの場合において、タバコ材料へ所望の色又は視覚的特徴を与えるため、タバコ材料へ所望の官能的特性を与えるため、又は、タバコ材料へ所望の物理的特性若しくは質感を与えるために、熱処理プロセスを使用することができる。
【0007】
特に、シガレットの煙の官能的属性は、シガレットの様々な成分へ香料材料を組み込むことにより向上させることができる。LeffingwellらによるTobacco Flavoring for Smoking Products, R.J. Reynolds Tobacco Company (1972)を参照されたい。例示的な香料添加剤は、メンソール及びピラジン類、アミノ糖並びにアマドリ化合物などのメイラード反応の生成物を含む。タバコ組成物中で使用するための、風味及び芳香族組成物を調製するための様々なプロセスは、Rookerによる米国特許第3,424,171号明細書、Luttichによる米国特許第3,476,118号明細書、Osborne,Jr.らによる米国特許4,150,677号明細書、Robertsらによる米国特許第4,986,286号明細書、Whiteらによる米国特許第5,074,319号明細書、Whiteらによる米国特許第5,099,862号明細書、Sensabaugh,Jr.による米国特許第5,235,992号明細書、Coleman,IIIらによる米国特許第6,298,858号明細書、Coleman,IIIらによる米国特許第6,325,860号明細書、Coleman,IIIらによる米国特許第6,428,624号明細書、Dubeらによる米国特許第6,440,223号明細書、Coleman,IIIによる米国特許第6,499,489号明細書及びWhiteらによる米国特許第6,591,841号明細書;Coleman IIIによる米国特許出願第2004/0173228号明細書及び2008年8月14日に出願されたColeman IIIらによる米国特許出願番号第12/191,751号明細書に記載されており、それぞれは参照により本明細書中に組み込まれる。そのようなプロセスは、しばしば、タバコ材料への熱の適用を含み、これにより特定の副生成物を形成する反応をもたらすことができる。
【0008】
無煙タバコの官能的属性はまた、特定の香料材料の組み込みにより向上させることができる。例えば、Williamsによる米国特許出願第2002/0162562号明細書、Williamsによる米国特許出願第2002/0162563号明細書、Atchleyらによる米国特許出願第2003/0070687号明細書、Williamsによる米国特許出願第2004/0020503号明細書、Breslinらによる米国特許出願第2005/0178398号明細書、Stricklandらによる米国特許出願第2006/0191548号明細書、Holton,Jrらによる米国特許出願第2007/0062549号明細書、Holton,Jrらによる米国特許出願第2007/0186941号明細書、Stricklandらによる米国特許出願第2007/0186942号明細書、Dubeらによる米国特許出願第2008/0029110号明細書、Robinsonらによる米国特許出願第2008/0209586号明細書、Muaらによる米国特許出願第2008/0029117号明細書、Robinsonらによる米国特許出願2008/0173317号明細書及びNeilsenらによる米国特許出願第2008/029586号明細書を参照されたく、それぞれは参照により本明細書中に組み込まれる。
【0009】
喫煙物品又は無煙タバコ製品において、タバコの特性及び性質(及びタバコの組成及び製剤)を有用に変化させる更なる方法を当該技術分野において提供することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第1,376,586号明細書
【特許文献2】米国特許第3,696,917号明細書
【特許文献3】米国特許第4,513,756号明細書
【特許文献4】米国特許第4,528,993号明細書
【特許文献5】米国特許第4,624,269号明細書
【特許文献6】米国特許第4,987,907号明細書
【特許文献7】米国特許第5,092,352号明細書
【特許文献8】米国特許第5,387,416号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0244521号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0196730号明細書
【特許文献11】国際公開第2004/095959号
【特許文献12】国際公開第2005/063060号
【特許文献13】国際公開第2005/016036号
【特許文献14】国際公開第2005/041699号
【特許文献15】米国特許第6,953,040号明細書
【特許文献16】米国特許第7,032,601号明細書
【特許文献17】米国特許第3,424,171号明細書
【特許文献18】米国特許第3,476,118号明細書
【特許文献19】米国特許第4,150,677号明細書
【特許文献20】米国特許第4,986,286号明細書
【特許文献21】米国特許第5,074,319号明細書
【特許文献22】米国特許第5,099,862号明細書
【特許文献23】米国特許第5,235,992号明細書
【特許文献24】米国特許第6,298,858号明細書
【特許文献25】米国特許第6,325,860号明細書
【特許文献26】米国特許第6,428,624号明細書
【特許文献27】米国特許第6,440,223号明細書
【特許文献28】米国特許第6,499,489号明細書
【特許文献29】米国特許第6,591,841号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2004/0173228号明細書
【特許文献31】米国特許出願番号第12/191,751号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2002/0162562号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第2002/0162563号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第2003/0070687号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2004/0020503号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2005/0178398号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2006/0191548号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2007/0062549号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2007/0186941号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2007/0186942号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2008/0029110号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2008/0209586号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2008/0029117号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2008/0173317号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2008/029586号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Tobacco Encyclopedia, Voges (Ed.) p. 44−45 (1984)
【非特許文献2】Browne, The Design of Cigarettes, 3rd Ed., p. 43 (1990)
【非特許文献3】Tobacco Production, Chemistry and Technology, Davis et al. (Eds.) p. 346 (1999)
【非特許文献4】Bryzgalovら,1N1800 Life Cycle Assessment, Comparative Life Cycle Assessment of General Loose and Portion Snus (2005)
【非特許文献5】Leffingwellら,Tobacco Flavoring for Smoking Products, R.J. Reynolds Tobacco Company (1972)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、タバコ材料の官能特性を変更する、又は、得られた熱処理生成物の化学的性質を変更するなど、タバコ材料の性質及び特性を変更するように適応させた添加剤の存在下で、タバコ材料を熱的に処理する方法を提供する。特に、特定の還元糖とアスパラギンとの反応から得られる反応生成物の形成を阻害するために、特定の添加剤を使用する。より具体的には、本発明の特定の実施形態は、喫煙物品及び無煙タバコ組成物を含むタバコ製品を提供し、それは、タバコ材料の加熱又は燃焼時の、アクリルアミドを形成するアスパラギンの反応を阻害するために、添加剤を用いて前処理したタバコ材料を含む。例示的な添加剤は、アミノ酸、二価及び三価カチオンを組み込む組成物、アスパラギナーゼ、特定の非還元性糖類、特定の還元剤、フェノール化合物(例えば、少なくとも一つのフェノール官能基を有する化合物)、少なくとも一つの遊離チオール基又は官能基を有する特定の化合物、酸化剤、酸化触媒、天然植物抽出物(例えば、ローズマリー抽出物)、及びそれらの組み合わせを含む。本発明はまた、得られた熱処理生成物の化学的性質を変化させるために、加熱ステップの間にpHを約8未満に維持する、又は、加熱時間若しくは温度を下げるなど、特定の熱処理パラメータを制御することができるという認識に一部基づいている。
【0013】
一態様において、本発明は、(i)タバコ材料を水及び、タバコ材料の加熱又は燃焼の際にアクリルアミドを形成するアスパラギンの反応を阻害することが可能である添加剤を混合すること(例えば、添加剤は、リシン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、フェニルアラニン、バリン、アルギニン、二価及び三価カチオンを組み込む組成物、アスパラギナーゼ、特定の非還元糖類、特定の還元剤、フェノール化合物、少なくとも一つの遊離チオール基又は官能基を有する特定の化合物、酸化剤、酸化触媒、天然植物抽出物(例えば、ローズマリー抽出物)、及びそれらの組み合わせから選択される)(ii)熱処理タバコ混合物を形成するために、低くても約60℃の温度で(例えば、低くても約100℃)湿潤なタバコ混合物を加熱すること、及び、(iii)例えば、シガレットなどの喫煙物品内において喫煙可能な材料として使用することが可能である熱処理タバコ混合物など喫煙物品又は無煙タバコ製品などのタバコ製品へ熱処理タバコ混合物を組み込むことを含む、喫煙物品又は無煙タバコ組成物中での使用のための、タバコ材料の熱処理方法を提供する。
【0014】
好ましい添加剤は、リシン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、フェニルアラニン、バリン、アルギニン、システイン、アスパラギナーゼ、酸化剤(例えば、過酸化水素又はオゾン)、酸化触媒(例えば、二酸化チタニウム)及びそれらの組み合わせを含む。添加剤の量は変えることができるが、典型的には、約100ppm〜約10乾燥質量パーセントの間である。熱処理したタバコ混合物は、しばしば、香料、充填材、結合剤、pH調整剤、緩衝剤、着色剤、崩壊助剤、酸化防止剤、保湿材、及び防腐剤などの、更なる成分を含むことが可能である。
【0015】
別の態様において、本発明は、(i)湿潤なタバコ混合物を形成するために、タバコ材料;水、香料、結合剤、及び充填材などの成分、及び、リシン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、フェニルアラニン、バリン、アルギニン、二価並びに三価カチオンを組み込む組成物、アスパラギナーゼ、特定の非還元糖類、特定の還元剤、フェノール化合物、少なくとも一つの遊離チオール基又は官能基を有する特定の化合物、酸化剤、酸化触媒、天然の植物抽出物(ローズマリー抽出物)及びそれらの組み合わせから成る郡から選択された添加剤を混合すること、(ii)湿潤なタバコ混合物を所望の製品形状へ形成すること、及び、(iii)熱処理プロセス段階を提供し、それによって、乾燥無煙タバコ製品を製造するために、低くても60℃(例えば、低くても約100℃)の温度で湿潤なタバコ混合物を加熱することを含む、無煙タバコ製品を調製する方法を提供する。
【0016】
熱処理プロセスは、タバコ組成物の水分含有量の変化により特徴付けられる。例えば、湿潤なタバコ混合物は、タバコ混合物の総質量に基づき、約20質量%以上の水分含有量を有し得、乾燥無煙タバコ製品は、約10質量%未満の水分含有量を有し得る。熱処理プロセスはまた、加熱段階のpHによっても特徴付けることができ、これは、約10.0未満、約8.0未満、約7.0未満又は約6.5未満であり得る。
【0017】
所望の製品形状は、丸剤、錠剤、球、シート、コイン、キューブ、ビーズ、卵形、オブロイド、豆状、スティック又はロッドの形状を有し得る。そのような製品形状は、移動ベルト、ニップ、押出機、造粒装置、圧縮装置などの機器を使用して、様々な方法で形成することができる。或いは、処理したタバコ材料は、粒子形態で使用することができる。
【0018】
一実施形態において、本発明の方法は、(i)湿潤なタバコ混合物を形成するために、約10〜約60乾燥質量%のタバコ材料、最大約50乾燥質量%の一つ以上の充填材、約10〜約85質量%の水、約5〜約30乾燥質量%の一つ以上の結合剤、最大10乾燥質量%の一つ以上の香料、及び、リシン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、フェニルアラニン、バリン、アルギニン、二価並びに三価カチオンを組み込む組成物、アスパラギナーゼ、特定の非還元糖類、特定の還元剤、フェノール化合物、少なくとも一つの遊離チオール基又は官能基を有する特定の化合物、酸化剤、酸化触媒、天然植物抽出物(例えば、ローズマリー抽出物)及びそれらの組み合わせから成る群から選択された少なくとも約0.1乾燥質量%の添加剤を混合すること、(ii)湿潤なタバコ混合物を所望の形状へ形成すること、及び、(iii)約10質量%以下の水分含有量を有する乾燥した無煙タバコ製品を生成するために、湿潤なタバコ混合物を、少なくとも約100℃で加熱処理時間(例えば、少なくとも約15分)加熱することを含む。
【0019】
更に別の態様において、本発明は、本発明の方法により調製した熱処理したタバコ組成物を提供する。そのような熱処理した組成物は、約2000ppb未満、約1500ppb未満、約1000ppb未満、約900ppb未満、約800ppb未満、約700ppb未満、約600ppb未満、約500ppb未満、約400ppb未満、又は、300ppb未満などの低いアクリルアミド含有量により特徴付けることができる。
【0020】
一実施形態において、本発明は、タバコ材料、水、香料、結合剤及び充填材を含む、熱処理した無煙タバコ組成物を適用し、前記熱処理した無煙タバコ組成物は、約1500ppb以下のアクリルアミド含有量を有する。熱処理した無煙タバコ組成物は、丸剤、錠剤、球、シート、コイン、キューブ、ビーズ、卵形、オブロイド、豆状、スティック及びロッドから成る群から選択される好ましい形状を有することができる。熱処理した無煙タバコ組成物の水分含有量は、典型的に、約10質量%以下である。
【0021】
熱処理した無煙タバコ組成物の各成分の量は変えることができるが、一実施形態において、組成物は、約20〜約60乾燥質量%のタバコ材料、約20〜約50乾燥質量%の一つ以上の充填材、約5〜約20乾燥質量%の一つ以上の結合剤、約1〜約10乾燥質量%の一つ以上の香料を含む。
【0022】
本発明の熱処理したタバコが喫煙物品中で利用される実施形態において、タバコは、カットフィラー形態であり得る。タバコ材料はまた、混合形態であり得る。
【0023】
本発明の処理をしたタバコを含む喫煙物品は、喫煙の際、処理していない対照の喫煙物品と比較して削減された、主流煙のアクリルアミド含有量により特徴付けることができる。主流煙中のアクリルアミド削減量は、典型的に、処理していない対照の喫煙物品と比較して、少なくとも約10%であり、本発明の喫煙物品により生成された主流煙中のアクリルアミドの質量による量は、同じ条件下(例えば、ISO条件下)で喫煙した、処理していない対照の喫煙物品により生成されたアクリルアミドの量よりも、少なくとも約10%少ない。削減量は、多くの場合は少なくとも約30%、より多くの場合は少なくとも約50%、最も多くの場合は少なくとも約60%である。
【0024】
一態様において、本発明は、包装材料により包まれた喫煙可能材料のロッド及び、その一端でロッドへ取り付けられたフィルターを含むシガレット形態の喫煙物品を提供し、前記喫煙可能材料は、主流煙中のアクリルアミド形成をするアスパラギン反応を防ぐために前処理したタバコ材料を含む。前処理は、本明細書中に記載の型の添加剤の存在下でのタバコ材料の加熱などの、本明細書中に記載の処理プロセスを含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の詳細な記載
以下、本発明をより詳細に説明する。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態で具現化し得、本明細書に記載の実施例に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的且つ完全なものとなるように設けられており、十分に当業者に本発明の範囲を伝えるであろう。本明細書及び特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に指示しない限り複数形を含む。「乾燥質量%」又は「乾燥質量基準」への言及は、乾燥成分(即ち、水を除く全ての成分)に基づく質量を指す。
【0026】
本発明は、熱処理したタバコ組成物及び、熱処理したタバコ組成物の調製方法を提供する。本明細書で使用する用語「熱処理したタバコ組成物」は、少なくとも約60℃の温度、より典型的には、少なくとも約100℃などの高温で、少なくとも約10分などタバコ組成物の特性又は性質を変えるのに十分な時間、熱的に処理されたタバコ材料を含む組成物を指す。いくつかの場合、熱処理プロセスは、タバコ組成物の化学的性質又は官能的特性(例えば、味及び香り)を変える。本発明の熱処理プロセスは、風味及び芳香族化合物(例えば、メイラード反応生成物)を形成するように適合されたプロセス、タバコ組成物の殺菌のために適合されたプロセス、タバコ筐体製品の調製プロセス、再生タバコプロセス(キャストシート及び製紙再生タバコプロセス)、タバコ抽出プロセス、リオーダリングプロセス、トーストプロセス、蒸気処理、及び乾燥プロセスなどの、従来のタバコ処理プロセスの改良版であり得る。
【0027】
本発明の熱処理タバコ組成物は、喫煙物品のための添加剤(例えば、喫煙可能なブレンドの一部として、又は、喫煙物品のフィルター又は包装紙への添加剤として)として、又は、緩いモイストスナッフ、緩いドライスナッフ、噛みタバコ、タバコペレット片、押出又は整形タバコストリップ、ピース、ロッド、又はスティック、細かく分割し砕いた粉、細かく分割若しくは粉砕された粉末ピースや成分の塊、フレーク状のピース、成形加工タバコピース、タバコ含有ガムのピース、テープ状フィルムのロール、容易に水に溶解可能か若しくは水分散性のフィルム若しくはストリップ、若しくは、カプセル状材料などの無煙タバコ組成物として、使用することができる。
【0028】
本発明のタバコ組成物において使用されるタバコは変化し得る。タバコは、機械乾燥タバコ、バーレー種タバコ、天日乾燥タバコ(sun−cured tobacco)(例えば、オリエンタルタバコ又はインドクルヌール)、メリーランドタバコ、暗色タバコ(dark tobacco)、暗色火力乾燥タバコ(dark−fired tobacco)、暗色空気乾燥タバコ(dark air cured tobacco)(例えば、passanda、cubao、jatin及びbezukiタバコ)、又はライト通気乾燥(light air−cured)タバコ(例えば、North Wisconsin及びgalpoa tobacco)及びRusticaタバコ並びに、他の希少な又は専門タバコ又は緑色又は未乾燥タバコを含み得る。タバコの様々な種類の説明、生育プラクティス、収穫プラクティス及び乾燥プラクティスは、Tobacco Production,Chemistry and Technology,Davis et al.(Eds.)(1999)に記載されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。また、Sensabaugh Jr.らによる米国特許第4,660,577号明細書、Whiteらによる米国特許第5,387,416号明細書、Dominguezらによる米国特許第6,730,832号明細書に記載のタイプのタバコも参照されたく、それぞれは参照により本明細書中に組み込まれる。最も好ましくは、タバコ材料は、適切に乾燥させ、熟成させた材料である。機械乾燥タバコ(flue−cured tobacco)を乾燥させるための特に好ましい技法及び条件は、NestorらによるBeitrage Tabakforsch.Int., 20(2003)467−475及びPeeleによる米国特許番号第6,895,974号明細書記載され、それらは参照により本明細書に組み込まれる。空気乾燥タバコのための代表的な技法及び条件は、RontonらによるBeitrage Tabakforsch.Int.,21(2005)305−320及びStaafらによるBeitrage Tabakforsch. Int.,21(2005)321−330に記載され、それらは参照により本明細書中に組み込まれる。特定のタイプの通常ではないか又は希少なタバコは、日光乾燥することができる。オリエンタルタバコの喫煙の質を改善するための様式及び方法は、Lawsonらによる米国特許番号第7,025,066号明細書に記載され、参照により本明細書中に組み込まれる。代表的なオリエンタルタバコは、カテリニ、プレリップ、コモティニ、サシン及びヤンボルタバコを含む。暗色空気乾燥タバコを含むタバコ組成物は、Marshallらによる米国特許出願第2008/0245377号明細書に記載され、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0029】
一実施形態において、タバコ材料又は少なくともそのいくつかの部分は、アスパラギンが自然に低レベルとなるように選択される。特定のタバコ葉中のアスパラギン含有量の代表的な範囲は、典型的に、約0.2〜約0.7乾燥質量パーセントの範囲へ変化し得る。特定の代表的な茎タバコ材料は、典型的に、約0.1〜約0.3乾燥質量パーセントなどの比較的低いレベルのアスパラギンを含む。喫煙物品又は無煙タバコ製品において使用されるブレンド形態の代表的なタバコ材料は、典型的に、約0.1〜約0.4乾燥質量パーセントのアスパラギン含有量を有する。
【0030】
無煙形態で使用することを意図するタバコ組成物などの本発明において使用されるタバコ組成物は、単一型のタバコ(例えば、いわゆる「ストレートグレード」形態)を組み込み得る。例えば、タバコ組成物中のタバコは、バーレー種タバコ単独のみで構成され得る(例えば、全てのタバコは、機械乾燥タバコ葉又は、機械乾燥タバコ葉及び機械乾燥タバコ茎の混合物のいずれかから成るか、又はそれらに由来する)。タバコ組成物中のタバコはまた、いわゆる「ブレンド」形態を有し得る。例えば、本発明のタバコ組成物中のタバコは、機械乾燥、バーレー種(例えば、マラウィバーレー種タバコ)及びオリエンタルタバコ(例えば、タバコ葉又はタバコ葉及びタバコ茎の混合物から成るか、それらに由来する)の部分又はピースの混合物を含み得る。例えば、代表的なブレンドは、乾燥質量ベースで約30〜約70質量部のバーレー種タバコ(例えば、葉、又は葉及び茎)、及び約30〜約70質量部の機械乾燥タバコ(例えば、茎、葉又は葉及び茎)を組み込み得る。他の例示的なタバコブレンドは、乾燥質量ベースで、約75質量部の機械乾燥タバコ、約15質量部のバーレー種タバコ、及び約10質量部のオリエンタルタバコ;又は約65質量部の機械乾燥タバコ、約10質量部のバーレー種タバコ、及び約25質量部のオリエンタルタバコを組み込み得る。他の例示的なタバコブレンドは、約20〜30質量部のオリエンタルタバコ及び約70〜約80質量部の機械乾燥タバコを組み込み得る。
【0031】
タバコ材料は、処理されたタバコ部分又はピース、本質的に天然の葉又は茎形態の、乾燥され、且つ、熟成されたタバコ、タバコ抽出物、抽出されたタバコパルプ(例えば、溶媒として水を使用)、又は、前述の混合物(例えば、タバコパルプと乾燥され熟成された天然タバコ葉を組み合わせた混合物)の形態を有することができる。いくつかの実施形態において、タバコ中の一部のアスパラギンを除去するために、徹底的に水中でタバコ材料を洗浄することが望ましい。
【0032】
タバコ製品に使用されるタバコは、最も好ましくは、タバコ葉又はタバコ葉及び茎の混合物を含む。タバコの茎に対して、タバコの葉を優勢量組み込んだタバコ混合物が好ましい。最も好ましくは、タバコ葉及びタバコ茎は、非抽出形態で使用され、即ち、乾燥され熟成された形態で提供された天然タバコに匹敵するような方法で、抽出不可能な部分(例えば、タバコパルプ)中に、抽出可能な部分(例えば、水溶性部分)が存在するように使用される。タバコ製品中のタバコ部分は、タバコの茎(例えば、カット−ロール茎、カット−ロール−拡張茎、又はカット膨化茎)、又は、容積拡大タバコ(例えば、ドライアイス拡大タバコ(DIET)などの膨化タバコ)などの加工形態を有し得る。例えば、Burdeらによる米国特許第4,340,073号明細書、Guyらによる米国特許5,259,403号明細書、Poindexterらによる米国特許5,908,032号明細書、及び、Poindexterらによる米国特許出願第2004/0182404号明細書に記載されるタバコ拡大プロセスを参照されたく、全ては参照により組み込まれる。更に、タバコ製品は、任意に、発酵されたタバコを組み込み得る。Atchleyらによる国際公開第WO05/063060号明細書も参照されたく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本発明で使用されるタバコは、典型的に、刻まれた、粉砕された、粒状、微粒子状、又は粉末形態で提供される。最も好ましくは、タバコは、いわゆる「ファインカット」タバコ製品において使用される刻まれたタバコの部分又はピースよりも小さい平均粒径を有する部分又はピースの形態で用いられる。典型的に、非常に細かく分割されたタバコ粒子又はピースは、約18タイラーメッシュの篩を通過する大きさであり、一般的に約20タイラーメッシュの篩を通過する大きさ、しばしば、約50タイラーメッシュの篩を通過する大きさ、頻繁には約60タイラーメッシュの篩を通過する大きさ、更には、100タイラーメッシュの篩を通過する大きさであり、更に、200タイラーメッシュの篩を通過する大きさであり得る。所望の場合、空気分級装置を、所望のサイズ若しくはサイズ範囲の小さいサイズのタバコ粒子の捕集を確実にするために使用され得る。一実施形態において、タバコ材料は、18タイラーメッシュを通過するが、60タイラーメッシュは通過しない大きさの粒子形態である。所望の場合、粒状タバコの異なるサイズのピースを一緒に混合し得る。典型的に、スヌースに適した非常に細かく分割されたタバコ粒子又はピースは、−8タイラーメッシュよりも大きく、しばしば−8〜+100タイラーメッシュ、頻繁には−18〜+60タイラーメッシュの大きさの粒子を有する。
【0034】
タバコが細かく分割された又は粉末タイプの形態で提供される方法は、変化し得る。好ましくは、タバコ部分又はピースは、研削、フライス加工等のための機器及び技法を使用して、粉砕、細かく砕かれた、又は粉末タイプの形態へ粉砕される。最も好ましくは、タバコはハンマーミル、カッターヘッド、エアコントロール見るなどの機器を使用して研削又はフライス加工している間は、比較的乾燥した形態である。例えば、タバコ部分又はピースは、その水分含有量が約15質量%〜約5質量%の場合、研削又はフライス加工され得る。
【0035】
タバコ抽出物は、タバコ組成物の成分として有用である。抽出物は、固体形態で(例えば、噴霧乾燥又は凍結乾燥形態)、液体形態で、半固体形態などで使用することができる。例示的なタバコ抽出物及び抽出方法は、例えば、Osborne,Jr.らによる米国特許番号4,150,677号明細書、Faggらによる米国特許第4,967,771号明細書、Faggらによる米国特許第5,005,593号明細書、Faggによる米国特許第5,148,819号明細書及びClappらによる米国特許第5,435,325号明細書に記載され、全ては参照により本明細書中に組み込まれる。様々なタバコ抽出及び再構成方法が、Faggによる米国特許第5,065,775号明細書、Newtonによる米国特許第5,360,022号明細書及びFaggによる米国特許第5,131,424号明細書に記載され、全ては参照により本明細書中に組み込まれる。また、Munozらによる米国特許第5,131,425号明細書及びGonzalez−Parraによる米国特許第5,318,050号明細書に記載のタバコ抽出物の処理方法も参照されたく、その両方は参照により本明細書中に組み込まれる。
【0036】
製紙方法や型鋳造プロセスなどの適切な既知の再構成タバコ処理方法を、本明細書の方法と組み合わせて使用することができる。例えば、Tughanによる米国特許第3,398,754号明細書、Mattinaによる米国特許3,847,164号明細書、Kiteによる米国特許第4,131,117号明細書、Jenkinsによる米国特許第4,270,552号明細書、Mattinaによる米国特許第4,308,877号明細書、Keritsisによる米国特許第4,341,228号明細書、Gellatlyによる米国特許第4,421,126号明細書、Gellatlyによる米国特許第4,706,692号明細書、Thomassonによる米国特許第4,962,774号明細書、Clappによる米国特許第4,941,484号明細書、Youngによる米国特許第4,987,906号明細書、Brownによる米国特許第5,056,537号明細書、Sohnによる米国特許第5,143,097号明細書、Brinkleyらによる米国特許第5,159,942号明細書、Youngによる米国特許第5,325,877号明細書、Brinkleyによる米国特許第5,445,169号明細書、Youngによる米国特許第5,501,237号明細書、Youngによる米国特許第5,533,530号明細書に記載されたタイプの製紙方法を参照されたく、それらは参照により本明細書中に組み込まれる。例えば、Hindによる米国特許第3,353,541号明細書、Hindによる米国特許第3,499,454号明細書、Hindによる米国特許第3,483,874号明細書、Deszyckによる米国特許第3,760,815号明細書、Keritsisによる米国特許第4,674,519号明細書、Kiermanによる米国特許第4,972,854号明細書、Hickleによる米国特許第5,023,354号明細書、Youngによる米国特許第5,099,864号明細書、Jakobによる米国特許第5,101,839号明細書、Lekwauwaによる米国特許第5,327,917号明細書、Youngによる米国特許第5,339,838号明細書、Jakobによる米国特許第5,598,868号明細書、Youngによる米国特許第5,715,844号明細書、Gellatlyによる米国特許第5,724,998号明細書及びKumarによる米国特許第6,216,706号明細書並びに、欧州特許第565360号明細書、欧州特許第1055375号明細書並びに国際公開第WO98/01233号明細書に記載の鋳造プロセスを参照されたく、それらは参照により本明細書中に組み込まれる。伝統的なタイプの再構成タバコプロセスにおいて使用される抽出物、抽出した材料及びスラリーは、本発明のタバコ製剤の成分として用いることができる。
【0037】
本発明のプロセスを、熱を加えることが関与している任意のタバコ処理プロセスに関連して、及び、熱処理加工助剤若しくは添加剤と組み合わせて、又は、ケーシング成分などの成分と組み合わせて使用することができる。例えば、Bryant,Jr.らによる米国特許第4,177,822号明細書、Wuらによる米国特許第4,306,577号明細書、Maysらによる米国特許第4,449,541号明細書、Gaischらによる米国特許第4,537,204号明細書、Shelarらによる米国特許第4,819,668号明細書及びLawsonらによる米国特許第4,836,224号明細書に記載されるケーシング材料及び方法を参照されたく、それぞれは参照により本明細書中に組み込まれる。
【0038】
タバコ製剤中の相対的なタバコの量は変化し得る。好ましくは、タバコ製剤中のタバコの量は、製剤の乾燥質量に基づいて、少なくとも約10%又は少なくとも約25%である。特定の例において、タバコ製剤中の他の成分の量は乾燥質量に基づいて、約40%を超え得る。製剤中の典型的なタバコ材料の範囲は、乾燥質量に基づいて、約10〜約60質量%、より多くの場合は約20〜約40質量%である。
【0039】
本発明の熱処理プロセスに供されるタバコ組成物は、典型的にその中に特定レベルの水を有し、モイストタバコ組成物として特徴付けることができる。水の量は、タバコ組成物が分散液の形態である大過剰量から、タバコ組成物が単に湿っているだけである比較的少量まで変化させることができる。熱処理前の水分含有量は、典型的に、組成物の総質量に基づいて約10質量%以上であり、より多くの場合には約20質量%以上である。水分含有量は、典型的には約85質量%未満であり、より多くの場合には約75質量%未満である。典型的な質量範囲は、約20〜約50質量%である。非水性溶媒はまた、様々な保湿材(例えば、グリセリン又はプロピレングリコール)など、水に加えてタバコ組成物中に存在することができる。
【0040】
熱処理されたタバコ組成物の性質又は特性を変えることができる添加剤は、タバコ組成物と混合される。添加剤は、例えば、熱処理プロセスの間にタバコの化学的性質又は官能的特性を変えることができる化合物又は化合物の混合物である。一実施形態において、添加剤は、タバコ組成物中に存在するアスパラギン及び還元質の間の反応を阻害することを意図しており、これはアクリルアミドなどの化合物に導くことができる。タバコ製品は、アスパラギン及び還元糖の間の反応などの特定の反応に関して食品から一意に異なる。喫煙タバコ製品(例えば、シガレット、葉巻、パイプタバコなど)について、使用の間の温度勾配は、調理中に発生する温度よりもかなり高く、これは反応率の増加につながる可能性がある。特定の無煙タバコ製品について、pHは、食品のpHよりもかなり高い可能性があり、処理の間、増加したpHのタバコを加熱することにより、特定の反応速度を向上させ得る。従って、タバコ製品を扱う場合に、特定の反応の阻害が特に困難な可能性がある。
【0041】
例示的な添加剤は、アミノ酸、二価及び酸化カチオンを組み込む組成物、アスパラギナーゼ、特定の非還元糖、特定の還元剤、フェノール化合物(例えば、少なくとも一つのフェノール官能基を有する化合物)、少なくとも一つの遊離チオール基又は官能基を有する特定の化合物、酸化剤、酸化触媒、ローズマリー抽出物(又は、ハーブ又は植物源由来の他の植物抽出物)、並びにそれらの組み合わせを含む。操作の理論に縛られることなく、利用可能な還元糖と優先的に反応する競合反応を設けることによるか、還元糖と反応することができないレンダリングするアスパラギンとの化学的相互反応によるか、反応中間体との化学的相互反応によるか、又は、アクリルアミドとの化学的相互反応によるかのいずれかによって、これらの添加剤は、アクリルアミドを形成するアスパラギン反応を阻害することができる。本発明による特定の添加剤の使用は、Elderらによる米国特許第7,037,540号明細書及びElderらによる米国特許第7,267,834号明細書;並びに、Zyzakらによるによる米国特許出願第2004/0058046号明細書、Finleyによる米国特許出願第2005/0196504号明細書、Okuらによる米国特許出願第2006/0194743号明細書、Elderらによる米国特許出願第2007/0141225号明細書、Boudreauxらによる米国特許出願第2007/014227号明細書及びSoeらによる米国特許出願第2007/0166439号明細書に記載されており、それらは参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0042】
タバコ組成物中に存在する添加剤の量は、最終熱処理タバコ組成物の所望の特性及び選択された添加剤の型に非常に依存する。典型的に、添加剤の量は、少なくとも約0.01乾燥質量%、より多くの場合には少なくとも約0.1乾燥質量%、最も多くの場合は少なくとも約1乾燥質量%である。添加剤は、典型的には、少なくとも約15乾燥質量%、例えば、約10質量%未満又は約8質量%未満の量で存在する。一実施形態において、添加剤の量は、約1乾燥質量%〜約5乾燥質量%である。添加剤がアスパラギナーゼである場合、添加剤の量は、約800ppm未満又は約600ppm未満又は約500ppm未満などの、比較的低い値であり得る。アスパラギナーゼは、約400ppm未満又は約300ppm未満又は更に約200ppm未満程度の低い処理レベルで、効果的であり得る。タバコ材料中のアスパラギナーゼについての典型的な質量範囲は、約100ppm〜約1,000ppmである。使用される添加剤のタイプ及び添加剤がアスパラギン/還元等反応と相互反応する方法により、熱処理後の組成物中に添加剤の大部分が残っているか、又は、添加剤はほとんど残っていない可能性がある。
【0043】
様々な必須又は非必須アミノ酸を使用することができたが、アミノ酸は典型的に、リシン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、フェニルアラニン、バリン、アルギニン、又はそれらの組み合わせである。システインもまた使用することができる。
【0044】
二価及び三価カチオンは典型的に、中性塩の形態で使用される。炭酸塩又は水酸化物アニオンを含む塩などの溶解しにくい塩は、リン酸又はクエン酸の添加により、より可溶性を高めることができる。示唆されたカチオンは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、銅及び亜鉛を含む。これらのカチオンの適切な塩は、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、カルシウムナトリウムEDTA、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、酸化カルシウム、プロピオン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム六水和物、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アンモニウムミョウバン、カリウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、グルコン酸第一鉄、クエン酸第二鉄アンモニウム、ピロリン酸第二鉄、フマル酸第一鉄、乳酸第一鉄、硫酸第一鉄、塩化第二銅、グルコン酸第二銅、硫酸第二銅、グルコン酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛及びそれらの組み合わせを含む。
【0045】
他の例示的な添加剤はアスパラギナーゼであり、これは、アスパラギンをアスパラギン酸及びアンモニアへ分解する酵素である。アスパラギナーゼは、典型的には、10質量%の全有機固形分(TOS)を含む水性分散液の形態で使用される。本発明で使用されるアスパラギナーゼ組成物のグラム毎のアスパラギナーゼ単位数(ASNU)は、変化する可能性があるが、典型的には3000〜4000の範囲である。特定の還元糖を第二の還元糖へ変換するために第一の酵素を利用し、第二の還元糖を酸化するために第二の酵素を利用する、多段階酵素処理などの、他の酵素処理はまた、効果的である可能性がある。例えば、フルクトースは、酵素グルコースイソメラーゼの反応により、グルコースへ変換することができ、これはまた、キシロースイソメラーゼとしても知られており、グルコースは、ヘキソースオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼにより酸化することができる。
【0046】
還元糖及び/又はフェノール様物質を置換する糖質は、アスパラギンからのアクリルアミドの生成を抑制すると考えられている。例示的な糖質は、トレハロース、還元パラチノース、D−マンニトール、D−エリスリトール、シクロデキストリン及びそれらの組み合わせを含む。市販の糖質は、日本の岡山県のHayashibara Shoji Inc社から入手可能な高純度含水結晶トレハロースである「TREHA.RTM」、日本の岡山県のHayashibara Biochemical Laboratories Inc社から入手可能な試薬グレードの結晶トレハロースである「NEOTREHALOSE」、日本の東京都のShin Mitsui Sugar Co. Ltd.社から入手可能な粉末化還元パラチノースである「PALATINIT」、及び、日本の東京都のTowa Chemical Industry Co., Ltd.社から入手可能な結晶性マンニトール粉末である「MANNITOL」を含む。
【0047】
例示的なフェノール様物質は、カテキン類(例えば、カテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン)、フラボノイド類(例えば、ケルセチン、イソクエルシトリン、ルチン、ナリンジン、ヘスペリジン)、ケンフェロール、桂皮酸、キナ酸、3,4−ジヒドロ−桂皮酸、3−クマル酸、4−クマル酸、p−ニトロフェノール、クルクミン、スコポレチン、p−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、プロトアントシアニジン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0048】
システイン及びシステイン誘導体(例えば、N−アセチル−システイン)、利用可能なチオール基を含むポリペプチド(例えば、グルタチオン及びカゼイン)、ジ−チオスレイトール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール及びそれらの組み合わせなどの、少なくとも一つの遊離チオール(−SH)基を含む化合物もまた使用することができる。
【0049】
チオール基へのジスルフィド結合の還元が可能な還元剤は、これらの還元剤がアスパラギンとメイラード反応を促進しない限り、アクリルアミドのレベルを還元することができると考えられている。例示的な還元剤は、塩化第一スズ二水和物、亜硫酸ナトリウム、ナトリウムメタ−重硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリソルビン酸)、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸(エリソルビン酸)、アスコルビン酸誘導体塩、鉄、亜鉛、第一鉄イオン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、リンゴ酸、グルタル酸、ジカルボン酸及びそれらの組み合わせを含む。
【0050】
漂白又は酸化剤及び酸化触媒もまた、アスパラギンからのアクリルアミド形成を阻害するのに有用であると考えられている。酸素原子を転送することができる任意の酸化剤を使用することができる。例示的な酸化剤は、過酸化物(例えば、過酸化水素)、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、オゾン、アンモニア及びそれらの組み合わせを含む。例示的な酸化触媒は、二酸化チタン、二酸化マンガン及びそれらの組み合わせである。漂白剤を用いたタバコ処理のプロセスは、例えば、Daniels,Jr.による米国特許第787,611号明細書、Oelenheinzによる米国特許1,086,306号明細書、Dellingによる米国特許第1,437,095号明細書、Rosenhochによる米国特許第1,757,477号明細書、Hawkinsonによる米国特許第2,122,421号明細書、Baierによる米国特許第2,148,147号明細書、Baierによる米国特許第2,274,649号明細書、Pratsらによる米国特許第2,770,239号明細書、Rosenによる米国特許第3,612,065号明細書、Rosenによる米国特許第3,851,653号明細書、Rosenによる米国特許第3,889,689号明細書、Rainerによる米国特許第4,143,666号明細書、Campbellによる米国特許第4,194,514号明細書、Rainerらによる米国特許第4,366,824号明細書、Rainerらによる米国特許第4,388,933号明細書及びSchmekelらによる米国特許第4,641,667号明細書、並びに、Giolvasによる国際公開第WO96/31255号明細書に記載されており、それらは全て参照により本明細書中に組み込まれる。酸化剤を利用する場合、処理したタバコ材料を混合物の残存成分と混合する前に、酸化剤とタバコ材料を前処理し、得られた混合物を加熱する(例えば、処理したタバコ材料を、少なくとも約15分間、低くても約80℃の温度で加熱する)ことが、必要ではないが、望ましくあり得る。
【0051】
処理されるべきタバコ組成物のタイプによって、タバコ組成物は、タバコ材料、水及び上述の添加剤に加えて、一つ以上の追加成分を含むことができる。更なる成分の例示的なタイプは、以下により詳細に記載するが、香料、充填材、結合剤、pH調整剤、緩衝材、着色剤、崩助剤、酸化防止剤、保湿材及び防腐剤を含む。
【0052】
タバコ組成物の成分は、当該技術分野で公知の任意の混合技術や機器を使用して混合し、一緒に用いられる。上述の添加剤は、液体又は乾燥固体形態であり得るが、組成物の残り任意の成分との混合前の前処理工程においてタバコと混合するか、又は、単純に、全ての他の液体又は乾燥成分とタバコを混合することができる。タバコ組成物の成分を密着させる任意の混合方法を使用することができる。羽根車又は攪拌することができる他の構造を特徴とする混合装置が典型的に使用される。例示的な混合機器は、ケーシングドラム、コンディショニングシリンダー又はドラム、液体噴霧装置、リボンブレンダー、Littleford Day社のFKM130、FKM600、FKM1200、FKM2000及びFKM3000として利用できるミキサー、犂先タイプのミキサーシリンダーなどを含む。
【0053】
タバコ組成物の熱処理は、当該技術分野で公知の任意の加熱方法又は装置を使用して達成することができる。熱処理は、閉じられた容器(例えば、制御された大気成分、制御された大気環境、及び制御された大気圧を提供するための容器)又は、周囲の空気へ実質的に開かれた容器内で実行することができる。温度は、ジャケット付き容器、タバコへの直接的な蒸気の注入、タバコへ熱風を通過させることなどを使用して、制御することができる。特定の実施形態において、熱処理ステップは、攪拌又はかきまぜなどにより、組成物の混合を提供することもできる容器中で実施される。例示的な混合容器は、Scott Equipment Company社、 Littleford Day社、Lodige Process Technology社及びBreddo Likwifier Division of American Ingredients Company社から入手可能なミキサーを含む。圧力が制御された環境を提供する例示的な容器は、カリフォルニアのBerghof/America Inc. of Concord社及びThe Parr Instrument Co.社から入手可能な高圧反応器 (例えば、Hukvariらによる米国特許番号第4,882,128号明細書に記載の、パーリアクターモデル番号4522及び4552など)を含む。プロセスの間の混合容器内の圧力は、大気圧又は高圧(例えば、約1,000psi〜約1,000psi)。他の実施形態において、熱処理プロセスは、電子レンジ、対流式オーブン内で、又は、赤外線加熱により実施される。
【0054】
熱処理プロセスの温度及び時間は異なるが、一般的に、熱処理の長さは、熱処理温度が上昇するに連れて減少する。しかしながら、熱処理ステップの温度は、室温よりも高い(即ち、25℃以上)温度を意味する、上昇した温度として特徴付けることができる。温度は、実施されるべき熱処理プロセスのタイプ及び熱処理の目的により、部分的に決定される。プロセスが、乾燥、低温殺菌又は化学反応(例えば、風味及び芳香族化合物の形成のために)のために設計されているかどうかによって、異なる温度範囲を適用することができる。温度は、一般的には約60℃以上、多くの場合には約80℃以上、より典型的には約100℃以上であるが、一般的には約200℃以下であり、多くの場合約175℃以下であり、最も多くの場合約150℃以下である。典型的な温度範囲は、約60℃〜約175℃を含み、より多くの場合約80℃〜約150℃、最も多くの場合約100℃〜約140℃を含む。特定の実施形態において、比較的低温な熱処理プロセス(例えば、約100℃以下又は約90℃以下)が、特定の副生成物を形成するように反応するアスパラギンの傾向を減少させるために所望される。
【0055】
タバコ生成物を熱処理に供する時間の量は変化させることができる。通常、期間は、少なくとも約10分、典型的には少なくとも約20分、より多くの場合には少なくとも約30分の期間というように、所望の温度で混合物を加熱するのに十分である。通常期間は、約3時間未満、典型的には約2時間未満、多くの場合には約1.5時間未満である。特定の実施形態において、比較的迅速な熱処理は、特定の副生成物を形成するように反応するアスパラギンの特性を減少させるために、所望される。そのような実施形態において、加熱時間は、約15分以上ではないか、又は約10分以上ではない。
【0056】
特に熱処理が無煙タバコ組成物に適用されている、特定の実施形態において、熱処理の長さは、タバコ組成物の所望の最終水分含有量により決定される。典型的に、所望の無煙タバコ組成物の最終水分含有量は、組成物の総質量に基づいて、約35質量%未満であり、多くの場合、約25質量%未満であり、最も多くの場合約20質量%未満である。所望の製品形状(例えば、シート材料又はロッド形状)に形成された無煙タバコ組成物について、最終的な水分含有量は、典型的には約15質量%未満又は約10質量%未満であり、多くの場合約8質量%未満である。
【0057】
大気中の空気又は周囲の大気は、本発明の熱処理を実施するための最良の雰囲気である。しかしながら、熱処理はまた、一般的に不活性な雰囲気などの制御された雰囲気下においても実施することができる。窒素、アルゴン及び二酸化炭素などの気体を使用することができる。或いは、熱処理条件及び所望の反応生成物の選択によって、特定の実施形態において、炭化水素ガス(例えば、メタン、エタン又はブタン)又はフッ化炭素ガスも、制御された雰囲気の少なくとも一部で提供することができる。
【0058】
熱処理の間のタバコ組成物のpHはまた、熱処理生成物の性質及び特性に影響を与えることができる。水性タバコ組成物は、通常酸性であるが、pHは、水酸化ナトリウムなどの塩基の添加によって、上方に調製することができる。熱処理の間のタバコ組成物のpHがアスパラギン及び還元糖の間の反応に影響を与えることができることが、明らかになっている。特定の実施形態において、タバコ組成物のpHは、約10.0未満、約9.0未満、約8.0未満、約7.5未満、約7.0未満、又は約6.5未満である。熱処理の間の比較的低いpHは、熱処理した材料中のアクリルアミドレベルを減少させることができることが明らかになっている。特定の実施形態において、上述のpHレベルを達成するために、塩基が全く加えられないか又は減少した量の塩基をタバコ組成物へ加える。タバコ製剤のpHを決定するための代表的な技法は、100mlの高速液体クロマトグラフィー水中にその製剤を5g分散させ、得られた分散液/水溶液のpHを測定する(例えば、pHメーターを用いて)ことを含む。
【0059】
熱処理温度又は処理時間は上述の特定の反応を減少させることができるが、時間短縮又は温度の低下は望ましくない場合がある。例えば、熱処理プロセスが香料及び芳香族メイラード反応生成物を生成することを意図する場合、熱処理プロセスの温度及び時間の減少は、所望の化合物の生成の減少をもたらすこともある。従って、特定の実施形態では、反応条件を阻害するために、熱処理条件の変化に反対するため、本明細書に記載した添加剤の一つを使用するのが有利であり得る。
【0060】
本発明の熱処理プロセスは、細胞膜を破壊し、結果として、上述のようにタバコ材料への添加剤の優れた浸透を可能にする追加のプロセスと組み合わせることができる。例えば、タバコ組成物のタバコ材料を、本発明の熱処理プロセスの前又は間に、超音波エネルギー、真空の適用又は細胞の弱体化酵素へ供することができる。
【0061】
本発明の一態様において、熱処理プロセスを、無煙タバコを処理するために使用する。例えば、熱処理プロセスを、所望の製品形状へ形成された無煙タバコ組成物を乾燥させるために使用することができる。タバコ、水及び上述の添加剤に加えて、そのような無煙タバコ組成物は、また、典型的に、香料、充填材、結合剤、pH調製材、緩衝材、着色剤、崩助剤、酸化防止剤、保湿材、防腐剤などの追加の成分を含む。
【0062】
使用することができる例示的な香料は、化合物又はそれらの化合物の適切な組み合わせであり、無煙タバコ製品苦味、甘味、酸味又は塩見を変更するためや、製剤の認識される乾燥若しくは湿度、又は、製剤によって示されるタバコの味の度合いを高めるために機能する。香料のタイプは、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)、天然甘味料(例えば、フルクトース、スクロース、グルコース、マルトース、マンノース、ガラクトース、ラクトースなど)、人工甘味料(例えば、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、ネオテームなど)及びそれらの混合物を含む。タバコ組成物中で利用される香料の量は変化することができるが、典型的には最大約10質量%であり、特定の実施形態は、約1〜約10乾燥質量%などの少なくとも1乾燥質量%の香料含有量により特徴付けられる。約0.1〜2乾燥質量%の人工甘味料及び、約0.5〜8乾燥質量%の塩化ナトリウムなどの塩などの、香料の組み合わせが多くの場合使用される。
【0063】
例示的な充填材材料は、テンサイ繊維材料(例えば、International Fiber Corporation社のFIBREX(登録商標)ブランド充填材)、麦若しくはその他の穀物(加工穀物又はパフ状の粒を含む)、フスマ繊維、デンプン、又は、微結晶セルロースなどの他の修飾された又は天然のセルロース系材料などの植物性繊維材料を含む。追加の特定の実施例は、トウモロコシデンプン、マルトデキストリン、デキストロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳糖、マンニトール、キシリトール及びソルビトールを含む。タバコ組成材中で利用される充填材の量は変化することができるが、典型的には最大約50乾燥質量%であり、特定の実施形態は、約20〜約50乾燥質量%などの少なくとも約10乾燥質量%の充填材により特徴付けられる。約2〜8乾燥質量%の炭酸カルシウム、約10〜約20乾燥質量%の米粉及び約10〜約20質量%のマルトデキストリンなどの、充填材の組み合わせが多くの場合に使用される。
【0064】
典型的な結合剤は、ポビドン、カルボキシメチレンセルロースナトリウム及び他の修飾されたセルロース系材料、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、デンプン系結合剤、アラビアガム、ペクチン、カラギーナン、プルラン、ゼインを含む。タバコ組成物中で利用される結合剤の量は変化することができるが、典型的には最大約30乾燥質量%であり、特定の実施形態は、約5〜約30乾燥質量%などの少なくとも5乾燥質量%の結合剤含有量により特徴付けられる。
【0065】
好ましいpH調製材又は緩衝材は、約6〜約10のpH範囲を提供及び/又は緩衝し、例示的な剤は、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属重炭酸塩及びそれらの組み合わせを含む。特定の例示的な材料は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを含む。タバコ組成物中で利用されるpH調製材又は緩衝材料の量は変化することができるが、典型的には最大約5乾燥質量%であり、特定の実施形態は、約1〜約5乾燥質量%などの少なくとも約0.5乾燥質量%のpH調製材/緩衝材の含有量により特徴付けられる。
【0066】
例示的な着色剤は、カラメル着色料及び二酸化チタンなどの様々な染料及び含量を含む。タバコ組成物中で利用される着色剤の量は変化することができるが、典型的には最大約3乾燥質量%であり、特定の実施形態は、約0.5〜約3乾燥質量%などの少なくとも約0.1乾燥質量%の着色剤含有量により特徴付けられる。
【0067】
典型的な湿潤剤は、グリンセリン及びポリプロピレングリコールを含む。タバコ組成物中で利用される湿潤剤の量は変化することができるが、典型的には最大2乾燥質量%であり、特定の実施形態は約0.2〜約2乾燥質量%などの少なくとも約0.1乾燥質量%の湿潤剤含有量により特徴付けられる。
【0068】
防腐剤(例えば、ソルビン酸カリウム)又は、崩助剤(例えば、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファー化トウモロコシデンプンなど)などの他の成分も使用することができる。典型的に、そのような成分は、約0.5〜約10乾燥質量%などの、最大約10乾燥質量%であり且つ、通常は少なくとも約0.1質量%の量で使用される。
【0069】
特に無煙タバコ組成物に関して、本発明のタバコ組成物は、熱処理ステップの前又は後のいずれかで、所望の製剤形状へ形成することができる。典型的に、加熱前に存在する高い水分含有量は、組成物の可鍛性を増すために、形成ステップは熱処理の前に発生する。タバコ組成物を形成するために使用される方法及び装置は、所望の形状に依存する。例示的な形状は、丸剤、錠剤、球、シート、コイン、キューブ、ビーズ、卵型、オブロイド、豆、スティック及びロッドを含む。例えば、タバコ組成物は、圧縮されたタバコのペレット、多層押出されたピース、押出若しくは成形されたロッド若しくはスティック、タバコ製剤の異なる種により囲まれたタバコ製剤の一種を有する組成物、テープ上フィルムのロール、容易に水溶解性若しくは水分散性なフィルム若しくはストリップ(例えば、Chanらにより出願された米国特許出願番号第2006/0198873号明細書を参照されたい)又は、外殻を有するカプセル状材料(例えば、本質的に、無色透明、半透明又は高度に着色された柔軟又は硬い外殻)及びタバコ又はタバコの風味を有する内部領域(例えば、Newtoniam液又は何らかの形態のタバコを組み込むチキソトロピー流体)を有することができる。
【0070】
圧縮されたタバコペレットなどの処理されたタバコ組成物は、任意にオーバーコート剤で各ペレットがコーティングされているペレット形態である粒状タバコ及び関連する製剤成分を圧縮することにより、製造することができる。例示的な造粒装置は、Vector Corporation社のFL−Mシリーズ造粒装置(例えば、FL−M−3)及び、Alexanderwerk Inc.社のWP 120V及びWP 200VNを使用できる。圧縮プレスなどの例示的な圧縮デバイスは、Vector Corporation社のColton2216並びにColton2247及び、Fette Compacting社の1200i、2200i、3200、2090、3090及び4090を使用できる。圧縮されたペレット状のタバコ製剤に外側のコーティングを施すためのデバイスは、Thomas Engineering社のCompuLab 24、CompuLab 36、Accela−Cota 48 及びAccela−Cota 60を使用できる。
【0071】
多層タバコペレットなどの加工タバコ組成物は、多種多様な押出技術を使用して製造される。例えば、多層タバコペレットを、共押出技術を使用して(例えば、二軸スクリュー押出機を使用する)製造することができる。そのような場合、連続的なウェット又はドライの成分又は成分の混合物を、別々の押出ホッパー内に配置することができる。蒸気、ガス(例えば、アンモニア、空気、二酸化炭素など)及び湿潤剤(例えば、グリセリン又はプロピレングリコール)を、各ドライミックスが推進され、可塑化され、調理されるように、押出機バレルへ注入することができる。そのようにして、様々な成分が、非常によく混合されるように処理され、それゆえ、お互いに完全に接触するに至る。例えば、成分の接触は、個々の成分が良く押出マトリックス又は押し出し物に埋め込むことができるようなものである。例えば、Toftらによる米国特許第4,821,749号明細書を参照されたく、それは参照により本明細書中に組み込まれる。多層材料は、フィルムの一般的な形状を有することができ、或いは、多層略球状材料は内側から外側へ向かって延伸する様々な層を有することができる。
【0072】
ロッド及びキューブなどのいくつかの形状は、まず、所望の断面(例えば、円形又は正方形)を有するダイを通して材料を押し出し、次に、必要に応じて所望の長さに押し出された材料を切断することによって形成することができる。本発明における使用に適切な例示的な押出装置は、イタリアのEmiliomiti LLC社のModel TP200/300などのパスタ押出機を含む。シート状材料を、移動ベルトの上のタバコの組成物を塗布し、対向するローラによって形成されるニップを通って移動するベルトが通過し、その後、所望の長さにシートを切断することにより調製することができる。
【0073】
本発明は、約2000ppb(又はng/g)未満のアクリルアミド含有量を有する、熱処理無煙タバコ組成物などの熱処理したタバコ組成物を提供する。典型的に、アクリルアミド含有量は、約1500ppb未満、多くの場合約1000ppb未満、最も多くの場合約900ppb未満である。約800ppb未満、約700ppb未満、約600ppb未満、約500ppb未満、約400ppb未満又は約300ppm未満のアクリルアミド含有量を有する組成物を生成することができる。
【0074】
本発明の熱処理したタバコ組成物は、喫煙物品の製造のための添加剤として有用である。例えば、本発明に従って調製した組成物は、ケーシング成分と混合し、表面包装成分として喫煙物品中に組み込まれるケーシング成分としてタバコへ適用し、又は、再構成タバコ材料中へ組み込まれることができる。タバコカットフィラーは、本発明により処理されたタバコ材料であり得、次に、喫煙可能な材料の充填の一部として喫煙物品中へ組み込まれ得る。更に、本発明の熱処理した組成物は、シガレットフィルターに組み込まれ得るか(例えば、フィルタプラグ、プラグラップ又はティッピング紙)又はシガレット包装紙、好ましくは、内側の表面上へ、シガレット製造プロセス中に組み込まれ得る。熱処理組成物はまた、Robinsonらによる米国特許出願第2008/0092912号明細書中に記載のような特定のエアロゾル発生電子喫煙物品中の添加剤としても使用され、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0075】
熱処理した組成物は、Lowsonらによる米国特許第4,836,224号明細書、Perfettiらによる米国特許第4,924,888号明細書、Brownらによる米国特許第5,056,537号明細書、Gentryによる米国特許第5,220,930号明細書及びBlakleyらによる米国特許第5,306,023号明細書;Shaferらによる米国特許出願第2002/0000235号明細書;及び国際公開第WO02/37990号明細書に記載のタバコブレンド、代表的なシガレット成分、及びそれらから製造された代表的なシガレット中へ組み込まれ得る。それらのタバコ材料はまた、Sensabaughによる米国特許第4,793,365号明細書、Clearmanらによる米国特許第4,917,128号明細書、Brooksらによる米国特許第4,947,974号明細書、Korteによる米国特許第4,961,438号明細書、Lawrenceらによる米国特許第4,920,990号明細書、Clearmanらによる米国特許第5,033,483号明細書、Gentryらによる米国特許第5,074,321号明細書、Drewettらによる米国特許第5,105,835号明細書、Riggsらによる米国特許第5,178,167号明細書、Clearmanらによる米国特許第5,183,062号明細書、Schannonらによる米国特許第5,211,684号明細書、Deeviらによる米国特許第5,247,949号明細書、Riggsらによる米国特許第5,551,451号明細書、Banerjeeらによる米国特許第5,285,798号明細書、Farrierらによる米国特許第5,593,792号明細書、Bensalemらによる米国特許第5,595,577号明細書、Countsらによる米国特許第5,816,263号明細書、Barbnesらによる米国特許第5,819,751号明細書、Bevenらによる米国特許第6,095,153号明細書、Nicholsらによる米国特許第6,311,694号明細書及びNicholsらによる米国特許第6,367,481号明細書;並びに、国際公開第WO97/48294号明細書及び国際公開第WO98/16125号明細書に記載のシガレットのタイプの製造のために用いることができる。また、Chemical and Biological Studies on New Cigarette Prototypes that Heat Instead of Burn Tobacco, R. J. Reynolds Tobacco Company Monograph (1988) and Inhalation Toxicology, 12:5, p. 1−58(2000)に記載のタイプの商業的に販売されているシガレットも参照されたい。
【0076】
熱処理タバコ組成物が喫煙可能材料として使用される特定の実施形態において、得られた喫煙物品は、使用中の主流煙中の減少したアクリルアミドレベルにより特徴付けることができる。例えば、喫煙物品は、処理していない対照の喫煙物品(即ち、本発明により処理したタバコを含まない同等の喫煙物品)と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%以上の、主流煙中のアクリルアミドレベルの減少により特徴付けることができる。言い換えると、本発明の処理したタバコ組成物を含むシガレットなどの本発明の喫煙物品は、ISO3308:1991及びISO4387:1991など(それらは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載された喫煙機器及び喫煙条件などの同じ喫煙機器の使用及び同じ喫煙条件下で喫煙した、処理していない対照の喫煙物品と比較して、主流煙中の質量によるアクリルアミド量の生成を減少させることができる。
【0077】
本発明の方法により得られた組成物はまた、無煙タバコ製品として使用すること、又は、無煙タバコ製品中に添加剤として組み込むこともできる。様々なタイプの無煙タバコ製品が、Schwarzらによる米国特許第1,376,586号明細書、Leviによる米国特許第3,696,917号明細書、Pittmanらによる米国特許第4,513,756号明細書、Sensabaugh Jr.らによる4,528,993号明細書、Storyらによる米国特許第4,624,269号明細書、Townsendによる米国特許第4,987,907号明細書、Sprinkle IIIらによる米国特許第5,092,352号明細書、及びWhiteらによる米国特許第5,387,416号明細書;Stricklandらによる米国特許出願第2005/0244521号明細書、及びEngstromらによる米国特許出願2008/0196730号明細書;Arnarpらによる国際公開第WO04/095959号明細書、Atchleyらによる国際公開第WO05/063060号明細書、Bjorkholmによる国際公開第WO05/016036号明細書、及びQuinterらによる国際公開第WO05/041699号明細書に記載されており、それぞれは参照により本明細書中に組み込まれる。また、Atchleyらによる米国特許第6,953,040号明細書及びAtchleyらによる米国特許第7,032,601号明細書;Williamsによる米国特許出願第2002/0162562号明細書、Williamsによる米国特許出願第2002/0162563号明細書、Atchleyらによる米国特許出願第2003/0070687号明細書、Williamsによる米国特許出願第2004/0020503号明細書、Breslinらによる米国特許出願第2005/0178398号明細書、Stricklandらによる米国特許出願第2007/0186942号明細書、Holton Jr.らによる米国特許出願第2007/0062549号明細書、Holton Jr.らによる米国特許出願第2007/0186941号明細書、Stricklandらによる米国特許出願第2007/0186942号明細書、Dubeらによる米国特許出願第2008/0029110号明細書、Robinsonらによる米国特許出願第2008/0029116号明細書、Muaらによる米国特許出願第2008/0029117号明細書、Robinsonらによる米国特許出願第2008/0173317号明細書、及びNeilsenらによる米国特許出願第2008/0209586号明細書に記載の無煙タバコ製剤、成分及び処理方法も参照されたく、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0078】
本発明を以下の実施例により、より完全に示し、これらは本発明を例示するために示したものであり、それを限定するものとして解釈されるべきではない。以下の実施例において、gはグラムを意味し、μgはマイクログラムを意味し、mgはミリグラムを意味し、ngはナノグラムを意味し、Lはリットルを意味し、mLはミリリットルを意味し、μLはマイクロリットルを意味し、ppmは百万分の一を意味する。全ての質量百分率は、乾燥ベースで表されており、特に断りのない限り、水分含量を除くことを意味する。
【0079】
アクリルアミドの分析方法は、アイソクラティック溶離を使用する、Phenomonex Gemini−NX 5 μm, 2.1 x 150 mm C18 HPLCカラムを備える、Thermo Surveyor MS液体クロマトグラフ(LC)を使用した。移動相A(92%)は水中の0.1%質量/質量のギ酸であり、移動相B(8%)は100%メタノール(MeOH)である。カラム温度は30℃であり、オートサンプラトレイは4℃に設定されている。アクリルアミドの検出は、Thermo TSQ量子ウルトラトリプル四重極質量分析計を用いて達成する。LC排出液は、質量分析計のエレクトロスプレーインターフェイスに、直接的に流れ込む。インターフェイスは、3.5kVのスプレー電圧で、陽イオンモードで操作する。イオン移送管(加熱した毛細管)は、250℃に設定する。選択した反応監視を、アクリルアミドの直接流入により決定されるように、12Vの衝突エネルギーで72→55m/zの遷移及び、32Vの衝突エネルギーで72→44m/zの遷移に焦点を当て、使用する。1グラムのサンプルを、300rpmに設定したオービタルシェイカーを使用して1時間、水:メタノールの90:10(体積/体積)中に溶解する。次に、抽出物を0.45μmのPTFEフィルターを介して濾過し、ろ液をその後、全ジュルしたLC−MS/MSシステムにより分析する。
【0080】
実施例1〜5で使用したタバコは、75質量%の煙乾燥タバコ及び25%の天日乾燥タバコのブレンドである。タバコブレンド、米粉及びマルトデキストリンのアクリルアミド含有量は、75ng/gの定量限界未満である。キサンタンガムは、約120ng/gのアクリルアミドを含む。全ての実施例について、乾燥成分をPopeil自動パスタメーター(Model P400 Food Preparer, Ronco Inventions LLC, Chatsworth, CA)へ加える。ウェットブレンドは、水中に水酸化ナトリウムを溶解させ、次にグリセリンを加えることにより作る。
【0081】
ウェットブレンド溶液を、「混合」モードで混合に使用するための指示に従いながら、ゆっくりと乾燥成分へ加える。パスタメーカーを次に、「押出」モードに切り替え、オリエンタルヌードルダイ(3.15mm程度の穴サイズ)を介して、約1フィートの長い棒が押し出される。ダイの底面上の4つ以外の全ての穴は、プラスチック製の円形部分で封鎖し、これは、底穴を明らかにするために切り取られている。プラスチック製のこの部分を、マシンに対向する側の金型内に配置する。
【0082】
ロッドは、オーブン内部のトレーの回転に合わせるように作られた22.5インチ直径の波形金属スクリーン上に配置する。乾燥中、その波形は、ロッドをまっすぐに維持する。オーブンは、10個の回転トレーを備える、Hotpack Digamatecコンベクションオーブン(Hotpack Corporation, Philadelphia, PA)である。乾燥温度は、華氏280°(138℃)である。
【0083】
実施例6〜9は、処理したタバコを含むシガレットにより発生した、主流煙のアクリルアミド含有量に一定の添加剤で処理したタバコ材料を使用する乾燥を決定するための試験について記載する。これらの実施例における添加剤を用いたタバコの処理方法は、約15gのCAMEL Blueタバコブレンド又は25gのTurkishブレンドを予め秤量したプラスチック製の袋中に配置することを含む。袋は、袋の中のサンプルを回転させるために、パンコーター内部に固定されている。添加剤を含む予め秤量した水溶液を、できるだけ均一に塗布するために、噴霧器を使用して回転するタバコのサンプルへ噴霧する。溶液の質量は、タバコブレンドへ約40%の追加の水分を与えることを目的とする。袋を次に、パンコーターから取り除き、密封して、追加された溶液の正確な量を決定するために、再計量する。タバコに吸収させるために、混合し、袋の両側に任意の溶液を行き渡らせるように、袋を数回振盪する。サンプルを室温で、2時間25分〜3時間25分インキュベートさせる。タバコを次に、ステンレス鋼プレート上に置き、オーブンで10分間加熱する。オーブン温度は、開始時に73℃、加熱時間の終了時に85℃である。オーブンから取り除いた後、タバコをペーパータオルで覆い、周辺条件(24℃、36%、RH)で一晩乾燥させる。一晩乾燥させた後、タバコは非常に乾燥して、カリカリな感じである。タバコサンプルを24℃、60%RHで5日間空調キャビネットに入れ、次に、タバコを使用してシガレットが作られるまで、空調キャビネット内の密封されたビニール袋内に保管する。50秒で1mgの質量カットオフで、105℃で、メトラー水分計を使用して、タバコの水分は1グラムのサンプルについて測定した。Turkishブレンドの初期水分は11.4%であり、最終条件の水分は11.6%である。CAMEL Blueの初期水分は10.2%であり、最終条件の水分は13.8%である。
【0084】
煙アクリルアミドの分析について、作成したシガレットは、実施例6〜9において処理したタバコから作られている。これらのシガレットからの煙は、Cerulean SM 450喫煙機(Cerulean, Linford Wood East, UK)を使用して収集する。機械の空気の流れは、ISO条件(ISO 3308:1991 and ISO 4387:1991)に調製する。喫煙は、35mLのパフボリューム、2秒パフ及び60秒パフ間隔(ISOとして示されている)を使用して、一つのレジメンの下で行う。シガレットは、換気が遮断されない。収集した煙は、上述のようにアクリルアミド含有量について分析する。
【0085】
実施例1
対照製剤及び乾燥時間の効果
以下の表1に記載の式を使用して作成されたロッドを、アクリルアミド生成への乾燥時間の効果を実証するために、10、15、20、30王帯40分間乾燥させる。15分乾燥させたサンプルを、全ての実験について比較のための対照として使用した。
【表1】
【0086】
15分間乾燥させた対照サンプルは、2559ng/gのアクリルアミド含有量を有する。10分までの乾燥時間の削減は、対照と比較してアクリルアミド含有量の44%の削減をもたらし、一方、20分まで乾燥時間を増やすと、対照と比較して39%アクリルアミド含有量を増加させる。乾燥時間の更なる増加は、対照と比較してアクリルアミド含有量の比較的少ない増加(又は、削減も)をもたらし、対照と比較して、30分の乾燥時間は24%の増加、40分の乾燥時間では4%のアクリルアミド含有量の減少につながった。従って、乾燥時間の増加は、最大含有量に達するまで、アクリルアミド含有量の増加につながり得、その後、更なる乾燥時間の増加は、アクリルアミド含有量の増加をもたらさず、わずかな減少につながり得る。
【0087】
実施例2
pHの効果
タバコ組成物は、水酸化ナトリウムが2.25gへ減少させる(実施例1で使用した量の半分)ことを除き、実施例1における対照サンプルと同じように処理する。マルトデキストリンは49.10gへ増加させ、米粉は49.15gへ増加させる。乾燥前のpHは7.54であり、乾燥後のpHは7.27である。アクリルアミド含有量は1250ng/gであり、これは、対照サンプルと比較して、アクリルアミドの51%の減少を表し、乾燥前はpH8.68、乾燥後はpH8.08を有する。
【0088】
別のタバコ組成物を、水酸化ナトリウムを添加しないことを除き、実施例1と同じように処理する。マルトデキストリン及び米粉をそれぞれ50.25gへ増加させる。乾燥前のpHは6.51であり、乾燥後のpHは6.56である。アクリルアミド含有量は178ng/g、対照と比較して93%の低下である。この試験は、アクリルアミド含有量は、乾燥中のpHの増加に伴って、増加する。
【0089】
実施例3
アミノ酸の効果
L−リシンHClを80mLの水中に溶解し、溶液をタバコ中へ攪拌する。溶液を、使用前に20分間タバコへ浸透させる。パスタメーカー中で、処理したタバコを他の乾燥成分と混合する。最終組成物は、以下の表2に示す配合を有する。配合物は、それ以外は実施例1の対照サンプルと同じ方法で処理する。
【表2】
【0090】
別の製剤を、L−リシンHClを7.5g(乾燥質量で2.5%)へ増加させることを除き、表2の配合と同じように調製する。マルトデキストリン、米粉及びキサンタンガムを、それぞれ44.25gへ減少させる。
【0091】
別の製剤を、7.5gのL−システイン(97%、Sigma−Aldrich, St. Louis, MO)(乾燥質量で2.5%)をL−リシンHClの代わりに使用することを除き、表2の配合と同じように調製する。マルトデキストリンを45.5gへ減少させ、キサンタンガムを42.5gへ減少させ、水酸化ナトリウムを4.50gへ減少させる。
【0092】
乾燥前のL−リシンの添加は、対照と比較して、それぞれ、アクリルアミド含有量を63%(乾燥質量L−リシンHClで1.0%)及び73%‘乾燥質量L−リシンHClで2.5%)減少させる。乾燥前のL−システインの添加は、対照と比較して、アクリルアミド含有量を74%減少させる。
【0093】
実施例4
アスパラギナーゼの効果
グラム当たり3500アスパラギナーゼ単位(ASNU)を含む市販の酵素製剤である、Acrylaway L (Novozymes North America Inc., Franklinton, NC)を使用する。酵素製剤は、約4%の全有機固体(TOS)、46%の水、50%のグリセロール、0.3%の安息香酸ナトリウム、及び約0.1%のソルビン酸カリウム(Novozymes A/S;アスペルギルス オリゼ アスパラギナーゼ遺伝子を発現するアスペルギルス オリゼ株を生成したアスパラギナーゼ酵素製剤;2006年11月9日にJECFAへ提出された書類)。
【0094】
Acrylaway Lは80mLの水で希釈し、溶液を攪拌しながらタバコへ加える。60分後。処理したタバコを、パスタメーカー内の他の乾燥成分へ加える。Acrylaway Lはグリセリンも含んでいるため、湿潤なブレンド中のグリセリンが減少する。250ppmTOSアスパラギナーゼを含む製剤を、以下の表3中に記載する。製剤は、それ以外は、実施例1における対照のサンプルと同じように処理する。
【表3】
【0095】
500ppmTOSアスパラギナーゼを含む第二の製剤もまた、AcrylawayLを1.50gへ増やし、ウェットブレンド中のグリセリンを0.78gへ減らす以外は、表3に示したのと同様の配合で調製する。
【0096】
250ppmのTOSアスパラギナーゼを含む製剤の乾燥により、対照と比較して67%のアクリルアミド含有量が減少する。500ppmのTOSアスパラギナーゼ製剤は、乾燥させると、対照と比較して69%低いアクリルアミド含有量を有する。
【0097】
アスパラギナーゼの存在は、アスパラギンをアスパラギン酸へ変換する。乾燥後の対照サンプルのアスパラギナーゼ及びアスパラギン酸の含有量は、それぞれ、0.073%及び0.041%である。二つのアスパラギナーゼ含有サンプルについての採取生成物中のアスパラギンのレベルは、分析の定量限界(0.043%)以下である。二つのアスパラギナーゼ含有サンプルのアスパラギン酸含有量は、0.13%へ増加する。
【0098】
実施例5
酸化剤の効果
タバコを、80mLの過酸化水素と混合する。混合後、タバコを、30分間華氏200°(93℃)のオーブン中へ配置する。タバコを次に、パスタメーカー中の他の乾燥成分へ加える。このサンプルの配合を、以下の表4へ示す。
【表4】
【0099】
この製剤は、乾燥時間が10分であること以外は、実施例1の対照サンプルと同様にそれ以外は処理する。最終アクリルアミド含有量は、対照サンプルよりも68%少ない。
【0100】
実施例6
比較的高レベルのアスパラギナーゼを有する2007年収穫のTurkish Samsun(Turkish SA)を、処理添加剤としてAcrylawayLアスパラギナーゼ(約507ppmのTOS追加)を用いて処理し、シガレットを上述の方法でISO条件下で処理したタバコを使用して作成し、喫煙する。煙を本明細書中に記載したように収集し、アクリルアミド含有量について試験する。アスパラギナーゼ処理したタバコを含むシガレットは、水処理したタバコを含む対照シガレットと比較して、主流煙中より少ないアクリルアミドを生成する。
【0101】
実施例7
CAMEL Blueタバコブレンドを、CAMEL Blueシガレットから取り除き、処理添加物としてAcrylawayLアスパラギナーゼで処理し(約558ppmTOS添加)、シガレットを上述した方法で、ISO条件下で、処理したタバコを使用して手作りし、喫煙する。煙を収集し、本明細書中に記載のアクリルアミド含有量について試験する。アスパラギナーゼ処理タバコを含むシガレットは、水処理タバコを含む対照シガレットと比較して、主流煙中のアクリルアミドを少なくする。減少は、対照シガレットと比較して、約62.5%である。
【0102】
実施例8
CAMEL Blueタバコブレンドを、CAMEL Blueシガレットから取り除き、処理添加剤として(約0.377gのL−リシンを加えた)、L−リシンHCl(Ajinomoto Aminoscience LLC, Raleigh, NC)で処理し、シガレットを、上述の方法で、ISO条件下で処理したタバコを使用して手作りし、喫煙する。煙を収集し、本明細書中に記載のアクリルアミド含有量について試験する。リシン処理タバコを含むシガレットは、水処理タバコを含む対照シガレットと比較して、主流煙中のアクリルアミド生成を減少させる。減少は、対照シガレットと比較して、約9.5%である。
【0103】
実施例9
CAMEL Blueタバコブレンドを、CAMEL Blueシガレットから取り除き、処理添加物として(約9.7gの過酸化水素を加えた)、3%の過酸化水素(H)溶液で処理し、シガレットを、上述の方法で、ISO条件下で処理したタバコを使用して手作りし、喫煙する。煙を収集し、本明細書中に記載のアクリルアミド含有量について試験する。処理は、水処理タバコを含む対照シガレットと比較して、主流煙中のアクリルアミドの減少をもたらさない。
【0104】
本発明の多くの修正形及び他の実施形態が、本発明が、前述の説明で示された教示の利益を有することに関連する、当業者に思い浮かぶであろう。従って、本発明は開示の特定の実施形態に限定することを意図するものではなく、修正形及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図するものである。特定の用語が明細書中で使用されているが、それらは一般的且つ説明的な意味においてのみ使用されており、なんら限定することを目的とするものではない。