特許第5931901号(P5931901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン・イソベールの特許一覧

特許5931901繊維、特に鉱物繊維用の、非還元糖と無機酸アンモニウム塩とを含むサイズ剤組成物、及び得られる製品
<>
  • 特許5931901-繊維、特に鉱物繊維用の、非還元糖と無機酸アンモニウム塩とを含むサイズ剤組成物、及び得られる製品 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931901
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】繊維、特に鉱物繊維用の、非還元糖と無機酸アンモニウム塩とを含むサイズ剤組成物、及び得られる製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/03 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   D06M15/03
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-541404(P2013-541404)
(86)(22)【出願日】2011年11月29日
(65)【公表番号】特表2014-500916(P2014-500916A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】FR2011052802
(87)【国際公開番号】WO2012072938
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】1059898
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501085706
【氏名又は名称】サン−ゴバン・イソベール
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】ジャフルノー、ボリ
(72)【発明者】
【氏名】オベール、エドゥアール
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/136106(WO,A1)
【文献】 特開2005−171466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M11/00〜15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維、特に鉱物繊維用の、ホルムアルデヒドを含まないサイズ剤組成物であって:
−少なくとも1種の非還元糖、
−少なくとも1種の無機酸アンモニウム塩と
非還元糖と前記無機酸アンモニウム塩との100重量部に基づいて計算した以下の比率での添加剤、
−0〜2部のシラン、特にアミノシラン、
−0〜20部、好ましくは4乃至15部のオイル、
−0〜20部、好ましくは0乃至10部のグリセロール、
−0〜5部のシリコーン、
−0〜30部の有機又は無機フィラーである増量剤(ただし、フェノール樹脂は除く)。
および水
から成ることを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記非還元糖が多くとも10個の糖単位を含むオリゴ糖であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、前記非還元糖が、二糖類、三糖類、四糖類又は五糖類であることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物であって、前記非還元糖が、トレハロース、イソトレハロース、スクロース、メレジトース、ゲンチアノース、ラフィノース、エルロース、ウンベリフェロース、スタキオース又はベルバスコースであり、好ましくはスクロースであることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の組成物であって、前記無機酸アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムであることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、前記無機酸アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム又はリン酸アンモニウムであり、好ましくは硫酸アンモニウムであることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の組成物であって、前記アンモニウム塩は硫酸アンモニウム又はリン酸二アンモニウムであることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の組成物であって、前記無機酸アンモニウム塩が、前記非還元糖と前記無機酸アンモニウム塩とから構成される混合物の総重量の、1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、及び有利には5〜15重量%を占めることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のサイズ剤組成物を使用してサイジングされた繊維に基づく製品。
【請求項10】
請求項9に記載の製品であって、前記繊維が鉱物繊維及び/又は有機繊維から構成されていることを特徴とする製品。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の製品であって、前記鉱物繊維が、ガラス繊維、特にはE、C、R若しくはAR(耐アルカリ性)ガラスの繊維、岩石繊維、特には玄武岩の繊維であり、これらの繊維が、96重量%以上の、シリカ繊維、又は金属若しくは準金属の少なくとも1種の酸化物、窒化物若しくは炭化物に基づく、又はこれらの化合物の混合物に基づくセラミック繊維を含むことを特徴とする製品。
【請求項12】
請求項9〜11の何れか1項に記載の製品であって、前記有機繊維が、合成繊維、例えば、オレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンに基づく、ポリアルキレンテレフタラート、例えばポリエチレンテレフタラートに基づく、若しくはポリエステルに基づく繊維であるか、又は天然繊維、例えば、植物繊維、例えば木材、セルロース、綿、椰子、サイザル、麻又は亜麻の繊維、及び動物繊維、例えば羊毛であることを特徴とする製品。
【請求項13】
請求項9〜11の何れか1項に記載の製品であって、ミネラルウールに基づく防音及び/又は断熱製品であることを特徴とする製品。
【請求項14】
請求項9〜11の何れか1項に記載の製品であって、鉱物繊維のベールであることを特徴とする製品。
【請求項15】
請求項13に記載の防音及び/又は断熱製品、又は請求項14に記載のベールの製造方法であって、前記ミネラルウール又は前記鉱物繊維を製造し、サイズ剤組成物を前記ウール又は前記繊維に塗布し、前記ウール又は前記繊維を前記サイズ剤の架橋と不融性バインダの形成とを可能にする温度で処理し、請求項1〜8の何れか1項に記載のサイズ剤組成物を使用することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドを含まないバインダによって結合される繊維、特には鉱物繊維に基づく製品の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、繊維がミネラルウール、特にはガラス又は岩石(roche)のものの形態にある断熱及び/又は防音製品に関する。
【0003】
本発明の主題は、例えば、架橋してバインダを形成することができるサイズ剤組成物であって、少なくとも1種の非還元糖と少なくとも1種の無機酸アンモニウム塩とを含むサイズ剤組成物、断熱及び/又は防音製品の製造方法、及びそれから得られる製品とに関する。
【0004】
ミネラルウールをベースにする断熱製品の製造は、一般に、ウール自体の製造の段階を含み、これは、様々なプロセス、例えば内部遠心分離又は外部遠心分離による既知の繊維化の技術に従って行うことができる。
【0005】
内部遠心分離は溶融材料(一般にガラスまたは岩石)を複数の小さな穴を含む遠心装置に導入することにあり、この材料は、遠心力の作用を受けてこの装置の周壁に向けて押し付けられて、そこから単繊維の形態で放出される。遠心装置を出て行くと、単繊維は延伸されて、高温及び高速のガス流によって受け取り部材へと運ばれ、繊維(すなわち、ミネラルウール)のウェブを形成する。
【0006】
一方、外部遠心分離は、溶融材料をローターとして知られている回転部材の外周表面上に流すことにあり、ここから前記材料が遠心力の作用を受けて射出される。また、ガス流によって延伸する手段および受け取り部材上で収集する手段も提供される。
【0007】
繊維を互いにまとめて、ウェブが凝集力を有することを可能にするために、遠心装置の出口と受け取り部材との間の経路上で、熱硬化性樹脂を含有するサイズ剤組成物が繊維に塗布される。サイズ剤でコーティングされた繊維ウェブは、一般に100℃を超える温度で熱処理に供され、樹脂の重縮合を起こし、それにより特定の性質、特に寸法安定性、引張り強さ、圧縮後の厚さ回復率および均一な色を有する断熱および/または防音製品を得る。
【0008】
ミネラルウール上に射出するサイズ剤組成物は、一般に、熱硬化性樹脂と、添加剤、例えば樹脂の架橋のための触媒、接着促進用のシラン、防塵用の鉱油などとを含む水溶液の形態で提供される。サイズ剤組成物は、一般に、スプレーにより繊維に塗布される。
【0009】
サイズ剤組成物の性質は、樹脂の特性に大きく依存する。塗布の観点から、サイズ剤組成物は、優れたスプレー適性を示すことと、繊維を効率的に結合させるために繊維の表面に堆積できることとが必要である。
【0010】
樹脂は、サイズ剤組成物を形成するのに使用する前の所定の期間中は安定であることが必要であり、この組成物は、一般に、樹脂と上述の添加剤とを混合することによって使用時に調製される。
【0011】
規制レベルでは、樹脂は、無公害性であるとみなされることが必要である、すなわち、それらは、ヒトの健康又は環境に対して害があり得る化合物を可能な限り少量しか含まず、サイジング段階中又はそれ以降にこの化合物を可能限り少量しか発生させないことが必要である。
【0012】
もっともよく使用されている熱硬化性樹脂は、レゾール類に属するフェノール樹脂である。上述の熱的条件下でのそれらの優れた架橋性に加えて、これらの樹脂は、水溶性であり、鉱物繊維、特にガラス繊維に対する優れた親和性を有し、比較的安価である。
【0013】
これらのレゾールは、フェノールとホルムアルデヒドとの間の反応を促進し且つ樹脂中の残留フェノールのレベルを下げるために、塩基性触媒の存在下における、1より大きなアルデヒド/フェノールのモル比での、フェノールとアルデヒドとの縮合によって得られる。フェノールとホルムアルデヒドとの間の縮合反応は、希釈性を低減させる長くて比較的水に不溶な鎖の形成を避けるために、モノマーの凝縮度を抑えながら行われる。結果として、この樹脂は、幾らかの割合の未反応モノマー、詳細にはホルムアルデヒドを含み、ホルムアルデヒドの存在はその既知の有害性のせいで望ましくない。
【0014】
この理由のために、レゾール系樹脂は一般に尿素で処理され、尿素は、遊離ホルムアルデヒドを不揮発性尿素−ホルムアルデヒド縮合物の形態でトラップすることによりそれと反応する。更に、樹脂中の尿素の存在は、その低いコストの結果として、所定の経済的利点をもたらす。なぜなら、樹脂の動作品質に悪影響を及ぼさずに、特には最終製品の機械的性質に害を与えずに、それを比較的大量に導入することができ、樹脂の総コストを大きく下げることができるからである。
【0015】
しかしながら、樹脂の架橋を達成するためにウェブが曝される温度条件下では、尿素−ホルムアルデヒド縮合物は安定ではないことが知られている。それらは分解してホルムアルデヒド及び尿素に戻り、次にこれは少なくとも部分的に分解してアンモニアを与え、これは工場の雰囲気中に放出される。
【0016】
さらに厳しくなっている環境保護に関する規制は、断熱製品の製造業者に、望ましくない排出物、詳細にはホルムアルデヒドのレベルを更に低くすることができる解決策を探すことを強いている。
【0017】
サイズ剤組成物においてレゾールを交換する解決策が知られている。
【0018】
第1の解決策は、カルボン酸ポリマー、特にアクリル酸ポリマーの使用に基づく。
【0019】
US 5 340 868では、サイズ剤が、ポリカルボン酸ポリマーと、β−ヒドロキシアミドと、少なくとも三官能性の低分子量カルボン酸とを含んでいる。
【0020】
ポリカルボン酸ポリマーとポリオールと触媒とを含み、この触媒が、亜リン酸含有化合物(US 5 318 990、US 5 661 213、US 6 331 350、US 2003/0008978)、フルオロホウ酸塩(US 5 977 232)、又はシアナミド、ジシアナミド若しくはシアノグアニジン(US 5 932 689)であり得る、他のサイズ剤組成物が提供されてきた。
【0021】
ポリカルボン酸ポリマーに及びポリオールに基づくサイズ剤組成物は、カチオン性、両性若しくは非イオン性界面活性剤(US 2002/0188055)、シランタイプのカップリング剤(US 2004/0002567)、又はコバインダとしてのデキストリン(US 2005/0215153)を更に含むことができる。
【0022】
少なくとも2つのヒドロキシル基とポリカルボン酸ポリマーとを含むアルカノールアミン(US 6 071 994、US 6 099 773、US 6 146 746)を、コポリマー(US 6 299 936)と組み合わせて含むサイズ剤組成物も説明されている。
【0023】
レゾールが交換される第2の解決策は、サッカリドとポリカルボン酸との組み合わせに基づく。
【0024】
US 5 895 804には、ミネラルウールのためのサイズ剤として使用することができる、熱架橋性多糖類に基づく接着剤組成物が記載されている。この組み合わせは、少なくとも2つのカルボン酸官能基及び少なくとも1000に等しい分子量を有するポリカルボン酸ポリマーと、少なくとも10000に等しい分子量を有する糖類とを含む。
【0025】
WO 2009/080938では、サイズ剤組成物は、単糖類及び/又は多糖類と、1000未満の分子量を有する有機ポリカルボン酸とを含んでいる。
【0026】
メイラード反応生成物を含む、特には還元糖、カルボン酸及びアンモニアを組み合わせた、ホルムアルデヒドを含まない水性サイズ剤組成物(WO 2007/014236)が知られている。WO 2009/019232及びWO 2009/019235では、カルボン酸の代わりに、無機塩、特にアンモニウム塩から得られる酸前駆体を用いることが提案されており、これは、アンモニアの全て又はその一部を置換することができるという追加の利点を有する。
【0027】
繊維、特には鉱物繊維に基づく製品を製造することを可能にし、特に湿った環境においてエージングに対する優れた耐性を示す、ホルムアルデヒドを含まないサイズ剤組成物が必要とされている。
【0028】
本発明の狙いは、繊維、特には鉱物繊維、より詳細にはガラス又は岩石からの繊維用のサイズ剤組成物であって、上述の不利益を解消する組成物を提供することにある。
【0029】
本発明に係るサイズ剤組成物は:
−少なくとも1種の非還元糖と、
−少なくとも1種の無機酸アンモニウム塩と
を含む。
【0030】
表現「非還元糖」は、通常の意味に解釈されるべきであり、すなわちそれは幾つかの糖単位から構成される糖類に関するものであり、糖単位のヘミアセタールOH基を支えている(porteur)炭素1が結合に関与している。
【0031】
本発明に係る非還元糖は、多くとも10個の糖単位を含む非還元オリゴ糖である。
【0032】
このような非還元糖の例としては、二糖類、例えばトレハロース、イソトレハロース、スクロース及びイソスクロース、三糖類、例えばメレジトース、ゲンチアノース、ラフィノース、エルロース及びウンベリフェロース、四糖類、例えばスタキオース、及び五糖類、例えばベルバスコースを挙げることができる。
【0033】
好ましくはスクロース及びトレハロースであり、より好ましくはスクロースである。
【0034】
無機酸アンモニウム塩は、熱の影響下で非還元糖と反応し、最終的なバインダを構成するポリマーネットワークを形成する。このようにして形成したポリマーネットワークは、特にはミネラルウール中の繊維の接点において、鉱物繊維間の結合を確立することを可能にし、これは、最終製品に、この製品の開封後に優れた厚さ回復率を提供することができるある程度の「弾性」を与える。
【0035】
無機アンモニウム塩は、アンモニウム硫酸塩、詳細には、硫酸水素アンモニウムNH4HSO4及び硫酸アンモニウム(NH42SO4、アンモニウムリン酸塩、詳細には、リン酸一アンモニウムNH42PO4、リン酸二アンモニウム(NH42PO4及びリン酸アンモニウム(NH43PO4、硝酸アンモニウム、並びに炭酸アンモニウム、詳細には重炭酸アンモニウムNH4HCO3及び炭酸アンモニウム(NH42CO3から選択される。
【0036】
無機酸アンモニウム塩は、好ましくは硫酸塩及びリン酸塩から選択され、有利には硫酸塩である。
【0037】
サイズ剤組成物では、無機酸アンモニウム塩は、非還元糖と無機酸アンモニウム塩とから構成される混合物の総重量の、1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、及び有利には5〜15重量%を占める。
【0038】
サイズ剤組成物は、1000未満のモル質量を有する有機ポリカルボン酸を何ら含まず、慨すると有機ポリカルボン酸を全く含まない。
【0039】
サイズ剤組成物は、上述の化合物に加えて、非還元糖と無機酸アンモニウム塩との100重量部に基づいて計算した以下の比率で、以下に示す従来の添加剤を含むことができる:
−0〜2部のシラン、特にアミノシラン、
−0〜20部、好ましくは4乃至15部のオイル、
−0〜20部、好ましくは0乃至10部のグリセロール、
−0〜5部のシリコーン、
−0〜30部の「増量剤」。
【0040】
添加剤の役割は知られているが、ここで手短に述べる:シランは、繊維とバインダとの間のカップリング剤であると共に、アンチエージング剤としても働く;オイルは、防塵性及び疎水性の試薬である;グリセロールは、可塑剤として働き、サイズ剤組成物のプレゲルを防ぐことを可能にする;シリコーンは、断熱製品による水の吸収を低減させる役割を有する疎水性物質である;「増量剤」は、有機又は無機のフィラーであり、サイズ剤組成物中に可溶か又は分散可能であり、特に、サイズ剤組成物のコストを下げることを可能にする。
【0041】
サイズ剤組成物は、使用する無機酸アンモニウム塩の性質に応じて多様であるpHを示し、一般には6〜9であり、有利には7〜8である。
【0042】
本発明に係るサイズ剤組成物は、鉱物繊維若しくは有機繊維であり得る繊維に、又は鉱物繊維及び有機繊維の混合物に塗布することを目的としている。
【0043】
先に述べたように、鉱物繊維は、ガラス繊維、特にはE、C、R若しくはAR(耐アルカリ性)ガラスの繊維、又は岩石繊維、特には玄武岩(又は珪灰石)の繊維であり得る。また、これらの繊維は、96重量%を超える、シリカ繊維と、金属若しくは準金属の少なくとも1種の酸化物、窒化物若しくは炭化物に基づく、又はこれらの化合物の組み合わせに基づく、特にはアルミニウム、ジルコニウム、チタン、ホウ素又はイットリウムの少なくとも1種の酸化物、窒化物若しくは炭化物に基づくセラミック繊維とを含む繊維であり得る。
【0044】
有機繊維は、合成繊維又は天然繊維であり得る。
【0045】
合成繊維の例としては、オレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンに基づく、ポリアルキレンテレフタラート、例えばポリエチレンテレフタラートに基づく、又はポリエステルに基づく繊維を挙げることができる。
【0046】
天然繊維の例としては、植物繊維、特には、木材、セルロース、綿、椰子、サイザル、麻又は亜麻の繊維、及び動物繊維、特に羊毛を挙げることができる。
【0047】
先に述べたように、サイズ剤組成物は、より詳細には、ミネラルウールに基づく断熱及び/又は防音製品のためのサイズ剤組成物として使用される。
【0048】
従来、サイズ剤組成物は、繊維形成装置の出口において及び鉱物繊維が受け取り部材において繊維のウェブの形態で収集される前に鉱物繊維に塗布され、この繊維のウェブは、続いて、サイズ剤の架橋及び不融性(infusible)バインダの形成を可能にする温度で処理される。本発明に係るサイズ剤の架橋は、約100〜200℃の温度、一般的には従来のホルムアルデヒド−フェノール樹脂のそれと同等の温度、特には110℃以上の温度、このましくは170以下の温度で起こる。
【0049】
この組成物を使用してサイジングした繊維に基づく製品、特にはこれらのサイジングされた繊維から得られた防音及び/又は断熱製品も、本発明の主題を構成する。
【0050】
これらの製品は、一般に、ガラス又は岩石のミネラルウールに基づくマット、フェルト、パネル、ブロック、シェル又は他の成型された形状の形態で提供される。
【0051】
また、サイズ剤組成物は、特には鉱物繊維、例えばガラス繊維又は岩石繊維に基づく、被覆された又は含浸された織物及びベール(「不織布」としても知られている)を製造するのにも使用できる。
【0052】
鉱物繊維のベースは、特に、ミネラルウールに基づく又は発砲体に基づく断熱及び/又は防音製品の表面被覆として使用される。
【0053】
本発明のもう1つの主題は、鉱物繊維に基づく断熱及び/又は防音製品、又は鉱物繊維のベールの製造方法であって、それによると、ミネラルウール又は鉱物繊維を製造し、本発明に係る組成物を前記ウール又は繊維に塗布し、前記ウール又は前記繊維を、サイズ剤の架橋及び不融性バインダの形成を可能にする温度で、例えば上記熱条件下で処理する。
【0054】
サイズ剤は、任意の適切な手段によって、例えば、吹付(projection)、スプレー、噴霧(atomisation)、コーティング又は含浸によって塗布することができる。
【0055】
以下の例は、本発明を例証することを可能にするが、それを限定するものではない。
【0056】
これらの例では、以下について測定を行っている:
−ポリマー材料の粘弾性挙動を特徴付けることを可能にする動的機械分析(DMA)法による、架橋開始温度(Tc)及び架橋速度(R)。手順は以下の通りである:ワットマン紙のサンプルにサイズ剤組成物(およそ40%の固体有機物の含有量)を含浸させ、続いて、2つの留め具の間に水平に固定した。適用した張力の関数として応力を測定する装置を備えた振動部材を、サンプルの上面に配置する。この装置は、弾性係数E’を計算することを可能にする。サンプルを、20から250℃の範囲内にある温度まで、4℃/分の速度で加熱する。温度(単位℃)の関数としての弾性係数E’(単位MPa)の変化の曲線を測定からプロットし、この曲線の概略的な外観を図1に示す。架橋の開始(Tc)についての℃で表す温度の値、及び架橋速度に対応したMPa/℃で表す勾配が、この曲線から決定される。
【0057】
−25℃での100s-1のせん断によるプレート/プレート回転タイプのレオメータを使用する、mPa.sで表される粘度。サンプルは、固形分濃度が30重量%である。
【0058】
−ガラス基板上での、30重量%の固形分を含むサイズ剤組成物の接触角。
【0059】
−引張試験装置の一端に取り付けられて40mm/分の連続伸長に供された、5cm×21cmのベールサンプルの破断応力。破断応力は、N/5cmで表される。
【0060】
破断応力は、製造後(初期)と、サンプルを80℃の水中での促進エージング条件下で10分間処理した後とに測定した。結果は、以下に等しい残率で表される:
(処理後の破断応力/初期の破断応力)×100。
【0061】
−断熱製品から打ち抜きによって切り出されたサンプルでの、基準ASTM C686−71Tに従う引張強度。サンプルは、122mmの長さ、46mmの幅、38mmに等しい切出し物の外縁での曲率半径及び12.5mmに等しい切出し物の内縁での曲率半径を有するトーラスの形状を有する。
【0062】
サンプルを、試験機の2つの円筒形のマンドレルの間に配置し、これらの一方は可動であり、一定の速度で動かされる。サンプルの破断力F(単位ニュートン)を測定し、破断力Fのサンプル重量に対する比によって定義される引張強度TSを算出する。
【0063】
引張強度を、製造後(初期引張強さ)及び105℃の温度で100%の相対湿度下でのオートクレーブ内での15分間の促進エージング後(TS15)に測定する。
【0064】
−断熱製品の初期厚さ並びに、4.8/1に等しい圧縮度(公称厚さの圧縮下での厚さに対する比として定義される)での1時間及び24時間に亘る圧縮後の厚さ。厚さの測定は、製品の優れた寸法挙動を評価することを可能にする。
【0065】
−W/(m×°K)で表される、基準EN13162に従う熱伝導係数λ。
【0066】
例1〜20
a)第1の系列のサイズ剤組成物を調製し、これらの組成物は、重量部で表した、表1に示す成分を含む。
【0067】
これらのサイズ剤組成物を、成分が完全に溶解するまで撹拌しながら、水を入れた容器に非還元糖又は還元糖と無機酸アンモニウム塩とを連続的に導入することによって調製する。
【0068】
例1及び例4のサイズ剤組成物は、それぞれ比較例7及び8よりも高い架橋速度を示す。
【0069】
例1〜6は、比較例7及び8に比べると低い粘性及び接触角値を示し、これは鉱物繊維への、特にスプレーによる優れた適用を可能にする。
【0070】
b)第2の系列のサイズ剤組成物を調製し、これらの組成物は、重量部で表した、表2に示す成分を含む。
【0071】
これらのサイズ剤組成物を第1の系列について述べた条件下で調製する。
【0072】
−試験1
ガラス繊維のベール(ワットマンGF/A、50g/m2;Whatmanによって販売されている)を前記サイズ剤組成物(13%の固形分)中に2分間浸漬させ、続いて、過剰なサイズ剤を吸引により除去する。続いて、ベールをオーブン内で200℃で135秒間にわたって処理する。結局、ベールは、45重量%の架橋されたバインダを含んでいる。引張強度及び残率の値を表2に示す。
【0073】
−試験2
ガラス繊維のベール(ワットマンGF/A、50g/m2;Whatmanによって販売されている)を前記サイズ剤組成物(13%の固形分)中に2分間浸漬させ、過剰なサイズ剤を吸引により除去する。続いて、ベールをオーブン内で200℃で5分間にわたって処理する。結局、ベールは、45重量%の架橋バインダを含んでいる。
【0074】
ベールを60℃の水中に3時間に亘って浸漬し、その後60℃のオーブン内で1時間に亘って乾燥させる。ベールに残存した水不溶性の架橋バインダの部分(%として)は、水中での浸漬前後での秤量によって測定される。結果は表2にある。
【0075】
一方では例3、2及び9、並びに他方では例6及び5は、対応する比較例11〜14、並びに17及び18よりも高い初期引張強度を有する。
【0076】
硫酸アンモニウムを含む例3、2、9及び10は、比較例11〜14よりも高い残率を有する。硫酸二アンモニウムを高い割合で含む例15及び16は、比較例19及び20よりも大きな湿潤エージング強度を有する。
【0077】
水中での処理の後にフィルター上に残ったバインダの割合は、本発明に係る例(3、2、9及び10、並びに6、5、15及び16)では、各々の比較例(11〜14及び17〜20)よりも高かった。
【0078】
試験1及び2は、本発明に係るサイズ剤組成物が湿った環境における促進エージング条件下でのベールの繊維を効率的に結合させる能力を有することを証明する。サイズ剤組成物の適用は、ベールに限定されるものではなく、断熱及び/又は防音製品としての適用のために、先に述べた他の繊維製品、特にはファブリックス及び繊維がミネラルウールの形態で提供されている製品まで拡張できる。
【0079】
例21及び22
これらの例は、工業規模のラインでの断熱製品の製造を例証する。
【0080】
以下の添加剤を添加した例1〜7(比較)のサイズ剤組成物を用いる:100重量部の糖及び硫酸アンモニウム:1部のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン及び8部の鉱油。これらのサイズ剤組成物は、それぞれ例21及び22(比較)を構成する。
【0081】
ガラスウールを、内部遠心技術により、パイロット規模のラインで製造する。ここでは、溶融組成物を受け取るためのチャンバと複数の穴が貫通している周囲のバンドとを形成しているバスケットを含む遠心ディスクと呼ばれるツールによって溶融ガラス組成物を繊維に変換する:このディスクを垂直に位置するその対称軸周りに回転させ、組成物を遠心力の作用を受けて前記穴を通して放出し、前記穴から出ていく材料を延伸ガス流の補助で繊維へと延伸する。
【0082】
従来通りに、サイズ剤スプレーリングを繊維化ディスクの下に配置して、形成したばかりのガラスウール一面に均一にサイズ剤組成物を分配する。
【0083】
このようにしてサイジングされたミネラルウールを、2.4mmの幅を有し、ミネラルウールをコンベアの表面上でウェブの形態に保つ抽出ボックスを備えたベルトコンベア上で集める。ウェブは270℃に維持されたオーブンを連続的に通り抜け、ここでサイズ剤の成分が重合しバインダを生じさせる。最終的な断熱製品は17.5kg/m3の公称密度を有する。
【0084】
断熱製品は以下の性質を示す。
【表A】
【0085】
例21に係る断熱製品は、比較例22のそれよりも高い初期引張強度を示す。例21のエージング後の引張強度もより高く、引張強度の損失は、比較例22では10%であるのに対し、4%である。
【0086】
加えて、例21に係る断熱製品は、比較例22よりもわずかに高められた初期厚さを有する。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
図1