特許第5931904号(P5931904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5931904タバコ由来材料を抽出するためのタバコ分離方法、および関連の抽出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931904
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】タバコ由来材料を抽出するためのタバコ分離方法、および関連の抽出システム
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/24 20060101AFI20160526BHJP
   A24B 15/30 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   A24B15/24
   A24B15/30
【請求項の数】48
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-542097(P2013-542097)
(86)(22)【出願日】2011年11月29日
(65)【公表番号】特表2013-544522(P2013-544522A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011062360
(87)【国際公開番号】WO2012074985
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月11日
(31)【優先権主張番号】13/072,019
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/957,821
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594112886
【氏名又は名称】アール・ジエイ・レイノルズ・タバコ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モートン,ジヨシユア・デイー
(72)【発明者】
【氏名】ヒユーム,ステイーブン・デイー
(72)【発明者】
【氏名】ブラツチヤー,バリー
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04347324(US,A)
【文献】 特表2001−518072(JP,A)
【文献】 米国特許第02609326(US,A)
【文献】 米国特許第04268632(US,A)
【文献】 特表2002−506080(JP,A)
【文献】 米国特許第04289147(US,A)
【文献】 CHONG W. CHANG,ISOLATION AND PURIFICATION OF LEAF AND STARCH COMPONENTS,PLANT PHYSIOLOGY,AMERICAN SOCIETY OF PLANT PHYSIOLOGISTS,1979年,V64,P833-836
【文献】 NICHOLAS.C. CARPITA,EXTRACTION OF STARCH BY DIMETHYL SULFOXIDE AND QUANTITATION BY ENZYMATIC ASSAY,ANALYTICAL BIOCHEMISTRY,ACADEMIC PRESS INC,1987年,V161,P132-139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 1/00−15/42
C08B 1/00−37/18
CiNii
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のリン酸塩および1種以上の抗酸化剤を含む抽出溶媒の存在下で植物材料をホモジナイズして植物液体成分と植物パルプ成分との混和物を形成させることにより、植物液体成分が6.5〜8.0のpHで提供されること;
植物パルプ成分から植物液体成分を採取すること;ならびに
植物液体成分を固体画分および可溶性画分に分離すること、
を含む、植物材料から植物由来成分を抽出する方法。
【請求項2】
前記ホモジナイズするステップが、植物材料を粉砕することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
植物液体成分が、7.0〜7.4のpHで提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
植物液体成分が、7.2のpHで提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抽出溶媒が、緩衝溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抽出溶媒が、リン酸塩、重亜硫酸塩含有化合物、メタ重亜硫酸塩含有化合物、第IおよびII族のハロゲン化物塩、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抽出溶媒が、二塩基性リン酸ナトリウム水和物、一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、塩化ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抽出溶媒が、洗剤、界面活性剤、抗酸化剤、アミノ酸、緩衝剤、蛋白質抽出剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
抽出溶媒が、抗酸化剤および緩衝剤を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抽出溶媒が、蛋白質抽出剤を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
植物材料が、タバコ植物材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
植物材料と抽出溶媒とが、植物材料1kgあたり抽出溶媒0.1L〜5Lの比で混和される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
植物材料と抽出溶媒とが、植物材料1kgあたり抽出溶媒0.3L〜0.7Lの比で混和される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
固体画分を10重量%の水分量まで乾燥させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
乾燥された固体画分を磨砕して、所望の粒径を達成させることを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
磨砕された固体画分が、50μm〜1mmの平均粒径を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
磨砕された固体画分が、250μm〜750μmの平均粒径を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
固体画分から植物由来デンプンを単離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記単離ステップが、
植物由来デンプンを溶媒液体混合物と混和すること;
液体混合物を加熱すること;および
液体混合物をろ過して植物由来デンプンを単離するこ
含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
植物由来デンプンを乾燥させることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
植物由来デンプンを放射線照射することを更に含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
液体植物成分を固体画分および可溶性画分に分離する前記ステップが、液体成分を遠心分離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
液体植物成分が連続して遠心分離機に供給されながら、遠心分離が実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
液体植物成分の遠心分離機への供給流速が、5〜25L/分である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
遠心分離が、1,000rpm〜6,000rpmの条件下で実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
遠心分離が、500×g〜2,500×gの条件下で実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
植物パルプ成分を乾燥させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
乾燥された植物パルプ成分から、ペクチン、セルロース、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の材料を抽出することを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
可溶性画分を液体透過成分および濃縮成分に分離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記分離が、可溶性画分をろ過することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ろ過の後、濃縮成分が、0.1ミクロンよりも大きなサイズを有する可溶性画分から得られた粒子を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
濃縮成分を乾燥させて濃縮固体材料を形成させることを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
乾燥された濃縮固体を磨砕して微粒子を形成させることを更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
濃縮成分が、不溶性蛋白質、大型蛋白質、細胞破片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の植物由来成分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
液体透過成分をリテンテート成分(retentate component)および付随的液体透過成分に分離することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
リテンテート成分が、可溶性蛋白質成分を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
付随的液体透過成分が、糖、ペプチド、アルカロイド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記分離ステップが、1kDa限外ろ過システムでろ過することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
タバコ由来デンプン材料の製造方法であって、前記タバコ由来デンプン材料を請求項1に記載の方法に従って抽出することを含む、前記製造方法
【請求項40】
総重量に基づいて、少なくとも35乾重量%のタバコ由来デンプン材料と;少なくとも10乾重量%の食物繊維成分と;少なくとも10乾重量%の灰成分と;少なくとも乾重量%の糖成分と、を含む結合剤の製造方法であって、前記タバコ由来デンプン材料を請求項1に記載の方法に従って製造することを含む、前記製造方法
【請求項41】
1種以上の抗酸化剤が、チオール、ポリフェノール、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、尿酸、尿酸塩、グルタチオン、トコフェロール、トコトリエノール、没食子酸プロピル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
乾重量ベースで固体画分の少なくとも40重量%が、植物由来デンプン成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
1種以上の植物パルプ成分、固体画分、および可溶性画分を更に処理して、それから植物由来成分を単離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記更に処理することが、固体画分を10重量%未満の水分量まで乾燥させること、および乾燥された固体画分を磨砕して、50μm〜1mmの平均粒径を有する植物由来デンプン粒子を提供すること、を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記更に処理することが、植物パルプ成分を乾燥させること、ならびにそれからペクチン、セルロース、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を抽出すること、を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記更に処理することが、可溶性画分を、可溶性蛋白質成分、糖成分、ペプチド成分、アルカロイド成分、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む液体透過成分と;不溶性蛋白質、大型蛋白質、細胞破片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む濃縮成分と、に分離することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
液体透過成分を、可溶性蛋白質成分を含むリテンテート成分と;糖、ペプチド、アルカロイド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む付随的液体透過成分と、に分離することを更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
植物液体成分および植物パルプ成分を形成させるために植物材料を破壊するように構成されていて、更に破壊の際に抽出溶媒を植物材料と接触させるために前記溶媒を受け取るように構成されているホモジナイズ装置と;
植物液体成分をデンプン含有固体画分および可溶性画分に分離するように構成された遠心分離装置と;
デンプン含有固体画分を乾燥させて10重量%未満の水分量を有するデンプン含有固体成分を形成させるように構成された乾燥装置と;
デンプン含有固体成分を磨砕して1μm〜1mmの平均粒径を有する微粒子デンプンを形成させるように構成された磨砕装置と、
を含む、植物材料からデンプンを得るシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、特にタバコ植物材料の1種以上の成分を抽出するための、植物材料からの成分の抽出に関する。本開示は更に、様々な製品、特にタバコから生成されたもしくは得られた製品、またはその他の方法でタバコを取り込んだ製品に有用であり、ヒトの消費を意図した植物由来成分に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコ、葉巻、およびパイプは、タバコを様々な形態で使用する、人気のある喫煙用品である。そのような喫煙用品は、タバコを加熱または燃焼して喫煙者により吸入され得るエアロゾル(例えば、煙)を発生することにより用いられる。タバコは、いわゆる「無煙」形態で用いられる場合もある。特に人気のある無煙タバコ製品は、処理されたタバコまたはタバコ含有配合剤の幾つかの形態をユーザの口に挿入することにより用いられる。例えば、Schwartzへの米国特許第1,376,586号;Leviへの同第3,696,917号;Pittmanらへの同第4,513,756号;Sensabaugh,Jr.らへの同第4,528,993号;Storyらへの同第4,624,269号;Tibbettsへの同第4,991,599号;Townsendへの同第4,987,907号;Sprinkle,IIIらへの同第5,092,352号;Whiteらへの同第5,387,416号;Williamsへの同第6,668,839号;Williamsへの同第6,834,654号;Atchleyらへの同第6,953,040号;Atchleyらへの同第7,032,601号;およびAtchleyらへの同第7,694,686号;Williamsへの米国特許出願公開第2004/0020503号;Quinterらへの同第2005/0115580号;Stricklandらへの同第2005/0244521号;Stricklandらへの同第2006/0191548号;Holton,Jr.らへの同第2007/0062549号;Holton,Jr.らへの同第2007/0186941号;Stricklandらへの同第2007/0186942号;Dubeらへの同第2008/0029110号;Robinsonらへの同第2008/0029116号;Muaらへの同第2008/0029117号;Robinsonらへの同第2008/0173317号;Engstromらへの同第2008/0196730号;Neilsenらへの同第2008/0209586号;Crawfordらへの同第2008/0305216;Essenらへの同第2009/0065013号;Kumarらへの同第2009/0293889号;およびGaoらへの同第2010/0291245号;ArnarpらへのPCT国際公開第04/095959号;およびAtchleyへの同第2010/132444 A2号;ならびに2009年12月15日に出願されたMuaらへの米国特許出願第12/638,394号において示された無煙タバコ配合剤のタイプ、成分、および処理方法を参照されたい(それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0003】
市販される例示的無煙タバコ製品としては、R.J.Reynolds Tobacco CompanyによるCAMEL Snus、CAMEL Orbs、CAMEL StripsおよびCAMEL Sticks;American Snuff Company,LLCによるGRIZZLY湿性タバコ、KODIAK湿性タバコ、LEVI GARRETTルーズタバコおよびTAYLOR'S PRIDEルーズタバコ;Swisher International,Inc.によるKAYAK湿性嗅ぎタバコおよびCHATTANOOGA CHEW噛みタバコ;Pinkerton Tobacco Co.LPによるREDMAN噛みタバコ; U.S.Smokeless Tobacco CompanyによるCOPENHAGEN湿性タバコ、COPENHAGEN Pouches、SKOAL Bandits、SKOAL Pouches、RED SEALロングカットおよびREVEL Mint Tobacco Packs;ならびにPhilip Morris USAによるMARLBORO SnusおよびTabokaと称されるものが挙げられる。
【0004】
幾つかの例において、無煙タバコ組成物または製品中で用いられるタバコ材料の少なくとも一部は、抽出物の形態を有することができる。タバコ抽出物は、様々な形態で用いることができる。例えばタバコ抽出物は、本質的に無溶媒形態または液体形態で単離することができる。タバコの成分を抽出するための例示的技術は、Fioreへの米国特許第4,144,895号;Osborne,Jr.らへの同第4,150,677号;Reidへの同第4,267,847号;Wildmanらへの同第4,289,147号;Brummerらへの同第4,351,346号;Brummerらへの同第4,359,059号;Mullerへの同第4,506,682号;Keritsisへの同第4,589,428号;Sogaらへの同第4,605,016号;Pouloseらへの同第4,716,911号;Niven,Jr.らへの同第4,727,889号;Bernasekらへの同第4,887,618号;Clappらへの同第4,941,484号;Faggらへの同第4,967,771号;Robertsらへの同第4,986,286号;Faggらへの同第5,005,593号;Grubbsらへの同第5,018,540号;Whiteらへの同第5,060,669号;Faggへの同第5,065,775号;Whiteらへの同第5,074,319号;Whiteらへの同第5,099,862号;Whiteらへの同第5,121,757号;Faggへの同第5,131,414号;Munozらへの同第5,131,415号;Faggへの同第5,148,819号;Kramerへの同第5,197,494号;Smithらへの同第5,230,354号;Faggへの同第5,234,008号;Smithへの同第5,243,999号;Raymondらへの同第5,301,694号;Gonzalez-Parraらへの同第5,318,050号;Teagueへの同第5,343,879号;Newtonへの同第5,360,022号;Clappらへの同第5,435,325号;Brinkleyらへの同第5,445,169号;Lauterbachへの同第6,131,584号;Turpenらへの同第6,284,875号;Kierulffらへの同第6,298,859号;Muaらへの同第6,772,767号;Beritらへの同第6,817,970号;Bratcherらへの同第6,906,172号;Turpenらへの同第7,034,128号;Bratcherらへの同第7,048,211号;およびThompsonへの同第7,337,782号に記載されており、それらの全てが、参照により本明細書に組み入れられる。
【0005】
製品、特にタバコ関連製品、例えば無煙タバコ製品において用いられる植物材料、例えばタバコ植物材料から成分を抽出する方法を提供すること、および製品、例えばタバコ関連製品における使用に適した植物由来成分を分離するシステムを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第1,376,586号明細書
【特許文献2】米国特許第3,696,917号明細書
【特許文献3】米国特許第4,513,756号明細書
【特許文献4】米国特許第4,528,993号明細書
【特許文献5】米国特許第4,624,269号明細書
【特許文献6】米国特許第4,991,599号明細書
【特許文献7】米国特許第4,987,907号明細書
【特許文献8】米国特許第5,092,352号明細書
【特許文献9】米国特許第5,387,416号明細書
【特許文献10】米国特許第6,668,839号明細書
【特許文献11】米国特許第6,834,654号明細書
【特許文献12】米国特許第6,953,040号明細書
【特許文献13】米国特許第7,032,601号明細書
【特許文献14】米国特許第7,694,686号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2004/0020503号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2005/0115580号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2005/0244521号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2006/0191548号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0062549号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2007/0186941号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2007/0186942号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2008/0029110号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2008/0029116号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2008/0029117号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2008/0173317号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2008/0196730号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2008/0209586号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2008/0305216号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2009/0065013号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2009/0293889号明細書
【特許文献31】米国特許出願公開第2010/0291245号明細書
【特許文献32】国際公開第2004/095959号
【特許文献33】国際公開第2010/132444号
【特許文献34】米国特許出願第12/638,394号
【特許文献35】米国特許第4,144,895号明細書
【特許文献36】米国特許第4,150,677号明細書
【特許文献37】米国特許第4,267,847号明細書
【特許文献38】米国特許第4,289,147号明細書
【特許文献39】米国特許第4,351,346号明細書
【特許文献40】米国特許第4,359,059号明細書
【特許文献41】米国特許第4,506,682号明細書
【特許文献42】米国特許第4,589,428号明細書
【特許文献43】米国特許第4,605,016号明細書
【特許文献44】米国特許第4,716,911号明細書
【特許文献45】米国特許第4,727,889号明細書
【特許文献46】米国特許第4,887,618号明細書
【特許文献47】米国特許第4,941,484号明細書
【特許文献48】米国特許第4,967,771号明細書
【特許文献49】米国特許第4,986,286号明細書
【特許文献50】米国特許第5,005,593号明細書
【特許文献51】米国特許第5,018,540号明細書
【特許文献52】米国特許第5,060,669号明細書
【特許文献53】米国特許第5,065,775号明細書
【特許文献54】米国特許第5,074,319号明細書
【特許文献55】米国特許第5,099,862号明細書
【特許文献56】米国特許第5,121,757号明細書
【特許文献57】米国特許第5,131,414号明細書
【特許文献58】米国特許第5,131,415号明細書
【特許文献59】米国特許第5,148,819号明細書
【特許文献60】米国特許第5,197,494号明細書
【特許文献61】米国特許第5,230,354号明細書
【特許文献62】米国特許第5,234,008号明細書
【特許文献63】米国特許第5,243,999号明細書
【特許文献64】米国特許第5,301,694号明細書
【特許文献65】米国特許第5,318,050号明細書
【特許文献66】米国特許第5,343,879号明細書
【特許文献67】米国特許第5,360,022号明細書
【特許文献68】米国特許第5,435,325号明細書
【特許文献69】米国特許第5,445,169号明細書
【特許文献70】米国特許第6,131,584号明細書
【特許文献71】米国特許第6,284,875号明細書
【特許文献72】米国特許第6,298,859号明細書
【特許文献73】米国特許第6,772,767号明細書
【特許文献74】米国特許第6,817,970号明細書
【特許文献75】米国特許第6,906,172号明細書
【特許文献76】米国特許第7,034,128号明細書
【特許文献77】米国特許第7,048,211号明細書
【特許文献78】米国特許第7,337,782号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示の概要
本開示は、植物材料から少なくとも1種の目的成分を抽出する方法に関する。一実施形態によれば、植物材料は、タバコ植物材料を含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態において、本発明は一般に、一連の工程ステップを提供し、その1つ以上が、抽出される所望の製品に応じて省略されてもよい。例えば植物材料は、抽出溶媒の存在下でホモジナイズして(例えば、植物材料1kgあたり溶媒約0.1L〜約1Lの比で)、植物液体成分と植物パルプ成分との混和物を形成させることができる。抽出溶媒は、緩衝溶液を含むことができる。より詳細には抽出溶媒は、リン酸塩、重亜硫酸塩含有化合物、メタ重亜硫酸塩含有化合物、第IおよびII属のハロゲン化物塩、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の化合物を含むことができる。植物液体成分は、定義された範囲内のpH(例えば、約6.5〜約8.0)で提供することができる。植物液体成分は、植物パルプ成分から採取することができ、それを乾燥して更に処理し、ペクチンを植物繊維(例えば、セルロース)から分離することができる。
【0009】
植物液体成分は、処理して(例えば、遠心分離による)、それを固体画分および可溶性画分に分離することができる。特定の実施形態において、乾重量ベースで固体画分の少なくとも約40重量%が、植物由来デンプン成分であってもよい。
【0010】
固体画分は、好ましくは約10重量%未満の水分量まで、乾燥させることができる。乾燥された固体画分は、所望の粒径、例えば約50μm〜約1mmの平均粒径を達成させるように磨砕することができる。植物由来デンプン(または他の成分)は、固体画分から単離することができる。例えばそのような単離は、植物由来デンプンを適切な溶媒液体混合物と混和すること、液体混合物を加熱すること、液体混合物をろ過して植物由来デンプンを単離すること、ならびに場合により植物由来デンプンを乾燥および/または放射線照射すること、を含むことができる。
【0011】
植物液体成分からの可溶性画分は、液体透過成分および濃縮成分へ更に分離することができる(例えば、ろ過による)。特別な実施形態において、濃縮成分は、約0.1ミクロンよりも大きなサイズを有する可溶性画分から得られた粒子を含むことができる。濃縮成分は、乾燥させて濃縮固体材料を形成させることができ、それを磨砕して微粒子を形成させることができる。幾つかの実施形態において、濃縮成分は、不溶性蛋白質、大型蛋白質、細胞破片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の植物由来成分を含むことができる。
【0012】
液体透過成分は、リテンテート成分(retentate component)および付随的液体透過成分に分離することができる。幾つかの実施形態において、リテンテート成分は、可溶性蛋白質成分を含むことができる。他の実施形態において、付随的液体透過成分は、糖、ペプチド、アルカロイド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含むことができる。
【0013】
デンプン材料が植物材料、特にタバコ植物材料から抽出および単離される特定の実施形態において、そのようなデンプン材料を用いて、結合剤組成物を形成させることができる。例示的結合剤組成物は、その総重量に基づいて、少なくとも約35乾重量%の請求項32に記載のタバコ由来デンプン材料と;少なくとも約10乾重量%の食物繊維成分と;少なくとも約10乾重量%の灰成分と;少なくとも約1乾重量%の糖成分と、を含むことができる。
【0014】
更なる実施形態において、植物材料から植物由来成分を抽出する方法は、以下のステップを含むことができる:抽出溶媒の存在下で植物材料をホモジナイズして植物液体成分と植物パルプ成分との混和物を形成させることであって、抽出溶媒が1種以上のリン酸塩と1種以上の重亜硫酸またはメタ重亜硫酸塩含有化合物とを含むこと;植物パルプ成分から植物液体成分を採取すること;植物液体成分を固体画分および可溶性画分に分離すること;ならびに更に植物パルプ成分、固体画分、および可溶性画分のうちの1つ以上を処理して植物由来成分を単離すること。そのような実施形態において、1種以上の抗酸化剤は、チオール、ポリフェノール、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、尿酸、尿酸塩、グルタチオン、トコフェロール、トコトリエノール、没食子酸プロピル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。その上、液体植物成分を固体画分および可溶性画分に分離するステップは、液体成分を遠心分離することを含むことができる。より具体的には、液体植物成分が連続して遠心分離機に供給されながら、遠心分離を実施することができる。例えば液体植物成分の遠心分離機への供給速度は、約5〜約25L/分であってもよい。更に遠心分離は、約1,000rpm〜約6,000rpmの条件下および/または約500×g〜約2,500×gの条件下で実施することができる。加えて、更なる処理は、固体画分を約10重量%未満の水分量まで乾燥させること、および乾燥された固体画分を磨砕して定義された平均粒径(例えば、約50μm〜約1mm)を有する植物由来デンプン粒子を提供すること、を含むことができる。更にそのような処理は、植物パルプ成分を乾燥させること、ならびにそれからペクチン、セルロース、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を抽出すること、を含むことができる。更なる処理のステップは、可溶性画分を、可溶性蛋白質成分、糖成分、ペプチド成分、アルカロイド成分、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む液体透過成分と;不溶性蛋白質、大型蛋白質、細胞破片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む濃縮成分と、に分離することを含むこともできる。その上、液体透過成分は、可溶性蛋白質成分を含むリテンテート成分と;糖、ペプチド、アルカロイド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む付随的液体透過成分と、に分離することができる。そのような方法の特定の実施形態において、植物材料は、特にタバコ植物材料であってもよい。
【0015】
更なる実施形態において、本発明は、植物材料からデンプン(または他の成分)を得るシステムを提供する。例えば該システムは、以下のものを含むことができる:植物液体成分および植物パルプ成分を形成させるために植物材料を破壊するように構成されていて、更に破壊の際に抽出溶媒を植物材料と接触させるために前記溶媒を受け取るように構成されているホモジナイズ装置と;植物液体成分をデンプン含有固体画分および可溶性画分に分離するように構成された遠心分離装置と;デンプン含有固体画分を乾燥させて約10重量%未満の水分量を有するデンプン含有固体成分を形成させるように構成された乾燥装置と;デンプン含有固体成分を磨砕して約50μm〜約1mmの平均粒径を有する微粒子デンプンを形成させるように構成された磨砕装置。該システムの1つ以上が、例えば植物材料の連続処理を容易にするように、流動連通されていることを特徴としていてもよい。あるいは該システムの特定の成分が、例えば植物材料のバッチ処理を容易にするために、互いから単離されてもよい。本発明によるシステムの更なる実施形態は、本明細書に提供された追加の開示を参照して特定の更なる成分を単離するために実現されてもよい。
【0016】
本開示を一般的用語でこのように記載し、ここに添付の図面を参照するが、それらは必ずしも一定の比率で描写されているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】植物材料の少なくとも1種の成分を抽出し、こうして植物由来成分を提供する、本発明の一実施形態による分離方法の略図である。
図2】植物材料の少なくとも1種のデンプン成分を抽出する、本発明の一実施形態による分離方法の略図である。
図3】植物材料の少なくとも1種の繊維成分を抽出する、本発明の一実施形態による分離方法の略図である。
図4】植物材料の可溶性画分成分を抽出する、本発明の一実施形態による分離方法の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
ここに本開示を、添付の図面を参照しながら以後により完全に記載するが、それは開示の幾つかの態様であって、全ての態様が示されているとは限らない。事実、本開示は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に示された態様に限定するとみなすべきではなく、むしろこれらの態様は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供されている。全体を通して、類似の数値は類似の要素を指す。本明細書および特許請求の範囲において用いられる単数形「a」、「an」および「the」は、文脈に別の方法で明白に示されない限り、複数の指示物を含む。
【0019】
本開示は、バイオマス、例えば植物材料から様々な成分を単離、分離、またはその他の方法で抽出する方法を提供する。有利には該方法は、特定の成分の抽出に適合させてもよく、または溶解度、化合物のタイプ、化合物の化学的性質、化合物の物理的性質などに基づいた成分の抽出に向けて一般化させてもよい。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された方法による抽出の例示的成分としては、非限定的に、デンプン、繊維、ペクチン、蛋白質(可溶性および不溶性)、細胞破片、糖、ペプチド、アルカロイド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。そのような材料は、本明細書では「該当する材料」と称する場合がある。加えて本開示は、大規模生産に適用可能であるが、大規模生産という用語は、大量生産レベルで大量のバイオマスを処理することを指す。用語「バイオマス」および関連の用語、例えば「バイオマター」および「植物供給源」が、それから該当する成分を抽出、分離、または単離するために処理され得る、収穫された植物の任意の部分を指すことは理解されよう。それから成分を抽出するために本開示に従って処理され得る植物のタイプの非限定的例としては、タバコ、トウモロコシ、米、穀粒、または抽出に望ましい成分を含むと認識された他の植物が挙げられる。更に本明細書に記載された処理は、植物の多くのタイプまたは植物の部分、例えば種子、花、柄、茎、根、塊茎、葉または植物の任意の更なる部分に関して実施されてもよい。
【0020】
本開示に従って用いられる例示的タバコ植物材料は、ニコチアナ種植物の一部の形態であってもよい。ニコチアナ種の選択は、様々であってもよい。加えて、本明細書に記載された抽出方法を受けたタバコ植物材料は、成熟、キュアリング、または緑色形態をはじめとする様々な形態であってもよい。用いられ得るタバコ植物材料としては、フルキュアドまたはバージニア(例えば、K326)、バーレー、サンキュアド(例えば、インド クルヌールおよび東洋タバコ、例えばカテリニ、プレリップ、コモチニ、キサンチおよびヤンボルタバコ)、メリーランド、ダーク、ダークファイアド、ダークエアキュアド(例えば、パサンダ、クバノ、ジャティンおよびベズキタバコ)、ライトエアキュアド(例えば、北ウイスコンシンおよびガルポアタバコ)、インドエアキュアド、レッドロシアンおよびルスチカタバコ、ならびに様々な他の希少または特産タバコが挙げられる。タバコの様々なタイプ、栽培実践、および収穫実践の記載は、Tobacco Production,Chemistry and Technology,Davis et al.(Eds.)(1999)に示されており、それは参照により本明細書に組み入れられる。ニコチアナ種から得られる様々な代表的な他のタイプの植物は、Goodspeed,The Genus Nicotiana,(Chonica Botanica)(1954);Sensabaugh,Jr.らへの米国特許第4,660,577号;Whiteらへの同第5,387,416号およびLawsonらへの同第7,025,066号;Lawrence,Jr.への米国特許出願公開第2006/0037623号およびMarshallらへの同第2008/0245377号に示されており、それらのそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられる。例示的ニコチアナ種としては、N.タバカム、N.ルスチカ、N.アラタ、N.アレンチイ、N.エクセルシオール、N.フォルゲチアナ、N.グラウカ、N.グルチノサ、N.ゴセイ、N.カワカミイ、N.ナイチアナ、N.ラングスドルフィ、N.オトフォラ、N.セトチェリ、N.シルベストリス、N.トメントサ、N.トメントシフォルミス、N.ウンズラータ、N.サンデラエ、N.アフリカナ、N.アンプレキシカウリス、N.ベナビデシイ、N.ボナリエンシス、N.デブネイ、N.ロンギフロラ、N.マリチマ、N.メガロシフォン、N.オクシデンタリス、N.パニクラタ、N.プルンバギニフォリア、N.ライモンディイ、N.ロズラタ、N.シムランス、N.ストックトニイ、N.スアベオレンス、N.アンブラチカ、N.ベルチナ、N.ウィガンジオイデス、N.アカウリス、N.アクミナータ、N.アテヌアタ、N.ベンサミアナ、N.カビコラ、N.クレベランディイ、N.コルディフォリア、N.コリンボサ、N.フラグランス、N.グッドスピーディイ、N.リネアリス、N.ミエルシイ、N.ヌディカウリス、N.オブツシフォリア、N.オクシデンタリス−亜種−ヘスペリス、N.パウシフロラ、N.ペチュニオイデス、N.クアドリバルヴビス、N.レパンダ、N.ロツンディフォリア、N.ソラニフォリア、およびN.スペガジニが挙げられる。
【0021】
ニコチアナ種は、遺伝子組換えまたは交雑育種技術を用いて得ることができる(例えばタバコ植物は、遺伝子操作または交雑育種を受けて、成分の生成、特徴または属性を増加または減少させることができる)。例えば、Fitzmauriceらへの米国特許第5,539,093号;Wahabらへの同第5,668,295号;Fitzmauriceらへの同第5,705,624号;Weiglへの同第5,844,119号;Dominguezらへの同第6,730,832号;Liuらへの同第7,173,170号;Colliverらへの同第7,208,659号およびBenningらへの同第7,230,160号;Conklingらへの米国特許出願公開第2006/0236434号;ならびにNielsenらへのPCT国際公開第2008/103935号に示された、植物の遺伝子組換えタイプを参照されたい。
【0022】
ニコチアナ種のタバコ植物材料の少なくとも一部は、未成熟形態で処理することができる。即ちその植物、またはその植物の少なくとも一部は、通常は円熟または成熟とみなされる段階に達する前に、収穫することができる。そのため例えばタバコ植物が新芽の時点、葉の形成を開始している時点、花成を開始している時点で、タバコを収穫することができる。
【0023】
ニコチアナ種のタバコ植物材料の少なくとも一部は、成熟形態で処理することができる。即ち、その植物、またはその植物の少なくとも一部は、植物(または植物の一部)が伝統的に円熟、過熟または成熟とみなされる時点に達したら、収穫することができる。そのため例えば、農業者により従来から用いられているタバコ収穫技術の利用により、東洋タバコ植物を収穫することができる、バーレータバコ植物を収穫することができる、またはバージニアタバコの葉を収穫する、もしくは柄の位置で摘み取ることができる。
【0024】
収穫後に、ニコチアナ種の植物、またはその一部は、緑色形態で処理することができる(例えばタバコは、任意のキュアリング工程に供さずに用いることができる)。例えば緑色形態のタバコは、凍結する、放射線照射する、黄化する、乾燥させる、調理する(例えば、焙煎する、揚げる、または煮沸する)またはその他の方法で後の使用のための貯蔵もしくは加工処理に供することができる。そのようなタバコは、老化状態に供することもできる。
【0025】
本発明の特定の実施形態により1種以上の植物由来成分を抽出するために実施され得る1組の処理ステップの図例を、図1に示す。これらのステップは、任意の植物材料、特にタバコ植物材料に関して実施されてもよい。図1に示されたステップの特定の順序は、本発明を限定するものとみなすべきではない。本明細書に開示された手順および条件と機能的に同等である本開示の任意修正は、本発明の範囲内である。更に本開示の方法において用いられた様々なデバイスおよび装置が、図1に示されたステップそのものではなく、様々な処理操作において用いられ得ることが、理解されるべきである。
【0026】
図1に図示された方法は、幾つかの実施形態において、特定の植物成分または植物成分のタイプを単離または抽出するために個別に実施され得る方法群を含むものとみなすことができる。個々の方法は、個々の植物成分が本来の植物材料の高度に特異的な構造を含まない形態、つまり適切な処理条件が提供されると抽出または単離に利用し得る形態に、本来の植物材料を変換するために実施される1つ以上の初期ステップにつながっている。つまり特定の実施形態において、図1に示された方法は、特定の方法ユニットに関連した特定の方法ステップから誘導可能な植物材料成分を抽出または単離するために場合により実施され得る複数の方法ユニットを有する単一の方法とみなすことができる。単一の方法として、そして個々の方法からなる群としても特徴づけられる本発明の能力は、本明細書に提供された更なる開示から、より明らかとなる。しかし本発明のこの特徴は、本発明の方法が植物材料から誘導可能な広範囲の植物成分に対して非破壊的であることに、公知技術分野での明白な利点がある。特定の実施形態において、個々の方法ステップは、同じバッチにおいて任意の他の植物成分の単離または抽出を排除しない手法で、具体的に望ましい植物成分の単離または抽出を提供するため、該方法は、ホリスティックな植物の成分単離および抽出方法として説明することができる。つまり全ての植物成分が、植物成分の1種以上を単離および抽出する任意手法で、特定のステップを利用し得る単一の方法により利用可能になる。言い換えれば、植物成分の1つ以上のタイプの群が、特定の工程流れにおいて単離されてもよく、本発明の方法は、残りの工程流れにおいて利用され得る植物成分群の実行可能性を維持しながら、1つの方法でのその群の利用を提供する。より詳細には植物成分の一部は、第一の工程流れにより抽出することができ、植物成分の残りの部分は、1つ以上の更なる工程流れにより抽出することができ、ここで、第一の工程流れからの植物成分の抽出は、更なる工程流れのいずれかにおいて植物成分に関して完全に非破壊的である。この手法において、該当する特定の植物成分は、残りの植物成分に対して非破壊的となる手法で抽出することができ、更なる工程流れで同時に抽出することができる、または後の時点で更に処理され得るもしくは商業的に利用され得る副次的流れにおいてその工程から除去することができる。特別な実施形態において、本発明の方法は、植物繊維、植物性ペクチン、不溶性蛋白質、細胞破片、デンプン、可溶性蛋白質、糖、ペプチド、およびアルカロイドからなる群より選択される植物成分の抽出を提供し、ここで植物成分の一部が、第一の工程流れにより抽出され、植物成分の残り部分が、1つ以上の更なる工程流れにより抽出され、第一の工程流れの植物成分の抽出が、更なる工程流れのいずれかにおいて植物成分に関して完全に非破壊的である、として記載することができる。
【0027】
一実施形態によれば、図1および図2に示される通り、本発明の方法は、植物材料10をホモジナイズするステップを含むことができる。本明細書において用いられる用語「ホモジナイズする」、「ホモジナイズすること」、および「ホモジナイゼーション」が、植物材料を破壊してその成分の一部を放出させるのに効果的な植物材料の任意の処理タイプを指すことは理解されよう。具体的にはそのような用語は、植物細胞壁をばらばらに崩壊または破壊して、植物細胞内に含まれる液体または他の材料を放出するのに効果的な任意の処理を指すことができる。そのような処理は、装置、例えば粉砕機、押出機、ハンマーミル、コロイドミル、フレンチプレスなどの使用を含むことができる。そのようなホモジナイズするステップは、特定の植物成分を含有する特定の流れを処理するのに用いられる個々のステップを統一するのに特に重要となり得る。言い換えれば、特に処理ステップにおいて用いられ得る抽出溶媒に関係する、ホモジナイゼーションステップは、植物材料を最初に高度に構造化された本来の状態から植物成分全てが相互に非破壊的手法で使用可能になる処理状態に変換する重要なステップとなり得る。
【0028】
図1に示された実施形態において、本発明は、粉砕機20を使用するが、それは、植物材料10をホモジナイズして植物液体成分または「グリーンジュース」と植物パルプ成分との混和物を形成させるのに効果的である。用語「グリーンジュース」は、本開示に従って処理されたバイオマターから抽出された液体を指す。しかし、グリーンジュースという用語が、抽出された液体の色にかかわらず、植物材料またはバイオマターから抽出された任意の液体を指し得ることは、理解されるべきである。
【0029】
特定の実施形態において、粉砕装置20は、崩壊、切断、チョッピング、微粉砕、またはその他の方法で植物材料10の粉砕によりグリーンジュースを残りの植物パルプ材料から抽出するためのナイフおよびハンマー構成を含んでいてもよい。即ち、粉砕装置20は、植物材料10の細胞壁を破裂させて、それからグリーンジュースを放出させる。代表的な粉砕装置は、Bratcherらへの米国特許第6,906,172号において開示されており、それは、全体が参照により本明細書に組み入れられる。スクリーニングの配列が、パルプ材料からグリーンジュースを分離するために提供されてもよい。粉砕機20が図示されているが、植物材料のホモジナイゼーションを実現するのに有用となる任意の装置を用い得ることは、理解されよう。
【0030】
ホモジナイズするステップまたは粉砕ステップは、抽出溶媒の存在下で実施されてもよい。これに関連して、植物材料は、植物材料を粉砕作用に供して、同時に植物材料を抽出溶媒に接触させる、粉砕工程と抽出工程との組み合わせに供されてもよい。植物材料は、粉砕の前、粉砕時、または粉砕後に抽出溶媒と混和されてもよい。幾つかの実施形態において、抽出溶媒は、ホモジナイズするステップの間に植物液体成分のpHを所定の一定レベルに保持またはその他の方法で調整するのに特に有用となり得る緩衝溶液を含んでいてもよい。抽出溶媒の存在下でのホモジナイゼーションの間に均質混合が起こるため、植物液体成分が植物材料からの液体成分だけでなく、若干量の抽出溶媒を含み得ることは、理解されよう。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、植物液体成分のpHは、抽出されたグリーンジュース中の特定の植物成分(例えば、蛋白質、デンプン、糖、またはアルカロイド)の量を最大にするように調整されてもよい。例えば、pHを約6.5〜約8.0の範囲内の保持することは、有用となり得る。そのような範囲は、具体的にはグリーンジュースのデンプン含量を最大にすることが望ましい実施形態に関して有用となり得る。植物材料がタバコ植物材料を含むような特別な実施形態において、pHは、約6.8〜約7.6、特に約7.0〜約7.4、より特に約7.2に保持されてもよい。デンプン以外の植物成分の単離が望ましい場合には、著しく異なるpH範囲が用いられてもよい。例えば幾つかの実施形態において、pHを約5〜約7、約5.2〜約6.8、または約5.5〜約6.5の範囲内に保持することが、有用となり得る。他の実施形態において、pHを約8〜約10、約8.2〜約9.8、または約8.5〜約9.5の範囲内に保持することが、有用となり得る。緩衝溶液は、具体的にはそのようなpH範囲を達成させるのに有用となる成分を含むことができる。特定の実施形態において、pHは、実質的に中性pHを保持してもよい。本開示に基づけば、異なるおよび/または重複するpH範囲が、グリーンジュース中の異なる植物成分量を最大にするのに有用となる場合があり、そのような更なるpHは、同様に特別な実施形態において本発明により包含される。もちろんそのような更なるpH範囲の包含は、特にデンプン抽出に関連する本開示の範囲を限定するとみなすべきではない。
【0032】
抽出溶媒は、好ましくは植物材料と特定の比で混和して、所望の成分の抽出を実現することができる。幾つかの実施形態において、抽出溶媒と植物材料とを、バイオマス1kgあたり抽出溶媒約0.1L〜約5Lの比で混和されてもよい。他の実施形態において、その比は、バイオマス1kgあたり抽出溶媒約0.1L〜約4L、約0.1L〜約3L、約0.1L〜約2L、約0.1L〜約1L、約0.2L〜約0.8L、約0.3L〜約0.7L、または約0.4L〜約0.6Lであってもよい。更なる実施形態において、該方法は、バイオマス1kgあたり抽出溶媒を少なくとも約0.1L、少なくとも約0.2L、少なくとも約0.3L、または少なくとも約0.4Lを使用してもよい。一実施形態において、該方法は、バイオマス1kgあたり抽出溶媒を少なくとも約0.5L混和することを含むことができる。
【0033】
抽出溶媒は、植物材料からの1種以上の特定の成分の抽出を容易にするのに有用となる様々な成分を含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、抽出溶媒は、洗浄剤、界面活性剤、抗酸化剤、アミノ酸、緩衝剤、蛋白質抽出剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の材料を含んでいてもよい。有用な洗浄剤は、細胞膜をばらばらに破損する(compromise)、分解する、またはその他の方法で破壊するのに効果的な任意の材料を含んでいてもよい。有用な洗浄材の非限定的な例示的実施形態としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム−ラウリル(sodium dodecyl sulfate-lauryl)、オクチルβグルコシド、オクチルβチオグルコピラノシド、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホナート(「CHAPS」)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホナート(「CHAPSO」)、およびオクトフェノールエトキシラート、例えば洗浄剤のTRITON(商標)Xシリーズが挙げられる。更なる実施形態において、洗浄剤は、非イオン性洗浄剤、双性イオン性洗浄剤、およびイオン性洗浄剤からなる群より選択されてもよい。非イオン性および双性イオン性洗浄剤は、細胞溶解の際に蛋白質変性を制限することが望ましい場合に、有用となり得る。高度の可溶化性を提供し、および/または植物材料中に存在する蛋白質を変性させることが望ましい場合に、イオン性洗浄剤が有用となり得る。
【0034】
有用な界面活性剤は、細胞膜をばらばらに破損する、分解する、またはその他の方法で破壊するのに効果的な任意の材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、有用な界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤が挙げられる。有用となり得る特異的界面活性剤の非限定的例としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン(「POE」)アルキルフェニルエーテル系界面活性剤、POEアルキルエーテル系界面活性剤(例えば、POEデシルエーテル、POEラウリルエーテル、POEトリデシルエーテル、POEアルキレンデシルエーテル、POEソルビタンモノラウラート、POEソルビタンモノオレアート、POEソルビタンモノステアラート、テトラオレイックポリオキシエチレンソルビタン、POEアルキルアミン、およびPOEアセチレングリコール)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、およびセチルピリジニウムクロリドが挙げられる。
【0035】
有用な抗酸化剤は、処理の間にグリーンジュース成分の酸化を低減または予防するのに効果的な任意の材料を含むことができる。有用な抗酸化剤の非限定的例としては、チオール、ポリフェノール、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、尿酸、尿酸塩、グルタチオン、トコフェロール、トコトリエノール、没食子酸プロピル、第三級ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。
【0036】
特定の実施形態において、抽出溶媒は、1種以上のリン酸塩を含んでいてもよい。そのようなリン酸塩は、緩衝材料として特に効果的となり得る。更なる実施形態において、抽出溶媒は、1種以上の重亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩含有化合物を含んでいてもよい。更なる実施形態において、抽出溶媒は、特に有用な抽出剤となり得る1種以上の第IおよびII族のハロゲン化物塩を含んでいてもよい。特定の実施形態において、抽出溶媒は、特に抗酸化剤化合物、例えばメタ重亜硫酸ナトリウム(Na)、重亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸を含んでいてもよい。抽出溶媒が緩衝溶液として機能する場合、抽出溶媒が1種以上の中和剤、例えばリン酸ナトリウムを含むことが有用となり得る。特に有用な実施形態において、抽出溶媒は、少なくとも1種のリン酸塩および少なくとも1種の重亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩化合物を含んでいてもよい。更に有用な実施形態において、抽出溶媒は、少なくとも1種のリン酸塩、少なくとも1種の重亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩化合物、ならびに少なくとも1種の第IおよびII族のハロゲン化物塩を含んでいてもよい。特定の実施形態において、抽出溶媒は、二塩基性リン酸ナトリウム水和物、一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、塩化ナトリウム、塩化カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の化合物を含んでいてもよい。例示的抽出溶媒は、約7.2のpHの、約20mMリン酸ナトリウムと約500mM NaClと約0.125%メタ重亜硫酸ナトリウムとの溶液を含んでいてもよい。別の実施形態において、抽出溶媒は、約7.16のpHの、約3.2g/Lの二塩基性リン酸ナトリウム水和物、約1.11g/Lの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約29.22g/L塩化ナトリウム、および1.25g/Lメタ重亜硫酸ナトリウムを含むことができる。別の例において、抽出溶媒は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含んでいてもよい。任意の適切な抽出溶媒を用いて、植物液体成分のpHを所定の一定レベル、例えば先に記載された範囲内に保持してもよい。pHが当該技術分野で周知の多くの適切な酸または塩基を用いて調整され得ることを、当業者は理解するであろう。
【0037】
ホモジナイゼーションが実施された後、植物液体成分(例えば、グリーンジュース)25は、主に植物繊維(またはセルロース)およびペクチンを含有し得る植物パルプ成分27から採取またはその他の方法で分離することができる。ペクチンは、陸生植物の一次細胞壁中に含有される構造的ヘテロ多糖である。ペクチンは、食物中でゲル化剤、増粘剤および安定化剤として用いられてもよい。それは、食物繊維の供給源として用いられてもよい。
【0038】
図3に示される通り、植物パルプ成分27は、適切な乾燥装置、例えばこの実施形態において図示されたオーブン30にそれを導くことにより、乾燥させることができる。好ましくは植物パルプ成分27は、所望のレベルの水分量、例えば約20重量%未満、約15重量%未満、または約10重量%未満まで乾燥させる。
【0039】
乾燥された植物パルプ成分32は、それから1種以上の成分を抽出するために適切な装置に導くことができる。例えば乾燥された植物パルプ成分32は、乾燥された植物パルプ成分32からペクチン成分50を抽出するために、ペクチン抽出装置40に導くことができる。そのような装置40は、同様に、残りの植物繊維またはセルロース材料を含む繊維残渣60を提供するのに適していてもよい。一実施形態において、ペクチン抽出装置40は、乾燥された植物パルプ成分32を抽出緩衝液と接触させるための適切な容器を含むことができる。例えば抽出緩衝液は、約10%酢酸と約10mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)との溶液を含有していてもよい。幾つかの実施形態において、抽出緩衝液は、乾燥された植物パルプ成分に約15:1緩衝液:組織比で添加されてもよい。パルプと抽出緩衝液との混合物は加熱され、その後、室温まで放冷されてもよい。その後、冷却された混合物はろ過されて、繊維残渣60を除去されてもよく、それが更に乾燥されてもよい。ペクチンを有する抽出物は、アルコール溶液、例えば100%エタノールと、例えば1:1の比で混和されてもよい。その後、エタノール抽出された材料は、室温に静置されてゼラチン(ゲル)層を形成させてもよい。ゲル層は除去されて(例えば、削り落されて)、ブフナーロートおよび真空ポンプを用いて適当なろ過媒体、例えばWhatmanろ紙でろ過してもよい。ろ過媒体上の残留固体は、例えばエタノールで洗浄して、乾燥させてもよい。一例において、洗浄された固体は、乾燥のためにガラス製シンチレーションバイアルに入れてもよい。得られたペクチン材料は、乾燥前はジェリー状の外観を有し得る。そのためペクチンおよび繊維材料は、適当な使用のために分離される。
【0040】
図1および図2に戻るが、植物液体成分25は、分離装置、例えば図示された実施形態の遠心分離機70に導くことができる。具体的には分離装置は、そのような成分をスラリーと混合する際に液体から固体材料を抽出するのに用いられ得るデカンタ型遠心分離機(例えば、Alfa Laval NX-409デカンタ)であってもよい。つまり植物液体成分25は、特定の実施形態に応じて、スラリー、懸濁液、または溶液として特徴づけられてもよく、それらは、用いられる植物材料、用いられる特定の抽出溶媒、および単離に望ましい成分に基づいて決定することができる。植物液体成分25は、デカンタ型遠心分離装置70または任意の他の適切な遠心分離システム、例えばバスケット型遠心分離システムもしくはバッチ型遠心分離システムを用いて遠心分離して、材料を可溶性液体画分77と固体画分75に更に分離することができる。代表的な遠心分離システムは、例えばBeritらへの米国特許第6,817,970号、Kohlstetteらへの同第5,899,845号、Zettierらへの同第5,267,937号、Schulzらへの同第4,966,576号およびDrosteらへの同第5,865,719号に記載されており、それらはそれぞれ、全体が参照により本明細書に組み入れられる。遠心分離の適切な条件は、例えば時間間隔、供給速度、固体ペレット材料の圧出のための滞留時間、運転速度、およびG力に基づいていてもよい。
【0041】
特定の実施形態によれば、植物液体成分は、連続して分離装置(例えば、デカンタ型遠心分離装置)に供給することができる。より具体的には植物液体成分は、約5〜約25L/分、約10〜約20L/分、または約12〜約17L/分の供給流速でデカンタ型遠心分離装置70(または類似装置)に給送することができる。一実施形態において、供給速度は、約15L/分であってもよい。遠心分離工程での時間間隔および滞留時間は、供給流速に逆比例させることができる。つまりその工程は、遠心分離の時間間隔と滞留時間の一方または両方が、供給流速の任意低減に比例して上昇され得ることを特徴とすることができる。同様に遠心分離の時間間隔と滞留時間の一方または両方は、供給流速の任意上昇に比例して低減させることができる。
【0042】
遠心分離工程の運転速度および負荷力は、装置のボウルサイズに関係し得る。例えば適切な遠心分離機は、約8インチ(20.3cm)〜約36インチ(91.4cm)、約10インチ(25.4cm)〜約30インチ(76.2cm)、または約12インチ(30.5cm)〜約24インチ(61cm)のボウルサイズを有していてもよい。幾つかの実施形態において、デカンタ型遠心分離装置70は、約1,000rpm〜約6,000rpm、約2,000rpm〜約6,000rpm、約3,000rpm〜約6,000rpm、約4,000rpm〜約6,000rpm、約4,200rpm〜約5,600rpm、約4,400rpm〜約5,400rpm、または約4,600rpm〜約5,200rpmの範囲内で運転してもよい。特定の実施形態において、ボウルサイズと運転速度の組み合わせを利用して、約750×g(または重力の750倍)〜約2,500×g、約1,000×g〜約2,000×g、または約1,100×g〜約1,900×gの負荷力を達成させることができる。先に記載されたパラメータを用いた運転が、不溶性画分において所望の植物成分、例えばデンプンの所望の濃度を達成させるのに不可欠となり得る。例えば先に議論されたものよりも大きな負荷力での運転により、純度の低いデンプン生成物を得てもよい。回収された固体(不溶性)画分は、半固形、スラリー、またはペーストの形態であってもよい。
【0043】
植物液体成分25中の固形分は、先に特筆された因子に応じて様々であってもよい。幾つかの実施形態において、植物液体成分25の固形分は、約15%まで、約12%まで、約10%まで、または約8%までであってもよい。更なる実施形態において、固形分は、植物液体成分25の総重量に基づいて、約0.5%〜約15%、約1%〜約10%、約2%〜約8%または約3%〜約6%であってもよい。あるいはデカンタ型遠心分離装置70を排除することにより、工程に関連するコストを削減するために、ろ過システムまたは配列を用いて植物液体成分25から可溶性液体画分77および固体画分75を分離してもよい。別の実施形態において、可溶性画分および固体画分の分離は、例えば0.5μm以下、0.4μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、または0.1μm以下のフィルターサイズを用いて、セラミック精密ろ過により行ってもよい。可溶性画分および不溶性画分のそのような分離は、不溶性画分において所望の植物成分(例えば、デンプン)の所望の濃度を達成させるのに不可欠となり得る。
【0044】
したがって幾つかの実施形態において、植物液体成分25の固体(不溶性)画分75中の該当する主たる材料は、デンプン成分であってもよい。これに関連して、デンプン成分の顆粒、粒子、またはペレットが、グリーンジュースに懸濁されていてもよい。このため、他の事柄について先に記載されたグリーンジュースの遠心分離は、グリーンジュースから懸濁したデンプン成分または他の固体を単離するのに有用となり得る。このステップにおいて製造された可溶性液体画分77は、本明細書において更に記載される通り、可溶性蛋白質、糖、および所望なら更なる処理により回収され得る他の化合物を含有し得る。
【0045】
固体画分75は、例えば図示された工業用オーブン80を用いて、乾燥させてもよい。別の実施形態において、本発明の方法は、ボルテックス乾燥機、フラッシュ乾燥技術、噴霧乾燥、または任意の他の適切な乾燥方法を使用してもよい。オーブン80における乾燥は、室温を超える温度、例えば約90℃まで、約80℃まで、または約70℃までで実施されてもよい。幾つかの実施形態において、乾燥は、約40℃〜約90℃、約50℃〜約80℃、または約60℃〜約70℃の温度であってもよい。固体画分75は、所望の水分量、例えば約20重量%未満、約15重量%未満、または約10重量%未満まで乾燥させてもよい。その後、乾燥された固体画分85は、磨砕装置90を用いて粉砕しても、磨砕しても、またはその他の方法ですり潰してもよい。粉末または顆粒材料100の組成は、用いられる植物材料、用いられる抽出溶媒、および単離される所望の成分に応じて様々であってもよい。幾つかの実施形態において、植物材料が、タバコ植物材料を含み、粉末または顆粒材料100が、無煙タバコ組成物または製品中の原料として有用な成分を含むことが望ましくなり得る。
【0046】
特定の実施形態において、デンプン材料、即ち複数の単糖単位を含有する多糖を1種以上含む化合物を単離することが望ましくなり得る。特に植物由来デンプンは、加水分解可能なα結合(即ち、α−1,4−グルコシド結合)によりつながった複数のグルコース分子を含有するポリマーであってもよい。デンプン成分の数平均分子量は、様々であってもよいが、典型的には約50,000Daまで、約40,000Daまで、約30,000Daまで、または約20,000Daまでであってもよい。別の実施形態において、デンプンの数平均分子量は、約500Da〜約30,000Da、約1,000〜約20,000Da、または約2,000〜約10,000Daであってもよい。
【0047】
幾つかの実施形態において、遠心分離または他の分離の後の固体画分75は、乾重量ベースで少なくとも約40重量%のデンプンを含むことができる。更なる実施形態において、乾重量ベースで固体画分75の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、または少なくとも約70重量%が、植物由来デンプン成分である。更なる実施形態において、固体画分75は、乾重量ベースで約40重量%〜約95重量%、約50重量%〜約90重量%、または約60重量%〜約85重量%の植物由来デンプン成分を含むことができる。
【0048】
乾燥固体画分85は、磨砕されて、所望の粒径に達してもよい。具体的には得られた粉末または顆粒材料100は、約1mm未満、約500μm未満、約100μm未満、または約50μm未満の平均粒径を有することができる。更なる実施形態において、粉末または顆粒材料100は、約1μm〜約1mm、約1μm〜約100μm、約5μm〜約75μm、約5μm〜約50μm、約5μm〜約25μm、約10μm〜約900μm、約100μm〜約750μm、または約100μm〜約500μmの平均粒径を有することができる。
【0049】
幾つかの実施形態において、乾燥固体分画85または粉末もしくは顆粒材料100からデンプン材料を抽出またはその他の方法で単離することが、有用となり得る。例えば、材料を洗浄工程に供することが、有用となり得る。一実施形態によれば、そのような洗浄工程は、適切な容器中で植物由来デンプン(例えば、乾燥固体画分85または粉末もしくは顆粒材料100)を適切な溶媒液体混合物(例えば、95%エタノールなどのアルコール)と混和することを含むことができる。その後、混合物を、場合により撹拌し、好ましくは混合物の沸点まで、適切な期間(例えば、少なくとも約10分間)、加熱することができる。加熱混合物は、撹拌することで確実に均一加熱してもよい。加熱された混合物は、ろ過システム(例えば、ブフナー漏斗フィルター、真空ホース、真空ライン、およびフラスコ)を用いてろ過することができる。洗浄された固体はろ過され、ブフナー漏斗フィルターで回収される。その後、ろ過された固体は、所望なら第二の洗浄手順に供される(反復洗浄手順)。任意の第二の洗浄の後、ろ過された固体は、ガラス製乾燥皿に移されて、乾燥のためにフード下に置くことができる(例えば、約16〜24時間)。得られた材料は、実質的に純粋なデンプン成分の可能性があり、所望なら放射線照射されてもよい。そのようなデンプン材料は、植物由来デンプン材料、具体的にはタバコ由来デンプン材料と称されてもよい。
【0050】
乾燥材料がタバコ植物材料から得られるような本発明の一態様において、得られた微粒子材料は、タバコ由来結合剤として用いてもよい。つまり本発明は、タバコ由来材料を含み得るタバコ由来結合剤を提供することができる。タバコ植物材料を含有する結合剤の使用は、そのような材料が生成物の凝集性を高める有用な接着性を提供する天然生成物であることから有利であり、感覚受容的見地から生成物中の他のタバコ供給源との適合性も提供する。
【0051】
幾つかの例において、タバコ由来結合剤は、タバコ由来デンプンを主な原料として含有し、他のタバコ由来成分、例えば食物繊維、蛋白質、水分、灰、および他の糖成分も含有し得る、デンプンが高含量のタバコ抽出物であってもよい。タバコ由来結合剤を形成する成分の相対量は、様々であってもよい。特別な実施形態において、タバコ由来デンプン成分は、タバコ由来結合剤の総重量に基づいて、結合剤の少なくとも約25乾重量%、少なくとも約30乾重量%、少なくとも約35乾重量%、少なくとも約40乾重量%、または少なくとも約40乾重量%含まれ得る。別の実施形態において、タバコ由来デンプン成分は、タバコ由来結合剤の総重量に基づいて、結合剤の約25〜約75乾重量%、約30〜約70乾重量%、約40〜約60乾重量%または約45〜約55乾重量%含まれ得る。タバコ由来結合剤中の食物繊維成分の典型的範囲は、少なくとも約10乾重量%、またはより詳細には約10〜約20乾重量%であってもよい。タバコ由来結合剤中の蛋白質成分の典型的範囲は、少なくとも約5乾重量%、またはより詳細には約5〜約15乾重量%である。タバコ由来結合剤中の灰成分の典型的範囲は、少なくとも約10乾重量%、またはより詳細には約10〜約15乾重量%である。タバコ由来結合剤中の糖成分(デンプン成分以外)の典型的範囲は、少なくとも約1乾重量%、またはより詳細には約1〜約3乾重量%である。
【0052】
より詳細に図1および図4を参照すると、デカンタ型遠心分離装置70は、液体成分25(またはグリーンジュース)を固体画分75と、液相または上清液体材料と称することもできる可溶性画分77とに分離する。固体画分75と同様に、可溶性画分77は、特定の成分を所望の使用に向けて抽出し得る工程路をたどってもよい。可溶性画分77は、例えば蛋白質、ペプチド、糖、またはアルカロイドなどの成分を含有していてもよい。幾つかの実施形態において、可溶性画分77のpHを調整してそれからの特定成分の沈殿を容易にすることが、有用となり得る。例えば、可溶性画分77のpHは、約3.5〜約4.5、約3.8〜約4.2、または約3.9〜約4.1の値に調整されてもよい。特定の実施形態において、pHは、約4.0になるように調整されてもよい。可溶性画分のpHは、適切な量の酸性または塩基性材料、例えば塩酸、リン酸、または水酸化ナトリウムの添加により調整されてもよい。可溶性画分77が、pH調整されたら、それはろ過装置200に導かれて、可溶性画分77を液体透過成分205および濃縮成分207に分離することができる。例えばろ過装置200は、セラミック精密ろ過システムまたは任意の他の適切なろ過システムを含んでいてもよい。これに関連して、該当する目的成分が濃縮物中に回収され得るように、大分子量の成分が濃縮成分207中に残留してもよい。
【0053】
特定の実施形態において、所定のサイズよりも小さな可溶性成分のみが液体透過成分205としてフィルターを通過し、大きな分子が濃縮成分207として保持され得るように、ろ過装置が構成されていてもよい。フィルターの孔径は、所望なら様々なろ過要件に合わせて調整させてもよい。特定の実施形態において、濃縮成分207が約0.05μmを超える、約0.08μmを超える、約0.1μmを超える、または約0.2μmを超える粒径を有する粒子を含むように、ろ過装置200が構成され分子を保持してもよい。更にろ過システムは、ろ過の複数の段階を提供するための様々なモジュールを含んでいてもよい。幾つかの例において、ろ過システムは、例えば1000kDa未満のセラミックフィルター膜;約450リットル/分(LPM)〜約550LPM、好ましくは約510LPMのポンプ流速;約20psi(138kPa)〜約50psi(345kPa)の供給圧;約1psi(7kPa)〜約20psi(138kPa)の浸透圧;および約2LPM〜約8LPMの透過流速、などのパラメータの下で運転してもよい。ろ過が望ましい本発明の様々な実施形態における使用に適した更なるろ過手段としては、Clappらへの米国特許第4,941,848号に開示されたものが挙げられ、その開示は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0054】
濃縮成分207は、材料を乾燥させるために本明細書において既に記載された実施例を含むことができる、乾燥装置210を用いて乾燥させてもよい。濃縮成分207は、所望の水分量、例えば約20重量%未満、約15重量%未満、または約10重量%未満まで乾燥させてもよい。乾燥させた濃縮物212は、磨砕装置220を用いて粉砕して、磨砕して、またはその他の方法ですり潰して粉末または顆粒形態300を形成してもよく、それは、例えば無煙タバコ組成物または製品中の原料として用いられてもよい。特定の実施形態において、乾燥された濃縮物212(およびつまりその粉末または顆粒形態300)は、例えば不溶性蛋白質成分、大型蛋白質成分、細胞破片成分、またはそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態において、乾燥された濃縮物212は、粉末または顆粒形態300が約1mm未満、約750μm未満、または約500μm未満の平均粒径を有するように磨砕またはその他の方法で粉砕されてもよい。
【0055】
液体透過材料205は、更に処理されて、成分をリテンテート成分500および付随的液体透過成分600に分離してもよい。そのような分離は、例えば約1〜500kDa、好ましくは約1〜100kDaの範囲内の分子量カットオフ(MWCO)膜400を用いた、限外ろ過を含むことができる。他の適切な膜分離技術を、同様に用いることができる。限外ろ過ステップにより、工程容量が実質的に更に減少される。特定の実施形態において、リテンテート成分500は、可溶性蛋白質を含み、付随的液体透過成分600は、糖、ペプチド、アルカロイド、およびアミノ酸を含むことができる。必要に応じて、追加の限外ろ過サイクルを実施して、該当する目的材料の純度を改善してもよい。MWCOサイズおよび限外ろ過条件の選択は、該当する目的材料のサイズに依存する。限外ろ過ステップは、一般に工程容量を約10〜30倍、またはそれ以上減少させ、透析ろ過により不適当な分子種が更に除去される。幾つかの例において、限外ろ過システムは、例えば約30psi(207kPa)〜約50psi(345kPa)、好ましくは約40psi(276kPa)の供給圧;約5psi(34kPa)〜約15psi(103kPa)、好ましくは約10psi(69kPa)のリテンテート圧;および約20psi(138kPa)〜約30psi(207kPa)、好ましくは約25psi(172kPa)の膜透過圧、のパラメータの下で運転してもよい。
【0056】
本明細書に記載された精密ろ過および限外ろ過システムが、本開示の処理装置により処理されるバイオマターに応じて、所定のサイズよりも大きな粒子を除去するように構成されていることは、理解されよう。しかし、ろ過システムにより実施されるろ過ステップが、処理されるバイオマターに依存し、本明細書に記載されたフィルターが、先に言及されたサイズ制限に限定されないことは、理解されるべきである。例えば、トウモロコシまたはイネから収穫されたバイオマターの処理は、同様に異なる透過性を必要とし、タバコ植物材料の処理とは異なるタイプの膜が必要になる。限外ろ過システムおよび限外ろ過システムの膜の例は、Ebnerへの米国特許第4,227,999号、Thalmannらへの同第6,106,715号、およびDalyらへの同第6,120,688号に開示されており、それらのそれぞれは、全体が参照により本明細書に組み入れられる。より大きな、またはより小さなサイズのフィルターを、処理される材料に従って設置可能である。更に、本開示の幾つかの処理適用において、フィルターが1つだけ必要な場合がある。幾つの例において、複数のフィルターが用いられ、一方または他方のフィルターの可能性を最小限に抑えて、所定のろ過サイズよりも大きな物質を制限または妨害してもよい。
【0057】
限外ろ過から得られた付随的透過成分の様々な成分の最終的な精製または分離は、例えばPEG沈殿、クロマトグラフィー、沈殿技術、遠心分離、再懸濁、または透明化などの処理により遂行されてもよい。例えば該当する蛋白質またはペプチドは、標準の手順、例えばクロマトグラフィー、塩析、COなどの超臨界液を含む溶媒抽出、および当業者に公知の他の方法を用いて精製されてもよい。更に限外ろ過の後、リテンテート成分500は、更なる処理、例えばPEG沈殿または別のタイプの精製に供されて、所望の生成物を得てもよい。そのような処理は、必ずしも自動化されていない。例えば該当する目的材料は、遠心分離およびろ過の1回以上のサイクルによりグリーンジュースの他の成分から分離された後、PEG沈殿などの手順またはアフィニティー分離をはじめとするクロマトグラフィーのような手順による蛋白質およびペプチドの精製、ならびに/または塩析により、更に精製されてもよい。
【0058】
本発明の多くの改良および他の実施形態は、前述の記載に示された技術の利点を有するため、本発明が関係する当該技術分野の当業者に記憶されるであろう。それゆえ、本発明が開示された特定の実施形態に限定されないこと、ならびにその修正および他の実施形態が添付の特許請求の範囲に含まれることは、理解されなければならない。本明細書において特定の用語が用いられているが、それらは包括的および記述的意味で用いられているに過ぎず、限定を目的とするものではない。
図1
図2
図3
図4