(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931981
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】血液サンプルの検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20160526BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
G01N27/28 Z
G01N27/46 338
G01N27/28 R
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-180382(P2014-180382)
(22)【出願日】2014年9月4日
(62)【分割の表示】特願2011-7996(P2011-7996)の分割
【原出願日】2011年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-222255(P2014-222255A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】12/689,643
(32)【優先日】2010年1月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン モンドロ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シフ
(72)【発明者】
【氏名】スコット ダブリュ.ギスラー
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5612492(JP,B2)
【文献】
特開2007−070008(JP,A)
【文献】
特開2007−010652(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/059241(WO,A2)
【文献】
特開2004−130063(JP,A)
【文献】
国際公開第01/041643(WO,A1)
【文献】
米国特許第06878345(US,B1)
【文献】
登録実用新案第3108067(JP,U)
【文献】
特開2001−038696(JP,A)
【文献】
特開2007−130451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
A61B 5/145−5/157
G01N 33/48−33/98
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプルの検査装置であって、
供給ホイールと、
巻き取りホイールと、
前記供給ホイールまたは前記巻き取りホイールに係合するモータと、
前記供給ホイールおよび前記巻き取りホイール上のセンサストリップであって、その移動方向に連続して配置された複数の検査部位を有し、前記複数の検査部位の各々がランセット穴と、血液サンプル量を判定するための第1の電極と、血液サンプル特性を判定するための検査電極と、スプロケット穴とを含んでいるセンサストリップと、
エンコーダおよび前記スプロケット穴と係合する歯を有するスプロケットと、
前記第1の電極、前記検査電極、前記エンコーダおよび前記モータと作動的に接続され、前記装置を通る前記センサストリップの進行を制御するプロセッサと、
を具え、前記エンコーダが、前記センサストリップ上の前記スプロケット穴の係合から得られる前記進行の直線距離の量を記録することを特徴とする血液サンプルの検査装置。
【請求項2】
前記エンコーダが記録した前記進行の直線距離に基づき、前記プロセッサを介して前記モータに指示が与えられることを特徴とする請求項1に記載の血液サンプルの検査装置。
【請求項3】
血液サンプルの検査装置であって、
供給ホイールと、
巻き取りホイールと、
前記供給ホイールまたは前記巻き取りホイールに係合するモータと、
前記供給ホイールおよび前記巻き取りホイール上のセンサストリップであって、その移動方向に連続して配置された複数の検査部位を有し、前記複数の検査部位の各々がランセット穴と、血液サンプル量を判定するための第1の電極と、血液サンプル特性を判定するための検査電極と、スプロケット穴とを含んでいるセンサストリップと、
エンコーダおよび前記スプロケット穴と係合する歯を有するスプロケットと、
前記センサストリップが前進および後退できるようにする少なくとも1つのギアと、
前記第1の電極、前記検査電極、前記エンコーダおよび前記モータと作動的に接続され、前記装置を通る前記センサストリップの進行を制御するプロセッサと、
を具えたことを特徴とする血液サンプルの検査装置。
【請求項4】
前記ランセット穴を通ることができるランセット針を有するランセット機構をさらに具え、前記プロセッサは、前記ランセット機構に作動的に接続されて、前記センサストリップの前記複数の検査部位のそれぞれで血液サンプルを集めるための切開操作を制御し、前記少なくとも1つのギアは、同じ検査部位を用いる再度の切開操作をユーザができるようにすることを特徴とする請求項3に記載の血液サンプルの検査装置。
【請求項5】
前記切開操作は得られた血液サンプル量が不十分と判定されたときに再度行われるものであり、前記少なくとも1つのギアが、前記センサストリップを現在位置から前記同じ検査部位へと後退させることを特徴とする請求項4に記載の血液サンプルの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液サンプルの取得および検査の分野に関するものである。特に本発明は、1人のユーザが開始するステップにおいて、血液サンプルを取得するための切開操作(lancing operation)と、サンプルの測定操作との双方を実行する装置に用いられるセンサストリップの位置決め機構に関するものである。ストリップには複数の検査部位(test site)が設けられ、供給ホイールに巻かれ、装置を通して供給ホイールと巻き取りホイールとの間で搬送され、単一のストリップを用いて複数の測定結果を得るたことができるようになっている。本発明は、装置内の検査部位を正しく位置合わせさせるために、ストリップを正確に歩進(increment)させつつ進行させるよう制御する機構を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
血糖自己測定では一般に、ユーザは一定量の(a volume of)毛細管血を抜き取り、分析のためにそれを処分可能な(disposable)エレメント上にセットする必要がある。抜き取りを行う部位で対象を切開し、少量の血液を得て検査ストリップ上で検査を行うための装置が従来知られている。例えば、特許文献1は対象の皮膚を穿刺し血液を得るための機構を有する切開器(lancer)を開示しており、当該文献の参照によってその内容がここに包含されるものとする。
【0003】
血液サンプル中の血糖濃度を判定するために電流測定およびその他の技術を用いる検査ストリップ検出エレメントが従来知られている。特許文献2および特許文献3の各々は、血糖の電気化学的な測定を行うためのテストストリップの諸例を開示しており、当該文献の参照によってその内容がここに包含されるものとする。
【0004】
切開および検出を統合させることは、血糖自己測定において望ましい進歩である。2009年7月14日に出願された特許文献4(当該文献の参照によってその内容がここに包含されるものとする)にはそのような「統合型(two-in-one)」装置が記載されており、単一の検査ストリップが複数の検査部位を含んでおり、検査装置を通して自動的に進行できるようにされている。同じく2009年7月14日に出願された特許文献5(当該文献の参照によってその内容がここに包含されるものとする)には流体輸送機構(fluid transport features)が記載されており、これが連続したストリップ上に備えられることで、捕集部位から検査部位までの血液サンプルの移動を容易にすることができるものとなっている。同時出願された(concurrently herewith)特許文献6(当該文献の参照によってその内容がここに包含されるものとする)は連続した検査ストリップ上での電極のレイアウトを開示しており、装置内の接点と電気接続することで、センサストリップの進行を制御するために用いられる信号が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,558,402号明細書
【特許文献2】米国特許第6,143,164号明細書
【特許文献3】米国特許第5,437,999号明細書
【特許文献4】米国特許出願第12/502,594号明細書
【特許文献5】米国特許出願第12/502,585号明細書
【特許文献6】米国特許出願第12/689,654号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この背景において、ストリップが切開/検出プロセスにおいて異なる停止位置を通って割り出しされながらセンサストリップが一方から他方に巻かれて行く際に、供給ホイールおよび巻き取りホイールの有効径の変化を考慮し、ストリップが正確に歩進しつつ装置を通って自動的に進行できるようにする機構を有することが要望される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は血液サンプルの検査装置であり、供給ホイールと、巻き取りホイールと、前記供給ホイールおよび前記巻き取りホイール上のセンサストリップと、前記供給ホイールまたは前記巻き取りホイールに係合して前記装置を通って前記センサストリップを進行させるモータと、を具える。前記センサストリップは、その移動方向に連続して配置された複数の検査部位を有し、前記検査部位の各々は、ランセット穴と、血液サンプル量を判定するための第1の電極と、血液サンプル特性を判定するための検査電極(test electrodes)と、を含むようにされている。エンコーダと組み合わされるスプロケットが設けられ、これは連続した前記センサストリップのスプロケット穴と係合する歯を有する。プロセッサが前記第1電極、前記検査電極、前記エンコーダおよび前記モータと作動的に接続され、前記装置を通る前記センサストリップの進行を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の好適実施形態に係るカートリッジ内のストリップ経路を示す図である。
【
図2A】本発明に係るセンサストリップにおけるスプロケット穴とスプロケット歯との係合を示している。
【
図2B】比較例に係るセンサストリップにおけるスプロケット穴とスプロケット歯との係合を示している。
【
図3】供給ホイール、巻き取りホイール、切開機構、電源、ユーザが作動させる制御部、表示部、および、切開および検査の異なる段階を制御するためのプロセッサを有して単体の(unitary)ハウジングに組み込まれたセンサストリップ位置決め機構を示している。
【
図4】連続したストリップ上の検査部位を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1の実施形態において、カートリッジ10が設けられ、これは供給ホイール30および巻き取りホイール40に巻かれた連続するセンサストリップ20を有している。センサストリップが進行するにつれて、それらのホイールの有効径が変化する。よって、モータ42によりホイールに対し等しい回転量を付与すると、装置を通って進行するストリップに過大のまたは過小の直線移動距離がもたらされることになる。しかしながら、センサの最適な作動には、装置の開口50内に検査部位を正確に位置合わせすること、および装置の接点(不図示)がセンサストリップ上の電極と位置合わせされていることが必要である。
【0010】
図3に示されるように、装置内には、エンコーダ62およびスプロケット歯70をもつスプロケット60が設けられている。スプロケットおよび/またはエンコーダをカートリッジ10とは独立して装置内に位置づけることができるようにして、センサストリップを収容するカートリッジ10を、ユーザにより取り外し可能および除去可能となるように作製することができる。エンコーダはストリップが進行する直線距離の量を記録し(register)、プロセッサ82から適切な指示がモータ42に与えられる。ストリップの移動距離は、供給ホイールまたは巻き取りホイールの回転量ではなく、センサストリップ上の特徴部から直接得られるので、正確な位置決めが確保される。
【0011】
図4に示されるように、ストリップ上の検査部位は、ランセット針が通るランセット穴100と、切開操作後に血液サンプルが蓄積される電極110および120間の領域とを備えている。装置の使用時には、カートリッジ開口50によってセンサストリップがユーザの皮膚に正しく接触するようにカートリッジを位置づけることができる。ストリップ上のランセット穴100はランセット機構90と整列しており、切開操作が行われる。血液サンプルはセンサストリップ上に蓄積され、十分な量が得られたときに電極110および120が短絡し、センサストリップを移動方向130に進行させる信号が発せられる。ストリップが進行すると、血液サンプルの一部は毛細チャネルに沿って検査部位に移動し、血糖測定などの測定が第2の電極対140,150で行われる。ユーザが操作可能な制御部および表示部63,64,66を通じ、ユーザは装置とインターフェースすることができる。他の実施形態として、ギア(不図示)を設けてストリップが前進および後退できるようになし、得られた血液の量が不十分である場合には、連続ストリップ上の同じ検査部位を用いてユーザが再度切開操作を行うことができるようにしてもよい。
【0012】
ストリップ上の検査部位の各々は、ランセット穴、十分な量が検出されたかを検知する検知用電極、および、検知用電極と第2の電極セットを用いて血液特性が判定される試薬井(reagent wells)との間にある毛管チャネルを具える。各検査部位の長さは約9mmから約19mmの長さとすることができ、ストリップ上で隣接する検査部位のランセット穴間の距離は約20mmから約40mmの範囲とすることができる。スプロケット穴間の距離は約10mmから20mmの範囲とすることができ、これに従ってスプロケットの直径の寸法が定められる。スプロケットの直径は、ストリップ上の穴間距離を単に用いることで達する直径からストリップの厚みを減じる計算を行うことで見積もることができる。ストリップは、その穴に歯を位置合わせさせることに関して無視できる厚みを持つものとは考えられない。
【0013】
図2Aにおいて、スプロケット径は、ストリップの厚みを考慮して計算され(すなわち本発明によるものである)、
図2Bに示される比較例よりも僅かに小となるようにされている。
図2Bに示される比較例においては、スプロケット
径が大き過ぎ、センサストリップの歯からの脱落が生じている。実施形態においては、センサストリップの厚みは約10ミル(mil)〜約20ミルの範囲である。従って、個々の歯の間の周方向距離は約9.5mm〜約19.5mmである。スプロケットの直径は歯の数に基づいて確定され、スプロケットが4つの歯を有していれば、直径は約12mm〜約26mmの範囲である。
【0014】
センサテープはその目的のために従来用いられている材料で作製され、構成の方法(method of construction)は技術分野において通常の知識を有する者に知られている。例えば、試薬井(wells)および毛管を画成する支持体および構造層(structural layers)はポリエチレンテレフタレート(PET)から作製できる一方、電極は金またはその他の導電性材料をスパッタリングまたはその他の方法で付着させ、パターニングを行うことで作製することができる。
【0015】
プロセッサ82は、装置ハウジングの装置接点(不図示)と接触するコンタクトパッド112、152、122および142を介し、電極110、120、140および150から信号を受け取る。プロセッサ82はまた、ストリップの移動距離をエンコードするスプロケットエンコーダ、および、ユーザが作動させる制御部から信号を受け取る。プロセッサはこれらの信号を組み合せ(coordinate)、モータにセンサストリップを進行させる指示信号、切開機構に切開操作を行わせる指示信号および検査電極に血液特性の測定を行わせる
指示信号を与える。これらの目的に適合するプロセッサは市販されているものであり、技術分野において通常の知識を有する者に知られているものである。