(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表皮材で覆われたシートクッション、シートバックおよびヘッドレストを備え、シートバックには、シートバックフレームの左右のサイドフレームに連結部材を介して後退移動可能に連結された受圧部材と、受圧部材の少なくとも前面およびシートバックフレームを覆うシートバックパッドとが設けられており、シートクッションに着座した乗員の上体から後退移動荷重がシートバックに作用すると、受圧部材が後退移動して乗員の上体をシートバックに沈み込ませるように構成された乗物用シートであって、
前記サイドフレームは、前記シートバックパッドの側部形状を保持するように前方へ張り出す板状のパッド保形部と、このパッド保形部から上方に突出するパイプ部とを有し、
前記パイプ部には、板状のブラケットが固定され、
前記ブラケットは、前記パイプ部の外周面に沿って前記パイプ部に取り付けられた第1部分と、前記第1部分から延出し、エアバッグ装置が取り付けられた第2部分とを有し、
前記第1部分は、前記第2部分の前記エアバッグ装置が取り付けられた取付面よりも左右方向内側に位置することを特徴とする乗物用シート。
【背景技術】
【0002】
自車両の後部に他車両が追突し、あるいは後退する自車両の後部が他車両や構造物に衝突したりする車両の後面衝突時には、車両用シートのシートクッションに着座している乗員の頭部が慣性によって大きく後傾すると、その反動により乗員の頸部に大きな衝撃が加わる虞がある。そこで、車両の後面衝突時に乗員の頸部へ加わる衝撃を緩和するように、車両用シートには、乗員の頭部を後方から受け止めるヘッドレストが一般に設けられている。
【0003】
ここで、シートクッションに着座して車両を運転する乗員は、頭部をヘッドレストから若干前方に離した着座姿勢をとることが多く、また、車両を運転しない他の乗員も同様の着座姿勢をとることが多々ある。このような着座姿勢で車両が後面衝突すると、乗員の頭部は若干後傾して受け止められることとなり、また、その反動で頭部が前傾する虞もあるため、乗員の頸部へ加わる衝撃を緩和するという効果が低減する。
【0004】
そこで、車両の後面衝突時には、慣性で後退移動しようとする乗員の上体を後方のシートバックに沈み込ませることで、乗員の頭部を速やかにヘッドレストで受け止めるようにした乗物用シートやシートバック装置が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0005】
特許文献1に記載の乗物用シートは、シートバック内のシートバックパッド(シートバッククッション)を介して乗員の上体を受け止める部材として、シートバックフレームに対し後退移動可能に連結された受圧部材を備えている。また、特許文献2に記載のシートバック装置は、特許文献1に記載の受圧部材に相当する面状弾性体を備えている。
【0006】
特許文献1に記載の乗物用シートや特許文献2に記載のシートバック装置においては、乗物の後面衝突により乗員に後退移動荷重が作用して乗員の上体がシートバックに押圧されると、シートバックパッドと共に受圧部材(面状弾性体)がシートバックフレームに対し後退移動する。その結果、乗員の上体がシートバックに沈み込んで乗員の頭部が速やかにヘッドレストで受け止められるようになり、こうして乗員の頸部へ加わる衝撃が緩和される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載の乗物用シートや特許文献2に記載のシートバック装置においては、車両の後面衝突時に乗員の上体がシートバックに沈み込む際の着座姿勢に特段の考慮が払われていない。
【0009】
本発明は、以上のような技術的背景に鑑みてなされたものであり、乗物の後面衝突時に乗員の上体がシートバックに沈み込む際の着座姿勢を改善することにより、乗員の頭部の後傾を確実に抑制して頸部に加わる衝撃を確実に緩和することができる乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するため、本発明の乗物用シートは、表皮材で覆われたシートクッション、シートバックおよびヘッドレストを備え、シートバックには、シートバックフレームの左右のサイドフレームに連結部材を介して後退移動可能に連結された受圧部材と、受圧部材の少なくとも前面およびシートバックフレームを覆うシートバックパッドとが設けられており、シートクッションに着座した乗員の上体から後退移動荷重がシートバックに作用すると、受圧部材が後退移動して乗員の上体をシートバックに沈み込ませるように構成された乗物用シートであって、前記サイドフレームは、前記シートバックパッドの側部形状を保持するように前方へ張り出す板状のパッド保形部と、このパッド保形部から上方に突出するパイプ部とを有し、前記パイプ部には、板状のブラケットが固定され、前記ブラケットは、
前記パイプ部の外周面に沿って前記パイプ部に取り付けられた第1部分と、前記第1部分から延出し、エアバッグ装置が取り付けられた第2部分とを有し、前記第1部分は、前記第2部分の前記エアバッグ装置が取り付けられた取付面よりも左右方向内側に位置することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、乗員の上体がシートバックに沈み込む際に、パッド保形部とブラケットが協働して、シートバックの側部を若干拘束することで、これらの部分が後方へ変形するのを抑制するため、シートバックパッドが無理なく容易に後方へ変形する。このため、シートバックパッドから受圧部材の全体に後退移動荷重が確実に伝達されるようになり、乗員の上体が充分にシートバックに沈み込み、乗員とヘッドレストの隙間が速やかに減少する。
そして、ブラケットをパイプ部に固定する部分が露出せず、外側からエアバッグ装置を取り付けやすい。
【0012】
前記した構成において、前記エアバッグ装置は、前記
取付面と前記パッド保形部の前記側面に沿って配置されている構成とすることができる。
【0015】
前記した構成において、前記
取付面は、前記パイプ部よりも前側に位置している構成とすることができる。
【0016】
前記した構成において、前記ブラケットは、前記パイプ部の左右方向内側面で前記パイプ部に固定されている構成とすることができる。
【0017】
前記した構成において、前記ブラケットは、前記
取付面の前記パイプ部側の端部から前記パイプ部の外周に沿って左右方向内側に延びている構成とすることができる。
【0018】
前記した構成において、前記
第1部分は、上端および下端から屈曲して延びるフランジを有している構成とすることができる。
【0019】
このような構成によれば、ブラケットの剛性を高めて、後面衝突時の乗員の着座姿勢を制御しやすくなる。
【0020】
前記した構成において、前記エアバッグ装置の前端は、前記ブラケットの前端よりも前に位置している構成とすることができる。
【0021】
前記した構成において、前記ブラケットは、前記
取付面の前端から左右内側に延びる部分を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、乗員の上体がシートバックに沈み込む際に、パッド保形部とブラケットが協働して、シートバックの側部を若干拘束することで、これらの部分が後方へ変形するのを抑制することができる。
【0023】
本発明によれば、ブラケットをパイプ部に固定する部分が露出せず、外側からエアバッグ装置を取り付けやすい。
【0024】
本発明によれば、ブラケットの剛性を高めて、後面衝突時の乗員の着座姿勢を制御しやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る乗物用シートの一実施形態について説明する。一実施形態の乗物用シートは、例えば
図1に示すように、自動車の運転席に配置される車両用シートSとして構成されている。この車両用シートSは、ウレタンフォームなどのクッション材からなるパッド材が合成皮革や布地などの表皮材で覆われたシートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を備えている。
【0027】
シートクッションS1およびシートバックS2には、
図2、
図3に示すようなシートフレームFが内蔵されている。このシートフレームFは、シートクッションS1の骨格を構成するシートクッションフレームF1と、シートバックS2の骨格を構成するシートバックフレームF2とで構成されている。なお、ヘッドレストS3には、その骨格となるヘッドレストフレーム(図示省略)が内蔵されている。
【0028】
ここで、
図1に示したシートクッションS1に乗員が着座した状態を想定し、その乗員から見た方向を前後、左右、上下の方向としたとき、
図2に示したシートクッションフレームF1は、例えば、運転席のフロア上にスライドレールSLを介して前後位置が調節自在に設置される。そして、このシートクッションフレームF1の後部にシートバックフレームF2の下部がリクライニング機構RLを介して回動自在に連結されることで、シートバックフレームF2が前後に傾動可能となっている。
【0029】
シートバックフレームF2は、上部フレーム10と左右のサイドフレーム20と下部フレーム30とが溶接などで一体に結合されることにより枠状に構成されている。そして、この枠状のシートバックフレームF2の内側には、乗員の上体を後退移動可能に支持するための受圧部材40が配置されている。
【0030】
上部フレーム10は、逆U字形状に屈曲するパイプ材で構成されており、その横パイプ部11の前側には、ヘッドレストS3の下部から突出する左右一対のヘッドレストステー(符号省略)を装着するための左右一対のサポートブラケット12,12が溶接により固定されている。
【0031】
上部フレーム10の左右の縦パイプ部13,13は、その下部に連続して溶接される左右のサイドフレーム本体部21,21と一体となって左右のサイドフレーム20を構成している。サイドフレーム本体部21,21は、上部フレーム10の縦パイプ部13,13を上部に包持して一体にスポット溶接される板金で構成されており、後述するシートバックパッドの側部形状を保持するように前方へ張り出してパッド保形部(符号21の指示位置参照)を構成している。
【0032】
受圧部材40は、板状の樹脂プレートで構成されており、その上部が上部連結部材としての上部連結ワイヤ22を介して左右のサイドフレーム20に連結され、その下部が下部連結部材としての下部連結ワイヤ23(
図3参照)を介して左右のサイドフレーム20に連結されている。
【0033】
図4に示すように、上部連結ワイヤ22の左の端部22Aは、上部フレーム10の縦パイプ部13に沿うように下方に向けて屈曲しており、この上部連結ワイヤ22の左の端部22Aは、上部フレーム10の左側の縦パイプ部13に溶接固定された支持舌片14に包持された状態で縦パイプ部13に連結されている。
【0034】
図示は省略するが、上部連結ワイヤ22の右の端部22Aも同様の支持舌片14に包持された状態で上部フレーム10の右側の縦パイプ部13に連結されている。そして、受圧部材40の上部背面側に形成された係止部(図示省略)が上部連結ワイヤ22の中間部に係止されることで、受圧部材40の上部が上部連結ワイヤ22を介して左右のサイドフレーム20に連結されている。
【0035】
一方、下部連結ワイヤ23の両端部は、
図3に示すように、左右のサイドフレーム本体部21,21の内側面に設置されたトグル係止機構50,50に係止されている。そして、受圧部材40の下部背面側に形成された係止部(図示省略)が下部連結ワイヤ23の中間部に係止されることで、受圧部材40の下部が下部連結ワイヤ23を介して左右のサイドフレーム20に連結されている。
【0036】
ここで、受圧部材40が上部連結ワイヤ22および下部連結ワイヤ23を介してサイドフレーム20に吊り下げられた状態にあると、受圧部材40をシートバックフレームF2に組付ける際や組付けた後の受圧部材40の姿勢が安定する。そこで、受圧部材40の姿勢を安定化させるように、上部連結ワイヤ22および下部連結ワイヤ23は、受圧部材40を支持する中間部よりサイドフレーム20に連結される両端部(端部22Aの上部が支持舌片14の上端から出た位置)が上に位置している。
【0037】
図3および
図6に示すように、トグル係止機構50,50は、引張コイルばね51,51の張力に抗しつつ思案点を乗り越えて後方に揺動可能な揺動リンク部材52,52を備えており、この揺動リンク部材52,52の下端部に下部連結ワイヤ23の両端部が連結されている。
【0038】
ここで、シートクッションS1(
図1参照)に着座した乗員の上体から所定値以上の後退移動荷重がシートバックS2に作用した際に受圧部材40が即座に円滑に後退移動できるようにするため、上部連結ワイヤ22および下部連結ワイヤ23は、ばね性を有するばね鋼などのワイヤで構成されている。
【0039】
また、トグル係止機構50,50の引張コイルばね51,51の張力は、下部連結ワイヤ23の両端部に所定値以上の後退移動荷重が作用した際に揺動リンク部材52,52が思案点を乗り越えて後方に確実に揺動できるような適宜の張力に設定されている。
【0040】
さらに、受圧部材40の後退移動ストロークを増大するため、左右方向においてサイドフレーム20と受圧部材40との間に位置する上部連結ワイヤ22の左右の部位には、左右方向に延びる軸線(上部連結ワイヤ22の両端の支持舌片14から出た部分を結ぶ線)の廻りに膨出して屈曲する余長部24,24が形成されている。この余長部24,24は、乗員の肩部の後方に対面するように上方に膨出して逆U字形に屈曲している。
【0041】
ここで、
図3に示すように、サイドフレーム20の上部を構成する上部フレーム10の左右の縦パイプ部13,13間には、上部連結ワイヤ22より太くて剛性の高いロッドで構成されたクロスメンバ15が架設されている。
【0042】
クロスメンバ15は、左右の縦パイプ部13,13の前側に溶接により固定される両端部に対して中央部が略同じ高さに位置しており、中央部の両側の部位には、その軸線位置(クロスメンバ15の両端を結ぶ左右方向の線)より下方に膨出して屈曲する2つの屈曲部16,17が左右対称にそれぞれ形成されている。
【0043】
縦パイプ部13,13に近い外側の屈曲部16,16は、角の丸いV字状に屈曲しており、少なくともその下端部が受圧部材40の左右方向外側の上方に位置している。一方、内側の屈曲部17,17は、角の丸いU字状に屈曲しており、その下端部を含めて全体が受圧部材40の上方に位置している。
【0044】
左右の屈曲部16,17は、乗員の肩部の後方に対面する位置で受圧部材40より若干後方に配置されており、後述するシートバックパッドの後面形状を維持する機能も兼ねている。
【0045】
この屈曲部17,18は、乗員の上体がシートバックS2に沈み込む際に肩部の後退移動を適度に制限できる程度の剛性を有しており、乗員の肩から強い後退移動加重が入力されると、クロスメンバ15の軸線廻りに揺動して塑性変形することにより、乗員の肩部に加わる衝撃を吸収できるようになっている。
【0046】
ここで、
図5および
図6に示すように、上部フレーム10の右側の縦パイプ部13の前側には、クロスメンバ15の右端部が溶接により固定されており、その直下の位置には、エアバッグ装置の一例であるサイドエアバッグ装置60の取付け用ブラケット61が溶接により固定されている。詳細には、取付け用ブラケット61は、縦パイプ部13の外周面のうち、左右方向内側の範囲に溶接されている。
【0047】
取付け用ブラケット61は、板金からなり、サイドフレーム本体部21の張出し方向に沿って縦パイプ部13の前側から前方に突出している。取り付け用ブラケット61の上端と下端には、それぞれフランジ61A,61Bが内側に向けて延び、これによりコ字型の断面形状を有して、高い剛性を備えている。そして、この取付け用ブラケット61には、長孔61Cが形成されており、長孔61Cの長手方向は、縦パイプ部13の長手方向と平行になっている。取付け用ブラケット61の長孔61Cには、左右外側から、サイドフレーム本体部21の右側面および縦パイプ部13に沿って延びるように配置されたサイドエアバッグ装置60の上端部分がボルト・ナットBNを介して固定されている。
【0048】
上述したように、取付け用ブラケット61を縦パイプ部13に固定する部分が縦パイプ部13の左右方向内側に位置することで、サイドフレーム20の左右外側には、取付け用ブラケット61を縦パイプ部13に固定する部分が露出せず、外側からサイドエアバッグ装置60を取り付けやすい。そして、サイドエアバッグ装置60は、サイドフレーム20の縦パイプ部13に沿って配置され、また、長孔61Cは縦パイプ部13に平行に延びているため、サイドエアバッグ装置60の取付位置の誤差があってもサイドエアバッグ装置60が前後へずれることがない。そのため、サイドエアバッグ装置60がサイドフレーム20に対してコンパクトに配置されるとともに長孔61Cによる取付位置の誤差吸収により取付作業性が向上する。
【0049】
サイドエアバッグ装置60は、図示しないエアバッグの展開方向を規制する力布をサイドフレーム20に係止するための力布金具62を備えている。この力布金具62は、縦長のコ字状に屈曲したロッドで構成されており、その上端部は縦パイプ部13の支持舌片14が固定された部位に隣接した位置に溶接により固定され、その下端部はサイドフレーム本体部21に固定されていて、受圧部材40側に突出している。
【0050】
そして、前述した上部連結ワイヤ22の右側の余長部24は、力布金具62と干渉しないように上方(力布金具62から離間する方向)に膨出しており、この上部連結ワイヤ22の右端部が縦パイプ部13の剛性の高い部分、すなわち力布金具62の溶接箇所に隣接した位置に連結されることで、上部連結ワイヤ22の連結強度が高められている。
【0051】
ここで、
図7および
図8に示すように、シートバックS2には、ウレタンフォームなどのクッション材で構成されたシートバックパッド70が合成皮革や布地などで構成された表皮材80に覆われて設けられている。このシートバックパッド70は、シートバックS2の骨格を構成する受圧部材40の少なくとも前面およびシートバックフレームF2を覆っている。
【0052】
シートバックパッド70は、乗員の上体背部に対面する中央部71と、乗員の上体側部に対面するように中央部71の左右両側から斜め前方に拡がって張り出す左右の側部72,72とが連続する形態を有し、その中央部71と左右の側部72,72との境界部分には、表皮材80を吊り込むための吊込み溝73が形成されている。そして、シートバックパッド70の左右の側部72,72に対して中央部71が受圧部材40と共に容易に後退移動できるようにするため、吊込み溝73の底部には、複数のスロット孔74が貫通状態で断続的に形成されている(特に、
図7参照)。
【0053】
このようなシートバックパッド70には、フック部材75を介して表皮材80を吊込み溝73内に吊り込むための吊りワイヤ76がインサート成形により埋設されている。この吊りワイヤ76は、吊込み溝73の底部に形成された各スロット孔74を中央部71側に迂回し、かつ、吊込み溝73の底部に開口する複数の窓穴77に部分的に露出する(または若干埋まった)屈曲状態でシートバックパッド70に埋設されている。吊りワイヤ76は、仮に、左右方向外側(側部72側)にスロット孔74を迂回した場合には、側部72が前方に張り出しているのに合わせて平面内に収まらない3次元的な屈曲形状にしなければならないが、中央部71側に迂回していることで、平面内に収まる屈曲形状とすることができ、生産性を向上させることができる。
【0054】
ここで、乗員の上体が後退移動する際にその後退移動荷重をシートバックパッド70の中央部71から受圧部材40の全体に確実に伝達できるようにするため、吊込み溝73および各スロット孔74は、左右方向において受圧部材40の外側、かつ、左右のサイドフレーム20よりも内側に配置されている。そして、シートバックパッド70の中央部71から上部連結ワイヤ22の余長部24に後退移動荷重を伝達できるようにするため、複数のスロット孔74のうち、上部に配置された左右一対のスロット孔74が上部連結ワイヤ22の余長部24に対面する個所に配置されている(
図3参照)。
【0055】
続いて、本発明に係る乗物用シートの一実施形態として構成された車両用シートSにつき、その作用効果を説明する。
図1に示す車両用シートSが運転席に配置された自車両の通常運転時において、
図9に示すようにシートクッションS1に着座した乗員Pは、通常、頭部をヘッドレストS3から若干前方に離した着座姿勢をとることが多い。
【0056】
このような着座姿勢で自車両の後部に他車両が追突し、あるいは後退する自車両の後部が他車両や構造物に衝突した場合において、乗員Pの上体からシートバックS2に所定値以上の後退移動荷重が作用すると、シートバックパッド70と共に受圧部材40がシートバックフレームF2に対し後退移動することで、
図10に示すように乗員Pの上体がシートバックS2に沈み込む。このとき、受圧部材40よりもクロスメンバ15の屈曲部16,17が若干後方にあることで、乗員Pの肩部がシートバックS2に少し沈み込んだ後に、乗員Pの上体がエビのように背中が湾曲することになり、乗員の頭部を速やかにヘッドレストS3に近づけて、ヘッドレストS3で受け止めることができる。
【0057】
さらに、後面衝突の荷重により乗員Pの上体が深くシートバックS2に沈み込む際には、クロスメンバ15の左右の屈曲部16,17と、上部連結ワイヤ22の上に凸に膨出した左右の余長部24,24とが協働して乗員Pの肩部の後退移動を受け止めて抑制する。そのため、強い後面衝突時には、
図11に示すように、乗員Pの上体はエビのように背中が湾曲した安全な着座姿勢でシートバックS2に沈み込む。そして、乗員Pの肩部から左右の屈曲部16,17に入力される後退移動荷重が特に大きい場合には、屈曲部16,17がクロスメンバ15の軸線廻りに揺動して塑性変形することにより、乗員Pの肩部に加わる衝撃を吸収する。
【0058】
また、乗員Pの上体がシートバックS2に沈み込む際には、上部連結ワイヤ22の左右の余長部24,24が捩ればねとして働きつつ後方に撓んで大きく伸張するため、受圧部材40の後退移動ストロークが増大して乗員Pの上体がシートバックS2により深く沈み込む。ここで、上部連結ワイヤ22は、その右端部が上部フレーム10の右側の縦パイプ部13における剛性の高い部分、すなわちサイドエアバッグ装置60の力布金具62が溶接により固定された部分に隣接した位置に連結されている。このため、上部連結ワイヤ22は、受圧部材40の後退移動荷重を確実に受け止めることができる。また、余長部24,24は、スロット孔74と対面する箇所に配置されているため、受圧部材40とサイドフレーム20が前後にずれて上部連結ワイヤ22が変形する領域とシートバックパッド70が変形する領域がおよそ合致し、シートバックパッド70と余長部24が変形しやすく、受圧部材40の後方への移動がスムーズになる。
【0059】
さらに、乗員Pの上体がシートバックS2に沈み込む際には、パッド保形部を構成するサイドフレーム本体部21と、その上方の縦パイプ部13に固定されたサイドエアバッグ装置60の取付け用ブラケット61が協働してシートバックパッド70の両側部の上下の部分を若干拘束することで、これらの部分が後方へ変形するのを抑制するため、シートバックパッド70は高さ方向の中間部分が無理なく容易に後方へ変形する。このため、シートバックパッド70の中央部71から受圧部材40の全体に後退移動荷重が確実に伝達されるようになり、乗員Pの上体が充分にシートバックS2に沈み込み、乗員PとヘッドレストS3の隙間が速やかに減少する。
【0060】
加えて、乗員Pの上体がシートバックS2に沈み込む際には、乗員Pの上体背部に対面するシートバックパッド70の中央部71が左右の側部72,72に対し、複数のスロット孔74が貫通状態で断続的に形成された吊込み溝73を境界として、容易かつ充分に後退移動する。このため、シートバックパッド70の中央部71から受圧部材40の全体に後退移動荷重が確実に伝達されるようになり、乗員Pの上体が充分にシートバックS2に沈み込む。
【0061】
従って、一実施形態の車両用シートSによれば、乗員Pの頭部の後傾を充分かつ確実に抑制し、また、乗員Pの頭部を充分かつ確実にヘッドレストS3で受け止めることができ、乗員Pの頸部に加わる衝撃を充分かつ確実に緩和することができる。また、乗員Pの肩部からシートバックS2に作用する後退移動荷重をクロスメンバ15の左右の屈曲部16,17がバランス良く受け止めるため、乗員Pの着座姿勢を安定させることができる。
【0062】
また、吊りワイヤ76は、スロット孔74を避けて迂回しているため、吊りワイヤ76は、スロット孔74から露出せず、吊りワイヤ76が露出する部分が少なくなることで、吊りワイヤ76とシートバックパッド70の密着性が向上し、シートバックパッド70と吊りワイヤ76の境目におけるシートバックパッド70の傷みも抑制される。
【0063】
そして、余長部24は、力布金具62から離間する方向へ膨出しているため、力布金具62と余長部24の干渉が防止され、上部連結ワイヤ22の組付作業性が向上している。
【0064】
以上、本発明に係る乗物用シートの一実施形態としての車両用シートSについて説明したが、本発明の乗物用シートは、一実施形態の車両用シートSに限定されるものではなく、その構造は適宜変更することができる。例えば、リクライニング機構RLを備えず、シートクッションS1とシートバックS2とヘッドレストS3とが一体に構成されたバケットタイプの車両用シートとしてもよい。
【0065】
また、本発明の乗物用シートは、船舶用や航空機用のシートとして構成することもできる。
【0066】
そして、クロスメンバ15が有する屈曲部16,17の数は、例示したように左右対称の計4つの場合に限られず、2つや3つであってもよい。
【0067】
また、一実施形態において、余長部24は、上に凸のU字(逆U字)形状をしていたが、前後に凸や、下方に凸の形状であってもよい。そして、上部連結ワイヤ22がサイドフレーム20に連結される両端部は、受圧部材40を支持する中間部よりも下にあっても構わない。
【0068】
また、一実施形態においては、吊りワイヤ76は、スロット孔74を左右方向中央側へ迂回していたが、左右方向外側へ迂回してもよい。