(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932012
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】アクティブ差動制限装置
(51)【国際特許分類】
F16H 48/22 20060101AFI20160526BHJP
F16D 28/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
F16H48/22
F16D28/00 Z
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-256429(P2014-256429)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-137767(P2015-137767A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】61/931,001
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/558,951
(32)【優先日】2014年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508151105
【氏名又は名称】デーナ、オータモウティヴ、システィムズ、グループ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ケネス イー. クーパー
【審査官】
稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3−4055(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0039652(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0171182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 28/00
F16H 48/00−48/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動ケースに配置された差動機構、および、前記差動ケースから外方に延伸する二つの対向する出力シャフトを有する差動組立体と、
二つの前記出力シャフトが延伸する方向に前記差動ケースから分離して形成され、二つの前記出力シャフトのうちの一方と前記差動ケースとの間の回転を選択的に規制するためのトルク結合ユニットと、
内部で前記差動組立体および摩擦クラッチ組立体を回転自在に支持する差動筐体であって、ボールおよびランプの組立体支持軸受、および、出力シャフト支持軸受を受け取るべく、二つの前記出力シャフトのうちの一方の周りにおいて半径方向内側延在部を含む、前記差動筐体と
を備える車両用の差動制限装置組立体であって、
前記トルク結合ユニットは、
二つの前記出力シャフトの一方の周りに配置された前記摩擦クラッチ組立体であって、二つの前記出力シャフトのうちの一方と駆動係合された第1部分、および、前記差動ケースと駆動係合された第2部分を含む前記摩擦クラッチ組立体と、
前記摩擦クラッチ組立体を選択的に摩擦して装着するべく、前記摩擦クラッチ組立体に隣接して配置されたボールおよびランプの組立体であって、少なくとも第1部分および第2部分を含み、前記第2部分は前記第1部分に対して回転自在である前記ボールおよびランプの組立体と、
選択的に前記ボールおよびランプの組立体の前記第1部分と前記第2部分との間での回転を引き起こすべく、前記ボールおよびランプの組立体の前記第1部分および前記第2部分の一方と駆動係合するアクチュエータと
を有し、
第1のスラスト軸受が前記摩擦クラッチ組立体と前記ボールおよびランプの組立体との間に配置され、これにより、前記第1のスラスト軸受は前記摩擦クラッチ組立体および前記ボールおよびランプの組立体に直接接触し、
前記出力シャフト支持軸受を受け取るための前記差動筐体の前記半径方向内側延在部は前記トルク結合ユニットと前記差動筐体との間に配置され、第2のスラスト軸受が前記摩擦クラッチ組立体と前記半径方向内側延在部との間に配置される、差動制限装置組立体。
【請求項2】
前記摩擦クラッチ組立体の前記第1部分は、内部クラッチハブによって二つの前記出力シャフトのうちの一方と係合される、請求項1に記載の差動制限装置組立体。
【請求項3】
前記内部クラッチハブは、二つの前記出力シャフトのうちの前記一方のシャフト上にある相補的な複数のスプラインと係合するためのスプライン内部表面を有する、請求項2に記載の差動制限装置組立体。
【請求項4】
前記内部クラッチハブは、前記摩擦クラッチ組立体の第1の複数のクラッチプレートを支持するためのスプライン外部表面を有する、請求項3に記載の差動制限装置組立体。
【請求項5】
前記摩擦クラッチ組立体の前記第2部分は、前記差動ケースに接続されたクラッチ缶である、請求項2から4のいずれか一項に記載の差動制限装置組立体。
【請求項6】
前記クラッチ缶は、二つの前記出力シャフトのうちの一方と同軸である、請求項5に記載の差動制限装置組立体。
【請求項7】
前記差動ケースは、少なくとも1つの差動ピニオンを保持する差動スパイダに接続される、請求項1から6のいずれか一項に記載の差動制限装置組立体。
【請求項8】
前記内部クラッチハブは、前記クラッチ缶の半径方向内側に配置される、請求項5または6に記載の差動制限装置組立体。
【請求項9】
前記クラッチ缶は、第2の複数のクラッチプレートを備える内面を有する、請求項5、6または8のいずれか一項に記載の差動制限装置組立体。
【請求項10】
前記第1のスラスト軸受が前記摩擦クラッチ組立体と作動リングとの間に配置され、前記摩擦クラッチ組立体は前記第1のスラスト軸受と前記差動機構との間に配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載の差動制限装置組立体。
【請求項11】
前記作動リングは、前記ボールおよびランプの組立体の一部分である、請求項10に記載の差動制限装置組立体。
【請求項12】
前記差動筐体における第1の軸受は、前記作動リングが前記差動筐体の中で回転するべく、前記作動リングを支持する、請求項11に記載の差動制限装置組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2014年1月24日に出願された米国仮特許出願第61/931,001号の優先権および恩恵を主張する。この特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
差動制限装置によって、車両の動力伝達経路にある差動機能の削減または除去が容易になる。クラッチを係合するか、または、車両のサイドシャフトを残りのサイドシャフトまたは差動装置の筐体に駆動係合することによって、差動機能を低減し、または、除去することができる。そのような機能性は、低減された摩擦環境における静止摩擦を増大させ、車両の制御を向上すべく実行され得る操作の多様化を容易にすることを目的として、用いられるかもしれない。
【0003】
典型的には、差動制限装置の一部を形成するプレート型のクラッチの係合を通じて、差動機能を低減または除去する。カスタマイズ差動ケースは、クラッチを収容する必要がある。そのようなカスタマイズ差動ケースは、差動制限装置を組み込んでいる車両のコストを大幅に増大させるかもしれない。さらに、差動装置、差動装置を支持する複数の軸受、クラッチ、および、サイドシャフトの向きは、差動制限装置のコストおよび複雑性を増大させる、新たな設計上の考慮すべき事柄を提起するかもしれない。
【0004】
本発明は、車両用の差動制限装置に関する。より具体的には、従来の設計と比べて、製造性を向上し、かつ、差動制限装置のコストを減少させる差動制限装置の設計に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両用の差動制限装置組立体は、車両の主要駆動機と駆動係合された差動組立体を有する。差動機構は、差動ケース内に配置され、差動ケースから外方に延伸する、2つの対向する出力シャフトを有する。それぞれの出力シャフトは、自動車の車輪と駆動係合される。
【0006】
組立体は、2つの出力シャフトのうちの1つと差動ケースとの間における回転を選択的に規制すべく、トルク結合ユニットも有する。トルク結合ユニットは、2つの出力シャフトのうちの1つの周りに配置された摩擦クラッチ組立体を有する。摩擦クラッチ組立体は、2つの出力シャフトのうちの1つと駆動係合された第1部分、および、差動ケースと駆動係合された第2部分を備える。
【0007】
トルク結合ユニットは、摩擦クラッチ組立体を選択的に摩擦して装着すべく、摩擦クラッチ組立体に隣接して配置された、ボールおよびランプの組立体も有する。ボールおよびランプの組立体は、少なくとも第1部分および第2部分を備える。第2部分は、第1部分に対して回転自在である。
【0008】
トルク結合ユニットは、ボールおよびランプの組立体の第1部分と第2部分との間での回転を選択的に引き起こすべく、ボールおよびランプの組立体の第1部分および第2部分の1つと駆動係合するアクチュエータも有する。
【0009】
組立体は、差動組立体、および、その内部の摩擦クラッチ組立体を回転自在に支持する差動筐体も有する。差動筐体は、ボールおよびランプの組立体支持軸受および出力シャフト支持軸受を受け取るべく、2つの出力シャフトのうちの1つの周りにある半径方向内側延在部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】アクティブ差動制限装置の1つの実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、そうでないことを明確に特定されている場合を除き、様々な代替的方向および段階の順番を想定していることが理解されるであろう。添付の図面で図示され、以下の明細書で説明される特定的なデバイスおよびプロセスは、本発明の発明概念の単に例示的な実施形態であることも理解されるであろう。従って、開示される実施形態に関する特定的な寸法、方向、向き、または他の物理的な特性は、そうでないことを明確に示していない限り、限定するものであると見なされるべきではない。
【0012】
図1で示されるように、トルク結合ユニット12を備える差動装置10が設けられる。ピニオンシャフト14が設けられ、回転動力源に接続される。ピニオンシャフト14は、電源によって回転すべく、軸受16上に取り付けられる。電源は、内燃エンジン(図示せず)などであってもよい。
【0013】
ピニオンシャフト14は、そこに配置された、シャフト14と共に回転するピニオンギア18を有する。ピニオンギア18は、リングギア20とかみ合わされる。ピニオンギア18は複数の歯(図示せず)の第1のセットを有し、リングギア20は複数の歯(図示せず)の第2のセットを有する。複数の歯の2つのセットは、互いに相補的であり、1つのセットから他方のセットに回転駆動を与えるべく、互いにかみ合わされる。
【0014】
リングギア20は、差動ケース22に接続される。より具体的には、リングギア20は、差動ケース22と一体的に形成されてもよく、差動ケース22に溶接されてもよく、または、複数の留め金具で差動ケース22に固定されてもよい。差動ケース22とピニオンギア18との間におけるリングギア20の接続によって、差動ケース22の回転がもたらされることが理解できる。
【0015】
差動ケース22は、差動ケース22に固定されているスパイダシャフト26上で回転可能に支持された、差動ピニオンギア24のセットを収容する。より具体的には、差動ピニオンギア24は、スパイダシャフト26上で互いに対向するように配置される。
図1は2つの差動ピニオンギア24の使用法を示している。しかしながら、差動装置10は、より多くの数の差動ピニオンギア24を使用すべく構成されてもよいことが理解できる。差動ピニオンギア24は、一対の対向するサイドギアと係合する。サイドギアは、軸32の周りを回転すべく適合された第1および第2のサイドギア28、30を備える。
【0016】
差動ケース22は、差動筐体34(部分的に図示されている)の内側で回転すべく取り付けられる。差動ケース22は、差動筐体34の内側でその回転を支持すべく、軸受36上に取り付けられる。
【0017】
第1および第2のサイドギアシャフト38、40が、第1および第2のサイドギア28、30から夫々延伸していることが、
図1において描かれている。第1のサイドギアシャフト38は、第1の端部分42および第2の端部分44を有する。第2のサイドギアシャフト40は、第1の端部分45および第2の端部分46を有する。
【0018】
第1のサイドギアシャフト38の第1の端部分42は、外部表面(図示せず)上において、第1のサイドギア28の中央開口(図示せず)の内側に嵌合する、スプライン(図示せず)のセットを有する。中央開口は、相補的な内歯スプライン(図示せず)によって画定される。第1のサイドギアシャフト38は、従って、第1のサイドギア28と共に回転する。第1のサイドギアシャフト38は、軸受46上において、差動筐体34の内側で回転すべく取り付けられる。軸受46は、ラジアルまたはローラー軸受であってもよい。
【0019】
第1のサイドギアシャフト38の第2の端部分44は、等速ジョイント(図示せず)または車輪フランジを通す等の任意の従来のやり方で、車輪組立体(図示せず)と駆動係合される。
【0020】
第2のサイドギアシャフト40の第1の端部分45は、外部表面(図示せず)上において、第2のサイドギア30の中央開口(図示せず)の内側に嵌合するスプライン(図示せず)のセットを有する。中央開口は、相補的な内歯スプライン(図示せず)によって画定される。第2のサイドギアシャフト40は、従って、第2のサイドギア30と共に回転する。第2のサイドギアシャフト40は、軸受47上において、差動筐体34の内側で回転すべく取り付けられる。軸受47は、ラジアルまたはローラー軸受であってもよい。
【0021】
第2のサイドギアシャフト40の第2の端部分46は、等速ジョイント(図示せず)または車輪フランジを通す等の任意の従来のやり方で、車輪組立体(図示せず)と駆動係合される。
【0022】
差動ケース22は、クラッチ缶48と接続される。クラッチ缶48および差動ケース22は、一体的に形成され、かつ、互いに単一物であってもよく、別々に形成されてもよい。もし別々に形成されるならば、差動ケース22は、機械的留め金具やスプライン等によってクラッチ缶48に接続されてもよい。
図1において示されるように、軸受36は、筐体34の内側で差動ケース22の回転を支持する。
【0023】
描かれた実施形態において、クラッチ缶48は円筒状の形をした物である。クラッチ缶48は、第1の複数のクラッチプレート52を保持する。クラッチプレート52は半径方向内側に延伸しており、クラッチ缶48の内面54に固定される。クラッチプレート52は、複数のスプライン(図示せず)を通じてクラッチ缶48と共に回転すべく固定されるが、内面54に沿って軸方向に動くことを可能とされる。
【0024】
クラッチプレート52は、クラッチパック60を形成すべく、内部クラッチハブ58上に配置された第2の複数のクラッチプレート56と交互に配置される。内部クラッチハブ58は、半径方向内側延在部を有する、円筒状の形をした部材である。内部クラッチハブ58は、少なくとも部分的に、クラッチ缶48の内側に配置される。より具体的には、クラッチ缶48は、少なくとも部分的に、内部クラッチハブ58と同軸である。内部クラッチハブ58は、スプライン内部表面62およびスプライン外部表面64を有する。内部クラッチハブ58は、スプライン内部表面62、および、第1のサイドギアシャフト38上に形成された複数の対応するスプラインを通じて、第1のサイドギアシャフト38と駆動係合される。
【0025】
第2の複数のクラッチプレート56は、複数のスプライン(図示せず)を通じて内部クラッチハブ58と共に回転すべく固定されるが、内部クラッチハブ58のスプライン外部表面64に沿って軸方向に動くことを可能とされる。
【0026】
クラッチアクチュエータ組立体66は、クラッチパック60に隣接して配置される。クラッチアクチュエータ組立体66は、アクチュエータ68、ギアセット70、および、ボールおよびランプの組立体72を備える。ボールおよびランプの組立体72が係合位置に配置される場合、軸受73は、筐体34の内側において、ボールおよびランプの組立体72の回転を支持する。
【0027】
アクチュエータ68は、小型で容易に制御可能となるので、可逆電動モータ等であってもよい。油圧または空圧式等の、任意の他のアクチュエータの適切なタイプが用いられてもよく、これらは本発明の範囲内であることが理解されるであろう。
【0028】
アクチュエータ68は、一組の減速ギアであるギアセット70を駆動する。
図1において示されるように、アクチュエータ68の第1のギア74は、第2のギア76を駆動する。第2のギア76は、第3のギア78を駆動する。ギア74、76、78は、モータと第3のギア78との間における、望ましい、トルク速度の低減を実現する。様々な速度およびトルクをもたらすべく、示されているもの以外に、他のギアの数および向きが可能である。
【0029】
第3のギア78は、作動リング80と駆動係合している。より好適には、作動リング80は、半径方向の外面上において、第3のギア78上の複数の歯と係合する複数の歯81のセットを有する。作動リング80の複数の歯81は、作動リング80の周囲のエッジから円周方向に延びている。作動リング80の歯81は、作動リング80の円周全体、または、その円周の一部を覆ってもよい。第3のギア78の回転は、作動リング80の複数の歯81を駆動し、それにより、作動リング80を回転させる。
【0030】
作動リング80は、ボールおよびランプの組立体72の一部分である。ボールおよびランプの組立体72は、圧力プレート82、および、圧力プレート82と作動リング80との間における複数のボール84も備える。
【0031】
圧力プレート82は、そこに適用される軸方向の力に抵抗する。これにより、作動リング80に、そこに隣接して配置された第1のスラスト軸受85へと力を加える。第1のスラスト軸受85に加えられるその力は、クラッチパック60を装着すべく用いられる。圧力プレート82は、筐体34の内側において、回転不可能に取り付けられる。
【0032】
作動リング80に対面する、圧力プレート82の環状の半径方向面86には、軸方向の深さが変化する、周方向に延びる一組の溝(図示せず)が形成される。圧力プレート82におけるその溝は、作動リング80の対向する環状面88上の相補的な溝(図示せず)と対面する。その深さは、反対側の円周方向で変動する。
【0033】
対応する数のボール84は、圧力プレート82と作動リング80との間に配置される。ボールは、対面する一対の溝のそれぞれに1つある。ボール84は、同様のやり方で機能するローラーであってもよいことが理解できる。
【0034】
代替的に、作動リングの反対側に設けられる共働するカム面を含むカムディスクアクチュエータ(図示せず)、および、圧力カラーが用いられてもよい。アクチュエータの他の型が用いられてもよいことも理解される。
【0035】
アクチュエータ68が、作動リング80を圧力プレート82に対して回転移動させる場合、作動リング80は軸方向に移動し、これによって、作動リング80はクラッチパック60を摩擦して装着することが、さらに理解されるであろう。作動リング80の軸方向の動きは、第1のスラスト軸受85を通じて、クラッチパック60へと伝動される。第1のスラスト軸受85は、作動リング80とクラッチパック60との間の相対的な回転を可能とし、摩擦を低減すべく、作動リング80とクラッチパック60との間に設けられる。第2のスラスト軸受90は、クラッチ缶48と差動筐体34との間に配置され、相対的な回転を可能にし、クラッチ缶48と差動筐体34との間の摩擦を低減させる。
【0036】
クラッチプレート52、56間の粘性抵抗トルクを最小化すべくクラッチプレート52、56の均一な離間を確実にすることを目的として、波状バネ(図示せず)が第1の複数のクラッチプレート52と第2の複数のクラッチプレート56との間に配置されてもよい。波状バネはまた、軸受73、スラスト軸受85、90、および、ボールおよびランプの組立体72の配置を確実にするべく、予圧を生成する。
【0037】
クラッチプレート52、56の圧縮によって、クラッチプレート52、56が一緒に回転する。クラッチ缶48の内部クラッチハブ58への接続によって、差動ケース22が第1のサイドギアシャフト38と駆動係合される。さらに、差動ケース22が第1のサイドギアシャフト38と駆動係合すると、差動ケース22は差動ピニオンギア24を通じて第2のサイドギアシャフト40とも駆動係合する。ボールおよびランプの組立体72の係合の程度に応じて、差動装置10の差動機能は低減または除去される。
【0038】
アクチュエータ68、ひいては、トルク結合ユニット12は、電子制御ユニット(図示せず)によって制御される。その制御は、限定はしないが、車輪速度を含む、少なくとも1つの車両パラメータに従って、車両走行条件を判断することにより実行される。従って、差動装置10は、多量の静止摩擦を有する車輪組立体にトルクが向けられることを可能にする、リミテッドスリップ機能を備える。アクチュエータ68が作動されない場合、差動装置10はリミテッドスリップの無いオープンモードで動作する。さらに、トルク結合ユニット12は、車両の発車操作中に車輪組立体の少なくとも1つの車輪組立体のスリップを低減すべく係合されてもよい。トルク結合ユニット12はまた、望ましくない偏揺れ障害に対して車両を制動すべく、車両の加速操作中に係合されてもよい。さらにまだ、トルク結合ユニット12はまた、望ましくないオーバーステア状態を修正するための内側位置を有する車輪組立体にトルクを伝達すべく、車両のコーニング操作中に係合されてもよい。
【0039】
トルク結合ユニット12を備える差動装置10は、従来から知られている差動制限装置に対していくつかの利点を有する。差動ケース22がクラッチ缶48と離して形成される場合、差動ケース22は標準スタイルのオープン差動ケースであってもよい。差動ケース22がクラッチ缶48と離して形成される場合、差動ケース22の必要とされる唯一の変更は、例えば機械的留め金具や、スプライン等を通じて、クラッチ缶48との駆動係合を可能にすることである。従って、各軸受36の位置および型も、標準スタイルのオープン差動ケースと同じままであり、トルク結合ユニット12を備える差動装置10のコストを削減している。
【0040】
特許法の規定に基づいて、本発明は、その好適な実施形態を示すべく考えられたものの中で説明された。しかしながら、本発明は、その範囲または真意から逸脱せずに、特に図示され説明されたもの以外の方法で実施され得ることを留意する必要がある。