特許第5932013号(P5932013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デーナ、オータモウティヴ、システィムズ、グループ、エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特許5932013-車両駆動系トルク管理プロセス 図000005
  • 特許5932013-車両駆動系トルク管理プロセス 図000006
  • 特許5932013-車両駆動系トルク管理プロセス 図000007
  • 特許5932013-車両駆動系トルク管理プロセス 図000008
  • 特許5932013-車両駆動系トルク管理プロセス 図000009
  • 特許5932013-車両駆動系トルク管理プロセス 図000010
  • 特許5932013-車両駆動系トルク管理プロセス 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932013
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】車両駆動系トルク管理プロセス
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/06 20060101AFI20160526BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   F16D48/06 102
   F16D48/02 640K
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-257114(P2014-257114)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-129584(P2015-129584A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】61/918,887
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/011,601
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/571,365
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508151105
【氏名又は名称】デーナ、オータモウティヴ、システィムズ、グループ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ペリー エム. パイエリ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード エー. ネラムス
(72)【発明者】
【氏名】スコット エー. スミス
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−089610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチパックおよびエンコーダを有する駆動軸組立体と、ソフトウェアと共に埋設コントローラを有するアクチュエータを駆動するモータとを備える車両切断ユニットを提供する段階であり、前記アクチュエータは前記クラッチパックに及ぼされるクランプ力を管理し、前記エンコーダは複数のクラッチ位置に対応する複数のモータ回転角度位置を与える段階と、
最大コマンドモータトルク値を有する最大に圧縮されたクラッチ位置に至るまで、一連のクラッチ位置を通じて、完全に開いて最大に離間したクラッチ位置から前記モータをステッピングし、各段階で実際のトルク値を記録することにより、複数の結合トルク制限CTLを導出する段階と、
前記一連のクラッチ位置に各々対応する前記複数の結合トルク制限CTLを複数のクラッチ力値に変換し、これによって前記一連のクラッチ位置と前記複数のクラッチ力値とを関連付け、物理的要因が考慮された前記一連のクラッチ位置と前記複数のクラッチ力値との対応表である物理的要因変換表をコントローラに格納する段階と、
コマンドモータトルク値の入力に応じて前記クラッチ力値を算出し、算出された前記クラッチ力値に対応する前記クラッチ位置を前記物理的要因変換表からルックアップする段階と、
ルックアップした前記クラッチ位置に基づいて、駆動軸と車軸との間の動力の結合を制御する段階と
を含む車両駆動系トルク管理プロセスであって、
前記クランプ力は、複数の前記クラッチ力値の合力であり、
前記ルックアップする段階では、前記コマンドモータトルク値から前記クラッチ力値への変動値を動的に決定して前記クラッチ力値を算出する、
車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項2】
前記変動値は機械的摩耗、機能不全、及び、誤組み付けの少なくとも1つを含み、前記機械的摩耗、機能不全、及び、誤組み付けの少なくとも1つはディファレンシャル及びその複数の関連部品内において検出可能である、請求項1に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項3】
各クラッチ力値を各々の結合トルク制限CTLへと変換する段階をさらに含み、前記結合トルク制限CTLは、CTL=(摩擦係数)×(有効半径)×(摩擦面の数)×(クランプ力)として定義される、請求項1または2に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項4】
前記変動値は摩擦材における油の量を含み、前記油の量はディファレンシャル及びその複数の関連部品内で検出可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項5】
止め部が、0にセットされる最大にクラッチが離間する位置で前記モータを止める、請求項1からのいずれか一項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項6】
前記クラッチパックを初期に圧縮された状態にセットすべく前記モータを駆動する段階と、
クラッチ圧縮を通じた反力の結果として前記モータが失速するまで、約10パーセントである、モータトルクのより低いレベルを適用する段階と
をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項7】
増大する圧縮で、前記クラッチパックに反力を加えることに起因して、前記モータが再び失速するまで利用可能な、約90パーセントである、モータトルクの高いレベルを適用する段階をさらに含み、
複数の失速したモータトルクの低いレベルおよび高いレベルの両方と、複数の失速したモータ位置の低いレベルおよび高いレベルの両方とが記録される、請求項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項8】
前記クラッチを一定モータトルクで駆動する段階と、
速度を監視する段階と
をさらに含み、
速度が減少するのに反して、初期クラッチ接触の後により多くの動力が必要とされる、請求項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項9】
a)第1の複数のモデルパラメータを確立すべく、クラッチ位置データに基づいて、速度を分析する段階と、
b)第2の複数のモデルパラメータを確立すべく、一定モータ速度に対しフィードバック制御アルゴリズムを使用し、電流に基づいて、複数のコマンドトルク値を監視する段階と、
それによって、前記第1の複数のモデルパラメータおよび前記第2の複数のモデルパラメータから2つの線分を確立する段階と
をさらに含み、
低力線分が、前記クラッチパックが圧縮され始める場合の準拠状態で、コマンドトルク値に対するクラッチ位置の関係を規定し、高力線分が、前記クラッチパックが圧縮される場合の準拠状態で、コマンドトルク値に対するクラッチ位置の関係を規定する、請求項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項10】
前記モータ位置を前記クラッチに印加される力の関数として表し、コマンドトルク値に対するモータ位置関係が前記低力線分から前記高力線分へと変化する有効な箇所を表す方程式によって表わされる、対応するクラッチ圧縮力へと前記2つの線分に関連するコマンドトルク値を変換し、その結果として、車両駆動系トルク管理プロセスの初期キャリブレーションをもたらす段階をさらに含む、請求項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項11】
「クランプ力×クラッチ摩擦係数×等価半径×摩擦面の数」に等しい、クラッチを通して伝動されるトルクの量を算出する段階をさらに含み、
前記クラッチを通じて伝動され得る前記トルクの最大量が、クラッチ結合トルク制限(CTL)として示される、請求項10に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項12】
温度変換表から摩擦係数をルックアップする際にクラッチ温度を利用し、それによって、方程式「クランプ力=CTL÷(摩擦係数×等価半径×摩擦面の数)」を通じてクランプ力を算出する段階をさらに含む、請求項11に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項13】
前記モータに、前記算出されたクランプ力に関連する望ましいクラッチ位置へと向かうようコマンドする段階をさらに含む、請求項12に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項14】
前記フィードバック制御アルゴリズムは、proportional-integral-derivative controller closed loop algorithmである、請求項9から13のいずれか一項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項15】
前記コントローラの複数の表に格納される複数の物理的要因は、モータ電流、前記コントローラに加えられる供給電圧、モータ位置、モータ温度、クラッチ流体温度、アクチュエータ制御可能状態、および、CANバスからのコマンドメッセージを含み、制御セットポイントは受信したCANメッセージデータ中に与えられる、請求項1から14のいずれか一項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【請求項16】
低いレベルのクラッチトルク箇所で、複数の連続クラッチ位置の最初の前記10パーセントを通じて駆動軸と車軸との間の動力の結合を迅速に制御し、これら位置から複数の結合トルク値を導出する、請求項6から14のいずれか一項に記載の車両駆動系トルク管理プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、35U.S.C.§119(e)の下で、2013年12月20日に出願された米国仮特許出願第61/918,887号、および、2014年6月13日に出願された米国仮特許出願第62/011,601号の恩恵を主張する。これら特許出願は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、車両駆動軸組立体を通じてトルク伝動を管理する駆動系制御アクチュエータに関する。より具体的には、本発明は、車両における駆動軸と複数の後部軸の1つとの間で動力を結合するための車両クラッチパックに及ぼされるクラッチクランプ力を管理する、駆動系制御アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば摩擦クラッチ組立体および油圧ブレーキシステム等におけるように、圧縮作動液源を利用する様々な用途で、油圧アクチュエータが使用されることは知られている。また、モータ駆動スクリュ軸、スクリュ軸に通される非回転式ナット、および、油圧シリンダの中でスライド可能に備付けられ、ナットに固定される油圧ピストンを利用する一方で、電気モータで油圧アクチュエータを駆動すべく油圧を生成することがよく見られる。
【0004】
電気モータが作動される場合、スクリュ軸の回転運動が、スクリュ軸に沿って直線的に移動するナットへと伝動される。ピストンはナットに固定されるので、スクリュ軸に沿って動きもする。その結果、参照により本明細書に組み込まれるKrisherの米国特許第8,118,571号で教示されるように、摩擦クラッチにクランプ力を加える油圧ピストンから、トルクに移る望ましい油圧を発生する。
【0005】
特に、Krisherは、クラッチパックのトルク容量は、スクリュ軸沿いの第2のピストンに加えられる油圧流体圧力に比例することを教示している。それゆえ、電気モータによって生ずる少量のトルクにより、第2のピストンに多大な力をもたらすことができる。トルク増幅がモータ駆動スクリュを導出することによって実現される一方で、力増幅は第2のピストンの表面積に対する第1のピストンのピストンヘッドの表面積の割合によって実現される。
【0006】
従来の油圧アクチュエータは、過去に、駆動軸から車両後部車輪へのトルクの移動を十分に制御してきた。けれども、ドラッグトルクを最小化して解除すべく大きな移動距離を与える一方で、車両後部車輪へのトルクの移動を制御するためのより早い応答時間を有するアクチュエータを備えることが有利であろう。また、初期クラッチ係合の位置を検出すること、および、ディファレンシャルおよびその関連部品の中での摩擦、機能不良、並びに/若しくは、誤組に起因する機械的摩耗に対して補償することが有益であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
電子部品を有する電子回路ボードを備える車両駆動軸組立体切断ユニット埋設コントローラ(DUEC)を通じてトルク伝動を管理する駆動系制御アクチュエータは、例えばディファレンシャル駆動軸組立体のような車両駆動軸組立体を通じてトルク伝動を管理する。DUECは、クラッチパックに及ぼされるクランプ力を管理する備付電気モータ駆動アクチュエータを制御する。クラッチパックは、クラッチ位置に基づいて、車両の駆動軸と複数の後部軸の1つとの間での動力の結合を調整する。その結果、その結合制御によって、車両の安定性・可動性機能を実現するための手段が与えられる。
【0008】
第1の実施形態において、初期化の際に、DUECは複数の結合トルク値(別名、結合トルク制限)(CTL)を導出する。CTLは、位置と力の表における指標としての役割を担う、様々なクラッチ位置測定およびモータトルク推定からの複数のトルク値である。CTLを導出することを目的として、駆動モータは、完全オープンの最大にクラッチが離間する0参照位置から駆動される。推定されるモータコマンドトルクは、モータにおいて、あるいはクラッチ係合メカニズムにおける他のどこかにおいて測定され得る一連のn段階位置を通じ、0から始まる。モータコマンドトルクは、0トルクから、最大コマンドトルクを有する、最大にクラッチが圧縮される位置まで増加する((0, 1x
【数1】
(以下、同様に当該記号をTと表す。)max/n, (2xTmax/n), … (nxTmax/n))。
【0009】
クラッチトルク伝動容量はクラッチ圧縮に関係し、クラッチ圧縮は、各モータ位置のモータトルクに関係する。その結果として、これら0からnのモータコマンドトルクは0からnのクラッチ力へと変換される。そのため、位置と力の表における複数の指標によって、モータ位置がクラッチ力に関係付けられ、そして更に、クラッチトルク容量を決定すべくクラッチ力を用いることができる。
【0010】
そして、通常の操作を通じて、各測定されたクラッチ位置が、対応する力をルックアップすべく、(初期化するに際し生成される)位置と力の表で指標としての役割を果たす。言い換えると、ルックアップテーブルが展開され、これによって、モデルパラメータがコントローラの中に格納されるという結果がもたらされる。このルックアップテーブルは、参照順に展開され、(図6に示すように)モータトルクデータに対するモータ位置を含み得る。また、このルックアップテーブルは、摩耗に起因して変化する特性を与えられた機械の寿命を通じて、様々な環境・機械の状態に亘り、コマンドモータトルクからモータ位置への適切な変化を可能にすべく、時々再較正され、コントローラへの入力として用いられ得る。従って、ルックアップテーブルにより、現在の力を正確に選択するための位置と力の関係が与えられる。
【0011】
それぞれの現在の力はそれから、特定温度に関連するクラッチの多様性を説明するクラッチ温度から導出される係数(kT)に加えて、ロバストな組立体の多様性を説明する係数を使用する個々のCTLへと変換される。クラッチの多様性に影響する他の複数の要因が、このようにして使用するための追加的な係数を生成すべく用いられてもよい。これら現在の力の選択から、クラッチ操作温度範囲における精度の改善が実現されもする。
【0012】
別の実施形態において、初期化の際に、DUECは、クラッチパックを完全に開いた位置へと駆動するようにモータにコマンドすることで、結合トルク制限(CTL)を導出する。電気モータ駆動アクチュエータは、モータを最大にクラッチが離間する位置で止める機械的止め部を有する(例えば、本明細書で参照により組み込まれるPritchardの米国特許第8,490,769号の図1Aにおける止め部102を参照)。機械的止め部に接触すると、クラッチ位置は0にセットされる。次に、モータに、完全に圧縮された状態に向けてクラッチパックを駆動させる。この状態において、クラッチ圧縮位置を増す一連のk(例えば、k=32)を通じて完全に圧縮された状態に向けてモータを駆動すべく、フィードバック制御(おそらく比例積分微分コントローラ(PID制御)である、図5における制御システムが図示されたブロック図を参照)に基づくアルゴリズムが利用される。「Calculate Required Force」は、完全に圧縮された状態のCTLに向かう複数の段階へと分割される、方程式「クランプ力=CTL÷(摩擦係数×等価半径×摩擦面の数)」を使用してもよい。
【0013】
これらkのクラッチ位置のそれぞれの中で、DUECはモータが動きを止めるのを待ち、そして、他のクラッチ位置がコマンドモータトルクと一緒に記録される。これら複数の段階から、各トルク段階に関連する32の位置を有する第2の実施形態の表が展開される。そして、クラッチ位置が一連の段階の各モータトルクレベルに対して何であるかは知られている。
【0014】
さらに、クラッチを通して伝動され得るトルクの量は、「クランプ力×クラッチ摩擦係数×等価半径×摩擦面の数」である。クラッチを通して伝動され得るトルクの最大量はCTL値であり、クラッチ摩擦係数はクラッチ温度および他の影響を及ぼすものによる影響を受ける。
【0015】
そして、通常の操作を通じ、各測定されたクラッチ位置によってコントローラにCTLが与えられる。CTLは、方程式「クランプ力=CTL÷(摩擦係数×等価半径×摩擦面の数)」によるクランプ力から計算される。摩擦係数は、別個の表から来る。リードクラッチ温度は、この別個の表から摩擦係数をルックアップすべく用いられる。他の影響を及ぼすものは、同様にして含まれ得る。
【0016】
第3の実施形態において、初期化の際に、クラッチパックを完全に開いたクラッチ位置に駆動するようモータにコマンドすることによって、DUECは結合トルク制限(CTL)を導出する。電気モータ駆動アクチュエータは、最大にクラッチが離間する位置にモータを止める機械的止め部を有する。機械的止め部に接触すると、クラッチ位置は0にセットされる。次に、モータは、クラッチパックをモータトルクの2つのレベルが適用される完全に圧縮された状態に向けて駆動すべくセットされる。第1に、モータトルクの低いレベル(例えば、およそ10パーセント)が、クラッチ圧縮を通じた反力に起因してモータが失速するまで適用される。これに、より高い圧縮におけるクラッチパックのより高い反力に起因してモータが再び失速するまで適用される、モータトルクの高いレベル(例えば、およそ90パーセント)が続く。これら停止(失速)した箇所の両方で、モータトルク、および、そのクラッチ位置が記録される。
【0017】
従って、与えられたモータトルクで、電気モータ駆動アクチュエータは、抵抗力との平衡点に達するまで移動する。その箇所で、モータトルクはクラッチ位置に関係する。そこのモータトルクの低いレベルおよび高いレベルは、クランプ力が実質的に0から増加し始める値へと変化する場所、および、図6に示すようにクランプ力が固い係合ラインのはるか上をいくクラッチ位置である。失速位置は、静的なモータトルク値で生じるべきである。
【0018】
第3の実施形態に対する第1の変形形態は、一定モータトルクでクラッチを駆動し、速度を監視することである。そこでは、より多くの動力が初期クラッチ接触の後に必要とされ、かつ、速度が減少し得る。そして、速度(すなわち位置データ)応答の分析が、モデルパラメータを確立すべく利用され得る。
【0019】
第3の実施形態に対する第2の変形形態は、一定モータ速度に対してフィードバック制御アルゴリズムを利用する一方でクラッチを駆動し、そして必要とされるモータトルク(または電流)を監視することである。そして、電流データの分析は、モデルパラメータを確立すべく用いられ得る。
【0020】
従って、2つの線分が2箇所から確立される。低力線分が、クラッチパックが圧縮され始める場合の準拠状態で、モータトルクとの位置関係を規定する。高力線分が、クラッチパックが圧縮された場合の準拠状態で、モータトルクとのクラッチ位置関係を規定する。
【0021】
その結果として、これらの線分におけるモータトルク値が、対応するクラッチ圧縮力へと変換される。モータトルクから圧縮力へのこれら変換は、方程式によって行われる。それゆえ、これらの線分は、モータ位置をクラッチに印加される力の関数として表し、そして、モータトルクに対する位置関係が低力線から高力線へと変化する有効な箇所も表している。これは、初期キャリブレーションフェーズを決定する。
【0022】
その結果、クラッチを通じて伝動され得るトルクの量は「クランプ力×クラッチ摩擦係数×等価半径×摩擦面の数」であり、それは、クラッチを通じて伝動され得るトルクの最大量、および、所定のクラッチ結合トルク制限(CTL)とみなされる。
【0023】
他の実施形態におけるように、クラッチ摩擦係数はクラッチ温度による影響を受ける。通常の状態の下で、車両制御により、CTLがDUECに与えられる。クランプ力が「クランプ力=CTL÷(摩擦係数×等価半径×摩擦面の数)」で計算される。摩擦係数は表から来るものであり、クラッチ温度はこの表から摩擦係数をルックアップすべく用いられる。従って、必要とされる制御されたクランプ力で、望ましい位置が実現され、初期キャリブレーション中に導出される直線方程式および交点から引き出される必要がある。この情報から、モータがその位置へと向かうようコマンドされる。
【0024】
本発明の更なる目的および利点は、明細書の一部を形成する添付の図面を参照して、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。同様の参照符号は、いくつかの図の対応する部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に従う、後部切断ユニットの電気機械的概略図である。
図2図1の組立てられた後部切断ユニットの3次元図である。
図3図1の後部切断ユニットの3次元断面側面図である。
図4図1の後部切断ユニットの部分的3次元断面側面図である。
図5】本発明に従う、制御システム方法のブロック図である。
図6】本発明に従う、クラッチパック位置に対するモータトルクのグラフである。
図7図4の後部切断ユニットの部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、そうでないことを明確に特定されている場合を除き、様々な代替的方向および段階の順番を想定していることが理解されるであろう。備付の図面で図示され、以下の明細書で説明される特定的なデバイスおよびプロセスは、添付の特許請求の範囲で定義される発明概念の単に例示的な実施形態であることも理解されるであろう。従って、開示される実施形態に関する特定的な寸法、方向、または他の物理的な特性は、特許請求の範囲がそうでないことを明確に示していない限り、限定するものであると見なされるべきではない。
【0027】
図1から図7は、後部切断ユニットであり得る車両切断ユニット(DU)10を示している。それは、内部にディファレンシャル(図示せず)を有する駆動軸組立体16と、車軸26、28を備える駆動軸24とを含む。DU10はさらに、電子部品14aおよびソフトウェアを有する電子回路ボード14を有する切断ユニット埋設コントローラ(DUEC)12を含む、モータ駆動アクチュエータ20を備える。
【0028】
駆動軸組立体16は、モータ18、クラッチパック22、複数のボール38を有するボールランプ30、複数のギア32、および、エンコーダ34を含む。モータ駆動アクチュエータ20は、クラッチパック22に及ぼされるクランプ力を管理する。エンコーダ34によって、複数のモータフェーズに適用される電圧を管理するための複数のモータステータ巻線に対する、複数のモータ磁石のモータ回転角度位置が与えられる。モータ18はブラシレスである。
【0029】
その結果として、論理的クラッチ位置指標が、DUEC12によって決定される複数の線形位置と併せてエンコーダ34から形成される。複数の線径位置はモータ回転角度を積分することによって与えられ、線形位置はモータ回転角度に比例する。モータ駆動アクチュエータ20は、クラッチパック22に及ぼされるクランプ力を管理する。それによって、一連のクラッチ位置を通じて完全開放である最大にクラッチが離間する位置からモータ18をステッピングし、最大コマンドトルク値を有する最大にクラッチが圧縮される位置の各段階でモータ駆動コマンドトルク値を記録することで、結合トルク値または制限CTLから導出される位置に基づいて、駆動軸24と、車両の後部にあってもよい(図示してないが当技術分野においてはよく見られる)車軸26、28の1つとの間の動力の結合を制御し、各クラッチ位置における複数の駆動モータコマンドトルク値(例えば、見積値)を記録し、かつ、各駆動モータ駆動コマンドトルク値をクラッチ位置の関数として各々クラッチ力値へと変換する。それによって、各クラッチトルクは、コントローラDUEC12に格納される変換表に基づくクラッチ位置に関係する。これら複数のクラッチ位置は、順に、各クラッチアクチュエータ位置のそれぞれに対するクラッチトルクに影響する物理的要因に関連する。これら複数のクラッチ位置は、各複数のアクチュエータ位置のそれぞれに対するクラッチジオメトリに基づいてもよい。
【0030】
特に図2は、電気モータ18、駆動軸24、および、車両の後部軸26、28を備える、組立てられたディファレンシャル駆動軸組立体16を図示している。図3は、モータ18、クラッチパック22、ボールランプ30、および、複数のギア32を備えるディファレンシャル駆動軸組立体16の中の断面図を描いている。図4および7はさらに、ボールランプ30の中において知られている方法で機能する複数のボール38のうちの1つと止め部40とを示す、ディファレンシャル駆動軸組立体16の中の断面図である。
【0031】
全体として、DU10は、駆動軸24と後部軸26、28の1つとの間の動力の結合を一度に調整する。動力の結合は、クラッチ位置Pに基づく。対照的に、従来の複数のアクチュエータは、上述のKrisherの特許における例であるトルクTMに基づいて動力を結合する。従って、Krisherの制御方法は、単純に、クラッチ結合トルク制限に影響する電気モータトルクTMを制御する。他方、この発明は、以下に開示される初期化プロセスを実行することによって、より早い制御応答を可能にする、クラッチ位置への制御の利点を有する。
【0032】
DUEC12は、車両動力VDCによって電気的に動力を供給され、一例として、ISO11898-2明細書に従うCANバスを通して、複数の車両デバイス(図示してないが当技術分野においてよく見られる)とデータを交換する。クラッチパック22とモータ18との間に、駆動軸24と後部軸26、28の1つとの間の動力の結合において、機械的に互いに協働するボールランプ30と複数のギア32とがある。
【0033】
DUEC12は、モータ電流、コントローラ12に加えられる供給電圧、および、他の物理的要因を感知できる。他の物理的要因は、例えば、モータ位置、モータ温度、クラッチ流体温度、アクチュエータ制御可能状態、および、コントローラ12における対応表に格納され得るCANバスからのコマンドメッセージなどである。DUEC12は、PositionまたはCoupling Torqueの、2つの制御モードのどちらかで操作可能でもある。複数の制御セットポイントは、受信されたCANメッセージデータにおいて与えられる。
【0034】
機能的に、初期化の際に、DUEC12は、位置と力の表2において複数の指標としての役割を担う様々なクラッチ位置測定およびモータトルク推定から受ける複数の結合トルク値を導出する(表1を参照)。複数のクラッチトルク値CTLを導出すべく、駆動モータ18は、完全に開いた最大にクラッチが離間する「0参照位置」P0から駆動する。モータコマンドトルクが((0, 1xTmax/n, (2xTmax/n), … , Tmax)と増大している一連のn段階位置を通じて、コマンドトルク値が、0から、最大コマンドトルク(nxTmax/n)を有する最大にクラッチが圧縮される位置へと向かう。言い換えると、クラッチトルク容量が一連の位置(P0, P1, P2,, Pn)にマッピングされる。
【0035】
そして、通常の操作を通じて、各測定されたクラッチ位置が、現在の力をルックアップすべく、(初期化中に生成されるものとして上で論じられた)位置と力の表2で指標としての役割を担う。続いて、表2は、モータトルクTMとクラッチ力FCとの間における潜在的な線形関係をキャプチャすべく用いられるクラッチ力FCと関連する、モータトルクTMを取得すべく利用される。従って、表2によって、瞬間的力を正確に選択すべく、位置と力の関係が与えられる。
【0036】
それぞれの現在の力はそして、例えば特定温度に関連するクラッチの多様性を説明するクラッチ温度から導出される係数に加えて、個々のクラッチ組立体特性を説明する一定の係数を使用する個々のCTLへと変換される。これら現在の力の選択から、クラッチ操作温度範囲に亘る精度における複数の改善がそして実現されもする。
【表1】
そして、表1のクラッチ位置データが表2で見られる各々のクラッチ力へと変換される。それらは各々の複数のアクチュエータ位置のそれぞれに対するクラッチジオメトリに基づく。
【表2】
【0037】
表1および2はそれぞれ2×32もの要素を含み、変換アルゴリズムの持続時間は1.0秒を超えないことに留意すべきである。
【0038】
通常の操作中、CTLは車両ダイナミック制御デマンドの関数として変化する。与えられたCTLを達成するべく必要とされる力Fは、以下の通りである。F=CTL÷(摩擦係数×等価半径×摩擦面の数)
【0039】
力Fが計算されると、モータ18がそこへと駆動することを必要とされるクラッチ位置Pをルックアップすべく、初期化中に生成されたルックアップテーブルで指標として用いられる。クラッチ摩擦係数CFCが温度と他の複数の物理的要因に対して変化すること、および、クラッチ摩擦係数CFCが操作中に追跡され、コントローラ12の表に格納されることは理解される。
【0040】
従って、埋設コントローラDUEC12は、駆動軸と車両の複数の車軸の1つとの間の動力の結合をより良く調整する。従来知られている制御方法は、産業において現在利用されているが、クラッチ結合トルク制限に影響する電気モータトルクを単純に制御するのみである。本発明の他の利点は、クラッチ位置に従って動力の結合を調整することであり、DU10のより速い制御応答時間を可能にする。クラッチ位置の操作、および、DU10の温度を監視することによって、本発明は、ディファレンシャルおよびその関連部品の中での機械的摩耗、機能不良、並びに/若しくは、誤組を検出できる。
【0041】
その結果として、アクチュエータ位置によってCTLが決定される。クラッチ位置は、図5のフィードバック制御アルゴリズムを使用して制御される。ゲイン・スケジューリングは、クラッチ位置に応じて、応答特性を最適化すべく使用される。全体的なCTL制御方法は図5のブロック図に示すように構成される。また、力Fは、以下の方程式CTL=kCkTFを使用することによってCTLへと変換されてもよい。kCはクラッチ組立体特性係数であり、kTはクラッチ温度係数である。必要とされるクラッチ位置Pは、表1および2を使用する。
【0042】
図6は、本発明の第3の実施形態に従って、クラッチパック位置に対するモータトルクTMのグラフを図示している。初期化の際に、DUECは、クラッチパック22を完全に開いたクラッチ位置に駆動するようモータ18にコマンドすることによって、結合トルク値(CTL)を導出する。電気モータ駆動アクチュエータ20は、モータ18を最大にクラッチが離間する位置Mで止める、(図4および7で見られるような)機械的止め部40を有する。機械的止め部40に接触すると、クラッチ位置は0にセットされる。次に、モータ18は、クラッチパック22を完全に圧縮された位置Cに向けて駆動するようセットされる。位置Cにおいては、モータトルクTMの2つのレベルが適用される。先ず、低いレベルのモータトルクが、クラッチパック圧縮を通じた反力に起因してモータ18が失速するまで適用される。これに、より高い圧縮におけるクラッチパック22のより高い反力に起因してモータ18が再び失速するまで適用される、高いレベルのモータトルクが続く。これら停止(失速)した箇所の両方で、モータトルク、および、そのクラッチ位置が記録される。
【0043】
従って、2つの線分が、図6における2つの箇所0―1、1―2から確立される。そこで、低力線分は、準拠状態における横軸に沿うモータトルクTMに対する、縦軸に沿うクラッチ位置Pの関係を規定している。クラッチパック22が圧縮され始める場合、高力線分がトルクに対するクラッチ位置の関係を規定すべく移る。これによって、クラッチパック22が圧縮される場合、より固い準拠状態がもたらされる。
【0044】
その結果として、これらの線分における複数のモータトルク値が、対応するクラッチ圧縮力へと変換される。複数のモータトルクから複数の圧縮力へのこれら変換は、低力線分および高力線分に関連する方程式によって行われ得る。それゆえ、これらの線分の両方が、クラッチに印加される力の関数としてモータ位置を表し、そして、トルクに対するクラッチ位置関係が低力線から高力線へと変化する有効な箇所も表している。これは、初期キャリブレーションフェーズを決定する。
【0045】
その結果、クラッチを通して伝動され得るトルクの量は「摩擦係数×等価半径×摩擦面の数」であり、クラッチパック22を通して伝動され得るトルクの最大量、および、所定のクラッチ結合トルク制限CTLとみなされる。
【0046】
他の実施形態におけるように、クラッチ摩擦係数はクラッチ温度による影響を受ける。通常の状態の下、車両制御によって、CTLがDUECに与えられる。クランプ力は「クランプ力=CTL÷(摩擦係数×等価半径×摩擦面の数)」で計算される。摩擦係数は表から来る。クラッチ温度は、この表から摩擦係数をルックアップすべく用いられる。従って、必要とされる制御されたクランプ力で、望ましいクラッチ位置が実現される必要があり、望ましいクラッチ位置は、初期キャリブレーション中に導出された直線方程式(すなわち、図6の直線方程式)および交点1から得られる。この情報から、モータはそのクラッチ位置へと向かうようコマンドされる。
【0047】
上述のプロセスの更なる恩恵は、クラッチ位置の関数として、低いレベルのモータトルクTM箇所で、本発明により第1のクラッチ位置範囲を通じて迅速な動きが可能となることである。第1のクラッチ位置範囲は、モータトルクTMが大きくないので、低いレベルのクラッチトルクを有する。続いて、より注意深い動きが、より高いモータトルクTMのクラッチ位置範囲において利用され得る。クラッチ位置の正確な制御によって、均等にするための制御力における小さな差を待つ代わりに、迅速な応答性が与えられる。例えば、駆動軸と車軸との間における動力結合の迅速な制御が、連続クラッチ位置の最初の10パーセントを通じて生じ、これら位置から複数の結合トルク値を導出する。
【0048】
摩擦材における油の量を含めた、クラッチ力からクラッチトルクまでの変動の、他の複数の要因がある。摩擦材は、圧縮時間、摩擦面での相対的スリップ速度、および、摩擦材表面の状態と共に変化する。そのような変動性は、格納されたルックアップテーブル、または、操作または初期化の間の観察によって補償され得る。
【0049】
特許法の規定に従って、本発明の操作の原理および方法は、その好ましい実施形態の中で説明され、図示された。しかしながら、本発明は、その趣旨または範囲から逸脱せずに、特に説明され図示されたもの以外の方法で実施され得ることを理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7