特許第5932019号(P5932019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5932019速やかな治療上の吸収性を有する組織修復用具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932019
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】速やかな治療上の吸収性を有する組織修復用具
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/00 20060101AFI20160526BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 31/785 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 31/085 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 33/24 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 31/549 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20160526BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20160526BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20160526BHJP
   A61P 41/00 20060101ALI20160526BHJP
   A61F 2/00 20060101ALN20160526BHJP
【FI】
   A61L27/00 Z
   A61K45/00
   A61K31/44
   A61K31/785
   A61K31/085
   A61K33/34
   A61K33/38
   A61K33/24
   A61K31/549
   A61K31/185
   A61K31/045
   A61P31/00
   A61P41/00
   !A61F2/00
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-502826(P2014-502826)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-514941(P2014-514941A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】US2012031397
(87)【国際公開番号】WO2012135593
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年2月19日
(31)【優先権主張番号】13/075,531
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】プリーベ・ヨルグ
【審査官】 牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06875386(US,B1)
【文献】 特開平07−047090(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/093333(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/111502(WO,A1)
【文献】 特開平09−182784(JP,A)
【文献】 特開2005−152651(JP,A)
【文献】 特表平06−506366(JP,A)
【文献】 特表2003−532504(JP,A)
【文献】 国際公開第03/041613(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00− 33/00
A61F 2/00− 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織インプラント医療用具であって、
複数のメッシュ開口またはメッシュ孔を有するメッシュを含む、組織修復部材であって、前記メッシュは、互いに反対側の第1及び第2の面を有している、組織修復部材と、
前記メッシュの前記第1の面に取り付けられた、第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムと、
前記メッシュの前記第2の面に取り付けられた、第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムと、を含み、
前記第1のフィルム孔前記第2のフィルム孔と整列されておらず、
前記第1および第2のポリマーフィルムは、前記メッシュ開口またはメッシュ孔を通って共に接合されている、
組織インプラント医療用具。
【請求項2】
活性物質を更に含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
前記活性物質が、抗生物質、化学療法剤、細胞増殖抑制剤、転移阻害剤、抗糖尿病薬剤、抗真菌剤、抗微生物剤、抗細菌剤、ビタミン、婦人科用薬剤、泌尿器科用薬剤、抗アレルギー剤、性ホルモン、性ホルモン阻害剤、局所麻酔剤、止血剤、ホルモン、ペプチドホルモン、ビタミン、抗鬱剤、抗ヒスタミン剤、裸のDNA、プラスミドDNA、カチオン性DNA複合体、RNA、細胞構成成分、ワクチン、体内に天然に存在する細胞、遺伝子組み換え細胞、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の医療用具。
【請求項4】
前記活性物質が、オクテニジン、PHMB、トリクロサン、銅、銀、ナノシルバー、金、セレン、ガリウム、タウロリジン、シクロタウロリジン、N−クロロタウリン、アルコール、LAE、MAPD、OAPD、及びこれらの混合物からなる群から選択される抗微生物剤である、請求項2に記載の医療用具。
【請求項5】
前記抗微生物剤がトリクロサンである、請求項4に記載の医療用具。
【請求項6】
前記抗微生物剤がオクテニジンである、請求項4に記載の医療用具。
【請求項7】
前記抗微生物剤がPHMBである、請求項4に記載の医療用具。
【請求項8】
前記組織修復部材が、ポリアルケン、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリシリコーン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、芳香族ポリエステル、ポリイミド、セルロース、これらの重合性物質のコポリマーからなる群から選択される生体適合性非吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項9】
前記組織修復部材が、ポリヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、合成並びに天然オリゴアミノ酸及びポリアミノ酸、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ポリアルコール、多糖類、ポリエーテル、再吸収性ガラス、これらの重合性物質のコポリマーからなる群から選択される生体吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項10】
前記第1及び第2のフィルムが、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン、及びセルロースからなる群から選択される生体適合性非吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項11】
前記第1及び第2のフィルムが、ポリヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、合成並びに天然オリゴアミノ酸及びポリアミノ酸、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ポリアルコール、多糖類、ポリエーテル、ポリアミド、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、これらの重合性物質のコポリマー、及び再吸収性ガラスからなる群から選択される生体適合性生体吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項12】
前記フィルム孔が、約0.1mm〜約5mmの範囲の孔径を有する、請求項1に記載の医療用具。
【請求項13】
前記フィルムが、約5μm〜約50μmの厚さを有する、請求項1に記載の医療用具。
【請求項14】
前記組織修復部材が、モノフィラメント繊維を含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項15】
前記組織修復部材が、マルチフィラメント繊維を含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項16】
ポリマーコーティングを更に含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項17】
前記孔がほぼ円形の断面を有する、請求項1に記載の医療用具。
【請求項18】
前記孔がスリットを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項19】
組み合わせであって、
a)組織インプラント医療用具であって、
複数のメッシュ開口またはメッシュ孔を有するメッシュを含む、組織修復部材であって、前記メッシュは、互いに反対側の第1及び第2の面を有している、組織修復部材と、
前記メッシュの前記第1の面に取り付けられた、第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムと、
前記メッシュの前記第2の面に取り付けられた、第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムと、を含み、
前記第1のフィルム孔前記第2のフィルム孔と整列されておらず、
前記第1および第2のポリマーフィルムは、前記メッシュ開口またはメッシュ孔を通って共に接合されている、組織インプラント医療用具と、
b)活性物質と、を含む、組み合わせ。
【請求項20】
前記活性物質が溶液中に存在する、請求項19に記載の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接又は対向した組織表面間の組織の癒着を最小限に抑えることが可能な軟組織修復用具に関し、より詳細には、移植に先立って手術室環境中で活性物質を速やかに吸収することが可能なこうした軟組織修復用具に関する。
【背景技術】
【0002】
メッシュなどの組織の修復又は強化用インプラントは、一方の面における組織の内部成長を可能とし(例えば開放孔又は隙間を有することにより)、かつ反対側の面における組織の内部成長は防止する(例えば当該技術分野において従来より癒着バリアと呼ばれる、フィルム又は無孔層などの平滑表面を有することにより)ように設計することができる。このことは、メッシュインプラントが、例えばヘルニア修復術などにおいて、インプラントへの腹膜の癒着(すなわち組織の内部成長)が望ましい一方で、内臓側における組織の内部成長又は癒着が望ましくない(すなわち抗癒着)腹部領域において使用又は移植される場合に重要である。癒着バリアである1つの基本的に平滑な面と、組織を内部成長させるための1つの有孔面又は粗面とを有する、幾つかの従来製品が当該技術分野において知られており、市販されている。これらの製品には、完全吸収性、完全非吸収性、又は部分吸収性及び部分非吸収性のものがある。これらの製品は、複数のメッシュ層と癒着防止バリアとを有する複合材料の場合もある。特定のインプラントは包装容器から取り出した状態でそのまま使用に供することができ(例えば、Proceed(登録商標)Hernia Mesh、Gore DualMesh(登録商標)、及びBard Composix(登録商標)Mesh)、また、他のメッシュインプラントは、癒着バリアを膨潤させ、インプラントを患者体内に移植及び留置するうえで充分な柔らかさにするため、移植に先立って水又は食塩水中に予め数分間浸漬することが必要である(例えば、Sepramesh(登録商標)、Parietex(登録商標)Composite)。
【0003】
特定の手術用途では、これらのインプラントが、インプラントの周囲の又は隣接する組織に所定投与量の治療物質又は活性物質を送達させることが望ましい。これを実現するためには、包装に先立って製造者によって所望の活性物質をコーティングするか、又は他の何らかの方法によって活性物質を含浸することによってインプラントに事前装填させておくことができる。しかしながら、インプラントに活性物質を事前装填させることは困難でありうる。更に、インプラントに加えることのできる活性物質の量は、活性物質が徐放用のインプラントによって隣接組織に徐放的に送達されないかぎり、限定されている。貯蔵された活性物質の放出をインプラントの両面で可能とするには、インプラントの活性剤貯蔵部がインプラントの両面と流体連通している必要がある。インプラントが互いに反対側の外側フィルム層の間に入れられたメッシュからなる場合では、両面放出は、メッシュの両側のフィルム内に小孔を設けることによって可能となる。しかしながら、このような小孔を設けることにより、フィルムが互いに積層されて小孔同士が整列する領域において、フィルムに配置された小孔を介して組織間の接触が生じる可能性がある。組織間の接触により、望ましくない組織の癒着が促進されるか又は発生しうる。小孔がインプラントの一方のフィルム層にのみ存在する場合、治療液が小孔がまったくない側面に効果的に投与されない可能性がある。一方の面にのみ小孔を有することにより、インプラントの2つの面の間の組織液の流れが制限されると考えられる。これにより漿液腫が形成される可能性がある。
【0004】
移植した医療用具と組み合わせて活性物質を送達する従来の方法の1つは、外科医又は助手が、移植に先立って医療用具を活性物質の溶液中に浸すか又は浸漬することである。1つの例として、外科用ヘルニアメッシュフィルム構造体を活性物質溶液中に浸漬することは、癒着を防止するために内臓と接触させて配置することも可能な活性物質装填メッシュを提供するうえで重要である。他の用途では、インプラントの部分による膀胱、膣壁などの構造のびらんを防止するために穿孔フィルムアセンブリが効果的でありうる場合に、膣壁と接触させて(例えば骨盤メッシュ)、又は尿道と接触させてエチコン社(Ethicon, Inc.)より販売されるGYNECARE(登録商標)TVTシステムなどの織物を配置する必要が生じる場合がある。現在、流通及び市販されている、コラーゲンフィルムでコーティングされた製品(例えばParietex(登録商標)Composite(PCO)MESH)は、活性物質の溶液中で5〜10分間インキュベートする必要があるが、これは手術室(OR)の状況で、また、手術中に患者が麻酔下にある間に行うには比較的時間のかかる作業である。現在市販されている製品の更なる難点としては、活性物質コーティングは、手術室における取り扱いの際の機械的力の影響を極めて受けやすく、インプラントを操作又は配置するためのピンセットの使用によってこうしたコーティングが容易に破壊され、製品の崩壊につながりうることがある。Composix(登録商標)メッシュなどの特定の市販のメッシュ複合材料インプラントは、メッシュの一方の面にePTFE層を有するポリプロピレンメッシュを有している。ポリプロピレン及びePTFEはいずれも、親水性の液体をあまりよく吸収しないため、このようなメッシュを活性成分のコーティング溶液を同伴させてトロカールに通して手術部位に送達させることは困難であると考えられる。
【0005】
国際特許出願公開第WO2003041613 A1号は、フィルム同士がメッシュの小孔内において互いに接着又は溶着されている、各面に2枚の合成ポリマーフィルムを有するメッシュについて述べているが、各面上に穿孔された小孔を有するフィルムについても、オフセットした小孔を有するフィルムについても記載されていない。
【0006】
欧州特許出願公開第EP1237588 B1号は、一方の面を、小孔を有しうる天然(ヒアルロン酸)又は天然由来(CMC)物質で作製した吸収性フィルムで被覆し、間にポリラクチドコポリマーなどの接着剤を有する非吸収性メッシュインプラントについて述べている。体内に薬剤を徐放させるためにこのプロテーゼの任意の部分に薬剤を含有させることができる。
【0007】
国際特許WO2003099160 A1号は、織物インプラントの両面に配置されたこぶ付きフィルムについて述べており、両方のフィルムに所定のパターンに配置された孔を有しうる。こぶに活性物質を充填することについての教示はあるものの、こぶの外側の領域を浸漬又は充填することについては記載されていない。
【0008】
欧州特許出願公開第EP1541183 A1号は、2つの異なる吸収時間を有する吸収性ポリマーを有するメッシュについて述べている。米国特許出願公開第US20030017775 A1号は、人工血管として好適に使用され、エラストマー接合剤によって互いに固定されたePTFEの層と繊維材料の層とを有する複合管腔内プロテーゼについて述べている。ePTFE層は、微小繊維によって相互連結された結節によって形成される有孔微小構造を有している。この接着接合剤は、接合剤がePTFEの微小構造の小孔に入り込むように好ましくは溶液中で塗布される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
活性物質の速やかな吸収を可能とする一方で少なくとも所定の時間にわたって組織分離性を与えるデバイスを提供することを含め、従来技術の組織デバイスと比較して利点を有する組織インプラント用具が当該技術分野において求められている。詳細には、活性インプラントに速やかかつ効率的に有効量の活性物質を与えるための、特に手術室において浸漬するための、高速ディップコーティングプロセスに特に適した組織インプラントが求められている。メッシュインプラント中への活性物質の含浸時間が短縮されたインラインプロセス(コーティング浴中を通過させる)に適した高速浸漬可能なメッシュ積層インプラントが更に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記を鑑み、新規な組織修復インプラント医療用具を開示する。本発明の組織インプラント医療用具は、複数の部材開口部又は孔を有する組織修復部材を有し、好ましくはメッシュなどの織物である。前記修復部材は、互いに反対側の第1及び第2の面を有する。第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムが前記部材の前記第1の面に取り付けられる。第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムが前記部材の前記第1の面に取り付けられる。前記第1のフィルム孔と前記第2のフィルム孔の位置が合っていない、すなわち孔同士がオフセットしていることにより、組織間の接触が実質上防止される。
【0011】
本発明の更なる別の態様は、上記の組織修復インプラント用具を用いた、組織欠損部を修復する方法である。
【0012】
本発明の一層更なる別の態様は、上記の組織修復インプラント用具と活性物質との組み合わせである。
【0013】
本発明の組織修復用具は多くの利点を有する。本発明の用具の利点の1つは、活性物質を含んだ液体を修復織物及びフィルムに短時間の内に含浸させる一方で、移植後に対向又は隣接した組織が直接接触するように露出させないことにより、組織の癒着の可能性が最小限に抑えられることである。本発明の用具は、バッチ処理(手術室環境などにおける)においても、製造プロセスにおいても、活性物質の溶液中に浸漬するのに特に適しており、液体の速やかな吸収を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の組織修復用具の一実施形態の斜視図。
図2】表示ライン2−2に沿った、図1の組織修復用具の拡大部分断面図。
図3】下側の有孔フィルムの下側フィルム孔及び中央のメッシュに対する上側の有孔フィルムの上側フィルム孔の関係を示す、実施例1にしたがって作製した本発明の組織修復用具の一実施形態の一部の写真。
図4】実施例1にしたがって作製した本発明の一実施形態に基づくフィルム孔の拡大写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に述べられる本発明の移植式組織修復医療用具は、組織修復織物部材と組織修復織物の互いに反対側の外側面に取り付けられた有孔接着バリアフィルムとの複合材料からなる。両方のフィルムが小孔を有することにより、組織修復用具は、用具のサイズ及び用具の浸漬槽中での配置のされ方(すなわち水平又は垂直)とは無関係に、容易かつ速やかに浸漬することが可能である。本発明の用具の互いに反対側のフィルムの小孔の、重ならない、又は位置が合わない向きのため(すなわちオフセットした小孔)、本用具は、上記のような小孔の向きが組織間の接触をほぼ又は完全に防止すると同時に両面において組織とメッシュとの接触を可能とする(良好な内部成長)ことから、ほとんど懸念を生じることなく内臓と接触させて配置することができる。また、インプラントを通る流体の流れが改善されていることから、漿液腫の形成が低減される(したがって感染が低減される)ことが予想される。
【0016】
本発明の組織修復用具の中間層又は中央層としての使用に適した外科用修復織物としては、外科用途の従来のメッシュ、織布、及びテープが挙げられる。他の織物又は材料としては、少なくとも1mmの孔径を有する穿孔された縮合ePTFEフィルム及び不織布が挙げられる。
【0017】
織物は、少なくとも1mmの孔径の開放孔を有する。「開放孔」とは、布地の一方の面から反対側の面に延び、織物を通じた経路を与える開口部を意味する。
【0018】
組織修復用具の目的とする用途に応じて、生体適合性の長期安定性ポリマーを使用して組織修復部材を製造することができる。長期安定性ポリマーとは、徐々に吸収されるか又は分解する、例えば生体内において移植60日後にその最初の引き裂き強度の少なくとも50%を有する非吸収性の生体適合性ポリマー又は生体吸収性ポリマーを意味する。後者の群には、ポリアミドなどの物質が含まれるが、これらの物質は、吸収性材料として設計されたものではなく、一般的には耐久性を有するものとしてみなされるが、長い期間の間に体組織及び組織液による攻撃を受ける。織物修復部材の好ましい材料としては、ポリヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、合成並びに天然オリゴアミノ酸及びポリアミノ酸、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ポリアルコール、多糖類、ポリエーテル、ポリアミド、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、これらの重合性物質のコポリマー、吸収性ガラスが挙げられる。
【0019】
織物修復部材の特に好ましい材料としては、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンのコポリマーとの混合物、PTFE、ePTFE、及びcPTFEが挙げられるが、他の従来の生体適合性材料も有用である。織物修復部材は、モノフィラメント、マルチフィラメント、又はこれらの組み合わせから構成することができる。
【0020】
組織修復部材は、長期安定性ポリマー以外に、吸収性ポリマー(すなわち生体吸収性又は生分解性)を含んでもよい。吸収性及び長期安定性ポリマーは、モノフィラメント及び/又はマルチフィラメントを含むことが好ましい。吸収性ポリマー及び生体吸収性ポリマーなる用語は、本明細書では互換可能に使用される。生体吸収性なる用語は、その従来の意味を有するものとして定義される。好ましいわけではないが、織物修復部材は、生体吸収性又は生体吸収性ポリマーから、長期安定性ポリマーをいっさい使用せずに製造することもできる。
【0021】
本発明の組織修復インプラント用具を製造するために使用されるフィルムは、癒着の形成を効果的に防止するうえで充分な厚さを有するものである。この厚さは、一般的に約1μm〜約500μm、好ましくは約5μm〜約50μmの範囲である。本発明の組織修復用具の第1及び第2のフィルムとして使用するのに適したフィルムには、生体吸収性及び非吸収性フィルムの両方が含まれる。これらのフィルムは好ましくはポリマーベースのものであり、各種の従来の生体適合性ポリマーから形成することができる。非吸収性又は非常に遅い吸収性物質としては、ポリアルケン(例えばポリプロピレン又はポリエチレン)、フッ素化ポリオレフィン(例えばポリテトラフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデン)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリシリコーン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトン(PEEK)、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、芳香族ポリエステル、ポリイミド、並びにこれらの物質の混合物及び/又はコポリマーが挙げられる。例えば、ポリヒドロキシ酸(例えばポリラクチド、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸)、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、合成並びに天然オリゴアミノ酸及びポリアミノ酸、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ポリアルコール、多糖類、ポリエーテルなどの合成生体吸収性ポリマー物質もまた有用である。しかしながら、コラーゲン、ゼラチン、又は、生体吸収性オメガ3脂肪酸架橋ゲルフィルム若しくは酸素化再生セルロース(ORC)などの天然由来材料を使用することもできる。
【0022】
本発明の組織修復用具に使用されるフィルムは、修復織物部材の外側表面全体又はその一部を被覆しうる。場合によっては、修復織物の縁と重なるフィルムを有することが効果的である。本明細書において使用するところの「縁」なる用語は、外周縁、又は例えば、精索、若しくはストーマ傍ヘルニアを治療又は予防するために腸などの解剖学的構造を受容する目的でメッシュに穴がある場合には中心縁を意味する。
【0023】
本発明の用具を構成するために使用される有孔フィルムは、開放孔を有するものである。穿孔又は有孔フィルムは、レーザー光、超音波、マイクロ波、熱、又はコロナ/プラズマなどのエネルギーを印加することにより、機械的切断又は打ち抜きなどの従来のプロセスを用いて作製することができる。化学エッチング又は射出成形プロセスを使用することもできる。凍結乾燥などの従来の発泡プロセスを使用して開放した有孔構造を形成することもできる。
【0024】
フィルムの小孔は、フィルムから材料を切り出すか又は除去することなく多数のスリット又は切れ目の形態で形成されてもよく、又は、フィルムから材料を除去することで形成される所定の長さ及び幅又は直径を有してもよく、又は、フィルム内の複数の位置におけるポリマー材料の欠損より生じる開口部であってもよい。小孔は、円形、楕円形、長方形、菱形、正方形、三角形、多角形、不規則な形状、これらの組み合わせなどを含む様々な幾何学的形状を有しうる。小孔は、円形の断面を有するフィルムを貫通した通孔であることが特に好ましい。
【0025】
フィルムは、用具の組み立ての前又は後で穿孔してもよく、又はフィルムは小孔を有するように製造してもよい。しかしながら、当業者であれば、組み立てられた用具に穿孔する際に織物部材又は第2のフィルムの破損を防止するための予防措置を講じる必要があることは認識されるであろう。
【0026】
組み立て時の製造を容易とし、水性コーティングによる所望の濡れ性を得るため(すなわち、液体が入らなければならず/空気が出なければならない)、孔径は少なくとも1つの方向において通常、少なくとも0.2mm〜5cm、好ましくは0.5〜7mm、最も好ましくは1〜5mmでなければならない。上記に述べたように、小孔は異なる孔径及び形状を有しうる。更に、製造方法に応じて、フィルム孔の縁は平滑であっても粗くてもよい。また、小孔の縁がエンボス加工されて丸みが付けられるか、又は面取りされていてもよい。
【0027】
フィルムは、例えば、縫い合わせ、接着剤による接着、溶着、及びラミネート処理により、各種の従来の方法で互いに接合することができる。接合/結合は、上側と下側のフィルムの小孔が実質的にオフセットするように、外周に沿って、又は中央領域に、又はアセンブリ全体に、点線状又は全体的な接合部分として設けることができる。
【0028】
フィルムは、例えば、縫い合わせ、刺繍、部分領域(例えば点で、又は外周縁のような線若しくは細片に沿って)での結合(熱的手段によるものを含む)、又は超音波によるものを含む熱溶着などの様々な異なる従来の方法で互いに、かつ/又は修復織物部材に接合することができる。溶着方法には、広義には、少なくとも一方のフィルムの(一方のフィルムの融点以下での)熱変形も含まれる。インプラントは、例えばリブ状構造などの強化部材として設計された刺繍構造を場合により有してもよい。
【0029】
本発明の用具において特に好ましいものとして、必要に応じてポリジオキサノンなどの更なる生体適合性溶融接着剤を、比較的低融点の生体吸収性ポリマーとして使用する、熱ラミネート法を用いたフィルム間の接合がある。ポリラクチド、ポリカプロラクトン、又はこれらのコポリマーなどの他の可溶性ポリマーを溶媒接着剤として使用することもできる。生体適合性を有するものであれば、シアノアクリレート若しくはイソシアネート又はオキシランなどの反応性接着剤を使用することもできる。
【0030】
ここで図1及び2を参照すると、本発明の組織修復インプラント用具1が示されている。用具1は、中央又は中間織物部材20を有するものとして示されている。部材20は、繊維22で編まれたほぼ平板なメッシュとして示されている。部材20は、繊維22間に形成された複数のメッシュ開口部又はメッシュ孔25を有するものとして示されている。部材20は、互いに反対側の外側面28を有している。また、用具1は、互いに反対側の面28上の織物部材20にそれぞれ取り付けられた第1及び第2の有孔接着バリアフィルム10及び30を有するものとして示されている。本発明の組織修復用具のこの実施形態では、フィルム10と30とは、メッシュ開口部又はメッシュ孔25を介して互いに接合されている。第1のフィルム10はフィルム孔12が貫通しているものとして示されており、第2のフィルム30にはフィルム孔32が貫通している。小孔12と小孔32とは位置が合わないようにオフセットして配置されていることにより、互いに反対側の孔12と32との間に直接的な経路は与えられない。
【0031】
「活性物質」なる用語は、治療物質を含むがこれに限定されない。本発明の医療用具と組み合わせて使用することが可能な活性物質の選択は、得ようとする所望の患者の利益に応じて決まる。例えば、移植後に必要に応じて局所的に放出させることが可能な少なくとも1種類の生物学的活性成分又は治療成分を有する本発明のインプラントを提供することが有利である場合がある。活性物質又は治療物質として適当な物質は、天然物質又は合成物質であってよく、これらに限定されるものではないが、例えば、抗生物質、抗微生物剤、抗細菌剤、消毒剤、化学療法剤、細胞増殖抑制剤、転移阻害剤、抗糖尿病剤、抗真菌剤、婦人科用薬剤、泌尿器科用薬剤、抗アレルギー剤、性ホルモン剤、性ホルモン阻害剤、止血剤、ホルモン、ペプチドホルモン、抗鬱剤、ビタミンCなどのビタミン、抗ヒスタミン剤、裸のDNA、プラスミドDNA、カチオン性DNA複合体、RNA、細胞構成成分、ワクチン、体内に天然に存在する細胞、又は遺伝子組換え細胞が挙げられる。活性物質又は治療物質は、カプセル化された形態又は吸収された形態を含む様々な形態で存在しうる。こうした活性物質の使用により、患者の治療成績が改善されるか、又は治療効果が与えられうる(例えば、良好な創傷治癒、又は炎症の抑制若しくは軽減)。
【0032】
好ましい活性物質のクラスの1つに、例えば、ゲンタマイシン又はZEVTERA(商標)(セフトビプロールメドカリル)銘柄の抗生物質(スイス、バーゼル所在のバシレア・ファルマスーティカ社(Basilea Pharmaceutica Ltd.)より販売されるもの)などの薬剤を含む抗生物質がある。使用可能な他の活性物質としては、オクテニジン、オクテニジンジヒドロクロリド(ドイツ、ノルダーシュテット所在のシュルケ・アンド・マイヤー社(Schulke & Mayr)よりOctenisept(登録商標)消毒剤の有効成分として販売されるもの)、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)(スイス、ブラウン社(Braun)よりLavasept(登録商標)の有効成分として販売されるもの)、トリクロサン、銅(Cu)、銀(Ag)、ナノシルバー、金(Au)、セレン(Se)、ガリウム(Ga)、タウロリジン、N−クロロタウリン、Listerine(登録商標)口内洗浄剤などのアルコール系消毒剤、N−α−ラウリル−L−アルギニンエチルエステル(LAE)、ミリスタミドプロピルジメチルアミン(MAPD、SCHERCODINE(商標)Mの有効成分として販売されるもの)、オレアミドプロピルジメチルアミン(OAPD、SCHERCODINE(商標)Oの有効成分として販売されるもの)、及びステアラアミドプロピルジメチルアミン(SAPD、SCHERCODINE(商標)Sの有効成分として販売されるもの)などの、脂肪酸モノエステル、及び最も好ましくはオクテニジンジヒドロクロリド(以後オクテニジンと称する)、タウロリジン、並びにPHMBなどの、異なる細菌及び酵母に対して(体液の存在下であっても)極めて有効な広帯域抗微生物剤がある。
【0033】
好ましい活性物質のクラスの1つに、アンブカイン、ベンゾカイン、ブタカイン、プロカイン/ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン/ラロカイン、エチドカイン、ヒドロキシプロカイン、ヘキシルカイン、イソブカイン、パラエトキシカイン、ピペロカイン、プロカインアミド、プロポキシカイン、プロカイン/ノボカイン、プロパラカイン、テトラカイン/アメトカイン、リドカイン、アーティカイン、ブピバカイン、ジブカイン、シンコカイン/ジブカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン/リグノカイン、メピバカイン、メタブトキシカイン、ピリドカイン、プリロカイン、プロポキシカイン、ピロカイン、ロピバカイン、テトラカイン、トリメカイン、トリカイン、これらの組み合わせ、例えば、リドカイン/プリロカイン(EMLA)又は、サキシトキシン、テトロドトキシン、メントール、オイゲノール、及びこれらのプロドラッグ又は誘導体などの天然由来の局所麻酔薬などの薬剤を含む局所麻酔薬がある。
【0034】
場合によっては、活性物質又は治療物質は溶液中で与えられる。溶液は、選択される有効成分と相溶性を有する任意の適当な溶媒を含むものでよい。溶液は水性のものでよく、以下の更なる従来の成分、すなわち、界面活性剤、ポリマー、タンパク質、又は色素の少なくとも1つを含みうる。ポリマーは、放出速度を調整するために用いられる。活性物質及び求められる放出性によっては、コーティング用のポリマー溶媒混合物が効果的である場合もある。
【0035】
更に、本発明の用具には造影剤を取り込ませることができる。このような造影剤としては、本明細書に援用する欧州特許出願公開第EP1392198B1号に述べられるような視覚マーカーを生じる生体適合性色素を使用するか、又は、GdDTPAのような金属錯体又は本明細書に援用するところの欧州特許出願公開第EP1324783 B1号に教示される超常磁性ナノ粒子(Resovist(商標)又はEndorem(商標))などの超音波造影又はMRI造影用のガス又はガス生成物質などの物質を使用することができる。欧州特許出願公開第EP1251794B1号(本明細書に援用する)に示されるような、純粋な二酸化ジルコニウム、安定化された二酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、タンタル、五酸化タンタル、硫酸バリウム、銀、ヨウ化銀、金、白金、パラジウム、イリジウム、銅、酸化鉄、磁性があまり高くないインプラントスチール、非磁性のインプラントスチール、チタン、ヨウ化アルカリ、ヨウ素化芳香族化合物、ヨウ素化脂肪族化合物、ヨウ素化オリゴマー、ヨウ素化ポリマー、合金化が可能なそれらの物質の合金、を含むX線可視化物質が含まれてもよい。造影剤は、メッシュ中若しくはメッシュ上、又はフィルム中若しくはフィルム上に含ませることができる。
【0036】
更に、膨潤性物質又はゲル形成物質をメッシュ及び/又はフィルムに加えることもできる。これは、浸漬溶液の取り込み性を高めるという効果を有する。これらの物質としては、コラーゲン又はゼラチンなどのタンパク質、PPO−PEOブロックコポリマー(Pluronics)などの界面活性剤、ポリソルベート20、40、60、65、80(Tweens)などのポリソルベート、又は、Span 20(モノラウリン酸ソルビタン)、Span 40(モノパルミチン酸ソルビタン)、Span 60(モノステアリン酸ソルビタン)、Span 65(トリステアリン酸ソルビタン)、Span 80(モノオレイン酸ソルビタン)などのスパン、リン脂質、アルギン酸塩、デキストラン、キトサン、カラセン(carracen)、PEG、PVA、PVP、CMC、HESなどの親水性の天然又は合成ポリマーが挙げられる。
【0037】
ヒドロゲル形成ポリマーは、以下の群、すなわち、重合化ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);重合化ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA);重合化α−メタクリロイル−o−メトキシポリエチレングリコール;重合化ポリエチレングリコールビスアクリレート;A−B−C−B−A型の吸収性プレポリマー(ただし、A=アクリル又はメタクリル基、B=ラクチド、グリコリド、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、トリメチレンカーボネート、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリリン酸塩、ポリホスファゼン及び/又はポリアミドのポリマー、及び/又はこれらのコポリマーを含む、加水分解により切断可能なポリマー、C=親水性ポリマー、特にポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN−イソプロピルアクリルアミド(PNiPAAM)である)、から選択される物質の少なくとも1つを含む、重合又は重付加又は重縮合により得ることができる。
【0038】
以下の実施例は本発明の原理及び実施を説明するものであるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
2枚の有孔Monocryl(登録商標)フィルム間にラミネートされた軽量メッシュ
エチコン社(Ethicon, Inc.)(米国ニュージャージー州、サマービル)より販売されるUltrapro(登録商標)銘柄のメッシュと同じ編組構造を有するが、吸収性Monocryl(登録商標)フィラメントは含まない軽量のポリプロピレンメッシュ(ポリグレカプロン25)を調製した。このメッシュを2枚のフィルム層間に熱ラミネートした。第1のフィルムは、押出し成形され、厚さ8μmのポリ−p−ジオキサノン(PDS)フィルムでラミネートされた厚さ20μmのポリグレカプロン25 Monocryl(登録商標)フィルムからなるものであった。この予備積層体に、穴と穴との距離が5mmとなるように1mmの穴又は小孔をレーザーで切り抜いた。厚さ__のポリグレカプロン25 Monocryl(登録商標)フィルムからなる第2のラミネート層を、上記の第1のラミネート層と同様にしてレーザーで切り抜き、予め切断した。両方のフィルムを、穴又は小孔の位置が合わない(すなわちオフセットしている)ようにして置き、ポリプロピレンメッシュの外側表面に互いに反対側の外側フィルムとして置いた。このフィルムメッシュ構造体を、数層のベーキングペーパーの間で、熱プレス機中でラミネートし、2枚の金属プレート間で冷却した(120℃で30秒間、次いで金属プレート間で約30分間冷却)。
【0040】
この積層体の8×11cmの試料を、モデル抗菌溶液として0.1%(重量/重量)の抗菌クリスタルバイオレット水溶液が入れられた皿の中に水平に置いた。
【0041】
メッシュ及び各フィルムを含むラミネートされたメッシュは、10秒以内に溶液で完全に含浸された。
【0042】
穴又は小孔がないフィルムを有する同じサイズのフィルム積層体を同様に試験したところ、含浸に大幅に長い時間を要した。小孔又は穴のないフィルム積層体の含浸時間は、約5〜10分以上と観察された。
【0043】
コーティング及び含浸されたメッシュ積層体を乾燥させた後では、メッシュ小孔の中央のフィルム接着領域は抗菌色素を概ね含まず、メッシュ及びフィルムの間のメッシュ周辺領域は染色された(全面積の約30%〜50%)ことが観察された。
【0044】
実施例1にしたがって作製した本発明の組織修復用具の一実施形態の一部の写真が図3に示されている。この図は、下側の有孔フィルムの下側フィルム孔及び中央のメッシュに対する上側の有孔フィルムの上側フィルム孔の関係を示している。図4は、実施例1にしたがって作製した本発明の一実施形態に基づくフィルムの小孔の拡大写真である。
【0045】
(実施例2)
水平浸漬
この例は、本発明の組織修復用具の濡れ性能を無孔用具と比較して実証するものである。
【0046】
有孔フィルム(孔径=1mm、孔間隔=5mm)を用いた複数の8×12cmの積層体を実施例1にしたがって調製した。有孔フィルムの代わりに無孔フィルムを使用した以外は、実施例1にしたがって、無孔フィルムを有する複数の8×12cmの積層体を調製した。有孔及び無孔積層体の乾燥重量を測定した。
【0047】
各積層体を、500mlの0.2% Lavasept溶液(Lavasept濃縮液(20% PHMB)、ロット番号7383M03から調製したもの)の入った平らな容器中に水平に10秒間入れた。各積層体を取り出し、軽く振って余分な液体を落とし、再び重量を測定した。
【0048】
表1は、水平浸漬実験の結果を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
有孔積層体はいずれも、フィルム間を含め、完全に濡れたようであった。無孔積層体は、外周部においてフィルム間が濡れ始めていた(詳細には、積層体6は、10秒後にフィルム間が約1/4濡れていた)。
【0051】
有孔積層体は、10秒後の液体取り込み率が約70%高かった(170%→254%)。
【0052】
無孔積層体の重量増加はその全体がフィルムの表面上の液体によるものと考えられるのに対して、有孔積層体における増加は、更にフィルム間に取り込まれた液体によるものであった。
【0053】
(実施例3)
OR中での水平浸漬及び取り扱い性
実施例1にしたがって各積層体を調製したがサイズは18cm×14cmとした。有孔及び無孔積層体を、ブタの腹腔に挿入した従来の12mmトロカールから入れた。各インプラントは腸において容易に動かす(滑らせる)ことが可能であり、これを腹壁に接触させて配置した。有孔及び無孔積層体は、腹壁に対して脱離可能に自己付着した。積層体を定位置に保持しておくために器具を必要としなかった。
【0054】
等張性食塩水で予め10秒間濡らしたインプラントにおいても同様の取り扱い性が認められた。
【0055】
表1から計算した面積重量では、浸漬した穿孔フィルムの場合では、各試験体は、それ自体の面積重量である20mg/cm(表1の8×11cmの穿孔湿潤インプラントの2gより計算した)よりも腹壁に対する付着力が大きかった。
【0056】
本発明の用具は、骨盤、結腸直腸、及び美容整形手術などの外科的分野においてフィルムバリアとして癒着の防止に、また有望な薬剤送達キャリアとして有用であると考えられる。
【0057】
(実施例4)
2枚の穿孔フィルム間の有孔CPTFEシート
10×10cmのOmyraメッシュ(ビー・ブラウン社(B. Braun))を、実施例1にしたがって、穿孔したMonocryl(登録商標)フィルムの間に120℃で5分間ラミネートした後、2枚の冷たい金属プレートの間で更に30分間冷却した。各フィルム同士はメッシュの小孔内において安定的にラミネートされ、この複合インプラントは通常の取り扱い及び折り曲げによっては層間剥離は示さなかった。光学的コントロールは、フィルム孔の重なり合いは示さず、小孔はオフセットしていた。
【0058】
(実施例5)
オクテニジン+コーティングポリマーによる浸漬コーティングを行った穿孔フィルム積層体
実施例1にしたがって16cm×16cmのメッシュ積層体を調製した。
【0059】
1.5gのオクテニジンジヒドロクロリド+2009年10月30日出願の、本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の米国特許出願シリアル番号第12/609,101号(本明細書に援用する)の実施例5bに基づく9gのコーティングポリマーPEDG/PLLA 60/40+889gのアセトン+100gの脱イオン水を含む1kgのコーティング溶液を調製した。
【0060】
このコーティング溶液を、薄くてかつ高い垂直な長方形コーティング槽(長さ約20cm、高さ約20cm、幅約2cm)中でパージし、槽中のインプラントシートの滞留時間を約5分間とし、その後、インプラントシートを3mm/秒の速度で取り出して、乾燥させ(室温/常圧で約30分間の後、オイルポンプで脱気した真空チャンバ内で一晩)、1.5cmの円形に打ち抜き、パッケージングし、従来の酸化エチレン滅菌処理によって滅菌した。
【0061】
滅菌後、これらのディスクは2200ppmのオクテニジン含量を有し、3枚のメッシュディスク間の標準偏差は11%であった。
【0062】
FCS含有黄色ブドウ球菌アッセイにおいて、メッシュディスクは、少なくともlg5の3mlの細菌/血清混合物中で4時間インキュベートした場合にコーティングしていないコントロールと比較して強力な抗菌活性を示した。
【0063】
(実施例6)
本明細書の織物修復インプラント用具を用いた外科手術
腹壁ヘルニアを有する患者に従来の方法で手術の準備処置を行い、従来の方法で麻酔を施す。腹壁ヘルニア修復術は、本発明の組織修復インプラント用具を使用して以下のようにして行う。
【0064】
LVHR(腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術)
トロカールを配置し、気腹を確立し、ヘルニア嚢内の内容物を除き、癒着を溶解した後、外科医はヘルニア欠損部のサイズを特定する。
【0065】
ヘルニア欠損部を覆うような一定の重なりを有する適当なサイズのメッシュ(本発明に基づく)をきっちりと巻いて、10mm又は12mmのポートから腹部内に通す。必要に応じて、トロカールから患者の体内への挿入に先立って、抗生物質又は殺菌剤などの活性溶液が入った容器内にメッシュを数秒間浸す。
【0066】
トロカールを通過した後、メッシュは腸の表面でひとりでに巻き戻るか、又は適当な外科器具の最小限の補助によって巻き戻り、これを適正な位置及び向きに動かして配置する。次いでメッシュを腹壁において欠損部を覆うように持ち上げて自己付着させるか、又は腹壁に取り付ける。固定は、経腹的な縫合又はステープルを使用して従来の方法で行う。
【0067】
以上、本発明をその詳細な実施形態について図示及び説明したが、当業者であれば、特許請求される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の形態及び詳細に様々な変更を行いうる点は理解されるであろう。
【0068】
〔実施の態様〕
(1) 組織インプラント医療用具であって、
互いに反対側の第1及び第2の面を有し、複数の部材孔を有する組織修復部材と、
前記部材の前記第1の面に取り付けられた、第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムと、
織物部材の前記第2の面に取り付けられた、第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムと、を含み、
前記第1のフィルム孔と前記第2のフィルム孔とが整列されていない、組織インプラント医療用具。
(2) 活性物質を更に含む、実施態様1に記載の医療用具。
(3) 前記活性物質が、抗生物質、化学療法剤、細胞増殖抑制剤、転移阻害剤、抗糖尿病薬剤、抗真菌剤、抗微生物剤、抗細菌剤、ビタミン、婦人科用薬剤、泌尿器科用薬剤、抗アレルギー剤、性ホルモン、性ホルモン阻害剤、局所麻酔剤、止血剤(haemostyptics)、ホルモン、ペプチドホルモン、ビタミン、抗鬱剤、抗ヒスタミン剤、裸のDNA、プラスミドDNA、カチオン性DNA複合体、RNA、細胞構成成分、ワクチン、体内に天然に存在する細胞、遺伝子組み換え細胞、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様2に記載の医療用具。
(4) 前記活性物質が、オクテニジン(octenidine)、PHMB、トリクロサン、銅、銀、ナノシルバー、金、セレン、ガリウム、タウロリジン、シクロタウロリジン、N−クロロタウリン、アルコール、LAE、MAPD、OAPD、及びこれらの混合物からなる群から選択される抗微生物剤である、実施態様2に記載の医療用具。
(5) 前記抗微生物剤がトリクロサンである、実施態様4に記載の医療用具。
【0069】
(6) 前記抗微生物剤がオクテニジンである、実施態様4に記載の医療用具。
(7) 前記抗微生物剤がPHMBである、実施態様4に記載の医療用具。
(8) 前記組織修復部材が織物である、実施態様1に記載の医療用具。
(9) 前記組織修復織物が、メッシュ、織布、不織布及びテープからなる群から選択される、実施態様8に記載の医療用具。
(10) 前記組織修復部材がメッシュを含む、実施態様9に記載の医療用具。
【0070】
(11) 前記組織修復部材が、ポリアルケン、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリシリコーン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、芳香族ポリエステル、ポリイミド、セルロース、これらの重合性物質のコポリマーからなる群から選択される生体適合性非吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(12) 前記組織修復部材が、ポリヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸(polyhy droxyvaleriates)、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン(polydiaxanones)、合成並びに天然オリゴアミノ酸及びポリアミノ酸、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ポリアルコール、多糖類、ポリエーテル、再吸収性ガラス、これらの重合性物質のコポリマーからなる群から選択される生体吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(13) 前記第1及び第2のフィルムが、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、テフロン、ポリフッ化ビニリデン、及びセルロースからなる群から選択される生体適合性非吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(14) 前記第1及び第2のフィルムが、ポリヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、合成並びに天然オリゴアミノ酸及びポリアミノ酸、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ポリアルコール、多糖類、ポリエーテル、ポリアミド、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、これらの重合性物質のコポリマー、及び再吸収性ガラスからなる群から選択される生体適合性生体吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(15) 前記フィルム孔が、約0.1mm〜約5mmの範囲の孔径を有する、実施態様1に記載の医療用具。
【0071】
(16) 前記フィルムが、約5μm〜約50μmの厚さを有する、実施態様1に記載の医療用具。
(17) 前記組織修復部材が、モノフィラメント繊維を含む、実施態様1に記載の医療用具。
(18) 前記組織修復部材が、マルチフィラメント繊維を含む、実施態様1に記載の医療用具。
(19) ポリマーコーティングを更に含む、実施態様1に記載の医療用具。
(20) 前記孔がほぼ円形の断面を有する、実施態様1に記載の医療用具。
【0072】
(21) 前記孔がスリットを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(22) 組織欠損部を修復する方法であって、
組織修復インプラント用具を組織欠損部に隣接して挿入する工程であって、前記用具が、
互いに反対側の第1及び第2の面を有し、複数の部材孔を有する組織修復部材と、
前記部材の前記第1の面に取り付けられた、第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムと、
前記織物部材の前記第2の面に取り付けられた、第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムと、を含み、
前記第1のフィルム孔と前記第2のフィルム孔とが整列されていない、組織修復インプラント用具である、工程と、
前記修復用具を前記組織欠損部に固定する工程と、を含む、方法。
(23) 前記組織修復用具の挿入に先立って、活性物質を含む溶液中に前記用具を浸漬する工程を更に含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 組み合わせであって、
a)組織インプラント医療用具であって、
互いに反対側の第1及び第2の面を有し、複数の部材孔を有する組織修復部材と、
前記部材の前記第1の面に取り付けられた、第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムと、
前記織物部材の前記第2の面に取り付けられた、第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムと、を含み、
前記第1のフィルム孔と前記第2のフィルム孔とが整列されていない、組織インプラント医療用具と、
b)活性物質と、を含む、組み合わせ。
(25) 前記活性物質が溶液中に存在する、実施態様24に記載の組み合わせ。
図1
図2
図3
図4