【実施例】
【0039】
(実施例1)
2枚の有孔Monocryl(登録商標)フィルム間にラミネートされた軽量メッシュ
エチコン社(Ethicon, Inc.)(米国ニュージャージー州、サマービル)より販売されるUltrapro(登録商標)銘柄のメッシュと同じ編組構造を有するが、吸収性Monocryl(登録商標)フィラメントは含まない軽量のポリプロピレンメッシュ(ポリグレカプロン25)を調製した。このメッシュを2枚のフィルム層間に熱ラミネートした。第1のフィルムは、押出し成形され、厚さ8μmのポリ−p−ジオキサノン(PDS)フィルムでラミネートされた厚さ20μmのポリグレカプロン25 Monocryl(登録商標)フィルムからなるものであった。この予備積層体に、穴と穴との距離が5mmとなるように1mmの穴又は小孔をレーザーで切り抜いた。厚さ__のポリグレカプロン25 Monocryl(登録商標)フィルムからなる第2のラミネート層を、上記の第1のラミネート層と同様にしてレーザーで切り抜き、予め切断した。両方のフィルムを、穴又は小孔の位置が合わない(すなわちオフセットしている)ようにして置き、ポリプロピレンメッシュの外側表面に互いに反対側の外側フィルムとして置いた。このフィルムメッシュ構造体を、数層のベーキングペーパーの間で、熱プレス機中でラミネートし、2枚の金属プレート間で冷却した(120℃で30秒間、次いで金属プレート間で約30分間冷却)。
【0040】
この積層体の8×11cmの試料を、モデル抗菌溶液として0.1%(重量/重量)の抗菌クリスタルバイオレット水溶液が入れられた皿の中に水平に置いた。
【0041】
メッシュ及び各フィルムを含むラミネートされたメッシュは、10秒以内に溶液で完全に含浸された。
【0042】
穴又は小孔がないフィルムを有する同じサイズのフィルム積層体を同様に試験したところ、含浸に大幅に長い時間を要した。小孔又は穴のないフィルム積層体の含浸時間は、約5〜10分以上と観察された。
【0043】
コーティング及び含浸されたメッシュ積層体を乾燥させた後では、メッシュ小孔の中央のフィルム接着領域は抗菌色素を概ね含まず、メッシュ及びフィルムの間のメッシュ周辺領域は染色された(全面積の約30%〜50%)ことが観察された。
【0044】
実施例1にしたがって作製した本発明の組織修復用具の一実施形態の一部の写真が
図3に示されている。この図は、下側の有孔フィルムの下側フィルム孔及び中央のメッシュに対する上側の有孔フィルムの上側フィルム孔の関係を示している。
図4は、実施例1にしたがって作製した本発明の一実施形態に基づくフィルムの小孔の拡大写真である。
【0045】
(実施例2)
水平浸漬
この例は、本発明の組織修復用具の濡れ性能を無孔用具と比較して実証するものである。
【0046】
有孔フィルム(孔径=1mm、孔間隔=5mm)を用いた複数の8×12cmの積層体を実施例1にしたがって調製した。有孔フィルムの代わりに無孔フィルムを使用した以外は、実施例1にしたがって、無孔フィルムを有する複数の8×12cmの積層体を調製した。有孔及び無孔積層体の乾燥重量を測定した。
【0047】
各積層体を、500mlの0.2% Lavasept溶液(Lavasept濃縮液(20% PHMB)、ロット番号7383M03から調製したもの)の入った平らな容器中に水平に10秒間入れた。各積層体を取り出し、軽く振って余分な液体を落とし、再び重量を測定した。
【0048】
表1は、水平浸漬実験の結果を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
有孔積層体はいずれも、フィルム間を含め、完全に濡れたようであった。無孔積層体は、外周部においてフィルム間が濡れ始めていた(詳細には、積層体6は、10秒後にフィルム間が約1/4濡れていた)。
【0051】
有孔積層体は、10秒後の液体取り込み率が約70%高かった(170%→254%)。
【0052】
無孔積層体の重量増加はその全体がフィルムの表面上の液体によるものと考えられるのに対して、有孔積層体における増加は、更にフィルム間に取り込まれた液体によるものであった。
【0053】
(実施例3)
OR中での水平浸漬及び取り扱い性
実施例1にしたがって各積層体を調製したがサイズは18cm×14cmとした。有孔及び無孔積層体を、ブタの腹腔に挿入した従来の12mmトロカールから入れた。各インプラントは腸において容易に動かす(滑らせる)ことが可能であり、これを腹壁に接触させて配置した。有孔及び無孔積層体は、腹壁に対して脱離可能に自己付着した。積層体を定位置に保持しておくために器具を必要としなかった。
【0054】
等張性食塩水で予め10秒間濡らしたインプラントにおいても同様の取り扱い性が認められた。
【0055】
表1から計算した面積重量では、浸漬した穿孔フィルムの場合では、各試験体は、それ自体の面積重量である20mg/cm
2(表1の8×11cmの穿孔湿潤インプラントの2gより計算した)よりも腹壁に対する付着力が大きかった。
【0056】
本発明の用具は、骨盤、結腸直腸、及び美容整形手術などの外科的分野においてフィルムバリアとして癒着の防止に、また有望な薬剤送達キャリアとして有用であると考えられる。
【0057】
(実施例4)
2枚の穿孔フィルム間の有孔CPTFEシート
10×10cmのOmyraメッシュ(ビー・ブラウン社(B. Braun))を、実施例1にしたがって、穿孔したMonocryl(登録商標)フィルムの間に120℃で5分間ラミネートした後、2枚の冷たい金属プレートの間で更に30分間冷却した。各フィルム同士はメッシュの小孔内において安定的にラミネートされ、この複合インプラントは通常の取り扱い及び折り曲げによっては層間剥離は示さなかった。光学的コントロールは、フィルム孔の重なり合いは示さず、小孔はオフセットしていた。
【0058】
(実施例5)
オクテニジン+コーティングポリマーによる浸漬コーティングを行った穿孔フィルム積層体
実施例1にしたがって16cm×16cmのメッシュ積層体を調製した。
【0059】
1.5gのオクテニジンジヒドロクロリド+2009年10月30日出願の、本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の米国特許出願シリアル番号第12/609,101号(本明細書に援用する)の実施例5bに基づく9gのコーティングポリマーPEDG/PLLA 60/40+889gのアセトン+100gの脱イオン水を含む1kgのコーティング溶液を調製した。
【0060】
このコーティング溶液を、薄くてかつ高い垂直な長方形コーティング槽(長さ約20cm、高さ約20cm、幅約2cm)中でパージし、槽中のインプラントシートの滞留時間を約5分間とし、その後、インプラントシートを3mm/秒の速度で取り出して、乾燥させ(室温/常圧で約30分間の後、オイルポンプで脱気した真空チャンバ内で一晩)、1.5cmの円形に打ち抜き、パッケージングし、従来の酸化エチレン滅菌処理によって滅菌した。
【0061】
滅菌後、これらのディスクは2200ppmのオクテニジン含量を有し、3枚のメッシュディスク間の標準偏差は11%であった。
【0062】
FCS含有黄色ブドウ球菌アッセイにおいて、メッシュディスクは、少なくともlg5の3mlの細菌/血清混合物中で4時間インキュベートした場合にコーティングしていないコントロールと比較して強力な抗菌活性を示した。
【0063】
(実施例6)
本明細書の織物修復インプラント用具を用いた外科手術
腹壁ヘルニアを有する患者に従来の方法で手術の準備処置を行い、従来の方法で麻酔を施す。腹壁ヘルニア修復術は、本発明の組織修復インプラント用具を使用して以下のようにして行う。
【0064】
LVHR(腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術)
トロカールを配置し、気腹を確立し、ヘルニア嚢内の内容物を除き、癒着を溶解した後、外科医はヘルニア欠損部のサイズを特定する。
【0065】
ヘルニア欠損部を覆うような一定の重なりを有する適当なサイズのメッシュ(本発明に基づく)をきっちりと巻いて、10mm又は12mmのポートから腹部内に通す。必要に応じて、トロカールから患者の体内への挿入に先立って、抗生物質又は殺菌剤などの活性溶液が入った容器内にメッシュを数秒間浸す。
【0066】
トロカールを通過した後、メッシュは腸の表面でひとりでに巻き戻るか、又は適当な外科器具の最小限の補助によって巻き戻り、これを適正な位置及び向きに動かして配置する。次いでメッシュを腹壁において欠損部を覆うように持ち上げて自己付着させるか、又は腹壁に取り付ける。固定は、経腹的な縫合又はステープルを使用して従来の方法で行う。
【0067】
以上、本発明をその詳細な実施形態について図示及び説明したが、当業者であれば、特許請求される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の形態及び詳細に様々な変更を行いうる点は理解されるであろう。
【0068】
〔実施の態様〕
(1) 組織インプラント医療用具であって、
互いに反対側の第1及び第2の面を有し、複数の部材孔を有する組織修復部材と、
前記部材の前記第1の面に取り付けられた、第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムと、
織物部材の前記第2の面に取り付けられた、第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムと、を含み、
前記第1のフィルム孔と前記第2のフィルム孔とが整列されていない、組織インプラント医療用具。
(2) 活性物質を更に含む、実施態様1に記載の医療用具。
(3) 前記活性物質が、抗生物質、化学療法剤、細胞増殖抑制剤、転移阻害剤、抗糖尿病薬剤、抗真菌剤、抗微生物剤、抗細菌剤、ビタミン、婦人科用薬剤、泌尿器科用薬剤、抗アレルギー剤、性ホルモン、性ホルモン阻害剤、局所麻酔剤、止血剤(haemostyptics)、ホルモン、ペプチドホルモン、ビタミン、抗鬱剤、抗ヒスタミン剤、裸のDNA、プラスミドDNA、カチオン性DNA複合体、RNA、細胞構成成分、ワクチン、体内に天然に存在する細胞、遺伝子組み換え細胞、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様2に記載の医療用具。
(4) 前記活性物質が、オクテニジン(octenidine)、PHMB、トリクロサン、銅、銀、ナノシルバー、金、セレン、ガリウム、タウロリジン、シクロタウロリジン、N−クロロタウリン、アルコール、LAE、MAPD、OAPD、及びこれらの混合物からなる群から選択される抗微生物剤である、実施態様2に記載の医療用具。
(5) 前記抗微生物剤がトリクロサンである、実施態様4に記載の医療用具。
【0069】
(6) 前記抗微生物剤がオクテニジンである、実施態様4に記載の医療用具。
(7) 前記抗微生物剤がPHMBである、実施態様4に記載の医療用具。
(8) 前記組織修復部材が織物である、実施態様1に記載の医療用具。
(9) 前記組織修復織物が、メッシュ、織布、不織布及びテープからなる群から選択される、実施態様8に記載の医療用具。
(10) 前記組織修復部材がメッシュを含む、実施態様9に記載の医療用具。
【0070】
(11) 前記組織修復部材が、ポリアルケン、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素化ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリシリコーン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、芳香族ポリエステル、ポリイミド、セルロース、これらの重合性物質のコポリマーからなる群から選択される生体適合性非吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(12) 前記組織修復部材が、ポリヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸(polyhy droxyvaleriates)、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン(polydiaxanones)、合成並びに天然オリゴアミノ酸及びポリアミノ酸、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ポリアルコール、多糖類、ポリエーテル、再吸収性ガラス、これらの重合性物質のコポリマーからなる群から選択される生体吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(13) 前記第1及び第2のフィルムが、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、テフロン、ポリフッ化ビニリデン、及びセルロースからなる群から選択される生体適合性非吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(14) 前記第1及び第2のフィルムが、ポリヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、合成並びに天然オリゴアミノ酸及びポリアミノ酸、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ポリアルコール、多糖類、ポリエーテル、ポリアミド、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、これらの重合性物質のコポリマー、及び再吸収性ガラスからなる群から選択される生体適合性生体吸収性ポリマーを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(15) 前記フィルム孔が、約0.1mm〜約5mmの範囲の孔径を有する、実施態様1に記載の医療用具。
【0071】
(16) 前記フィルムが、約5μm〜約50μmの厚さを有する、実施態様1に記載の医療用具。
(17) 前記組織修復部材が、モノフィラメント繊維を含む、実施態様1に記載の医療用具。
(18) 前記組織修復部材が、マルチフィラメント繊維を含む、実施態様1に記載の医療用具。
(19) ポリマーコーティングを更に含む、実施態様1に記載の医療用具。
(20) 前記孔がほぼ円形の断面を有する、実施態様1に記載の医療用具。
【0072】
(21) 前記孔がスリットを含む、実施態様1に記載の医療用具。
(22) 組織欠損部を修復する方法であって、
組織修復インプラント用具を組織欠損部に隣接して挿入する工程であって、前記用具が、
互いに反対側の第1及び第2の面を有し、複数の部材孔を有する組織修復部材と、
前記部材の前記第1の面に取り付けられた、第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムと、
前記織物部材の前記第2の面に取り付けられた、第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムと、を含み、
前記第1のフィルム孔と前記第2のフィルム孔とが整列されていない、組織修復インプラント用具である、工程と、
前記修復用具を前記組織欠損部に固定する工程と、を含む、方法。
(23) 前記組織修復用具の挿入に先立って、活性物質を含む溶液中に前記用具を浸漬する工程を更に含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 組み合わせであって、
a)組織インプラント医療用具であって、
互いに反対側の第1及び第2の面を有し、複数の部材孔を有する組織修復部材と、
前記部材の前記第1の面に取り付けられた、第1のフィルム孔を有する第1のポリマーフィルムと、
前記織物部材の前記第2の面に取り付けられた、第2のフィルム孔を有する第2のポリマーフィルムと、を含み、
前記第1のフィルム孔と前記第2のフィルム孔とが整列されていない、組織インプラント医療用具と、
b)活性物質と、を含む、組み合わせ。
(25) 前記活性物質が溶液中に存在する、実施態様24に記載の組み合わせ。