特許第5932028号(P5932028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932028
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】酸素発生用陽極
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/12 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   C25D17/12 B
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-516365(P2014-516365)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2014-517158(P2014-517158A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012062088
(87)【国際公開番号】WO2012175673
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】MI2011A001132
(32)【優先日】2011年6月22日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507128654
【氏名又は名称】インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100161595
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 梓
(72)【発明者】
【氏名】ティムパノ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】カルデラーラ,アリーチェ
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/055065(WO,A1)
【文献】 特開2000−110000(JP,A)
【文献】 特表2005−530921(JP,A)
【文献】 特開平05−059580(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00538955(EP,A1)
【文献】 特開平3−271386(JP,A)
【文献】 特開平10−330998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/10
C25B 11/00
C25C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解プロセスにおける酸素発生に好適な電極であって、バルブ金属基材と、外部触媒層と、前記基材と前記触媒層との間に介在するバルブ金属酸化物からなる保護層とを含み、前記触媒層が、イリジウムと、スズと、ビスマス、アンチモン、タンタル、およびニオブからなる群から選択される少なくとも1種類のドーピング元素Mとの混合酸化物を含み、前記混合酸化物の平均微結晶サイズが5nm未満であり、モル比Ir:(Ir+Sn)が0.25〜0.55の範囲であり、モル比M:(Ir+Sn+M)が0.02〜0.15の範囲である、電極。
【請求項2】
前記ドーピング元素Mがビスマスおよびアンチモンの間から選択され、前記モル比M:(Ir+Sn+M)が0.05〜0.12の範囲である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記モル比Ir:(Ir+Sn)が0.40〜0.50の範囲である、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
前記混合酸化物の平均微結晶サイズが4nm未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記保護層の前記バルブ金属酸化物が、チタンまたはタンタルの少なくとも1種類の酸化物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記バルブ金属基材が、チタンまたはチタン合金中実シート、穴あきシート、または発泡シート、あるいはメッシュである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電極の製造方法であって、イリジウム、スズ、および前記少なくとも1種類のドーピング元素Mの前駆体を含有する溶液を、バルブ金属基材に塗布するステップと、続いて、空気中480〜530℃の温度で熱処理することによって前記溶液を分解させるステップとを含む、方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電極の表面上で酸素を陽極で発生させるステップを含む、水溶液からの金属の陰極電着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解プロセス用の電極に関し、特に、工業的電解プロセスにおける酸素発生に好適な陽極、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電解プロセス用の電極に関し、特に、工業的電解プロセスにおける酸素発生に好適な陽極に関する。酸素発生用陽極は、種々の電解用途において広く使用されており、それらのいくつかは陰極における金属電着(電気冶金)の分野にあり、印加電流密度に関しては広範囲にわたり、それらは非常に低い(たとえば金属電解採取プロセスなどにおける数百A/m)または非常に高い(直流電着の場合など、陽極表面を基準として10kA/mを超えうる)場合があり;酸素発生用陽極の別の応用分野は、外部電源陰極防食によるものである。電気冶金分野においては、特に金属電解採取に関連して、鉛系陽極の使用が以前から広まっており、そのような材料の使用に関連する環境および人間の健康に対する周知の危険性以外に、むしろ高い酸素発生過電圧を示すが、一部の用途では依然として好適である。より最近では、特に、低い酸素発生電位と関連してエネルギー節約の利点がより大きくなる高電流密度用途の場合に、金属またはその酸化物を主成分とする触媒組成物でコーティングされたバルブ金属、たとえばチタンおよびその合金の基材から出発して得られる酸素発生電極が市場に導入されている。酸素発生陽極反応の触媒作用に好適な典型的な組成物の1つは、たとえばイリジウムおよびタンタルの酸化物の混合物からなり、ここで、イリジウムは触媒活性種となり、タンタルは、緻密なコーティングの形成に好都合であり、特に、攻撃的な電解質を用いて運転される場合の腐食現象からバルブ金属基材を保護することができる。
【0003】
特定の組成を有する電極は、低および高の両方の電流密度において、適度な使用寿命で、いくつかの工業用途の要求に耐えることができる。にもかかわらず、特に冶金分野(たとえば銅またはスズの電解採取)における、一部の製造プロセスの経済性のためには、従来のより安価に製造される鉛電極に対してコスト競争力を得ながら、非常に長い使用寿命を維持するために、さらに触媒活性が向上した、言い換えるとさらに酸素発生電位が低下した電極が必要である。
【0004】
酸素発生用の特に活性の触媒コーティングの1つは、スズ酸化物およびイリジウム酸化物の混合物から出発して、十分低い温度(たとえば、同じ方法でイリジウムおよびタンタルの酸化物の前駆体の熱分解によって堆積させるために必要な480〜530℃に対して、450℃以下)で前駆体の熱分解によってバルブ金属基材上に堆積して得ることができる。しかしこの種類のコーティングは、一般的な電気冶金用途の要求に対して有効寿命が不十分となる。
【0005】
バルブ金属基材上の金属または金属酸化物を主成分とする陽極の使用寿命が、特に、腐食または陽極表面の付着の現象を加速しうる攻撃的な汚染物質の存在下で、大幅に短縮されることも考慮する必要がある。前者の種類の一例はフッ化物イオンであり、それらはチタンなどのバルブ金属を特異的に攻撃して、電極を非常に短時間で不活性化し、0.2ppmを超えるフッ化物イオン含有量で、陽極の使用期間中に感知可能な影響を示しうるので、一部の工業環境では、非常に少ない量までフッ化物濃度を低下させるために非常にコストがかかる。他方、後者の種類の一例はマンガンイオンであり、典型的には2〜30g/lの量で多くの工業用電解質中に存在し、1g/lの低い濃度から、陽極表面をMnO層で覆う傾向があって、その触媒活性を遮蔽することがあり、損傷せずに除去することは困難である。
【0006】
イリジウムおよびタンタルの酸化物の混合物、あるいはイリジウムおよびスズの酸化物の混合物でコーティングされたチタンおよびその合金などのバルブ金属の基材から出発して得られる陽極は、通常、マンガンイオンまたはフッ化物イオンの存在に対して限定された許容度を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、非常に低い酸素過電位を特徴とし、高い電流密度、または汚染種の存在などによる特に攻撃的な電解質の存在などの特に重要なプロセス条件でさえも従来技術の電極と同等以上の使用寿命をも特徴とする酸素発生陽極の必要性が明らかとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の種々の態様は、添付の特許請求の範囲に示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一態様においては、酸素発生に好適な電極は、バルブ金属基材および外部触媒層と、それらの間に介在するバルブ金属酸化物からなる保護層とを含み、触媒層は、イリジウムと、スズと、ビスマス、アンチモン、タンタル、およびニオブからなる群から選択される少なくとも1種類のドーピング元素Mとの酸化物の混合物を含み、イリジウムのモル濃度は、イリジウムおよびスズの合計に対して25〜55%の範囲であり、ドーパントMのモル濃度は、イリジウム、スズ、およびドーピング元素M自体の合計で表される全金属含有量の2〜15%の範囲である。実際に本発明者らは、驚くべきことに、スズおよびイリジウムの混合酸化物は指定の組成において、従来技術の最良の電極と少なくとも同等の寿命に対して酸素発生反応に非常に高い触媒活性を示し、マンガンイオンおよびフッ化物イオンに対する顕著に増加した許容度を示すことを観察した。なんらかの特定の理論によって本発明を限定しようと望むものではないが、本発明者らは、前駆体塩の熱分解によって指定の組成の電極を作製することで、一般に高い触媒活性に関連する驚くべき小さな結晶、たとえば5nm未満の平均サイズの微結晶を、十分な使用期間を得るために必要と通常考えられている高い分解温度、たとえば480℃以上でさえも形成する傾向にあることを確認している。一実施形態においては、ドーピング元素Mは、ビスマスおよびアンチモンの間から選択され、そのモル濃度は、イリジウム、スズ、およびドーピング元素Mの合計で表される全金属含有量の5〜12%の間の範囲である。これは、優れた安定性を触媒に付与するために十分すぎる480〜530℃の間で構成される温度範囲で前駆体溶液を分解させる場合でさえも、4nm未満の平均サイズの微結晶を形成できるという利点を有する。一実施形態においては、触媒層中のイリジウムのモル濃度は、イリジウムおよびスズの合計に対して40〜50%の間の範囲であり、本発明者らは、この組成範囲において、ドーピング元素の作用は、小さなサイズの微結晶の形成および高い触媒活性を得るために特に有効であることを見いだした。
【0010】
一実施形態においては、触媒層とバルブ金属基材との間に介在する保護層は、電解質が不浸透性である薄膜を形成可能なバルブ金属酸化物を含み、たとえば酸化チタン、酸化タンタル、またはそれら2つの混合物から選択される。これは、チタンまたは他のバルブ金属を主成分とする下にある基材を、攻撃的な電解質の攻撃から、たとえば金属電着の典型的なプロセスなどのプロセスにおいて、さらに保護するという利点を有する。
【0011】
一実施形態においては、電極は、場合により合金化されたチタン基材上で得られ;他のバルブ金属と比較して、チタンは、低コストと良好な耐食性とを特徴とする。さらに、チタンは良好な機械加工性を示し、そのため種々の用途の要求により、種々の形状、たとえば平坦シート、穴あきシート、発泡シート、またはメッシュの形態の基材を得るために使用できる。
【0012】
別の一態様においては、本発明は、電解プロセスにおける酸素発生陽極として使用すると好適な電極の製造方法であって、イリジウムと、スズと、ビスマス、アンチモン、タンタル、およびニオブからなる群から選択される少なくとも1種類のドーピング元素Mとの前駆体を含有する溶液の1つ以上のコーティングを塗布し、続いて、空気中480〜530℃の温度での熱処理により分解させるステップを含む方法に関する。前記塗布ステップの前に、当技術分野において周知の手順によって、たとえば火炎またはプラズマ溶射、空気雰囲気中での基材の長時間の熱処理によって、チタンまたはタンタルなどのバルブ金属の化合物を含有する溶液の熱分解によって、バルブ金属酸化物を主成分とする保護層を基材に設けることができる。
【0013】
別の一態様においては、本発明は、水溶液から出発する金属の陰極電着方法であって、陽極半反応が、本明細書で前述した電極の表面で生じる酸素発生反応である方法に関する。
【0014】
本発明者らが得た最も顕著な結果の一部を以下の実施例に示しているが、これらは本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【実施例】
【0015】
実施例1
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートを、超音波浴中でアセトンを用いて10分間脱脂し、最初に、表面粗Rの値が40〜45μmとなるまでコランダムグリットでサンドブラストし、次に570℃で2時間アニールし、次に27重量%HSO中85℃の温度で105分間エッチングして、得られた重量減が180〜250g/mの間となることを確認した。
【0016】
乾燥後、80:20の重量比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を、金属を基準として0.6g/m(酸化物を基準とすると0.87g/mに等しい)の全使用量で、上記シートに取り付けた。保護層の取り付けは、HClで酸性化したTaCl水溶液をTiCl水溶液に加えることで得られる前駆体溶液を3回コーティングし、続いて515℃で熱分解させることによって行われる。
【0017】
国際公開第2005/014885号パンフレットに開示される手順により、Snヒドロキシアセトクロリド錯体(以下、SnHACと記載)の1.65M溶液を調製した。
【0018】
IrClを10体積%の酢酸水溶液中に溶解させ、その溶媒を蒸発させ、10%酢酸水溶液を加え引き続いて溶媒蒸発をさらに2回行い、最後に生成物を再び10%酢酸水溶液中に溶解させて指定の濃度にすることによって、Irヒドロキシアセトクロリド錯体(以下、IrHACと記載)の0.9M溶液を調製した。
【0019】
60mlの10重量%HClを入れたビーカー中で撹拌しながら7.54gのBiClを低温で溶解させることによって、50g/lのビスマスを含有する前駆体溶液を調製した。溶解の完了後、透明溶液が得られてから、10重量%HClを加えて体積を100mlにした。
【0020】
撹拌を続けながら、10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、10mlの0.9MのIrHAC溶液、および7.44mlの50g/lのBi溶液を第2のビーカーに加えた。撹拌をさらに5分間続けた。次に10mlの10重量%酢酸を加えた。
【0021】
あらかじめ処理したチタンシートに、上記溶液をはけ塗りによって7回のコーティングで塗布し、各コーティング後には60℃で15分間の乾燥ステップと、続いて高温での15分間の分解とを行った。高温分解ステップは、第1のコーティング後は480℃、第2のコーティング後は500℃、引き続くコーティング後は520℃で行った。
【0022】
このようにして、Ir:Sn:Biのモル比が33:61:6であり、Irの比使用量が約10g/mである触媒層を塗布した。
【0023】
この電極は、タグ「Ir33Sn61Bi6」で識別した。
【0024】
実施例2
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートをあらかじめ処理し、上記実施例のように80:20のモル比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を設けた。
【0025】
90℃で、20mlの37重量%HClを入れたビーカー中で撹拌しながら9.4gのSbClを溶解させることによって、50g/lのアンチモンを含有する前駆体溶液を調製した。溶解の完了後、透明溶液が得られてから、50mlの20%HClを加え、溶液を周囲温度まで冷却した。次に20重量%HClを加えて体積を最終的に100mlにした。
【0026】
撹拌を続けながら、上記実施例の10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、上記実施例の10mlの0.9MのIrHAC溶液、および7.44mlの50g/lのSb溶液を第2のビーカーに加えた。撹拌をさらに5分間続けた。次に10mlの10重量%酢酸を加えた。
【0027】
あらかじめ処理したチタンシートに、上記溶液をはけ塗りによって8回のコーティングで塗布し、各コーティング後には60℃で15分間の乾燥ステップと、続いて高温での15分間の分解とを行った。高温分解ステップは、第1のコーティング後は480℃、第2のコーティング後は500℃、引き続くコーティング後は520℃で行った。
【0028】
このようにして、Ir:Sn:Sbのモル比が31:58:11であり、Irの比使用量が約10g/mである触媒層を塗布した。
【0029】
この電極は、タグ「Ir31Sn58Sb11」で識別した。
【0030】
比較例1
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートをあらかじめ処理し、上記実施例のように80:20のモル比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を設けた。
【0031】
撹拌を続けながら、上記実施例の10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、および上記実施例の10mlの0.9MのIrHAC溶液をビーカーに加えた。
【0032】
あらかじめ処理したチタンシートに、上記溶液をはけ塗りによって8回のコーティングで塗布し、各コーティング後には60℃で15分間の乾燥ステップと、続いて高温での15分間の分解とを行った。高温分解ステップは、第1のコーティング後は480℃、第2のコーティング後は500℃、引き続くコーティング後は520℃で行った。
【0033】
このようにして、Ir:Snのモル比が35:65であり、Irの比使用量が約10g/mである触媒層を塗布した。
【0034】
この電極は、タグ「Ir35Sn65」で識別した。
【0035】
比較例2
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートをあらかじめ処理し、上記実施例のように80:20のモル比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を設けた。
【0036】
上記実施例のように、撹拌を続けながら、10.15mlの1.65MのSnHAC溶液および10mlの0.9MのIrHAC溶液をビーカーに加えた。
【0037】
あらかじめ処理したチタンシートに、上記溶液をはけ塗りによって8回のコーティングで塗布し、各コーティング後には60℃で15分間の乾燥ステップと、続いて480℃での15分間の分解とを行った。
【0038】
このようにして、Ir:Snのモル比が35:65であり、Irの比使用量が約10g/mである触媒層を塗布した。
【0039】
この電極は、タグ「Ir35Sn65 LT」で識別した。
【0040】
実施例3
上記実施例および比較例の電極から20mm×60mmの大きさのクーポンを得て、当技術分野において周知のルギン管および白金プローブにより、150g/lのHSO水溶液中50℃の温度で測定することによって、酸素発生下での陽極電位測定を行った。表1に示されるデータ(SEP)は、PbAg基準電極に対する300A/mの電流密度における電位差値を表している。さらに表1は、X線回折(XRD)技術によって検出した微結晶の平均サイズ、および150g/lのHSO水溶液中、60A/mの電流密度、50℃の温度における加速寿命試験で測定された寿命を示している。
【0041】
これらの試験の結果は、スズおよびイリジウムの酸化物を主成分とするコーティングにどのようなドーピング量のビスマスまたはアンチモンを加えることによって、低い分解温度で得られるスズ/イリジウムを主成分とする配合物に典型的な優れた酸素発生電位と、高い分解温度で得られるスズ/イリジウムの酸化物を主成分とする配合物によって示される最適な持続時間とを併せ持つことができるかを示している。
【0042】
金属に対して2〜15%のモル範囲でビスマスおよびアンチモンの量を変化させて試験を繰り返して、同等の結果が得られ:金属に対して5〜12%のモル範囲内のビスマスおよびアンチモンの両方、またはそれらの組み合わせで、最良の結果が確認された。
【0043】
同じ濃度範囲の量のニオブまたはタンタルを加えることで、ほぼ同等の結果が得られた。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例4
前表の加速持続期間試験を、フッ化カリウム(1mg/lまたは5mg/lのF)またはMnCl(20g/lのMn++)を加えて、同じ電極から得られた同等のクーポンで同じ条件で繰り返し、その結果を表2に示しており、本発明による電極サンプルが予想よりも高い許容度を示している。
【0046】
【表2】
【0047】
以上の説明は本発明の限定を意図したものではなく、本発明は、本発明の範囲から逸脱しない種々の実施形態により使用することができ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0048】
本出願の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、用語「含む」(comprise)、ならびに「含むこと」(comprising)および「含む」(comprises)などのその変形は、他の要素、成分、または追加のプロセスステップの存在の排除を意図したものではない。