【実施例】
【0015】
実施例1
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートを、超音波浴中でアセトンを用いて10分間脱脂し、最初に、表面粗R
zの値が40〜45μmとなるまでコランダムグリットでサンドブラストし、次に570℃で2時間アニールし、次に27重量%H
2SO
4中85℃の温度で105分間エッチングして、得られた重量減が180〜250g/m
2の間となることを確認した。
【0016】
乾燥後、80:20の重量比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を、金属を基準として0.6g/m
2(酸化物を基準とすると0.87g/m
2に等しい)の全使用量で、上記シートに取り付けた。保護層の取り付けは、HClで酸性化したTaCl
5水溶液をTiCl
4水溶液に加えることで得られる前駆体溶液を3回コーティングし、続いて515℃で熱分解させることによって行われる。
【0017】
国際公開第2005/014885号パンフレットに開示される手順により、Snヒドロキシアセトクロリド錯体(以下、SnHACと記載)の1.65M溶液を調製した。
【0018】
IrCl
3を10体積%の酢酸水溶液中に溶解させ、その溶媒を蒸発させ、10%酢酸水溶液を加え引き続いて溶媒蒸発をさらに2回行い、最後に生成物を再び10%酢酸水溶液中に溶解させて指定の濃度にすることによって、Irヒドロキシアセトクロリド錯体(以下、IrHACと記載)の0.9M溶液を調製した。
【0019】
60mlの10重量%HClを入れたビーカー中で撹拌しながら7.54gのBiCl
3を低温で溶解させることによって、50g/lのビスマスを含有する前駆体溶液を調製した。溶解の完了後、透明溶液が得られてから、10重量%HClを加えて体積を100mlにした。
【0020】
撹拌を続けながら、10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、10mlの0.9MのIrHAC溶液、および7.44mlの50g/lのBi溶液を第2のビーカーに加えた。撹拌をさらに5分間続けた。次に10mlの10重量%酢酸を加えた。
【0021】
あらかじめ処理したチタンシートに、上記溶液をはけ塗りによって7回のコーティングで塗布し、各コーティング後には60℃で15分間の乾燥ステップと、続いて高温での15分間の分解とを行った。高温分解ステップは、第1のコーティング後は480℃、第2のコーティング後は500℃、引き続くコーティング後は520℃で行った。
【0022】
このようにして、Ir:Sn:Biのモル比が33:61:6であり、Irの比使用量が約10g/m
2である触媒層を塗布した。
【0023】
この電極は、タグ「Ir33Sn61Bi6」で識別した。
【0024】
実施例2
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートをあらかじめ処理し、上記実施例のように80:20のモル比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を設けた。
【0025】
90℃で、20mlの37重量%HClを入れたビーカー中で撹拌しながら9.4gのSbCl
3を溶解させることによって、50g/lのアンチモンを含有する前駆体溶液を調製した。溶解の完了後、透明溶液が得られてから、50mlの20%HClを加え、溶液を周囲温度まで冷却した。次に20重量%HClを加えて体積を最終的に100mlにした。
【0026】
撹拌を続けながら、上記実施例の10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、上記実施例の10mlの0.9MのIrHAC溶液、および7.44mlの50g/lのSb溶液を第2のビーカーに加えた。撹拌をさらに5分間続けた。次に10mlの10重量%酢酸を加えた。
【0027】
あらかじめ処理したチタンシートに、上記溶液をはけ塗りによって8回のコーティングで塗布し、各コーティング後には60℃で15分間の乾燥ステップと、続いて高温での15分間の分解とを行った。高温分解ステップは、第1のコーティング後は480℃、第2のコーティング後は500℃、引き続くコーティング後は520℃で行った。
【0028】
このようにして、Ir:Sn:Sbのモル比が31:58:11であり、Irの比使用量が約10g/m
2である触媒層を塗布した。
【0029】
この電極は、タグ「Ir31Sn58Sb11」で識別した。
【0030】
比較例1
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートをあらかじめ処理し、上記実施例のように80:20のモル比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を設けた。
【0031】
撹拌を続けながら、上記実施例の10.15mlの1.65MのSnHAC溶液、および上記実施例の10mlの0.9MのIrHAC溶液をビーカーに加えた。
【0032】
あらかじめ処理したチタンシートに、上記溶液をはけ塗りによって8回のコーティングで塗布し、各コーティング後には60℃で15分間の乾燥ステップと、続いて高温での15分間の分解とを行った。高温分解ステップは、第1のコーティング後は480℃、第2のコーティング後は500℃、引き続くコーティング後は520℃で行った。
【0033】
このようにして、Ir:Snのモル比が35:65であり、Irの比使用量が約10g/m
2である触媒層を塗布した。
【0034】
この電極は、タグ「Ir35Sn65」で識別した。
【0035】
比較例2
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートをあらかじめ処理し、上記実施例のように80:20のモル比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を設けた。
【0036】
上記実施例のように、撹拌を続けながら、10.15mlの1.65MのSnHAC溶液および10mlの0.9MのIrHAC溶液をビーカーに加えた。
【0037】
あらかじめ処理したチタンシートに、上記溶液をはけ塗りによって8回のコーティングで塗布し、各コーティング後には60℃で15分間の乾燥ステップと、続いて480℃での15分間の分解とを行った。
【0038】
このようにして、Ir:Snのモル比が35:65であり、Irの比使用量が約10g/m
2である触媒層を塗布した。
【0039】
この電極は、タグ「Ir35Sn65 LT」で識別した。
【0040】
実施例3
上記実施例および比較例の電極から20mm×60mmの大きさのクーポンを得て、当技術分野において周知のルギン管および白金プローブにより、150g/lのH
2SO
4水溶液中50℃の温度で測定することによって、酸素発生下での陽極電位測定を行った。表1に示されるデータ(SEP)は、PbAg基準電極に対する300A/m
2の電流密度における電位差値を表している。さらに表1は、X線回折(XRD)技術によって検出した微結晶の平均サイズ、および150g/lのH
2SO
4水溶液中、60A/m
2の電流密度、50℃の温度における加速寿命試験で測定された寿命を示している。
【0041】
これらの試験の結果は、スズおよびイリジウムの酸化物を主成分とするコーティングにどのようなドーピング量のビスマスまたはアンチモンを加えることによって、低い分解温度で得られるスズ/イリジウムを主成分とする配合物に典型的な優れた酸素発生電位と、高い分解温度で得られるスズ/イリジウムの酸化物を主成分とする配合物によって示される最適な持続時間とを併せ持つことができるかを示している。
【0042】
金属に対して2〜15%のモル範囲でビスマスおよびアンチモンの量を変化させて試験を繰り返して、同等の結果が得られ:金属に対して5〜12%のモル範囲内のビスマスおよびアンチモンの両方、またはそれらの組み合わせで、最良の結果が確認された。
【0043】
同じ濃度範囲の量のニオブまたはタンタルを加えることで、ほぼ同等の結果が得られた。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例4
前表の加速持続期間試験を、フッ化カリウム(1mg/lまたは5mg/lのF
−)またはMnCl
2(20g/lのMn
++)を加えて、同じ電極から得られた同等のクーポンで同じ条件で繰り返し、その結果を表2に示しており、本発明による電極サンプルが予想よりも高い許容度を示している。
【0046】
【表2】
【0047】
以上の説明は本発明の限定を意図したものではなく、本発明は、本発明の範囲から逸脱しない種々の実施形態により使用することができ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0048】
本出願の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、用語「含む」(comprise)、ならびに「含むこと」(comprising)および「含む」(comprises)などのその変形は、他の要素、成分、または追加のプロセスステップの存在の排除を意図したものではない。