特許第5932033号(P5932033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5932033イオンビーム処理方法およびイオンビーム処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932033
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】イオンビーム処理方法およびイオンビーム処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20160526BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H01L21/302 201B
   H01L21/302 105A
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-522373(P2014-522373)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2013001724
(87)【国際公開番号】WO2014002336
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2014年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-146858(P2012-146858)
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】小平 吉三
(72)【発明者】
【氏名】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】中村 美保子
【審査官】 溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/107485(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/090127(WO,A1)
【文献】 特開2009−188344(JP,A)
【文献】 特開昭57−050436(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/031838(WO,A1)
【文献】 特開2012−104859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッドによってプラズマ源から引き出されたイオンビームで、基板ホルダに載置された基板を処理する方法であって、
前記基板を、前記グリッドに対して傾けて位置させ、前記基板を面内方向に回転させながらイオンビームエッチングを行う際に、
前記基板上に形成されたパターン溝が延在する方向側から入射するイオンビームによるエッチング量が、他の方向側から入射するイオンビームによるエッチング量よりも大きくなるようにイオンビーム処理を行うことを特徴とするイオンビーム処理方法。
【請求項2】
前記基板の回転速度を、前記基板上に形成されたパターンの溝が延在する方向側に前記グリッドが位置する際に、他の方向側に前記グリッドが位置する場合よりも遅くすることを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム処理方法。
【請求項3】
前記基板の回転は、前記基板の回転及び回転の停止を繰り返し、
前記基板の回転停止時間を、前記基板上に形成されたパターンの溝が延在する方向側に前記グリッドが位置する際に、他の方向側に前記グリッドが位置する場合よりも長くすることを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム処理方法。
【請求項4】
前記グリッドに印加する電圧を制御することによって前記イオンビームのエネルギーを、前記基板上に形成されたパターンの溝が延在する方向側に前記グリッドが位置する際に、他の方向側に前記グリッドが位置する場合よりも高くすることを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム処理方法。
【請求項5】
前記プラズマ源に印加する電力を制御することによって前記イオンビーム中のイオン密度を、前記基板上に形成されたパターンの溝が延在する方向側に前記グリッドが位置する際に、他の方向側に前記グリッドが位置する場合よりも高くすることを特徴とする請求項1に記載のイオンビーム処理方法。
【請求項6】
前記基板上に形成されたパターン溝が延在する方向側からイオンビームが入射する際の前記グリッドに対する前記基板の傾斜角度が、他の方向側からイオンビームが入射する際の前記グリッドに対する前記基板の傾斜角度よりも大きくすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のイオンビーム処理方法。
【請求項7】
プラズマ源と、
前記プラズマ源からイオンビームを引き出すためのグリッドと、
前記グリッドに対して基板を傾けて載置可能であり、且つ前記基板の面内方向に回転可能である基板ホルダを備えたイオンビーム装置であって、
前記基板ホルダにおける前記基板の回転を制御するための制御部と、
前記基板の回転位置を検出するための位置検出部を備え、
前記制御部は前記位置検出部による検出結果に基づいて、前記基板上に形成されたパターンの溝が延在する方向側に前記グリッドが位置する際に、前記基板ホルダの回転速度を他の方向側に前記グリッドが位置する場合よりも遅くするイオンビーム装置。
【請求項8】
前記制御部は前記位置検出部による検出結果に基づいて、前記基板上に形成されたパターンの溝が延在する方向側に前記グリッドが位置する際の前記グリッドに対する前記基板の傾斜角度を、他の方向側に前記グリッドが位置する際の前記グリッドに対する前記基板の傾斜角度よりも大きくすることを特徴とする請求項7に記載のイオンビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオンビーム処理装置に関する。特に半導体メモリ等の微細パターンの加工に適したイオンビームエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリや記録デバイス、磁気ヘッドなどの加工に広くイオンビームエッチング(以下IBEともいう)技術が用いられている(例えば特許文献1)。IBE法は放電部に電力を投入してプラズマを形成し、グリッドに電圧を印加することによってプラズマからイオンを引き出すことでイオンビームを形成する。該イオンビームは基板に入射し、基板上の材質を主として物理的にエッチングしていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−218829号公報
【発明の概要】
【0004】
上述したIBEは物理的なエッチング要素が大きいため、被エッチング材が基板上から飛散することでエッチングが進行していく。このためフォトリソグラフィーにより形成されたパターンに従ってIBEを行うと、パターンの側壁には飛散した被エッチング材が再付着することがある。この再付着膜を除去するために、イオンビームの進行方向に対して基板を傾けてIBEを行う方法が用いられている。
【0005】
一方で次世代メモリといわれるMRAMやRRAM(登録商標)などの加工においては記録密度向上のために非常に微細なパターンを加工しなければならない。このような微細パターンをIBEによって加工する際、基板に対して斜め方向から入射するイオンビームがパターン溝の底部付近に届きにくい。以下に図1を用いてこの点を具体的に説明する。図1は基板11の上に堆積した膜をパターニングする際の状態を示している。イオンビームIが基板11に対して斜め方向から入射している。図1のように基板11のパターニングが進行すると、素子110の間に形成される溝Tが深くなり、イオンビームIに対して溝Tの底部付近が隣接する素子110の影に位置する。このため再付着膜Rを十分に除去することが困難である。また溝Tの底部に対してイオンビームIが入射し難いためエッチングが困難となる。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、微細なパターンに対しても再付着膜の堆積を抑制可能な処理方法及びイオンビーム処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、グリッドによってプラズマ源から引き出されたイオンビームで、基板ホルダに載置された基板を処理する方法であって、前記基板を、前記グリッドに対して傾けて位置させ、前記基板を面内方向に回転させながらイオンビームエッチングを行う際に、前記基板上に形成されたパターン溝が延在する方向側から入射するイオンビームによるエッチング量が、他の方向側から入射するイオンビームによるエッチング量よりも大きくなるようにイオンビーム処理を行うことを特徴とする。
【0008】
さらに本願発明は、プラズマ源と、前記プラズマ源からイオンビームを引き出すためのグリッドと、前記グリッドに対して基板を傾けて載置可能であり、且つ前記基板の面内方向に回転可能である基板ホルダを備えたイオンビーム装置であって、前記基板ホルダにおける前記基板の回転を制御するための制御部と、前記基板の回転位置を検出するための位置検出部を備え、前記制御部は前記位置検出部による検出結果に基づいて、前記基板上に形成されたパターンの溝が延在する方向側に前記グリッドが位置する際に、前記基板ホルダの回転速度を他の場合よりも遅くすることを特徴とする。
【0009】
本発明を用いることで、従来のIBEによる斜め入射では、加工が困難であった微細パターン溝の底部に再付着膜が堆積するのを抑制し微細パターンを加工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来のIBE加工方法における微細パターンを模式的に示した図である。
図2】本発明の一実施形態に係るイオンビームエッチング装置を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るグリッドの構成及び機能を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
図5】基板上の長方形のパターンの配列方向を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る、グリッドと基板との位置関係および基板の位相を説明するための図である。
図7A】本発明の一実施形態に係る、基板回転の回転速度を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
図7B】本発明の一実施形態に係る、基板回転の回転速度を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
図8】基板にイオンビームが入射する様子を模式的に示した図である。
図9A】エッチング加工前の基板上のフォトレジストを模式的に示した図である。
図9B】MRAM用のTMR素子の配列を模式的に示した図である。
図10】本発明の一実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
図11A】本発明の一実施形態に係る、プラズマ生成部への投入電力を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
図11B】本発明の一実施形態に係る、プラズマ生成部への投入電力を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
図12】本発明の一実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
図13A】本発明の一実施形態に係る、グリッドへの印加電圧を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
図13B】本発明の一実施形態に係る、グリッドへの印加電圧を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。
図14】本発明が適用可能な基板上に形成されたパターンの一例を説明するための図である。
図15】本発明が適用可能な基板上に形成されたパターンの一例を説明するための図である。
図16A】本発明の一実施形態において、基板にイオンビームが入射する様子を模式的に示した図である。
図16B】本発明の一実施形態において、基板にイオンビームが入射する様子を模式的に示した図である。
図17A】基板上のイオンビームの投影線を説明するための図である。
図17B】基板上のパターン溝の延在方向を説明するための図である。
図17C】基板上のパターン溝の延在方向を説明するための図である。
図18】本発明の一実施形態に係るグリッドと基板との位置関係、基板の位相および基板の回転速度の関係を説明するための図である。
図19】本発明の一実施形態に係るグリッドと基板との位置関係、基板の位相、基板の回転速度およびグリッドに対する基板の傾斜角度の関係を説明するための図である。
図20】本発明が適用可能な基板上に形成されたパターンの一例を説明するための図である。
図21】本発明の一実施形態に係るグリッドと基板との位置関係、基板の位相および基板の回転停止時間の関係を説明するための図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、以下で説明する図面において、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0012】
(第1の実施形態)
図2はプラズマ処理装置の概略図を示す。イオンビームエッチング装置100は処理空間1とプラズマ源としてのプラズマ生成部2で構成されている。処理空間1には排気ポンプ3が設置されている。プラズマ生成部2にはベルジャ4、ガス導入部5、RFアンテナ6、整合器7、電磁石8が設置されており、処理空間1との境界にはグリッド9が設置されている。
【0013】
グリッド9は複数枚の電極から構成される。本発明では例えば図3に示すような3枚の電極によってグリッド9が構成されている。ベルジャ4側から順に第1電極70、第2電極71、第3電極72となっている。第1電極には正の電圧が、第2電極には負の電圧が印加されることで、電位差によってイオンが加速される。第3電極72は、アース電極とも呼ばれ接地されている。第2電極71と第3電極72との電位差を制御することにより、静電レンズ効果を用いてイオンビームの径を所定の数値範囲内に制御することができる。イオンビームはニュートラライザー13により中和される。このグリッド9はプロセスガスに対して耐性を持つ材質が好ましい。グリッドの材質としてモリブデンやチタン、炭化チタン、パイロリティックグラファイトが挙げられる。またグリッド9をこれ以外の材質で形成し、その表面にモリブデンやチタン、炭化チタンをコーティングしたものでも良い。
【0014】
処理空間1内には基板ホルダ10があり、該基板ホルダ10には不図示のESC電極が接続される。このESC電極によって、基板ホルダ10に載置された基板11が静電吸着により固定される。また、他の基板固定手段としては、クランプ支持など種々の固定手段を用いることができる。ガス導入部5からプロセスガスを導入し、RFアンテナ6に高周波を印加することでプラズマ生成部2内にエッチングガスのプラズマを発生させることができる。そしてグリッド9に直流電圧を印加し、プラズマ生成部2内のイオンをビームとして引き出し、基板11に照射することで基板11の処理が行われる。引き出されたイオンビームは、ニュートラライザー13により電気的に中和され、基板11に照射される。
【0015】
基板ホルダ10は、基板11をその面内方向に回転(自転)することができる。基板ホルダ10は、基板の回転速度、基板の回転回数、およびグリッド9に対する基板ホルダ10の傾きを制御するための回転制御手段と基板の回転位置を検出する手段を備えている。また、該基板ホルダ10には、基板の回転開始位置を検出できる手段が備わっていてもよい。本実施形態では、基板ホルダ10には位置検出手段としての位置センサ14が設けられており、基板11の回転位置を検出することができる。位置センサ14として、ロータリーエンコーダを用いている。位置センサ14としては、上述のロータリーエンコーダのように回転する基板11の回転位置を検出できるものであればいずれの構成を用いても良い。
【0016】
なお、本実施形態では、位置センサ14等のセンサによって基板11や基板ホルダ10の回転位置を直接検出することによって基板ホルダ10に保持された基板11の回転位置を検出しているが、基板11の回転位置を検出できればいずれの構成を用いても良い。例えば、基板ホルダ10の回転速度や回転時間から計算により求めるなど、基板11の回転位置を間接的に求めても良い。
【0017】
基板の回転開始位置は、基板のオリフラやノッチを検出することで求められる。もしくは基板に付されたアライメントマークやパターンの配列を検出することで回転開始位置をより精度よく求めることができる。前述した位置センサ14を基板の回転開始位置センサとして使用しても良いし、位置センサ14とは別にアライメントマークやパターン配列を検出するための検出手段を設けてもよい。該検出手段としては、原子間力顕微鏡、光学測定又は走査型電子顕微鏡などを不図示の搬送経路に設けてもよいし、該測定器を搭載した測定装置を設けて、イオンビームエッチング装置100に隣接して設けてもよい。
【0018】
基板11は、基板ホルダ10の載置面上に水平状態を保って保持されている。基板11の材料としては、例えば、円板状のシリコンウェハを用いるが、これに限定されるものではない。基板ホルダ10は、イオンビームに対して任意に傾斜することができる。
【0019】
図5は本発明を適用可能な基板11の一例である。図5は基板11に形成されたパターンの一部を拡大した様子を示している。基板11上に多数の素子Jが形成されている。本発明は基板ホルダに載置した基板をグリッドに対して傾けて位置させ、基板ホルダの回転速度を変化させながら図5に示すようなパターン溝が延在する方向Dの側からのイオンビーム照射量を他の場合よりも多くすることを特徴とする。
【0020】
パターン溝が延在する方向Dの側からのイオンビームのエッチング量と、他の方向の側からのイオンビームのエッチング量との比較について、図17A〜Cを用いて説明する。
まず図17Aに示すように、グリッド9より引き出されたイオンビームを基板11の表面を含む面に投影させた線分Pを考える。次に、該投影された線分Pを、図17Bに示すようなパターン溝が延在する方向Dと、2つの方向Dの中間方向であるMDの成分に分解し、該投影された線分Pの成分は方向Dと方向MDのどちらが大きいかを比較する。これによりパターン溝が延在する方向Dの側からのイオンビームのエッチング量と、他の方向の側からのイオンビームのエッチング量との比較を行うことができる。
本実施形態では図17Bに示すように、0度から180度に向かう方向と180度から0度に向かう方向、および90度から270度に向かう方向と270度から90度に向かう方向とがパターン溝が延在する方向Dである。そして2つの方向Dの中間である、45度から225度に向かう方向と225度から45度に向かう方向、および135度から315度に向かう方向と315度から135度に向かう方向が方向MDとなる。
より具体的な例を、図17Cを用いて説明する。基板11に対して角度100度の方向から入射したイオンビームaと、角度120度の方向から入射したイオンビームbとを考える。イオンビームaは方向Dに対して成す角度が10度であり、方向MDに対して成す角度が35度である。イオンビームaの、方向Dの成分と方向MDの成分とを比較すると、cos10°:cos35°≒0.98:0.82であり、方向Dの成分の方が大きい。
一方でイオンビームbは方向Dに対して成す角度が30度であり、方向MDに対して成す角度が15度である。イオンビームbの、方向Dの成分と方向MDの成分とを比較すると、cos30°:cos15°≒0.87:0.97であり、方向MDの成分の方が大きい。従って、イオンビームaはパターン溝が延在する方向側から入射するイオンビームであり、イオンビームbはその中間方向側から入射するイオンビームであると言える。
すなわち、イオンビームが基板11の表面を含む面に投影された線分Pが、パターン溝の延在方向D同士の中間方向MDよりもパターン溝の延在方向Dに近い場合に、パターン溝の延在方向Dに対するエッチング量が支配的となる。そのため、イオンビームに係る投影された線分Pが中間方向MDよりもパターン溝の延在方向Dに近ければ、該イオンビームはパターン溝が延在する方向側から入射するものであると言える。
【0021】
また、グリッド9に対して基板11を傾けて位置させるとは、具体的には、グリッド9の中心法線に対して基板11の中心法線が所定の角度をもって交わる位置にグリッド9と基板11を位置させることをいう。すなわちグリッド9と基板11が平行にあるときに、グリッド9の中心法線と基板ホルダ10の中心法線とがなす角度を0°とし、グリッド9の中心法線と基板11の中心法線が垂直に交わる角度を90°とした場合、グリッド9に対する基板11の角度を0°から90°(0°および90°は含まない)の範囲に設定することをいう。設定される角度は、パターン溝底部を削ることを主な目的とする場合は10°〜40°、素子の側壁などの再付着膜除去や側壁エッチングなどを目的とする場合は30°〜80°が好適に用いられる。
本発明では、上述のようにグリッド9と基板11が平行な状態において、グリッド9に対する基板11の傾斜角度を0°としている。そして基板11は面内の中心点に対して対称であり、中心点を軸に回転しているため、傾斜角度が0°の状態から所定の角度だけ傾けた場合、その角度は全ての傾斜方向において等価である。すなわち、傾斜角度が0°の状態において、ある方向を+とし、反対の方向を−と定義して+30°傾斜させたとしても、それは−30°の傾斜と等価である。
このため本願明細書では原則として角度を正の値として記載する。
【0022】
なお、グリッド9の中心法線とは、円形を有するグリッドの中心点から、垂直方向に延びる線を言う。通常、基板11の中心法線がグリッド9の中心法線と交差する位置に基板11が載置される。グリッド9が円形では無く、例えば正六角形や正八角形の形を有する場合は、それぞれの対向する対角線同士を結ぶことで得られる中心の交点が中心点となる。正五角形や正七角形の場合は、それぞれの頂点から対向する辺に向かう垂線同士の交点が中心点となる。また、グリッド9の中心法線に対して基板11をずらして配置する場合は、基板11のずれ量に併せてグリッド9の中心点もずれることになる。
換言すると、本発明におけるグリッド9の中心法線は、グリッド9により引き出されるイオンビームの進行方向に沿った線分である。
もちろん、上述したグリッド9の中心点や基板11の中心点は、基板11の処理工程において影響がほぼ無い範囲において微差を有していても良い。
【0023】
また、パターン溝が延在する方向からイオンビームを照射することで、隣接するパターン同士のシャドー影響を軽減することができ、パターンの溝底部の再付着膜を除去しながら微細パターンを加工することが可能となる。
【0024】
次に、図4を参照して、本実施形態のイオンビームエッチング装置100に備えられ、上述の各構成要素を制御する制御装置20について説明する。図4は本実施形態における制御装置を示すブロック図である。
【0025】
本実施形態の制御装置20は、例えば、一般的なコンピュータと各種のドライバを備える。すなわち、制御装置20は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU(不図示)と、このCPUによって実行される様々な制御プログラムなどを格納するROMやHDD(不図示)などを有する。また、制御装置20は、上記CPUの処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM、フラッシュメモリまたはSRAM等の不揮発性メモリなど(不図示)を有する。このような構成において、制御装置20は、上記ROMなどに格納された所定のプログラム又は上位装置の指令に従ってイオンビームエッチングを実行する。その指令に従って放電時間、放電電力、グリッドへの印加電圧、プロセス圧力、および基板ホルダ10の回転および傾斜などの各種プロセス条件がコントロールされる。また、イオンビームエッチング装置100内の圧力を計測する圧力計(不図示)や、基板の回転位置を検出する位置検出手段としての位置センサ14などのセンサの出力値も取得可能であり、装置の状態に応じた制御も可能である。
【0026】
また、制御装置20は、位置センサ14の検出した回転位置に応じて、基板11の回転速度を制御する回転制御手段としてホルダ回転制御部21を備える。ホルダ回転制御部21は、目標速度算出部21aと、駆動信号生成部21bと、を備え、基板11の回転位置とグリッド9との位置関係に基づいて、基板の回転位置に応じて基板ホルダ10の回転部の回転を制御して基板11の回転速度を制御する機能を有する。制御装置20は、位置センサ14から、基板11の回転位置に関する情報を受信するように構成されている。制御装置20が上記回転位置に関する情報を受信すると、目標速度算出部21aは、基板11の回転位置を検知する位置センサ14から出力される基板11の現在の回転位置の値に基づいて、当該位置における目標回転速度を算出する。この目標回転速度の値は、例えば、基板11の回転位置と、目標回転速度との対応関係を予めマップとして保持しておくことで、演算可能である。駆動信号生成部21bは、目標速度算出部21aにより算出された目標回転速度に基づき、当該目標回転速度とするための駆動信号を生成し、回転駆動機構30に出力する。制御装置20は、駆動信号生成部21bにて生成された上記駆動信号を回転駆動機構30に送信するように構成されている。
【0027】
なお、図4の例では、回転駆動機構30は、基板ホルダ10を駆動するモータなどのホルダ回転駆動部31と、目標値と位置センサ14から出力される実値(回転位置や回転速度)との偏差に基づきホルダ回転駆動部31の操作値を決定するフィードバック制御部32と、を備え、サーボ機構により基板ホルダ10を駆動する。しかし、フィードバック制御は本発明の必須の構成ではなく、モータもDCモータ、ACモータのいずれであってもよい。回転駆動機構30は、制御装置20から受信した駆動信号に基づいて、ホルダ回転駆動部31を駆動し、基板ホルダ10を回転させる。
【0028】
次に、図2に示す本実施形態のイオンビームエッチング装置100の作用と、この装置を用いて実施するイオンビームエッチング方法について説明する。
【0029】
本実施形態にかかるイオンビームエッチング装置100で処理する基板は、図5に示すような、例えば長方形のパターンが一定の間隔をもって、縦横の両端が揃うように升目状に整列して形成されたものを用意する。基板11を、不図示の搬送手段、例えば隣接する真空搬送チャンバに備えられたハンドリング・ロボットにより、基板搬送口16を通じて処理空間1内の基板ホルダ10に載置する。基板搬送口16は不図示のゲートバルブを有し、該ゲートバルブは処理空間1と隣接する真空搬送チャンバの雰囲気が混合しないように隔離する構造となっている。載置された基板11は、ノッチやオリフラを用いて基板の回転開始位置が検出される。または基板11に付されたアライメントマークを光学カメラ等で読み取ることで回転開始位置を検出する。回転開始位置は、基板11を基板ホルダ10に載置する前に検出しても良いし、基板11を基板ホルダ10に載置した後に検出しても良い。基板11の回転開始位置を検出した結果に基づき、その後のイオンビームエッチングにおけるグリッド9と基板11の位置関係に応じた基板11の回転速度の制御が行われる。
【0030】
次に、プラズマ生成部2の内部にガス導入部5からAr等の放電用ガスを導入する。反応性イオンビームエッチングを行う場合には、プラズマ生成部2の内部にアルコールガス、炭化水素ガス、酸化炭素ガス等を導入する。
【0031】
その後、放電用電源12から高周波電力を供給し、プラズマ生成部2で放電を行う。そして、グリッド9に電圧を印加し、プラズマ生成部2よりイオンを引き出してイオンビームを形成する。グリッド9により引き出されたイオンビームはニュートラライザー13により中和され、電気的に中性となる。中和されたイオンビームは基板ホルダ10上の基板11に照射され、イオンビームエッチングが行われる。
【0032】
基板ホルダ10に基板11が載置されると、ESC電極が動作し、基板は静電吸着によって固定される。基板ホルダ10に載置された基板11は、処理位置に適した傾斜、例えばグリッド9に対して20度に傾斜する。傾斜角度は、基板のパターン状況、プロセスガス、プロセス圧力及び、プラズマ密度等を考慮することにより所定の角度が決定される。
【0033】
基板11を載置した基板ホルダ10がグリッド9に対して傾斜した後、基板ホルダ10は基板11の面内方向に回転を開始する。位置センサ14が基板11の回転位置を検出し、該検出された回転位置に応じたホルダ回転制御部21の制御により、位置センサ14が検出した回転位置に応じて、基板11の回転速度を制御する。
【0034】
以下に、基板11の回転速度の制御についてさらに詳しく説明する。図6は、本実施形態のグリッド9と基板11の位置関係および基板11の位相を説明するための図である。また図7Aは、本実施形態に係るイオンビームエッチング方法における基板の回転速度の制御マップを示す説明図である。
【0035】
図5図6を用いて本実施形態におけるグリッド9と基板11の回転位置関係を説明する。基板11は回転可能な基板ホルダ10の上に載置され、イオンビームエッチング中に、基板ホルダ10はグリッド9に対して傾斜される。図5に示すように、基板上に長方形形状のパターンが一定の間隔をもち、縦横の両端が揃うように整列して配置された、基板11のノッチ15から基板11の中心を含む線と平行な軸を縦軸とし、縦軸が長方形形状パターンの長辺となるように、パターンが基板上に配列されており、基板上に長方形形状のパターンが一定の間隔をもち、縦横の両端が揃うように整列して配置されている状態を考える。そして、図6に示すように、基板の回転位相(回転角)θは、ノッチ15を基点にし、グリッド9からのイオンビームがパターンの長辺に沿う溝が延在する方向に入射するとき、ノッチ15側を0°、対向側を180°とする。イオンビームがパターンの短辺側に沿う溝が延在する方向に入射するとき、ノッチ15側から時計回りに90°と270°と定義する。便宜的に基板回転の始点、パターン形状及び、パターンの配列方向を定義しているが、これに限定するものではない。
【0036】
本実施形態に係る装置を用いたイオンビームエッチング方法の一例では図7A、および下記式(1)に示すように、基板の回転位相θに対し、基板の回転速度yが正弦波となるように、回転速度を制御する。
【0037】
y=Asin(4(θ−α))+B ・・・(1)
A=a・B ・・・(2)
【0038】
すなわち、本発明の回転制御手段としてのホルダ回転制御部21は、上記式(1)に基づいて、基板11の回転角θの4倍周期の正弦波関数として回転速度を算出する。ここで、Aは回転速度の振幅であり、式(2)に示すように、基準速度Bに変動率aを乗じたものである。αは位相差であり、変動率aと位相差αを変えることによって、基板面内のイオンビーム入射角毎のエッチング量及びテーパ角度の分布を最適化することができる。なお、基板の回転位相θの範囲は0°≦θ<360°である。
【0039】
図7Aの例では、基準速度Bをωに設定し、変動率aを0以上の任意の数値とし、位相差αを22.5°とした時の基板回転位相θに対する基板回転速度yを示している。この場合、基板11のノッチ15が0°、90°、180°、270°の位置にある時に基板回転数(回転速度)が最も遅くなることを意味する。
【0040】
ここで、回転速度を回転位相によって変化させることによる具体的な作用及び効果を、図7A及び図9A、Bを用いて説明する。
【0041】
図9Aにおいて41はフォトレジスト、42はイオンビームエッチングの対象物である金属の多層膜の最上面である上部電極を表している。41はフォトレジストである必要は無く、イオンビームエッチングによって加工する際にマスクとして機能するものを用いることができる。ここで図9Aの状態からイオンビームエッチングによって直方体形状のTMR素子40を図9Bのように形成する場合を考える。
【0042】
ここで図7Aに示すように、基板回転位置がグリッド9に対して、パターンの長辺側に沿う溝が延在する方向、つまりノッチ15のある0°の位置に対向しているときは、基板の回転速度を遅くすることで、イオンビームはパターンの長辺側に沿うように入射され、パターンの溝が十分にエッチングされる。そして、基板を180°回転させた位置で同じように基板の回転速度を遅くすることでパターンの長辺方向に沿うように、パターン溝の底部までエッチングが均一に進行する。もう一方の、パターン溝が延在する方向であるパターンの短辺側方向においても、回転位置が90°と270°において回転速度を遅くすることで、パターンに沿って溝の底部まで堆積物を抑制しながらエッチングすることができる。長方形のパターンの溝に対して、パターンの溝に沿った4方向からイオンビームを照射することで、長方形の外周の溝が底部までエッチングされることになる。このとき、長辺側と短辺側の溝にエッチング量の差が見られる場合、例えば、長辺側の溝は浅く、短辺側の溝が深いなどの形状差がある場合は、長辺側の回転速度をさらに遅くし、イオンビームの入射量を増やすことで、溝の深さが均一になり、微細パターンの形状を均一に加工することができる。
【0043】
本実施形態では、図7Aに示す制御マップを制御装置20が有するROM等のメモリに予め格納しておけば良い。このように、上記制御マップを予めメモリに格納しておくことによって、目標速度算出部21aは、位置センサ14から基板11の回転位置に関する情報を受信すると、上記メモリに格納された図7Aに示す制御マップを参照し、現在の基板11の回転角θに対応する回転速度を抽出し、目標回転速度を取得し、該取得された目標回転速度を駆動信号生成部21bに出力する。従って、グリッド9と基板11が回転角θが0°、90°、180°、270°で対向し、パターンの溝が延在する方向からイオンビームを照射するときには基板11の回転速度を最も遅く制御でき、かつ回転角θが45°、135°、225°、315°といったパターンの溝が延在しない方向からイオンビームを照射するときには基板11の回転速度を最も速く制御することができる。
【0044】
基板ホルダ10の回転速度の変化は、図7Aに示す正弦関数以外でも良い。例えば図18に示すように、基板11の回転角度が0°〜22.5°、67.5°〜112.5°、157.5°〜202.5°、247.5°〜292.5°、337.5°〜360°の範囲で基板の回転速度を第1の速度とし、22.5°〜67.5°、112.5°〜157.5°、202.5°〜247.5°、292.5°〜337.5°の範囲で基板の回転速度を第1の速度よりも速い第2の速度とする、2つの値を用いた回転速度変化でも良い。
またθが0°、90°、180°、270°で基板11の回転速度が最も遅くなり、θが45°、135°、225°、315°で基板11の回転速度が最も速くなるように段階的に回転速度を変化させても良い。
【0045】
このように、本実施形態で重要なことは、グリッド9に対して基板ホルダ10に載置した基板11を傾けて位置させること及びパターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量が多くなるように基板の回転速度を遅くすることで本発明の効果を得ることができる。形状の均一性を良好にするためには、基板11を中心として対称な回転位置(例えば135度と315度)の回転速度を等しくすることが好ましい。図8に、パターン溝が延在する方向側からイオンビームを照射した様子の一例を示す。配列されたパターンの最外周に位置するパターンは、内側のパターンよりもエッチングされやすい。パターン形状の均一性をさらに向上させるために、パターンの最外周にダミーパターンを形成してもよい。
【0046】
(実施例1)
図9A、BはMRAMに用いられる上下電極を備えたTMR素子を示す説明図である。図9Bに示すように、TMR素子40の基本層構成は、上部電極42、磁化自由層43、トンネルバリア層44、磁化固定層45、反強磁性層46及び下部電極47を含む。例えば、磁化固定層は強磁性材料、トンネルバリア層は金属酸化物(酸化マグネシウム、アルミナなど)絶縁材料、および磁化自由層は強磁性材料からなっている。
【0047】
TMR素子40は、基板上にスパッタリングなどの成膜方法によって、上述した金属膜が積層される工程と、図9Aに示すように該積層された金属膜上(この場合、最上層は上部電極42)、にフォトレジスト41をパターニングする工程と、パターニングを該金属膜に転写し図9Bに示されるようなTMR素子をイオンビームエッチングにより加工する工程により形成される。緻密に配列されたTMR素子の微細パターンを本実施形態のイオンビームエッチング装置およびイオンビームエッチング方法を用いることによって、パターンの底部にエッチング生成物の再付着を抑制し素子分離することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
上述のように、第1の実施形態では、グリッド9から基板11に対するイオンビームの入射角度及びパターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量が多くなるように基板ホルダ10の回転速度を遅くする制御をしているが、該基板ホルダ10の回転方式を、連続回転としても良いし、非連続パルス回転としてもよい。本実施形態では、該非連続パルス回転の形態について説明する。
【0049】
図7Aは、第1の実施形態に係る、連続で基板ホルダ10を回転する場合について、基板ホルダ10の回転速度を制御する場合の説明図であり、図7Bは、本実施形態に係る、非連続で基板ホルダ10を回転する場合について、基板回転の回転停止時間を制御する場合の説明図である。
【0050】
基板ホルダ10の回転を連続的に行う場合は、ホルダ回転制御部21は、図7Aに示すように、式(1)に従って基板11が一回転(1周期)する間に該基板11の回転速度を4周期変調させるように、基板11の回転速度(角速度ω)を連続的に変化させるように駆動信号を生成する。すなわち、ホルダ回転制御部21は、基板11が連続的に回転するように基板ホルダ10の回転を制御する。なお、図7Aにおいて、fは、グリッド9からのイオンビームの基準照射量であり、ωは基準角速度である。
【0051】
一方、基板11(基板ホルダ10)の回転を非連続的(クロック状)に行う場合は、ホルダ回転制御部21は、回転停止時間sを図7Bに示すように制御する。すなわち、ホルダ回転制御部21は、例えば、基板11が所定の複数の回転角でその回転を停止し、それ以外の回転角では一定の角速度(回転速度)で基板ホルダ10の回転部が回転するように該基板ホルダ10の回転を制御する。このような制御により、基板11が非連続的に回転するように基板11の回転速度は制御される。なお、基板ホルダ10の回転部の回転速度は上述のように一定であって良いし、変化させても良い。ここで、縦軸に回転速度(角速度ω)を、横軸に時間tをとる場合の、角速度が0になっている時間を、“回転停止時間s”と呼ぶことにする。すなわち、回転停止時間sとは、基板ホルダ10を非連続に回転させる場合の、基板ホルダ10の回転を停止している時間を指す。sは、基準回転停止時間である。
【0052】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、グリッド9に対して基板ホルダに載置した基板を傾けて位置させること及びパターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量を多くすることが本質的な特徴である。上述のように、パターン溝が延在する方向側にグリッド9が位置したときに基板の回転停止時間を長くすることで、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態では、基板11(基板ホルダ10)を一回転させる間に、グリッド9がパターンの長辺側に沿う延在方向側及びパターンの短辺側に沿う延在方向側に位置するときの回転停止時間を正弦的に4周期変調させることによって、パターンの溝が延在する方向側(基板の回転位置が0°、90°、180°、270°)の回転停止時間を長くする。一方、パターンの溝が延在しない方向側にグリッド9が位置する場合の停止時間を短くすることで、パターンの溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量をパターンの溝が延在しない方向側からのイオンビーム照射量よりも多くする。また、長辺方向と短辺方向の溝にエッチング量の差が見られる場合、例えば、長辺側の溝は浅く、短辺側の溝が深いなどの形状差がある場合は、長辺側の回転停止時間をさらに長くし、イオンビームの照射量を増やすことで、溝の深さが均一になり、微細パターンの形状を均一に加工することができる。形状の均一性を良好にするためには、基板11を中心として対称な回転位置(例えば135度と315度)の回転停止時間を等しくすることが好ましい。
【0053】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、基板ホルダ10の回転速度を制御する形態について説明したが、本実施形態では、放電用電源12からプラズマ生成手段への供給電力を制御することによって、基板へのイオンビームの入射量を制御し、微細パターンの溝の加工行う。すなわち、イオンビームエッチングにおいて、イオンビームの照射量はプラズマ生成部2において形成されるプラズマのプラズマ密度と関係するため、プラズマ生成手段への供給電力を変化させることで、プラズマ生成部2のプラズマ密度を変化させることが可能となる。これにより基板11の角度位相に応じてイオンビームの照射量を変化させることができる。
【0054】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、グリッド9に対して基板ホルダに載置した基板を斜向かいに位置させること及びパターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量を多くすることが本質的な特徴である。
【0055】
図10は、本実施形態に係る制御装置20のブロック図である。本実施形態では、制御装置20は、位置センサ14の検出した回転位置に応じて、プラズマ生成手段へのパワー(電力)を制御する電力制御手段としてのパワー制御部60を備える。パワー制御部60は、目標パワー算出部60aと、出力信号生成部60bと、を備え、基板11の回転位置とグリッド9との位置関係に基づいて、プラズマ生成手段へのパワー(電力)を制御する機能を有する。
【0056】
制御装置20は、位置センサ14から、基板ホルダ10の回転位置に関する情報を受信するように構成されている。制御装置20が上記回転位置に関する情報を受信すると、目標パワー算出部60aは、基板ホルダ10の回転位置を検知する位置センサ14から入力する基板ホルダ10の現在の回転位置の値に基づいて、当該位置における目標パワー(目標電力)を算出する。この目標パワーの値は、例えば、基板ホルダ10の回転位置と、目標パワーと、の対応関係を予めマップとして制御装置20が備えるメモリ等に保持しておくことで、演算可能である。出力信号生成部60bは、目標パワー算出部60aにより算出された目標パワーに基づき、当該目標パワーとするための出力信号を生成し、電源12に出力する。制御装置20は、出力信号生成部60bにて生成された上記出力信号を電源12に送信するように構成されている。
【0057】
なお、図10の例では、電源12は、プラズマ生成手段に電力を供給するパワー出力部12bと、目標値と位置センサ14から出力される実値(回転位置や回転速度)との偏差に基づきパワー出力部12bの操作値を決定するフィードバック制御部12aと、を備える。しかし、フィードバック制御は本発明の必須の構成ではない。
【0058】
本実施形態においても、基板ホルダの回転方式は、第1の実施形態と同様に連続回転であっても良いし、第2の実施形態と同様に非連続パルス回転であっても良い。
【0059】
図11Aは、本実施形態に係る、プラズマ生成手段への供給電力を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図であり、図11Bは、本実施形態に係る、プラズマ生成手段への供給電力を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。非連続で基板を回転する場合についてはプラズマ生成手段への供給電力を一定とし、回転停止時間を変化させることで回転角θに応じたイオンビーム照射量の制御を行っても良い。
【0060】
図11A、Bに係る実施形態では、パワー制御部60は、式(1)と同様の4倍周期正弦波関数を用いて、基板11の回転角θに応じた放電用パワーを算出することができる。すなわち、パワー制御部60は、基板11(基板ホルダ10)が1回転(1周期)する間に、プラズマ生成手段への供給電力を4周期変調させるように出力信号を生成する。この時、プラズマ生成手段への供給電力は滑らかに連続的に変化させても良いし、幅を持たせて段階的に変化させても良い。パワー制御部60は、図11A、Bに示すように、パターンの溝が延在する方向側にグリッド9が対向する回転角θ=0°、90°、180°、270°のときに供給されるパワー(電力)を最大値にすることにより、基板11へのイオンビーム入射量が最大になり、上記の回転角以外のとき、パワーを最小値にすることにより、基板11へのイオンビーム入射量が最小になるように、放電用電源12を制御すれば良い。
【0061】
このように本実施形態では、基板ホルダに載置した基板をグリッド9に対して傾けて位置させること及びパターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量が多くなるようにパワー制御部60からの供給電力が大きくなるように放電用電源12を制御することで本発明の効果を得ることができる。また、形状の均一性を良好にするためには、基板11を中心として対称な回転位置(例えば135度と315度)における印加電圧を等しくすることが好ましい。
【0062】
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、プラズマ生成手段への供給電力を制御することによって被処理面の均一性を向上させる方法について述べたが、本実施形態ではビーム引き出し電圧を変化させることで、微細パターンの溝の加工行う。イオンビームエッチングでは、プラズマ生成部2においてプラズマが形成された後にグリッド9に印加された電圧によって、プラズマ生成部2のイオンが引き出されてビームが形成される。ここでプラズマ生成部2から引き出されたイオンビームのエネルギーはビーム引き出し電圧に依存するため、該電圧を基板の回転位相に併せて変化させることで、微細パターンの溝の加工行う。
【0063】
図3に、図2におけるグリッド9を拡大した様子を示す。図3を用いて本実施形態におけるビーム引き出し電圧について説明する。
【0064】
図3の上側はプラズマ生成部2であり、下側が処理空間1となっている。グリッド9は、プラズマ生成部2側から、第1電極70、第2電極71、第3電極72によって構成されている。図3は、電極によって、プラズマ生成部2に生成されたプラズマからイオンを引き出して、イオンビームを形成している様子を表している。第1電極70は第1電極用電源73により正の電圧が印加される。第2電極71は第2電極用電源74により負の電圧が印加される。第1電極70に正の電圧が印加されるため、第1電極70との電位差によって、イオンが加速される。
第3電極72は、アース電極とも呼ばれ接地されている。第2電極71と第3電極72との電位差を制御することにより、静電レンズ効果を用いてイオンビームのイオンビーム径を所定の数値範囲内に制御することができる。
本実施形態においては、通常基板ホルダ及び第3電極は接地電位となっている。このため、イオンビームのエネルギーは第1電極に印加された正の電圧によって決定される。従って、本実施形態においては、第1電極に印加された電圧がビーム引き出し電圧となる。以下、この第1電極に印加された電圧を変化させることによって、ビーム引き出し電圧を変化させた場合の実施の形態を説明する。
【0065】
本実施形態においても、いずれの実施形態と同様に、基板ホルダ10に載置した基板11をグリッド9に対して傾けて位置させること及びパターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量を多くすることが本質的な特徴である。
【0066】
図12は本実施形態にかかる制御装置20のブロック図である。本実施形態では、制御装置20は、位置センサ14の検出した回転位置に応じて、第1電極70に印加する電圧(ビーム引き出し電圧)を制御する電圧制御手段としての印加電圧制御部80を備える。印加電圧制御部80は、目標電圧算出部80aと、出力信号生成部80bと、を備え、基板11の回転位相とグリッド9との位置関係に基づいて、第1電極70への印加電圧を制御する機能を有する。
【0067】
制御装置20は、位置センサ14から、基板ホルダ10の回転位置に関する情報を受信するように構成されている。制御装置20が上記回転位置に関する情報を受信すると、目標電圧算出部80aは、基板ホルダ10の回転位相を検知する位置センサ14から入力する基板ホルダ10の現在の回転位相の値に基づいて、当該位置における目標電圧を算出する。この目標電圧の値は、例えば、基板ホルダ10の回転位置と、目標電圧と、の対応関係を予めマップとして制御装置20が備えるメモリ等に保持しておくことで、演算可能である。出力信号生成部80bは、目標電圧算出部80aにより算出された目標パワーに基づき、当該目標電圧とするための出力信号を生成し、第1電極用電源73に出力する。制御装置20は、出力信号生成部80bにて生成された上記出力信号を第1電極用電源73に送信するように構成されている。
【0068】
なお、図12の例では、第1電極用電源73は、第1電極70に電圧を印加する印加電圧出力部73bと、目標値と位置センサ14から出力される実値(回転位置や回転速度)との偏差に基づき印加電圧出力部73bの操作値を決定するフィードバック制御部73aと、を備える。しかし、フィードバック制御は本発明の必須の構成ではない。
【0069】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基板ホルダの回転方式は、連続回転であっても良いし、第2の実施形態と同様に、非連続パルス回転であっても良い。
【0070】
図13Aは、本実施形態に係る、ビーム引き出し電圧(すなわち、第1電極70への印加電圧)を制御する場合の、連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図であり、図13Bは、本実施形態に係る、グリッド9への印加電圧を制御する場合の、非連続で基板(基板ホルダ)を回転する場合についての説明図である。非連続で基板を回転する場合についてはグリッド9への印加電圧を一定とし、回転停止時間を変化させることで回転角θに応じたイオンビーム照射量の制御を行っても良い。
【0071】
図13A、Bに係る実施形態では、印加電圧制御部80は、式(1)と同様の4倍周期正弦波関数を用いて、基板11の回転角θに応じた印加電圧を算出することができる。すなわち、印加電圧制御部80は、基板11(基板ホルダ10)が1回転(1周期)する間に、ビーム引き出し電圧を4周期変調させるように出力信号を生成する。この時、ビーム引き出し電圧は滑らかに連続的に変化させても良いし、幅を持たせて段階的に変化させても良い。例えば、印加電圧制御部80は、図13A、Bに示すように、パターンの溝が延在する方向側にグリッド9が位置する回転角θ=0°、90°、180°、270°のときに第1電極70へ印加される電圧を最大値にすることによりイオンビームエネルギーが最大になり、パターンの溝が延在する方向側からのイオンビームの入射量が多くなる。一方、パターンの溝が延在しない方向側にグリッド9が位置する際に第1電極70へ印加される電圧を最小値にすることによりイオンビームエネルギーが最小になるように、第1電極用電源73を制御すれば良い。イオンビームエネルギーを最小にするにあたっては、グリッド9に印加する電圧をゼロとし、基板11へのイオンビームの照射を停止してもよい。
【0072】
このように本実施形態では、基板ホルダに載置した基板をグリッド9に対して傾けて位置させること及びパターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量が多くなるように、第1電極用電源73の印加電圧を印加電圧制御部80によって制御することで、本発明の効果を得ることができる。また、形状の均一性を良好にするためには、基板11を中心として対称な回転位置(例えば135度と315度)における供給電力を等しくすることが好ましい。
【0073】
本実施形態においては、第1電極に印加する電圧を変化させることでビーム引き出し電圧を変化させたが、他の方法でビーム引き出し電圧を変化させても良い。例えば第3電極を第1電極より低い正の電圧を印加し、第3電極に印加する電圧を変化させることでビーム引き出し電圧を変化させても良い。また基板ホルダに印加する電圧を変化させることで、基板にイオンビームが入射する際のエネルギーを変化させても良い。
また、本実施形態において、グリッド9は必ず3枚の電極から構成されている必要は無い。これは、上述したように本実施形態の本質は、イオンビームのエネルギーを、基板の回転位相に応じて変化させることにあるからである。
【0074】
(第5の実施形態)
本発明の実施形態は別のエッチング方法と組み合わせることもできる。反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)と本発明を組み合わせる例を以下に示す。RIEによるエッチング手段として、平行平板電極による容量結合プラズマを用いるエッチング装置やアンテナコイルによる誘導結合プラズマを用いるエッチング装置が知られている。RIEのメリットとして、IBEのようにイオンの入射角が制限されないため、微細パターンの隙間にイオンを引き込み、被処理物をエッチングすることができる。しかし、前述したMRAM用のTMR素子のような金属膜で構成されている構造体は、化学反応ではなくイオンによる物理エッチングが支配的となりやすい。物理エッチングで削れた磁性金属は揮発し難く、TMR素子の側壁に再付着するため、従来のIBEの加工方法と同様にエッチングされた生成物が、パターン溝の底部に残留するため加工が困難である。
【0075】
RIEによる加工を行った後に本発明の実施形態に係るIBEによる加工を行うことで、RIEでパターンの側壁に再付着したエッチング生成物をトリミング効果で除去したり、加工が困難なパターン溝の底部を加工したりすることができる。RIEとIBEの切り替えのタイミングは、プラズマ光の波長を検出する発光分析器を用いて終点検出して知ることができる。RIEがIBEは異なる装置のときは、RIEによる加工後に本発明の実施形態のIBEによって微細パターンを加工するには、別の場所にある設備を利用してもよいし、共通の搬送経路を使用して真空一貫で処理してもよい。
【0076】
(第6の実施形態)
本発明の実施形態を用いれば、さらに別の装置で加工された微細パターンを均一性よくトリミングすることができる。図2に示す電磁石8の電流を変更し、プラズマの密度分布を変更することができる。プラズマ密度分布の調整は、具体的には、電磁石8はソレノイドコイルを使用し、図2に示す通り、ベルジャの外周を囲うように設置されている。ソレノイドコイルは図示しない直流電源に接続されている。ソレノイドコイルに電流を流すと、右ネジの法則に従って磁界が発生し、プラズマ生成部の中心から外側に向かって同心円状に電子を拡散させるような磁力線が形成される。ソレノイドコイルに小さい電流を流すと、プラズマ密度は中心が高くなる傾向がある。ソレノイドコイルに流す電流の値を大きくしていくと、プラズマ密度分布は外側に拡散して平坦化される。別の装置で加工された微細パターンを原子間力顕微鏡、光学測定又は走査型電子顕微鏡等で、基板面内の膜厚分布傾向を分析し、該分析結果に基づいて電磁石8の電流を調整する。例えば、RIEで加工後の微細パターンが、基板内で中心部の膜厚が厚く、外周の膜厚が薄い場合について考える。その場合、電磁石に流す電流を、中心のプラズマ密度を高く、外周のプラズマ密度が低くなるように調整する。プラズマ密度に比例してグリッド9により引き出されるイオンビーム中の粒子の数が決まるので、イオン密度が高い中心部のエッチング速度は速くなる。従って、本発明を他のエッチング方法によるエッチング工程と組み合わせることで、微細なパターンの加工後のばらつき補正が可能となる。図2に示す電磁石8は単数であるが、さらに外側に電磁石を追加し、内側と外側の複数の電磁石の相互作用でプラズマ密度を調整してもよい。
【0077】
(第7の実施形態)
本発明の実施形態において、入射角度を変化させながらエッチングすることで、多方向から再付着した膜を除去することができ、トリミング効果を向上させることが可能となる。本実施形態では、イオンビームの入射角度がパターン溝に沿うように基板ホルダに載置した基板11をグリッド9に対して傾けて位置させるが、基板の傾斜角度を変化させて(例えば傾斜角度が30度から20度)イオンビームを照射する。基板の傾斜角度を変えることでイオンビームの入射角度が変化し、パターンの側壁から溝底部のトリミングが容易となる。
図16A、Bを用いて詳細を説明する。図16Aは、所定の傾きをもって基板11にイオンビームが入射する状態を示している。図16Bは、図16Aのイオンビームに比べて、より基板11に対して垂直な方向からイオンビームを照射している。このようにより垂直方向からイオンビームを照射することで、素子Jに対して図16Aのイオンビームとは異なった角度からのエッチングが可能となる。すなわち、本実施形態では、基板11を第1の傾斜角度に保持した状態(例えば、図16Aの状態)でイオンビーム照射を開始し、その後基板11を所定の回数回転させた後に、基板を第1の傾斜角度とは異なる第2の傾斜角度に保持した状態(例えば、図16Bの状態)に変化させ、イオンビーム照射を継続する。傾斜角度は2つに限らず、3つ以上に変化させてもよい。
さらに、より垂直方向からのイオンビーム照射においても、上述した実施形態のように、パターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量が多くなるようにすることで、図16Bに示すように、素子Jの側壁に対して効率的にイオンビームを照射することが可能となる。即ち、図16Aの状態では、イオンビームは素子Jの側壁にほぼ平行な方向から入射し、素子Jの側壁に垂直な方向からの入射は隣接する素子によって制限される。一方、図16Bの状態では、イオンビームの入射角がより垂直であるために、素子Jの側壁に垂直な方向からのイオンビームの入射量を増加させることができる。さらにパターン溝が延在する方向側からのイオンビーム照射量を多くすることで、素子Jの側壁に垂直な方向からのイオンビームの入射量を、他の方向からのイオンビームの入射量に比べて大きくすることができ、効率的なトリミングが可能となる。基板の傾斜は、回転回数毎に固定する他、スイングにより短いスイッチングで変更してもよい。
【0078】
(第8の実施形態)
上述した第7の実施形態では、一定回数以上基板11を回転させた後に、グリッド9に対する基板11の傾斜角度を変化させる形態を示した。
これに対して本実施形態では、第1の実施形態における基板11の回転速度に併せて、グリッド9に対する基板11の傾斜角度を変化させる。以下で本実施形態の詳細について図19を用いて説明する。
図19は基板11の回転速度が、その回転位置に応じて変化している様子を示している。加えて、グリッド9に対する基板11の傾斜角度Φが40°を基準として、20°〜60°の範囲で変化している。Φは好ましくは、基板11の回転速度が最も遅くなる状態で最も大きくなり、基板11の回転速度が最も速くなる状態で最も小さくなる。このような制御を行うことで、基板11のパターン溝に沿ってイオンビームが入射する際は、素子の側壁についた再付着膜などを効率的に除去し、一方のイオンビームが入射し難い状態においてはイオンビームを垂直に近い角度から入射させることで隣接する素子の影の影響を抑えつつエッチングを行うことが可能となる。
【0079】
(第9の実施形態)
第2の実施形態では、基板の位相に対して、回転停止時間を正弦関数状に変化させることによって、基板に入射するイオンビームのエネルギー量を正弦関数状に変化させる場合を示した。これに対して本実施形態では、パターン溝が延在する方向の近傍にグリッド9が位置する状態でのみ基板回転を停止させる。
図21は基板11の回転停止時間が、回転位置に応じて変化している様子を示す。本実施形態では、パターン溝が延在する方向にグリッド9が位置する回転角0°、90°、180°、270°の近傍の所定の回転角において基板回転を停止し、一定時間イオンビームを照射した後にまた回転を行う。実際の素子分離後のTMR素子側壁は基板に対して一定の傾斜角を有し、また基板に入射するイオンビームにも発散が存在するため、本実施形態を実施した場合にも、素子側壁の再付着膜に対してイオンビームが照射される。
【0080】
パターン溝が延在する方向にグリッド9が位置したときのみ基板の回転を停止させることに加え、第3の実施形態や第4の実施形態で述べたような、イオンビームの照射量やイオンビーム電圧の変化を組み合わせてもよい。この場合、パターン溝が延在する方向にグリッド9が位置したときのみ、基板に入射するイオンビームのエネルギー量を大きくし、それ以外の場合はイオンビームのエネルギー量を小さくする。
また、第1の実施形態のような回転速度の変化を組み合わせてもよく、第7の実施形態や第8の実施形態で述べたような基板の傾斜角度の変化を組み合わせてもよい。
また、パターン溝が延在する方向の近傍にグリッド9が位置する状態で、基板ホルダ10の回転位相を僅かに変化させつつイオンビームエッチングを行ってもよい。例えば、回転角0°、90°、180°、270°の近傍の所定の回転角において基板回転を停止した後に、各角度を中心として±10°の範囲で基板ホルダ10の回転角度を振動させて基板11にイオンビームを照射してもよい。このように基板ホルダ10の微小に変化させながら処理を行うことで、基板面内をより均一に加工することが可能となる。
【0081】
以上の本発明の各実施形態では、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0082】
上述の各実施形態は、例示した直方体形状のパターンを縦横の両端を揃えてパターン溝が直交するように配列するだけでなく、図14に示すような、ディスクリートトラック媒体やアスペクト比の大きなラインアンドスペース形状、及び図15に示すような、基板の処理面が、正弦波形型のみならず、矩形波形型、三角波形型、台形波形型などにも適用可能である。
【0083】
また、上述の各実施形態は、図20に示すような、直方体形状のパターンを斜め方向に両端を揃えて配列したものにも適用可能である。この場合、図20に示すように、パターン溝に沿った方向D同士も互いに垂直でない所定の角度で斜め方向に交わる。また、直方体形状パターンに限らず、円柱状パターンにおいても上述の実施形態が利用可能である。
本発明の各実施形態は、例示したMRAM用のTMR素子のみならず、HDD用磁気ヘッド、HDD用磁気記録媒体、磁気センサ、薄膜太陽電池、発行素子、圧電素子、半導体の配線形成など、多方面に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図16A
図16B
図17A