(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932039
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】充填されない区域を有する検出器に充填される樹脂の高さ位置を制御する装置
(51)【国際特許分類】
B29C 31/04 20060101AFI20160526BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20160526BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
B29C31/04
B29C39/24
B29C39/10
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-527594(P2014-527594)
(86)(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公表番号】特表2014-529531(P2014-529531A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】EP2012066418
(87)【国際公開番号】WO2013030086
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年3月4日
(31)【優先権主張番号】1157709
(32)【優先日】2011年9月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594083128
【氏名又は名称】シュネーデル、エレクトリック、インダストリーズ、エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER ELECTRIC INDUSTRIES SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル、ガイユドラ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ドーマラン
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−151447(JP,A)
【文献】
特開昭62−145737(JP,A)
【文献】
特開昭62−124932(JP,A)
【文献】
特開平9−219529(JP,A)
【文献】
特開平5−157500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 31/04
B29C 39/10
B29C 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(2)と、前記基体に取り付けられて前記基体(2)に樹脂を充填する樹脂供給装置と、を備え、
前記基体(2)は、充填が完了した後の樹脂によって充填されない非充填領域(3)を含み、
前記基体(2)は、上端部の高さ位置に開口(5)を含み、
前記非充填領域(3)は、前記基体(2)の前記上端部に位置付けられて前記基体(2)の内側に延びており、
前記樹脂供給装置は、前記開口(5)に一致するとともに前記基体(2)の内側に延びる注入コラム(4)を含み、充填の間、樹脂は前記注入コラムを介して前記基体(2)の内側に入り込み、
前記注入コラム(4)が、前記基体(2)の内側に所定距離、前記非充填領域(3)よりも深く延び、充填の間、樹脂が前記注入コラム(4)に達すると、前記非充填領域(3)内の空気の圧力と前記注入コラム(4)内の樹脂の圧力との間で釣り合いが確立されるまで前記基体(2)に閉じ込められた空気が前記非充填領域(3)内で圧縮され、これにより、充填が自動的に停止して、前記非充填領域(3)が充填されないことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記基体(2)への樹脂の充填は、遠心分離技術によってもたらされ、前記樹脂供給装置が取り付けられた前記基体(2)が回転運動を受けている場合に、樹脂は、遠心力の作用のために、前記注入コラム(4)を介して前記基体(2)の内側に進入することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記樹脂供給装置は、前記注入コラム(4)に接続され得る取り外し可能なピペット(6)を含み、充填の間、樹脂は、前記ピペット(6)および前記注入コラム(4)を介して前記基体(2)の内側に進入することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
検出器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記非充填領域(3)は、電子部品を収容することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記非充填領域(3)は、発光ダイオード(D)を収容することを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記非充填領域(3)は、通信装置を収容することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品(product)、とりわけパラメータ可能な検出器(parameterable detector)であって、機械的強度と密封性が基体に樹脂を充填することによって強化される検出器に関する。より詳細には、本発明は、本体への樹脂の充填であって、典型的には電子部品を含むための非充填領域すなわち樹脂で埋め込まれない領域を含む前記本体への、好ましくはいわゆる“遠心分離”技術(centrifuging technique)による樹脂の充填に関する。従って、本発明の装置は、このような本体へ充填することができるとともに当該充填を自動的に停止することができ、非充填領域が樹脂で効果的に充填されない。
【背景技術】
【0002】
高い機械的強度と密封性を保証するために、パラメータ可能な検出器のような物品の基体が樹脂に埋設されることが知られている。これに関連して、パラメータ可能でない物品は、一般に全体的に樹脂が充填されている。これに対してパラメータ可能な物品は、その基体内に発光ダイオード、調整部品(adjustment component)、スイッチといった電子部品を含んでおり、注入された樹脂は、いかなる場合でも当該電子部品に接触してはならない。
【0003】
しかしながら、知られている充填技術、とりわけ遠心分離充填技術は、基体の充填の高さ位置の自動的な制御を可能としていない。パラメータ可能な物品の場合には、基体を樹脂で充填することが必要であり、このため重力充填技術(gravity filling technique)が現在使用されている。この技術は、一度限りの性質(one-off kind)を必要とし、デリケートでオペレータの操作の下で実施されるため、複雑であり高価である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、パラメータ可能な検出器のような物品の基体に全体的に自動で充填するための解決法を提案することである。このため、本発明は、基体の内側に樹脂を導入するための注入コラム(injection column)を含む基体の内側に樹脂を供給するための装置であって、好ましくは、遠心分離技術を使用し、樹脂と接触してはいけない部品を含む領域が樹脂で充填されない高さ位置で、基体への樹脂の注入が自動的に停止するように、前記注入コラムの高さが構成されている装置に関する。
【0005】
従って、本発明は、
基体と、前記基体に取り付けられて前記基体に樹脂を充填する樹脂供給装置と、を備え、
前記基体は、充填が完了した後の樹脂によって充填されない非充填領域を含み、
前記基体は、上端部の高さ位置に開口を含み、
前記非充填領域は、前記基体の前記上端部に位置付けられて前記基体の内側に延びており、
前記樹脂供給装置は、前記開口に一致するとともに前記基体の内側に延びる注入コラムを含み、充填の間、樹脂は前記注入コラムを介して前記基体の内側に入り込み、
前記注入コラムが、前記基体の内側に所定距離、前記非充填領域よりも深く延び、充填の間、樹脂が前記注入コラムに達すると、前記非充填領域内の空気の圧力と前記注入コラム内の樹脂の圧力との間で釣り合いが確立されるまで前記基体に閉じ込められた空気が前記非充填領域内で圧縮され、これにより、充填が自動的に停止して、前記非充填領域が充填されないことを特徴とする装置、
に関する。
【0006】
好適には、前記基体への樹脂の充填は、遠心分離技術によってもたらされ、前記樹脂供給装置が取り付けられた前記基体が回転運動を受けている場合に、樹脂は、遠心力の作用のために、前記注入コラムを介して前記基体の内側に進入する。
【0007】
好適には、前記樹脂供給装置は、前記注入コラムに接続され得る取り外し可能なピペットを含み、充填の間、樹脂は、前記ピペットおよび前記注入コラムを介して前記基体の内側に進入する。
【0008】
ある実施の形態では、前記注入コラムは、前記基体の質量体(mass)内に配置されている。
【0009】
他の実施の形態では、前記注入コラムは、前記基体から分離された本体(body)内に配置されている。
【0010】
また、本発明は、
基体と、上述した樹脂供給装置と、を備えたことを特徴とする検出器、
に関する。
【0011】
この検出器において、前記非充填領域は、電子部品を収容することが好適である。
【0012】
前記非充填領域は、発光ダイオードを収容してもよい。
【0013】
前記非充填領域は、通信装置を収容しておよい。
【0014】
他の特徴および利点は、添付された図面を参照して以下の詳細な説明において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、パラメータ可能な検出器の基体の概略図である。
【
図2】
図2は、パラメータ可能な検出器の基体に取り付けられた本発明の樹脂供給装置の断面図である。
【
図3】
図3は、樹脂の充填が完了した場合におけるパラメータ可能な検出器の基体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、例えば電子部品を収容するために非充填領域以外は樹脂が充填されるように設計された基体を備えた装置に関する。本発明の装置は、基体に取り付けられて自動的な充填を可能にするように設計された樹脂供給装置を備えている。
【0017】
図1を参照すると、本発明の装置が、パラメータ可能な検出器1の形態で示されている。
図2に示されているように、パラメータ可能な検出器1は、基体2と非充填領域3とを備えている。非充填領域3は、パラメータ可能な検出器の場合にはダイオードD、スイッチまたは電子通信部品を典型的に含んでいる。
【0018】
パラメータ可能な検出器1は、注入コラム4とピペット6とから構成されている樹脂供給装置を更に含んでいる。既に説明したように、パラメータ可能な検出器1のようないくつかの物品は、非充填領域3以外の基体2に樹脂を充填することを必要としており、機械的強度および密封性を強化している。基体2は、好ましくは、遠心分離によって充填される。この遠心分離充填技術において、物品のセットが遠心分離機(centrifuge)内に水平に配置され、樹脂は、開口5および注入コラム4を介して当該物品内に入り、開口5の反対側の端部である基体2の底部に対して押し付けられる。遠心分離充填方法は、遠心力の作用のために樹脂内に出現する気泡の可能性を非常に小さくすることから好適である。このような気泡は、害を及ぼすものであり、重力充填の場合に出現し得る。
【0019】
いずれにせよ、基体2に樹脂を充填するどんな方法が選択されても、当該樹脂は注入コラム4を介して物品内に供給される。
【0020】
本発明によれば、非充填領域3に充填させないために、基体2の充填の高さ位置は、基体2の内側にある注入コラム4の長さの適切な構成により、非充填領域3の体積に対して自動的に調整される。従って、基体2を満たした場合、樹脂はパラメータ可能な検出器1に進入し、基体2内に収容された空気は圧縮されて注入コラム4を介して排出される。
図2に示されているように、注入コラム4の長さが調整されているので、基体2内における樹脂の高さ位置が注入コラム4の底部に達すると、空気はもはや逃れることができず、基体2の内側の注入コラム4の端部と開口5を組み込む基体2の上端部との間に位置付けられた非充填領域3において圧縮される。重力、または好ましくは遠心力の作用のために、非充填領域3内の空気の圧力と注入コラム4内の樹脂の圧力とが等しくなるまで、樹脂はパラメータ可能な検出器1内に進入し続ける。その後、基体2への充填は自動的に停止される。
【0021】
図3に示されているように、本発明の好適な実施の形態においては、基体2は、遠心分離によって充填され、ピペット6は、注入コラム4に取り付けられて、基体2内へ樹脂を供給するように設計された本発明の樹脂供給装置が完成する。
【0022】
要約すると、本発明は、樹脂が充填される基体と非充填領域とを備えた装置であり、樹脂が所望の高さ位置に達すると充填の自動的な停止を可能とする。本発明は、物品の内側に設けられ、所定の長さを有する注入コラムを提供する。この注入コラムの所定の長さは、基体への樹脂の注入の間、樹脂が注入コラムの端部に達した後、樹脂の圧力と非充填領域内の空気の圧力との間でバランスが自動的に得られて基体への充填を停止するように調整されている。非充填領域は、注入コラムの端部と基体の上端部との間に位置付けられている。