(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0005】
開示された実施形態は、添付図面と共に以下の詳細な説明を読むことにより、更に理解できるであろう。
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態によるエネルギー蓄積構造体の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるエネルギー蓄積構造体の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による多孔質構造体のチャネル内に形成された電気二重層の図を示す。
【
図4a】多孔質シリコン構造体の表面の画像を示す。
【
図4b】多孔質シリコン構造体の断面スライスの画像を示す。
【
図5】本発明の一実施形態によるエネルギー蓄積デバイスの一部の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による炭化水素終端表面を有する電極の概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるエネルギー蓄積デバイスを含むモバイル電子デバイスの概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるエネルギー蓄積デバイスを製造する方法を説明するフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態によるコンピュータシステムの概略図である。
【0007】
説明を平易かつ明確とするために、図面は、一般的な構成方法を示し、周知の特徴及び技術の説明及び詳細は、本発明の実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを回避するために省略される。更に、図面における構成要素は、必ずしも縮尺通りに描画されていない。例えば、図面における幾つかの構成要素の寸法は、本発明の実施形態を理解し易くするために、他の構成要素に対して拡大されていることもある。幾つかの図面は、例えば構造体が直線、鋭角及び/又は平行面等を有するように示される等、理解を助けるために、理想的な方法で示されるが、現実世界の状況下では、あまり左右対称で、秩序立ってはいない可能性が高い。様々な図面における同じ参照番号は、同じ構成要素を指す一方で、類似した参照番号は、必ずしもそうではないが、類似した構成要素を指す。
【0008】
下記記載及び請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」及び「第4の」等といった用語は、ある場合には、類似した構成要素を区別するために使用され、必ずしも特定の順次的な又は経時的な順序を記載するものではない。当然ながら、このように使用される当該用語は、適切な状況下では置換可能であり、したがって、ここに記載される本発明の実施形態は、例えば、ここに図示あるいはその他の方法で記載された順序以外の順序で動作可能である。同様に、本明細書において、方法が、一連のステップを含むものとして記載される場合、本明細書において提示される当該ステップの順序は、必ずしも当該ステップが実行されうる唯一の順序ではなく、記載されたステップのうちの幾つかが場合によって省略されてもよく、且つ/或いは、本明細書に記載されない特定の他のステップが場合によって方法に追加されてもよい。更に、「包含する」、「含む」、「有する」との用語及び任意のその変形は、非排他的な包含を対象とすることを意図し、したがって、一連の構成要素を含む処理、方法、製品又は装置は、必ずしもこれらの構成要素に限定されるわけではなく、明示的に列挙されていない他の構成要素や、当該処理、方法、製品又は装置に本来備わる他の構成要素を含んでもよい。
【0009】
下記記載及び請求項における「左」、「右」、「前」、「後ろ」、「上部」、「下部」、「〜の上方」及び「〜の下方」等の用語は、ある場合には、説明目的に使用され、具体的に又は文脈によって特に明記されない限り、必ずしも永久的な相対位置を説明するために使用されるものではない。当然ながら、このように使用される当該用語は、適切な状況下では置換可能であり、したがって、ここに記載される本発明の実施形態は、例えば、ここに図示あるいはその他の方法で記載された向き以外の他の向きで動作を行うことが可能である。本明細書において使用される「結合された」との用語は、電気的又は非電気的に、直接又は間接的に接続されると定義される。互いに「隣接する」と、本明細書において記載される物体は、当該表現が使用される文脈において適切であるように、互いに物理的に接触していてもよいし、互いに近位にあってもよいし、又は、互いに同じ一般的な領域内にあってもよい。本明細書における「一実施形態では」との表現は、必ずしもすべて同じ実施形態について言及しているとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態において、エネルギー蓄積デバイスは、第1の電解質を含む第1の複数のチャネルを含む第1の電極と、第2の電解質を含む第2の複数のチャネルを含む第2の電極とを含む。第1の電極は、第1の表面を有し、第2の電極は、第2の表面を有する。第1及び第2の電極のうちの少なくとも一方が、多孔質シリコン電極であり、第1及び第2の表面のうちの少なくとも一方が、不動態化層を含む。
【0011】
本明細書における説明のほとんどは、電気化学キャパシタに重点を置くが、「エネルギー蓄積デバイス」との指定は、明示的に、ECに加えて、ハイブリッド電気化学キャパシタ(電気化学キャパシタと同様に、以下により詳細に説明される)だけでなく、電池、燃料電池及びエネルギーを蓄積する同様のデバイスを含む。本発明の実施形態によるエネルギー蓄積デバイスは、デスクトップ及びラップトップ(ノートブック)コンピュータを含むパーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、セル式電話機、スマートフォン、音楽プレイヤ、サーバー、他の電子デバイス、自動車、バス、列車、飛行機、他の輸送車両、家庭用エネルギーストレージ、太陽及び風力エネルギー生成器によって生成されたエネルギー用のストレージ(特に、エネルギーハーベスティングデバイス)、及びその他多数を含む多種多様の用途に使用できる。
【0012】
電気化学キャパシタは、従来の平行板キャパシタを支配する原理と同様の原理に従って動作するが、幾つか重要な相違点がある。1つの大きな相違点は、電荷分離メカニズムに関する。ECの1つの重要なクラスでは、これは、通常は、従来のキャパシタの誘電体ではなく、いわゆる電気二重層、即ち、EDLの形を採る。EDLは、電解質と高表面積電極との間の界面において、当該界面の片面における電子(又は電子空孔)ともう片面におけるイオン電荷担体との電気化学的挙動によって作成され、二重層における2つの層は、互いに非常に近いにも関わらず、電荷の実効的な分離がもたらされる(物理的な分離距離は、1ナノメートルのオーダーである)。したがって、典型的なEDLキャパシタは、そのEDLに電荷を蓄積しているものと考えられる。電圧が界面の両端に印加されると形成されるEDLの各層は、導電性(伝導は電解質内のイオンと、電極内の電子/空孔によって行われる)であるが、二重層の特性によって、それらの間にある境界を越えて電流が流れることが阻止される(EDLは、
図3に関連して以下に更に説明される)。
【0013】
従来のキャパシタにも当てはまることではあるが、EDLキャパシタにおけるキャパシタンスは、電極の表面積に比例し、電荷分離距離に反比例する。EDLキャパシタにおいて非常に高いキャパシタンスが達成可能であるのは、マルチチャネル多孔質構造に起因する非常に高い表面積と、前述のように、EDLに起因し、電解質があることによって生じるナノメートルスケールの電荷分離距離とに、部分的に因るものである。本発明の実施形態に従って使用されうる電解質の1つのタイプは、イオン液体である。別のタイプは、イオン含有溶媒を含む電解質である。有機電解質、水溶性電解質及び固体電解質も可能である。
【0014】
電気化学キャパシタのもう1つのクラスは、EDLキャパシタンスに加えて、追加の蓄積メカニズム(ファラデー性であり、元は静電気的ではない)が、特定タイプの電極の表面に生じる疑似キャパシタである。この追加の蓄積メカニズムは、典型的に、「疑似キャパシタンス」と呼ばれ、多くの固体電極電池の動作に似た電荷蓄積プロセスによって特徴付けられる。これらの2つの蓄積メカニズムは、互いを補完しあい、EDLキャパシタンスだけで可能であるエネルギー蓄積潜在力よりも一層高いエネルギー蓄積潜在力をもたらす。典型的に、疑似キャパシタの電極のうちの1つは、遷移金属酸化物、適切な導電性高分子、又は電荷が蓄積されるアクティブ材料を構成する同様の材料によって被覆される。これらの材料は、水酸化カリウム(KOH)溶液といった電解質と共に使用されることができ、デバイスが充電されると、該電解質が、当該材料と反応し、エネルギーが蓄積される電荷移動反応を推進する。より具体的には、当該材料は、それらのエネルギーのほとんどを、可逆性の高い表面及び表面付近の電子移動(例えば酸化還元(ファラデー性))反応を介して、蓄積する。これらの反応は、高速充電及び放電動力学に起因して従来の電池におけるバルクストレージよりも高い電力を可能にする。
【0015】
疑似キャパシタは、前述の電解質以外の電解質を使用して構成してもよいことは理解されるであろう。例えば、Li
2SO
4又はLiPF
6といったイオン含有溶媒が電解質として使用されてもよい。これらは、任意の結合を破壊することなくホスト構造体の表面に種を挿入することを伴うインターカレーション反応をもたらす。この反応は、前述の他の疑似容量性反応と同様に、電荷の移動をもたらすため、この反応も、ファラデー性で、特殊なタイプの酸化還元反応ではあるが、1つの酸化還元反応と見なされる。
【0016】
ハイブリッド電気化学キャパシタは、EC及び電池の特性を組み合わせたエネルギー蓄積デバイスである。一例では、ECの高速充電及び放電特性と電池の高エネルギー密度とを有するデバイスを作成するために、リチウムイオン材料で被覆された電極が、電気化学キャパシタと組み合わされる。その一方で、ハイブリッドECは、電池と同様に、電気化学キャパシタよりも短い平均寿命を有する。
【0017】
次に、図面を参照すると、
図1及び
図2は、本発明の実施形態の理解を助ける概念及び構造体を紹介する最初の説明を案内するために使用されるエネルギー蓄積構造体100の断面図である。
図1に示されるように、エネルギー蓄積構造体100は、エネルギー蓄積デバイス101と、導電性支持構造体102とを含む(幾つかの実施形態では、支持構造体102は省略されてもよい)。或いは、
図2に示されるように、エネルギー蓄積構造体100は、エネルギー蓄積デバイス101と、非導電性支持構造体102とを含む。
【0018】
エネルギー蓄積デバイス101は、電子絶縁体及びイオン導体であるセパレータ130によって、互いから離隔される導電性構造体110と導電性構造体120とを含む。セパレータ130は、導電性構造体110及び120が、互いに物理的に接触することを阻止し、これにより、電気的短絡を阻止する(他の実施形態では、以下に説明される理由から、セパレータは不要であり、省略されてもよい)。
【0019】
幾つかの実施形態では、導電性構造体110及び120のうち少なくとも一方が、複数のチャネルを含む多孔質構造を含み、各チャネルは、多孔質構造の表面への開口を有する。この特徴は、特定の実施形態において多孔質構造を形成するために使用される、以下に説明される例示的なプロセスの結果である。一例として、多孔質構造は、導電性又は半導電性の材料内に形成される。或いは、多孔質構造は、導電膜(例えば、窒化チタン(TiN)、タングステン又はルテニウムといった原子層堆積(ALD)された導電膜)によって被覆された絶縁材料(例えばアルミナ)内に形成されてもよい。この点に関し、導電率が高い材料が有利である。これは、当該材料は、エネルギー蓄積デバイスの等価直列抵抗(ESR)を下げるからである。図示される実施形態では、導電性構造体110及び導電性構造体120は共に、このような多孔質構造を含む。したがって、導電性構造体110は、対応する多孔質構造の表面115への開口112を有するチャネル111を含み、導電性構造体120は、対応する多孔質構造の表面125への開口122を有するチャネル121を含む。
【0020】
エネルギー蓄積デバイス101の様々な構造が可能である。
図1の実施形態では、例えば、エネルギー蓄積デバイス101は、セパレータ130を間に挟み、向かい合って互いに接合された2つの異なる多孔質構造(つまり、導電性構造体110及び導電性構造体120)を含む。もう1つの例として、
図2の実施形態では、エネルギー蓄積デバイス101は、セパレータ130を含むトレンチ231によって、第1のセクション(導電性構造体110)が、第2のセクション(導電性構造体120)から離隔されている単一の平面多孔質構造を含む。導電性構造体のうちの一方は、デバイスの正極側となり、もう1つの導電性構造体は、負極側となる。トレンチ231は、導電性構造体110及び120を直線に沿って離隔しうるが、それに代えて、例えば2つの互いにかみあうインターディジット型電極のフィンガ間の蛇行空間といった、より複雑な形状を使用して、それらを離隔してもよい。
【0021】
一例として、セパレータ130は、透過性膜又は他の多孔質高分子のセパレータであってもよい。一般に、セパレータは、アノードとカソードとの(デバイス内の電気的機能不全を引き起こしうる)物理的接触を阻止する一方で、イオン電荷担体の移動を許可する。高分子セパレータに加えて、幾つかの他のセパレータタイプも可能である。そのようなセパレータタイプの例としては、不織繊維シート又は他の不織セパレータ、液体膜、高分子電解質、固体イオン導体、ガラス繊維、紙、セラミック等が挙げられる。幾つかの実施形態では、不織セパレータは、ランダムに方向付けられるか指向性パターンに配置されるかの何れかである繊維の集結である。
【0022】
なお、セパレータは、
図2では図示されているが、図示されている構成においては必要でないこともある。これは、例えば支持構造体102を使用して、構造体110と120との間の物理的分離を維持してもよいからである。別の例として、導電性構造体110及び120は、それぞれ、当該2つの導電性構造体を互いから物理的に分離させ続けるセラミックパッケージ(図示せず)に取付けられてもよい。
【0023】
一例として、導電性構造体110及び120の多孔質構造は、水が岩に通路を刻む方法と少なくとも幾らか似たやり方で、導電性構造体の表面に塗布されるエッチング液が導電性構造体の一部を除去するウェットエッチングプロセスによって作成される。これは、このように形成されたチャネルのそれぞれが、導電性構造体の表面への開口を有する理由である。ウェットエッチング法は、完全に閉じられた空洞、即ち、表面への開口のない、多孔質構造内の(例えば岩の中に閉じ込められた気泡のような)空洞を作成することができない。しかし、これらの開口が、他の材料によって覆われる、又は、他の材料の存在又は追加によって塞ぐ(幾つかの実施形態において起きる可能性がある)ことができないというわけではない。しかし、覆われていてもいなくても、説明された表面への開口は、本発明の少なくとも1つの実施形態による各多孔質構造における各チャネルの特徴である(開口が塞がれる1つの実施形態は、回路又は他の配線のための場所としてのエピタキシャルシリコン層がチャネルの上に成長させられた実施形態である)。
【0024】
正しいエッチング液を用いることで、多種多様の材料から前述の特徴を有する多孔質構造を作ることが可能である。冶金級シリコン、単結晶シリコン、多結晶シリコン及びシリコン・オン・インシュレータを含む様々な形のシリコンが、うまくいく1つの材料である。一例として、シリコン基板を、フッ化水素酸(HF)及びアルコール(エタノール、メタノール、イソプロピル等)の混合液によってエッチングすることによって、多孔質シリコン構造が作成される。より一般的には、多孔質シリコン及び他の多孔質構造は、陽極酸化及びステインエッチングといったプロセスによって形成されてもよい。本発明の実施形態によるエッチング技術は、以下により詳細に説明される。本発明の実施形態によるエネルギー蓄積デバイスに特によく適した(シリコン以外の)幾つかの他の材料は、多孔質ゲルマニウム及び多孔質スズである。
【0025】
多孔質シリコンを使用することによる可能な利点としては、既存のシリコン技術とのその適合性と、地殻におけるその存在度が挙げられる。多孔質ゲルマニウムも、当該材料のための既存技術の結果、同様の利点を享受し、また、シリコンと比較して、その自然酸化物(ゲルマニウム酸化物)が水溶性であるため、容易に除去可能であるという更なる可能な利点も享受する(シリコンの表面上に形成される自然酸化物は電荷を捕捉するが、これは、望ましくない結果である)。多孔質ゲルマニウムもシリコン技術との適合性が高い。ゼロバンドギャップ材料である多孔質スズを使用することによる可能な利点としては、幾つかの他の導電性材料及び半導電性材料に対し、伝導率が向上される点が挙げられる。
【0026】
ガリウムヒ素(GaAs)、リン化インジウム(InP)、窒化ホウ素(BN)、炭化シリコン(SiC)といった半導体材料、及びシリコンとゲルマニウムの合金といった合金を含め、他の材料が多孔質構造に使用されてもよい。有機半導体が使用されてもよい。幾つかの実施形態では、半導電性材料(或いは絶縁材料でさえも)が、それらの材料が導電性(又は、伝導率がより高くなるように)処理され得る。一例は、ホウ素で縮退ドープされたシリコンである。多孔質半導電性基板に加えて、特定の実施形態では、炭素、又は、銅、アルミニウム、ニッケル、カルシウム、タングステン、モリブデン及びマンガンといった金属からなる基板を含む多孔質導電性基板もECに使用されてよい。
【0027】
多孔質構造を作るために使用されるエッチングは、基板の大部分を通り延在するナノメートル単位の孔を形成するためにHF及びアルコールの希釈混合液を使用する電気化学エッチングを使用して達成される。一例として、多孔質半導電性構造体110又は120といった多孔質構造体は、前述のHF混合液のうちの1つをエッチング液として使用して、0.7ミリオームセンチメートル(mΩ−cm)の初期抵抗率を有する固体シリコンウェーハに電気化学エッチング技術を適用して準備され得る。1平方センチメートルあたり約25ミリアンペア(mA/cm
2)から500mA/cm
2の範囲に及ぶ電流密度が使用され得る(これらの値における面積の成分は、孔が形成される前の基板表面の面積を指す)。
【0028】
前述の説明は、本発明の実施形態による多孔質構造を参照して行った。これらの多孔質構造は、前述の通り、(冶金級シリコン、単結晶シリコン、多結晶シリコン及びシリコン・オン・インシュレータを含む様々な形の)シリコン、ゲルマニウム、GaAs、InP、BN、CdTe、スズ、銅、アルミニウム、ニッケル、カルシウム、タングステン、モリブデン、マンガン、炭化シリコン、有機半導体、及びシリコン−ゲルマニウム合金を含む様々な材料内に形成されることができる。多孔質構造が作られる材料は、少なくとも幾つかの実施形態では、その導電率を増加させる元素でドープされてもよい。ドーピングは、当技術分野において知られている標準的な技術を用いて行われてよい。一実施形態では、多孔質構造がその中に形成される材料はシリコンであり、また、ドーパント種はホウ素であり、これが例えば10
19原子/cm
3の濃度でシリコン内に導入される。他の可能なドーパントは、リン及びヒ素を含む(が、これらの及び他のn型ドーパントは、エッチングの間に、p型ドーパントは必要としない照明プロセスを必要とする)。
【0029】
チャネル作成技術として電気化学エッチングに依存する本発明の実施形態は、多孔質構造が作られる材料にドーパントを導入する別の理由を有する。シリコン及びHFエッチング液が関与する場合、高い電界が、欠陥及び孔の先端において、シリコンとエッチング液からのフッ素との反応を促進する空孔を引き寄せると考えられる。このプロセスは、液状のSiF
4分子の形成を伴うと考えられる。SiF
4は、引き離され、最終的には、チャネルから洗い流され、側壁に結合するとともに後にガスとして泡立って無くなるH
2を形成する水素原子が残される。一部の水素原子は残り、これらは、残存しているシリコン原子と結合する。このプロセスは、等方的に横方向に広がる(これは、チャネルを形成することなく単に表面を磨くことになる)のとは対照的に、チャネルを(異方的に)下方向にエッチングする。最も良好に理解されるように、更なる詳細が以下に記載される(が、多孔質シリコン形成のメカニズムの厳密な詳細は、少なくとも幾分不明であると言わざるを得ない)。
【0030】
一般論として、チャネル形成の間に、半導体の直接溶解は、ほとんどの場合、酸化、それに加えて後続の酸化物の溶解と競合する。したがって、エッチング液(例えば、HF)は、酸化物を溶解できなければならない。溶解反応、及びそれによる半導体におけるチャネル形成のための第2の要件は、電子空孔の利用可能性である。水性HF溶液と接触するシリコン表面は、水素によって飽和され、電子空孔が枯渇され、電解質に対し化学的に不活性となる傾向がある(これは、エッチングプロセスの間にチャネル側壁を保護する)。電圧が電極に印加されると、シリコンウェーハ内にある空孔が、シリコン−電解質の界面に向かって移動し始める。その界面において、空孔は、1つのシリコン結合を取り除き、これにより、1つのシリコン原子を、電解質との相互作用の影響を受けやすくさせる。最終的に、シリコン原子は、溶液中に移動する。電極は、最適電流密度を有する複数の領域に分解され、チャネルが、電流密度がほぼない領域に形成される。様々なモデルによれば、チャネル成長の開始は、微小空洞、構造上の欠陥、機械的に歪んだ領域、又は表面ポテンシャル場の局所摂動において始まり得る。
【0031】
図1及び
図2を再び参照すると、エネルギー蓄積構造体100は更に、(
図1に示される実施形態において)多孔質構造の少なくとも一部分上と、チャネル111及び/又はチャネル121の少なくとも幾つかのチャネル内とに、導電性コーティング140を含む。このような導電性コーティングは、多孔質構造の導電率を維持あるいは高めるために必要であり、また、ESRを下げることもでき、これにより、性能を向上させる。例えば、低いESRを有するデバイスは、高い電力を供給することができる(これは、より大きい加速度、より高い馬力等の点において現れる)。対照的に、高いESR(典型的な電池内で見られる状態)は、少なくとも部分的に、エネルギーの多くが熱として浪費される事実により、利用可能なエネルギー量を制限してしまい、これは、長期性能及び安全性の両方についての重要な懸念事項である。
【0032】
図1及び
図2には、前述のようにEDLを生じさせる電解質150が示される。電解質150(及び、本明細書において説明される他の電解質)は、円のランダム配置を使用して図面に示される。この表現は、電解質が、自由イオン電荷担体を含む物質(液体又は固体、ゲル状材料も含む)であるという考えを伝えることを意図している。円は、便宜上選択されたのであって、電解質の成分又は品質に関して何らかの制限(イオン電荷担体のサイズ、形状又は数に関する何らかの制限を含む)を示唆することを意図していない。
【0033】
電界質150の導入後、
図3に概略的に示されるように、多孔質構造のチャネル内に電気二重層が形成される。
図3では、電気二重層330が、チャネル111のうちの1つに形成されている。EDL330は、2つの成分、即ち、チャネル111の側壁の電荷(
図3では正電荷として示されているが、他の実施形態では負電荷であってもよい)と、電解質中の自由イオン電荷担体とで構成される。したがって、EDL330は、キャパシタが機能するために必要な電荷の分離を提供する。前述のように、EDLキャパシタの大きいキャパシタンス、したがって、エネルギー蓄積潜在力は、部分的に、電解質イオン電荷担体と電極表面電荷との間の短い(約1ナノメートル(nm))の分離距離に起因して生まれる。
【0034】
なお、
図1及び
図2の多孔質構造の描写は、高度に理想化されており、ほんの一例を挙げるとすると、チャネル111及び121はすべて垂直方向にのみ延在しているように示される。実際には、チャネルは、複数の方向に分岐して、
図4a及び
図4bに示される多孔質構造に多少似たものとなり得る複雑に入り組んだ不規則なパターンを作り出し得る。
【0035】
図4a及び
図4bは、それぞれ、多孔質構造400(ここでは、多孔質シリコン)の表面と断面スライスの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図示されるように、多孔質構造400は、複数のチャネル411を含む。当然ながら、チャネル411は、単一のチャネルが垂直及び水平部分だけでなく、完全に垂直でも完全に水平でもなく、完全に垂直と完全に水平との間に分類される部分を有するように、その長さに沿ってねじれ、回転する可能性がある。なお、
図4bでは、チャネルは、エッチングされた構造体の底部の付近にまで延在するが、底部までは到達しないため、チャネルの下にエッチングされていないシリコン層402が残っている。一実施形態では、エッチングされていない層402は、多孔質構造400(及び図示されない対応するエネルギー蓄積デバイス)の支持構造体として作用するため、支持構造体102に相当する。幾つかの実施形態では、前述のように、支持構造体は省略されてもよい。
【0036】
多孔質シリコンを形成するために使用される前述のエッチングプロセスは、当初はシリコン−水素を含有する種によって覆われる表面をもたらす。この水素の時間の経過に伴う脱離は、格子間隔の収縮、したがって、多孔質領域のひび割れにつながる機械的応力をもたらす。水素脱離と応力との間の相関関係は、摂氏300乃至400度(℃)の熱アニールにおいて実験に基づき見出された。更に、空気中での多孔質シリコン表面の経年劣化は、特に熱処理が伴うと、該表面を二酸化シリコンに変換する。数多くある理由の中でも特にこれは望ましくない。なぜなら、二酸化シリコンは、電気絶縁体であり、総キャパシタンスを減少させる直列キャパシタンスを生成し、時間の経過と共に成長するので、電解質との不安定性を生むからである。
【0037】
水素脱離から生じる問題は、孔の深さを約10マイクロメートル(「ミクロン」、即ち、「μm」)に制限することによって軽減されうるが、このアプローチは、多孔質シリコンに基づいたECに蓄積される総エネルギーを制限してしまい、また、プロセスにコストを追加してしまう。本発明の実施形態は、水素を取り除き、不動態化層(例えば導電膜)で表面を不動態化するために表面を電気化学的に処理することによって、水素脱離問題に対処し、これにより、表面が保護され、ESRが改善され(下げられ)、また、ロバストかつ安定したデバイスの形成が可能となる。
【0038】
図5は、本発明の一実施形態によるエネルギー蓄積デバイス500の一部の断面図である。エネルギー蓄積デバイス500は、
図1及び
図2のエネルギー蓄積構造体100と同様で、多くの特徴が共通しているが、以下に説明される特定の構造上の詳細をより明確に示すために、拡大して示される。
【0039】
図5に示されるように、エネルギー蓄積デバイス500は、セパレータ530(エネルギー蓄積構造体100のセパレータ130に相当)によって離隔される電極510(エネルギー蓄積構造体100の導電性構造体110に相当)と、電極520(エネルギー蓄積構造体100の導電性構造体120に相当)とを含む。電極510及び520のうちの少なくとも一方が、多孔質シリコンで作られている。電極510は、表面511を有し、また、電解質514を含む複数のチャネル512(そのうちの1つのみが示される)を含み、多孔性半導電性構造体520は、表面521を有し、また、電解質524を含む複数のチャネル522を含む。図示される実施形態では、表面511及び521は、それぞれ、不動態化層535を含む。他の(図示されない)実施形態では、場合によって、これらの表面のうちの1つだけが、不動態化層を含む。これは、これにより、次の可能性を可能にする(又は考慮する)。即ち、(1)2つの電極は、異なる物質で作られてもよい。(2)2つの電極は、(例えば、異なる材料及び/又は技術を使用して)異なるように不動態化されてもよい(場合によっては、どちらか一方が全く不動態化されない)。
【0040】
一実施形態では、不動態化層535は、複数のSi−C結合を含む。これらのSi−C結合は、Si(シリコン)原子とC(炭素)原子との間の規則正しい共有結合だけでなく、イオン結合や、ファン・デル・ワールス力といった他の相互作用も含む。本明細書において使用される「(1つの)結合」(又は「複数の結合」)との用語は、これらの相互作用すべてだけでなく、関連の粒子又は化合物を定位置に保持可能である任意の他の相互作用も含む。このような結合(及びそれらが表す不動態化層の割合といった他のパラメータ)は、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)といった分析技術を使用して検出される。一例として、不動態化層535は、以下に詳しく説明されるように、炭化、炭化水素化、ヒドロシリル化等といったプロセスによって形成され得る。
【0041】
なお、Si−C結合で構成される不動態化層は、非常に安定している、つまり、他の材料をその上に堆積させるのが困難であるほど安定していることに触れておきたい。したがって、Si−C不動態化層は、ある程度の反応性を回復するために、(場合によっては、本明細書の他の部分で説明された同種の処理を使用して)官能化されなければならない(官能化とは、表面上の分子の化学反応を制御する目的で表面上に官能基を導入する表面改質の1つの形であることに触れておきたい)。最初の一連の処理ステップにおいて反応性を減少させ、結局後からその反応性の(少なくとも)一部を回復させることは一見、直観に反しているものに見えよう。しかし、この一見矛盾に思えることも、(1)すべての処理の全体的な目的は、不動態化されたデバイスの有用性を増加させることであり、(2)(前述のように、望ましくなく、かつ、しばしば制御不能な反応をもたらす)シリコン−水素含有種の存在から生じる当初の反応性とは異なり、官能化によって回復される反応性は、安定的であり、制御され、また、選択された材料又は化合物とともにのみ生じるように最適化できることに気が付くことによって理解されよう。
【0042】
一実施形態では、不動態化層535は、炭化水素終端表面を含む。これは、
図6に概略的に示される。
【0043】
例えば不動態化層535を導入することによって多孔質シリコン表面を不動態化することが、不活性表面又は所望される反応性よりもあまり反応性がよくない表面をもたらす可能性がある(後に堆積される材料の潜在的に有利な特性のために導入される当該材料を受容あるいは当該物質に結合するその能力のために、反応表面が望ましいことがある)。したがって、(例えば、炭化、炭化水素化、ヒドロシリル化によって)本発明の実施形態にしたがって不動態化層が設けられた多孔質シリコン表面は、更なる実施形態によれば、ウンデシレン酸又はウンデシレンアルデヒドの熱的付加といった技術を使用して官能化(又は再官能化)され得る。なお、ここで、炭化、炭化水素化及びヒドロシリル化自体も、(不動態化技術であることに加えて、)これらのプロセスはいずれも完全に不活性な表面をもたらさないという意味で、官能化技術と見なされてもよい(炭化が最も不活性な表面をもたらす可能性が高いが、炭化後も、表面反応は依然として可能である)。むしろ、各技術は、表面(不動態化)上にあるシリコン−水素結合とシリコン未結合手の数を大幅に減少させ、当該プロセスの間に、表面が、当初のシリコン−水素含有種の存在下での元の反応とは異なって反応するように当該表面を変換する(官能化)。
【0044】
様々な実施形態において、不動態化層は、導電性であってよく、又は、インターカレーションバリアとして機能してもよい(又は両方でもよい)。同じ又は他の実施形態において、不動態化層は、シリコンと金属との間に複数の結合を含むことができる。この文脈において使用することができる金属の例としては、鉄、コバルト及びニッケルが挙げられる。これらの例示的な金属を使用する実施形態では、多孔質シリコン形成時又はその後に、硝酸第二鉄を有するフッ化水素酸(又は金属イオンを含有する他の水溶液)といった溶液を用いるエッチング技術を使用して、Si−H結合が、Si−Fe、Si−Co又はSi−Niと交換される。この結果、多孔質シリコン表面は、金属イオンで不動態化される。
【0045】
更に、様々な実施形態において、不動態化層は、電解質との化学反応からの保護を提供することができ、あるいは、後続の層、場合によっては、固体電解質等との密着を促進し得る。前述のすべての結果(例えば、密着促進、化学反応からの保護、電気伝導、インターカレーションバリア、不動態化)は、これらの結果がない場合に可能である電圧よりも高い電圧で電極が動作できるようにする。高い動作電圧は、当然ながら、E=1/2CV
2(Eはエネルギーを表し、Cはキャパシタンスを表し、Vは電圧を表す)の関係に従って、エネルギー蓄積潜在力を増加させる。より高い動作電圧が達成可能である理由の一部として、不動態化層にあるSi−C結合が非常に安定している、つまり、Si−Hよりもかなり安定していることがある(同じことが、前述のSi−Fe、Si−Co及びSi−Niについても言える)。実際に、Si−Hの不安定さが、不動態化層の主要な動機付けである。
【0046】
不動態化層は、前述のように、導電性となりうるが、より一層良いデバイスを作るために、追加の導電層が、不動態化層と併せて使用されてもよい。一例として、追加の導電層は、場合によってはALDを使用して形成されるTiC又はTiNか、又は、例えばTi、C及びNを含む三元化合物であってよい。別の例として、窒化バナジウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、遷移金属酸化物、遷移金属窒化物等といった疑似容量性材料が、不動態化層上に置かれてもよい。
【0047】
一実施形態では、前述したエネルギー蓄積デバイスのようなエネルギー蓄積デバイスは、セル式電話機、スマートフォン、音楽プレイヤ(又は別のハンドヘルドコンピュータシステム)、ラップトップ、ネットトップ、タブレット(又は別のモバイルコンピュータシステム)等といったモバイル電子デバイスの一部として使用することができる。
図7は、本発明の一実施形態によるモバイル電子デバイス700の概略図である。
図7に示されるように、モバイル電子デバイス700は、筐体701と、筐体内の集積回路(IC)ダイ710と、筐体701内にあり、ICダイ710にエネルギーを提供可能であるように当該ICダイに付随するエネルギー蓄積デバイス720とを含む。幾つかの実施形態では、ICダイ710に「付随する」とは、エネルギー蓄積デバイス720が、ICダイ710又はそのパッケージ内に何らかの方法で、(例えば、ダイ自体の上に実装されることによって、又は、パッケージ・オン・パッケージ(PoP)アーキテクチャ若しくはシステム・オン・チップ(SoC)アーキテクチャの一部を形成することによって)組み込まれていることを意味する。一例として、エネルギー蓄積デバイス720は、
図5に示された前述のエネルギー蓄積デバイス500と同様であってよい。しかし、当然ながら、エネルギー蓄積デバイス500及び720の図面における描写は、完成品のデバイス内に存在する可能性が高い又は少なくとも場合によって存在する特定の詳細を省略している点で、潜在的に不完全である。当該特定の詳細は、潜在的に、特定の電極に取付けられた1つ以上のコレクタだけでなく、様々なパッケージング構成要素も含む。
【0048】
ICダイ710は、任意のタイプの集積回路デバイスを含んでよい。一実施形態では、ICダイ710は、処理システム(シングルコアであってもマルチコアであってもよい)を含む。例えばICダイは、マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、信号プロセッサ、ネットワークプロセッサ、チップセット等を含む。一実施形態では、ICダイは、複数の機能ユニット(例えば1つ以上の処理ユニット、1つ以上のグラフィックユニット、1つ以上の通信ユニット、1つ以上の信号処理ユニット、1つ以上のセキュリティユニット等)を有するシステム・オン・チップ(SoC)を含む。しかし、当然ながら、開示された実施形態は、どの特定のタイプ又はクラスのICデバイスにも限定されない。
【0049】
前述のように、炭化は、多孔質シリコン電極上に不動態化層を生成するために使用されうる1つの技術である。様々な炭化方法及びレシピが存在する。以下に詳細に説明される(多孔質シリコン上に非化学量論的なSi−C表面を形成するための)レシピは、限定ではなく例示として理解されるべきである。
【0050】
まず、水素終端化された多孔質シリコンサンプルが、30分間以上、室温で、窒素フロー下で、洗い流される。これは酸素及び湿気を取り除く。次に、アセチレン(C
2H
2)が、窒素と1:1の比となるようにガスフローに添加される。最初のアセチレン導入が、室温において行われ、次にサンプルは、加熱炉又は高速熱処理(RTP)システムを使用して500°まで15分間の間、加熱される。次に、アセチレンフローは停止され、加熱炉又はRTPシステムは、窒素フロー下で、室温に戻るまで冷却される。これらのステップを行うことによりもたらされる材料は、熱的に炭化水素化された多孔質シリコン、即ち、THCPSiと呼ばれる。サンプルが室温に戻ると、アセチレンフローが、同じく窒素と1:1の比で再開され、10分後に、再び停止される(ただし、窒素フローは維持される)。次に、サンプルは、10分間以内で、820℃にされる。最後に、サンプルは、窒素フロー下で、室温に冷却され、最終的に、熱的に炭化された多孔質シリコン(TCPSi)がもたされる。
【0051】
図8は、本発明の一実施形態によるエネルギー蓄積デバイスを製造する方法800を説明するフローチャートである。一例として、方法800を行うことによって、本明細書の他の場所において説明されたエネルギー蓄積デバイス500及び/又はエネルギー蓄積デバイス720と同様のエネルギー蓄積デバイスがもたらされる。
【0052】
方法800のステップ810は、或る量のシリコンを用意することである。
【0053】
方法800のステップ820は、少なくとも、水素終端表面を有し且つ複数のチャネルを含む第1の多孔質シリコン電極を形成するために、フッ化水素酸とアルコールとを含む溶液を使用してシリコンをエッチングすることである。一例として、第1の多孔質シリコン電極及び複数のチャネルは、それぞれ、
図5に最初に示された電極510及びチャネル512と同様とすることができる。
【0054】
方法800のステップ830は、第1の多孔質シリコン電極の水素終端表面を不動態化させることである。一実施形態では、ステップ830は、水素終端表面を炭化することを含む。一実施形態において、水素終端表面の炭化は、加熱炉内で400℃より高い温度で、水素終端表面をアセチレンに晒すことによって、第1の多孔質シリコン電極の水素終端表面内にアセチレンを吸収させることを含む。他の実施形態では、他のガス(例えばエタン、メタン、プロパン、ブタン、ペタン等)が、アセチレンの代わりに又はアセチレンに加えて使用されてもよい。
【0055】
特定の実施形態では、ステップ830(又は別のステップ)は更に、水素終端表面を、500℃において、1:1の比の窒素及びアセチレンに晒すことを含む。なお、表面の化学的性質は、加熱炉内の位置によってさえも影響を受けるほどに、温度に非常に敏感である。
【0056】
別の実施形態では、水素終端表面の炭化は、水素終端表面を、第1の温度に等しい周囲温度において、アセチレンのフローに晒し、当該周囲温度を少なくとも800℃である第2の温度にまで増加させ、第2の温度に到達する前に、アセチレンのフローを停止し、第2の温度において、第1の多孔質シリコン電極をアニールすることによって、第1の多孔質シリコン電極の水素終端表面内にアセチレンを吸収させることを含む。
【0057】
一実施形態では、アニールは、(例えば酸化物被膜の形成を回避するために)窒素雰囲気中で行われる(酸化物被膜の形成は、当該被膜は導電性ではないため望ましくない)。同じ又は別の実施形態では、アニールは、第1の多孔質シリコン電極の第1の単分子層と第2の単分子層のそれぞれの少なくとも50パーセントを、多孔質炭化シリコンに変換させるのに十分な時間長さで行われる。電極全体がSiCに変換されることも可能ではあるが、むしろ、最初の2つの単分子層がこのように変換される。
【0058】
更に別の実施形態では、ステップ830は、水素原子の少なくとも一部を、金属の原子で置き換えることを含む。適切な金属の例としては、鉄、コバルト及びニッケルが挙げられる。更に別の実施形態では、ステップ830は、ヒドロシリル化を使用して行われる。
【0059】
当技術分野において知られているように、ヒドロシリル化は、炭化と同様であるが、加熱炉内ではなく、溶液中で行われる。水素終端化された多孔質シリコン表面は、安定した単分子層を形成するように、その表面を不飽和化合物(例えばアルケン類、アルキン類)と反応させることによって不動態化層が設けられる。シリコンのヒドロシリル化のためにうまく働くことを示した化合物のうちの幾つかは、1−ペタン、1−ドデセン、シス‐2−ペタン、1‐ペンチン、1‐ドデシン及び2−ヘキシンである。このプロセスは、Si−H
x結合をSi−C結合と置換させ、多孔質シリコン表面を不動態化する。
【0060】
方法800のステップ840は、第1の多孔質シリコン電極のチャネル内に電解質を堆積させることである。一例として、電解質は、
図5に示された電解質514と同様とすることができる。
【0061】
方法800のステップ850は、第1の多孔質シリコン電極を第1の極性を有する第1の電位に電気的に接続し、第2の電極を第1の極性とは反対の第2の極性を有する第2の電位に電気的に接続することである。一例として、第2の電極は、
図5に示された電極520と同様とすることができる。
【0062】
次に、
図9を参照すると、コンピュータシステム900の一実施形態が示される。システム900は、メインボード又は他の回路基板910上に配置された幾つかのコンポーネントを含む。基板910は、第1の面912と、反対側の第2の面914とを含み、様々なコンポーネントが、第1及び第2の面のうちの一方又は両方の上に配置され得る。図示される実施形態では、コンピュータシステム900は、面912上に配置されたエネルギー蓄積デバイス920を含み、エネルギー蓄積デバイス920は、本明細書において説明された実施形態のいずれかを含んでよい。一例として、エネルギー蓄積デバイス920は、
図5に示されたエネルギー蓄積デバイス500と同様とすることができる。
【0063】
システム900は、例えばハンドヘルド又はモバイルコンピュータデバイス(例えば、セル式電話機、スマートフォン、モバイルインターネットデバイス、音楽プレイヤ、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットトップコンピュータ等)といった任意のタイプのコンピュータシステムを含んでよい。しかし、開示された実施形態は、ハンドヘルド又は他のモバイルコンピュータデバイスに限定されず、これらの実施形態は、デスクトップコンピュータ及びサーバーといった他のタイプのコンピュータシステムにおいて使用されてもよい。
【0064】
基板910は、当該基板上に配置された様々なコンポーネントのうちの1つ以上の間に電気通信を提供することが可能な、如何なる好適タイプの回路基板又はその他の基板を含んでよい。一実施形態では、例えば基板910は、誘電体材料層によって互いから離隔され且つ導電ビアによって相互に接続された複数の金属層を含むプリント回路基板(PCB)を有する。それらの金属層のうちの何れか1つ以上が、場合によっては他の金属層とともに、基板910に結合されるコンポーネント間で信号を送るように所望の回路パターンに形成される。しかし、当然ながら、開示された実施形態は、前述のPCBに限定されず、更に、基板910は、任意の他の適切な基板を含んでもよい。
【0065】
エネルギー蓄積デバイス920に加えて、1つ以上の更なるコンポーネントが、基板910の1つの面又は両方の面912、914上に配置され得る。例えば、図面に示されるように、コンポーネント901が、基板910の面912上に配置され、コンポーネント902が、基板の反対側の面914上に配置されてもよい。基板910上に配置され得る更なるコンポーネントは、他のICデバイス(例えば処理デバイス、メモリデバイス、信号処理デバイス、ワイヤレス通信デバイス、グラフィックコントローラ及び/又はドライバ、音声プロセッサ、及び/又はコントローラ等)、電源供給コンポーネント(例えば電圧レギュレータ及び/又は他の電力管理デバイス、電池といった電源、及び/又は、キャパシタといった受動デバイス)、及び1つ以上のユーザインターフェースデバイス(例えば音声入力デバイス、音声出力デバイス、キーパッド、又は、タッチスクリーンディスプレイといった他のデータ入力デバイス、及び/又は、グラフィックディスプレイ等)、並びにこれら及び/又は他のデバイスの任意の組み合わせを含む。一実施形態では、コンピュータシステム900は、放射線シールドを含む。更なる実施形態では、コンピュータシステム900は、冷却ソリューションを含む。更に別の実施形態では、コンピュータシステム900は、アンテナを含む。更に別の実施形態では、コンピュータシステム900は、筐体又はケーシング内に配置されてもよい。基板が筐体内に配置される場合、コンピュータシステム900の一部のコンポーネント、例えばディスプレイ又はキーパッドといったユーザインターフェースデバイス、及び/又は、電池といった電源は、基板910(及び/又は当該基板上に配置されたコンポーネント)に電気的に結合されるが、筐体に機械的に結合されてもよい。
【0066】
本発明は、特定の実施形態を参照して説明されたが、当業者であれば、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えてもよいことは理解できよう。したがって、本発明の実施形態の開示は、本発明の範囲を例示することを意図しており、限定することを意図していない。本発明の範囲は、添付の請求項によって要求される範囲にのみ限定されることを意図している。例えば、当業者であれば、本明細書において説明されたエネルギー蓄積デバイス及び関連の構造体並びに方法は、様々な実施形態において実施され、また、これらの実施形態のうちの幾つかの実施形態の前述の説明は必ずしもすべての可能な実施形態の完全な説明を表すものではないということは容易に明らかであろう。
【0067】
更に、利益、他の利点及び問題に対する解決策が、特定の実施形態に関連して説明された。利益、他の利点、問題に対する解決策、及び利益、他の利点、又は問題に対する解決策を生じさせる、又はより明確にする任意の1つ以上の要素は、任意の又はすべての請求項の重要で、必須の、又は絶対不可欠な特徴又は要素として解釈されるべきではない。
【0068】
更に、本明細書において開示される実施形態及び限定は、当該実施形態及び/又は限定が、(1)請求項において明示的に請求されていない場合、また、(2)均等論に基づき、請求項における明示的な要素及び/又は限定の均等物である又は潜在的に均等物である場合、公有の原則に基づき、公共用として提供されることはない。