特許第5932054号(P5932054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932054
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】黒鉛への銀の無電解めっき
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20160526BHJP
   C23C 18/44 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C23C18/18
   C23C18/44
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-547183(P2014-547183)
(86)(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-503032(P2015-503032A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】US2012028251
(87)【国際公開番号】WO2013089815
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/576,077
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】カオ、 ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、 ウェンフア
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、 アリソン ユエ
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101054483(CN,A)
【文献】 特開平02−173272(JP,A)
【文献】 特開2008−133535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)以下の組成物:
(1)黒鉛粉末と窒素含有シランとを含む黒鉛活性化組成物
(2)銀塩と銀錯化剤とを含む銀めっき組成物、および
(3)銀塩のための還元剤を含む還元性組成物
を水中で一緒に混合するステップと、
(B)得られた銀被覆黒鉛を単離するステップと
を含む、黒鉛への銀のワンポット無電解めっき方法。
【請求項2】
黒鉛活性化組成物の窒素含有シランが、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシラントリオール、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルトリエトキシシラン、および上述のものの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
窒素含有シランが、黒鉛の重量の0.1〜10wt%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
銀めっき組成物の銀塩が、硝酸銀、硫酸銀および塩化銀からなる群から選択され、銀めっき組成物の銀錯化剤が、水酸化アンモニウム、エチレンジアミン、メチルアミンおよびエチルアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
銀塩が、めっき溶液の0.01〜50g/Lの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
銀塩のための還元剤が、アルデヒド、ポリオール、酒石酸塩、酒石酸エステル、酒石酸、単糖類、二糖類、多糖類、ヒドラジンおよびヒドラジン水和物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
銀塩のための還元剤が、めっき溶液中の銀塩のモル数の1〜50倍の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
黒鉛活性化組成物が、黒鉛の総重量の0.1%〜10%の量の、銀めっき組成物中の銀塩をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
黒鉛活性化組成物および銀めっき組成物が混合される前に、全黒鉛の0.1〜10%である銀塩が黒鉛活性化組成物に添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
(A)0.1〜100g/Lの範囲で存在する前処理していない黒鉛と、
(B)0.01〜50g/Lの範囲で存在する銀塩と、
(C)0.01〜35g/Lの範囲で存在する銀錯化剤と、
(D)黒鉛の重量の0.01〜20wt%の範囲で存在する窒素含有シランと、
(E)銀塩のモル数の1〜50倍の範囲で存在する、銀塩のための還元剤と
を含む、黒鉛に銀をめっきするための水性の無電解めっき組成物。
【請求項11】
銀塩が、硝酸銀、硫酸銀および塩化銀からなる群から選択される、請求項10に記載のめっき組成物。
【請求項12】
銀錯化剤が、水酸化アンモニウム、エチレンジアミン、メチルアミンおよびエチルアミンからなる群から選択される、請求項10または11に記載のめっき組成物。
【請求項13】
窒素含有シランが、黒鉛の重量の0.1〜10wt%の量で存在する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のめっき組成物。
【請求項14】
窒素含有シランが、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシラントリオール、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、および3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルトリエトキシシランからなる群から選択される、請求項10〜13のいずれか1項に記載のめっき組成物。
【請求項15】
還元剤が、アルデヒド、ポリオール、酒石酸塩、酒石酸エステル、酒石酸、単糖類、二糖類、多糖類、ヒドラジン、およびヒドラジン水和物からなる群から選択される、請求項10〜14のいずれか1項に記載のめっき組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒鉛粉末への銀の無電解めっきに関する。
【背景技術】
【0002】
バルク銀は、そのコストが上昇し続けており、例えば、半導体および電子機器の製造に使用するための代替物が探し求められている。銀めっき銅は、初期導電率が優れているので、最良の代替物の1つである。しかし、銅は、酸化安定性に欠け、それにより、高温および高湿条件において高い信頼性を必要とする用途での使用が制限される。その上、銀めっき銅自体、比較的高価である。銀めっきガラス、または絶縁体コアを有する他の銀めっきフィラーは、導電性能が低く、銀または銀めっき銅の代用物としては不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
銀被覆黒鉛は、バルク銀または銀めっき銅よりもコストが安く、銅に関連する酸化安定性の問題を有することなく、バルク銀または銀めっき銅に匹敵する初期導電率をもたらすことができる。しかし、銅被覆黒鉛を調製するための現在の方法は、製造上の困難を伴う。
【0004】
黒鉛の表面は、不活性であり、また、無電解法でめっきが施され得る前に前処理しなければならない。しかし、黒鉛を前処理する方法は、以下のステップ、すなわち、酸化、加熱、または湿式の化学的活性化の少なくとも1つに続く、粉末分離、洗浄、およびすすぎを含む。これらの方法はすべて、大規模に製造する上で問題をもたらす。
【0005】
酸化は、めっきを施す黒鉛表面に活性部位を導入するのに有効であるが、典型的な酸化剤、例えば、硝酸、硫酸、または過酸化水素は、腐食性または爆発性があるので、特別な作業手順が必要となる。加えて、粉末分離、洗浄およびすすぎにより、有害廃棄物が発生する。
【0006】
加熱は、黒鉛の活性表面を生成するための別の方法である。しかし、加熱には、特別な設備が必要とされ、操作温度範囲が狭く、結果を再現するのが困難である。
【0007】
典型的な湿式活性化法は、水溶液状態でスズまたは類似の金属化合物、および塩化パラジウムなどの増感剤の使用を伴う。十分に混合した後、黒鉛粉末は、多くのろ過、洗浄、およびすすぎのステップを使用し、時間をかけ、有害廃棄物を生じさせて、活性化浴から分離させなければならない。
【0008】
本発明は、これらの問題を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、黒鉛粉末への銀の無電解めっきのためのワンポット法である。ろ過、洗浄またはすすぎを典型的に必要とする、黒鉛についての粉末前処理ステップは、必要でない。
【0010】
本発明の方法は、3種の反応物質組成物を水中で一緒に混合するステップを含む。これらは、同時に一緒に、または段階の組み合わせで添加することができる。
【0011】
第1の組成物は、黒鉛粉末と官能性シランとを含む水性の黒鉛活性化組成物である。官能性シランは、この活性化組成物中の黒鉛とも、銀めっき組成物の構成成分である銀塩とも相互作用する。
【0012】
第2の組成物、すなわち、銀めっき組成物は、(官能性シランと相互作用する)銀塩と、銀錯化剤とを含む。これらは、固体として、または水溶液の状態で用意することができる。
【0013】
第3の組成物、すなわち、還元性組成物は、銀塩のための還元剤を含み、この還元剤は、固体として、または水溶液の状態で用意することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
水性の黒鉛活性化組成物は、黒鉛粉末と窒素含有シランとを含む。シランは、シロキサンまたはシラノールである。
【0015】
黒鉛粉末は、その表面に結合した少量(ppm範囲)の酸素を有し、酸素は、水性条件下で、窒素含有シラン中のシランと相互作用し、加水分解により、シラノール基を生成することができる。この反応により、窒素含有シランが黒鉛に固定される。
【0016】
窒素含有シラン中の窒素が今度は、銀めっき組成物中の銀塩に配位する。この配位は、黒鉛表面全体に銀をめっきするための、活性化部位またはシード部位をもたらす。
【0017】
窒素含有シランの例としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシラントリオール、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、および3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらのうちのいずれかを、他のものと組み合わせて使用することができる。
【0018】
一実施形態において、窒素含有シランは、黒鉛の重量の0.01〜20重量%の量で、好ましくは、黒鉛の重量の0.1〜10wt%で、黒鉛活性化組成物中に存在する。
【0019】
銀めっき組成物は、銀塩と銀錯化剤とを含む。一実施形態において、銀塩は、水溶性である。銀塩の例としては、硝酸銀、硫酸銀、および塩化銀が挙げられる。一実施形態において、銀塩は、硝酸銀である。
【0020】
めっき浴における銀塩の濃度は、0.01〜50g/Lの範囲である。一実施形態において、銀塩の濃度は、2〜30g/Lの範囲である。さらなる実施形態において、銀塩の濃度は、5〜25g/Lの範囲である。
【0021】
銀錯化剤の例としては、水酸化アンモニウム、エチレンジアミン、メチルアミンおよびエチルアミンが挙げられる。一実施形態において、錯化剤は、28〜30wt%(重量パーセント)の範囲内の水溶液の水酸化アンモニウムである。めっき浴に存在する28〜30wt%の水酸化アンモニウム水溶液の量は、0.01〜35g/L、一実施形態において、1.4〜20g/L、さらなる実施形態において、3.5〜18g/Lの範囲である。
【0022】
銀めっき組成物は、黒鉛活性化組成物と共に混合することもできるし、黒鉛組成物が形成および混合された後に、別個に添加することもできる。
【0023】
還元性組成物は、銀塩のための還元剤を含む。還元剤の例としては、アルデヒド、ポリオール、酒石酸塩、酒石酸エステル、酒石酸、単糖類、二糖類、多糖類、ヒドラジン、ヒドラジン水和物およびフェニルヒドラジンが挙げられる。
【0024】
一実施形態において、還元剤は、ホルムアルデヒド(典型的には、37wt%の水溶液として)、および/またはグリオキサール(典型的には、40wt%の水溶液として)である。還元剤がホルムアルデヒドである実施形態において、めっき組成物に存在する37wt%のホルムアルデヒド水溶液の量は、約0.01〜150g/L、別の実施形態において、1〜100g/L、さらなる実施形態において、5〜50g/Lの範囲である。
【0025】
還元性組成物は、黒鉛活性化組成物と銀めっき組成物との混合物に添加される。
【0026】
pH調整物質の使用は、場合による。pH調整剤の例としては、KOH、NaOH、または任意のアンモニウム塩、硝酸塩、もしくはホウ酸塩が挙げられる。
【0027】
有機共溶媒の使用は、場合による。共溶媒の例としては、アルコール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルおよびトルエンが挙げられる。
【0028】
本発明の方法は、(A)以下の組成物、すなわち、(1)黒鉛粉末と窒素含有シランとを含む黒鉛活性化組成物、(2)銀塩と銀錯化剤とを含む銀めっき組成物、および(3)銀塩のための還元性組成物を、水中で一緒に混合するステップと、(B)得られた銀被覆黒鉛を単離するステップとを含む。
【0029】
黒鉛活性化組成物および銀めっき組成物のそれぞれの中の構成成分は、一度に全て一緒に混合することもできるし、混合が起こるように、構成成分の添加間に時間の遅れをもって段階的に混合することもできる。(還元性組成物は、1つの構成成分しか有さない。)混合は、典型的には、室温での撹拌によって達成される。
【0030】
一実施形態においては、銀めっき組成物を構成するであろう銀塩の一部が、黒鉛活性化組成物に添加される。銀塩のこの一部は、黒鉛の総重量の0.1wt%〜10wt%の範囲内の量であろう。一実施形態において、銀塩は、黒鉛の総重量の1wt%〜5wt%の範囲内の量で、黒鉛活性化組成物に添加される。次いで、黒鉛活性化組成物に先に添加された銀塩の量を差し引いた銀めっき組成物が、黒鉛活性化組成物に添加され、混合される。この混合物に、銀塩のための還元性組成物が添加される。
【0031】
組成物の混合物は、銀塩が還元され、黒鉛にめっきされるのに十分な温度で、一緒に撹拌される。ホルムアルデヒド溶液を含むめっき法において、好ましい混合温度または混合温度の範囲は、20℃〜25℃の範囲内である。典型的な反応時間は、実験室規模の量の場合、1時間未満であるが、商業規模の量の場合には、より長い時間が予想され得る。
【0032】
グリオキサールは、考えられるホルムアルデヒドの代用物であるが、ホルムアルデヒドよりも反応性が低く、より高い反応温度、およびより長い混合を必要とする。利点は、グリオキサールがより低毒性であることである。
【0033】
黒鉛活性化組成物、銀めっき組成物、および還元性組成物は、組成物が互いに添加される間のいかなる時間のずれもなく、一緒に混合することができる。他の実施形態において、添加は、まず黒鉛活性化組成物が調製され、しばらくの間混合され、次いで、(調製および混合された)銀めっき組成物が黒鉛活性化組成物に添加されるように順次に行われる。黒鉛活性化組成物および銀めっき組成物は、しばらくの間混合され、その後、(調製および混合された)還元性組成物が、黒鉛活性化組成物と銀めっき組成物との混合物に添加され、すべての3つの組成物が混合される。混合は、典型的には、室温での撹拌によって達成される。
【実施例】
【0034】
例1
黒鉛活性化組成物および銀めっき組成物を、1つの組成物として一緒に調製し、その後、還元性組成物を添加した。組成物は、室温で調製および混合した。
【0035】
2リットルのビーカーに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(0.1g)、黒鉛(3g)、および、硝酸銀(11g)と、水酸化アンモニウム(28wt%、9g)と、水(1000mL)とを含有する硝酸銀アンモニウム水溶液を添加した。混合物を、室温で45分間撹拌した。これに、ホルムアルデヒド(37wt%)水溶液(10g)を含有する還元剤の混合物を、撹拌しながら添加した。銀被覆黒鉛生成物が15分以内に生成し、反応フラスコの底に沈殿した。澄んだ水層をデカントし、銀被覆黒鉛生成物を、各回200gの水で、3回洗浄し、その後、一晩かけて120℃で乾燥した。収率は、95%超であった。
【0036】
例2
シード化合物としての硝酸銀を少量含有する黒鉛活性化組成物を、銀めっき組成物とは別に調製した。組成物は、室温で調製および混合した。
【0037】
2リットルのビーカーに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(0.1g)、硝酸銀(0.1g)、水(200mL)、黒鉛(3g)を添加した。混合物を、室温で30分間撹拌した。硝酸銀(11g)と、水酸化アンモニウム(28wt%、9g)と、水(800mL)とを含有する銀めっき水溶液を、黒鉛混合物に添加した。組み合わされた溶液を、15分間撹拌した。継続的に撹拌しながら、これに、ホルムアルデヒド(37wt%)水溶液(10g)を含有する還元剤の混合物を添加した。銀被覆黒鉛生成物が15分以内に生成し、反応フラスコの底に沈殿した。澄んだ水層をデカントし、銀被覆黒鉛生成物を、各回200gの水で、3回洗浄し、その後、一晩かけて120℃で乾燥した。収率は、95%超であった。
【0038】
例3
硝酸銀のシード溶液を、調製および撹拌された黒鉛活性化組成物に添加した。その次に、銀めっき組成物を添加した。組成物は、室温で調製および混合した。
【0039】
2リットルのビーカーに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(0.1g)、水(200mL)、および黒鉛(3.0g)を添加した。この混合物を、室温で15分間撹拌した。水(10mL)中の硝酸銀(0.1g)の水溶液を、黒鉛混合物に添加した。撹拌を15分間継続し、その後、室温でさらに15分間撹拌しながら、硝酸銀(11g)と、水酸化アンモニウム(28重量%、9g)と、水(800mL)とを含有する銀めっき水溶液を、黒鉛混合物に添加した。継続的に撹拌しながら、これに、ホルムアルデヒド(37wt%)水溶液(10g)を含有する還元剤の混合物を添加した。銀被覆黒鉛生成物が15分以内に生成し、反応フラスコの底に沈殿した。澄んだ水層をデカントし、銀被覆黒鉛生成物を、各回200gの水で、3回洗浄し、その後、一晩かけて120℃で乾燥した。収率は、95%超であった。
【0040】
例4(比較例)
この例では、銀被覆黒鉛物質を調製する従来の手段として、先行技術の多段階の無電解めっき法を説明する。この方法は、黒鉛活性化浴、黒鉛増感浴およびめっき浴の使用を含む。浴の交差汚染を最小限に抑えるために、浴から浴への移動には、溶液と粉末生成物との分離が必要である。
【0041】
250mLのフラスコに、SnCl・2HO(0.5g)と、HCl(37wt%の溶液)(0.3g)と、水(100mL)と、黒鉛(3g)とを含有する黒鉛活性化溶液を添加した。この活性化混合物を、室温で30分間撹拌し、遠心分離し、黒鉛を沈殿させ、溶液をデカントした。活性化した黒鉛混合物を、60gの水で1回洗浄し、次いで、PdCl(0.05g)と、HCl(37wt%の溶液)(0.1g)と、水(100mL)とを含有する黒鉛増感浴に添加した。増感混合物を、30分間撹拌し、遠心分離し、黒鉛を沈殿させ、増感溶液を除去した。
【0042】
次いで、増感黒鉛混合物を、200gの水で洗浄し、その後、溶液のpHが5〜6の間に達するまで遠心分離した。硝酸銀(11g)と、水酸化アンモニウム(28wt%、9g)と、水(1100mL)とを含有する銀めっき水溶液を、撹拌しながら増感黒鉛混合物に添加した。継続的に撹拌しながら、これにホルムアルデヒド(37wt%)水溶液(10g)を含有する還元剤の混合物を添加した。銀被覆黒鉛生成物が15分以内に生成し、反応フラスコの底に沈殿した。澄んだ水層をデカントし、銀被覆黒鉛生成物を、各回200gの水で、3回洗浄し、その後、一晩かけて120℃で乾燥した。収率は、95%超であった。
【0043】
例5
エポキシ配合物における導電性能
【0044】
導電性の接着性配合物を、銀被覆黒鉛の添加量32体積%(vol%)のエポキシ樹脂[DIC(正式には大日本インキ化学工業として知られる)製のEPICLON835LV]および総重量の1重量%(wt%)の2−エチル−4−メチルイミダゾールを使用して、例1から4の各銀被覆黒鉛生成物から調製した。
【0045】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストし、エアオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。膜の寸法は、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0046】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して試験した。抵抗率は、以下の通りであった。
【0047】
【表1】
【0048】
その結果は、例1〜3によるワンポット無電解めっき法によって、例4の従来の多段階法から調製されるものより高い導電率を有する銀被覆黒鉛物質が生成されることを示す。
【0049】
例6
アクリレート配合物における導電性能
導電性の接着性配合物を、銀被覆黒鉛の添加量26vol%(フィラー添加量が総重量の約60wt%)のアクリレート配合物を使用して、例1から4の各銀被覆黒鉛生成物から調製した。
【0050】
アクリレート組成物は、49wt%のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、46wt%のイソボルニルメタクリレート、および5wt%のジクミンペルオキシド(dicumin peroxide)を含有していた。
【0051】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストし、Nオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。膜の寸法は、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0052】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して試験した。抵抗率は、以下の通りであった。
【0053】
【表2】
【0054】
その結果は、例1〜3によるワンポット無電解めっき法によって、例4の従来の多段階法から調製されるものより高い導電率を有する銀被覆黒鉛物質が生成されることを示す。
【0055】
例7
窒素含有シラン活性剤の使用の効果
【0056】
銀被覆黒鉛(SCG)試料を、SCGの総重量の異なる銀添加量で、例2に従って調製した。それぞれの選択された銀添加量について、比較用SCG試料も、この方法においてシラン活性剤を使用せずに調製した。
【0057】
接着性配合物を、銀被覆黒鉛(SCG)およびその比較用試料を使用して調製した。接着性樹脂は、エポキシ組成物またはアクリレート組成物であった。
【0058】
エポキシ組成物は、エポキシ樹脂[DIC(正式には大日本インキ化学工業として知られる)製のEPICLON835LV]と、2.5wt%の2−エチル−4−メチルイミダゾールを含有していた。
【0059】
アクリレート組成物は、49%のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、46wt%のイソボルニルメタクリレート、および5wt%のジクミンペルオキシドを含有していた。
【0060】
シラン活性剤は、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(ICPTES)であった。
【0061】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストした。膜の寸法は、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0062】
エポキシ配合物は、エアオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。
【0063】
アクリレート配合物は、Nオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。
【0064】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して測定した。
【0065】
その結果を以下の表に示す。結果は、商業用途に適した抵抗率を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
結果は、ワンポット無電解めっき法において、窒素含有シラン活性剤(N−シラン)を使用した場合、窒素含有シラン活性剤を使用しなかった場合と比較して、より高い導電率を有する銀被覆黒鉛物質が生成されたことも示す。
【0068】
例8
異なる窒素含有シラン活性剤
【0069】
銀被覆黒鉛(SCG)試料を、以下の表に挙げる窒素含有シラン活性剤を用いて、例2に従って調製した。
【0070】
導電性の接着性配合物を、銀被覆黒鉛の添加量26vol%のエポキシ樹脂[DIC(正式には大日本インキ化学工業として知られる)製のEPICLON835LV]および総重量の1重量%の2−エチル−4−メチルイミダゾールを使用して、各銀被覆黒鉛試料から調製した。
【0071】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストした。膜は、寸法が、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0072】
エポキシ配合物を、エアオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。
【0073】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して測定した。
【0074】
その結果を以下の表に示す。結果は、商業用途に適した抵抗率を示す。
【0075】
【表4】
【0076】
結果は、ワンポット無電解めっき法において、窒素含有シラン活性剤を使用した場合、シラン活性剤を使用しなかった場合と比較して、より高い導電率を有する銀被覆黒鉛物質が生成されたことも示す。
【0077】
例9
構成成分の濃度のめっき品質への影響
【0078】
銀被覆黒鉛(SCG)試料を、例2に従って調製し、異なる濃度のシラン活性剤、硝酸銀シード、めっき溶液中の硝酸銀、および還元剤と配合した。
【0079】
導電性の接着性配合物を、各銀被覆黒鉛試料、銀被覆黒鉛の添加量26vol%のエポキシ樹脂[DIC(正式には大日本インキ化学工業として知られる)製のEPICLON835LV]および総重量の1wt%の2−エチル−4−メチルイミダゾールから調製した。
【0080】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストした。膜は、寸法が、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0081】
エポキシ配合物を、エアオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。
【0082】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して測定した。
【0083】
その結果を、以下の表に示す。結果は、配合における変数とともに、商業用途に適した抵抗率を示す。比較的少ない量のN−シラン活性剤が、活性剤無しまたはより多い量の活性剤に比べ、より良好な導電率値を与えるようであった。
【0084】
【表5】