【実施例】
【0034】
例1
黒鉛活性化組成物および銀めっき組成物を、1つの組成物として一緒に調製し、その後、還元性組成物を添加した。組成物は、室温で調製および混合した。
【0035】
2リットルのビーカーに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(0.1g)、黒鉛(3g)、および、硝酸銀(11g)と、水酸化アンモニウム(28wt%、9g)と、水(1000mL)とを含有する硝酸銀アンモニウム水溶液を添加した。混合物を、室温で45分間撹拌した。これに、ホルムアルデヒド(37wt%)水溶液(10g)を含有する還元剤の混合物を、撹拌しながら添加した。銀被覆黒鉛生成物が15分以内に生成し、反応フラスコの底に沈殿した。澄んだ水層をデカントし、銀被覆黒鉛生成物を、各回200gの水で、3回洗浄し、その後、一晩かけて120℃で乾燥した。収率は、95%超であった。
【0036】
例2
シード化合物としての硝酸銀を少量含有する黒鉛活性化組成物を、銀めっき組成物とは別に調製した。組成物は、室温で調製および混合した。
【0037】
2リットルのビーカーに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(0.1g)、硝酸銀(0.1g)、水(200mL)、黒鉛(3g)を添加した。混合物を、室温で30分間撹拌した。硝酸銀(11g)と、水酸化アンモニウム(28wt%、9g)と、水(800mL)とを含有する銀めっき水溶液を、黒鉛混合物に添加した。組み合わされた溶液を、15分間撹拌した。継続的に撹拌しながら、これに、ホルムアルデヒド(37wt%)水溶液(10g)を含有する還元剤の混合物を添加した。銀被覆黒鉛生成物が15分以内に生成し、反応フラスコの底に沈殿した。澄んだ水層をデカントし、銀被覆黒鉛生成物を、各回200gの水で、3回洗浄し、その後、一晩かけて120℃で乾燥した。収率は、95%超であった。
【0038】
例3
硝酸銀のシード溶液を、調製および撹拌された黒鉛活性化組成物に添加した。その次に、銀めっき組成物を添加した。組成物は、室温で調製および混合した。
【0039】
2リットルのビーカーに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(0.1g)、水(200mL)、および黒鉛(3.0g)を添加した。この混合物を、室温で15分間撹拌した。水(10mL)中の硝酸銀(0.1g)の水溶液を、黒鉛混合物に添加した。撹拌を15分間継続し、その後、室温でさらに15分間撹拌しながら、硝酸銀(11g)と、水酸化アンモニウム(28重量%、9g)と、水(800mL)とを含有する銀めっき水溶液を、黒鉛混合物に添加した。継続的に撹拌しながら、これに、ホルムアルデヒド(37wt%)水溶液(10g)を含有する還元剤の混合物を添加した。銀被覆黒鉛生成物が15分以内に生成し、反応フラスコの底に沈殿した。澄んだ水層をデカントし、銀被覆黒鉛生成物を、各回200gの水で、3回洗浄し、その後、一晩かけて120℃で乾燥した。収率は、95%超であった。
【0040】
例4(比較例)
この例では、銀被覆黒鉛物質を調製する従来の手段として、先行技術の多段階の無電解めっき法を説明する。この方法は、黒鉛活性化浴、黒鉛増感浴およびめっき浴の使用を含む。浴の交差汚染を最小限に抑えるために、浴から浴への移動には、溶液と粉末生成物との分離が必要である。
【0041】
250mLのフラスコに、SnCl
2・2H
2O(0.5g)と、HCl(37wt%の溶液)(0.3g)と、水(100mL)と、黒鉛(3g)とを含有する黒鉛活性化溶液を添加した。この活性化混合物を、室温で30分間撹拌し、遠心分離し、黒鉛を沈殿させ、溶液をデカントした。活性化した黒鉛混合物を、60gの水で1回洗浄し、次いで、PdCl
2(0.05g)と、HCl(37wt%の溶液)(0.1g)と、水(100mL)とを含有する黒鉛増感浴に添加した。増感混合物を、30分間撹拌し、遠心分離し、黒鉛を沈殿させ、増感溶液を除去した。
【0042】
次いで、増感黒鉛混合物を、200gの水で洗浄し、その後、溶液のpHが5〜6の間に達するまで遠心分離した。硝酸銀(11g)と、水酸化アンモニウム(28wt%、9g)と、水(1100mL)とを含有する銀めっき水溶液を、撹拌しながら増感黒鉛混合物に添加した。継続的に撹拌しながら、これにホルムアルデヒド(37wt%)水溶液(10g)を含有する還元剤の混合物を添加した。銀被覆黒鉛生成物が15分以内に生成し、反応フラスコの底に沈殿した。澄んだ水層をデカントし、銀被覆黒鉛生成物を、各回200gの水で、3回洗浄し、その後、一晩かけて120℃で乾燥した。収率は、95%超であった。
【0043】
例5
エポキシ配合物における導電性能
【0044】
導電性の接着性配合物を、銀被覆黒鉛の添加量32体積%(vol%)のエポキシ樹脂[DIC(正式には大日本インキ化学工業として知られる)製のEPICLON835LV]および総重量の1重量%(wt%)の2−エチル−4−メチルイミダゾールを使用して、例1から4の各銀被覆黒鉛生成物から調製した。
【0045】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストし、エアオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。膜の寸法は、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0046】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して試験した。抵抗率は、以下の通りであった。
【0047】
【表1】
【0048】
その結果は、例1〜3によるワンポット無電解めっき法によって、例4の従来の多段階法から調製されるものより高い導電率を有する銀被覆黒鉛物質が生成されることを示す。
【0049】
例6
アクリレート配合物における導電性能
導電性の接着性配合物を、銀被覆黒鉛の添加量26vol%(フィラー添加量が総重量の約60wt%)のアクリレート配合物を使用して、例1から4の各銀被覆黒鉛生成物から調製した。
【0050】
アクリレート組成物は、49wt%のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、46wt%のイソボルニルメタクリレート、および5wt%のジクミンペルオキシド(dicumin peroxide)を含有していた。
【0051】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストし、N
2オーブン中で、175℃で1時間硬化させた。膜の寸法は、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0052】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して試験した。抵抗率は、以下の通りであった。
【0053】
【表2】
【0054】
その結果は、例1〜3によるワンポット無電解めっき法によって、例4の従来の多段階法から調製されるものより高い導電率を有する銀被覆黒鉛物質が生成されることを示す。
【0055】
例7
窒素含有シラン活性剤の使用の効果
【0056】
銀被覆黒鉛(SCG)試料を、SCGの総重量の異なる銀添加量で、例2に従って調製した。それぞれの選択された銀添加量について、比較用SCG試料も、この方法においてシラン活性剤を使用せずに調製した。
【0057】
接着性配合物を、銀被覆黒鉛(SCG)およびその比較用試料を使用して調製した。接着性樹脂は、エポキシ組成物またはアクリレート組成物であった。
【0058】
エポキシ組成物は、エポキシ樹脂[DIC(正式には大日本インキ化学工業として知られる)製のEPICLON835LV]と、2.5wt%の2−エチル−4−メチルイミダゾールを含有していた。
【0059】
アクリレート組成物は、49%のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、46wt%のイソボルニルメタクリレート、および5wt%のジクミンペルオキシドを含有していた。
【0060】
シラン活性剤は、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(ICPTES)であった。
【0061】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストした。膜の寸法は、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0062】
エポキシ配合物は、エアオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。
【0063】
アクリレート配合物は、N
2オーブン中で、175℃で1時間硬化させた。
【0064】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して測定した。
【0065】
その結果を以下の表に示す。結果は、商業用途に適した抵抗率を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
結果は、ワンポット無電解めっき法において、窒素含有シラン活性剤(N−シラン)を使用した場合、窒素含有シラン活性剤を使用しなかった場合と比較して、より高い導電率を有する銀被覆黒鉛物質が生成されたことも示す。
【0068】
例8
異なる窒素含有シラン活性剤
【0069】
銀被覆黒鉛(SCG)試料を、以下の表に挙げる窒素含有シラン活性剤を用いて、例2に従って調製した。
【0070】
導電性の接着性配合物を、銀被覆黒鉛の添加量26vol%のエポキシ樹脂[DIC(正式には大日本インキ化学工業として知られる)製のEPICLON835LV]および総重量の1重量%の2−エチル−4−メチルイミダゾールを使用して、各銀被覆黒鉛試料から調製した。
【0071】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストした。膜は、寸法が、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0072】
エポキシ配合物を、エアオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。
【0073】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して測定した。
【0074】
その結果を以下の表に示す。結果は、商業用途に適した抵抗率を示す。
【0075】
【表4】
【0076】
結果は、ワンポット無電解めっき法において、窒素含有シラン活性剤を使用した場合、シラン活性剤を使用しなかった場合と比較して、より高い導電率を有する銀被覆黒鉛物質が生成されたことも示す。
【0077】
例9
構成成分の濃度のめっき品質への影響
【0078】
銀被覆黒鉛(SCG)試料を、例2に従って調製し、異なる濃度のシラン活性剤、硝酸銀シード、めっき溶液中の硝酸銀、および還元剤と配合した。
【0079】
導電性の接着性配合物を、各銀被覆黒鉛試料、銀被覆黒鉛の添加量26vol%のエポキシ樹脂[DIC(正式には大日本インキ化学工業として知られる)製のEPICLON835LV]および総重量の1wt%の2−エチル−4−メチルイミダゾールから調製した。
【0080】
その配合物の膜を、ガラススライドにキャストした。膜は、寸法が、全長=75mm、幅=5mm、厚さ=0.1mmであった。
【0081】
エポキシ配合物を、エアオーブン中で、175℃で1時間硬化させた。
【0082】
体積抵抗率(VR)を、室温で、四探針法を使用して測定した。
【0083】
その結果を、以下の表に示す。結果は、配合における変数とともに、商業用途に適した抵抗率を示す。比較的少ない量のN−シラン活性剤が、活性剤無しまたはより多い量の活性剤に比べ、より良好な導電率値を与えるようであった。
【0084】
【表5】