特許第5932076号(P5932076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5932076
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】容器の蓋構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/24 20060101AFI20160526BHJP
   B65D 43/16 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B65D43/24 A
   B65D43/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-31265(P2015-31265)
(22)【出願日】2015年2月20日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】598041234
【氏名又は名称】株式会社リングスター
(74)【代理人】
【識別番号】100103654
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】唐金 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】唐金 信次郎
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0213808(US,A1)
【文献】 特開平08−230916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/24
B65D 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と本体の上端開放面を被蓋する蓋とで構成し、蓋の一側辺をヒンジ構造によって本体に軸支して蓋を開閉自在とする容器において、
前記ヒンジ構造は、本体側壁から側方に突出させた支持体にヒンジ軸を形成し、蓋側壁から突出させたフックを前記ヒンジ軸に回動可能に係合させ、
前記ヒンジ軸にはフックとの係合位置の軸方向延長上に、ヒンジ軸の中心から外周までの寸法が一定である回動範囲と、ヒンジ軸の中心から外周までの寸法が前記回動範囲における中心から外周までの寸法よりも大きくなるストッパー部を形成したヒンジカムを配置し、
蓋には背面に向けて、閉蓋状態において前記ヒンジカムの回動範囲の外周に当接するガイド突起を設け、蓋が閉蓋状態から一定範囲を自由に開閉し、ガイド突起がヒンジンカムのストッパー部に当接することによって蓋の開きを定位置で停止させるとともに、蓋をヒンジ軸に沿って、前記蓋のガイド突起がヒンジカムに当接する位置と、ヒンジカムとの当接が外れる位置とを軸方向に移動可能とし、蓋をヒンジ軸方向に移動させることによって蓋を定位置まで開閉できる状態と、蓋の全開状態とに変更することができるようにしたことを特徴とする容器の蓋構造。
【請求項2】
本体及び蓋を合成樹脂製の成形品とし、本体の一側辺の左右対称2か所にそれぞれヒンジ構造を配置し、各ヒンジ構造のヒンジ軸の両端は本体から突出させた支持体に支持させ、本体と支持体及びヒンジ軸を一体に形成し、支持体の一部にヒンジカムを形成したことを特徴とする請求項1に記載の容器の蓋構造。
【請求項3】
ヒンジカムの中心から外周までの寸法が一定である回動範囲を、蓋が倒れずに開蓋状態を維持する角度までとし、該回動範囲に続くストッパー部はヒンジ軸の軸方向に一定幅を有する平面に形成し、蓋2を持って強制的に移動させることによってヒンジカム6とガイド突起7の当接を解除し、蓋を全開状態とすることを可能とする請求項1又は2記載の容器の蓋構造。
【請求項4】
ヒンジカムの中心から外周までの寸法が一定である回動範囲を、蓋が倒れずに開蓋状態を維持する角度までとし、該回動範囲に続くストッパー部に、蓋がヒンジカムの当接から外れるように移動する側の厚みの一部を、蓋の移動方向に向けて低くなる傾斜面もしくは突弧面に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の容器の蓋構造。
【請求項5】
ヒンジ軸の外周面の一部にズレ止め突起を突設し、該ズレ止め突起を蓋のフック内面に形成したガイド溝に係合させ、該ガイド溝は蓋の閉蓋位置から停止位置までの回動範囲に対応する周方向の溝と、蓋の開閉方向の停止位置において蓋のヒンジ軸方向の移動を許容する脱出部に形成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の容器の蓋構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として複数種類の小物、例えば釘やビスといった大工や左官の施工用小物、あるいは釣用の小物などを仕分けして収容する小物入れ、その他、身容器となる本体と、本体の上端開放面を被蓋する蓋とで構成する容器の蓋構造に関する発明である。特に、蓋の一側辺をヒンジ構造によって開閉自在とするものであって、蓋を開く場合に開蓋状態の中間位置において蓋を停止させる半開蓋状態と、蓋を全開させる開蓋状態に使い分けることができる蓋の構造に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
ヒンジ構造によって開閉する蓋を備えた容器において、蓋を完全に開くだけでなく90度程度の中間位置まで開いた状態に停止させておくことができる構造が、特許文献1に開示されている。また、特許文献2には、ヒンジ部分にクリック機構を備え定位置の開蓋状態を維持することができる容器蓋構造が開示されている。
【0003】
特許文献2に開示された構造は、例えば100度程度の特定の位置で蓋を停止させるだけであって、例えば蓋をより広く開く使用形態を実現することができない。特許文献1には、容器本体に弾性ストップ部材を設けるとともに、蓋のナックルに突出部を形成し、この突出部が弾性ストップ部材に係合して開蓋を停止させ、弾性ストップ部材の弾性に抗して蓋を強く開くと、突出部がストップ部材を弾性変形させて乗り越え、蓋を大きく開くことができる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−230916号公報
【特許文献2】特開平11−35060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明は、本体に設けた弾性部材で蓋のナックルに形成した突出部材を係止させることによって、蓋を回蓋の中間位置で停止させ、強く開くことによって弾性部材を変形させ、蓋を全開させることができる。しかしながら、この構造では、弾性部材が変形を繰り返すうちに、弾性部材が劣化によって、蓋を支持する力が弱くなり安定して中間位置の開蓋状態を維持することが困難になり、弾性部材あるいは突出部材が破損する可能性がある。
また、蓋の中間位置における開蓋状態は、弾性部材の弾性力によって支持させるため、開蓋状態を安定的に維持することができない。仮に、弾性部材による保持力を大きく設定した場合は、蓋を強い力で開く必要があり、強い力で開いた場合、弾性部材が破損してしまう可能性がある。
【0006】
上記従来技術の欠点に鑑み、本発明は、中間位置の開蓋状態、すなわち開蓋の中間位置で停止させる状態と、全開の開蓋状態を変更することが可能であって、中間位置の開蓋状態において、不用意に全開状態に変化するようなことがなく中間位置の開蓋状態を確実に維持し、長期にわたって安心して使用することができる丈夫な、開蓋位置を変更することが可能な容器の蓋構造を提供することを目的とするものである。
また、中間位置の開蓋状態から全開の開蓋状態への変更を容易に行うことができる容器の蓋構造を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る容器は、本体1と、本体の上端開放面を被蓋する蓋2とで構成し、蓋2の一側辺をヒンジ構造によって本体に軸支して蓋を開閉自在とする。
前記ヒンジ構造は、本体側壁1aから側方に突出させた支持体3にヒンジ軸4を形成し、蓋側壁2aから突出させたフック5を前記ヒンジ軸4に回動可能に係合させる。
前記ヒンジ軸4にはフック5との係合位置の軸方向延長上に、ヒンジ軸4の中心から外周までの寸法が一定である回動範囲6aと、ヒンジ軸4の中心から外周までの寸法が前記回動範囲6aにおける中心から外周までの寸法よりも大きくなるストッパー部6bを形成したヒンジカム6を配置する。
蓋2には背面に向けて、閉蓋状態において前記ヒンジカム6の回動範囲6aの外周に当接するガイド突起7を設け、蓋2が閉蓋状態から一定範囲を自由に開閉し、ガイド突起7がヒンジカム6のストッパー部6bに当接することによって蓋2の開きを定位置で停止させるようにする。また、蓋2をヒンジ軸4に沿って前記、蓋2のガイド突起7がヒンジカム6に当接する位置と、ヒンジカム6との当接が外れる位置とを軸方向に移動可能とし、蓋2をヒンジ軸方向に移動させることによって蓋2を定位置まで開閉できる状態と、蓋2の全開状態とに変更することができるようにする。
【0008】
請求項2記載の発明は、本体1及び蓋2を合成樹脂製の成形品とし、本体1の一側辺の左右対称2か所にそれぞれヒンジ構造A、Aを配置し、各ヒンジ構造のヒンジ軸4の両端は本体側壁1aから突出させた支持体3、3に支持させ、本体1と支持体3及びヒンジ軸4を一体に形成し、支持体3の一部にヒンジカム6を形成することである。
【0009】
請求項3記載の発明は、ヒンジカム6の中心から外周までの寸法が一定である回動範囲6aを、蓋2が倒れずに開蓋状態を維持する角度までとし、回動範囲に続くストッパー部6bはヒンジ軸4の軸方向に一定幅を有する平面に形成し、蓋2を持って強制的に移動させることによってヒンジカム6とガイド突起7の当接を解除し、蓋を全開状態とすることを可能とすることである。
【0010】
請求項4記載の発明は、ヒンジカム6の中心から外周までの寸法が一定である回動範囲6aを、蓋2が倒れずに開蓋状態を維持する角度までとし、該回動範囲6aに続くストッパー部6bに、蓋2がヒンジカム6の当接から外れるように移動する側の厚みの一部を、蓋2の移動方向に向けて低くなる傾斜面6cに形成することである。
【0011】
請求項5記載の発明は、ヒンジ軸4の外周面の一部にズレ止め突起8を突設し、該ズレ止め突起8を蓋2のフック内面に形成したガイド溝9に係合させ、該ガイド溝9は蓋の閉蓋位置から停止位置までの回動範囲に対応する周方向の溝9aと、蓋2の開閉方向の停止位置において蓋2のヒンジ軸方向の移動を許容する脱出部9bを形成することである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ヒンジ構造によって開閉する蓋付の容器において、閉蓋状態の蓋2を中間位置まで開蓋し、中間位置までの開蓋状態を維持する。すなわち、開蓋の中間位置に停止させることができる容器の蓋構造を実現する。このとき、特許文献1に開示されている発明のように、弾性部材を変形させるといった抵抗となる操作が必要でないため、円滑な開蓋操作によって実施することができる。すなわち、閉蓋状態から蓋2を開けると、蓋2のガイド突起7がヒンジカム6の回動範囲6aに当接しながら円滑に開蓋される。
開蓋が進み、ガイド突起7がヒンジカム6のストッパー部6bに当接することによって確実かつ円滑に開蓋を停止し、中間位置での開蓋状態を確実に維持することができる。さらに、ガイド突起7がヒンジカム6のストッパー部6bに当接している状態で、蓋2を軸方向に移動させることによって全開方向に回動させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、ヒンジ軸4を本体1の左右2か所に設けることによって蓋2が安定し、それぞれのヒンジ軸4は本体1及びヒンジ軸の支持体3と一体に成型することによって安定した作動を行い、ヒンジカムを形成するために別部材を準備する必要がない。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、中間位置の開蓋位置に停止している状態で、蓋2を手で支持し、蓋全体をヒンジ軸に沿って強制的に移動させることによって、蓋2を全開方向に開けることができる。このとき、中間位置の開蓋位置において、その中間開蓋状態をしっかりと、確実に維持することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、中間位置の開蓋位置に停止している状態で、蓋を全開方向に開ける場合に、蓋を開蓋方向に回そうとすると、ガイド突起7がガイドカム6の傾斜面6cに沿って移動し、蓋のヒンジ軸方向への移動を円滑に行うことができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、ズレ止め突起8がフック5内面に形成したガイド溝9に係合することによって、蓋2がヒンジ軸4の軸方向に妄動することがなく、蓋2の開閉動作及び蓋2のヒンジ軸4方向への移動を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明を実施する容器の一例を示す中間位置の開蓋状態の斜視図、
図2図2は、容器全体の平面図、
図3図3は、容器全体の底面図、
図4図4は、ヒンジ部分を拡大するとともに一部を縦断して示す図2の正面図、
図5図5は、本体と蓋を分離させて示す一部分のみの正面図、
図6図6は、本体と蓋を分離させて示す一部分のみの平面図、
図7図7は、本体に形成したヒンジ軸のズレ止め突起と、蓋のフックに形成したガイド溝を示す斜視図、
図8図8は、中間位置までの開蓋状態を示し、所定位置から蓋を移動させる状態を示す一部分のみの正面図、
図9図9は、開蓋状態の変化を、各状態におけるヒンジカム部分の断面図を併記して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る容器の蓋構造の、好ましい実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
本発明は、一例として、図1に示すような蓋付の容器に実施する。図1に示す容器は、容器本体1と蓋2とで構成し、蓋の一側辺をヒンジ構造A、Aによって軸支して蓋を開閉自在とし、ヒンジ構造の対向側辺にロック機構を備えたハンドル10を配置し、ハンドル10を持って携行することができるようにしたものである。
【0019】
図1に示す実施形態の容器は、本体1の内部を2つの幅方向の区画壁11で3つの収容空間に区画し、各区画の内部を適宜仕切り壁12、12によって仕切り、多種類の小物例えば釘や工具を整理して収容して携行することができるようにした小物入れである。蓋2には、区画壁11の上端に嵌合する溝13を形成し収容した小物が混ざらないようにしている。 このような小物入れは、収容物を出し入れする場合に、蓋2を180度全開する場合と、使用場所の制約等によって、例えば95度程度であって開蓋状態の中間位置に自立状態に停止させて使用するのが好ましい場合がある。すなわち、本発明によれば、容器の蓋2を図1に示すように開蓋の中間位置に、自立した状態に維持することができるようにしたものである。
【0020】
前記、蓋2を中間位置の開蓋状態に停止させることができる構造は、本体1と蓋2のヒンジ構造Aによって実現している。
図4は、ヒンジ構造部分を拡大するとともに一部を縦断して示す正面図、図5は、本体1と蓋2を分離させた状態の一部分のみの正面図、図6は、本体1と蓋2を分離させて示す一部分のみの平面図である。
図5(b)及び図6(b)から理解されるように、本体1には本体側壁1aから突出させた支持体3にヒンジ軸4を一体に形成している。
【0021】
一方、蓋2には図5(a)及び図6(a)から理解されるように、蓋側壁2aからフック5突出させ、このフック5によって前記本体側壁1aに支持体3で支持されているヒンジ軸4を回動可能に係合させることによって、開閉自在の蓋を実現している。(図4参照)
具体的には、フック5を断面略U字状に形成し、ヒンジ軸4を下から支受するとともに、本体側壁1aから側方に突出させているヒンジ軸4を支持している支持体3の上方から蓋2の一部、具体的には蓋側壁2aから突出させたガイド突起7、7’を当接させることによって蓋2の脱落を防止して、蓋2を安定的に回動(開閉)させることができるようにしている。
【0022】
図5(c)に示すように、前記ヒンジ軸4にはフック5との係合位置の軸方向延長上に、ヒンジ軸4の中心から外周までの寸法Rが一定である回動範囲6aと、ヒンジ軸4の中心から外周までの寸法が前記回動範囲における中心から外周までの寸法よりも大きくなるストッパー部6bを形成したヒンジカム6を配置している。ヒンジカム6は、本体1と一体に形成するとともに、ヒンジ軸4と同軸上にある。この構成はヒンジ軸4を支持する支持体3と共通する構造であるため、ヒンジカム6は支持体を兼用させることができる。ただし、図示実施形態においては、ヒンジカム6として機能しない支持体3の先端は、半径Rの半円形としている。
【0023】
さらに、本発明では蓋側壁2aから側方に突出させたガイド突起7を、前記ヒンジカム6の外周面に当接させている。したがって、ガイド突起7がヒンジカム6の回動範囲6aに当接する回動範囲では蓋2が自由に開閉し、ガイド突起7がストッパー部6bに達するとそれ以上の回動が阻止され、蓋の開閉が停止される。
ガイド突起7は図5(a)及び図6(a)から理解されるように、大きく突出するガイド突起7と小さく突出するガイド突起7’を存在させている。大きく突出するガイド突起7はヒンジカム6、具体的にはヒンジカム6のストッパー部6bに当接し、ガイド突起7’は突出寸法が少なく支持体3の頂点にのみ当接するものである。
【0024】
前記ヒンジ構造Aは、本体1の一側辺の1か所に設けるものであってもよいが、図示実施形態の場合、ヒンジ構造Aは、図2図3に示すように、本体の一側辺の左右対称2か所に配置している。また、一つのヒンジ構造Aは、それぞれ1つのヒンジ軸4で構成するものであってもよいが、図示実施形態においてはそれぞれのヒンジ構造Aにおいて、2つのヒンジ軸4,4を使用している。
【0025】
図5(b)及び図6(b)に示すように、本体1には本体側壁1aから幅Wの間隔で突出させた支持体3の間に長さL1のヒンジ軸4を一体に形成し、一定間隔を隔てて同じ寸法、すなわち長さL1ヒンジ軸4を配置している。具体的には図5に示すように、図面上左側のヒンジ軸4の右端の支持体3を厚みtであってその形状をヒンジカムカム6とし、支持体3とヒンジカム6の機能を兼用している。このヒンジカム6には右側に円筒状の支持体突出部3’を形成している。
一方、図面上右側のヒンジ軸4の左端は、厚みtであってヒンジカム6を兼用する支持体3を配置してヒンジ軸4の左端を支持している。右側のヒンジ軸4の右端は厚みtの支持体3で支持し、支持体3の右方に支持体突出部3’を形成している。すなわち、支持体突出部3’を除く支持体3、3の外接寸法が幅Wであって、支持体3、3の内接寸法、すなわちヒンジ軸4の長さをL1としている。
【0026】
一方、蓋2には図5(a)及び図6(a)から理解されるように、蓋側壁2aからフック5突出させ、このフック5にヒンジ軸4を下から支受することによって回動可能に係合させて開閉自在の蓋を実現している。このとき、フック5の幅L2はヒンジ軸4の長さL1よりも短く、ヒンジ軸4に係合させた状態で蓋2をヒンジ軸4の軸方向に移動することができるようにしている。蓋2を軸方向に移動させることができる寸法は、少なくとも支持体3の厚みt以上とする。
通常の閉蓋状態では、図8(a)に示すように、蓋2が図面上の左端側に移動し、短いガイド突起7’が支持体3に、長いガイド突起7がヒンジカム6に当接している。この状態で蓋2を開くと、ガイド突起7がヒンジカム6のストッパー部に当接し、中間の開蓋位置で係止される。
【0027】
これに対して、図8(b)に示すように、蓋2を右方向に移動させると、図面上、左側にあるフック5の右に位置するガイド突起7は、左側のヒンジ軸4の右側に位置するヒンジカム6との当接位置から支持体突出部3’との当接位置に移動する。右側のフック5の右端に位置するガイド突起7’は、右端の支持体3の位置から支持体突出部3’に移動しこれに当接する。したがって、図8の(b)に示す状態では、図9(d)に示すように蓋2を全開位置まで開閉することができる。この時、左側のフックの左端に位置するガイド突起7’は支持体3との当接から外れ、右側のフック5の左に位置するガイド突起7はヒンジカム6との当接から外れることになる。
【0028】
蓋2が開蓋の中間位置まで円滑に開閉するためには、前記した蓋が左側に安定した状態で移動し、不用意に右側に移動しないようにすることが好ましい。このように、蓋2を左側の定位置で回動させるために、図7に示すように、ヒンジ軸4の外周面の一部にズレ止め突起8を突設するとともに、フック5の内面に、前記ズレ止め突起8が係合するガイド溝9を形成しておく。これにより、ズレ止め突起8がガイド溝9に沿って回動し、蓋2を円滑に開閉させることができる。
【0029】
蓋2が所定の開蓋の中間位置に達した所で、蓋2は開蓋を停止する。この蓋2の開蓋停止位置から、蓋2を全開方向に開動させるには、図8(b)あるいは図9(c)に示すように、蓋2をヒンジ軸4の右方向に移動させる必要がある。そのため、所定の開蓋の中間位置と対応する、すなわちズレ止め突起8と係合している前記停止位置において、ズレ止め突起8がガイド溝9から脱出する脱出部9bを形成しておく。脱出部9aは、例えば周方向の溝9aと連続し、軸方向の一端に開口する切欠部や傾斜部、薄肉部などとして形成することができる。
【0030】
ズレ止め突起8とガイド溝9との係合が外れた後は、蓋2がヒンジ軸の軸方向に妄動せず、定位置において全開方向に円滑に回動するのが好ましい。そのためには、例えばズレ止め突起8をフック5の側縁に当接させてガイドとして機能させることで実現することができる。すなわち、ズレ止め突起8から外方を除いたヒンジ軸4の寸法をフック5の幅L2とし、なるべく遊び寸法をなくすることによってスムーズな動きを実現することができる。
あるいは、係合が外れたガイド突起7の側面をヒンジカムの側面に沿わせることによってスムーズな動きを実現することもできる。
【0031】
自立させることができる中間の開蓋状態において蓋2の回動を停止させ、蓋2を自立させた開蓋状態に確実に維持するには、ヒンジカム6のストッパー部6bにガイド突起7を安定的に支持させることによって実現することができる。蓋2の中間位置での開蓋状態を、より安定的に支持するには、図5(c)に示すストッパー部6bを平面に形成し、ガイド突起7とヒンジカムのストッパー部6bをなるべく広い平面で接触させるようにする。この場合、蓋2を全開の開蓋状態に移行させるために、蓋2を手で支持してヒンジ軸方向に移動させる。
【0032】
上記、図5(c)に6bで示したストッパー部を平面で形成する場合は、蓋2を手で支持して移動させる必要がある。この、蓋2のヒンジ軸方向への移動は、蓋2を手で支持して横方向に押し出すことによって実現することができる。
しかしながら、蓋2をなるべく容易にヒンジ軸の軸方向に移動させるようにするのが好ましい場合がある。このような容器は、蓋2を容易にヒンジ軸の軸方向に移動させるようにするために、例えば図5(d)に斜線を施して示すように、ガイド突起7が当接するヒンジカム6の外周面であって、蓋2が全開方向に移動する側縁、すなわち図5(c)に示すヒンジカム6右側側縁(例えば厚みの半分程度の領域)を傾斜面6cとすることによって、中間の停止位置にある蓋2を全開方向に少しの力を加えることによって、ガイド突起7との当接位置が傾斜面に沿って移動させることができる。したがって、意識的に蓋2をヒンジ軸4の軸方向に移動させる操作をしなくても、蓋に少し力を加えるだけで中間の停止状態から全開状態に円滑に移動させることができる。
傾斜面6cは、当接状態が滑り易い形状であればよく、例えば突弧面のような曲面に形成することもできる。
【0033】
以上述べた本発明に係る容器の、ヒンジ部分の開蓋状態の変化を図9に基づいて説明する。図9(a)は、蓋2を完全に閉じた状態であって、蓋の正面に突出するガイド突起7、7’は支持体3及びヒンジカム6に当接し、自由に回動、すなわち開蓋できる状態である。
蓋を開けた状態で自立させることができる開蓋の中間位置、例えば95度程度の角度に蓋2を開くと、図9(b)のようにガイド突起7がヒンジカム6のストッパー部6bに当接するため、それ以上の回動を阻止し開蓋の中間位置における開蓋状態を維持する。
【0034】
この状態で図9(c)に矢印で示すように、蓋2をヒンジ軸の方向に移動させると、ガイド突起7とヒンジカムの当接状態が解除される。すなわち、ガイド突起7は、ヒンジカムに隣接する支持体突出部3’に支持されるか、ガイド突起がなにものにも支持されない状態となる。この状態では、図9(d)に示すように蓋2は自由に回動し、蓋2を全開して使用することができる。
蓋を閉じる場合は、蓋を閉じることによって自動的に図9(a)に示す元の位置に復帰することが好ましい。閉蓋によって元の位置に復帰させるにはいずれかの部分にガイド手段を設けることによって実現することができる。例えば、フックの側縁を傾斜面としておき、蓋を閉じる最終段階で、フックの側縁がガイド突起7あるいは支持体3の側面に当接することによって実現することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…本体、 1a…本体側壁、 2…蓋、 2a…蓋側壁、 3…支持体 3’…支持体突出部、 4…ヒンジ軸、 5…フック、 6…ヒンジカム、 6a…回動範囲、 6b…ストッパー部、 6c…傾斜面、 7、7’…ガイド突起、 8…ズレ止め突起、 9…ガイド溝、 9a…溝、 9b…脱出部、10…ハンドル、 11…区画壁、 12…仕切り壁、 A…ヒンジ構造。
【要約】
【課題】蓋の一側辺をヒンジ構造によって本体に軸支する容器において、蓋を半ば開蓋する状態と、全開する状態を使い分けることができるようにする。
【解決手段】本体側壁から側方に突出させた支持体3にヒンジ軸4を形成し、蓋側壁から突出させたフック5をヒンジ軸に回動可能に係合させる。ヒンジ軸の端部に、中心から外周までの寸法が一定である回動範囲6aと、中心から外周までの寸法が大きくなるストッパー部6bを形成したヒンジカム6を設ける。蓋には背面に向けてガイド突起7を設け、ヒンジカムの回動範囲の外周に当接する範囲を自由に回動し、ガイド突起がヒンジンカムのストッパー部6bに当接することによって回動、すなわち蓋の開きを停止させる。その状態で、蓋をヒンジ軸方向に移動させることによってヒンジカム6とガイド突起7の当接を解除し、蓋2を全開可能とする。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9