(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非磁性金属は、Au,Ag,Al,Cu,Mo,W,Ir,Ru,Rh,Cr,Pd,Ptのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
更に、磁性材料よりなり、前記媒体対向面に配置された第2の端面を有するシールドと、磁性材料よりなり、前記主磁極と前記シールドとを接続し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させる帰磁路部とを備え、
前記第1の端面と前記第2の端面は、前記記録媒体の進行方向について互いに異なる位置に配置され、
前記近接場光発生部は、前記第1の端面と前記第2の端面の間に配置され、
前記帰磁路部は、第1のヨーク部分と、第2のヨーク部分と、第1の柱状部分と、第2の柱状部分と、第3の柱状部分とを含み、
前記第1のヨーク部分、第2のヨーク部分および第1の柱状部分は、前記コアに対して、前記記録媒体の進行方向における同じ側に配置され、
前記第1の柱状部分は、前記記録媒体の進行方向において互いに反対側に位置する第1の端部と第2の端部を有し、且つ前記媒体対向面から離れた位置にあり、
前記第2および第3の柱状部分は、前記第1の柱状部分よりも、前記媒体対向面により近い位置にあり、
前記第1のヨーク部分は、前記主磁極と前記第1の柱状部分の前記第1の端部とを接続し、
前記第2の柱状部分と第3の柱状部分は、前記プラズモンジェネレータのトラック幅方向の両側に配置されて、前記シールドに接続され、
前記第2のヨーク部分は、前記第1の柱状部分の前記第2の端部に接続され、且つ前記第2および第3の柱状部分を介して前記シールドに接続され、
前記コイルは、前記第1の柱状部分の周りに巻回され、
前記第2および第3の柱状部分が、前記2つの第1の部分を構成することを特徴とする請求項5記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
前記シールドは、前記媒体対向面に垂直な方向から見て、前記コアの前記前端面のトラック幅方向の両側に配置された第1の非オーバーラップ部分と第2の非オーバーラップ部分を有し、
前記第2の柱状部分は、前記第1の非オーバーラップ部分に接続され、
前記第3の柱状部分は、前記第2の非オーバーラップ部分に接続されていることを特徴とする請求項7記載の熱アシスト磁気記録ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1ないし
図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成について説明する。
図1は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
図2は、
図1における一部を拡大して示す斜視図である。
図3は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
図4は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図5は、本実施の形態におけるコイルの第1層を示す平面図である。
図6は、本実施の形態におけるコイルの第2層を示す平面図である。
【0032】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、垂直磁気記録用であり、回転する記録媒体の表面から浮上するスライダの形態を有している。記録媒体が回転すると、記録媒体とスライダとの間を通過する空気流によって、スライダに揚力が生じる。スライダは、この揚力によって記録媒体の表面から浮上するようになっている。
【0033】
図3に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体80に対向する媒体対向面60を備えている。ここで、X方向、Y方向、Z方向を以下のように定義する。X方向は、記録媒体80のトラック横断方向すなわちトラック幅方向である。Y方向は、媒体対向面60に垂直な方向である。Z方向は、スライダから見た記録媒体80の進行方向である。X方向、Y方向、Z方向は互いに直交している。
【0034】
図3および
図4に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al
2O
3・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置されたアルミナ(Al
2O
3)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる下部シールド層3と、下部シールド層3を覆うように配置された絶縁膜である下部シールドギャップ膜4と、この下部シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5に接続された2つのリード(図示せず)と、MR素子5の上に配置された絶縁膜である上部シールドギャップ膜6と、この上部シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる上部シールド層7とを備えている。Z方向は、基板1の上面1aに垂直な方向でもある。
【0035】
MR素子5の一端部は、媒体対向面60に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0036】
下部シールド層3から上部シールド層7までの部分は、再生ヘッド部を構成する。熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、上部シールド層7の上に配置された絶縁層8と、この絶縁層8の上に配置された磁性材料よりなる中間シールド層9と、この中間シールド層9の上に配置された非磁性材料よりなる非磁性層10と、この非磁性層10の上に配置された記録ヘッド部とを備えている。中間シールド層9は、記録ヘッド部で発生する磁界からMR素子5をシールドする機能を有している。絶縁層8および非磁性層10は、例えばアルミナによって形成されている。
【0037】
記録ヘッド部は、コイル29と、主磁極27とを備えている。コイル29は、記録媒体80に記録する情報に応じた磁界を発生する。
図1および
図3に示したように、主磁極27は、媒体対向面60に配置された第1の端面27aを有している。主磁極27は、コイル29によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体80に記録するための記録磁界を発生する。コイル29は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0038】
記録ヘッド部は、更に、磁性材料よりなるシールド15と、磁性材料よりなる帰磁路部Rとを備えている。
図1および
図2に示したように、シールド15は、媒体対向面60に配置された第2の端面15aを有している。帰磁路部Rは、主磁極27とシールド15とを接続し、コイル29によって発生された磁界に対応する磁束を通過させる。
【0039】
帰磁路部Rは、リターン磁極層11と、連結層12,28,33と、2つの連結部13A,13Bと、第1のヨーク部分32とを含んでいる。リターン磁極層11は、非磁性層10の上に配置されている。また、リターン磁極層11は、媒体対向面60に配置された端面を有している。記録ヘッド部は、更に、リターン磁極層11の周囲に配置された図示しない絶縁層を備えている。図示しない絶縁層は、例えばアルミナによって形成されている。
【0040】
連結層12は、リターン磁極層11の上面のうちの媒体対向面60の近傍の第1の部分の上に配置されている。2つの連結部13A,13Bは、リターン磁極層11の上面のうちの媒体対向面60から離れた位置にある2つの第2の部分の上に配置されている。連結層12は、媒体対向面60に配置された端面を有している。連結部13A,13Bは、それぞれ、リターン磁極層11の上に配置された第1層と、この第1層の上に順に配置された第2層、第3層および第4層とを有している。連結部13Aの第1層と連結部13Bの第1層は、トラック幅方向(X方向)に並ぶように配置されている。
【0041】
記録ヘッド部は、更に、リターン磁極層11の上面のうちの第1および第2の部分以外の部分および図示しない絶縁層の上に配置された絶縁層14を備えている。連結部13A,13Bの第1層は、絶縁層14に埋め込まれている。絶縁層14は、例えばアルミナによって形成されている。
【0042】
シールド15は、媒体対向面60の近傍において連結層12の上面のうちの媒体対向面60の近傍の一部の上に配置されている。記録ヘッド部は、更に、連結層12の上面のうちの前記一部を除いた部分および絶縁層14の上に配置された絶縁層16を備えている。連結部13A,13Bの第2層は、絶縁層16に埋め込まれている。絶縁層16は、例えばアルミナによって形成されている。
【0043】
記録ヘッド部は、更に、光を伝搬させるコア18と、コア18の周囲に配置されたクラッドとを有する導波路を備えている。特に
図2に示したように、コア18は、媒体対向面60に向いた前端面18aと、上面であるエバネッセント光発生面18bと、下面18cと、2つの側面18d,18eとを有している。前端面18aは、媒体対向面60に配置されていてもよいし、媒体対向面60から離れた位置に配置されていてもよい。
図1ないし
図4には、前端面18aが媒体対向面60に配置された例を示している。
【0044】
クラッドは、クラッド層17,19,20を含んでいる。クラッド層17は、シールド15および絶縁層16の上に配置されている。コア18は、クラッド層17の上に配置されている。クラッド層19は、クラッド層17の上においてコア18の周囲に配置されている。クラッド層20は、コア18のエバネッセント光発生面18bおよびクラッド層19の上面の上に配置されている。
【0045】
コア18は、近接場光の発生に用いられるレーザ光を通過させる誘電体材料によって形成されている。コア18には、図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光が入射され、このレーザ光はコア18内を伝搬する。クラッド層17,19,20は、コア18の屈折率よりも小さい屈折率を有する誘電体材料によって形成されている。コア18の材料としては、例えば、Ta
2O
5等の酸化タンタルや酸窒化ケイ素(SiON)が用いられ、クラッド層17,19,20の材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO
2)やアルミナが用いられる。
【0046】
連結部13A,13Bの第3層は、クラッド層17,19に埋め込まれている。連結部13Aの第3層と連結部13Bの第3層は、コア18のトラック幅方向(X方向)の両側において、コア18に対して間隔を開けて配置されている。
【0047】
記録ヘッド部は、更に、媒体対向面60の近傍においてコア18のエバネッセント光発生面18bの上方に配置されるようにクラッド層20の上に配置されたプラズモンジェネレータ21と、クラッド層20の上においてプラズモンジェネレータ21の周囲に配置された誘電体層22とを備えている。プラズモンジェネレータ21は、後で説明する原理によって表面プラズモンが励起されるものである。プラズモンジェネレータ21は、例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rh、Irのいずれか、またはこれらのうちの複数の元素よりなる合金によって形成されている。誘電体層22は、例えば、クラッド層17,19,20と同じ材料によって形成されている。プラズモンジェネレータ21の形状については、後で詳しく説明する。
【0048】
記録ヘッド部は、更に、媒体対向面60の近傍においてプラズモンジェネレータ21の一部および誘電体層22の一部の上に配置された絶縁層23と、プラズモンジェネレータ21の他の一部および誘電体層22の他の一部の上に配置された非磁性金属層24とを備えている。非磁性金属層24は、媒体対向面60に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面60から離れた位置に配置されている。非磁性金属層24は、プラズモンジェネレータ21用のヒートシンクとして働く。すなわち、非磁性金属層24は、プラズモンジェネレータ21において発生した熱を、プラズモンジェネレータ21の外部に放散させる。非磁性金属層24は、例えばAuによって形成されている。絶縁層23は、例えば、クラッド層17,19,20と同じ材料によって形成されている。
【0049】
記録ヘッド部は、更に、絶縁層23および非磁性金属層24の周囲に配置された誘電体層25と、非磁性金属層24および誘電体層25の上に配置された誘電体層26とを備えている。誘電体層26は、媒体対向面60に向いた端面を有し、この端面は、非磁性金属層24の端面よりも媒体対向面60から遠い位置に配置されている。誘電体層25,26は、例えば、クラッド層17,19,20と同じ材料によって形成されている。
【0050】
主磁極27は、コア18との間にプラズモンジェネレータ21を挟むように絶縁層23、非磁性金属層24および誘電体層26の上に配置されている。主磁極27は、磁性金属によって構成されている。主磁極27の形状については、後で詳しく説明する。
【0051】
図1および
図4に示したように、記録ヘッド部は、更に、媒体対向面60の近傍において主磁極27の周囲に配置された、主磁極27用のヒートシンク40を備えている。ヒートシンク40は、絶縁層23および誘電体層26の上に配置されている。ヒートシンク40については、後で詳しく説明する。
【0052】
連結部13A,13Bの第4層は、クラッド層20および誘電体層22,25,26に埋め込まれている。連結層28は、連結部13A,13Bの第4層および誘電体層26の上に配置されている。
【0053】
コイル29は、第1層29Aと第2層29Bとを有している。第1層29Aは、誘電体層26の上に配置されている。
図5に示したように、第1層29Aは、連結層28の周りに約2回巻かれている。記録ヘッド部は、更に、絶縁層30,31を備えている。絶縁層30は、第1層29Aの巻線間、ならびに主磁極27、ヒートシンク40、連結層28および第1層29Aの周囲に配置されている。絶縁層31は、第1層29Aおよび絶縁層30の上に配置されている。絶縁層30,31は、例えばアルミナによって形成されている。
【0054】
第1のヨーク部分32は、第1層32Aと第2層32Bとを有している。第1層32Aは、主磁極27の上に配置されている。第1層32Aは、媒体対向面60に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面60から離れた位置に配置されている。
【0055】
連結層33は、連結層28の上に配置されている。コイル29の第2層29Bは、絶縁層31の上に配置されている。
図6に示したように、第2層29Bは、連結層33の周りに約2回巻かれている。記録ヘッド部は、更に、絶縁層34,35を備えている。絶縁層34は、第2層29Bの巻線間、ならびに第1のヨーク部分32の第1層32A、連結層33および第2層29Bの周囲に配置されている。絶縁層35は、第2層29Bおよび絶縁層34の上に配置されている。絶縁層34,35は、例えばアルミナによって形成されている。
【0056】
第1のヨーク部分32の第2層32Bは、第1のヨーク部分32の第1層32A、連結層33および絶縁層35の上に配置されている。第2層32Bは、媒体対向面60に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面60から離れた位置に配置されている。記録ヘッド部は、更に、第2層32Bの周囲に配置された絶縁層36を備えている。絶縁層36は、例えばアルミナによって形成されている。
【0057】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、記録ヘッド部を覆うように配置された保護層37を備えている。保護層37は、例えばアルミナによって形成されている。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、媒体対向面60と再生ヘッド部と記録ヘッド部とを備えている。再生ヘッド部と記録ヘッド部は、基板1の上に積層されている。記録ヘッド部は、再生ヘッド部に対して、記録媒体80の進行方向(Z方向)の前側(トレーリング側)に配置されている。
【0059】
記録ヘッド部は、コイル29と、主磁極27と、導波路と、プラズモンジェネレータ21と、ヒートシンク40と、シールド15と、帰磁路部Rとを備えている。導波路は、コア18とクラッドとを有している。クラッドは、クラッド層17,19,20を含んでいる。帰磁路部Rは、リターン磁極層11と、連結層12,28,33と、2つの連結部13A,13Bと、第1のヨーク部分32とを含んでいる。
【0060】
主磁極27は、媒体対向面60に配置された第1の端面27aを有している。シールド15は、媒体対向面60に配置された第2の端面15aを有している。第1の端面27aと第2の端面15aは、記録媒体80の進行方向(Z方向)について互いに異なる位置に配置されている。本実施の形態では特に、第2の端面15aは、第1の端面27aに対して記録媒体80の進行方向の後側(リーディング側)に配置されている。
【0061】
主磁極27は、コア18に対して、記録媒体80の進行方向の前側に配置されている。コア18は、媒体対向面60に配置された前端面18aを有している。前端面18aは、記録媒体80の進行方向について、第1の端面27aと第2の端面15aとの間に配置されている。
【0062】
シールド15は、熱アシスト磁気記録ヘッドの外部から熱アシスト磁気記録ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極27に集中して取り込まれることによって記録媒体80に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、シールド15は、主磁極27の第1の端面27aより発生されて記録媒体80の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体80に達することを阻止する機能を有している。これにより、記録磁界強度の勾配を大きくすることができる。また、シールド15と帰磁路部Rは、主磁極27の第1の端面27aより発生されて、記録媒体80の一部を磁化した磁束を、主磁極27に還流させる機能を有している。
【0063】
次に、
図5および
図6を参照して、コイル29の形状および配置について詳しく説明する。
図5に示したように、コイル29の第1層29Aは、連結層28の周りに約2回巻かれている。第1層29Aは、主磁極27と連結層28の間を通過するように延びる部分を含んでいる。また、第1層29Aは、コイル29の第2層29Bに電気的に接続されたコイル接続部29Eを有している。
【0064】
図6に示したように、第2層29Bは、連結層33の周りに約2回巻かれている。第2層29Bは、第1のヨーク部分32の第1層32Aと連結層33の間を通過するように延びる部分を含んでいる。また、第2層29Bは、第1層29Aのコイル接続部29Eに電気的に接続されたコイル接続部29Sを有している。コイル接続部29Sは、絶縁層31(
図3参照)を貫通してコイル接続部29Eに電気的に接続されている。
図5および
図6に示した例では、第1層29Aと第2層29Bは、直列に接続されている。
【0065】
次に、
図2を参照して、プラズモンジェネレータ21の形状の一例について説明する。プラズモンジェネレータ21は、下面であるプラズモン励起部21aと、上面21bと、媒体対向面60に配置された前端面21cと、その反対側の後端面21dと、2つの側面21e,21fとを有している。プラズモン励起部21aは、コア18のエバネッセント光発生面18bに対して所定の間隔をもって対向している。クラッド層20は、エバネッセント光発生面18bとプラズモン励起部21aとの間に介在している。媒体対向面60に平行なプラズモンジェネレータ21の断面の形状は、例えば矩形である。
【0066】
前端面21cは、プラズモン励起部21aの前端に位置する近接場光発生部21gを有している。主磁極27の第1の端面27aと近接場光発生部21gは、記録媒体80の進行方向について互いに異なる位置に配置されている。本実施の形態では、第1の端面27aは、近接場光発生部21gに対して、記録媒体80の進行方向の前側に配置されている。また、近接場光発生部21gは、第1の端面27aとシールド15の第2の端面15aの間に配置されている。近接場光発生部21gは、後で説明する原理によって近接場光を発生する。
【0067】
また、
図2に示したように、プラズモンジェネレータ21は、媒体対向面60の近傍に配置された細幅部と、この細幅部よりも媒体対向面60から遠い位置に配置された幅広部とを備えている。細幅部は、媒体対向面60に配置された前端面を有している。細幅部の前端面は、プラズモンジェネレータ21の前端面21cでもある。媒体対向面60および基板1の上面1aに平行な方向(X方向)についての細幅部の幅は、媒体対向面60からの距離によらずに一定であってもよいし、媒体対向面60に近づくに従って小さくなっていてもよい。幅広部は、細幅部に対して前端面21cとは反対側に位置して細幅部に連結されている。幅広部の幅は、細幅部との境界の位置では細幅部における幅と等しく、細幅部から離れるに従って大きくなっている。
【0068】
前端面21cの幅(トラック幅方向(X方向)の寸法)は、媒体対向面60における細幅部の幅によって規定される。前端面21cの幅は、例えば5〜40nmの範囲内である。また、前端面21cの高さ(Z方向の寸法)は、媒体対向面60における細幅部の高さによって規定される。前端面21cの高さは、例えば5〜40nmの範囲内である。
【0069】
次に、
図3および
図5を参照して、主磁極27の形状の一例について説明する。
図3に示したように、主磁極27は、第1の端面27aの他に、第1の端面27aとは反対側の後端面27bと、下面27cとを有している。下面27cは、媒体対向面60に近い順に配置された第1の平坦部分、傾斜部分および第2の平坦部分を含んでいる。傾斜部分における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面60から離れるに従って大きくなっている。第1および第2の平坦部分は、実質的に媒体対向面60に垂直な方向に延在している。
【0070】
また、
図5に示したように、主磁極27は、第1の端面27aとその反対側の端部とを有する細幅部27Aと、細幅部27Aの端部に接続された幅広部27Bとを含んでいる。幅広部27Bのトラック幅方向(X方向)の幅は、細幅部27Aのトラック幅方向の幅よりも大きい。細幅部27Aのトラック幅方向の幅は、媒体対向面60からの距離によらずにほぼ一定である。幅広部27Bのトラック幅方向の幅は、細幅部27Aとの境界位置では細幅部27Aのトラック幅方向の幅と等しく、媒体対向面60から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。媒体対向面60に垂直な方向についての細幅部27Aの長さは、例えば0〜0.3μmの範囲内である。この長さが0の場合は、細幅部27Aがなく、幅広部27Bが第1の端面27aを有する。
【0071】
主磁極27の下面27cとコア18のエバネッセント光発生面18bとの間の距離は、媒体対向面60から離れるに従って大きくなっている。これにより、本実施の形態によれば、コア18を伝搬する光の一部が主磁極27に吸収されることを防止することができると共に、プラズモン励起部21aに励起された表面プラズモンの一部が主磁極27に吸収されることを防止することができる。
【0072】
次に、
図1、
図4および
図5を参照して、ヒートシンク40について詳しく説明する。ヒートシンク40は、それぞれ媒体対向面60に配置された端面を有する、少なくとも1つの第1の部分と少なくとも1つの第2の部分とを有している。少なくとも1つの第1の部分は、主磁極27のトラック幅方向(X方向)の外側に、主磁極27に対して間隔を開けて配置されている。少なくとも1つの第2の部分の少なくとも一部は、少なくとも1つの第1の部分と主磁極27との間に配置されている。
【0073】
図1、
図4および
図5に示したように、本実施の形態では、ヒートシンク40の少なくとも1つの第1の部分は、2つの第1の部分41A,41Bである。この第1の部分41A,41Bは、主磁極27のトラック幅方向の両側に、それぞれ主磁極27に対して間隔を開けて配置されている。
図4に示したように、第1の部分41A,41Bは、それぞれ、媒体対向面60に配置された端面41Aa,41Baを有している。
図5に示したように、媒体対向面60に垂直な方向についての第1の部分41A,41Bの各々の長さは、同方向についての主磁極27の長さと等しい。
【0074】
また、
図1、
図4および
図5に示したように、本実施の形態では、ヒートシンク40の少なくとも1つの第2の部分は、2つの第2の部分42A,42Bである。第2の部分42A,42Bは、それぞれ、少なくとも一部が第1の部分41A,41Bと主磁極27との間に配置されている。本実施の形態では特に、第2の部分42A,42Bは、それぞれ、全体が第1の部分41A,41Bと主磁極27との間に配置されている。
図4に示したように、第2の部分42A,42Bは、それぞれ、媒体対向面60に配置された端面42Aa,42Baを有している。
【0075】
図1および
図4に示したように、第2の部分42Aは、主磁極27と第1の部分41Aとの間に形成された第1の溝に配置され、主磁極27と第1の部分41Aに接している。本実施の形態では、第2の部分42Aは、第1の溝を完全には埋めていない。また、第2の部分42Bは、主磁極27と第1の部分41Bとの間に形成された第2の溝に配置され、主磁極27と第1の部分41Bに接している。本実施の形態では、第2の部分42Bは、第2の溝を完全には埋めていない。また、本実施の形態では、主磁極27、第1の部分41A,41Bおよび第2の部分42A,42Bのそれぞれの上面は、同一平面上に位置している。
【0076】
主磁極27と、第1の部分41A,41Bは、いずれも磁性金属によって形成されている。この磁性金属は、Fe,Co,Niのうちの1つ以上の元素を含む合金であることが好ましい。このような合金としては、例えば、NiFe、CoFe、CoNiFeが挙げられる。また、主磁極27を構成する磁性金属と、第1の部分41A,41Bを構成する磁性金属は、同じであってもよい。
【0077】
第2の部分42A,42Bは、非磁性金属によって形成されている。この非磁性金属は、Au,Ag,Al,Cu,Mo,W,Ir,Ru,Rh,Cr,Pd,Ptのいずれかであってもよい。これらの金属は、代表的な磁性金属であるFeの熱伝導率と同等かそれより大きい熱伝導率を有し、ヒートシンク40の一部である第2の部分42A,42Bの材料に適している。
【0078】
第2の部分42A,42Bは、例えば、主磁極27および第1の部分41A,41Bを形成した後に、第1および第2の溝の深さよりも小さい厚みであって第1および第2の溝のX方向についての最大の幅の1/2よりも小さい厚みの非磁性金属膜を形成することによって形成することができる。なお、2つの第2の部分42A,42Bは、第1および第2の溝を完全に埋めていてもよい。このような態様の第2の部分42A,42Bは、例えば、主磁極27および2つの第1の部分41A,41Bを形成した後に、第1および第2の溝のX方向についての最大の幅の1/2程度の厚みの非磁性金属膜を形成することによって形成することができる。
【0079】
次に、本実施の形態における近接場光発生の原理と、近接場光を用いた熱アシスト磁気記録の原理について詳しく説明する。図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光はコア18に入射される。
図3に示したように、レーザ光50は、コア18内を媒体対向面60に向けて伝搬して、プラズモンジェネレータ21の近傍に達する。コア18のエバネッセント光発生面18bは、コア18を伝搬するレーザ光50に基づいてエバネッセント光を発生する。すなわち、エバネッセント光発生面18bにおいてレーザ光50が全反射することによって、エバネッセント光発生面18bは、クラッド層20にしみ出すエバネッセント光を発生する。プラズモンジェネレータ21では、プラズモン励起部21aにおいて、上記エバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンが近接場光発生部21gに伝搬され、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部21gより近接場光を発生する。
【0080】
近接場光発生部21gより発生された近接場光は、記録媒体80に向けて照射され、記録媒体80の表面に達し、記録媒体80の磁気記録層の一部を加熱する。これにより、その磁気記録層の一部の保磁力が低下する。熱アシスト磁気記録では、このようにして保磁力が低下した磁気記録層の一部に対して、主磁極27より発生される記録磁界を印加することによってデータの記録が行われる。
【0081】
次に、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッド特有の作用および効果について説明する。本実施の形態では、主磁極27の周囲にヒートシンク40が設けられている。これにより、本実施の形態によれば、プラズモンジェネレータ21が発生する熱に起因した主磁極27の温度上昇を抑制することができ、その結果、主磁極27が腐食することを防止することができる。
【0082】
ところで、主磁極27用のヒートシンクを非磁性金属のみによって構成すると、磁性金属よりなる主磁極27の周囲に、主磁極27とは材料が異なるヒートシンクが広範囲にわたって存在することになる。この場合、ヒートシンクに大きな応力が発生して、ヒートシンクが剥がれたり、ヒートシンクの近傍に存在するプラズモンジェネレータ21が損傷したりするおそれがある。
【0083】
これに対し、本実施の形態では、ヒートシンク40は、磁性金属よりなる2つの第1の部分41A,41Bと、非磁性金属よりなる2つの第2の部分42A,42Bを有している。これより、本実施の形態によれば、ヒートシンクを非磁性金属のみによって構成する場合に比べて、ヒートシンク40に用いられる非磁性金属の量を少なくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、ヒートシンク40が剥がれたり、ヒートシンク40の近傍に存在するプラズモンジェネレータ21が損傷したりすることを防止することができる。
【0084】
また、第2の部分42A,42Bを構成する非磁性金属としては、特に熱伝導率が大きいものが用いられる。このような非磁性金属は、熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、ヒートシンク40だけに用いられる可能性がある。また、特に熱伝導率が大きい非磁性金属としては、Au、Ag等の貴金属がある。そのため、このような非磁性金属、特に貴金属を用いて、ヒートシンクの全体を構成すると、熱アシスト磁気記録ヘッドのコストが増加する。
【0085】
一方、磁性金属は、主磁極27やシールド15や帰磁路部Rを構成するために用いられるように、熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて多く用いられる。そのため、熱アシスト磁気記録ヘッドにおける磁性金属の使用量が増えても、コストの増加はほとんどない。
【0086】
本実施の形態では、前述のように、ヒートシンク40を、磁性金属よりなる第1の部分41A,41Bと非磁性金属よりなる第2の部分42A,42Bとによって構成しているため、ヒートシンクを非磁性金属のみによって構成する場合に比べて、ヒートシンク40に用いられる非磁性金属の量を少なくすることができる。その結果、本実施の形態によれば、熱アシスト磁気記録ヘッドのコストの増加を抑制することができる。
【0087】
また、ヒートシンクを非磁性金属のみによって構成する場合、非磁性金属の量を少なくすると、ヒートシンクの体積および端面の面積が小さくなり、ヒートシンクの放熱性能が低下して、主磁極27の冷却効率が低下してしまう。これに対し、本実施の形態では、非磁性金属よりなる第2の部分42A,42Bの体積および端面42Aa,42Baの面積が小さくても、第1の部分41A,41Bと第2の部分42A,42Bの合計の体積ならびに第1の部分41A,41Bの端面41Aa,41Baと第2の部分42A,42Bの端面42Aa,42Baの合計の面積を大きくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、ヒートシンク40全体の放熱性能を向上させて、主磁極27の冷却効率を向上させることができる。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態によれば、主磁極27用のヒートシンクを非磁性金属のみによって構成することによる問題の発生を抑制することができる。
【0089】
また、本実施の形態では、第2の部分42A,42Bは、主磁極27と第1の部分41A,41Bとの間に形成された第1および第2の溝を完全には埋めていない。これによっても、本実施の形態によれば、ヒートシンク40に用いられる非磁性金属の量を少なくすることができ、その結果、熱アシスト磁気記録ヘッドのコストの増加を抑制することができる。
【0090】
[第2の実施の形態]
次に、
図7ないし
図12を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドについて説明する。
図7は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
図8は、
図7における一部を示す斜視図である。
図9は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
図10は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図11は、本実施の形態におけるコイルの第1層を示す平面図である。
図12は、本実施の形態におけるコイルの第2層を示す平面図である。
【0091】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、シールド15の代わりに、磁性材料よりなるシールド51を備えている。また、本実施の形態では、第1の実施の形態における帰磁路部Rの構成要素のうち、第1のヨーク部分32以外の構成要素、すなわち、リターン磁極層11、連結層12、連結部13A,13Bおよび連結層28,33が設けられていない。代わりに、本実施の形態における帰磁路部Rは、第2のヨーク部分55Aと、第1の柱状部分56と、第2の柱状部分59Aと、第3の柱状部分59Bとを含んでいる。また、本実施の形態では、リターン磁極層11の周囲に配置された図示しない絶縁層、絶縁層14,16、2つの第1の部分41A,41Bおよび2つの第2の部分42A,42Bが設けられていない。
【0092】
シールド51は、非磁性層10の上に配置されている。
図8に示したように、シールド51は、媒体対向面60に配置された第2の端面51aと、この第2の端面51aとは反対側の後端面51bと、上面51cとを有している。主磁極27の第1の端面27aとシールド51の第2の端面51aは、記録媒体80の進行方向について互いに異なる位置に配置されている。本実施の形態では、シールド51の第2の端面51aは、主磁極27の第1の端面27aに対して、記録媒体80の進行方向の後側に配置されている。
【0093】
また、シールド51は、中央部分51Aと、この中央部分51Aのトラック幅方向(X方向)の両側に配置された第1の側方部分51Bおよび第2の側方部分51Cとを有している。中央部分51Aにおける媒体対向面60に垂直な方向の長さは、トラック幅方向の位置によらずに一定である。媒体対向面60に垂直な方向についての側方部分51B,51Cのそれぞれの最大の長さは、同方向についての中央部分51Aの長さよりも大きい。
【0094】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、非磁性層10の上においてシールド51の周囲に配置された絶縁層52を備えている。絶縁層52は、例えばアルミナによって形成されている。
【0095】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、磁性層55を備えている。磁性層55は、誘電体層22,25,26および絶縁層23に埋め込まれている。また、磁性層55は、プラズモンジェネレータ21、非磁性金属層24および主磁極27に対して所定の間隔を開けて配置されている。磁性層55は、磁性金属によって形成されている。この磁性金属は、Fe,Co,Niのうちの1つ以上の元素を含む合金であることが好ましい。
【0096】
図8に示したように、磁性層55は、媒体対向面60に向いた前端面55aと、下面55bと、上面55cとを有している。磁性層55の前端面55aは、第1の部分55a1と、第1の部分55a1のトラック幅方向の両側に位置する第2の部分55a2および第3の部分55a3とを含んでいる。第1の部分55a1は、そのトラック幅方向における中心が最も媒体対向面60から遠くなるように凹んだ形状を有している。第1の部分55a1は、プラズモンジェネレータ21、非磁性金属層24、および主磁極27の一部を囲むように配置されている。第2および第3の部分55a2,55a3は、媒体対向面60に配置され、プラズモンジェネレータ21の近接場光発生部21gのトラック幅方向の両側に位置する。
【0097】
磁性層55の下面55bは、媒体対向面60に近い順に配置された第1の平坦部分、傾斜部分および第2の平坦部分を含んでいる。傾斜部分における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面60から離れるに従って大きくなっている。第1および第2の平坦部分は、実質的に媒体対向面60に垂直な方向に延在している。第2の平坦部分は、誘電体層25の上面の上に配置されている。磁性層55の上面55cは、主磁極27の上面に対して、記録媒体80の進行方向の後側に配置されている。
【0098】
磁性層55は、主要部分である第2のヨーク部分55Aを含んでいる。磁性層55は、更に、第2のヨーク部分55Aに連結され、媒体対向面60の近傍においてプラズモンジェネレータ21のトラック幅方向の両側に配置された2つの連結部55B,55Cを含んでいる。
図7および
図8では、第2のヨーク部分55Aと連結部55B,55Cとの境界を点線で示している。連結部55Bは、前端面55aの第2の部分55a2を含んでいる。連結部55Cは、前端面55aの第3の部分55a3を含んでいる。
【0099】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面60の近傍においてコア18のトラック幅方向の両側に配置された2つの磁性層53,54を備えている。磁性層53,54は、クラッド層17,19,20を貫通して、シールド51と磁性層55とを接続している。磁性層53,54は、それぞれ磁性金属によって形成されている。この磁性金属は、Fe,Co,Niのうちの1つ以上の元素を含む合金であることが好ましい。
【0100】
磁性層53,54は、それぞれ、媒体対向面60に配置された前端面と、上面と、下面とを有している。磁性層53の下面は、シールド51の上面51cのうち、第1の側方部分51Bに属する部分に接している。磁性層54の下面は、シールド51の上面51cのうち、第2の側方部分51Cに属する部分に接している。磁性層53の上面は、磁性層55の下面55bのうち、連結部55Bに属する部分に接している。磁性層54の上面は、磁性層55の下面55bのうち、連結部55Cに属する部分に接している。
【0101】
第2の柱状部分59Aは、磁性層53と、磁性層55の連結部55Bとによって構成されている。第3の柱状部分59Bは、磁性層54と、磁性層55の連結部55Cとによって構成されている。
図7、
図8および
図10に示したように、第2の柱状部分59Aと第3の柱状部分59Bは、プラズモンジェネレータ21および主磁極27のトラック幅方向の両側に、それぞれプラズモンジェネレータ21および主磁極27に対して間隔を開けて配置されている。
【0102】
前述のように、磁性層53〜55は、いずれも磁性金属によって形成されていることから、第2および第3の柱状部分59A,59Bも、それぞれ磁性金属によって形成されている。本実施の形態では、第2および第3の柱状部分59A,59Bは、第1の実施の形態における2つの第1の部分41A,41Bの代わりに、ヒートシンク40の2つの第1の部分を構成する。
図10に示したように、第2および第3の柱状部分59A,59Bは、それぞれ媒体対向面60に配置された端面59Aa,59Baを有している。主磁極27を構成する磁性金属と、第2および第3の柱状部分59A,59Bを構成する磁性金属(磁性層53〜55を構成する磁性金属)は、同じであってもよい。
【0103】
本実施の形態におけるヒートシンク40は、第1の実施の形態における2つの第2の部分42A,42Bの代わりに、2つの第2の部分43A,43Bを有している。第2の部分43A,43Bは、それぞれ、少なくとも一部が第2および第3の柱状部分59A,59Bと主磁極27との間に配置されている。
図10に示したように、第2の部分43A,43Bは、それぞれ、媒体対向面60に配置された端面43Aa,43Baを有している。第2の部分43A,43Bは、それぞれ、第1の実施の形態における第2の部分42A,42Bと同じ材料によって形成されている。
【0104】
図7および
図10に示したように、第2の部分43Aの一部は、主磁極27と第2の柱状部分59Aとの間に形成された第1の溝に配置され、主磁極27と第2の柱状部分59Aに接している。この第2の部分43Aの一部は、第1の溝を完全に埋めている。第2の部分43Aの他の一部は、第2の柱状部分59Aの上面(磁性層55の上面55c)の上に乗り上げている。また、第2の部分43Bの一部は、主磁極27と第3の柱状部分59Bとの間に形成された第2の溝に配置され、主磁極27と第3の柱状部分59Bに接している。この第2の部分43Bの一部は、第2の溝を完全に埋めている。第2の部分43Bの他の一部は、第3の柱状部分59Bの上面(磁性層55の上面55c)の上に乗り上げている。
【0105】
第1の柱状部分56は、記録媒体80の進行方向において互いに反対側に位置する第1の端部56aと第2の端部56bを有している。本実施の形態では、第1の端部56aは、第1の柱状部分56における記録媒体80の進行方向の前側(トレーリング側)の端に位置し、第2の端部56bは、第1の柱状部分56における記録媒体80の進行方向の後側(リーディング側)の端に位置している。
【0106】
また、第1の柱状部分56は、第1層57と第2層58とを有している。第1層57は、第2の端部56bを含み、主磁極27よりも媒体対向面60からより遠い位置において磁性層55の上面55cの一部の上に配置されている。第2層58は、第1の端部56aを含み、第1層57の上に配置されている。第1層57は、誘電体層26および絶縁層30に埋め込まれている。第2層58は、絶縁層31,34に埋め込まれている。
【0107】
主磁極27の上面と第1の柱状部分56の第1層57の上面は、同一平面上に位置している。第1のヨーク部分32の第1層32Aの上面と第1の柱状部分56の第2層58の上面は、同一平面上に位置している。
【0108】
本実施の形態では、コイル29の第1層29Aは、第1の柱状部分56の第1層57の周りに約3回巻かれている。コイル29の第2層29Bは、第1の柱状部分56の第2層58の周りに約3回巻かれている。第1のヨーク部分32の第2層32Bは、第1のヨーク部分32の第1層32A、第1の柱状部分56の第2層58および絶縁層35の上に配置されている。
【0109】
以上説明したように、本実施の形態における帰磁路部Rは、第1のヨーク部分32と、第2のヨーク部分55Aと、第1の柱状部分56と、第2の柱状部分59Aと、第3の柱状部分59Bとを含んでいる。
図8および
図9に示したように、第1のヨーク部分32、第2のヨーク部分55Aおよび第1の柱状部分56は、コア18に対して、記録媒体80の進行方向における同じ側に配置されている。本実施の形態では、第1のヨーク部分32、第2のヨーク部分55Aおよび第1の柱状部分56は、コア18に対して、記録媒体80の進行方向の前側(トレーリング側)に位置している。第1の柱状部分56は、第1の端部56aと第2の端部56bを有し、且つ媒体対向面60から離れた位置にある。
図7および
図8に示したように、第2および第3の柱状部分59A,59Bは、第1の柱状部分56よりも、媒体対向面60により近い位置にある。
【0110】
第1のヨーク部分32は、主磁極27と、第1の柱状部分56の第1の端部56aとを接続している。第2の柱状部分59Aと第3の柱状部分59Bは、プラズモンジェネレータ21のトラック幅方向の両側に配置されて、シールド51に接続されている。第2のヨーク部分55Aは、第1の柱状部分56の第2の端部56bに接続され、且つ第2および第3の柱状部分59A,59Bを介してシールド51に接続されている。
【0111】
シールド51は、第1の実施の形態で説明したシールド15の機能と同様の機能を有している。すなわち、シールド51は、熱アシスト磁気記録ヘッドの外部から熱アシスト磁気記録ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む機能と、主磁極27の第1の端面27aより発生されて記録媒体80の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体80に達することを阻止する機能と、主磁極27の第1の端面27aより発生されて、記録媒体80の一部を磁化した磁束を、主磁極27に還流させる機能を有している。
【0112】
次に、
図11および
図12を参照して、本実施の形態におけるコイル29の形状および配置について詳しく説明する。
図11に示したように、コイル29の第1層29Aは、第1の柱状部分56の第1層57の周りに約3回巻かれている。また、第1層29Aは、第1の実施の形態で説明したコイル接続部29Eの他に、第1の柱状部分56の第1層57と媒体対向面60との間に配置されて媒体対向面60に平行に直線的に延びる3つの導体部分(以下、直線的導体部分と言う。)29A1,29A2,29A3を有している。直線的導体部分29A1〜29A3は、媒体対向面60側からこの順に、媒体対向面60に垂直な方向に並んでいる。直線的導体部分29A1〜29A3は、それぞれ、媒体対向面60に垂直な方向(Y方向)について一定の幅を有している。
図11では、直線的導体部分29A1〜29A3のそれぞれのトラック幅方向(X方向)の両端の位置を点線で示している。これは、他の直線的導体部分を示す他の図においても同様である。
【0113】
図12に示したように、コイル29の第2層29Bは、第1の柱状部分56の第2層58の周りに約3回巻かれている。また、第2層29Bは、第1の実施の形態で説明したコイル接続部29Sの他に、第1の柱状部分56の第2層58と媒体対向面60との間に配置された3つの直線的導体部分29B1,29B2,29B3を有している。直線的導体部分29B1〜29B3は、それぞれ、媒体対向面60に垂直な方向(Y方向)について一定の幅を有している。
【0114】
次に、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッド特有の作用および効果について説明する。本実施の形態では、プラズモンジェネレータ21の近接場光発生部21gは、主磁極27の第1の端面27aとシールド51の第2の端面51aの間に配置されている。コア18の一部は、プラズモンジェネレータ21の近傍に位置する。コア18と帰磁路部Rは、互いに接触することなく横切るように構成されている。より具体的に説明すると、帰磁路部Rのうち第2および第3の柱状部分59A,59Bは、コア18に接触することなく、コア18のトラック幅方向の両側に配置されている。
【0115】
本実施の形態では、第1のヨーク部分32、第2のヨーク部分55Aおよび第1の柱状部分56が、コア18に対して、記録媒体80の進行方向における同じ側に配置され、コイル29は、第1の柱状部分56の周りに巻回されている。本実施の形態では、第2および第3の柱状部分59A,59Bにおけるトラック幅方向外側の端部同士の距離に関わらず、第1の柱状部分56のトラック幅方向の幅を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、コイル29の全長を短くすることができる。
【0116】
また、高周波帯域における記録特性を向上させるためには、主磁極27および帰磁路部Rによって形成される磁路の長さを短くすることが望ましい。そのためには、第1の柱状部分56を、媒体対向面60に近づけることが効果的である。本実施の形態では、コイル29は、トラック幅方向の幅が小さい第1の柱状部分56の周りに巻回されている。そのため、第1の柱状部分56を媒体対向面60に近づけても、第1の柱状部分56の第1層57と媒体対向面60との間に配置されたコイル29の第1層29Aの直線的導体部分29A1〜29A3と、第1の柱状部分56の第2層58と媒体対向面60との間に配置されたコイル29の第2層29Bの直線的導体部分29B1〜29B3が長くなることを防止できる。これにより、本実施の形態によれば、コイル29の抵抗値が大きくなりすぎることなく、第1の柱状部分56を媒体対向面60に近づけることが可能になる。以上のことから、本実施の形態によれば、磁路の長さを短くしながら、コイル29の全長を短くすることが可能になる。その結果、本実施の形態によれば、高周波帯域における記録特性に優れ、且つコイル29の抵抗値が小さい熱アシスト磁気ヘッドを実現することができる。
【0117】
また、本実施の形態によれば、コイル29の抵抗値を小さくすることによって、コイル29の発熱量を少なくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、コイル29の周辺の要素が膨張して、媒体対向面60の一部が記録媒体80に向けて突出し、記録媒体80に衝突しやすくなるという問題が発生することを防止することができる。また、本実施の形態によれば、媒体対向面60と記録媒体80との距離を小さくして、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0118】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0119】
[第3の実施の形態]
次に、
図13ないし
図15を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドについて説明する。
図13は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
図14は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
図15は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【0120】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成は、以下の点で第2の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドでは、磁性層55は、絶縁層30に埋め込まれている。磁性層55の下面55bのうち、第2の平坦部分は、誘電体層26の上面の上に配置されている。主磁極27の上面と磁性層55の上面55cは、同一平面上に位置している。
【0121】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、媒体対向面60の近傍においてプラズモンジェネレータ21のトラック幅方向の両側に配置された2つの磁性層61,62を備えている。磁性層61は、誘電体層22,25,26および絶縁層23を貫通して、磁性層53と磁性層55とを接続している。磁性層62は、誘電体層22,25,26および絶縁層23を貫通して、磁性層54と磁性層55とを接続している。磁性層61,62は、それぞれ磁性金属によって形成されている。この磁性金属は、Fe,Co,Niのうちの1つ以上の元素を含む合金であることが好ましい。
【0122】
磁性層61,62は、それぞれ、媒体対向面60に配置された前端面と、上面と、下面とを有している。磁性層61の下面は、磁性層53の上面に接している。磁性層62の下面は、磁性層54の上面に接している。磁性層61の上面は、磁性層55の下面55bのうち、連結部55Bに属する部分に接している。磁性層62の上面は、磁性層55の下面55bのうち、連結部55Cに属する部分に接している。
【0123】
本実施の形態では、第2の柱状部分59Aは、磁性層53,61と、磁性層55の連結部55Bとによって構成されている。第3の柱状部分59Bは、磁性層54,62と、磁性層55の連結部55Cとによって構成されている。
【0124】
また、本実施の形態におけるヒートシンク40は、第2の実施の形態における2つの第2の部分43A,43Bの代わりに、2つの第2の部分44A,44Bを有している。第2の部分44A,44Bは、それぞれ、少なくとも一部が第2および第3の柱状部分59A,59Bと主磁極27との間に配置されている。本実施の形態では特に、第2の部分44A,44Bは、それぞれ、全体が第2および第3の柱状部分59A,59Bと主磁極27との間に配置されている。
図15に示したように、第2の部分44A,44Bは、それぞれ、媒体対向面60に配置された端面44Aa,44Baを有している。第2の部分44A,44Bは、それぞれ、第2の実施の形態における第2の部分43A,43Bと同じ材料によって形成されている。
【0125】
図13および
図15に示したように、第2の部分44Aは、主磁極27と第2の柱状部分59Aとの間に形成された第1の溝に配置され、主磁極27と第2の柱状部分59Aに接している。本実施の形態では、第2の部分44Aは、第1の溝のうちの媒体対向面60の近傍の一部を埋め、第1の溝を完全には埋めていない。また、第2の部分44Bは、主磁極27と第3の柱状部分59Bとの間に形成された第2の溝に配置され、主磁極27と第3の柱状部分59Bに接している。本実施の形態では、第2の部分44Bは、第2の溝のうちの媒体対向面60の近傍の一部を埋め、第2の溝を完全には埋めていない。なお、2つの第2の部分44A,44Bは、第1および第2の溝を完全に埋めていてもよい。
【0126】
また、本実施の形態では、第1のヨーク部分32の第1層32Aと第1の柱状部分56の第1層57の上面は、同一平面上に位置している。コイル29の第1層29Aは、絶縁層31の上に配置され、第1の柱状部分56の第1層57の周りに約3回巻かれている。絶縁層34は、コイル29の第1層29Aの巻線間、ならびに第1のヨーク部分32の第1層32A、第1の柱状部分56の第1層57およびコイル29の第1層29Aの周囲に配置されている。絶縁層35は、コイル29の第1層29Aおよび絶縁層34の上に配置されている。
【0127】
また、本実施の形態では、第1のヨーク部分32は、第1層32Aおよび第2層32Bに加えて、第3層32Cを有している。第3層32Cは、第1層32Aの上に配置されている。第3層32Cは、媒体対向面60に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面60から離れた位置に配置されている。第3層32Cの上面と第1の柱状部分56の第2層58の上面は、同一平面上に位置している。コイル29の第2層29Bは、絶縁層35の上に配置され、第1の柱状部分56の第2層58の周りに約3回巻かれている。
【0128】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、絶縁層38,39を備えている。絶縁層38は、コイル29の第2層29Bの巻線間、ならびに第1のヨーク部分32の第3層32C、第1の柱状部分56の第2層58およびコイル29の第2層29Bの周囲に配置されている。絶縁層39は、コイル29の第2層29Bおよび絶縁層30の上に配置されている。絶縁層38,39は、例えばアルミナによって形成されている。本実施の形態では、第1のヨーク部分32の第2層32Bは、第1のヨーク部分32の第3層32C、第1の柱状部分56の第2層58および絶縁層39の上に配置されている。
【0129】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
【0130】
[第4の実施の形態]
次に、
図16ないし
図20を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドについて説明する。
図16は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
図17は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す正面図である。
図18は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
図19は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図20は、熱アシスト磁気記録ヘッドの一部を示す平面図である。
【0131】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドでは、プラズモンジェネレータ21よりも記録媒体80の進行方向の後側の部分の構成が、第2の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、シールド51の代わりに、シールド70を備えている。シールド70は、コア18の前端面18aの近傍に配置されている。シールド70は、磁性金属によって構成されている。
【0132】
以下、
図16、
図17および
図20を参照して、シールド70およびコア18の形状および配置について詳しく説明する。シールド70は、媒体対向面60に配置された第2の端面70aと、その反対側の後端面70bと、上面70cと、下面とを有している。また、シールド70は、トラック幅方向(X方向)の寸法が、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)の寸法よりも大きい形状を有している。
【0133】
主磁極27の第1の端面27aとシールド70の第2の端面70aは、記録媒体80の進行方向について互いに異なる位置に配置されている。本実施の形態では、第2の端面70aは、第1の端面27aに対して、記録媒体80の進行方向の後側に配置されている。プラズモンジェネレータ21の近接場光発生部21gは、第1の端面27aと第2の端面70aの間に配置されている。ここで、
図17に示したように、第1の端面27aと第2の端面70aとの間の距離を記号Dで表す。距離Dは、50〜300nmの範囲内であることが好ましく、50〜100nmの範囲内であることがより好ましい。
【0134】
図17に示したように、コア18の前端面18aは、媒体対向面60から離れた位置に配置された第1の部分18a1と、媒体対向面60に配置された第2の部分18a2とを含んでいる。第2の部分18a2は、第1の部分18a1に対して記録媒体80の進行方向の後側に配置されている。また、第1の部分18a1と第2の部分18a2の間には、段差が形成されている。なお、前端面18aは、その全体が媒体対向面60から離れた位置に配置されていてもよい。
【0135】
また、
図17に示したように、前端面18aは、記録媒体80の進行方向(Z方向)において互いに反対側に位置する第1の端縁E1および第2の端縁E2を有している。第1の端縁E1は、第2の端縁E2よりも、近接場光発生部21gにより近い位置にある。第1の端縁E1は、第1の部分18a1の記録媒体80の進行方向の前側の端部でもある。第2の端縁E2は、第2の部分18a2の記録媒体80の進行方向の後側の端部でもある。
【0136】
図17において、点線は、第1の端縁E1と第2の端縁E2の中間の位置を示している。以下、この中間の位置を記号Cで表す。また、前端面18aを、中間の位置Cから第1の端縁E1までの第1の領域R1と、中間の位置Cから第2の端縁E2までの第2の領域R2に分ける。第1の領域R1には、第1の部分18a1と、第2の部分18a2の一部が含まれる。第2の領域R2には、第2の部分18a2の残りの部分が含まれる。
【0137】
シールド70は、媒体対向面60に垂直な方向(Y方向)から見て、コア18の前端面18aのうちの第1の領域R1にのみオーバーラップしている。シールド70は、特に、第1の領域R1のうちの第1の部分18a1にのみオーバーラップしている。シールド70の後端面70bの一部は、第1の部分18a1に対向している。なお、後端面70bの一部は、第1の部分18a1に接していてもよいし、接していなくてもよい。後者の場合には、後端面70bの一部と第1の部分18a1の間にクラッドの一部が介在していてもよい。
【0138】
シールド70は、媒体対向面60に垂直な方向から見て第1の領域R1(第1の部分18a1)にオーバーラップするオーバーラップ部分71と、オーバーラップ部分71のトラック幅方向(X方向)の両側に配置された第1の非オーバーラップ部分72と第2の非オーバーラップ部分73を有している。
図20では、オーバーラップ部分71と第1および第2の非オーバーラップ部分72,73の境界を点線で示している。オーバーラップ部分71における媒体対向面60に垂直な方向の長さは、トラック幅方向の位置によらずに一定である。
【0139】
第1および第2の非オーバーラップ部分72,73は、媒体対向面60に垂直な方向から見て、コア18の前端面18aのトラック幅方向の両側に配置されている。従って、第1および第2の非オーバーラップ部分72,73は、前端面18aにオーバーラップしていない。媒体対向面60に垂直な方向についての第1および第2の非オーバーラップ部分72,73のそれぞれの最大の長さは、同方向についてのオーバーラップ部分71の長さよりも大きい。
【0140】
シールド70の上面70cとコア18のエバネッセント光発生面18bは、同一平面上に位置している。なお、上面70cとエバネッセント光発生面18bは、記録媒体80の進行方向(Z方向)について異なる位置に配置されていてもよい。プラズモンジェネレータ21のプラズモン励起部21aは、上面70cおよびエバネッセント光発生面18bに対して所定の間隔をもって対向している。上面70cおよびエバネッセント光発生面18bの各々とプラズモン励起部21aとの間には、クラッド層20の一部が介在している。
【0141】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドでは、非磁性層10、絶縁層52および磁性層53,54が設けられていない。中間シールド層9の上には、クラッド層17が配置されている。磁性層55は、クラッド層20、誘電体層22,25,26および絶縁層23に埋め込まれている。
【0142】
第2の実施の形態で説明したように、帰磁路部Rは、第1のヨーク部分32と、第2のヨーク部分55Aと、第1の柱状部分56と、第2の柱状部分59Aと、第3の柱状部分59Bとを含んでいる。本実施の形態では、第2の柱状部分59Aは、磁性層55の連結部55Bのみによって構成されている。第3の柱状部分59Bは、磁性層55の連結部55Cのみによって構成されている。
【0143】
図16、
図19および
図20に示したように、第2の柱状部分59Aと第3の柱状部分59Bは、プラズモンジェネレータ21のトラック幅方向の両側に配置されて、シールド70に接続されている。第2のヨーク部分55Aは、第1の柱状部分56の第2の端部56bに接続され、且つ第2および第3の柱状部分59A,59Bを介してシールド70に接続されている。
【0144】
第2の柱状部分59Aは、第1の非オーバーラップ部分72に接続されている。具体的には、磁性層55の下面55bのうち、第2の柱状部分59Aを構成する連結部55Bに属する部分は、シールド70の上面70cのうち、第1の非オーバーラップ部分72に属する部分に接している。第3の柱状部分59Bは、第2の非オーバーラップ部分73に接続されている。具体的には、磁性層55の下面55bのうち、第3の柱状部分59Bを構成する連結部55Cに属する部分は、シールド70の上面70cのうち、第2の非オーバーラップ部分73に属する部分に接している。
【0145】
次に、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッド特有の作用および効果について説明する。シールド70は、第2の実施の形態で説明したシールド51の機能と同様の機能を有している。すなわち、シールド70は、熱アシスト磁気記録ヘッドの外部から熱アシスト磁気記録ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む機能と、主磁極27の第1の端面27aより発生されて記録媒体80の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体80に達することを阻止する機能と、主磁極27の第1の端面27aより発生されて、記録媒体80の一部を磁化した磁束を、主磁極27に還流させる機能を有している。
【0146】
本実施の形態では、シールド70は、媒体対向面60に垂直な方向から見て、コア18の前端面18aのうち、主磁極27により近い第1の領域R1にのみオーバーラップしている。これにより、本実施の形態によれば、第2の実施の形態に比べて、主磁極27の第1の端面27aとシールド70の第2の端面70aとを近づけることができる。具体的には、本実施の形態によれば、容易に、距離Dが50〜300nmの範囲内となるように、第1の端面27aと第2の端面70aとを近づけることが可能である。その結果、本実施の形態によれば、シールド70の機能を効果的に発揮させて、記録磁界強度の勾配を大きくすることが可能になる。なお、距離Dの下限値50nmは、第1の端面27aと第2の端面70aの間に近接場光発生部21gを配置するために必要な大きさである。記録磁界強度の勾配を大きくするためには、距離Dは小さい方がよい。これらのことから、距離Dは、50〜300nmの範囲内であることが好ましく、50〜100nmの範囲内であることがより好ましい。
【0147】
また、本実施の形態では、プラズモンジェネレータ21の近接場光発生部21gは、媒体対向面60において、第1の端面27aと第2の端面70aとの間に配置されている。これにより、近接場光発生部21gの近傍において、記録磁界強度の勾配が大きな記録磁界を発生させることができる。これらのことから、本実施の形態によれば、線記録密度を高めることが可能になる。
【0148】
なお、シールド70とコア18の前端面18aが広い面積にわたって対向すると、コア18を伝搬する光50が前端面18aを通過してシールド70に入射し、シールド70が加熱されて膨張し、シールド70が記録媒体80に向けて突出し、記録媒体80に衝突しやすくなるという問題が発生する。これを防止するため、媒体対向面60と記録媒体80との距離を大きくすると、オーバーライト特性等の記録特性が劣化したり、エラーレートが大きくなったりするといった問題が発生する。これに対し、本実施の形態では、シールド70は、媒体対向面60に垂直な方向から見て、前端面18aのうちの第1の領域R1にのみオーバーラップしている。すなわち、前端面18aのうち少なくとも第2の領域R2と媒体対向面60との間には、シールド70が存在していない。これにより、本実施の形態によれば、シールド70とコア18の前端面18aが広い面積にわたって対向することがなく、上記の問題が発生することを防止することができる。
【0149】
上記の問題の発生をより確実に防止するために、前端面18aのうち、媒体対向面60に垂直な方向から見てシールド70がオーバーラップする領域は、中間の位置Cよりも第1の端縁E1により近い位置(第1の端縁E1は含まない)から第1の端縁E1までの領域のみであってもよい。
【0150】
また、本実施の形態では、シールド70は、トラック幅方向(X方向)の寸法が、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)の寸法よりも大きい形状を有している。そのため、シールド70が、前端面18aのうちの第1の領域R1にのみオーバーラップしていても、シールド70のトラック幅方向の両側の2つの部分に、第2および第3の柱状部分59A,59Bを接続することが可能である。
【0151】
また、本実施の形態では、プラズモンジェネレータ21のリーディング側であって、近接場光発生部21gの近傍に、磁性金属よりなるシールド70が設けられている。シールド70の上面70cは、プラズモンジェネレータ21のプラズモン励起部21aに近いことから、この上面70cにも表面プラズモンが励起される。そして、近接場光発生部21gの近傍において、プラズモン励起部21a上の表面プラズモンが発生する電気力線と、シールド70の上面70c上の表面プラズモンが発生する電気力線とが互いに結ばれて、近接場光発生部21gの近傍の狭い範囲内で、高密度の電気力線が発生する。これにより、近接場光発生部21gより発生される近接場光の広がりが抑制される。このように、本実施の形態におけるシールド70は、近接場光の広がりを抑制する機能も有する。そして、この機能により、本実施の形態によれば、トラック幅を縮小して、記録密度を高めることが可能になる。
【0152】
また、本実施の形態では、媒体対向面60に垂直な方向についてのシールド70の第1および第2の非オーバーラップ部分72,73のそれぞれの最大の長さは、同方向についてのシールド70のオーバーラップ部分71の長さよりも大きい。これにより、本実施の形態によれば、シールド70の途中で磁束が飽和することを防止しながら、シールド70の前述の機能を高めることができる。
【0153】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
【0154】
[第5の実施の形態]
次に、
図21を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドについて説明する。
図21は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
【0155】
以下、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成が、第4の実施の形態と異なる点について説明する。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドでは、プラズモンジェネレータ21よりも記録媒体80の進行方向の前側の部分の構成が、第3の実施の形態における構成と同じになっている。すなわち、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、第3の実施の形態で説明した2つの磁性層61,62を備えている。本実施の形態では、磁性層61,62は、クラッド層20、誘電体層22,25,26および絶縁層23(
図14および
図15参照)を貫通して、磁性層55とシールド70とを接続している。磁性層61の下面は、シールド70の上面70cのうち、第1の非オーバーラップ部分72に属する部分に接している。磁性層62の下面は、シールド70の上面70cのうち、第2の非オーバーラップ部分73に属する部分に接している。第2の柱状部分59Aは、磁性層61と、磁性層55の連結部55Bとによって構成されている。第3の柱状部分59Bは、磁性層62と、磁性層55の連結部55Cとによって構成されている。
【0156】
また、本実施の形態におけるヒートシンク40は、第4の実施の形態における2つの第2の部分43A,43Bの代わりに、第3の実施の形態で説明した2つの第2の部分44A,44Bを有している。また、本実施の形態では、第1のヨーク部分32は、第1層32Aおよび第2層32Bに加えて、第3の実施の形態で説明した第3層32Cを有している。また、熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、第3の実施の形態における
図14に示した絶縁層38,39を備えている。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおける、プラズモンジェネレータ21よりも記録媒体80の進行方向の前側の部分の構成要素の形状および配置は、第3の実施の形態と同じである。
【0157】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3または第4の実施の形態と同様である。
【0158】
[第6の実施の形態]
次に、
図22ないし
図24を参照して、本発明の第6の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドについて説明する。
図22は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
図23は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
図24は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【0159】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成は、以下の点で第5の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、第1および第2の実施の形態で説明した非磁性層10および絶縁層52と、それぞれ磁性材料よりなるサブシールド76、第4の柱状部分77および第5の柱状部分78とを備えている。サブシールド76の形状および配置は、第2の実施の形態におけるシールド51と同じである。すなわち、サブシールド76は、非磁性層10の上に配置され、媒体対向面60に配置された前端面と、この前端面とは反対側の後端面と、上面とを有している。また、サブシールド76は、中央部分76Aと、この中央部分76Aのトラック幅方向(X方向)の両側に配置された第1の側方部分76Bおよび第2の側方部分76Cとを有している。中央部分76Aにおける媒体対向面60に垂直な方向の長さは、トラック幅方向の位置によらずに一定である。媒体対向面60に垂直な方向についての側方部分76B,76Cのそれぞれの最大の長さは、同方向についての中央部分76Aの長さよりも大きい。
【0160】
第4および第5の柱状部分77,78は、媒体対向面60の近傍においてコア18のトラック幅方向の両側に配置されている。また、第4および第5の柱状部分77,78は、クラッド層17,19を貫通して、シールド70とサブシールド76とを接続している。第4および第5の柱状部分77,78は、それぞれ、媒体対向面60に配置された前端面と、上面と、下面とを有している。第4の柱状部分77の上面は、シールド70の下面のうち、第1の非オーバーラップ部分72(
図20参照)に属する部分に接している。第4の柱状部分77の下面は、サブシールド76の上面のうち、第1の側方部分76Bに属する部分に接している。第5の柱状部分78の上面は、シールド70の下面のうち、第2の非オーバーラップ部分73(
図20参照)に属する部分に接している。第5の柱状部分78の下面は、サブシールド76の上面のうち、第2の側方部分76Cに属する部分に接している。
【0161】
サブシールド76は、第4の実施の形態で説明したシールド70の機能と同様の機能を有している。すなわち、サブシールド76は、熱アシスト磁気記録ヘッドの外部から熱アシスト磁気記録ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む機能と、主磁極27の第1の端面27aより発生されて記録媒体80の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体80に達することを阻止する機能と、主磁極27の第1の端面27aより発生されて、記録媒体80の一部を磁化した磁束を、主磁極27に還流させる機能を有している。また、サブシールド76、第4の柱状部分77および第5の柱状部分78は、シールド70において磁束が飽和することを防止する機能を有している。これにより、本実施の形態によれば、第4の実施の形態で説明したシールド70の機能をより高めることができる。
【0162】
なお、本実施の形態において、プラズモンジェネレータ21よりも記録媒体80の進行方向の前側の部分の構成は、第4の実施の形態における構成と同じであってもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第4または第5の実施の形態と同様である。
【0163】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、主磁極の形状および配置、ならびにヒートシンク40の第1および第2の部分の数、形状および配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。