特許第5932412号(P5932412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932412
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20160526BHJP
   B43K 24/12 20060101ALI20160526BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B43K25/00 C
   B43K24/12
   B43K29/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-55982(P2012-55982)
(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-188922(P2013-188922A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅信
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−164640(JP,U)
【文献】 特開2007−015274(JP,A)
【文献】 特開2012−006315(JP,A)
【文献】 特開2005−178828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/02
B43K 24/12
B43K 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に筆記体をコイルスプリングにより軸筒後端方向に付勢して配設し、前記軸筒に設けたクリップ装着部に、クリップを装着するとともに、該クリップ又は操作体を操作することにより、前記筆記体の筆記部を出没可能な出没式筆記具において、前記軸筒の後端部に、頭冠をネジ嵌合によって着脱自在に装着し、前記頭冠に、前記筆記体の筆跡を変色又は消色するゴム状弾性を有する弾性部を外面に露出して設け、前記クリップ装着部の後端に、前記頭冠の装着によって閉鎖する開口部を設け、前記頭冠を取り外すことで、前記開口部を介して、前記クリップ装着部にクリップを着脱自在に装着するとともに、前記頭冠が、前記軸筒側に位置して、前記開口部を閉鎖する後端面と、頭冠の先端側から後端面側に向かって延びる側壁とを具備し、前記頭冠の側壁の外面に、長手方向に延びる凹溝を、周方向の異なる位置に複数個設け、前記頭冠の後端部に、前記凹溝及び前記頭冠の後端面に連通する貫通孔を設けたことを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記軸筒の後部に、後方に向かって突出する突部を設け、前記軸筒と頭冠のネジ嵌合終了時に、前記頭冠の後端部に設けた貫通孔と前記突部とが凹凸嵌合することを特徴とする請求項1に記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記クリップの後端部と弾性部との接線が、前記弾性部を下向き、且つ前記軸筒の軸線を紙面に対し垂直上としたとき、45度以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の出没式筆記具。
【請求項4】
前記出没式筆記具が、前記軸筒内に複数の筆記体をコイルスプリングにより軸筒後端方向に付勢して配設し、前記クリップ又は操作体を操作することにより、前記筆記体の筆記部を選択的に出没可能な多芯の出没式筆記具であって、前記頭冠の後端部に設けた貫通孔が、前記筆記体と同数であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に筆記体を収容した出没式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、出没式筆記具として、例えば、特開平11−147390号「複合繰り出し用具」のように、一方の摺動体の隆起部を前軸の先端開口部方向にスライドすることにより、摺動体の後端部に形成した係止部を軸筒に形成した止め部に係止して、筆記体の筆記先端部を先端開口部から突出した状態を維持し、他方の摺動体の隆起部を前軸の先端開口部方向にスライドせしめることで、他方の摺動体の解除突起が一方の摺動体に当接するとともに、止め部に係止していた一方の摺動体の係止部を係脱させ、一方の筆記先端部を先端開口部より没入させ、さらに他方の摺動体を前進することにより他方の係止部が止め部に係止して筆記体の筆記先端部の突出状態を維持する、筆記先端部を選択して出没可能な出没機構を有する、ボールペンレフィル等、複数の筆記体を軸筒内に収容した構造のスライド式の多芯筆記具等が開示されている。こうした出没式筆記具において、ポケットなどへ挟着することを鑑みて、クリップを具備した出没式筆記具もよく知られている。
【0003】
また、特開平8−332798号公報「筆記具」では、軸筒の後端に、ホルダーを設け、このホルダーに消しゴムなどの弾性体を着脱自在に装着し、このホルダー及び消しゴムに通気孔を設けた筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−147390号公報
【特許文献2】特開平8−332798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した特許文献2など従来の筆記具は、消しゴムなどの弾性体に貫通孔を設けているために、弾性体の強度が低下するため、使用時に、弾性体が破損しやすい問題があった。
【0006】
また、前記した特許文献1など従来の出没式筆記具は、軸筒の軸心に対し、弾性体とクリップの接線の角度が大きいために、弾性体の使用時に、紙面とクリップが当接し易く、弾性体を使用する角度に制限を有し、弾性体を使用し難い問題があった。
【0007】
こうした問題を鑑みて、弾性体とクリップの接線の角度を小さくするには、クリップの軸筒から外方に突出する突出量を小さくすること、クリップの後端と弾性体の先端との長手方向の距離を長くすることなどが考えられるが、前者は、クリップと軸筒との間隙が小さくなり、ポケットなど厚手のものを挟持し難く、後者は、筆記具全長が長くなるため筆記具としては使用しにくい構造となってしまう問題があった。
【0008】
本発明の目的は、クリップを有する出没式筆記具において、軸筒後端部に設けた弾性部を使用し易く、且つ移動時に持ち運び易い出没式筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、軸筒内に筆記体をコイルスプリングにより軸筒後端方向に付勢して配設し、前記軸筒に設けたクリップ装着部に、クリップを装着するとともに、該クリップ又は操作体を操作することにより、前記筆記体の筆記部を出没可能な出没式筆記具において、前記軸筒の後端部に、頭冠をネジ嵌合によって着脱自在に装着し、前記頭冠に、前記筆記体の筆跡を変色又は消色するゴム状弾性を有する弾性部を外面に露出して設け、前記クリップ装着部の後端に、前記頭冠の装着によって閉鎖する開口部を設け、前記頭冠を取り外すことで、前記開口部を介して、前記クリップ装着部にクリップを着脱自在に装着するとともに、前記頭冠が、前記頭冠が、前記軸筒側に位置して、前記開口部を閉鎖する後端面と、頭冠の先端側から後端面側に向かって延びる側壁とを具備し、前記頭冠の側壁の外面に、長手方向に延びる凹溝を、周方向の異なる位置に複数個設け、前記頭冠の後端部に、前記凹溝及び前記頭冠の後端面に連通する貫通孔を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、前記軸筒の後部に、後方に向かって突出する突部を設け、前記軸筒と頭冠のネジ嵌合終了時に、前記頭冠の後端部に設けた貫通孔と前記突部とが凹凸嵌合することを特徴とする。
【0011】
また、前記クリップの後端部と弾性部との接線が、前記弾性部を下向き、且つ前記軸筒の軸線を紙面に対し垂直上としたとき、45度以上であることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、前記出没式筆記具が、前記軸筒内に複数の筆記体をコイルスプリングにより軸筒後端方向に付勢して配設し、前記クリップ又は操作体を操作することにより、前記筆記体の筆記部を選択的に出没可能な多芯の出没式筆記具であって、前記頭冠の後端部に設けた貫通孔が、前記筆記体と同数であることを特徴とする。
【0013】
本願発明の第1の構成によれば、前記軸筒の後部に、頭冠を着脱自在に装着し、前記頭冠に、前記筆記体の筆跡を変色又は消去するゴム状弾性を有する弾性部を外面に露出して設けることで、移動時には、頭冠を取り外すことができ、筆記具全長を短くすることができる。また、所望の頭冠に取り換えも可能となる効果を奏する。
【0014】
また、前記クリップ装着部の後端に、前記頭冠の装着によって閉鎖する開口部を設け、前記頭冠を取り外すことで、前記開口部を介して、前記クリップ装着部にクリップを着脱自在に装着してあるため、クリップ及び頭冠の装着前に、軸筒にスクリーン印刷やフィルム転写などの加飾を施しやすく、移動時には、クリップを取り外すことができ、筆記具外径を小さくすることができる。
【0015】
さらにまた、前記頭冠が、前記軸筒側に位置する後端面と、頭冠の先端側から後端面側に向かって延びる側壁とを具備し、前記頭冠の側壁の外面に、長手方向に延びる凹溝を、周方向の異なる位置に複数個設け、前記頭冠の後端部に、前記凹溝及び前記頭冠の後端面に連通する貫通孔又は凹部を設けてあるため、頭冠と軸筒後端部のネジ嵌合時に凹溝に指等が引っかかり、組立性及びクリップの着脱を容易にすることができ、且つ誤って頭冠を呑み込んだ場合でも、前記した貫通孔又は凹部と凹溝が連通しているため、空気を流通することが可能となる。
【0016】
本願発明の第2の構成によれば、前記軸筒の後端に、後方に向かって突出する突部を設け、前記軸筒と頭冠のネジ嵌合終了時に、前記頭冠の後端部に設けた貫通孔又は凹部と前記突部とが凹凸嵌合することで、頭冠と軸筒とのネジの緩み及び/又は過度なネジ締めを防止することができる。
【0017】
本願発明の第3の構成によれば、前記クリップの後端部と弾性部との接線が、前記弾性部を下向き、且つ前記軸筒の軸線を紙面に対し垂直状としたとき、45度以上、好ましくは50度以上、90度以下とすることで、ユーザーが弾性部を使用するときに、紙面とクリップとの接触を気にせずに使用することができる。
【0018】
本願発明の第4の構成によれば、前記出没式筆記具が、前記軸筒内に複数の筆記体をコイルスプリングにより軸筒後端方向に付勢して配設し、前記クリップ又は操作体を操作することにより、前記筆記体の筆記部を選択的に出没可能な多芯の出没式筆記具であって、前記頭冠の後端部に設けた貫通孔又は凹部が、前記筆記体と同数とすることで、組立時に誤った頭冠を装着することを抑制し、且つユーザーが弾性部を使用するときに、紙面とクリップとの接触を気にせずに使用することができる。
【0019】
尚、本発明のゴム状弾性を有する弾性部には、シリコーンゴム、オレフィン系やポリエステル系の熱可塑性エラストマー等、ゴム状弾性を有する弾性体を適宜用いることができる。また、弾性部は、頭冠と一体に形成又は別部材にて装着してあってもよいが、頭冠を取り外すことで、弾性部も同時に取り外すことができることが肝要である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、クリップを有する出没式筆記具において、軸筒後端部に設けた弾性部を使用し易く、且つ移動時に持ち運び易い出没式筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の出没式筆記具を示す縦断面図である。
図2図1におけるA−A断面図である。
図3図1における頭冠及びクリップを取り外した状態を示す図である。
図4図3における頭冠及び弾性部を示す拡大図である。
図5図3における頭冠及びクリップを取り外した矢印F方向から見た外観図である。
図6】頭冠の斜視外観図である。
図7図1におけるクリップを取り外した状態を示す後方から見た外観図である。
図8】弾性部を紙面に圧接した状態を示す外観図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に図面を参照しながら、本発明の出没式筆記具の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1図8に示す実施形態1の出没筆記具1は、前軸2の雄ネジ部2Bと後軸3の雌ネジ部3Eを螺合により取り付けられる軸筒本体内に複数本(3本)の筆記体が前後方向に移動可能に収容されている。筆記体9の後部には、筆記体9のインキ収容筒10に収容した筆記具用インキと同色の操作体6を配設してあり、筆記体9は、コイルスプリング17により後方に付勢してあり、他の筆記体13は、筆記体9と同様にして、筆記体13の後部には、筆記体13のインキ収容筒14に収容した筆記具用インキと同色の操作体22を配設してある。操作体23を配設したもう一方の筆記体は、詳細は図示していないが、3本の筆記体を配設した従来から知られているスライド式の出没機構を具備する多芯の出没式筆記具である。
【0024】
実施形態の筆記体9は、インキ収容筒10の先端部に、φ0.5mmのボールを回転自在に抱持したボールペンチップからなる筆記部12を、チップホルダー11を介して装着してある。また、インキ収容筒10内には、平均粒径が5μmの可逆熱変色性のマイクロカプセル顔料を含有し、EM型回転粘度計における1rpmでのインキ粘度が1020mPa・s(25℃)、100rpmでのインキ粘度が84mPa・s(25℃)で、剪断減粘指数が0.48の筆記具用水性インキと、このインキの後端に、グリース状のインキ追従体(図示せず)を直に収容してある。尚、インキ粘度は、EM型回転粘度計における100rpm、20℃において、40〜200mPa・sとすることが好ましい。
【0025】
後軸3の後部には、前後方向に延びる細長状の摺動溝3A、3B、3Cが3本、形成してあり、互いに、120度間隔に形成される。また、摺動溝3A、3B、3Cは、後方が開口していて、後軸3の後端で連通する開口部3AA、3BA、3CAを有している。後軸3の後端部は略円筒状であって、後軸3の外面には予めフィルム転写を施してある。
【0026】
後軸3内には、略円筒状のスプリング支持部7を固着している。スプリング支持部7は、筆記体9、13等、3本の筆記体が挿通される内孔が軸方向に貫設し、スプリング支持部7と、各々の操作体6間には、コイルスプリング17が配置し、筆記体9及び摺動体6を後方に付勢してある。尚、図示はしていないが、他の操作体22、23も操作体6と同様に、スプリング支持部7と、各々の操作体間には、コイルスプリングが配置し、筆記体及び摺動体を後方に付勢してある。
【0027】
また、後軸3の後部、且つ後軸3の摺動溝3B、3C間には、長手方向に沿って延びる凹状の装着部3Dを形成してあり、この装着部3Dにクリップ20を付設してある。装着部3Dは、後軸3の後端に開口部3DAを有していて、開口部3DAと装着部3Dとが連通している。この装着部3Dに、クリップ20のクリップ片19を装着するクリップ台18を挿入し、後軸3の後方側から前軸2側に押し込むことで、クリップ台18に設けた突起が、装着部3Dに設けた突起との乗り越し嵌合によって、後軸3にクリップ台18を着脱自在に付設してある。
【0028】
また、後軸3の後部には、雄ネジ部3Fを設けてあり、この雄ネジ部3Fに、頭冠4の雌ネジ部4Aをネジ嵌合によって着脱自在に装着してある。頭冠4を後軸3に装着すると、後軸3の後端に設けた突部3Gが、頭冠4の後端部に設けた貫通孔4CBとが凹凸嵌合して、頭冠4と後軸3とのネジ嵌合の緩みを抑制してある。この頭冠4を取り外すことで、後軸3の後端を露出することができ、筆記具全長Lから筆記具全長Mに短くすることができる。
【0029】
頭冠4は、後軸3の後部に当接する後端面4Dと、頭冠4の先端から後端面側に向かって拡径して延びる傾斜状の側壁4Cとを具備している。この側壁4Cの外面に長手方向に延びる凹溝4CAを、周方向の異なる位置に3個設けてあり、頭冠4を後軸3にネジ嵌合する時に、指が凹溝4CAに引っ掛かり、ネジ嵌合し易くしてある。また、凹溝4CAは、頭冠4の後端部に形成した貫通孔4CBに連通してある。このように、頭冠4の壁部4Cが先端に向かって縮径する傾斜状とすること、及び頭冠4の壁部4Cに凹溝4CAを設けることで、弾性部5の使用時に、筆跡が視認し易くなるので好ましい。また、頭冠4の後端部に貫通孔4CBを形成することで、強度の低下、及び後端面4Dの面積の減少を抑制するので好ましい。
【0030】
さらにまた、頭冠4には、ゴム状弾性を有する弾性部5を具備している。具体的には、頭冠4に設けた嵌合突部4Bに、シリコーンゴムからなる弾性体(弾性部)5の突部5Aを落とし込み嵌合によって、容易に抜けないように装着してある。
【0031】
筆記体8のボールペンチップからなる筆記部11を前軸2の先端開口部2Aから突出させるには、操作体6の操作部6Aを、摺動溝3Aに沿って、前軸2の先端開口部2A方向へスライドすることにより、操作体6に形成した係合突起6Bが後軸3内に形成した係止部(図示せず)に係止して、筆記体9の筆記部11を前軸の先端開口部2Aから選択して突出を維持して、筆記することができる。また、本実施形態においては、弾性部5を筆記面Tに圧接し、擦ることで発生する熱によって、筆跡を変色させることができる。このとき、クリップ片19の後端部と弾性部5との接線Sの角度αは、軸筒の軸線Jに対し40度であった。
【0032】
また、筆記体8の筆記部11が前軸の先端開口部2Aから突出を維持した状態で、他の摺動体21の操作部21Aを前軸2の先端開口部2A方向にスライドすることで、摺動体20の解除突起が摺動体6の係止を解除し、コイルスプリング17により筆記体8の筆記部11を前軸2内に没入させることができる。
【0033】
クリップ20は、クリップ片19を、クリップ台18の外壁に設けられた支柱18に連結し、クリップ片19の内壁とクリップ台18との間であって支柱18Aの後方に配設されるコイルスプリング21によって、クリップ片19の先端部の内壁を常時、クリップ台18の外壁の外面に弾性的に反発させるとともに、クリップ片19の後端部をクリップ台18側へ押圧することにより連結部を支点としクリップ台18に対しクリップ片19の先端部の内壁をクリップ台18から離間可能に配設してある。
【0034】
頭冠4が後軸3の後端を閉鎖した状態から、後軸3と頭冠4のネジ嵌合3C、4Aを外し、後軸3の後端を露出させる。装着部3Dは、後軸3の後端に開口部3DAを有していて、開口部3DAと装着部3Dとが連通しているので、この状態であればクリップ20を取り出すことができる。
【0035】
本実施形態では、便宜上、ボールペンを3本配設してあるが、筆記体には、例えば、ボールペン、マーキングペン、シャープペンシル等が挙げられる。また、筆記体の本数は、1本、2本以上等、特に限定されるものではない。
【0036】
また、クリップの形状も特に限定されないが、クリップが、クリップ片とクリップ台とからなり、クリップ台の先端部に、前記クリップ片に向かって突出する係止部を形成し、該係止部が、軸筒表面から突出することで、クリップ片とクリップ台との挟持力を高めることができるので好ましい。さらにまた、クリップが、クリップ片とクリップ台との間に配設したコイルスプリングによって、クリップ片の先端部を常時、クリップ台の外面に弾性的に圧接するとともに、クリップ片の後端部をクリップ台側へ押圧することにより、クリップ片とクリップ台との連結部を支点としクリップ台に対しクリップ片の内壁の先端部を軸筒から離間可能に配設してあるため、クリップ片とクリップ台との挟持力を高めることができ、クリップを取り外して使用することもできるので好ましい。
【0037】
さらにまた、頭冠の側壁の外面に設ける凹溝の数や大きさも特に限定されるものではなく、側壁の外面の一部又は全面に長手方向に延びる凹溝を複数個、設けてあればよい。
【0038】
また、筆記具用インキも特に限定されるものではないが、粒子の平均の大きさが、体積基準で0.1〜30μmの顔料を含有し、前記ボールの縦方向のクリアランスが、30〜80μm、100m当たりのインキ消費量が、200〜800mgとすることで、濃く良好な筆跡及び良好な筆感を得ることができる。これは、ボールの縦方向のクリアランスが30μm未満では、粒子の平均の大きさが0.1〜30μmの顔料を有する筆記具用水性インキにおいて、100m当たりのインキ消費量が200〜800mgのようなインキ消費量を多くすることが困難であるとともに、80μmを超えると、インキ消費量が多く、筆跡乾燥性が低下する恐れがあるため、30から80μmとすることが最も好ましいためである。
【0039】
本実施例では、便宜上、操作体をスライドして係止する出没式筆記具を例示しているが、クリップをスライドして回転カムを作動する回転カム機構や回転操作により、筆記部を軸筒前端開口部から出没させる機構等、ノック式、スライド式、回転式等、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の多芯筆記具は、インキの種類に限定されることなく、多芯筆記具として広く実施可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 出没式筆記具
2 前軸
2A 先端開口部
3 後軸
3A、3B、3C 摺動溝
3D 装着部
3DA 開口部
3F 雄ネジ部
3G 突部
4 頭冠
4A 雌ネジ部
4B 嵌合突部
4C 側壁
4CA 凹溝
4CB 貫通孔
4D 後端面
5 弾性部
6、22、23 摺動体
6A 操作部
7 スプリング支持部
9、13 筆記体
10、14 インキ収容筒
12、16 筆記部
17 コイルスプリング
18 クリップ台
19 クリップ片
20 クリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8