【実施例1】
【0026】
図1から
図5を用いて、実施例1のターンテーブルレス式電子レンジについて説明する。なお、
図1は実施例1のターンテーブルレス式電子レンジを手前上方から見た分解斜視図、
図2は実施例1で加熱室内のテーブルプレート5に食品30を載置した状態を示す正面断面図である。
図3はテーブルプレート5を上方から見た斜視図、
図4はテーブルプレート5を下方から見た斜視図、
図5はテーブルプレート5の分解斜視図である。
【0027】
まず、
図1を用いて、加熱調理器の本体1の構造について説明する。本体1は前方が開口した加熱室3を備えている。加熱室3の開口にはドア2が備えられ、開口を開閉する。加熱室3の下方には機械室4が設けられている。機械室4の側方にはマイクロ波を生成するマグネトロン41が設けられ、略中央には回転アンテナ42が設けられている。マグネトロン41で生成され回転アンテナ42から照射されたマイクロ波が、加熱室3に供給されることでマイクロ波加熱を実現する。また、機械室4には重量センサ40がその先端の重量センサ軸40Aが加熱室3内に露出するように3個配置されており、重量センサ40の上には加熱室底面31と略同一形状のテーブルプレート5が着脱可能に載置されている。また、加熱室3の上方には上ヒータ50が、背面には高温の熱風を供給する熱風ユニット(図示せず)および熱風噴出口51が設けられており、これらを用いることでオーブン加熱を実現する。そして、加熱室3および機械室4をキャビネット10で覆うことで本体1が構成される。
【0028】
次に、
図2を用いて本体1の構造を詳細に説明する。
図2に示すように、食品30を加熱調理する際には、テーブルプレート5の上に食品30を載置する。
【0029】
まず、食品30をマイクロ波加熱するための構成を説明する。マグネトロン41と回転アンテナ42の間には導波管43が設けられており、マグネトロン41で生成されたマイクロ波は導波管43内を介して回転アンテナ42に伝送され、回転アンテナ42から照射されたマイクロ波はマイカなどの比誘電率が低く低損失の誘電体素材で構成された仕切り板47を通過して、加熱室3内に供給される。つまり、導波管43はマイクロ波を伝送する伝送路である。
【0030】
導波管43の下方にはアンテナモータ44が設けられており、導波管43を略垂直に貫通するアンテナ回転軸45に取り付けられた回転アンテナ42を回転駆動させる。回転アンテナ42は、仕切り板47下方のアンテナ収納部46内で回転し、導波管43を介してマグネトロン41から供給されたマイクロ波を任意の方向に照射することで、加熱室3内のマイクロ波分布(定在波)を変動させる。なお、マイクロ波を加熱室3内に供給する装置であるマグネトロン41、回転アンテナ42、導波管43、アンテナモータ44、アンテナ回転軸45、アンテナ収納部46を包括して、以下では給電部と称する。
【0031】
また、機械室4には前述したように、重量センサ40がその先端の重量センサ軸40Aを加熱室3内に露出させた状態で配置されており、加熱室底面31に着脱可能なテーブルプレート5は重量センサ軸40Aを介して3個の重量センサ40で支持されている。そのため、テーブルプレート5上に食品30を載置することで、重量センサ40により食品30の重量と載置位置を検出することが可能である。
【0032】
次に、
図3から
図5を用いて、本実施例のテーブルプレート5の構成を詳細に説明する。本実施例のテーブルプレート5は加熱室底面31と略同一形状であり、略長方形形状の平板5Aと、その周囲に配置されたフランジ5Bで構成されている。
図5に示すように、フランジ5Bは、フランジ手前5B−1、フランジ奥5B−2、フランジ左5B−3、フランジ右5B−4の4つの部品から構成されており、それぞれが長方形の平板5Aの各辺に設置される。つまり、本実施例のテーブルプレート5は平板5Aの周りに複数のフランジを接着固定した構造となっている。このように、平板5Aの周囲にフランジ5Bを備えていることで、加熱調理中にテーブルプレート5上へ調味液や蒸気が凝縮した水などがこぼれた場合でも、それらの液体がテーブルプレート5の外部に流出し、加熱室底面31や仕切り板47に付着することを防止できる。なお、フランジ5Bは必ずしも接着固定せず、容易に組み立て、取り外しが可能な構成とし、平板5Aとフランジ5Bの間に食品や調味料等に起因する汚れが詰まった場合に、フランジ5Bを外して分解清掃できるようにしてもよい。また、本実施例ではフランジ手前5B−1は両端の高さが高く、両端の高さに比べて中央付近の高さが低い形状で、フランジ5B−2、5B−3、5B−4は高さが一定の形状を示しているが、フランジ5Bを構成する樹脂量を削減するためにフランジ手前5B−1以外のフランジもフランジ手前5B−1と同様に高さを変形させた形状にしても良い。
【0033】
また、
図4に示すように、フランジ5Bの下面に一体成形された凹部5Cを3個設けており、各凹部5Cは、加熱室底面31にテーブルプレート5を載置する場合に、重量センサ軸40Aと接触する位置に配置されている。尚、この凹部5Cはフランジと同じ成形可能な材質であるため、重量センサ軸40Aの外径に合わせて高精度で位置合わせすることができ、加熱室3にテーブルプレート5を載置した際、加熱室3の壁面に接触することなく容易に位置合わせを行うことが可能である。ここで、テーブルプレート5が加熱室3の壁面に接触すると、重量センサ40だけでテーブルプレート5を支持しないため、テーブルプレート5と食品30の重量を正確に計測できない問題が発生する。本実施例では、フランジ5Bに凹部5Cを設けることで、テーブルプレート5と加熱室3壁面の接触を防止し、重量センサ40によってテーブルプレート5の重量を正確に測定できるようにしている。
【0034】
また、本実施例ではフランジ5B上に凹部5Cを設けているが、凹部5Cがフランジ5Bを貫通する孔であっても良く、その場合は重量センサ軸40Aが直接平板5Aに接触して支持するため、凹部5Cに接触する場合よりも、平面がたつきを抑えて重量センサ40でテーブルプレート5を支持することができる。
【0035】
ここでテーブルプレート5の材質は、例えば平板5Aが結晶化ガラス製、フランジ5BがPPS(ポリフェニレンサルファイド)製であり、フランジ5Bの比誘電率が平板5Aの比誘電率よりも高い構成となっている。つまり、本実施例のテーブルプレート5は、マイクロ波を吸収しにくく、マイクロ波が低損失で透過できる平板5Aに主に食品が載置される一方、平板5Aよりマイクロ波の吸収が多いフランジ5Bは、給電部が近い加熱室3の底面の角部に配置される。
【0036】
つまり、平板5Aは加熱室底面31の略中央、つまり回転アンテナ42の略上方に位置しているのに対し、フランジ5Bは加熱室底面31の壁面近傍に配置されている。そのため、テーブルプレート5上に食品30を載置して食品30をマイクロ波加熱する場合、加熱室3下方の給電部から加熱室3内に供給されたマイクロ波は、仕切り板47、平板5Aを低損失で透過して食品30に到達することができる。また、給電部が加熱室3下方に配置され、加熱室3内のマイクロ波分布を制御できる回転アンテナ42を備えた構成であるため、加熱室3内のマイクロ波を食品30に集中させることができる。よって、セラミックなどの比誘電率が比較的高い素材のみで構成される従来のテーブルプレート5を使用する場合に比べて、食品30に多くのマイクロ波を吸収させ易い構成となる。従って、加熱室3内へのマイクロ波の照射エネルギーを増大させた場合でも、短時間で加熱調理が可能となり、少ないエネルギーで省エネ性能の高い加熱調理器を提供できる。
【0037】
一方、誤って加熱室3内に食品30を配置せず、無負荷状態で加熱室3にマイクロ波を供給する場合、本実施例のテーブルプレート5ではフランジ5Bの比誘電率が平板5Aに比べて高いため、給電部から加熱室3内に供給されたマイクロ波は、その大部分がフランジ5Bに吸収され、加熱室3内に照射される余剰なマイクロ波の量が削減できる。そのため、余剰マイクロ波が加熱室3の壁面に集中した場合に発生するスパークや局所集中加熱を防止できる。
【0038】
特に、比誘電率の低い素材や、金属などの導体を加熱室3壁面近傍に配置するとスパークが発生しやすくなるため、テーブルプレート5の周囲に比誘電率の低い素材や導体を用いた場合は、加熱室3壁面とテーブルプレート5の間に10mm以上の十分な離隔の距離を設ける必要があり、テーブルプレート5を加熱室底面31よりも20mm以上小さい大きさでしか使用できないことに加えて、加熱調理中に発生する微細な食品や蒸気などが加熱室底面31にたまりやすくなり、給電部に侵入して発火などを生じる恐れが生じる。
【0039】
しかし、本実施例ではテーブルプレート5の周囲には比誘電率が平板5Aよりも高い樹脂素材を用いているので、加熱室3壁面とテーブルプレート5の距離が5mm以下でも、加熱室3壁面近傍でスパークが発生しにくく、加熱室底面31とほぼ寸法が変わらない略同一形状のテーブルプレート5でも、安全に使用することが可能である。また、加熱室底面31と略同一形状のテーブルプレート5を使用できることで、加熱室底面31への微細な食品くずや蒸気の流入を防止し、給電部への汚れの付着や、仕切り板47への汚れの浸透、またそれに伴う局所集中加熱等の不具合を防止することができる。
【0040】
このように、本実施例のテーブルプレート5を用いることによって、食品加熱時に食品をより少ないエネルギーで効率良く加熱することと、食品30を加熱室3に収納しない無負荷状態でもスパークや局所集中加熱を防止して安全に使用できることを両立した、使いやすく省エネルギー性に優れた加熱調理器を構成できる。
【0041】
ここで、本実施例では平板5Aが結晶化ガラスでフランジ5BがPPSである例を示したが、フランジ5Bの比誘電率が平板5Aの比誘電率よりも高ければ、特に素材は問わない。例えば、平板5AはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPE(ポリエチレン)などの比誘電率の低い樹脂素材で構成しても、マイクロ波を低損失で透過できるので食品30の加熱効率を向上する効果が得られる。また、フランジ5BはPA(ポリアミド)やフェノール樹脂などのPPS以外の比誘電率の高い素材で構成してもスパーク防止の効果は得られる。また、平板5Aやフランジ5Bは複数の素材を合わせた複合素材でも良い。例えば平板5Aがガラスの場合にフランジ5Bをシリコン単体で構成すると、シリコンはガラスよりも比誘電率が低いため、本実施例の効果が得られないが、内部にPPSの芯材を入れて、シリコンでフランジ5Bを構成すれば、PPSはガラスよりも比誘電率が高くマイクロ波を吸収するため、スパーク防止の効果が得られる。また、フランジ5Bをシリコン単体で構成すると高温加熱時に変形する可能性があるが、シリコンの内部PPSの芯材を入れた素材を使用すれば、柔軟性は高く高温でも変形しにくいフランジを構成できる。
【0042】
また、PPSなどの耐熱性の高い樹脂素材は色が黒色等の濃色の場合が多く、比誘電率の低いガラスなどは白色等が多いため、ガラス製の平板5AとPPS製のフランジ5Bでは平板5Aとフランジ5Bの色が異なることがあったが、フランジ5BをPPSの芯材を入れたシリコンで構成すればフランジ5Bの色を自由に変更でき、例えばフランジ5Bの色を白色にできることから、平板5Aとフランジ5Bの色を合わせて意匠性を向上したテーブルプレート5を実現することができる。
【0043】
また、テーブルプレート5上に加熱調理中に飛び散った微細な食品や油などの液体が汚れとして付着すると、汚れ部分にマイクロ波が集中しやすくなり、食品30を加熱する効率が下がることがあるため、テーブルプレート5上に汚れが付着した場合には取り除く必要がある。本実施例ではテーブルプレート5は着脱自在であるため取り出して洗うことが可能であり、テーブルプレート5が汚れた場合でも汚れを容易に取り除くことができるので、食品30の加熱効率に悪影響を及ぼしにくい。
【0044】
また、平板5Aとフランジ5Bの間に食品等に起因する汚れが詰まった場合には、フランジ5Bを外して分解清掃することができることから、テーブルプレート5の汚れによる加熱効率低下を防止し、更に食品の加熱効率を高く維持することが可能である。
【0045】
また、テーブルプレート5が平板5Aとフランジ5Bで構成されていることから、従来のようにテーブルプレート5をガラスやセラミックなどの素材で一体成形する場合に比べて、テーブルプレート5の重量を軽量化でき、かつ落下時や衝撃でも割れにくい構造であるため、着脱時や持ち運び時の取り扱いが容易にできる。
【0046】
また、凹部5Cは樹脂製でフランジ5Bに一体で成形されており、従来のガラスやセラミックで凹部を形成する場合に比べて高い精度で成形できることから、凹部5Cと重量センサ軸40Aをより高精度で容易に位置合わせが可能である。
【0047】
また、本実施例では、重量センサ40を3個、テーブルプレート5の凹部5Cもそれぞれ3個設けた場合を示しているが、食品30の重量を検出するための重量センサ40の数はいくつでも良い。但し、重量センサ40を3個以上設けている場合には、テーブルプレート5上に載置した食品30の載置位置の検出が可能になる。また、凹部5Cは重量センサ40の数より多ければいくつでも良く、例えば前後対称に6個の凹部5Cを備えていればテーブルプレート5を前後逆方向に載置することも可能である。
【0048】
また本実施例では、フランジ5Bが4つの部品から組み立てられた構成としているが、フランジ5Bは平板5Aを挟みこんだ状態でインサート成形により一体成形されていても良い。また、圧入などの方法でフランジ5Bの樹脂の成形と平板5Aへの取り付けを同時に行っても良い。
【0049】
次に、本実施例の加熱調理器を用いて、食品30を加熱調理する場合の加熱調理の流れについて説明する。
【0050】
本体1のドア2を開け、開口部から加熱室3の中にテーブルプレート5を収納し、加熱室3の底面にテーブルプレート5を載置する。ここで、テーブルプレート5が加熱室3の壁面に接触したり、配置位置がずれたりすると、重量センサ40にテーブルプレート5の重量が適切に伝えられず、後ほど載置する食品30の重量や位置を正確に計測できない恐れがあるため、テーブルプレート5は適切な位置に配置する必要がある。ここで、本実施例のテーブルプレート5は下方に重量センサ40の位置に対応した凹部5Cを備えているため、加熱室3の底面に露出している重量センサ軸40Aと凹部5Cを嵌合させるだけで、意識して位置合わせを行うことなくテーブルプレート5を適切な位置に容易に配置することができる。
【0051】
テーブルプレート5を載置した後、テーブルプレート5の上に食品30を載置し、ドア2を閉めて操作パネル(図示せず)を用いて加熱調理方法を指示する。調理を指示された本体1は、まず重量センサ40の検出値を読み取ることで食品30の重量と載置位置を計測し、指示された調理方法に対応する加熱シーケンス、加熱時間を自動的に決定する。その後、マグネトロン41とアンテナモータ44を駆動し、マグネトロン41で発生したマイクロ波は導波管43より伝送され、回転アンテナ42によって加熱室3内に照射される。本体1は食品30の重量と載置位置を認識しているので、それに応じて回転アンテナ42を適切に回転制御することで、加熱室3内の食品30の位置にマイクロ波を集中的に照射することが可能である。ここで、本実施例ではテーブルプレート5はフランジ5Bよりも比誘電率の低い結晶化ガラス製の平板5Aを回転アンテナ42と食品30の間に備えており、マイクロ波はテーブルプレート5内をほとんど損失なく透過することが可能で、回転アンテナ42から食品30の位置に集中的に照射されたマイクロ波のエネルギーの大部分が食品30に吸収されるため、食品30が短時間で効率良く加熱される。このように、本実施例の加熱調理器を用いることで、食品30をより短時間で少ないエネルギーで加熱調理することができる。
【0052】
一方、使用者が誤使用した場合の安全性について説明する。加熱室底面31にテーブルプレート5を載置した後に、テーブルプレート5の上に食品30を載置せずに加熱調理を指示した場合、重量センサ40によりテーブルプレート5と載置した食品30の重量を判別し、食品30を載置せずに加熱調理を指示した場合は、加熱室3内のマイクロ波供給を停止することができる。しかし非常に軽量の食品30が載置される場合などのために、万が一無負荷の場合に加熱室3内部にマイクロ波が供給されることがあっても安全性が確保される必要がある。テーブルプレート5上に食品30が載置されていない状態で加熱室3内部にマイクロ波が供給されると、食品30で吸収されるはずのマイクロ波エネルギーが余って行き場を失い、この余剰エネルギーが比較的電界の強い部分、特に加熱室3壁面近傍などに集中し、スパークや局所集中加熱が発生する危険性がある。本実施例ではテーブルプレート5は平板5Aよりも比誘電率の高いPPS製のフランジ5Bを加熱室3壁面近傍に備えていることから、余ったマイクロ波エネルギーはフランジ5Bに吸収されるため、意図しない部分にマイクロ波が集中することがなく、スパークや局所集中加熱を防止できる。また、テーブルプレート5を加熱室底面31に載置せずに加熱調理を指示した場合は、テーブルプレート5の有無を判別し、テーブルプレート5が無いと判断した場合は加熱室3内へのマイクロ波供給を停止する。このように、本実施の形態例を用いることで、加熱室3内でのスパークや局所集中加熱を防止できるため、従来よりも安全性の高い加熱調理器を提供できる。
【0053】
以上のように、本実施例の加熱調理器を用いることで、従来は両立が困難だった省エネ性能と安全性を両立することができる。つまり、加熱室3内に多くのマイクロ波エネルギーを供給できるため、食品を加熱する場合には従来よりも短時間で少ないエネルギーで加熱調理を行うことができるとともに、無負荷時に発生しやすいスパークや局所集中加熱を防止できるため、安全性が高く使い勝手の良い加熱調理器を提供できる。
【実施例2】
【0054】
図6と
図7を用いて、実施例2の加熱調理器について説明する。
図6は実施例2の加熱調理器で食品30を加熱調理する場合の前面断面図、
図7は実施例2の加熱調理器のテーブルプレート5を上方から見た斜視図である。なお、実施例2の構成のうち、実施例1と共通する構成については説明を省略する。
【0055】
本実施例は、加熱室3の底面にガラス製のプレートを固定して配置した加熱調理器に、インサート成形で構成したテーブルプレートを適用したものである。
【0056】
まず、
図6を用いて、本実施例の加熱調理器の本体1の構造について説明する。実施例2の加熱調理器は、実施例1と同様に、加熱室3の下方に機械室4とマグネトロン41、回転アンテナ42、導波管43等の給電部を備え、加熱室3の底面には加熱室3とアンテナ収納部46を区切る仕切りプレート48が接着固定されている構造である。仕切りプレート48上には加熱室底面31と略同一形状のテーブルプレート5が着脱可能に配置されており、テーブルプレート5上に食品30を載置し、加熱室3内に下方からマイクロ波を供給することで、食品30の加熱調理を行う。仕切りプレート48はガラスやセラミックなどの素材で形成されたプレートであり、加熱調理中に発生する微細な食品や蒸気が、機械室4やアンテナ収納部46へ流入することを防止している。
【0057】
また、加熱室3の壁面には赤外線センサなどの非接触で食品30の表面温度を計測するセンサである温度センサ52を備えている。実施例1のように加熱室底面31に重量センサを備えていないため食品30の重量を測定することはできないが、温度センサ52を用いて食品30の温度を計測することで、食品30の状態に応じて加熱調理のシーケンスや自動的に設定することが可能である。
【0058】
次に、
図7を用いて本実施例の加熱調理器の特徴的な構成である、実施例2のテーブルプレート5の構成を説明する。本実施例のテーブルプレート5は加熱室底面31と略同一形状であり、長方形の平板5Aと、その周囲を取り囲むように平板5Aよりも比誘電率が高い材質のフランジ5Bを設けた構造である。テーブルプレート5の底面には特に位置合わせのための凹部を備えておらず、テーブルプレート5は加熱室3の底面や仕切りプレート48に直接接触して配置する構成である。マイクロ波損失が少ない平板5Aとマイクロ波を吸収できるフランジ5Bで構成されるテーブルプレート5を回転アンテナ42と食品30の間に備えることにより、食品加熱時には回転アンテナ42により食品30にマイクロ波を集中させ、テーブルプレート5を透過する際の損失するマイクロ波エネルギーを低減して食品30の加熱効率を向上するとともに、無負荷加熱時にはスパークや局所集中加熱を防止して安全性を高めることができる加熱調理器を提供できる。
【0059】
また、テーブルプレート5の底面は平滑で、特に位置合わせをすることなくテーブルプレート5は加熱室底面31に配置できる。よって、テーブルプレート5が加熱室3の壁面に接触または近接しやすく、テーブルプレート5と加熱室3壁面間でのスパークや局所集中加熱が発生しやすいが、無負荷加熱時にはテーブルプレート5のフランジ5Bでマイクロ波エネルギーを吸収することにより、加熱室3内に余剰マイクロ波エネルギーが放射されないため、テーブルプレート5が加熱室3壁面に接触または近接しても、テーブルプレート5と加熱室3壁面間のスパークや局所集中加熱を防止できる。
【0060】
また、加熱室3の底面に直接テーブルプレート5を載置するため加熱室底面31とテーブルプレート5が接触しており、かつ加熱室3の下方に給電部を備えた構造であるため、回転アンテナ42に近い加熱室3の底面とテーブルプレート5の接触点におけるスパークや局所集中加熱の危険性が高いが、本実施例のテーブルプレート5を用いることで、無負荷加熱時にはマイクロ波がテーブルプレート5のフランジ5Bに吸収されるため、前述した加熱室3の壁面部分と同様に、加熱室3の底面部分におけるスパークや局所集中加熱についても防止する効果が得られる。
【0061】
本実施例では加熱室底面31に仕切りプレート48が固定されていることから、テーブルプレート5を設置しなくても加熱調理が可能であるが、加熱室底面31にテーブルプレート5を設置することで、無負荷加熱時にフランジ5Bでマイクロ波エネルギーを吸収するため、スパークや局所集中加熱を防止できる。また、加熱調理時に発生するや蒸気、脂肪分などの汚れが直接加熱室底面31や仕切りプレート48に付着するのを防止でき、仕切りプレート48は加熱室3内から取り外せないのに対して、テーブルプレート5は取り外して洗えるため、テーブルプレート5を載置することによって、加熱室底面31の清掃性を高められる。
【0062】
以上のように、本実施例の加熱調理器を用いることで、従来は両立が困難だった省エネ性能と安全性を両立することができる。つまり、食品を加熱する場合には従来よりも短時間で少ないエネルギーで加熱調理を行うことができるとともに、無負荷時に発生しやすいスパークや局所集中加熱を防止できるため、加熱室内に多くのマイクロ波エネルギーを供給できる、安全性が高く使い勝手の良い加熱調理器を提供できる。