特許第5932553号(P5932553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932553
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタの成形方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20160526BHJP
   H01R 43/24 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H01R13/52 301Z
   H01R43/24
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-171563(P2012-171563)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-32784(P2014-32784A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】永野 徹
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−066858(JP,A)
【文献】 特開2010−272354(JP,A)
【文献】 特開平11−111382(JP,A)
【文献】 特開平08−250193(JP,A)
【文献】 特開平08−279373(JP,A)
【文献】 特開平09−245880(JP,A)
【文献】 特開2009−302039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器隔壁の貫通孔に貫装されて当該機器の内外の配線を接続するコネクタであって、
前記貫通孔に貫装される筒状側壁を有し、その筒状側壁の内部空間の中央部に形成された仕切り壁により当該内部空間の機器内側と機器外側とが仕切られたコネクタハウジングと、
前記仕切り壁内に圧縮状態で埋設される弾性シール部材と、
前記筒状側壁の軸心方向に沿って延在する端子であって前記仕切り壁および弾性シール部材を貫通し両端がそれぞれ前記内部空間における機器内側,機器外側に突出する少なくとも一つの中継端子と、
を型成形により一体化して成り、
前記仕切り壁の機器内側面,機器外側面のうち少なくとも何れか一方の面側であり前記中継端子から距離を隔てた位置には、当該何れか一方の面側に対向する成形型の成形面に1個以上形成された突起であり前記型成形時に弾性シール部材における前記中継端子から距離を隔てた位置に対して圧接する突起部により、型成形痕が形成されたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
機器隔壁の貫通孔に貫装されて当該機器の内外の配線を接続するコネクタを型成形する方法であって、
前記貫通孔に貫装される筒状側壁を有し、その筒状側壁の内部空間における機器内側と機器外側とが当該内部空間の中央部に形成される仕切り壁によって仕切られるコネクタハウジング、
を成形する型であり前記仕切り壁の機器内側面,機器外側面と対向する各成形面のうち少なくとも何れか一方に対し1個以上の突起部が形成された成形型内に、
前記仕切り壁内に埋設される弾性シール部材と、前記筒状側壁の軸心方向に沿って延在する端子であって前記仕切り壁および弾性シール部材を貫通し両端がそれぞれ前記内部空間における機器内側,機器外側に突出する少なくとも一つの中継端子と、を配置し、
前記突起部を弾性シール部材における中継端子から距離を隔てた位置に対して圧接し、当該弾性シール部材を圧縮した状態でコネクタハウジングを型成形することを特徴とするコネクタの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびコネクタの成形方法であって、例えば各種機器の隔壁に貫装されて当該機器内外の配線を接続するコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンルーム,オートマチックトランスミッション,燃料タンク等の各種機器の隔壁に貫装(コネクタ用の貫通孔に貫装)され当該機器内外の配線を接続するコネクタとして、防水性,防油性等のシール性を有するものが知られている。このようなシール構造のコネクタの一例としては、そのコネクタを構成するコネクタハウジングや中継端子(ターミナル)等が、型成形(インサート成形等)により一体化され、機器内外が連通しないようにシールした構造が挙げられる。
【0003】
コネクタハウジングにおいては、筒状側壁の内部空間における機器内側と機器外側とが当該内部空間の中央部に形成された仕切り壁により仕切られた構造であり、中継端子が、仕切り壁を貫通して筒状側壁の軸心方向に沿って延在し両端がそれぞれ前記内部空間における機器内側,機器外側に突出するように配置(少なくとも一つ配置)される。
【0004】
仕切り壁と中継端子との接合面(貫通面)においては、少なからず隙間が形成されて機器内外が連通(例えば毛細管現象により機器内側の液体が流出)し得るため、図5に示すように、コネクタハウジング70の仕切り壁71の表面(図5中では機器外側の表面)をシール材料で層状に被覆(例えば筒状側壁の機器外側開口の方向から注入)し固化して被覆シール部材72を形成し、その被覆シール部材72に中継端子73を貫通させてシールする手法が採られている。また図6に示すように、予め形成されたシール部材74をインサート部品として前記仕切り壁71内に埋設し、それら仕切り壁71,シール部材74に中継端子73が貫通するように型成形する手法が知られている(例えば特許文献1〜5)。
【0005】
しかしながら、シール部材と中継端子との接合面(貫通面)においても少なからず隙間が形成され得る。例えば、被覆シール部材の場合は露出しているため、外気等に曝されて劣化すると中継端子との密着不良が起こりシール性の低下につながる虞がある。また、コネクタハウジングの仕切り壁内にシール部材を埋設する手法のように、シール部材が露出しない構造であっても、そのシール部材とコネクタハウジングとの接合面(境界面)において少なからず隙間が形成、すなわち密着不良が起こり得るため、シール性が低下する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−111382号公報
【特許文献2】特開平8−250193号公報
【特許文献3】特開平8−279373号公報
【特許文献4】特開平9−245880号公報
【特許文献5】特開2009−302039号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、前記のような背景技術等に伴い、コネクタおよびコネクタの成形方法において以下に示す課題があることに着目した。すなわち、コネクタハウジングの仕切り壁と中継端子との接合面をシールするシール部材においては、そのシール部材と中継端子との接合面や、シール部材とコネクタハウジングとの接合面の密着不良を抑制し、所望のシール性が得られるようにすることが課題として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るコネクタおよびコネクタの成形方法は、前記の課題を解決できる創作であり、具体的に、この発明のコネクタの一態様は、機器隔壁の貫通孔に貫装されて当該機器の内外の配線を接続するコネクタであって、前記貫通孔に貫装される筒状側壁を有し、その筒状側壁の内部空間の中央部に形成された仕切り壁により当該内部空間の機器内側と機器外側とが仕切られたコネクタハウジングと、前記仕切り壁内に圧縮状態で埋設される弾性シール部材と、前記筒状側壁の軸心方向に沿って延在する端子であって前記仕切り壁および弾性シール部材を貫通し両端がそれぞれ前記内部空間における機器内側,機器外側に突出する少なくとも一つの中継端子と、を型成形により一体化して成り、前記仕切り壁の機器内側面,機器外側面のうち少なくとも何れか一方の面側であり前記中継端子から距離を隔てた位置には、当該何れか一方の面側に対向する成形型の成形面に1個以上形成された突起であり前記型成形時に弾性シール部材における前記中継端子から距離を隔てた位置に対して圧接する突起部により、型成形痕が形成されたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明のコネクタの成形方法の一態様は、機器隔壁の貫通孔に貫装されて当該機器の内外の配線を接続するコネクタを型成形する方法であって、前記貫通孔に貫装される筒状側壁を有し、その筒状側壁の内部空間における機器内側と機器外側とが当該内部空間の中央部に形成される仕切り壁によって仕切られるコネクタハウジング、を成形する型であり前記仕切り壁の機器内側面,機器外側面と対向する各成形面のうち少なくとも何れか一方に対し1個以上の突起部が形成された成形型内に、前記仕切り壁内に埋設される弾性シール部材と、前記筒状側壁の軸心方向に沿って延在する端子であって前記仕切り壁および弾性シール部材を貫通し両端がそれぞれ前記内部空間における機器内側,機器外側に突出する少なくとも一つの中継端子と、を配置し、前記突起部を弾性シール部材における中継端子から距離を隔てた位置に対して圧接し、当該弾性シール部材を圧縮した状態でコネクタハウジングを型成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコネクタおよびコネクタの成形方法によれば、弾性シール部材と中継端子との接合面、弾性シール部材とコネクタハウジングとの接合面の密着不良を抑制し、所望のシール性が得られ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の一例を示すコネクタの概略図(縦断面図)。
図2】本実施形態の一例を示すインサート部材の概略図(縦断面図)。
図3】本実施形態の一例を示す型部材の概略図(縦断面図)。
図4】本実施形態に係るコネクタの適用例を示す概略図(縦断面図)。
図5】一般的なコネクタの一例を示す概略図(縦断面図)。
図6】一般的なコネクタの他例を示す概略図(縦断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るコネクタおよびコネクタの成形方法は、コネクタハウジングの仕切り壁と当該仕切り壁を貫通して配置される中継端子との接合面をシールする構造において、被覆シール部材を仕切り壁に対して層状に被覆して設けたり当該仕切り壁内に対して単なるシール部材を埋設するのではなく、弾性シール部材を適用し圧縮した状態で仕切り壁内に埋設したものである。
【0013】
このように弾性シール部材を圧縮した状態で仕切り壁内に埋設すると、その弾性シール部材に作用する復元力によって、弾性シール部材と当該弾性シール部材を貫通する中継端子との接合面において密着力が得られ易くなり、また弾性シール部材と仕切り壁との接合面においても密着力が得られ易くなる。そして、これら密着力により、弾性シール部材と中継端子との接合面において、所望のシール性を得ることが可能となる。
【0014】
弾性シール部材を圧縮した状態で仕切り壁内に埋設するには、コネクタハウジングの型成形において、仕切り壁の機器内側面,機器外側面と対向する各成形面のうち少なくとも何れか一方に対して1個以上の突起部が形成された成形型を適用し、その成形型内に対しインサート部品として弾性シール部材,中継端子を配置し、前記成形型の突起部を弾性シール部材における中継端子の周縁側(中継端子から所定距離を隔てた位置)に圧接させて当該弾性シール部材を圧縮し、その圧縮した状態でコネクタハウジングを型成形することにより達成できる。
【0015】
このように型成形すると、仕切り壁には、突起部を圧接した箇所において当該突起部の形状に応じた型成形痕が形成される。この型成形痕により、弾性シール部材の一部が露出した構造となるが、その型成形痕以外の箇所においては仕切り壁と密着して被覆されているため、従来法のように単に被覆シール部材を仕切り壁に対して層状に被覆した構造と比較して、外気等に曝される面積が少なく、劣化が抑制(例えば型成形痕の数,形状に応じて抑制)された構造となっている。なお、型成形痕により弾性シール部材の一部が露出したままでも良いが、その型成形痕をポッティング等により閉塞しても良い。
【0016】
例えば従来法により被覆シール部材を形成する場合、そのシール材料が不用な箇所に付着したり、当該材料中に気泡が存在あるいは表面(液状シール材料等の表面)が傾斜した状態で固化してしまうこともあり、その被覆シール部材の中継端子,コネクタハウジングに対する密着不良や配線の接続不良等が起こる虞がある。また、例えばコネクタハウジングが温度変化により収縮,膨張等が起こる場合、そのコネクタハウジングと被覆シール部材との間の界面に隙間が生じ密着不良を起こす虞がある。一方、本実施形態のように予め形成された弾性シール部材を仕切り壁内に埋設する手法によれば、前記のような密着不良,接続不良等を抑制できる。
【0017】
本実施形態においては、前記のように弾性シール部材が圧縮された状態で仕切り壁内に埋設され、また中継端子が仕切り壁および弾性シール部材を貫通し両端がそれぞれ前記内部空間における機器内側,機器外側に突出するように一体化できる形態であれば、以下に示すようにコネクタ分野で一般的に知られている技術を適宜適用することが可能である。
【0018】
中継端子が仕切り壁および弾性シール部材を貫通するようにコネクタハウジングを型成形するには、例えば中継端子をインサート部品とし弾性シール部材と一体化するように型成形(一次成形)してインサート部材(一次成形体)を得て、そのインサート部材とコネクタハウジングとが一体化するように型成形(二次成形)することが挙げられる。前記インサート部材は、中継端子を貫通させるための孔が穿設された弾性シール部材を予め形成しておき、その孔に対して中継端子を貫通させて構成しても良い(後述の実施例参照)。
【0019】
コネクタハウジングは、目的とする機器の隔壁の貫通孔にコネクタを貫装させた状態(以下、貫装時と称する)で機器内外の配線を接続できるものであれば、種々の形態のものを適用することができる。例えば筒状側壁は、横断面形状が真円状に限定されるものではなく、機器隔壁の貫通孔や配線の形状等に応じて設計されるものである。また、筒状側壁の外周側から当該筒状側壁の径方向に突出した鍔状のフランジ部が形成された構造の場合には、そのフランジ部を単に目的とする機器の隔壁にコネクタを固定(例えば螺子締め等により固定)するために利用できるだけでなく、貫装時にコネクタを機器内側に対して埋め込み過ぎないように抑制するストッパーとして機能させることが可能となる。
【0020】
仕切り壁においては、筒状側壁の内部空間における機器内側と機器外側とを仕切るものであって、その仕切り壁および当該仕切り壁内に圧縮して埋設された弾性シール部材に対し中継端子が貫通して、機器内外の配線の接続を妨げない形状であれば良い。また、前記のように圧縮された弾性シール部材が埋設されるため、その弾性シール部材の復元力に耐え得る構造にすることが考えられる。
【0021】
弾性シール部材においては、前記のように中継端子が貫通されるものであり、仕切り壁内において圧縮された状態で埋設できるものであれば良い。例えば、仕切り壁と同様の形状(平板状等)のものを適用することが挙げられるが、圧縮前の形状が仕切り壁よりも大きくても(例えば肉厚が厚くても)、圧縮によって形状が縮小され仕切り壁内に埋設されれば良い。
【0022】
仕切り壁内に弾性シール部材を埋設する他に、コネクタハウジングの所望の箇所にシール部材を設けても良い。例えば、コネクタハウジングの筒状側壁の外周側で周方向に延在するシール部材用環状溝を形成し、その環状溝に対して環状シール部材を嵌合することにより、貫装時における機器内外のシール性を付与することが挙げられる。この環状溝や環状シール部材においては、前記のようにフランジ部を有する構造の場合、そのフランジ部よりも機器内側の筒状側壁に対して設けることが考えられる。例えば、貫装時に貫通孔の開口部の縁部に近接する位置に対向するように環状シール部材を設けた構造、すなわち環状シール部材がフランジ部に近接して設けられた構造であっても、その環状シール部材により貫装時に機器内外をシールできれば良い。
【0023】
成形型においては、型成形時に弾性シール部材に対して圧接される突起部を有するものであって、この突起部により弾性シール部材を圧縮した状態で仕切り壁内に埋設するように型成形できる構造であれば良い。突起部においては、仕切り壁の機器内側面,機器外側面と対向する各成形面の両方に対して備える必要はなく、各成形面のうち何れか一方に対してのみ備えられた構造であっても、前記のように弾性シール部材を圧縮することは十分可能である。また、一方の成形面だけに突起部を備えた成形型を適用する場合、他方の成形面に対向する仕切り壁の面においては型成形痕が形成されないため、より劣化を抑制することが可能となる。なお、中継端子が機器内側,機器外側それぞれに突出した状態で型成形するため、例えば当該突出した中継端子が嵌入可能な孔を具備した成形型を適用し、目的とする型成形が阻害されないようにすることが考えられる。
【0024】
成形型の成形面に形成される突起部は、弾性シール部材における中継端子が貫通する位置の周縁側で中継端子から所定距離を隔てた位置を圧接できる構造にすることが挙げられる。突起部が中継端子の貫通位置に隣接した位置(すなわち距離を隔てない位置)を圧接する場合、仕切り壁と中継端子との接合面が型成形痕により露出してしまい、中継端子と弾性シール部材との密着性も少なからず低下し得るため好ましくない。
【0025】
また、突起部の形状、個数,位置については、中継端子の個数,貫通位置に応じて適宜設定することができる。例えば複数個の凸状突起部が分散配置して形成された成形型を適用することにより、それら突起部を弾性シール部材に対し略均等の圧接力により圧接させて弾性シール部材を圧縮することが挙げられる。
【0026】
前記のコネクタハウジング,中継端子,弾性シール部材等に適用する材料においては、例えばコネクタの分野で利用されているものであれば特に限定されないが、目的とする機器に応じた特性(絶縁性,防水性,耐候性,耐腐食性,導電性,耐衝撃性等)を付与できる材料であって、それぞれ型成形により一体化されるものが挙げられる。その具体例として、コネクタハウジングには熱硬化性樹脂等の絶縁性材料を適用したり、中継端子には銅等の導電性材料を適用することが挙げられる。弾性シール部材においては、シリコーンゴム,アクリルゴム,ウレタンゴム等の弾性材料を適用することが挙げられる。
【0027】
<実施例>
図1に示すように実施例のコネクタ10は、コネクタハウジング2に対し中継端子3,弾性シール部材4が型成形により一体化されたものである。このコネクタハウジング2は、筒状側壁21を有するものであって、その筒状側壁21の内部空間の中央部には、その内部空間を横断する方向に延在した仕切り壁22が形成されている。この仕切り壁22により、前記の内部空間における機器内側に位置する空間部23と機器外側に位置する空間部24とが、互いに分離して形成されている。筒状側壁21の外周側の中央部には、当該筒状側壁21の径方向に突出した鍔状のフランジ部25が形成される。筒状側壁21の外周側でフランジ部25よりも機器内側には、横断面凹字状の環状溝26が当該筒状側壁21の周方向に沿って延設され、この環状溝26に対して環状シール部材(Oリング)27が嵌合される。
【0028】
中継端子3は、目的とする機器内外の配線を電気的に中継するピン状の端子であって、前記仕切り壁22を貫通して筒状側壁21の軸心方向に沿って延在するように複数個設けられ、両端がそれぞれ仕切り壁22から前記空間部23,24に突出している。弾性シール部材4は、仕切り壁22よりも薄肉の平板状で前記中継端子3が貫通可能な複数個の貫通孔41を有するシール部材であり、圧縮された状態および貫通孔41に中継端子3が貫通された状態で、仕切り壁22内に埋設されている。符号20は、仕切り壁22の機器内側,機器外側において中継端子3から所定距離を隔てた位置に形成された型成形痕を示すものであって、型成形時に、前記弾性シール部材4を圧縮するために形成されたものである。
【0029】
このような構成のコネクタ10を型成形するには、まず図2に示すように、予め形成された弾性シール部材4の各貫通孔41に対し、中継端子3を当該中継端子3の中央部が貫通孔41内に位置するまで貫通させて、インサート部材1を構成する。また、コネクタハウジング2を型成形する成形型として、筒状側壁21を形成するためのキャビティ(材料が注入される空洞)を構成する型部材(図示省略)や、図3に示すように、筒状側壁21内の空間部23,24側に挿入された際に中継端子3(突出した中継端子)が嵌入する嵌入孔53を持つ部材であって当該挿入時に仕切り壁22を形成するためのキャビティを構成する型部材51,52など、を備えた金型が用いられる。この型部材51,52においては、図3のように仕切り壁22の機器内側,機器外側に対向する成形面51a,52aにおける中継端子3から所定距離を隔てた位置に、複数個の凸状突起部54が設けられている。
【0030】
次に、前記の金型内にインサート部材1を配置して、型部材51,52を筒状側壁21内の空間部23,24側に挿入し、各突起部54を弾性シール部材4における中継端子3から距離を隔てた位置に対して圧接して当該弾性シール部材4を圧縮し、その圧縮した状態でコネクタハウジング2の材料(熱硬化性樹脂等)を注入し固化する。そして、金型を型開きすることにより、図1に示したように、仕切り壁22内に圧縮された弾性シール部材4を埋設、および型成形痕20を形成したコネクタ10が得られる。
【0031】
このように型成形されたコネクタ10においては、図4に示すように、機器の隔壁60に穿設された貫通孔6に対して貫装して用いられ、空間部23,24に対して機器内外の各配線(図示省略)をそれぞれ嵌装し、中継端子3を介して各配線を互いに導通させる。この貫装時において、環状シール部材27が貫通孔6の内壁面61と対向して位置し、その内壁面61に対し環状シール部材27が圧接した状態にすることにより、機器内外のシール性が得られる。隔壁60の機器外側面62に係合されるフランジ部25は、例えば螺子等の締め付け手段(図示省略)を用いて固定しても良い。
【0032】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0033】
1…インサート部材
10…コネクタ
2…コネクタハウジング
20…型成形痕
21…筒状側壁
22…仕切り壁
23,24…空間部
3…中継端子
4…弾性シール部材
41…貫通孔
51,52…型部材
51a,52a…成形面
53…嵌入孔
54…突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6