【実施例】
【0009】
以下
では、先ず参考例を説明し、その後で実施例を説明する。
なお、以下では、
図1の上側を上、
図1の下側を下と称して説明するが、実際の搭載方向を限定するものではない。
【0010】
[
参考例1]
参考例1を、
図1〜
図3を参照して説明する。
燃料噴射装置は、エンジンの各気筒に燃料を噴射する電磁式インジェクタを備える。
電磁式インジェクタは、高圧通路1を介して供給される加圧燃料(燃料の種類は問わない)の噴射を行う噴射ノズル2を備えている。
【0011】
この噴射ノズル2は、
・インジェクタボディ3にリテーニングナット4等を介して締結されるノズルボディ5と、
・このノズルボディ5の内部に組み付けられるニードル6と、
を備えて構成される。
【0012】
具体的に、ノズルボディ5の内部には、上方から下方へ向けて燃料を導くノズル孔(内部空間)が形成されている。
ノズル孔の下端には、円錐形状を呈する弁座が設けられており、この弁座の下部には、燃料を噴射するための噴孔7が設けられている。
【0013】
ニードル6は、上下方向へ延びるシャフト形状を呈するものであり、ノズル孔の中心部において上下方向へ摺動自在に支持される。具体的な一例とし
て、ノズルボディ5の内部に配置されるノズルシリンダ8の内周面によって、ニードル6が上下方向へ摺動自在に支持される。
【0014】
ニードル6は、ノズル孔に供給される高圧燃料(具体的には、受圧面積差)によって上方へ向かう「上昇力」が付与される。
一方、ニードル6の上部には、後述する制御弁19によって圧力が制御される背圧室9が設けられており、「背圧室9の圧力」と「ニードル6を下方へ付勢するニードルスプリング10」の合力が、上述した「上昇力」を上回ることで、ニードル6が下方に向けて押し付けられる。
ニードル6の下端には、円錐形状を呈する縮径部が設けられており、この縮径部が弁座に着座することにより、ノズル孔の内部(高圧燃料の供給空間)と噴孔7の連通が遮断される。
【0015】
ニードル6を駆動する駆動手段として、電磁アクチュエータ11を用いている。
この電磁アクチュエータ11は、インジェクタボディ3に形成された収容空間αの内部に配置されるものであり、
・通電により磁力を発生するソレノイド12と、
・このソレノイド12が発生する磁力により上方へ磁気吸引されるアーマチャ(可動コア)13と、
・このアーマチャ13を上下方向へ摺動自在に支持するアーマチャホルダ14と、
・アーマチャ13を下方へ付勢するソレノイドスプリング15と、
を備えて構成される。
【0016】
ソレノイド12は、
・通電により磁力を発生するコイル16と、
・このコイル16が組み付けられるステータコア17と、
を備えて構成される。
【0017】
コイル16は、ボビンの周囲に、絶縁被覆が施された導線を多数巻回したものであり、通電されると磁力を発生し、ステータコア17とアーマチャ13を通る磁束ループを形成させる。
【0018】
ステータコア17は、内部にコイル16が組み付けられる磁性体製(例えば、鉄などの強磁性材料)であり、
・コイル16の内周に配置される内周極と、
・コイル16の外周に配置される外周極と、
・コイル16の上部において内周極と外周極を磁気結合する結合部と、
からなる。
また、ステータコア17の中心部には、下端から上方へ向かうバネ室が形成されており、このバネ室の内部に上下方向に圧縮された状態でソレノイドスプリング15が組み付けられる。
【0019】
ステータコア17の下端は、内周極の下端と外周極の下端にて直接磁束が流れるのを阻害する非磁性部
25が設けられている。なお、この非磁性部
25は、ステータコア17の内部にコイル16を組み付けた後、
ステータコア17とコイル16の隙間を非磁性の材料(モールド樹脂等)により閉塞
するものである。
この構成により、コイル16をONすると、内周極→結合部→外周極→アーマチャ13→再び内周極を通る磁束ループ(矢印方向は逆向きでも良い)が形成され、コイル16の発生磁力により、アーマチャ13がステータコア17に磁気吸引される。
【0020】
アーマチャ13は、ステータコア17とアーマチャホルダ14の間に配置される略円板形状を呈する磁性体製(例えば、鉄などの強磁性材料)であり、アーマチャ13の中心部から下方へ延びる円柱棒状のシャフト18が設けられている。
【0021】
アーマチャホルダ14は、アーマチャ13のシャフト18を上下方向(軸方向)へ摺動自在に支持するものであり、中心部には上下方向に貫通するシャフト18の摺動孔が形成されている。
【0022】
電磁アクチュエータ11は、背圧室9の油圧をコントロールする制御弁19を作動させるものであり
、シャフト18の下端部が制御弁19として設けられている。
この制御弁19は、リーク出口20aを介して連通される低圧通路20(燃料の一部を燃料タンクへ戻すリターン通路)と背圧室9との連通状態を切り替えるものであり、
・ソレノイド12(即ちコイル16)をONすることで、アーマチャ13および制御弁19を上昇→背圧室9の圧力を低下→ニードル6を上昇→燃料噴射を実行させ、
・ソレノイド12(即ちコイル16)をOFFすることで、アーマチャ13および制御弁19を下降→背圧室9の圧力を上昇→ニードル6を下降→噴射停止を実行させるものである。
即ち、ソレノイド12を通電制御することで、背圧室9の油圧がコントロールされて、噴射制御が実行される。
【0023】
ここで、電磁アクチュエータ11は、上述したように、インジェクタボディ3に形成された収容空間αの内部に配置される。
具体的に、インジェクタボディ3の中心部には、下端から上方へ向かう有底の収容空間αが形成されており、この収容空間αの内部に電磁アクチュエータ11が組み付けられる。
なお、収容空間αは、上下方向へ延びる円筒空間であり、その底部は収容空間αの上部に設けられる。
【0024】
収容空間αの内部には、上から下方に向かって、ソレノイド12、アーマチャ13(円板部)、アーマチャホルダ14が配置される。
即ち、収容空間αの奥部(上方)には、ソレノイド12が固定される。
【0025】
ソレノイド12の固定技術を説明する。
ソレノイド12は、アーマチャ13を貫通する貫通保持部材21により収容空間αの底部(上方)に向けて押し付けられて固定される。
【0026】
貫通保持部材21は、ソレノイド12に設けられる。
貫通保持部材21は、ステンレスなど非磁性体の部材により設けられるものであり
、図2に示すように、パイプ部材(円筒部材)の一部を切削した形状に設けられている。
具体的に、貫通保持部材21の内径寸法は、シャフト18の外径寸法より僅かに大径に設けられている。
【0027】
そして
、貫通保持部材21は、
・ステータコア17に組み付けられる円筒部21aと、
・アーマチャ13を貫通する2つの円弧部21bと、
を備える。
【0028】
円筒部21aは、バネ室の入口部分(バネ室の下部)に形成された拡径部に組み付けられるものであり、円筒部21aの上端が拡径部の上端の段差に当接する。
これにより、貫通保持部材21を上方に押す力が、段差を介してソレノイド12(具体的にはステータコア17)に伝えられる。
【0029】
2つの円弧部21bは、対向位置に平行配置されるものであり、円弧部21bの上下方向の寸法は、「アーマチャ13(円板部)の軸方向寸法」と「アーマチャ13のスライド寸法(可動距離)」の合計寸法より長く設けられている。
【0030】
一方、アーマチャ13(円板部)には、貫通保持部材21における円弧部21bを上下方向に貫通した状態で挿通させる貫通穴22が設けられている。
この貫通穴22は、円弧部21bの上下方向の移動を妨げない上下方向に貫通する穴であり、貫通保持部材21の円弧部21bの形状にほぼ合致した形状(円弧形状)に設けられている。
【0031】
これにより、
(1)収容空間αの内部に電磁アクチュエータ11の構成部品を組み付け、
(2)インジェクタボディ3の下部にオリフィスプレート23を組み付け、
(3)その下部に噴射ノズル2を組み付けて、
(4)リテーニングナット4をインジェクタボディ3に締結することにより、
ノズルボディ5およびオリフィスプレート23を介してアーマチャホルダ14が収容空間αの内部に押され、アーマチャホルダ14が貫通保持部材21を上方へ押して、貫通保持部材21がソレノイド12を上方へ押す。
その結果、ソレノイド12が収容空間αの内部に固定される。
【0032】
(
参考例1の効果1)
電磁式インジェクタは、上述したように、アーマチャ13を貫通する貫通保持部材21によりソレノイド12が収容空間αの内部に固定される。
具体的には、アーマチャホルダ14の上方に向かう力が、内周極の内側に配置される貫通保持部材21を介してソレノイド12に伝えられて、ソレノイド12がインジェクタボディ3の内部に固定される。
【0033】
これにより、
図3(a)に示す従来技術に比較して、
図3(b)に示すこの
参考例1では、アーマチャ13の外径寸法を大きく設けることができ、アーマチャ13における磁極面積の減少を防ぐことができる。この結果、従来技術に比較してアーマチャ13の吸引力の低下を防ぐことができる。
具体的な一例として、
図3(a)に示す従来技術に比較して、
図3(b)に示すこの
参考例1は、アーマチャ13の磁極面積を45%ほど増加させることができる。その結果、
図3(c)に示すように、ニードル6のリフト開始初期における磁気吸引力を、従来技術(実線A参照)に比較して、この
参考例1(実線B参照)では、40%程高めることができる。
【0034】
このように、この
参考例1の電磁式インジェクタは、アーマチャ13の吸引力の低下を防いで、ソレノイド12をインジェクタボディ3の内部に固定することができる。
具体的に、従来技術と同等の吸引力を発生させる場合は、ソレノイド12を小径化できる。あるいは、従来技術と同等の外径寸法を採用する場合は、アーマチャ13の磁気吸引力を高めることができる。その結果、アーマチャ13を下方へ押圧するソレノイドスプリング15の付勢力を高めることができるため、燃料噴射圧をさらに高めることが可能になる。
【0035】
(
参考例1の効果2)
この
参考例1の電磁式インジェクタは、収容空間αの底部とソレノイド12との間に、弾性変形可能な弾性部材24を配置している。
この弾性部材24は、収容空間αの底部とソレノイド12との間に圧縮配置されるものであり、金属製バネ(例えば、皿バネ、ウエーブワッシャ、コイルバネ等)であっても良いし、ゴム部材(弾性変形可能な樹脂部材)であっても良い。
【0036】
このように、収容空間αの底部とソレノイド12との間に、弾性変形可能な弾性部材24を配置することにより、収容空間αの底部とソレノイド12との間のクリアランス(ガタ)を弾性部材24が吸収する。これにより、電磁式インジェクタの構成部品の製造誤差を許容することができ、製造コストを抑えることが可能になる。
なお、弾性部材24は限定するものではなく、収容空間αの底部(上部)にソレノイド12の上端を直接押し付ける等の技術により、弾性部材24を廃止しても良い(例えば、
図4参照)。
【0037】
[
実施例1]
実施例1を、
図4を参照して説明する。なお、
上記参考例1と同一符号は、同一機能物を示すものである。
この実施例1は、貫通保持部材21をアーマチャホルダ14に設けるものである。なお、貫通保持部材21は、アーマチャホルダ14と一体に設けても良いし、アーマチャホルダ14に組み付けられるものであっても良い。
【0038】
この実施例1は、貫通保持部材21をステータコア17の内周極と外周極の間に配置し、貫通保持部材21がソレノイド12に当接する箇所(貫通保持部材21がソレノイド12に押圧力を付与する箇所)を、ステータコア17の内周極と外周極の間の非磁性部
25に設けるものである。
【0039】
ステータコア17の内周極と外周極の間の非磁性部
25は、磁極面を形成しない。
このため、この内周極と外周極の間の非磁性部
25に貫通保持部材21を当接させる構成を採用することで、磁極面積を減じることなく、ソレノイド12の固定を行うことができる。