【実施例】
【0140】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0141】
なお,参考例1〜4で原料として使用されている(3S,4R)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩と、比較例1で原料として使用されている(3S,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−ベンジルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルとは、いずれも国際公開第2007/102567号に記載の方法に従って製造できる。
【0142】
(参考例1)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
(3S,4R)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩15.0g(45.9mmol)に1,2−ジメトキシエタン120mLおよび水10.0mLの混合液を加えて溶解させ、39〜40℃で炭酸水素ナトリウム溶液(炭酸水素ナトリウム9.64g(0.115mmol)を水140mLで溶解したもの)を加え撹拌した。
【0143】
反応液に41〜43℃で2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド12.7gの1,2−ジメトキシエタン30.0mL溶液を滴下し、41〜43℃で2時間撹拌した。反応液にtert−ブチルメチルエーテル150mLを加えて抽出し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0144】
無水硫酸マグネシウムをろ別し、tert−ブチルメチルエーテル50.0mLで洗浄した。ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮して(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを黄色オイルとして22.5g得た。
【0145】
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)δ:0.53−0.77(4H,m),3.42(1H,dd,J=4.4,19.5Hz),2.52−2.67(2H,m),3.18−3.26(2H,m),3.36(1H,ddd,J=4.6,11.2,11.5Hz),3.54(1H,ddd,J=9.0,14.6,23.9Hz),3.70−3.83(2H,m),4.29−4.39(1H,m),5.11−5.17(2H,m),7.29−7.39(5H,m),7.63−7.66(1H,m),7.68−7.76(2H,m),8.11−8.17(1H,m).
【0146】
HPLC相対純度:96.6%(RT:4.74min)、カラム:InertsilODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:InertsilODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜20分;A液:B液=50:50(アイソクラティック)、測定波長:220nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0147】
なお、A液はリン酸をHPLC用蒸留水で1000倍に希釈して調製した。(本明細書において「A液」とは、同様に調製したリン酸水溶液を意味する。)
【0148】
(参考例2)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(4−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
(3S,4R)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩1.00g(3.06mmol)に1,2−ジメトキシエタン8.00mLを加えて懸濁させ、炭酸水素ナトリウム溶液(炭酸水素ナトリウム0.643gを水10.0mLで溶解したもの)を加え撹拌した。
【0149】
反応液に4−ニトロベンゼンスルホニルクロリド0.848g(3.83mmol)の1,2−ジメトキシエタン2.00mL溶液を滴下し、40〜45℃で2時間撹拌した。反応液にtert−ブチルメチルエーテル10.0mLを加えて抽出し、有機層を分取して、無水硫酸マグネシウムを加えた。
【0150】
無水硫酸マグネシウムをろ別し、tert−ブチルメチルエーテル5.00mLで洗浄した。ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[SiO
2,n−ヘキサン/酢酸エチル/アセトン=1/2/1(v/v)]で精製し、(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(4−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを無色オイルとして1.65g得た。
【0151】
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)δ:0.73−0.97(4H,m),2.05−2.12(1H,m),2.24(1H,dd,J=4.3,17.4Hz),2.56−2.66(1H,m),3.02(1H,ddd,J=7.3, 14.3,16.5Hz),3.17−3.45(3H,m),3.67−3.82(2H,m),4.25−4.37(1H,m),5.14(2H,s),7.26−7.39(5H,m),8.00−8.04(2H,m),8.38(2H,dd,J=3.1,8.5Hz).
【0152】
HPLC相対純度:96.2%(RT:4.77min)、カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜20分;A液:B液=50:50(アイソクラティック)、測定波長:220nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0153】
(参考例3)
(3R,4R)−3−((N−tert−ブトキシカルボニル−N−シクロプロピル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
(3S,4R)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩1.00g(3.06mmol)にテトラヒドロフラン10.0mLを加えて懸濁させ、炭酸水素ナトリウム溶液(炭酸水素ナトリウム0.643gを水10.0mLで溶解したもの)を加え撹拌した。
【0154】
反応液に二炭酸ジ−tert−ブチル0.735gを滴下し、室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル20.0mLおよび飽和食塩水20.0mLを加えて抽出し、有機層を分取して、無水硫酸マグネシウムを加えた。無水硫酸マグネシウムをろ別し、酢酸エチル10.0mLで洗浄した。
【0155】
ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮して(3R,4R)−3−((N−tert−ブトキシカルボニル−N−シクロプロピル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを無色オイルとして1.21g得た。
【0156】
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)δ:0.56−0.65(2H,m),0.73−0.79(2H,m),1.40−1.49(9H,m),2.22−2.37(1H,m),2.50−2.57(1H,m),3.13−3.41(4H,m),3.65−3.82(2H,m),4.08−4.15(1H,m),5.09−5.16(2H,m),7.27−7.40(5H,m).
【0157】
HPLC相対純度:98.1%(RT:5.22min)、カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜20分;A液:B液=60:40(アイソクラティック)、測定波長:210nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0158】
(参考例4)
(3R,4R)−3−((N−シクロプロピル−N−エトキシカルボニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
(3S,4R)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩1.00g(3.06mmol)にテトラヒドロフラン10.0mLを加えて懸濁させ、炭酸水素ナトリウム溶液(炭酸水素ナトリウム0.643gを水10.0mLで溶解したもの)を加え撹拌した。
【0159】
反応液にクロロギ酸エチル0.366mLを滴下し、40〜43℃で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル10.0mLを加えて抽出し、有機層を分取して、無水硫酸マグネシウムを加えた。無水硫酸マグネシウムをろ別し、酢酸エチル5.0mLで洗浄した。
【0160】
ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮して(3R,4R)−3−((N−シクロプロピル−N−エトキシカルボニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを無色オイルとして1.06g得た。
【0161】
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)δ:0.59−0.69(2H,m),0.75−0.82(2H,m),1.22−1.32(3H,m),2.27−2.43(1H,m),2.54−2.61(1H,m),3.15−3.46(4H,m),3.65−3.79(2H,m),4.09−4.18(3H,m),5.10−5.17(2H,m),7.26−7.40(5H,m).
【0162】
HPLC相対純度:98.6%(RT:3.43min)、カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜20分;A液:B液=60:40(アイソクラティック)、測定波長:210nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0163】
(実施例1)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを溶媒(トルエン、10倍量)に溶解し、塩基(DBU、1.5当量)およびフッ素化剤(ノナフルオロブタン−1−スルホニルフルオリド、1.5当量)を順次加え、25℃で2時間撹拌した。この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表1に示す。
【0164】
(実施例2)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(4−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを基質として、実施例1と同様の方法で反応を行い、この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表1に示す。
【0165】
(比較例1)
(3S,4R)−3−((N−ベンジル−N−シクロプロピル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを基質として、実施例1と同様の方法で反応を行い、この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表1に示す。
【0166】
(比較例2)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを基質として、実施例1と同様の方法で反応を行い、この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表1に示す。
【0167】
(比較例3)
(3R,4R)−3−((N−シクロプロピル−N−エトキシカルボニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを基質として、実施例1と同様の方法で反応を行い、この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表1に示す。
【0168】
表1において、HPLC(%)とは、基質、目的物、3,4−脱離体および4,5−脱離体の面積百分率(%)を、合計100%として計算した値である。
【0169】
各成分の面積百分率(%)=(各成分の面積値)/(各成分の合計面積値)×100
【0170】
目的物の単離収率が得られたものに関しては、備考欄に記載した。また、使用したHPLCの測定条件は、下記の通りである。
【0171】
実施例1および実施例2のHPLC測定条件
カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜20分;A液:B液=60:40(アイソクラティック)、測定波長:220nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0172】
比較例1のHPLC測定条件
カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:5mmol/Lオクタンスルホン酸ナトリウム含有薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜40分;A液:B液=65:35(アイソクラティック)、測定波長:210 nm、カラム温度:40℃、流量:1.0mL/min
【0173】
比較例2および比較例3のHPLC測定条件
カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜20分;A液:B液=60:40(アイソクラティック)、測定波長:210nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0174】
【表1】
【0175】
表1に示すように、N−置換―アミノ基上の保護基[一般式(1)におけるPG
2]として2−ニトロベンゼンスルホニル基(実施例1)および4−ニトロベンゼンスルホニル基(実施例2)を用いた場合、4,5−脱離体は少量生成するものの、3,4−脱離体の生成は全く認められずに反応は完結した。
【0176】
一方、ベンジル基(比較例1)を用いた場合、3,4−脱離体および4,5−脱離体がそれぞれ増加した。tert−ブトキシカルボニル基(比較例2)およびエトキシカルボニル基(比較例3)を用いた場合、反応が完結しない上に4,5−脱離体およびその他の不純物の増加が認められた。
【0177】
これらの結果から、N−置換―アミノ基上の保護基[一般式(1)におけるPG
2]としてニトロベンゼンスルホニル基を用いた場合には、ベンジル基(比較例1)を用いた場合に生成する3,4−脱離体が生成せず、また、その他の保護基を用いた場合に比較し4,5−脱離体の生成量も少ないことがわかった。すなわち、anti−1−保護−3−(N−置換−N−ニトロベンゼンスルホニルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン光学活性体を、フッ素化剤を用いてフッ素化することにより、高収率で、高純度のsyn−1−保護−3−(N−置換−N−ニトロベンゼンスルホニルアミノメチル)−4−フルオロピロリジン誘導体光学活性体が得られることがわかった。
【0178】
以下、表2〜表4において、基質とは(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル、目的物とは(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを指す。
【0179】
HPLC(%)とは、基質、目的物、および4,5−脱離体の面積百分率(%)を、合計100%として計算した値である。
各成分の面積百分率(%)=(各成分の面積値)/(各成分の合計面積値)×100
【0180】
また、使用したHPLCおよびTLCの測定条件は、下記の通りである。
HPLC条件
カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜20分;A液:B液=60:40(アイソクラティック)、測定波長:220nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
TLC条件
Silica gel60,酢酸エチル:n−ヘキサン=2:1
【0181】
(実施例3〜7)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、表2に記載の溶媒(10倍量)に溶解した。表2に記載の塩基(1.5当量)とフッ素化剤(ノナフルオロブタン−1−スルホニルフルオリド、1.5当量)を順次加え、25℃で2時間撹拌した。この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表2に示す。
【0182】
(比較例4〜6)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、表2に記載の溶媒(10倍量)に溶解した。表2に記載の塩基(1.5当量)とフッ素化剤(ノナフルオロブタン−1−スルホニルフルオリド、1.5当量)を順次加え、25℃で2時間撹拌した。この反応液のHPLC測定またはTLCによる反応モニタリングを行った。その結果を表2に示す。
【0183】
【表2】
【0184】
表2に示すように、塩基として、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(実施例1)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(実施例3)および1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(実施例4)を用いても反応は進行した。一方、ジイソプロピルエチルアミン(比較例4)および2,4,6−コリジン(比較例5)を用いた場合、反応は進行しなかった。
【0185】
また、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(比較例6)を用いた場合、反応が完結しない上に、4,5−脱離体が1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンを用いた場合(実施例1)と比較して顕著に増加した。
【0186】
これらの結果から、塩基としてアミジンまたはグアニジン構造を有する有機塩基を用いて、一般式(6)で表される化合物またはその鏡像異性体をフッ素化することにより、フッ素化反応を進行させることができるとともに、フッ素化反応を完結させることができ、4,5−脱離体の副成を抑制できることがわかった。
【0187】
溶媒として、トルエン(実施例1)、1,2−ジメトキシエタン(実施例5)、ジクロロメタン(実施例6)および酢酸イソプロピル(実施例7)を用いた場合も反応は進行したが、酢酸イソプロピル(実施例7)を用いた場合には、反応が完結しなかった。また、トルエン(実施例1)を用いた場合に、実施例5〜7と比較して目的物の収率が高く、4,5−脱離体の副成量も低いことがわかった。
【0188】
この結果から、フッ素化反応に用いる溶媒は、トルエン、1,2−ジメトキシエタンまたはジクロロメタンが好ましく、トルエンがより好ましいことがわかった。
【0189】
(実施例8〜11)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、表3に記載の溶媒量のトルエンに溶解した。塩基(DBU、1.5当量)とフッ素化剤(ノナフルオロブタン−1−スルホニルフルオリド、1.5当量)を順次加え、表3に記載の温度にて2時間撹拌した。この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表3に示す。
【0190】
【表3】
【0191】
表3に示すように、反応温度の検討を行った結果、25℃の場合(実施例1)に比べて5℃の場合(実施例8)の方が、4,5−脱離体の生成抑制が認められた。この結果から、フッ素化反応の反応温度を10℃以下とすることにより、4,5−脱離体の副成を効果的に抑制できることがわかった。
【0192】
また、溶媒量の検討を行った結果、10倍量の場合(実施例8)に比べて20倍量(実施例10)、40倍量(実施例11)と増加するに従い、4,5−脱離体の生成抑制が認められた。一方、溶媒量を5倍量(実施例9)に減少させた場合には、わずかに脱離体の生成増加が認められた。また、溶媒量が40倍量(実施例11)の場合、20倍量(実施例10)の場合と比較して、目的物の収率が低下した。
【0193】
この結果から、一般式(6)で表される化合物またはその鏡像異性体のフッ素化反応において、一般式(6)で表される化合物またはその鏡像異性体に対し、溶媒を15〜25倍量使用することにより、4,5−脱離体の副成を効果的に抑制できるとともに、高収率で目的物が得られることがわかった。
【0194】
(実施例12)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(トルエン、20倍量)に溶解した。塩基(DBU、1.5当量)を加えて5℃まで冷却した後、フッ素化剤(トリデカフルオロヘキサン−1−スルホニルフルオリド、1.5当量)を加え、同温で2時間撹拌した。この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表4に示す。
【0195】
(実施例13)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(トルエン、20倍量)に溶解した。塩基(DBU、1.5当量)を加えて5℃まで冷却した後、フッ素化剤(ヘプタデカフルオロオクタン−1−スルホニルフルオリド、1.5当量)を加え、同温で2時間撹拌した。この反応液のHPLC測定を行った。その結果を表4に示す。
【0196】
(比較例7)
(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(トルエン、20倍量)に溶解した。塩基(DBU、1.5当量)を加えて5℃まで冷却した後、フッ素化剤(p−トルエンスルホニルフルオリド、1.5当量)を加え、同温で2時間撹拌した。その結果を表4に示す。
【0197】
【表4】
【0198】
フッ素化剤としてトリデカフルオロヘキサン−1−スルホニルフルオリド(実施例12)およびヘプタデカフルオロクタン−1−スルホニルフルオリド(実施例13)を使用した場合、ノナフルオロブタン−1−スルホニルフルオリドを用いた場合(実施例10)とほぼ同等の結果を与えた。一方、求核的なフッ素化剤ではないp−トルエンスルホニルフルオリド(比較例7)では反応が進行しなかった。
【0199】
以下、表5〜表8において、HPLC(%)とは、反応終了時における目的物((3S,4S)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル)の面積百分率(%)である(溶媒由来のブランクは補正)。目的物の単離収率が得られたものに関しては、備考欄に記載した。また、使用したHPLCおよびTLCの条件は、下記の通りである。
【0200】
HPLC条件
カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜10分;A液:B液=82:18(アイソクラティック)、10〜30分;A液:B液=82:18→20:80(リニアグラジエント)、測定波長:215nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0201】
TLC条件
Silica gel60,酢酸エチル:n−ヘキサン:アセトン=1:2:1
【0202】
(実施例14)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、5倍量)に溶解した。チオール(チオグリコール酸、2当量)および塩基(水酸化リチウム1水和物、5当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した。
【0203】
この反応液に炭酸水素ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、室温で数時間静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表5に示す。
【0204】
(実施例15)
実施例14と同様の方法で、表5に記載の溶媒(5倍量)と塩基(5当量)を使用して反応を行った。その結果を表5に示す。
【0205】
(参考例5〜6)
実施例14と同様の方法で、表5に記載の溶媒(5倍量)と塩基(5当量)を使用して反応を行った。その結果を表5に示す。
【0206】
【表5】
【0207】
表5に、一般式(7)で表される化合物またはその鏡像異性体のアミノ基上の保護基をチオール化合物および塩基を用いて脱保護する反応において、チオール化合物としてチオグリコール酸を使用した場合の検討結果を纏めた。
【0208】
表5に示すように、塩基として水酸化リチウム1水和物を用い、DMF中で反応を行うことにより、目的物を得ることができた(実施例14)。一方、塩基として水酸化セシウム1水和物を用いてDMF中で反応を行った場合には、副生成物(ニトロ基の還元体)が生成したものの、反応が進行した(実施例15)。また、溶媒としてアセトン(参考例5)またはアセトニトリル(参考例6)を用いた場合には、反応は進行しなかった。
【0209】
この結果から、脱保護反応において、チオール化合物としてチオグリコール酸を用いる場合、塩基としてアルカリ金属の水酸化物を用いることが好ましいことがわかった。また、塩基としてアルカリ金属の水酸化物を用いる場合、溶媒はアミド系溶媒を用いることが好ましいことがわかった。
【0210】
(実施例16)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、5倍量)に溶解した。チオール(1−ドデカンチオール、1.5当量)および塩基(水酸化リチウム1水和物、2当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した後、昇温して50℃で2時間撹拌した。
【0211】
この反応液に酢酸エチルを加え、3mol/L塩酸で抽出した。水層に水酸化ナトリウム溶液を加えて塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、室温で数時間静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表6に示す。
【0212】
(実施例17〜18)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(アセトニトリル、5倍量)に溶解した。表6に記載のチオール(1.5当量)および塩基(炭酸セシウム、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した。
【0213】
この反応液に酢酸エチルを加え、3mol/L塩酸で抽出した。水層に水酸化ナトリウム溶液を加えて塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、室温で数時間静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表6に示す。
【0214】
(実施例19)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(アセトニトリル、5倍量)に溶解した。チオール(2−カルボキシベンゼンチオール、2.0当量)および塩基(炭酸セシウム、5.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した後、昇温して50℃で2時間撹拌した。
【0215】
この反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加え、室温で静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表6に示す
【0216】
(実施例20)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(アセトニトリル、5倍量)に溶解した。チオール(4−カルボキシベンゼンチオール、2.0当量)および塩基(炭酸セシウム、5.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した後、昇温して50℃で2時間撹拌した。その結果を表6に示す。
【0217】
【表6】
【0218】
表6に、一般式(7)で表される化合物またはその鏡像異性体のアミノ基上の保護基をチオール化合物および塩基を用いて脱保護する反応において、種々のチオール化合物を使用した場合の検討結果を示す。
【0219】
表6に示すように、脱保護反応においてチオール化合物として1−ドデカンチオールを使用した場合(実施例16)、チオグリコール酸を用いた場合(実施例14)に比べて、目的物の収率は低下するものの反応は進行した。また、4−tert−ブチルベンゼンチオール(実施例17)またはベンゼンチオール(実施例18)を使用した場合、反応は25℃で速やかに進行し、純度の高い目的物を与えた。
【0220】
また、2−カルボキシ−ベンゼンチオール(実施例19)または4−カルボキシ−ベンゼンチオール(実施例20)を使用した場合も反応は進行したが、4−カルボキシ−ベンゼンチオールを使用した場合は、反応が完結しなかった。
【0221】
これらの結果から、脱保護反応において、チオール化合物としてチオグリコール酸、C1〜C24のアルキルチオールまたは置換されていてもよいベンゼンチオールを用いることが好ましいことがわかった。
【0222】
(実施例21)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(アセトニトリル、5倍量)に溶解した。チオール(1−ドデカンチオール、1.5当量)および塩基(DBU、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した。
【0223】
この反応液に酢酸エチルを加え、3mol/L塩酸で抽出した。水層に水酸化ナトリウム溶液を加えて塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、室温で数時間静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表7に示す。
【0224】
(実施例22)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(アセトニトリル、5倍量)に溶解した。チオール(1−ドデカンチオール、1.5当量)および塩基(TMG、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した後、昇温して50℃で2時間撹拌した。
【0225】
この反応液に酢酸エチルを加え、3mol/L塩酸で抽出した。水層に水酸化ナトリウム溶液を加えて塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、室温で数時間静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表7に示す。
【0226】
(実施例23)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(アセトニトリル、5倍量)に溶解した。チオール(1−ドデカンチオール、1.5当量)および塩基(炭酸セシウム、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した後、昇温して50℃で2時間撹拌した。その結果を表7に示す。
【0227】
(比較例8)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(テトラヒドロフラン、5倍量)に溶解した。チオール(1−ドデカンチオール、1.5当量)および塩基(リチウム tert−ブトキシド、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した。その結果を表7に示す。
【0228】
【表7】
【0229】
表7に、一般式(7)で表される化合物またはその鏡像異性体のアミノ基上の保護基をチオール化合物および塩基を用いて脱保護する反応において、チオール化合物として1−ドデカンチオールを使用した場合の検討結果を纏めた。
【0230】
表7に示すように、塩基として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(実施例21)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(実施例22)、および炭酸セシウム(実施例23)を用いても、反応は進行した。炭酸セシウムを用いた場合(実施例23)は、反応は完結しなかった。
【0231】
一方、リチウム tert−ブトキシドを用いた場合(比較例8)では複雑な反応混合物となった。また、塩基として水酸化リチウム一水和物を用いた場合(実施例16)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(実施例21)および1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(実施例22)を用いた場合に比べ、使用した塩基と生成物との分離が容易であった。
【0232】
これらの結果から、脱保護反応において、チオール化合物としてC1〜24のアルキルチオールを用いる場合は、塩基としてアルカリ金属の水酸化物を用いることが好ましいことがわかった。
【0233】
(実施例24)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(アセトニトリル:水=12:1、5倍量)に溶解した。チオール(4−tert−ブチルベンゼンチオール、1.5当量)および塩基(炭酸セシウム、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した後、昇温して50℃で2時間撹拌した。その結果を表8に示す。
【0234】
(実施例25〜26)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、表8に記載の溶媒(5倍量)に溶解した。チオール(4−tert−ブチルベンゼンチオール、1.5当量)および塩基(炭酸セシウム、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した。
【0235】
この反応液に酢酸エチルを加え、3mol/L塩酸で抽出した。水層に水酸化ナトリウム溶液を加えて塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、室温で数時間静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表8に示す。
【0236】
(実施例27〜30)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、表8に記載の溶媒(5倍量)に溶解した。チオール(4−tert−ブチルベンゼンチオール、1.5当量)および塩基(炭酸カリウム、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した後、昇温して50℃で2時間撹拌した。
【0237】
この反応液に酢酸エチルを加え、3mol/L塩酸で抽出した。水層に水酸化ナトリウム溶液を加えて塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、室温で数時間静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表8に示す。
【0238】
(実施例31)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(エタノール、5倍量)に溶解した。チオール(4−tert−ブチルベンゼンチオール、1.5当量)および塩基(炭酸カリウム、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した。
【0239】
この反応液に酢酸エチルを加え、3mol/L塩酸で抽出した。水層に水酸化ナトリウム溶液を加えて塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、室温で数時間静置した。無水硫酸ナトリウムをろ別し、酢酸エチルで洗浄した後、ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮し、得られた濃縮物のHPLC測定を行った。その結果を表8に示す。
【0240】
(実施例32)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(テトラヒドロフラン、5倍量)に溶解した。チオール(4−tert−ブチルベンゼンチオール、1.5当量)および塩基(炭酸カリウム、2.0当量)を加えて、50℃で2時間撹拌した。その結果を表8に示す。
【0241】
(実施例33)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを、溶媒(アセトニトリル、5倍量)に溶解した。チオール(4−tert−ブチルベンゼンチオール、1.5当量)および塩基(炭酸カリウム、2.0当量)を加えて、25℃で2時間撹拌した後、昇温して50℃で2時間撹拌した。その結果を表8に示す。
【0242】
【表8】
【0243】
表8に、一般式(7)で表される化合物またはその鏡像異性体のアミノ基上の保護基をチオール化合物および塩基を用いて脱保護する反応において、チオール化合物として4−tert−ブチルベンゼンチオールを使用した場合の検討結果を纏めた。
【0244】
表8に示すように、塩基として炭酸セシウムを使用した場合には、テトラヒドロフラン(実施例25)または2−プロパノール(実施例26)中でも反応が完結した。含水アセトニトリル(実施例24)中では反応が完結しなかった。
【0245】
塩基として炭酸カリウムを使用した場合には、低級アルコール(実施例27、31)または低級アルコールとテトラヒドロフランとの混合溶媒を用いた場合(実施例28〜30)に、反応が完結した。一方、テトラヒドロフラン(実施例32)またはアセトニトリル(実施例33)中では反応が完結しなかった。
【0246】
これらの結果から、脱保護反応において、チオール化合物として置換されていてもよいベンゼンチオールを用いる場合は、塩基としてアルカリ金属の炭酸塩を用いることが好ましいことがわかった。また、塩基としてアルカリ金属の炭酸塩を用いる場合には、溶媒として低級アルコール若しくはテトラヒドロフラン、またはそれらの混合溶媒を用いることが好ましいことがわかった。
【0247】
(実施例34)
(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
参考例1の方法により合成した粗精製の(3R,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル15.1g(30.6mmol相当)にトルエン300mLを加えて内温45〜50℃で加熱溶解させ、内温20〜25℃で1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン6.85mL(45.9mmol)を加えて内温−20〜0℃に冷却した。内温−20〜0℃でノナフルオロブタン−1−スルホニルフルオリド8.24mL(45.9mmol)を加え、内温−20〜0℃で2時間撹拌した。
【0248】
反応液に1mol/L塩酸200mLおよびトルエン100mLを加え、有機層を分取した。有機層を1mol/L塩酸100mLおよび6%炭酸水素ナトリウム200mLで順次洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加え、数時間静置した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、トルエン50.0mLで洗浄した。
【0249】
ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮後にテトラヒドロフラン40.0mLを加えて再度減圧濃縮し、(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを黄色オイルとして14.7g得た。
【0250】
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)δ:0.62−0.77(4H,m),2.49−2.54(2H,m),2.68−2.83(1H,m),3.25(1H,ddd,J=6.3,11.0,28.3Hz),3.44−3.59(2H,m),3.62−3.93(4H,m),5.11−5.25(3H,m),7.30−7.40(5H,m),7.61−7.65(1H,m),7.69−7.77(2H,m),8.11−8.14(1H,m).
【0251】
HPLC相対純度:88.4%(保持時間:8.69分)、カラム:InertsilODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜20分;A液:B液=60:40(アイソクラティック)、測定波長:220nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0252】
(実施例35)
(3S,4S)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩
実施例34の方法により合成した(3R,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル14.7g(30.6mmol相当)をテトラヒドロフラン40.0mLに溶解し、エタノール40.0mL、炭酸カリウム8.46g(61.2mmol)および4−tert−ブチルベンゼンチオール7.92mL(45.9mmol)を順次加え、内温45〜55℃で2時間撹拌した。
【0253】
反応液に3mol/L塩酸100mLおよびn−ヘキサン20.0mLを加え、水層を分取した。有機層を1mol/L塩酸50.0mLで抽出し、水層を合一し、n−ヘキサン50.0mLで洗浄した。水層に5mol/L水酸化ナトリウム溶液100mLを加えて塩基性とし、tert−ブチルメチルエーテル300mLで抽出した。
【0254】
有機層に無水硫酸マグネシウムを加え、数時間静置した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、tert−ブチルメチルエーテル50.0mLで洗浄した。ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮した。残留物8.09g(全量)をtert−ブチルメチルエーテル40.5mLに溶解し、室温で5%塩化水素/メタノール20.2mLを加えた後、加熱し、内温35〜45℃でジイソプロピルエーテル40.5mLを加えた。
【0255】
結晶晶析後、晶析付近の温度で30分撹拌した。ジイソプロピルエーテル40.5mLを加え、1時間撹拌後冷却し、内温1〜10℃で0.5時間撹拌した。析出固体をろ取し、ジイソプロピルエーテル40.5mLで洗浄した。40℃で減圧乾燥し、白色粉末の(3S,4S)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩を6.58g(3工程 収率65%)で得た。
【0256】
融点(熱板法):161.7〜162.9℃(分解).
[α]
D26 5.4°(c1.01,メタノール).
1H−NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ:0.69−0.75(2H,m),0.79−0.97(2H,m),2.67−2.87(2H,m),3.08−3.20(2H,m),3.25−3.31(1H,m),3.57−3.82(3H,m),5.06−5.12(2H,m),5.35(1H,dd,J=2.4,53.0Hz),7.30−7.42(5H,m),9.34(2H,br s).
【0257】
HPLC相対純度:93.8%(保持時間:10.78分)、カラム:Inertsil ODS−3,4.6mm×150mm、プレカラム:Inertsil ODS−3,4.0mm×10mm、移動相:薄めたリン酸(1→1000)(A液)、アセトニトリル(B液)、0〜10分;A液:B液=82:18(アイソクラティック)、10〜30分;A液:B液=82:18→20:80(リニアグラジェント)、測定波長:210nm、カラム温度:30℃、流量:1.0mL/min
【0258】
(参考例8)
(3S,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
(3R,4S)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩4.00g(12.2mmol)に1,2−ジメトキシエタン32mLに溶解させ、炭酸水素ナトリウム溶液(炭酸水素ナトリウム2.57g(30.6mmol)を水40mLで溶解したもの)を加えて、室温で0.5時間撹拌した。
【0259】
混合物に2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド3.39g(15.3mmol)の1,2−ジメトキシエタン8mL溶液を滴下し、その後35℃で2時間撹拌した。反応液にtert−ブチルメチルエーテル40mLを加えて撹拌し、静置後有機層を分取した。
【0260】
有機層に無水硫酸マグネシウムを加えた。無水硫酸マグネシウムをろ別し、tert−ブチルメチルエーテル20mLで洗浄した。ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮して(3S,4S)−3−[N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル]−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを黄色オイルとして6.25g(定量的)得た。
【0261】
[α]
D25−53.6°(c1.11, CHCl
3)
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)δ:0.52−0.78(4H,m),2.48−2.71(2H,m),3.17−3.28(2H,m),3.31−3.39(1H,m),3.41−3.60(2H,m),3.68−3.86(2H,m),4.25−4.42(1H,m),5.14(2H,s),7.28−7.40(5H,m),7.61−7.76(3H,m),8.12−8.15(1H,m).
【0262】
HPLC相対純度:94.0%(RT:11.5min)、カラム:CERI L−column2 ODS2,4.6mm×250mm(3μm)、プレカラム:CERI L−column2 ODS,4.0mm×10mm(3μm)、移動相:アセトニトリル(C液)、pH6.9のリン酸緩衝液(D液)、0〜40分;C液:D液=50:50→80:20(リニアグラジエント)、測定波長:210nm、カラム温度:40℃、流量:0.75mL/min.
【0263】
(実施例36)
(3S,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
参考例8の方法により合成した粗精製の(3S,4S)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル6.25g(12.2mmol相当)にトルエン120mLを加え、内温50℃に加熱溶解させた後、内温20〜25℃に冷却した。混合物に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン2.75mL(18.4mmol)を加え、内温−16℃に冷却した。内温−16〜−10℃でノナフルオロブタン−1−スルホニルフルオリド3.23mL(18.4mmol)を滴下し、その後内温−10〜4℃で2時間撹拌した。
【0264】
反応液に1mol/L塩酸80mLおよびトルエン40mLを加え、有機層を分取した。有機層を1mol/L塩酸40mLおよび6%炭酸水素ナトリウム80mLで順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、残渣をトルエン20mLで洗浄した。
【0265】
ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮して(3S,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルを黄色オイルとして6.05g(定量的)得た。
【0266】
[α]
D27 11.0°(c1.13,CHCl
3)
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)δ:0.59−0.80(4H,m),2.49−2.54(1H,m),2.63−2.86(1H,m),3.25(1H,dt,J=8.5,20.0Hz),3.43−3.60(2H,m),3.62−3.73(1H,m),3.77−3.93(2H,m),5.14(2H,s),5.18(2H,d,J=52.9Hz),7.30−7.40(5H,m),7.63(1H,td,J=1.8,7.1Hz),7.67−7.77(2H,m),8.12(1H,dd,J=1.8,7.5Hz).
【0267】
HPLC相対純度:88.4%(RT:17.9min)、カラム:CERI L−column2 ODS2,4.6mm×250mm(3μm)、プレカラム:CERI L−column2 ODS,4.0mm×10mm(3μm)、移動相:アセトニトリル(C液)、pH6.9のリン酸緩衝液(D液)、0〜40分;C液:D液=50:50→80:20(リニアグラジエント)、測定波長:210nm、カラム温度:40℃、流量:0.75mL/min.
【0268】
(実施例37)
(3R,4R)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩
実施例36の方法により合成した粗精製の(3S,4R)−3−(N−シクロプロピル−N−(2−ニトロベンゼンスルホニル)アミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル6.05g(12.2mmol相当)をテトラヒドロフラン16mLに溶解し、エタノール16mLおよび炭酸カリウム3.38g(24.2mmol)を添加した。
【0269】
混合物に、4−tert−ブチルベンゼンチオール3.17mL(18.4mmol)を内温30℃付近で滴下し、その後内温50℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、3mol/L塩酸40mLおよびn−ヘキサン8mLを加えた後、水層を分取した。
【0270】
有機層を1mol/L塩酸20mLで抽出し、水層を合一した後、n−ヘキサン20mLで洗浄した。水層に5mol/L水酸化ナトリウム溶液40mLを加えて塩基性とし、tert−ブチルメチルエーテル120mLで抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、残渣をtert−ブチルメチルエーテル2mLで洗浄した。
【0271】
ろ液と洗液を合一し、減圧濃縮した。残留物(3.58g)をtert−ブチルメチルエーテル20mLに溶解し、内温24〜28℃で5%塩化水素/メタノール11.2mLを加えた後、加熱して内温40℃とした。混合物に内温40℃付近でジイソプロピルエーテル20mLを加え、結晶晶析後、同温度で30分撹拌した。
【0272】
混合物にジイソプロピルエーテル20mLを加え、40℃付近で1時間撹拌した後、徐々に内温10℃まで冷却した。析出固体をろ取し、ジイソプロピルエーテル20mLで洗浄した。40℃で減圧乾燥し、白色粉末の(3R,4R)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩を3.23g(3工程収率80%、(3R,4S)−3−(シクロプロピルアミノメチル)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル塩酸塩からの算出)得た。
【0273】
融点(熱板法):160.8〜162.4℃(分解)
[α]
D26−5.3°(c1.01,メタノール).
1H−NMR(DMSO−d
6,400MHz)δ:0.68−0.80(2H,m),0.86−1.00(2H,m),2.65−2.90(2H,m),3.03−3.37(3H,m),3.52−3.72(2H,m),3.73−3.84(1H,m),5.09(2H,s),5.36(1H,d,J=52.6Hz),7.28−7.42(5H,m),9.37(2H,brs).
【0274】
HPLC相対純度:94.7%(RT:9.7min)、カラム:CERI L−column2 ODS2,4.6mm×250mm(3μm)、プレカラム:CERI L−column2 ODS,4.0mm×10mm(3μm)、移動相:アセトニトリル(A液)、pH6.9のリン酸緩衝液(B液)、0〜40分;A液:B液=50:50→80:20(リニアグラジエント)、測定波長:210nm、カラム温度:40℃、流量:0.75mL/min.
【0275】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2010年5月31日付で出願された日本特許出願(特願2010−123889)に基づいており、その全体が引用により援用される。