【実施例1】
【0009】
[台車]
本実施例の台車1は、
図1〜
図6に示すように、台車1の荷台2上に立設されたハンドル3と、該ハンドル3に枢着される操作レバー4とを有しており、操作レバー4に固定されたインナー受部5と、荷台2の底面に固定されアウター受部13と、インナー受部5に上端が掛け止められたインナーケーブル7及びインナー受部5とアウター受部13間に介設されたアウターケーブル8とからなるブレーキワイヤー9と、荷台2の下部に枢着されて車輪制動方向に付勢されると共に制動部となる制動ピン16を有する制動アーム15とからなって、前記インナーケーブル7の下端が制動アーム15の一端に連結されて、操作レバー4の枢動で制動アーム15を連動させ制動ピン16により車輪(後輪)20を制動乃至制動解除する構成からなっている。
本実施例では制動対象を後輪としたが、前輪であってもよいし、前後両輪であってもよい。なお、符号20’は、制動機構の無い車輪(前輪)である。
【0010】
[ハンドル]
ハンドル3は、台車1の荷台2上に立設された左右一対の支柱部3aと、該支柱部3aの上部間を連結する把持部3bとからなる横倒略コ字状のパイプからなっている。
本実施例で、ハンドル3は、荷台2上に立設し固定された左右一対のブラケット2Bに各支柱部3aの基部側(下端側)が枢軸P1によって枢着されており、起伏自在に折り畳むことができる。
【0011】
このハンドル3は、
図7(b)に示すように、ブラケット2Bの第1枢軸P1より下方且つ前方位置に固定されたピン3dと、ハンドル3の下部を挟んでロック方向に付勢されたロックバー3cとによりハンドル3を起立姿勢で拘束し、該ロックバー3cを付勢力に抗して後方へ離間させることでハンドル3を折畳むことができる(図示せず)。
【0012】
[操作レバー]
操作レバー4は、ハンドル3の一対の支柱部3aに外嵌して固定される固定部6に枢着される一対のレバー片部4aと、該レバー片部4aの上部間を連結し、ハンドルの把持部3bに沿って配置される操作把持部4bとからなっている。
前記レバー片部4aは、直線状に延びて中途位置で略直角に折れ曲がる略L字状のプレートからなっており、その上端にパイプ等の杆材からなる操作把持部4bの端部が固着されている(
図3及び
図4参照)。
【0013】
[固定部]
前記固定部6は、
図3で明瞭なように、中央で分離し、分離した個所で折り返されて対峙する連接片を有する略筒体からなっており、支柱部3aに外嵌して連接片を重ね合わせボルトBで緊締してハンドル3に固定される金具からなっている。
【0014】
この固定部6に第2枢軸P2の基端が固設されており、該第2枢軸P2に操作レバー4のレバー片部4aの下端が枢着している。
レバー片部4aは、中間の角部に、インナー受部5を一体に有している。
該インナー受部5は、後述のブレーキワイヤー9のインナーケーブル7の上端の掛止部7aを掛止め、続くインナーケーブル7を通過させる溝を有している。
【0015】
また、前記第2枢軸P2には、図示例ではレバー片部4aと固定部6の周壁との間に鉤状に折れ曲がったアウター取付片8aの基端が枢着されており、該アウター取付片8aの先端は、アングル状に折れ曲がって前記インナー受部5の下方に対峙し、ブレーキワイヤー9のアウターケーブル8の上端を拘束してブレーキワイヤー9を下方へ延出させている。
【0016】
上記構成からなっているので、
図4に基づいて説明すると、操作レバー4をハンドル3に接近する方向(図中、時計方向)に枢動すると、同時に掛止部7aも変位し、インナーケーブル7を上向きに牽引する。
インナーケーブル7の牽引でアウターケーブル8に負荷がかかると、アウター取付片8aが枢動するので、アウターケーブル8はインナーケーブル7の姿勢に追随して、捻れないように変位させることができる。
【0017】
[ブレーキワイヤー]
ブレーキワイヤー9は、アウターケーブル8にインナーケーブル7を内蔵した自転車のブレーキ等に使用される公知のボーデンワイヤーと同一構造からなっている。
そして、前述のように、インナーケーブル7の上端は掛止部7aを介してレバー片部4aのインナー受部5に掛止められる。
また、アウターケーブル8の上端は、前記アウター取付片8aに取り付けられて固定される。
【0018】
このブレーキワイヤー9は前記ハンドル3の支柱部3bに沿って下降し、荷台2に貫通形成されたワイヤー嵌挿孔Hを貫挿し、荷台2の底面側で、インナーケーブル7の下端が後述の制動アーム15に連結され、アウターケーブル8の下端は、後述の支持体10に固定される(
図5、
図6参照)。
【0019】
[支持体]
荷台2の底面には、制動構造を支持する支持体10が固設されている。
支持体10は、
図5や
図6に示すように、荷台2底面に固定するための荷台取付片10aと、該取付片10aから縦に延びる縦支持部11と、縦支持部11の中途位置で横に延びる横支持部12とからなっている。
縦支持部11は、前記取付片10aから垂下し、下端が折れ曲がるアングル状の第1垂下片11aと、第1垂下片11aに重ねて固定された段違い状に折れ曲がった第2垂下片11bとからなっている。
【0020】
前記第1垂下片11aと第2垂下片11bの折れ曲がり部分の隙間に横支持片12が挿入され中央で両者に固着される。
横支持片12は、中間部分が水平に延びで中央で前記縦支持部11に固定されており、両端側はアングル状に上向きに折れ曲がった形状からなっている。
そして、一方の折曲部の水平部分がアウター受部13となっており、前記アウターケーブル8の下端を連結し固定している。
また、他方の折曲部の水平部分には貫通孔12aが形成されており、後述のコイルスプリング17の上端を掛止めるようになっている。
【0021】
[制動アーム]
前記第2垂下片11bの下端側には制動アーム15が第3枢軸P3によって枢着されている。
制動アーム15は、一体の作動片でもよいが、本実施例では、作動規制片15aと作動片15bの2つの構成部材からなっている。
【0022】
作動規制片15aは、その外端にインナーケーブル7を挿通可能な孔を有する固定ネジNを螺合しており、インナーケーブル7の下端を任意の位置で作動規制片15aに固定することができる。
また、その他端は、上下に両端で略直角に折曲げられた規制部151、152が形成されており、作動片15bの枢動範囲を規制している。
【0023】
作動片15bは、基端側が前記第3枢軸P3に枢着されており、中間位置に孔が穿設されており、前記コイルスプリング17の下端が掛け止められている。
また、作動片15bの先端には、車輪20を制動乃至制動解除するための制動ピン16が横向きに突設されている。
この作動片15bは、作動規制片15aと共に第3枢軸P3に枢着されており、前記作動規制片15aの規制部151、152に規制されながら作動規制片15aと共に連動する。
【0024】
即ち、作動片15bは、前記コイルスプリング17により、常時制動方向(本実施例では上向き)に付勢されているため、作動片15bは作動規制片15aの上方の規制部151と衝合する位置に配置される。
そして、インナーケーブル7が操作レバー4により牽引され、図中上方へ引っ張られると、作動規制片15aは、
図5中、反時計方向に枢動する。
これにより前記作動片16bも連動し、制動ピン16は図中下方へ変位する。
【0025】
ここで車輪20は、トレッド面と同心小径に形成された凹み部21を有し、該凹み部21の内周面には凹面22aと凸面22bからなる断面略波形状の凹凸面22が環状に連続して形成されている。
そして、前記制動ピン16は前記凹面22aに係脱可能な形状に設定されている。
【0026】
また、作動片15bは、作動規制片15aの上下の規制部151、152の範囲で、コイルスプリング17の付勢力に抗して変位しうるので、制動時に制動ピン16が凸面22b上にあると、凸面22bとの衝合位置で作動片16は止まるが、作動規制片15aは、作動片15bが下方の規制部152に衝合するまで枢動し、コイルスプリング17の制動方向への付勢力を高める。
そこで、制動ピン16は、上記付勢力によって凸面22bを乗り越えて凹面22aに没入することができる。
【0027】
図7及び
図8は、操作レバー4と制動との関係を示す図であり、通常、走行時には、
図7(a)に示すように、使用者は操作レバー4の操作把持部4bとハンドル3の把持部3bとを同時に手で握り締めることで、車輪20の制動を解除して、台車1を走行させることができる。
【0028】
即ち、前述のように、操作レバー4はハンドル3と重なるように操作されるので、インナーケーブル7が牽引され、制動アーム15を反時計方向に枢動する。
これによって制動ピン16は、
図7(b)に示す凹凸面22から離間する位置に変位するので、車輪20の制動は解除されており、台車1を走行できる。
【0029】
次に、
図8(a)に示すように、使用者が操作レバー4の操作把持部4bを握る手を離すことで、操作把持部4bをハンドル3の把持部3bから離間する方向に変位させると、車輪20は制動されて、台車1を停止させることができる。
【0030】
即ち、前述のように、操作レバー4はハンドル3と離間して、インナーケーブル7が下方に延びて元に戻り、制動アーム15を時計方向に枢動する。
これによって制動ピン16は、
図8(b)に示す凹凸面22の凹部22aに没入する位置に変位するので、車輪20は制動されており、台車1を停止できる。
【0031】
このように、本実施例では、ハンドル3は荷台2沿って折畳可能な構造となっているが、ハンドル2を折畳んでも、ブレーキワイヤー9の構造には影響を与えないので、ハンドル3を折畳んだ状態で上下に積み重ねた場合でも、最下段の台車1の操作レバー4を操作するので、車輪20の制動を解除し、移動させることができる。
【0032】
また、ブレーキワイヤー9はハンドル3に沿って配置することができるので、取付や交換、修理を容易に行うことができ、また、インナーケーブル7の下端と制動部16との取付位置を調整することで、操作レバーの制動ストロークの微調整を行うこともできる。
【0033】
本実施例では、制動部として制動ピンを用い、車輪の内周面に形成された凹凸面の凹部に制動ピンを没入させて制動する場合を例示したが、トレッド面を押圧して制動する構造であってもよい。
この発明は上記実施例に限定されるものではなく、要するに要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。