特許第5932673号(P5932673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932673
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】台車の制動構造
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/04 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   B62B5/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-730(P2013-730)
(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公開番号】特開2014-131901(P2014-131901A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2014年10月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年8月31日 販売 購入者 近畿配送サービス株式会社 ほか証明書記載の通り
(73)【特許権者】
【識別番号】391009707
【氏名又は名称】株式会社ナンシン
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【弁理士】
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰則
(72)【発明者】
【氏名】若月 晃
(72)【発明者】
【氏名】小名木 実
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−163056(JP,A)
【文献】 実開昭53−122821(JP,U)
【文献】 実開昭52−119251(JP,U)
【文献】 特開平09−207786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00− 5/08
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車の荷台上に立設された左右一対の支柱部の上部間を連結する把持部を有するハンドルと、ハンドルの一対の支柱部に枢着される一対のレバー片部と、該レバー片部の上部間を連結し、ハンドルの把持部に沿って配置される操作把持部とからなる操作レバーと、該操作レバーに上端が取り付けられるブレーキワイヤと、荷台の底面に固定されて下方に延びると共に、制動方向に付勢されて車輪を制動ないし制動解除する制動アームを枢着した支持体とを有し、前記車輪は、トレッド面と同心小径に形成された凹み部を有し、該凹み部の内周面には凹面と凸面からなる断面略波形状の凹凸面が環状に連続して形成されており、前記制動アームに設けた制動部を凹面に係脱してなる台車の制動構造において、
制動アームは、前記支持の下端側に基端が枢着されると共に、先端に制動部を有して制動方向となる上向きに付勢された作動片と、
該作動片と同軸で前記支持に枢着された作動規制とからなり、
該作動規制に前記作動片の後方となる外端に前記ブレーキワイヤの下端を固定し、他端に前記作動片の枢動を規制する上下一対の規制部を設けており、
該上下一対の規制部は、その範囲内で前記作動片が付勢力に抗して枢動変位しうるよう設定されており、
操作レバーをハンドルと重なる位置に操作すると、ブレーキワイヤを介して作動規制の規制部が制動方向に枢動して作動片は付勢力で制動方向に変位して車輪の制動が解除された状態となり、
操作レバーを離してハンドルから離間する方向に変位させると、作動規制が制動位置の作動片を付勢力に抗して制動解除方向に枢動して車輪が制動された状態となることを特徴とする台車の制動構造。
【請求項2】
ハンドルの支柱部が荷台に立設されたブラケットに枢着されて起伏可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の台車の制動構造。
【請求項3】
車輪が、トレッド面と同心小径に形成され凹み部を有し、該凹み部の内周面に凹凸面が連続して形成されており、
制動部が、作動片の先端に設けられて前記凹面に係脱可能なロック部材からなっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の台車の制動構造。
【請求項4】
支持が、縦に延びる縦支持部と、該縦支持部の中途位置で中央が固定されて横に延びる横支持部とからなっており、
横支持部の一端側にはブレーキワイヤのアウターケーブルの下端を連結し、アウターケーブルから伸びるインナーケーブルの下端を作動規制片に固定しており、他端側には作動片との間に介設したコイルスプリングの上端が掛止められていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の台車の制動構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押しハンドルに設けたブレーキレバーをハンドルと共に握ることで車輪の制動が解除されて台車を走行でき、ブレーキレバーを離すことで車輪が制動されるようにした台車の制動構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台車の車輪を制動する構造として、例えば特開2011−979号の運搬台車では、上面に荷物が載置可能な荷台と、垂直な一対の支柱及び該支柱の上部を連結する握持部を有して前記荷台の一端に折り畳み可能に配設されたハンドルと、前記荷台のハンドル側下面に取付けられた一対の固定車輪及び反ハンドル側下面に取付けられた一対の自由車輪と、を備えた運搬台車であって、前記ハンドルの握持部近傍に回動可能に取付けられた操作レバーと、該操作レバーに連結されて前記支柱内に嵌挿された連結ロッドと、上端が前記支柱の下部内において前記連結ロッドの下端に回動可能に連結され、その下端にブレーキ部が設けられると共にスプリングにより該ブレーキ部が常時固定車輪の外周面を押圧するように付勢されたブレーキロッドからなるブレーキ機構を備え、前記操作レバーの非操作時に、前記ブレーキ部が固定車輪の外周面に押圧されて固定車輪の回転を阻止し、前記操作レバーの操作時に前記ブレーキ部がスプリングの付勢力に抗して固定車輪から離間して固定車輪の回転を可能にすると共に、前記ハンドルを折り畳み方向に回動させることにより、操作レバー及び連結ロッドがハンドルと一体となって荷台上に折り畳まれることを特徴とする運搬台車が開示されている。
しかし、上記構成では、操作レバーとブレーキ部とを支柱内に嵌挿された連結ロッドを用いて連結するため、操作レバーは、支柱内部で支柱に枢着し、また操作レバーと連結ロッドの枢着も支柱内部に設ける必要があった。
そのため、操作レバーの修理や交換に際しては、常に支柱を分解する必要があり繁雑な作業となっていた。
また、連結ロッドとブレーキ部は、枢着されているので、ハンドルを折り畳むと同時に連結ロッドも連動して折り畳まれ、ブレーキ部との接続が切り離されてしまうため、ハンドルを折り畳んだ状態では、操作レバーを操作しても、固定車輪の制動を一切解除することができなくなり、ハンドルを折畳んだ状態では、固定車輪を走行さる方法がない、という不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、操作レバーをハンドルの支柱部分の外部で枢着して、操作レバーの交換や修理を容易に行えるようにすると共に、操作レバーとブレーキ部との間をブレーキワイヤーで連結することで、ハンドルの姿勢にかかわらず、操作レバーとブレーキ部とは常時接続された状態となっている台車の制動構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、請求項1の発明では、
台車の荷台上に立設された左右一対の支柱部の上部間を連結する把持部を有するハンドルと、ハンドルの一対の支柱部に枢着される一対のレバー片部と、該レバー片部の上部間を連結し、ハンドルの把持部に沿って配置される操作把持部とからなる操作レバーと、該操作レバーに上端が取り付けられるブレーキワイヤと、荷台の底面に固定されて下方に延びると共に、制動方向に付勢されて車輪を制動ないし制動解除する制動アームを枢着した支持体とを有し、前記車輪は、トレッド面と同心小径に形成された凹み部を有し、該凹み部の内周面には凹面と凸面からなる断面略波形状の凹凸面が環状に連続して形成されており、前記制動アームに設けた制動部を凹面に係脱してなる台車の制動構造において、
制動アームは、前記支持の下端側に基端が枢着されると共に、先端に制動部を有して制動方向となる上向きに付勢された作動片と、
該作動片と同軸で前記支持に枢着された作動規制とからなり、
該作動規制に前記作動片の後方となる外端に前記ブレーキワイヤの下端を固定し、他端に前記作動片の枢動を規制する上下一対の規制部を設けており、
該上下一対の規制部は、その範囲内で前記作動片が付勢力に抗して枢動変位しうるよう設定されており、
操作レバーをハンドルと重なる位置に操作すると、ブレーキワイヤを介して作動規制の規制部が制動方向に枢動して作動片は付勢力で制動方向に変位して車輪の制動が解除された状態となり、
操作レバーを離してハンドルから離間する方向に変位させると、作動規制が制動位置の作動片を付勢力に抗して制動解除方向に枢動して車輪が制動された状態となることを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記ハンドルの支柱部が荷台に立設されたブラケットに枢着されて起伏可能に取り付けられていることを特徴とする。
請求項3の発明では、
前記車輪が、トレッド面と同心小径に形成され凹み部を有し、該凹み部の内周面に凹凸面が連続して形成されており、
制動部が、作動片の先端に設けられて前記凹面に係脱可能なロック部材からなっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の台車の制動構造。
請求項4の発明では、
前記支持が、縦に延びる縦支持部と、該縦支持部の中途位置で中央が固定されて横に延びる横支持部とからなっており、
横支持部の一端側にはブレーキワイヤのアウターケーブルの下端を連結し、アウターケーブルから伸びるインナーケーブルの下端を作動規制片に固定しており、他端側には作動片との間に介設したコイルスプリングの上端が掛止められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の台車の制動構造では、操作レバーをハンドルの支柱部分の外部で枢着して、操作レバーの交換や修理を容易に行えるようにすると共に、操作レバーとブレーキ部との間をブレーキワイヤーで連結することで、ハンドルの姿勢にかかわらず、操作レバーとブレーキ部とは常時接続された状態となっており、操作レバーで制動操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の台車の斜視図である。
図2】同背面図である。
図3】操作レバー関連の斜め後方から見た斜視図である。
図4】同側面図である。
図5】ブレーキ部関連の後方から見た斜視図である。
図6】制動状態の車輪とブレーキ部を示す斜視図である。
図7(a)】制動解除時の台車の側面図である。
図7(b)】制動解除時の車輪部分の拡大図である。
図8(a)】制動時の台車の側面図である。
図8(b)】制動時の車輪部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
操作レバーとブレーキ部との間をブレーキケーブルで連結して、走行時にはハンドルと共に操作レバーを握って車輪の制動を解除して走行し、停止時には操作レバーを離して車輪を制動する構造とすることで、操作レバーやブレーキケーブルの交換を容易にし、操作レバーはハンドルの姿勢に関係なくブレーキ部と接続して制動乃至制動解除を可能にすることを実現した。
【実施例1】
【0009】
[台車]
本実施例の台車1は、図1図6に示すように、台車1の荷台2上に立設されたハンドル3と、該ハンドル3に枢着される操作レバー4とを有しており、操作レバー4に固定されたインナー受部5と、荷台2の底面に固定されアウター受部13と、インナー受部5に上端が掛け止められたインナーケーブル7及びインナー受部5とアウター受部13間に介設されたアウターケーブル8とからなるブレーキワイヤー9と、荷台2の下部に枢着されて車輪制動方向に付勢されると共に制動部となる制動ピン16を有する制動アーム15とからなって、前記インナーケーブル7の下端が制動アーム15の一端に連結されて、操作レバー4の枢動で制動アーム15を連動させ制動ピン16により車輪(後輪)20を制動乃至制動解除する構成からなっている。
本実施例では制動対象を後輪としたが、前輪であってもよいし、前後両輪であってもよい。なお、符号20’は、制動機構の無い車輪(前輪)である。
【0010】
[ハンドル]
ハンドル3は、台車1の荷台2上に立設された左右一対の支柱部3aと、該支柱部3aの上部間を連結する把持部3bとからなる横倒略コ字状のパイプからなっている。
本実施例で、ハンドル3は、荷台2上に立設し固定された左右一対のブラケット2Bに各支柱部3aの基部側(下端側)が枢軸P1によって枢着されており、起伏自在に折り畳むことができる。
【0011】
このハンドル3は、図7(b)に示すように、ブラケット2Bの第1枢軸P1より下方且つ前方位置に固定されたピン3dと、ハンドル3の下部を挟んでロック方向に付勢されたロックバー3cとによりハンドル3を起立姿勢で拘束し、該ロックバー3cを付勢力に抗して後方へ離間させることでハンドル3を折畳むことができる(図示せず)。
【0012】
[操作レバー]
操作レバー4は、ハンドル3の一対の支柱部3aに外嵌して固定される固定部6に枢着される一対のレバー片部4aと、該レバー片部4aの上部間を連結し、ハンドルの把持部3bに沿って配置される操作把持部4bとからなっている。
前記レバー片部4aは、直線状に延びて中途位置で略直角に折れ曲がる略L字状のプレートからなっており、その上端にパイプ等の杆材からなる操作把持部4bの端部が固着されている(図3及び図4参照)。
【0013】
[固定部]
前記固定部6は、図3で明瞭なように、中央で分離し、分離した個所で折り返されて対峙する連接片を有する略筒体からなっており、支柱部3aに外嵌して連接片を重ね合わせボルトBで緊締してハンドル3に固定される金具からなっている。
【0014】
この固定部6に第2枢軸P2の基端が固設されており、該第2枢軸P2に操作レバー4のレバー片部4aの下端が枢着している。
レバー片部4aは、中間の角部に、インナー受部5を一体に有している。
該インナー受部5は、後述のブレーキワイヤー9のインナーケーブル7の上端の掛止部7aを掛止め、続くインナーケーブル7を通過させる溝を有している。
【0015】
また、前記第2枢軸P2には、図示例ではレバー片部4aと固定部6の周壁との間に鉤状に折れ曲がったアウター取付片8aの基端が枢着されており、該アウター取付片8aの先端は、アングル状に折れ曲がって前記インナー受部5の下方に対峙し、ブレーキワイヤー9のアウターケーブル8の上端を拘束してブレーキワイヤー9を下方へ延出させている。
【0016】
上記構成からなっているので、図4に基づいて説明すると、操作レバー4をハンドル3に接近する方向(図中、時計方向)に枢動すると、同時に掛止部7aも変位し、インナーケーブル7を上向きに牽引する。
インナーケーブル7の牽引でアウターケーブル8に負荷がかかると、アウター取付片8aが枢動するので、アウターケーブル8はインナーケーブル7の姿勢に追随して、捻れないように変位させることができる。
【0017】
[ブレーキワイヤー]
ブレーキワイヤー9は、アウターケーブル8にインナーケーブル7を内蔵した自転車のブレーキ等に使用される公知のボーデンワイヤーと同一構造からなっている。
そして、前述のように、インナーケーブル7の上端は掛止部7aを介してレバー片部4aのインナー受部5に掛止められる。
また、アウターケーブル8の上端は、前記アウター取付片8aに取り付けられて固定される。
【0018】
このブレーキワイヤー9は前記ハンドル3の支柱部3bに沿って下降し、荷台2に貫通形成されたワイヤー嵌挿孔Hを貫挿し、荷台2の底面側で、インナーケーブル7の下端が後述の制動アーム15に連結され、アウターケーブル8の下端は、後述の支持体10に固定される(図5図6参照)。
【0019】
[支持体]
荷台2の底面には、制動構造を支持する支持体10が固設されている。
支持体10は、図5図6に示すように、荷台2底面に固定するための荷台取付片10aと、該取付片10aから縦に延びる縦支持部11と、縦支持部11の中途位置で横に延びる横支持部12とからなっている。
縦支持部11は、前記取付片10aから垂下し、下端が折れ曲がるアングル状の第1垂下片11aと、第1垂下片11aに重ねて固定された段違い状に折れ曲がった第2垂下片11bとからなっている。
【0020】
前記第1垂下片11aと第2垂下片11bの折れ曲がり部分の隙間に横支持片12が挿入され中央で両者に固着される。
横支持片12は、中間部分が水平に延びで中央で前記縦支持部11に固定されており、両端側はアングル状に上向きに折れ曲がった形状からなっている。
そして、一方の折曲部の水平部分がアウター受部13となっており、前記アウターケーブル8の下端を連結し固定している。
また、他方の折曲部の水平部分には貫通孔12aが形成されており、後述のコイルスプリング17の上端を掛止めるようになっている。
【0021】
[制動アーム]
前記第2垂下片11bの下端側には制動アーム15が第3枢軸P3によって枢着されている。
制動アーム15は、一体の作動片でもよいが、本実施例では、作動規制片15aと作動片15bの2つの構成部材からなっている。
【0022】
作動規制片15aは、その外端にインナーケーブル7を挿通可能な孔を有する固定ネジNを螺合しており、インナーケーブル7の下端を任意の位置で作動規制片15aに固定することができる。
また、その他端は、上下に両端で略直角に折曲げられた規制部151、152が形成されており、作動片15bの枢動範囲を規制している。
【0023】
作動片15bは、基端側が前記第3枢軸P3に枢着されており、中間位置に孔が穿設されており、前記コイルスプリング17の下端が掛け止められている。
また、作動片15bの先端には、車輪20を制動乃至制動解除するための制動ピン16が横向きに突設されている。
この作動片15bは、作動規制片15aと共に第3枢軸P3に枢着されており、前記作動規制片15aの規制部151、152に規制されながら作動規制片15aと共に連動する。
【0024】
即ち、作動片15bは、前記コイルスプリング17により、常時制動方向(本実施例では上向き)に付勢されているため、作動片15bは作動規制片15aの上方の規制部151と衝合する位置に配置される。
そして、インナーケーブル7が操作レバー4により牽引され、図中上方へ引っ張られると、作動規制片15aは、図5中、反時計方向に枢動する。
これにより前記作動片16bも連動し、制動ピン16は図中下方へ変位する。
【0025】
ここで車輪20は、トレッド面と同心小径に形成された凹み部21を有し、該凹み部21の内周面には凹面22aと凸面22bからなる断面略波形状の凹凸面22が環状に連続して形成されている。
そして、前記制動ピン16は前記凹面22aに係脱可能な形状に設定されている。
【0026】
また、作動片15bは、作動規制片15aの上下の規制部151、152の範囲で、コイルスプリング17の付勢力に抗して変位しうるので、制動時に制動ピン16が凸面22b上にあると、凸面22bとの衝合位置で作動片16は止まるが、作動規制片15aは、作動片15bが下方の規制部152に衝合するまで枢動し、コイルスプリング17の制動方向への付勢力を高める。
そこで、制動ピン16は、上記付勢力によって凸面22bを乗り越えて凹面22aに没入することができる。
【0027】
図7及び図8は、操作レバー4と制動との関係を示す図であり、通常、走行時には、図7(a)に示すように、使用者は操作レバー4の操作把持部4bとハンドル3の把持部3bとを同時に手で握り締めることで、車輪20の制動を解除して、台車1を走行させることができる。
【0028】
即ち、前述のように、操作レバー4はハンドル3と重なるように操作されるので、インナーケーブル7が牽引され、制動アーム15を反時計方向に枢動する。
これによって制動ピン16は、図7(b)に示す凹凸面22から離間する位置に変位するので、車輪20の制動は解除されており、台車1を走行できる。
【0029】
次に、図8(a)に示すように、使用者が操作レバー4の操作把持部4bを握る手を離すことで、操作把持部4bをハンドル3の把持部3bから離間する方向に変位させると、車輪20は制動されて、台車1を停止させることができる。
【0030】
即ち、前述のように、操作レバー4はハンドル3と離間して、インナーケーブル7が下方に延びて元に戻り、制動アーム15を時計方向に枢動する。
これによって制動ピン16は、図8(b)に示す凹凸面22の凹部22aに没入する位置に変位するので、車輪20は制動されており、台車1を停止できる。
【0031】
このように、本実施例では、ハンドル3は荷台2沿って折畳可能な構造となっているが、ハンドル2を折畳んでも、ブレーキワイヤー9の構造には影響を与えないので、ハンドル3を折畳んだ状態で上下に積み重ねた場合でも、最下段の台車1の操作レバー4を操作するので、車輪20の制動を解除し、移動させることができる。
【0032】
また、ブレーキワイヤー9はハンドル3に沿って配置することができるので、取付や交換、修理を容易に行うことができ、また、インナーケーブル7の下端と制動部16との取付位置を調整することで、操作レバーの制動ストロークの微調整を行うこともできる。
【0033】
本実施例では、制動部として制動ピンを用い、車輪の内周面に形成された凹凸面の凹部に制動ピンを没入させて制動する場合を例示したが、トレッド面を押圧して制動する構造であってもよい。
この発明は上記実施例に限定されるものではなく、要するに要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 台車
2 荷台
2B ブラケット
3a 支柱部
3b 把持部
3 ハンドル
4 操作レバー
4a レバー片部
4b 操作把持部
5 インナー受部
6 固定部
7 インナーケーブル
7a 掛止部
8 アウターケーブル
8a アウター取付片
9 ブレーキワイヤー
10 支持体
11 縦支持部
10a 荷台取付片
11a 第1垂下片
11b 第2垂下片
11c 折曲り片
12 横支持部
12a スプリング掛止部
13 アウター受部
14 枢動規制部
15 制動アーム
15a 作動規制片
15b 作動片
16 制動部の一例としての制動ピン
17 付勢手段の一例としてのコイルスプリング
20 車輪
21 凹み部
22 凹凸面
22a 凹面
22b 凸部
P1 第1枢軸
P2 第2枢軸
P3 第3枢軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】