特許第5932679号(P5932679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932679
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】電磁駆動装置及びスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20160526BHJP
   H04R 9/04 20060101ALI20160526BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20160526BHJP
   H04R 9/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H04R9/02 102B
   H04R9/02 102A
   H04R9/04 105B
   H04R7/04
   H04R9/04 103
   H04R9/00 C
   H04R9/02 103Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-29321(P2013-29321)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-158232(P2014-158232A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 景
(72)【発明者】
【氏名】山上 優
(72)【発明者】
【氏名】江上 勝彦
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−130349(JP,A)
【文献】 特開2013−021565(JP,A)
【文献】 特開平04−364000(JP,A)
【文献】 特開2007−174233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/00−9/04
H04R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状のマグネットと、このマグネットに磁気ギャップを介して対向配置されたヨークと、絶縁基板に平角α巻きコイルを装着した平面コイルとを備え、前記平面コイルを前記磁気ギャップ内に移動可能に配置した電磁駆動装置において、
前記平角α巻きコイルは、前記平面コイルの移動方向に対して直交方向へ延びる一対の第1コイル部と、前記平面コイルの移動方向に沿って延びる一対の第2コイル部と、これら第2コイル部から前記絶縁基板の外表面に導出された一対のリード部とを有し、
前記第2コイル部と前記リード部が配置される磁気ギャップのギャップ長に対して、前記第1コイル部が配置される磁気ギャップのギャップ長が狭く設定されていることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ヨークに突出部とその両端に連続する段落部とが一体形成されており、前記突出部を前記第1コイル部に対向させると共に、前記段落部を前記第2コイル部に対向させたことを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記マグネットを一対のプレートで挟持して積層体となし、この積層体の側端面と前記ヨークの側壁部が非磁性材料からなる締結部材を介して連結されていることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記締結部材が熱伝導率の高い金属平板からなることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁駆動装置と、この電磁駆動装置が取り付けられたベースと、このベースにダンパーを介して支持された振動板とを備え、前記振動板が前記平面コイルの前記絶縁基板に連結されていることを特徴とするスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気回路の磁気ギャップ内に平面コイルを配置して構成される電磁駆動装置と、磁気ギャップ内のボイスコイルに通電することによって振動板を駆動させるスピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に角形のスピーカは、磁気ギャップを介して対向するマグネットとヨーク等からなる磁気回路と、磁気回路の磁気ギャップ内に移動可能に配置されたボイスコイルと、ボイスコイルに連結された振動板等を備えており、磁気ギャップを横切る磁束とボイスコイルに流れる電流との相互作用によってボイスコイルを振動させるようになっている。このようなスピーカでは、磁気回路の構成部品とボイスコイルによって電磁駆動装置が構成されており、通常、ボイスコイルとして平面コイルが用いられている。
【0003】
従来より、スピーカに用いられる平面コイルとして、絶縁基板に形成した凹部内に平角α巻きコイルを埋設すると共に、平角α巻きコイルの巻き始めと巻き終わりの端部である一対のリード部を絶縁基板の外表面に露出させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような平面コイルにおいて、横長トラック形状に形成された平角α巻きコイルのうち、絶縁基板の長手方向に沿って平行に延びる一対の直線状部分が平面コイルの駆動に寄与する有効コイル部分であり、絶縁基板の短手方向に沿って平行に延びる一対の直線状部分は平面コイルの駆動に寄与しない無効コイル部分となっている。また、一対のリード部は絶縁基板の無効コイル部分に導出されており、これらリード部を介して平角α巻きコイルに通電されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2010/097974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したような電磁駆動装置では磁気ギャップのギャップ長を狭くするほどマグネットの磁気効率が高められるため、特許文献1に開示された従来のスピーカにおいては、ギャップ長を狭く設定することによってボイスコイルを効率的に駆動させることができる。しかしながら、ボイスコイルとして使用される平面コイルは、無効コイル部分である絶縁基板の両端部にリード部が導出されており、当該部分の板厚が有効コイル部分に比べて大きくなるため、磁気回路の磁気ギャップ全体をリード部の厚み分を含めたギャップ長に設定する必要があり、ギャップ長を狭めてスピーカの駆動力を高めることが困難であった。
【0006】
なお、このような問題はスピーカに限らず、磁気ギャップに平面コイルを配置して構成される電磁駆動装置を備えた他の機器、例えば、電磁駆動装置によって対物レンズを駆動する光ピックアップ等においても同様である。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、駆動力の大きな電磁駆動装置を提供することにあり、その第2の目的は、磁気ギャップのギャップ長を狭くすることのできるスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するために、本発明は、直方体形状のマグネットと、このマグネットに磁気ギャップを介して対向配置されたヨークと、絶縁基板に平角α巻きコイルを装着した平面コイルとを備え、前記平面コイルを前記磁気ギャップ内に移動可能に配置した電磁駆動装置において、前記平角α巻きコイルは、前記平面コイルの移動方向に対して直交方向へ延びる一対の第1コイル部と、前記平面コイルの移動方向に沿って延びる一対の第2コイル部と、これら第2コイル部から前記絶縁基板の外表面に導出された一対のリード部とを有し、前記第2コイル部と前記リード部が配置される磁気ギャップのギャップ長に対して、前記第1コイル部が配置される磁気ギャップのギャップ長が狭く設定されている構成とした。
【0009】
このように構成された電磁駆動装置において、平角α巻きコイルの第2コイル部とリード部は平面コイルの駆動に寄与しない無効コイル部分であるが、この無効コイル部分をギャップ長の広い磁気ギャップ内に配置すると共に、有効コイル部分である第1コイル部をギャップ長の狭い磁気ギャップ内に配置するようにしたので、必要とされる磁気ギャップのギャップ長を狭くすることができると共に、マグネットの総磁束を平面コイルの有効コイル部分に集束させることができ、駆動力の大きな電磁駆動装置を実現できる。
【0010】
上記の構成において、ヨークに突出部とその両端に連続する段落部とが一体形成されており、突出部を第1コイル部に対向させると共に、段落部を第2コイル部に対向させるように構成することが好ましい。
【0011】
この場合において、マグネットを一対のプレートで挟持して積層体となし、この積層体の側端面とヨークの側壁部とが非磁性材料からなる締結部材を介して連結されていると、磁気ギャップのギャップ長を簡単かつ確実に設定することができて好ましい。その際、締結部材がアルミニウム等の熱伝導率の高い金属平板からなると、平面コイルで発生する熱がヨークから締結部材を介して放熱されるため、放熱効果が上昇して好ましい。
【0012】
また、上記第2の目的を達成するために、本発明のスピーカは、上記した構成の電磁駆動装置と、この電磁駆動装置が取り付けられたベースと、このベースにダンパーを介して支持された振動板とを備え、この振動板が平面コイルの絶縁基板に連結されている構成とした。
【0013】
このように構成されたスピーカでは、磁気ギャップのギャップ長を平面コイルの有効コイル部分と無効コイル部分とで異ならせており、磁気回路に必要とされる有効コイル部分のギャップ長を最適な寸法に設定できるため、ギャップ長を狭めて駆動力の大きなスピーカを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電磁駆動装置では、平面コイルの無効コイル部分をギャップ長の広い磁気ギャップ内に配置すると共に、有効コイル部分をギャップ長の狭い磁気ギャップ内に配置するようにしたので、必要とされる磁気ギャップのギャップ長を狭くすることができると共に、マグネットの総磁束を平面コイルの有効コイル部分に集束させることができ、駆動力の大きな電磁駆動装置を実現できる。
【0015】
また、本発明のスピーカでは、磁気ギャップのギャップ長を平面コイルの有効コイル部分と無効コイル部分とで異ならせており、磁気回路に必要とされる有効コイル部分のギャップ長を最適な寸法に設定できるため、ギャップ長を狭めて駆動力の大きなスピーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態例に係るスピーカの平面図である。
図2図1のII−II線に沿う断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】該スピーカに備えられるボイスコイル基板の説明図である。
図5】該スピーカの組立工程を示す説明図である。
図6】該スピーカの組立工程を示す説明図である。
図7】該スピーカの組立工程を示す説明図である。
図8】該スピーカに備えられる磁気回路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1図3に示すように、本実施形態例に係るスピーカ1は、一対の載置面2a等を有するベース2と、このベース2の各載置面2aにそれぞれ積層状態で固定されたボトムプレート3とマグネット4およびトッププレート5と、これらボトムプレート3とマグネット4およびトッププレート5からなる積層体6に2つの磁気ギャップGを介して配置されたアウターヨーク7と、各アウターヨーク7を対応する積層体6に固定する計4つの締結部材8と、磁気ギャップG内に配置されたボイスコイル基板9と、磁気ギャップGから突出するボイスコイル基板9の上端部に連結された振動板10と、この振動板10の裏面とベース2の段付き部2bとの間に介設されたダンパー11とによって主に構成されている。なお、これら各部材は図示せぬ有底形状のフレーム内に収納されており、このフレームに振動板10の外縁部がエッジを介して連結されるようになっている。
【0018】
ベース2はアルミニウム等の非磁性材料からなり、このベース2には矩形状の段付き部2bを挟んで平行に延びる一対の載置面2aが形成されている。また、段付き部2bには一対の台座2cが突出形成されており、これら台座2cにそれぞれダンパー11の下面部が接着固定されている。図2に示すように、ダンパー11は全体的に椀状でその下面部は断面波形の円環状に形成されている。
【0019】
ボトムプレート3とマグネット4およびトッププレート5はいずれも板状部材であり、これら3部材はボトムプレート3とトッププレート5間にマグネット4を挟持して積層体6を構成している。ここで、ボトムプレート3はベース2の載置面2a上に接着固定されており、このボトムプレート3上にマグネット4が接着固定されると共に、マグネット4上にトッププレート5が接着固定されている。ただし、ボトムプレート3とトッププレート5はマグネット4よりも幾分幅広となっており、ボトムプレート3とトッププレート5がマグネット4に対して突出した状態で積層されている。そして、このような積層体6とアウターヨーク7によって磁気回路が構成されており、この磁気回路は2つの磁気ギャップGを有する2ギャップ構造となっている。すなわち、積層体6のボトムプレート3とトッププレート5はインナーヨークとして機能しており、ボトムプレート3とアウターヨーク7との間に下側の磁気ギャップGが形成されると共に、トッププレート5とアウターヨーク7との間に上側の磁気ギャップGが形成されている。また、マグネット4を上下のプレート3,5で挟持してなる積層体6と、積層体6に磁気ギャップGを介して対向配置されたアウターヨーク7と、磁気ギャップG内に移動可能に配置されたボイスコイル基板9とによって電磁駆動装置が構成されている。
【0020】
アウターヨーク7には、積層体6に対向して平行に延びる矩形状の突出部7aと、この突出部7aの長手方向の両端から屈曲して外側へ延びる一対の段落部7bと、段落部7bから直角に折れ曲がって後方へ延びる一対の側壁部7cとが一体形成されており、アウターヨーク7の全長はマグネット4や両プレート3,5からなる積層体6と略同じ寸法に設定されている。
【0021】
締結部材8はアルミニウム等の熱伝導率が高い平板状の非磁性材料からなり、この締結部材8をアウターヨーク7の各側壁部7cと積層体6の各側端面に接着固定することにより、アウターヨーク7は所定の磁気ギャップGを維持した状態で一対の締結部材8によって積層体6に連結されている。
【0022】
ボイスコイル基板9は磁気回路の磁気ギャップG内に配置された平面コイルであり、図4に示すように、このボイスコイル基板9は、矩形状の絶縁基板12と、この絶縁基板12に装着された平角α巻きコイル13とで構成されている。なお、図4はボイスコイル基板9を模式的に表した説明図であり、同図(a)はボイスコイル基板9の正面図、同図(b)はボイスコイル基板9の平面図、同図(c)はボイスコイル基板9の側面図をそれぞれ示している。
【0023】
平角α巻きコイル13は、ボイスコイル基板9の駆動方向に対して直交する方向(図4のX軸方向)へ延びる一対の第1コイル部13aと、これら第1コイル部13aに連続してボイスコイル基板9の駆動方向(図4のY軸方向)へ延びる一対の第2コイル部13bと、各第2コイル部13bから導出するリード部13cとを有しており、そのうち第1コイル部13aと第2コイル部13bは絶縁基板12に埋設されているが、リード部13cは第2コイル部13bの外表面上に引き出され絶縁基板12の外表面に沿って上方へ導出されている。第1コイル部13aはボイスコイル基板9の駆動に寄与する有効コイル部分(図4中の矢印A部分)であり、この有効コイル部分Aにアウターヨーク7の突出部7aが対向するようになっている。第2コイル部13bとリード部13cを含む平角α巻きコイル13の両端部はボイスコイル基板9の駆動に寄与しない無効コイル部分(図4中の矢印B部分)であり、これら無効コイル部分Bにアウターヨーク7の段落部7bがそれぞれ対向するようになっている。なお、平角α巻きコイル13は絶縁基板12の表面に接着により装着されていても良い。
【0024】
図8に示すように、磁気回路の磁気ギャップGはボイスコイル基板9の中央付近と両端部とでギャップ長を異にしており、第1コイル部13aの存する有効コイル部分Aのギャップ長をG1、第2コイル部13bとリード部13cの存する無効コイル部分Bのギャップ長をG2とすると、無効コイル部分Bのギャップ長G2に対して有効コイル部分Aのギャップ長G1が狭く設定されている(G1<G2)。これにより、リード部13cの存在によって厚みの増した無効コイル部分Bに必要とされるギャップ長G2を確保した上で、有効コイル部分Aにおけるギャップ長G1を狭く設定することができ、それに伴ってスピーカ1の駆動力を高めることができる。また、アウターヨーク7は積層体6の全長に亘って対向しており、ボイスコイル基板9の有効コイル部分Aよりもマグネット4の全長(有効長)の方が長いため、マグネット4の有効長の総磁束を平角α巻きコイル13の有効コイル部分Aに集束させて磁束密度を高めることができる。しかも、アウターヨーク7の側壁部7cと積層体6の側端面とがアルミニウム等の熱伝導率の高い締結部材8で連結されているため、ボイスコイル基板9で発生する熱をアウターヨーク7と締結部材8を介して効率良く放熱することができる。なお、磁気ギャップGの下方にボイスコイル基板9を挟むように一対の開口Sが確保されており、これら開口Sを介して後述する位置決め治具(内ギャップ治具14と外ギャップ治具15)が抜き差し可能となっている。
【0025】
振動板10は平面視矩形状に形成されており、この振動板10の相対向する2辺の外縁部が磁気ギャップGの上方に突出するボイスコイル基板9の上端部に接着固定されている。また、振動板10の裏面中央部とベース2の段付き部2bとの間に前述したダンパー11が介設されており、このダンパー11によって振動板10はボイスコイル基板9の駆動方向へ直線的に振動するようにベース2に支持されている。
【0026】
このように構成されたスピーカ1では、一対のリード部13cを介して平角α巻きコイル13に通電されると、図4(a)において上側の第1コイル部13aと下側の第1コイル部13aに逆向きの電流が流れるため、どちらの第1コイル部13aにも同じ向きの電磁駆動力が作用する。フレミングの左手の法則により、この電磁駆動力の向きはY軸方向となるので、ボイスコイル基板9が磁気ギャップG内をY軸方向へ上下動し、それに伴って振動板10が振動して音声を発生するようになっている。
【0027】
次に、本実施形態例に係るスピーカ1の組立工程を図5図7を参照して説明する。
【0028】
まず、図5(a)に示すように、一対の載置面2aや段付き部2b等が形成されたベース2を準備し、図5(b)に示すように、このベース2の各載置面2a上にそれぞれボトムプレート3を接着固定する。次に、図5(c)に示すように、ボトムプレート3上にマグネット4を接着固定した後、図5(d)に示すように、ボトムプレート3とマグネット4の外側に内ギャップ治具14を配置する。この内ギャップ治具14には所定の厚みを有する板状の位置決め突部14aが形成されており、この位置決め突部14aの厚みによってボイスコイル基板9の内面とインナーヨーク(ボトムプレート3およびトッププレート5)との間のクリアランスが規定されるようになっている。
【0029】
次に、図6(a)に示すように、マグネット4上にトッププレート5を接着固定し、ボトムプレート3とトッププレート5間にマグネット4が挟持された積層体6を形成する。なお、図5(d)に示した内ギャップ治具14の配置工程を省略し、マグネット4上にトッププレート5を接着固定して積層体6を形成した後に、積層体6の外側に内ギャップ治具14を配置するようにしても良い。
【0030】
次に、図6(b)に示すように、内ギャップ治具14の外側にボイスコイル基板9を配置した後、図6(c)に示すように、ボイスコイル基板9の外側に外ギャップ治具15を配置する。この外ギャップ治具15には所定の厚みを有する板状の位置決め突部15aが形成されており、この位置決め突部15aの厚みによってボイスコイル基板9の外面とアウターヨーク7の突出部7aとの間のクリアランスが規定されるようになっている。
【0031】
次に、図6(d)に示すように、外ギャップ治具15の外側にアウターヨーク7を配置し、このアウターヨーク7の突出部7aを位置決め突部15aに押し当てることにより、内ギャップ治具14の位置決め突部14aを積層体6のボトムプレート3とトッププレート5に圧接させる。その際、アウターヨーク7の段落部7bはボイスコイル基板9の無効コイル部分Bと非接触状態で対向するため、ボイスコイル基板9のリード部13cにアウターヨーク7からの押圧力は作用しない。
【0032】
次に、図7(a)に示すように、この状態を維持したままアウターヨーク7の側壁部7cと積層体6の側端面に締結部材8を接着固定し、アウターヨーク7の長手方向の両端部を一対の締結部材8を介して積層体6に連結する。
【0033】
次に、図7(b)に示すように、ベース2の段付き部2bに設けられた一対の台座2cにそれぞれダンパー11の下面部を接着固定した後、図7(c)に示すように、振動板10の裏面を各ダンパー11の上端に接着固定すると共に、振動板10の相対向する両外縁部を各ボイスコイル基板9の上端部にそれぞれ接着固定する。その際、ボイスコイル基板9は内ギャップ治具14と外ギャップ治具15との間に挟持されて位置規制されているため、振動板10をボイスコイル基板9に対して簡単に接着固定することができる。
【0034】
次に、図7(d)に示すように、内ギャップ治具14と外ギャップ治具15をボイスコイル基板9の板面に沿って振動板10から離反する方向(図の下方)へ抜き取ると、インナーヨーク(ボトムプレート3およびトッププレート5)とアウターヨーク7との間に磁気ギャップGが形成される。その結果、磁気ギャップGの下方に両位置決め突部14a,15aの断面形状に相当する開口Sが形成され、図1図3に示すようなスピーカ1が得られる。最後に、ベース2を磁気回路の構成部品や振動板10等と一緒に図示せぬフレーム内に収納し、このフレームの上部開口端と振動板10の外縁部とをエッジで連結することにより、スピーカ1の組立作業が完成する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態例に係るスピーカ1では、ボイスコイル基板9として絶縁基板12に平角α巻きコイル13を装着した平面コイルが用いられており、このボイスコイル基板9が配置される磁気ギャップGのギャップ長を平角α巻きコイル13の有効コイル部分Aと無効コイル部分Bとで異ならせ、第2コイル部13bとリード部13cが存在する無効コイル部分Bのギャップ長G2に対して、第1コイル部13aが存在する有効コイル部分Aのギャップ長G1が狭くなるようになっている。これにより、リード部13cの存在によって厚みの増した無効コイル部分Bに必要とされるギャップ長G2を確保した上で、有効コイル部分Aにおけるギャップ長G1を狭く設定することができ、それに伴ってスピーカ1の駆動力を高めることができる。
【0036】
また、本実施形態例に係るスピーカ1では、アウターヨーク7に突出部7aを挟んで一対の段落部7bを一体形成し、この突出部7aをボイスコイル基板9の有効コイル部分A(第1コイル部13a)に対向させると共に、段落部7bを無効コイル部分B(第2コイル部13bとリード部13c)に対向させるようにしたので、アウターヨーク7の形状によってギャップ長G1とギャップ長G2を異ならせることができる。しかも、アウターヨーク7の側壁部7cと積層体6の側端面とがアルミニウム等の熱伝導率の高い締結部材8で連結されているため、ボイスコイル基板9で発生する熱をアウターヨーク7と締結部材8を介して効率良く放熱することができる。
【0037】
なお、上記実施形態例では、電磁駆動装置を備えた機器としてスピーカ1を例示して説明したが、磁気回路の磁気ギャップに平面コイルが配置された電磁駆動装置を備える他の機器、例えば、電磁駆動装置よって対物レンズを駆動する光ピックアップに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 スピーカ
2 ベース
2a 載置面
2b 段付き部
2c 台座
3 ボトムプレート
4 マグネット
5 トッププレート
6 積層体
7 アウターヨーク
7a 突出部
7b 段落部
7c 側壁部
8 締結部材
9 ボイスコイル基板(平面コイル)
10 振動板
11 ダンパー
12 絶縁基板
13 平角α巻きコイル
13a 第1コイル部
13b 第2コイル部
13c リード部
G 磁気ギャップ
G1,G2 ギャップ長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8