【実施例1】
【0023】
図3は本発明の実施例1に係る拘束リングの正面図である。
【0024】
図4は
図3のB−B線断面図である。
【0025】
図5は
図3のC−C線断面図である。
【0026】
図6は
図5の分解図である。
【0027】
図3において、本実施例の拘束リングは複数個に分割された分割型拘束リング4となっている。この分割型拘束リング4はセグメント5、6、7に分割されており、それぞれのセグメント5、6、7はピン挿入孔5c(
図4に示す)、6c、7cにピン8を挿入することでリング状に連結できるように構成されている。また
図3に示すように、分割型拘束リング4を構成するそれぞれのセグメント5、6、7の内壁面には配管2を取り付けるための溝5a、6a、7aが機械加工によって形成されている。この溝5a、6a、7aには、あらかじめ機械加工によって薄肉に加工された配管2の薄肉部2a(
図4に示す)が各溝部5a、6a、7aにはめ込まれる。
【0028】
図4において、配管2の先端部は機械加工によって薄肉部2aとなっている。この薄肉部2aはセグメント7の内面に設けられた溝7a内に挿入されている。セグメント7の両端部は段差部7bとなっており、セグメント5の段差部5bとセグメント6の段差部6bとは重なるようになっている。それぞれの段差部5b、6b、7bにはピン挿入孔5c、6c、7cが設けられ、段差部5b、6b、7bが重なることによってピン挿入孔5c、6c、7cが形成される。このピン挿入孔5c、6c、7cにピン8が挿入されることによって一体の分割拘束リング4が形成される。分割拘束リング4の中央部には開口部4aが設けられており、この開口部4aから溶接装置(
図7で説明する)が配管2内に侵入して肉盛溶接を行うことになる。
【0029】
図5において、各セグメント5,6の両端部には段差部5b、6bが形成されている。この各段差部5b、6bには上述のピン挿入孔5c、6cが径方向に2個ずつ併設されている。なお、本図はセグメント5、6の接続部分の断面図であるため、セグメント7の接続部分は表れていない。しかしその構造はセグメント5、6と全く同じである(
図6も同様である)。
【0030】
図5に示すように、各セグメント5,6の両端部にある段差部5b、6bを重ね合わせ、各ピン挿入孔5c、6cが一致することによってピン8が挿入されて一つの拘束リング4が組立てられることになる。
【0031】
図6において、ピン8は各セグメント5,6のピン挿入孔5c、6cに対してクサビ状となる所定の角度を有するピンが使用されている。このピン8の所定の角度は、
図6に示すように、φa>φb≧φc>φd及び、φe>φf、且つ、φa>φe>φb>φd>φfを満足するようになっている。
【0032】
本実施例の特徴となる部分である、φa>φeとすることで、組立状態でのピン8がセグメント5,6,7のピン挿入孔5c、6c、7c内に確実に入り込み固定されることになる。したがって、φd>φfとすることで、組立状態でのピン8の先端がセグメント5,6,7の反対側より一部が突き出されることになり、拘束リング4を取外し時に容易に押し出し出来る仕組みとなっている。つまり、セグメント5,6,7の反対側より一部が突き出たピン8の先端を叩くことによって簡単にピン8を取り外すことができるものである。
【0033】
図7を使って分割拘束リングに取り付けられた溶接装置による肉盛溶接を説明する。
【0034】
図7は溶接装置を取り付けた分割拘束リングと配管の断面図である。
【0035】
図7において、分割拘束リング4の反配管側には溶接レール10を支持するための溶接レール取付け穴4bが設けられている。この溶接レール10に溶接装置9が回転可能に支持されている。
【0036】
溶接装置9は分割拘束リング4に設けられた開口部4aを介して配管2内に溶接ヘッド9aが侵入するようになっている。この溶接装置9は溶接レール10上を回転することによって溶接ヘッド9aが回転しながら配管2の薄肉部2a上に肉盛溶接3行う構成となっている。
【0037】
次に、
図8を使って本実施例の拘束リングにより具体的な使用手順を説明する。
【0038】
図8は本発明の実施例に係る拘束リングの使用手順を示す斜視図である。
(1)
図8Aにおいて、まずセグメント5に加工された溝5aに配管2の薄肉部2aをはめ込む。
(2)
図8Bにおいて、セグメント6も同様に配管2の薄肉部2aを溝6aにはめ込む。その時、セグメント5の段差部5bとセグメント6の段差部6bとが重なり、ピン挿入孔5c、6cが重なるように合せて配置する。
(3)
図8Cにおいて、重なったピン挿入孔5c、6cにピン8を挿入する。尚、この時点ではピン8を軽く押し付ける程度の仮止め状態にしておく。
(4)
図8Dにおいて、セグメント7も同様に配管2の薄肉部2cを溝7a(図示せず)にはめ込む。その時、セグメント5の段差部5bとセグメント6の段差部6bにセグメント7の段差部7bが重なり、ピン挿入孔5cと7c、6cと7cが重なるように合せて配置する。
(5)
図8Eにおいて、残りのピン8全てを
図4のようにピン挿入孔5c、7c及び6c、7cに挿入する。挿入後、ピン8をプラスチックハンマー等にて製品にゆるみが無くなるまで叩き、本締めを行う。
(6)
図8Fにおいて、以上でCRC工法に使用する拘束リング4の設置が完了する。
【0039】
以降、CRC工法の施工を行う。
【0040】
一方、拘束リングの取外しは、CRC工法終了後に前述の逆順にて取外し作業を行うことになる。
【0041】
本締めされたピンが拘束リング裏側に突き出ている状態となっているため、プラスチックハンマー等で裏側よりピンを叩いて取り外す。この時、ピン及び貫通穴はテーパ状であるため、軽い力で取り外すことが出来る。
【0042】
つまり、取り外しの最初はまず全てのピン8を抜き取った後、セグメント7を配管2の軸と平行方向に引っ張って取り外す。その後、同様の手順にて1つずつセグメント6、5の順で取外しを行う。
【0043】
ここで、従来の拘束リングとの違いを説明する。
【0044】
従来方法では、例えば取付けを行う際は、サイズおよび質量に応じて数人の作業者、更にチェーンブロック等の荷揚げ機を使用していた。この方法では狭隘な場所では作業の難易度が高くなり、他の作業を制限する等の処置が必要であった。それに対して、実施例の分割式の拘束リングでは、1ないし2名の作業者のみで対応できるため、他作業の制限を行う必要が無くなる。
【0045】
他作業の制限を必要としないことで、定検工程の中で拘束リング取り付け取外し作業がクリティカル作業ではなくなるため、結果的に定検期間の短期化を図ることができる。また、作業工数を低減することで、計画線量を低く設定することができる。
【0046】
また、取外しにおいても従来の拘束リングと大きな違いがある。従来方法では、一体型リング形状であるために、拘束リングを配管の軸と垂直な姿勢を保ちつつ、平行な方向へ移動させて取り外す必要があるが、CRC施工後の配管は直経が収縮しており、拘束リングの溝に配管が食い付いて動かせないといった事象が良くある。その場合は、拘束リングを切断して取り外すことになるため、切断された拘束リングは廃棄品となり、環境への負荷及び新規拘束リング製作コストへ影響する。
【0047】
それに対して本発明の実施例による分割式の拘束リングでは、固定ピンを外すことで各々が単品状態となるため、配管の収縮力は分散され、軽い力で動かすことが可能となり、形状を損なうことなく取り外すことが出来る。
【0048】
図9は本発明による拘束リングの使用方法を説明するフロー図である。
【0049】
図9において、分割拘束リングの配管への取り付け方法を説明する。
(1)配管の先端部を機械加工にて薄肉化する(ステップ101)
(2)薄肉化された配管の先端部を第1のセグメントの溝に挿入する(ステップ102)
(3)第2のセグメントの溝に配管の先端部を挿入する(ステップ103)
(4)第1と第2のセグメントの両端に設けられた段差部を重ねる(ステップ104)
(5)重ねられた段差部によってピン挿入孔を形成する(ステップ105)
(6)形成されたピン挿入孔にピンを挿入する(ステップ106)
(7)第1と第2のセグメントに第3のセグメント組合わせ、ピンを挿入して拘束リングを完成させる(ステップ107)
(8)完成された拘束リングへ溶接装置を設置する(ステップ108)
(9)配管の薄肉部に肉盛溶接を行う(ステップ109)
(10)拘束リングより溶接装置を取り外す(ステップ110)
次は分割拘束リングの取り外し方法を説明する。
(11)全てのセグメントからピンを外す(ステップ111)
(12)第3のセグメントを配管及び第1と第2のセグメントから外す(ステップ110)
(13)第2のセグメントを配管及び第1のセグメントから外す(ステップ113)
(14)第1のセグメントを配管から外す(ステップ114)
【実施例3】
【0053】
本実施例では3つのセグメントの取り付けと取り外しではセグメントの順番が決まっている。
【0054】
つまり、
図8Aに示すようにセグメント5の段差部5bは左右対称(両段差部とも上向き)となっているため、最初にセグメント5を配管に取付ける必要がある。続いて
図8Bに示すようにセグメント6の段差部6bは左右非対称(セグメント5と対向する段差部6bは下向き、セグメント7と対向する段差部6bは上向き)となっている。そのため、セグメント5の次はセグメント6を配管に取付けることになる。次に
図8Dに示すようにセグメント7の段差部7bは左右対象(両段差部とも下向き)となっているため、セグメント7は最後に配管に取付けることになる。
【0055】
取外すときはセグメント7から順次セグメント6、セグメント5の順で取外すことになる。
【0056】
以上のごとく本発明によれば、分割式による拘束リングであれば形状を損なうことなく取り外せると言う観点から、リユースが可能である。そのため、予備品や追加品の準備コストを削減できる利点がある。また、取り外せなかった場合の切断廃棄による廃棄物が無くなったことから、環境への負荷が小さくなる利点がある。
【0057】
また本発明による分割拘束リングは、軽量、且つ小サイズであることから、取扱い性が向上し、作業工数の低減が図れると同時に、被ばく線量の低減が図れるという利点がある。また、再使用が可能であるため、製造コストの低減が図れると同時に、環境への負荷低減が図れるという利点がある。
【0058】
また、ステンレス鋼配管のSCC対策は、近年における必須項目であり、その中の一つであるCRC工法は適用実績が多い工法であるため、本発明の分割式拘束リングを適用することは、工事中の安全リスク・被ばく線量管理・工程確保上、大きな利点である。
【0059】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されたものではない。またある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、またある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。