特許第5932681号(P5932681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5932681配管内面肉盛溶接用拘束リング及び拘束リングの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932681
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】配管内面肉盛溶接用拘束リング及び拘束リングの使用方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20160526BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   B23K9/04 Q
   B23K37/00 301C
   B23K9/04 Y
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-35420(P2013-35420)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-161886(P2014-161886A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊章
(72)【発明者】
【氏名】小室 貴弘
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−004392(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/115683(WO,A1)
【文献】 実開昭52−087625(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/04
B23K 37/00 − 37/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の先端に形成された薄肉部を拘束するための配管内面肉盛溶接用拘束リングであって、
前記拘束リングを複数個のセグメントに分割し、この各セグメントには前記薄肉部が挿入される溝が形成されており
前記各セグメントはピンにて連結され、
前記ピンの頭頂部は前記各セグメントの前記ピン挿入孔内に入り込み、前記ピンの先端部は前記セグメントの反対側より突き出るとともに、
前記ピンは前記ピン挿入孔内に固定出来る角度を有することを特徴とする配管内面肉盛用拘束リング。
【請求項2】
記各セグメントの両端に段差部を設け、この段差部に前記ピンのピン挿入孔を設けた請求項1に記載の配管内面肉盛用拘束リング。
【請求項3】
記ピン挿入は前記配管の径方向に2個設けられている請求項2に記載の配管内面肉盛用拘束リング。
【請求項4】
配管の先端部を機械加工にて薄肉化する工程と、
薄肉化された前記配管の先端部を第1のセグメントの溝に挿入する工程と、
第2のセグメントの溝に前記配管の前記先端部を挿入する工程と、
前記第1セグメント及び前記第2のセグメントのそれぞれの両端に設けられた段差部を重ねる工程と、
重ねられた前記段差部によってピン挿入孔を形成する工程と、
前記ピン挿入孔内に固定出来る角度を有するピンを、前記ピン挿入孔の一端から前記ピン挿入孔にピンを挿入し、前記ピンの先端部を前記ピン挿入孔の他端から突出させる工程と、
前記第1セグメント及び前記第2のセグメントのそれぞれに第3のセグメントを組合わせ、前記第1セグメント及び前記第3セグメントの、重ねられた段差部、及び前記第2セグメント及び前記第3セグメントの、重ねられた段差部のそれぞれに形成された各ピン挿入孔に、前記ピン挿入孔内に固定出来る角度を有する別のピンを前記各ピン挿入孔の一端からそれぞれ挿入し、前記別のピン先端部前記各ピン挿入孔の他端から突出させて分割拘束リングを完成させる工程と、
前記配管の薄肉部に肉盛溶接を行う工程と、
を含むことを特徴とする拘束リングの使用方法。
【請求項5】
前記ピンの先端部を叩いて前記全てのセグメントからピンを外す工程と、
前記第3のセグメントを配管及び第1と第2のセグメントから外す工程と、
前記第2のセグメントを前記配管及び第1のセグメントから外す工程と、
前記第1のセグメントを前記配管から外す工程と、
を含む請求項4に記載の拘束リングの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配管内面肉盛溶接用拘束リング及び拘束リングの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼配管の溶接部近傍における応力腐食割れ(以下、「SCC」という)に対しては、内面肉盛溶接工法(以下、「CRC」という)を施工することが行われている。
【0003】
CRCは、ステンレス鋼配管の溶接部近傍のSCC発生を抑制する技術として実用に供されている。ただし、このCRCを施工すると、溶接に伴う熱応力の影響により、配管が著しく変形する。そのため、CRC施工中は配管の変形防止用として配管拘束具を設置するのが通例となっている。
【0004】
当初は、拘束具を溶接取付け方式にて対象となる配管へ設置するのが通例となっていた。これに対し、特開昭56−4392号公報(特許文献1)には、溶接を伴わずに設置することが出来る拘束具が開発され、それまでの溶接による拘束具固定方式と比較して、拘束具の設置及び除去作業の簡略化が図れることが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−4392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の技術では、この拘束具は1リングタイプの拘束具であることから、対象となる配管の口径に比例して、拘束リングの寸法及び質量も増大する。また、CRC後の拘束リング除去作業では、ハンマーなどで叩いて除去しなくてはならない。また、CRCを施工する対象の配管口径が大きくなるに従い、拘束リングの寸法及び質量も増大するため、現場における作業者への負担が過大となってしまう。さらに、屋内または狭隘エリアで大型ハンマーを振り回すことに安全上のリスクがある。そのため、拘束リングを切断して取り外した後そのまま廃棄することが多く、製造コスト及び環境への負荷が大きいという欠点がある。
【0007】
上述したように、特許文献1は配管口径に比例して増大する拘束リングの質量及びサイズ、並びに大型ハンマーの使用による作業者に与える安全上のリスクが大きいという課題がある。また、拘束リングを扱い易い大きさ及び質量とするためにボルト締結による組立式とした場合、ステンレス材特有のボルトかじりにより締付け及び取り外し操作が困難となる。または、溶接による組立式とした場合、取外しは切断しかないため、再使用が出来なくなってしまう。
【0008】
そこで本発明の目的は、作業者への影響を最小とし、それと共に製造コスト及び環境への負荷低減を図ることが可能な配管内面肉盛溶接用拘束リング及び拘束リングの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、配管の先端に形成された薄肉部を拘束するための配管内面肉盛溶接用拘束リングであって、拘束リングを複数個のセグメントに分割し、この各セグメントにはその薄肉部が挿入される溝が形成されており、各セグメントはピンにて連結され、そのピンの頭頂部は各セグメントのピン挿入孔内に入り込み、そのピンの先端部はセグメントの反対側より突き出るとともに、ピンはピン挿入孔内に固定出来る角度を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者への影響を最小とし、それと共に製造コスト及び環境への負荷低減を図ることが可能な配管内面肉盛溶接用拘束リング及び拘束リングの使用方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の係わる拘束リングと配管の構成を説明する斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】本発明の実施例の係る分割拘束リングの正面図である。
図4図3のB−B線断面図である。
図5】第3図のC−C線断面図である。
図6図5の分解図である。
図7】本発明に係る溶接装置を取り付けた分割拘束リングと配管の断面図である。
図8A】本発明の実施例に係る拘束リングの組立手順を示す斜視図である。
図8B】本発明の実施例に係る拘束リングの組立手順を示す斜視図である。
図8C】本発明の実施例に係る拘束リングの組立手順を示す斜視図である。
図8D】本発明の実施例に係る拘束リングの組立手順を示す斜視図である。
図8E】本発明の実施例に係る拘束リングの組立手順を示す斜視図である。
図8F】本発明の実施例に係る拘束リングの組立手順を示す斜視図である。
図9】本発明による分割拘束リングの使用方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を、下記に説明する。
【0013】
図1は本発明の係わる拘束リングと配管の構成を説明する斜視図である。
【0014】
図2図1のA−A線断面図である。
【0015】
なお、図1は溝を示すために拘束リングの一部を切断している。
【0016】
図1図2において、拘束リング1は一体型のドーナツ状金属リングである。この拘束リング1の内側面にはリング状の溝1aが設けられている。この溝1aには配管2の薄肉部2aが挿入される。薄肉部2aが溝1aの挿入された状態で薄肉部2aには肉盛溶接3が施されている。この拘束リング1は溶接装置の固定部材でもあり、肉盛溶接3による配管2の変形防止部材でもある。そのため、肉盛溶接3が終了すると拘束リング1は取り外されることになる。
【0017】
肉盛溶接3は金属同士を接続するための溶接ではなく、金属の表面に所望の特性を付与するために行われるものである。本実施例による肉盛溶接は配管内面の接液部をあらかじめ鋭敏化しない溶着金属で覆うためのものであり、応力腐食割れの感受性を改善するものである。そのため、肉盛りする部分はあらかじめ薄肉に加工しておく必要がある。これは薄肉にしておかないと肉盛溶接部分が肉厚部となってしまい、配管内を流通する液体にとって肉厚部が抵抗となってしまうからである。
【0018】
さて、肉盛溶接3は拘束リング1の開口部1bから肉盛溶接のための溶接ヘッドを配管2の内部に挿入して薄肉部2a部分に肉盛溶接3を施すものである。このとき溶接装置(詳細は図7で説明する)を回転させることによって配管2の内周面を一周にわたって肉盛溶接3を行うものである。
【0019】
ところが、肉盛溶接3の溶融部分は1500℃付近まで上昇し、この溶融温度が配管2に加わる。さらに溶融部が徐々に移動するにしたがって温度は急激に下がり、配管2の外面では50℃〜200℃となってしまう。この激しい温度差によって配管2に熱収縮が発生し、変形が生じてしまう。特に肉盛溶接3は配管2の薄肉部2a部分に行われるため拘束リング1の溝1a内で変形が生じると、溝1a内で配管2が強固に固着されてしまうことになる。
【0020】
そのため作業者は配管2の先端部2aから拘束リング1を外すには、上述したようにハンマーで拘束リング1を叩いて外していたため作業者に安全上の問題があった。また、場合によっては拘束リング1を切断して取り外す場合があり、その場合拘束リングを再利用できないため、製造コスト及び環境への負荷が大きいという問題があった。
【0021】
そこで本発明の発明者らは拘束リングを簡単に取り外しができ、繰り返し再利用が可能な拘束リングを種々検討した結果、以下のごとき実施例を得た。
【0022】
以下、本発明の実施例1を図にしたがって説明する。
【実施例1】
【0023】
図3は本発明の実施例1に係る拘束リングの正面図である。
【0024】
図4図3のB−B線断面図である。
【0025】
図5図3のC−C線断面図である。
【0026】
図6図5の分解図である。
【0027】
図3において、本実施例の拘束リングは複数個に分割された分割型拘束リング4となっている。この分割型拘束リング4はセグメント5、6、7に分割されており、それぞれのセグメント5、6、7はピン挿入孔5c(図4に示す)、6c、7cにピン8を挿入することでリング状に連結できるように構成されている。また図3に示すように、分割型拘束リング4を構成するそれぞれのセグメント5、6、7の内壁面には配管2を取り付けるための溝5a、6a、7aが機械加工によって形成されている。この溝5a、6a、7aには、あらかじめ機械加工によって薄肉に加工された配管2の薄肉部2a(図4に示す)が各溝部5a、6a、7aにはめ込まれる。
【0028】
図4において、配管2の先端部は機械加工によって薄肉部2aとなっている。この薄肉部2aはセグメント7の内面に設けられた溝7a内に挿入されている。セグメント7の両端部は段差部7bとなっており、セグメント5の段差部5bとセグメント6の段差部6bとは重なるようになっている。それぞれの段差部5b、6b、7bにはピン挿入孔5c、6c、7cが設けられ、段差部5b、6b、7bが重なることによってピン挿入孔5c、6c、7cが形成される。このピン挿入孔5c、6c、7cにピン8が挿入されることによって一体の分割拘束リング4が形成される。分割拘束リング4の中央部には開口部4aが設けられており、この開口部4aから溶接装置(図7で説明する)が配管2内に侵入して肉盛溶接を行うことになる。
【0029】
図5において、各セグメント5,6の両端部には段差部5b、6bが形成されている。この各段差部5b、6bには上述のピン挿入孔5c、6cが径方向に2個ずつ併設されている。なお、本図はセグメント5、6の接続部分の断面図であるため、セグメント7の接続部分は表れていない。しかしその構造はセグメント5、6と全く同じである(図6も同様である)。
【0030】
図5に示すように、各セグメント5,6の両端部にある段差部5b、6bを重ね合わせ、各ピン挿入孔5c、6cが一致することによってピン8が挿入されて一つの拘束リング4が組立てられることになる。
【0031】
図6において、ピン8は各セグメント5,6のピン挿入孔5c、6cに対してクサビ状となる所定の角度を有するピンが使用されている。このピン8の所定の角度は、図6に示すように、φa>φb≧φc>φd及び、φe>φf、且つ、φa>φe>φb>φd>φfを満足するようになっている。
【0032】
本実施例の特徴となる部分である、φa>φeとすることで、組立状態でのピン8がセグメント5,6,7のピン挿入孔5c、6c、7c内に確実に入り込み固定されることになる。したがって、φd>φfとすることで、組立状態でのピン8の先端がセグメント5,6,7の反対側より一部が突き出されることになり、拘束リング4を取外し時に容易に押し出し出来る仕組みとなっている。つまり、セグメント5,6,7の反対側より一部が突き出たピン8の先端を叩くことによって簡単にピン8を取り外すことができるものである。
【0033】
図7を使って分割拘束リングに取り付けられた溶接装置による肉盛溶接を説明する。
【0034】
図7は溶接装置を取り付けた分割拘束リングと配管の断面図である。
【0035】
図7において、分割拘束リング4の反配管側には溶接レール10を支持するための溶接レール取付け穴4bが設けられている。この溶接レール10に溶接装置9が回転可能に支持されている。
【0036】
溶接装置9は分割拘束リング4に設けられた開口部4aを介して配管2内に溶接ヘッド9aが侵入するようになっている。この溶接装置9は溶接レール10上を回転することによって溶接ヘッド9aが回転しながら配管2の薄肉部2a上に肉盛溶接3行う構成となっている。
【0037】
次に、図8を使って本実施例の拘束リングにより具体的な使用手順を説明する。
【0038】
図8は本発明の実施例に係る拘束リングの使用手順を示す斜視図である。
(1)図8Aにおいて、まずセグメント5に加工された溝5aに配管2の薄肉部2aをはめ込む。
(2)図8Bにおいて、セグメント6も同様に配管2の薄肉部2aを溝6aにはめ込む。その時、セグメント5の段差部5bとセグメント6の段差部6bとが重なり、ピン挿入孔5c、6cが重なるように合せて配置する。
(3)図8Cにおいて、重なったピン挿入孔5c、6cにピン8を挿入する。尚、この時点ではピン8を軽く押し付ける程度の仮止め状態にしておく。
(4)図8Dにおいて、セグメント7も同様に配管2の薄肉部2cを溝7a(図示せず)にはめ込む。その時、セグメント5の段差部5bとセグメント6の段差部6bにセグメント7の段差部7bが重なり、ピン挿入孔5cと7c、6cと7cが重なるように合せて配置する。
(5)図8Eにおいて、残りのピン8全てを図4のようにピン挿入孔5c、7c及び6c、7cに挿入する。挿入後、ピン8をプラスチックハンマー等にて製品にゆるみが無くなるまで叩き、本締めを行う。
(6)図8Fにおいて、以上でCRC工法に使用する拘束リング4の設置が完了する。
【0039】
以降、CRC工法の施工を行う。
【0040】
一方、拘束リングの取外しは、CRC工法終了後に前述の逆順にて取外し作業を行うことになる。
【0041】
本締めされたピンが拘束リング裏側に突き出ている状態となっているため、プラスチックハンマー等で裏側よりピンを叩いて取り外す。この時、ピン及び貫通穴はテーパ状であるため、軽い力で取り外すことが出来る。
【0042】
つまり、取り外しの最初はまず全てのピン8を抜き取った後、セグメント7を配管2の軸と平行方向に引っ張って取り外す。その後、同様の手順にて1つずつセグメント6、5の順で取外しを行う。
【0043】
ここで、従来の拘束リングとの違いを説明する。
【0044】
従来方法では、例えば取付けを行う際は、サイズおよび質量に応じて数人の作業者、更にチェーンブロック等の荷揚げ機を使用していた。この方法では狭隘な場所では作業の難易度が高くなり、他の作業を制限する等の処置が必要であった。それに対して、実施例の分割式の拘束リングでは、1ないし2名の作業者のみで対応できるため、他作業の制限を行う必要が無くなる。
【0045】
他作業の制限を必要としないことで、定検工程の中で拘束リング取り付け取外し作業がクリティカル作業ではなくなるため、結果的に定検期間の短期化を図ることができる。また、作業工数を低減することで、計画線量を低く設定することができる。
【0046】
また、取外しにおいても従来の拘束リングと大きな違いがある。従来方法では、一体型リング形状であるために、拘束リングを配管の軸と垂直な姿勢を保ちつつ、平行な方向へ移動させて取り外す必要があるが、CRC施工後の配管は直経が収縮しており、拘束リングの溝に配管が食い付いて動かせないといった事象が良くある。その場合は、拘束リングを切断して取り外すことになるため、切断された拘束リングは廃棄品となり、環境への負荷及び新規拘束リング製作コストへ影響する。
【0047】
それに対して本発明の実施例による分割式の拘束リングでは、固定ピンを外すことで各々が単品状態となるため、配管の収縮力は分散され、軽い力で動かすことが可能となり、形状を損なうことなく取り外すことが出来る。
【0048】
図9は本発明による拘束リングの使用方法を説明するフロー図である。
【0049】
図9において、分割拘束リングの配管への取り付け方法を説明する。
(1)配管の先端部を機械加工にて薄肉化する(ステップ101)
(2)薄肉化された配管の先端部を第1のセグメントの溝に挿入する(ステップ102)
(3)第2のセグメントの溝に配管の先端部を挿入する(ステップ103)
(4)第1と第2のセグメントの両端に設けられた段差部を重ねる(ステップ104)
(5)重ねられた段差部によってピン挿入孔を形成する(ステップ105)
(6)形成されたピン挿入孔にピンを挿入する(ステップ106)
(7)第1と第2のセグメントに第3のセグメント組合わせ、ピンを挿入して拘束リングを完成させる(ステップ107)
(8)完成された拘束リングへ溶接装置を設置する(ステップ108)
(9)配管の薄肉部に肉盛溶接を行う(ステップ109)
(10)拘束リングより溶接装置を取り外す(ステップ110)
次は分割拘束リングの取り外し方法を説明する。
(11)全てのセグメントからピンを外す(ステップ111)
(12)第3のセグメントを配管及び第1と第2のセグメントから外す(ステップ110)
(13)第2のセグメントを配管及び第1のセグメントから外す(ステップ113)
(14)第1のセグメントを配管から外す(ステップ114)
【実施例2】
【0050】
図3に示すように本実施例ではピン挿入孔は配管の径方向に2個設けた。これは分割拘束リング4のねじれに対して補強する効果を得るためである。
【0051】
つまり、肉盛溶接では上述したように配管が高温と低温の温度差に曝されるため、配管2の変形が生じる。この変形が溝5a、6a、7aから各セグメント5,6,7に伝わるため、そこでねじれが発生する。
【0052】
しかしながら本実施例ではピン挿入孔5c、6c、7cを配管2の径方向に2個設けたので、ねじれを拘束する効果がある。
【実施例3】
【0053】
本実施例では3つのセグメントの取り付けと取り外しではセグメントの順番が決まっている。
【0054】
つまり、図8Aに示すようにセグメント5の段差部5bは左右対称(両段差部とも上向き)となっているため、最初にセグメント5を配管に取付ける必要がある。続いて図8Bに示すようにセグメント6の段差部6bは左右非対称(セグメント5と対向する段差部6bは下向き、セグメント7と対向する段差部6bは上向き)となっている。そのため、セグメント5の次はセグメント6を配管に取付けることになる。次に図8Dに示すようにセグメント7の段差部7bは左右対象(両段差部とも下向き)となっているため、セグメント7は最後に配管に取付けることになる。
【0055】
取外すときはセグメント7から順次セグメント6、セグメント5の順で取外すことになる。
【0056】
以上のごとく本発明によれば、分割式による拘束リングであれば形状を損なうことなく取り外せると言う観点から、リユースが可能である。そのため、予備品や追加品の準備コストを削減できる利点がある。また、取り外せなかった場合の切断廃棄による廃棄物が無くなったことから、環境への負荷が小さくなる利点がある。
【0057】
また本発明による分割拘束リングは、軽量、且つ小サイズであることから、取扱い性が向上し、作業工数の低減が図れると同時に、被ばく線量の低減が図れるという利点がある。また、再使用が可能であるため、製造コストの低減が図れると同時に、環境への負荷低減が図れるという利点がある。
【0058】
また、ステンレス鋼配管のSCC対策は、近年における必須項目であり、その中の一つであるCRC工法は適用実績が多い工法であるため、本発明の分割式拘束リングを適用することは、工事中の安全リスク・被ばく線量管理・工程確保上、大きな利点である。
【0059】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されたものではない。またある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、またある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…拘束リング、
1a…溝、
2…配管、
2a…薄肉部、
3…肉盛溶接、
4…分割拘束リング、
4a…開口部、
4b…溶接レール取付け穴、
5…セグメント、
5a…溝、
5b…段差部、
6…セグメント、
6a…溝、
6b…段差部、
7…セグメント、
7a…溝、
7b…段差部、
8…ピン、
9…溶接装置、
9a…溶接ヘッド、
10…溶接レール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9